説明

ブラジャーパッド及びウエア

【課題】保形性、洗濯性、通気性及び通水性の点で優れたパッド及びウエアを得ることを課題とする。
【解決手段】胸部に当てて使用される湾曲したパッド本体6と、このパッド本体6の両面に夫々設けられた布地2,3を有するブラジャーパッド7において、前記パッド本体6は、セル数が8〜70個/25mmのシート状のウレタンフォーム製素材を三次元加工してなることを特徴とするブラジャーパッド7。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はブラジャーパッド、及び吸水した水が抜けやすい水着や、激しい運動等により生じた汗が抜けやすいレオタード又はフィットネスウェア等のウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、例えば水着は胸部に位置する部分にブラジャーパッドを有する。ここで、ブラジャーパッドは、例えば、硬質ウレタンフォームシート又は不織布をモールド加工した湾曲したパッド本体と、このパッド本体の内側(着用者の肌側)に位置する内布地と、パッド本体の外側に位置する外生地とから構成されている。
【0003】
上述したパッドのうち、硬質ウレタンフォームを材料としたパッドは、保形性、洗濯性の点で優れるが、通気性、通水性の点で劣るという性質を有している。一方、不織布を材料としたパッドは、通気性の点で優れるが、保形性、洗濯性の点で劣るという性質を有している。従来、ポリエステル製のダブルラッセル編物を用いた水着の例としては、例えば下記特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−172806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明はこうした事情を考慮してなされたもので、保形性、洗濯性、通気性及び通水性の点で優れたブラジャーパッド、及びウエアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るブラジャーパッドは、胸部に当てて使用される湾曲したパッド本体と、このパッド本体の両面に夫々設けられた布地を有するブラジャーパッドにおいて、前記パッド本体は、セル数が8〜70個/25mmのシート状のウレタンフォーム製素材を三次元加工してなることを特徴とする。
この発明に係るウエアは、前記ブラジャーパッドを備え、水着又はレオタード又はフィットネスウエアとして使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、保形性、洗濯性、通気性及び通水性の点で優れたブラジャーパッド及びウエアが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施例に係るブラジャーパッドの製造方法を工程順に示す説明図。
【図2】図1(C)のブラジャーパッドを成形する金型の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明について更に詳しく説明する。
この発明に係るブラジャーパッドは、上述したように、湾曲したパッド本体と、このパッド本体の両面に設けられた布地とを有する。前記パッドは、主として水着、若しくはレオタード、若しくはフィットネスウエア等、水や汗を含みやすいウエアとして特に有効的に使用されるが、これらに限定されることなく、ブラジャーパッドを有する他の衣類にも適用することができる。
【0010】
この発明において、パッド本体の材質としては、セル数が8〜70個/25mmのシート状のウレタンフォーム製素材を三次元加工したものを用いることが重要である。前記ウレタンフォーム製素材は、加熱炉にシート状の硬質ウレタンフォームを入れ、水素等によりフォームを破裂させることにより得られる。一般に、今までパッド本体に使用されていた硬質ウレタンフォームとしては、セルが単に連続して繋がっているものが使用されてきた。しかし、セルが単に繋がっているだけでは、十分な通気性,保形性等の特性が得られないため、水着等に使用した場合、水がパッド部から抜けにくく、季節によっては肌寒さを感じたり、あるいは不快感を生じていた。
【0011】
本発明者は、こうした問題を解消するために種々研究した結果、セルが無秩序に破壊された状態、即ちセル数が8〜70個/25mmのシート状のウレタンフォーム製素材を三次元加工したパッド本体を用いることによって上記問題点を解消できることを究明するに至った。ここで、セル数が8個/25mm未満では、素材の隙間が少なすぎ、得られたパッドの保形性を保持するのが困難であるという問題がある。また、70個/25mmを越えると、素材の隙間が多すぎるため三次元加工するのに技術的な課題が生じ、コスト高になるという問題がある。
【0012】
この発明に係るパッド本体は、胸部の中心部で厚く、その周辺部に向かうにつれて中心部に比べて徐々に薄くすることが、保形性を保持する点で好ましいが、全体的に同じ厚みで形成することもできる。
【0013】
(実施例)
以下、この発明の実施例に係るブラジャーパッドについて図1及び図2を参照して説明する。
[ブラジャーパッドの製造方法]
まず、図1(A)に示すように、例えば素材として厚さ10mmでセル数が8〜70個/25mmのシート状の硬質ウレタンフォームシート1を準備した後、前記シート1の上側(内側)に内生地2を接着するとともに、前記シート1の下側(外側)に外生地3を接着した(図1(B)参照)。つづいて、内生地2及び外生地3を夫々接着した前記シート1を、図2に示すように上型4及び下型5にセットし、例えば150〜230℃、20〜60秒の条件下で加熱,加圧して図1(C)に示すような湾曲した硬質ウレタンフォームシートからなるパッド本体6を有したブラジャーパッド7を形成した。ここで、パッド本体6は、中心部で厚くかつその周辺部に向うにつれて徐々に薄くなっている。なお、加熱温度、時間、圧力は上記数値に限定されない。
【0014】
[ブラジャーパッドの構成]
この発明に係るブラジャーパッドは、セル数が8〜70個/25mmのシート状の硬質ウレタンフォームシート1を三次元加工して得られる湾曲したパッド本体6と、このパッド本体6の両面に夫々接着された内生地2及び外生地3とを有した構成となっている。このように、セル数が8〜70個/25mmのシート状の硬質ウレタンフォームシート1を三次元加工したパッド本体6の存在により、保形性、洗濯性、通気性及び通水性の点で優れたブラジャーパッドが得られる。また、こうしたブラジャーパッドを装着した水着によれば、通水性に優れるため、水中で使用した後、水から上がっても水がパッドから急速に抜け、肌寒さをあまり感じず、触感に優れるという利点を有する。
【0015】
事実、この発明によるパッド本体(以下、本発明品)、従来の一般的な硬質ウレタンフォームシートからなるパッド本体(以下、従来品)、硬質ウレタンフォームからなりかつセル数が70個/25mmを超えた素材からなるパッド本体(比較品)を用い、パッド本体の膨らみ部を上にして、試験機に取付け、JIS L 1096 8.26.1 A法(フラジール形法)に基づいて通気性試験をしたところ、下記の結果が得られた。
【0016】
No.1(比較品) 216.5(cm/cm・s)
No.2(本発明品) 208.0(cm/cm・s)
No.3(比較品) 226.3(cm/cm・s)
No.4(従来品) 5.1(cm/cm・s)
但し、試験回数は3回(No.1のみ2回)で、上記通気性は平均値を示す。通気性試験の結果、従来品の場合は十分な通気性が得られず、比較品の場合は通気性の点で優れるが十分な洗濯性が得られないことが判明した。これにより、本発明品が従来品及び比較品に比べて通気性の点で優れていることが確認できた。
【0017】
また、上記本発明品(No.2)、従来品(No.4)及び比較品(No.1,3)を用い、通水性試験を行ったところ、下記の結果が得られた。但し、この試験は、ビーカーの上にパッド本体の膨らみ部を下にして置き、100mlの水を注ぎ入れ、その水がパッド本体を通過して下に落ちるまでの時間(秒)を測定した。試験は3回行い、平均値を示した。
【0018】
No.1(比較品) 5.5秒
No.2(本発明品) 7.8秒
No.3(比較品) 2.7秒
No.4(従来品) 103.6秒
この通水試験の結果、従来品(No.4)の場合は通水時間が長く充分な通水性が得られなかった。比較例(No.1,3)の場合は、通水時間は短いが、十分な洗濯性が得られないことが判明した。これにより、本発明品(No.2)が従来品及び比較品に比べて十分な通気性及び洗濯性を満たすので、優れていることが確認できた。
【0019】
更に、上記本発明品(No.2−1,No.2−2)、従来品(No.4−1,No.4−2)及び比較品(No.1−1,No.1−2,No.3−1,No.3−2)を用い、乾燥性(保水性)試験を行ったところ、下記表1の結果が得られた。但し、この試験は、パッド本体を夫々十分水に浸してから引き上げ吊り干しをし、標準状態の試験室内で自然乾燥させた。水が滴り落ちなくなった直後からパッド本体の重量を引き、パッド本体に含まれる水分の重量で示した。また、試験は2回行い、夫々のデータを示した。
【表1】

【0020】
表1より、本発明品(No.2−1,No.2−2)の場合は、比較品(No.1−1,No1−2,No.3−1,No.3−2)や従来品(No.4−1,No.4−2)の場合と比べ、早い時間でパッド本体に含まれる水が0gとなり、保水性の点で良好であることが明らかである。
【0021】
更には、上記本発明品(No.2)、及び比較品(No.1,3)を用い、塩素水及び海水に対する耐久性(洗濯性)試験を行ったところ、下記表2の結果が得られた。但し、この試験では、次に示す海水及び塩素処理水にNo.1〜No.3のパッド本体を1:30の浴比で30分浸漬し、軽く水洗した後、電気洗濯機による洗濯を行った。その後、20℃,湿度65%の条件で吊り干し、乾燥させた。この操作を40回繰り返して10回毎のパッド本体の外観を観察した。
【0022】
海水:JIS L 0847に規定の海水(30g/リットル 塩化ナトリウム溶液)
塩素水:JIS L 0884に規定の塩素処理水(有効塩素20g/リットル)
洗濯処理方法:JIS L 0217 付表1 103
【表2】

【0023】
上記表2より、本発明品の場合は、20回洗濯しても海水及び塩素水のいずれの場合にも変化が無かったのに対し、No.1,3の比較品の場合は20回の洗濯で形崩れがあることが明らかになった。これにより、本発明品が比較品に比べて優れていることが明らかである。
【0024】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…硬質ウレタンフォームシート、2…内生地、3…外生地、4…上型、5…下型、6…パッド本体、7…ブラジャーパッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部に当てて使用される湾曲したパッド本体と、このパッド本体の両面に夫々設けられた布地を有するブラジャーパッドにおいて、
前記パッド本体は、セル数が8〜70個/25mmのシート状のウレタンフォーム製素材を三次元加工してなることを特徴とするブラジャーパッド。
【請求項2】
前記パッド本体は、胸部の中心部では厚く、その周辺部に向かうにつれて中心部に比べて薄くなることを特徴とする請求項1記載のブラジャーパッド。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2記載のブラジャーパッドを備え、水着又はレオタード又はフィットネスウエアとして使用されることを特徴とするウエア。

【図1】
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【図2】
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