説明

ブラシ

【課題】 検体採取時に、軸部から押圧力が加わった場合に、この押圧力を吸収して、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができるブラシを提供する。
【解決手段】 ブラシ10は、軸部1と、この軸部1の一端に検体採取部2とを有している。また、検体採取部2は細棒状の湾曲部3を有しており、両端部4a、4bが軸部端部1aで結合されて、ループ形状に形成されてある。また、湾曲部3の表面には、繊維5が植設されてある。繊維5の湾曲部3の表面への植設は、静電植毛を採用することによって、均一な毛丈となるようにすることができる。また、細棒状の検体採取部2のループ形状に形成されてある内側部分にも繊維5が植設されてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシに関するものであり、特に、医療現場において、人体から検体を採取し、保持し、移送する為のブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体の腔(口、鼻、目、直腸、尿道、膣等)から検体を採取するためのブラシが知られている。このブラシは、検体を吸収する親水性の繊維で覆われたチップを先端に備えたロッドからなるものであり、前記親水性の繊維は静電植毛によって前記チップに被着されてある(特許文献1)。
【0003】
また、棒状の軸部と、該軸部の一端の本体と、該本体を覆うベロア仕上げ部とを具備した検体採取用のブラシも知られている(特許文献2)。
【0004】
また、非切断性の掻き取り縁部が形成され、ループ状の採取手段を有するシャフトからなる生物学的物質採取用デバイスも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−523663号公報
【特許文献2】特公平6−7830号公報
【特許文献3】特許第2558324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のブラシは、親水性の繊維で覆われたチップがオジーブのような丸みのある形状に成形されていて、人体に損傷や刺激を与えないように考慮されているものの、ロッドからの押圧力を吸収する構成を有していないので、ロッドから押圧力が加わらないように、検体の採取に際して慎重に作業する必要があった。
【0007】
同様に、上記特許文献2に記載のブラシも、棒状の軸部の一端がベロア仕上げ部を有する本体となっていることから、棒状の軸部からの押圧力を吸収する構成を有していないので、軸部から押圧力が加わらないように、検体の採取に際して慎重に作業する必要があった。
【0008】
また、上記特許文献3に記載の生物学的物質採取用デバイスは、ループ状に形成された採取手段が繊維等で覆われていないことから、検体採取時に被採取部の壁面等に当接した場合に、強い刺激を与えるものであった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、検体採取時に、軸部から押圧力が加わり、被採取部の壁面等に当接した場合に、この押圧力を吸収して、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができるブラシを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明は、検体を収集し、保持すると共に、該検体を移送する為のものであって、軸部と前記軸部の一端に検体採取部とを有したブラシにおいて、前記検体採取部は細棒状の湾曲部を有すると共に、前記湾曲部の表面に繊維が植設されてあり、被採取部の壁面等に当接した時に変形可能に形成されてあることを特徴としている。したがって、検体採取部が、検体採取時に軸部から人体へ押圧力が加わり、被採取部の壁面等に当接した場合でも細棒状の湾曲部が変形することによって、押圧力を吸収するので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。さらに、植設された繊維により、検体が容易に絡みつき易く湾曲部が壁面等に当接しない時でも確実に検体を採取できる。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の構成よりなるブラシにおいて、検体採取部は、細棒状の両端部が軸部端部で結合され、ループ形状に形成されてあることを特徴としている。したがって、検体採取時に軸部から人体へ押圧力が加わった場合でも細棒状のループ形状に形成された検体採取部が変形することによって、押圧力を吸収するので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成よりなるブラシにおいて、検体採取部は、外力によって容易に変形可能な弾性促進部が設けられていることを特徴としている。したがって、検体採取部の湾曲部による変形に、弾性促進部による変形が加わることによって、一層押圧力を吸収するので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【0013】
さらに、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成よりなるブラシにおいて、軸部と検体採取部との間にばね性を促進させる外力吸収部が形成されてあることを特徴としている。したがって、湾曲部による変形及び/又は、弾性促進部による変形に、外力吸収部による変形が加わることによって、一層押圧力を吸収するので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、検体採取部に細棒状の湾曲部を形成し、請求項2の発明では、検体採取部の細棒状の湾曲部をループ形状とし、請求項3の発明では、検体採取部に弾性促進部を形成したことによって、検体採取時に軸部から人体へ押圧力が加わった場合でも、この押圧力を吸収することができるので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。また、請求項4の発明では、外力吸収部による変形が加わることによって、一層押圧力を吸収するので、人体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)本発明に係るブラシの第1の実施形態を示す正面図、(b)同左側面図、(c)図1(a)のA−A断面図、(d)図1(b)のB−B断面図
【図2】(a)本発明に係るブラシの第2の実施形態を示す部分断面図、(b)同左
【図3】(a)本発明に係るブラシの第3の実施形態を示す部分断面図、(b)図3(a)の検体採取部に押圧力が加わった場合を示す部分断面図
【図4】(a)本発明に係るブラシの第4の実施形態を示す部分断面図、(b)同左
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るブラシの第1の実施形態を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は左側面図、図1(c)は図1(a)のA−A断面図、図1(d)は図1(b)のB−B断面図である。この図に示すように、ブラシ10は、軸部1とこの軸部1の一端に検体採取部2とを有している。また、検体採取部2は細棒状の湾曲部3を有しており、両端部4a、4bが軸部端部1aで結合されて、ループ形状に形成されてある。また、湾曲部3の表面には、繊維5が植設されてある。
【0017】
繊維5の湾曲部3の表面への植設は、静電植毛を採用することによって、均一な毛丈となるようにすることができる。また、細棒状の検体採取部2のループ形状に形成されてある内側部分にも繊維5が植設されてある。
【0018】
第1の実施形態のブラシ10は上述の構成となっているので、検体採取者が軸部1を指でつまみ、検体採取部2を人体の腔(口、鼻、目、直腸、尿道、膣等)に挿入すると、該腔の壁面に当接して、繊維5が検体を採取することができる。そして、検体採取部2に押圧力が加わった場合でも細棒状のループ形状に形成されてあるので、変形して、押圧力を吸収することができるので、体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【0019】
図2は、本発明に係るブラシの第2の実施形態を示す図である。図2(a)に示すブラシ20は、検体採取部22の端部24が、軸部21の端部21aと結合せず、離れた状態となるように形成されてある。そして、湾曲部23の表面には、繊維25が植設されてある。また、細棒状の検体採取部22の湾曲部23の内側部分にも繊維25が植設されてある。
【0020】
次に、図2(b)に示すブラシ30は、検体採取部32の両端部34a、34bが結合せず、離れた状態となるように形成されてある。そして、湾曲部33の表面には、繊維35が植設されてある。また、細棒状の検体採取部32の湾曲部33の内側部分にも繊維35が植設されてある。
【0021】
図2(a)及び(b)で示したブラシ20、30は上述のような構成となっているので、検体採取者が軸部21、31を指でつまみ、検体採取部22、32を人体の腔(口、鼻、目、直腸、尿道、膣等)に挿入すると、該腔の壁面に当接して、繊維25、35が検体を採取することができる。そして、検体採取部22、32に押圧力が加わった場合でも細棒状の湾曲部23、33が変形して、押圧力を吸収することができるので、体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。また、前記腔の壁面に当接しない場合においても、植設された繊維が検体を絡みつける事ができる為、確実に検体を採取できる。
【0022】
図3は、本発明に係るブラシの第3の実施形態を示す図である。図3(a)に示すブラシ40は、検体採取部42の細棒状の湾曲部43の2箇所に弾性促進部47が形成されてある。この弾性促進部47はV字状の切れ込みによって形成されてある。そして、弾性促進部47は、検体採取部42に押圧力が加わった場合には、図3(b)に示すように、変形してV字状の切れ込みが閉じた状態となる。
【0023】
図3(a)及び(b)で示したブラシ40は上述のような構成となっているので、検体採取者が軸部41を指でつまみ、検体採取部42を人体の腔(口、鼻、目、直腸、尿道、膣等)に挿入すると、該腔の壁面に当接して、繊維45が検体を採取することができる。そして、検体採取部42に押圧力が加わった場合でも細棒状の湾曲部43と弾性促進部47とが変形して、押圧力を吸収することができるので、体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【0024】
図4は、本発明に係るブラシの第4の実施形態を示す図である。図4(a)に示すブラシ50は、軸部51と検体採取部52との間に、ばね性を促進させる外力吸収部58が形成されてある。この外力吸収部58は、コイル状に形成されてある。
【0025】
次に、図4(b)に示すブラシ60は、軸部61と検体採取部62との間に、ばね性を促進させる外力吸収部68が形成されてある。この外力吸収部68は、波形のスプリング状に形成されてある。
【0026】
図4(a)及び(b)で示したブラシ50、60は上述のような構成となっているので、検体採取者が軸部51、61を指でつまみ、検体採取部52、62を人体の腔(口、鼻、目、直腸、尿道、膣等)に挿入すると、該腔の壁面に当接して、繊維55、65が検体を採取することができる。そして、検体採取部52、62に押圧力が加わった場合でも細棒状の湾曲部53、63と外力吸収部58、68とが変形して、押圧力を吸収することができるので、体に損傷や刺激を与えることを防ぐことができる。
【0027】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、第3実施形態及び第4実施形態では、第1実施形態の図1で示したループ形状の検体採取部で説明しているが、第2実施形態の図2で示した形状の構成としてもよく、この実施形態も本発明に含まれるものである。さらに、第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせてもよく、この実施形態も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のブラシは、医療現場において、人体から検体を採取し、保持し、移送する為のブラシとして利用される。
【符号の説明】
【0029】
1、21、31、41、51、61 軸部
1a 軸部端部
2、22、32、42、52、62 検体採取部
3、23、33、43、53、63 湾曲部
4a、4b、21a、24、34a、34b 端部
5、25、35、45、55、65 繊維
10、20、30、40、50、60 ブラシ
47 弾性促進部
58、68 外力吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収集し、保持すると共に、該検体を移送する為のものであって、軸部と前記軸部の一端に検体採取部とを有したブラシにおいて、前記検体採取部は細棒状の湾曲部を有すると共に、前記湾曲部の表面に繊維が植設されてあり、被採取部の壁面等に当接した時に変形可能に形成されてあることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
検体採取部は、細棒状の両端部が軸部端部で結合され、ループ形状に形成されてあることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
検体採取部は、外力によって容易に変形可能な弾性促進部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のブラシ。
【請求項4】
軸部と検体採取部との間にばね性を促進させる外力吸収部が形成されてあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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