説明

ブリスタ

【課題】内包された粉末薬剤をブリスタ内に残存させることなく確実に投薬することができるブリスタを得る。
【解決手段】吸入式投薬器に取り付けられるブリスタおいて、シール材41と、粉末薬剤を内包して前記シール材41に貼り付けられた基材42と、を備えている。基材42には、流出穴421が生成される周囲において前記シール材41の流体を吸入する吸入穴412の生成箇所に対向し、前記流体に乱流を発生させる段差423が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入式投薬器に組み込まれるブリスタに関する。
【背景技術】
【0002】
喘息患者等には携帯に便利な吸入式投薬器が使用されている。特許文献1には、吸入式投薬器(薬物投与装置)が開示されている。この吸入式投薬器には粉末薬剤を内包するブリスタが組み込まれている。粉末薬剤の投薬時、ブリスタには穴が開けられ、吸入により発生する吸入流をブリスタ内に導くことにより、粉末薬剤が患者に吸引され投薬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−77433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の吸入式投薬器においては以下の点について配慮がなされていなかった。ブリスタに内包される粉末薬剤の一般的粒子径は数百μm〜数μmである。つまり、粉末薬剤は微粒子であることから、粉末薬剤の流動性が低く、固化し易く、ブリスタ内に付着し易い。この種の吸入式投薬器は、喘息の症状を抑える薬剤であって、規定量の吸引がないと薬効を十分に期待することが出来ない。特に、子供や老人においては吸入力が弱いので、規定量の吸引を実現することが難しかった。
【0005】
本発明は、ブリスタに内包された粉末薬剤をブリスタ内に残存させることなくより確実に吸入することができ、また小型化若しくは低コスト化を実現することができるブリスタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シール材と、粉末薬剤を内包してシール材に貼り付けられた基材と、を備え、流出穴が生成される周囲においてシール材の流体を吸入する吸入穴の生成箇所に対向し、流体に乱流を発生させる段差を基材に備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のブリスタは、テープ状に形成され、吸入式投薬器に設けられるリール部に巻かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材に段差を備え、シール材に生成される吸入穴から流入される流体に乱流を発生させることができるので、ブリスタに内包される粉末薬剤を攪拌し残存させることなくより確実に吸入することができる。更に、基材に段差を生成する簡易な構成を加えただけなので、小型化若しくは低コスト化の少なくともいずれか一方を実現することができる。
【0009】
また、本発明によれば、ブリスタはテープ状に形成され、吸入投薬器に設けられるリール部に巻かれるものであるため、ブリスタの取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係るブリスタが取り付けられる吸入式投薬器の内部構造を示す概略正面図、(B)は(A)に示す吸入式投薬器の矢印1B方向から見た概略底面図、(C)は(A)に示す吸入式投薬器の矢印1C方向から見た概略側面図である。
【図2】(A)は図1に示す吸入式投薬器の外形構造を示す概略正面図、(B)は(A)に示す吸入式投薬器の矢印2B方向から見た概略底面図、(C)は(A)に示す吸入式投薬器の矢印2C方向から見た概略側面図である。
【図3】(A)は図1に示す吸入式投薬器に取り付けられる使用前のブリスタの正面図、(B)は(A)に示すブリスタの側面図である。
【図4】図1に示す吸入式投薬器に取り付けられるブリスタテープの平面図である。
【図5】図1に示す吸入式投薬器において穴生成機構による流出穴及び吸入穴の生成状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】(A)は図1に示す吸入式投薬器に取り付けられる使用後(又は穴生成時)のブリスタの正面図、(B)は(A)に示すブリスタの側面図、(C)は(A)に示すブリスタの背面図である。
【図7】図6(B)に示すブリスタの流体の流れを示す側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るブリスタの使用後(又は穴生成時)の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、喘息患者が携帯可能な吸入式投薬器に使用するブリスタに本発明を適用した例である。なお、実施形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施形態の間において重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)[吸入式投薬器の構成]図1(A)〜図1(C)及び図2(A)〜図2(C)に示すように、本発明の第1実施形態に係るブリスタが取り付けられる吸入式投薬器1は、ミル部5と、粉末薬剤を内包するブリスタ40をミル部5に位置決めする位置決め機構3と、位置決めされるブリスタ40に、その内包された粉末薬剤をミル部5に流出させる流出穴(図6、符号421参照。)及びその周囲にこの流出穴に流体を吸入させる吸入穴(図6、符号412参照。)を生成する穴生成機構7とを備える。
【0013】
吸入式投薬器1の筐体2は、例えば110mm−120mmの長さと、68mm−70mmの幅と、38mm−40mmの厚さとを有し、携帯可能なコンパクトなサイズにより構成されている。筐体2は、成型の容易さや低コスト化に有利な樹脂により構成されている。
【0014】
吸入式投薬器1のミル部5は筐体2の中央部分に配設され、図1(A)及び図1(B)に示すミル部5の下側の一端はマウスピース6に連通されている。ミル部5にはブリスタ40に内包される粉末薬剤が流出され分散される。マウスピース6は喘息患者が唇を当てて直接吸引する箇所であり、ミル部5に流出された粉末薬剤はマウスピース6を通じて喘息患者に吸引される。
【0015】
ブリスタ40は吸入式投薬器1に装着されている。図3(A)及び図3(B)に示すように、ブリスタ40は、フィルム状のシール材41と、シール材41に貼り付けられた基材42とを備えている。基材42には、突出成型されその内側の空間内に粉末薬剤を内包することができる内包部42Aが配設されている。ここで、粉末薬剤とは、喘息患者の喘息症状を治療する粉末状の薬剤という意味で使用されている。シール材41には例えばアルミニウム箔が使用されている。基材42及びそれに一体成型された内包部42Aには例えば透明な樹脂、具体的にはPVCやアルミシート等を実用的に使用することができる。
【0016】
第1実施形態においては、図4に示すように、一方向(ここでは、図中、左右方向)に複数個のブリスタ40を連続的に一体に形成したブリスタテープ4が使用されている。ブリスタテープ4の1つのブリスタ40の内包部42Aには一回の投薬において使用される一定量の粉末薬剤が内包されている。例えば、ブリスタテープ4は、20mgの粉末薬剤を30回分投薬することができる、つまり1回につき20mgの粉末薬剤が内包されたブリスタ40を30個連結した構成になっている。
【0017】
また、第1実施形態においては、同図4に示すように、シール材41の幅方向の中心軸よりも図中下側よりに内包部42Aが配設されている。内包部42Aはシール材41の長手方向に一定ピッチにおいて配設されている。一方、シール材41の幅方向の中心よりも図中上側には、シール材41の長手方向に沿ってブリスタテープ4を搬送したり位置決めしたりするガイド穴43が配設されている。
【0018】
図1(A)及び図1(B)に示すように、筐体2の内部において、ミル部5を中心としてその左側に回転軸31を中心に回転する供給リール32と、その右側に回転軸33を中心に回転する回収リール34が配設されている。供給リール32は、使用前つまり粉末薬剤を使用する前のブリスタ40が含まれるブリスタテープ4の一端が巻き回されている。回収リール34は、使用後つまり粉末薬剤を使用した後のブリスタ40が含まれるブリスタテープ4の他端が巻き取られる。回収リール34の一部34A(図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)中右端。)は筐体2から若干突出しており、この一部34Aを手動により回転させることで、回収リール34にブリスタテープ4を回収することができる。勿論、ブリスタテープ4は回収リール34を回転させることにより回収されるが、連動して供給リール32も回転し、供給リール32からブリスタテープ4が供給される。
【0019】
ブリスタテープ4は、供給リール32から供給され、ガイド35に案内される。ブリスタテープ4の1つのブリスタ40の内包部42Aはミル部5の他端側に位置決めされる。この内包部42Aの位置決めがなされると、その内包部42Aが一旦ロックされる。ロックはブリスタテープ4の1つのブリスタ40の内包部42Aがミル部5に位置決めされる毎に行われる。また、ロックの解除は穴生成機構7の穴開け動作により行われる。
【0020】
吸入式投薬器1の位置決め機構3は、その詳細な構造は省略するが、図1(A)〜図1(C)に示すように、供給リール32、ガイド35及び回収リール34を有する搬送機構と、ミル部5にブリスタテープ4の1つのブリスタ40の内包部42Aを位置決めしロックする手段と、このロックを解除する手段とを備えている。更に、位置決め機構3には、回収リール34の回転に伴い回収されるブリスタテープ4の回収量に応じて残数表示カウンタ36を回転させ、未使用のブリスタ40の残数を表示するカウンタ機構を備えている。残数表示カウンタ36により表示される残数は図2(A)に示す筐体2に配設された表示窓21から確認することができる。同じく、筐体2に記された矢印22により残数が指し示される。
【0021】
吸入式投薬器1の穴生成機構7は、図1(A)、図1(C)、図5、図6(A)、図6(B)及び図6(C)に示すように、ブリスタ40の内包部42Aの中心部分においてシール材41に流体の吸入穴411及び基材42に粉末薬剤の流出穴421を生成する流出穴生成針75と、内包部42Aの周辺部分においてシール材41に流体の吸入穴412を生成する吸入穴生成針76と、流出穴生成針75及び吸入穴生成針76に連接された押圧部71と、押圧部71のスライドをガイドするガイド73と、押圧部71の押圧動作に抗して押圧部71を押し上げる弾性体72と、を少なくとも備えている。
【0022】
第1実施形態において、まずブリスタ40の内包部42Aは半球に近い形状により形成されており、内包部42Aの中心部分に生成される流出穴421及び吸入穴411の平面形状は円である。内包部42Aの周辺部分に生成される吸入穴412は流出穴421を中心としてその周囲に等間隔において複数個配設されている。吸入穴412の平面形状は流出穴421と同様に円であり、吸入穴412の直径はここでは流出穴421の直径に比べて小さく設定されている。なお、流出穴421、吸入穴411、412のそれぞれの平面形状は必ずしも円に限定されるものではなく、適宜、形状を変化させることができる。例えば、流出穴421、吸入穴411、412のそれぞれの平面形状は、楕円、方形、五角形以上の多角形等、必要に応じて適宜変更可能である。流出穴生成針75及び吸入穴生成針76は第1実施形態においてステンレス鋼等の金属や硬質樹脂等により形成されており、流出穴生成針75と吸入穴生成針76とは一体に構成されている。更に、第1実施形態において、押圧部71は流出穴生成針75及び吸入穴生成針76と一体に構成されている。弾性体72には例えばコイルスプリングを実用的に使用することができる。ガイド73は、筐体2の一部を利用して構成されており、ブリスタ40の流出穴421の生成動作において流出穴生成針75の移動方向Fを案内し、ブリスタ40の吸入穴412の生成動作において吸入穴生成針76の移動方向Fを案内する。
【0023】
ここで、図3、図5、図6(B)及び図7に示すように、ブリスタテープ4のブリスタ40の内包部42Aにおいて、流出穴421が生成される周囲にシール材41の流体を吸入する吸入穴412の生成箇所に対向し、流体に乱流を発生させる段差423が基材42に配設されている。段差423は、吸入穴生成針76に対応する位置に配設され、内包部42Aの内側に円弧を有する形状により構成されている。更に詳細には、内包部42Aは、段差423を有する半球と、それに積み重ね、前者それよりも小さい半球とを重ね合わせた構造により構成されている。ここで、流体とは、喘息患者が粉末薬剤を投与するために、マウスピース6から吸引したときに発生する空気である。つまり、吸引により発生しシール材41の吸入穴412から流入した流体が段差423において乱流となり、この段差423からシール材41と基材42との張り付け箇所に沿って存在する粉末薬剤を攪拌し、この粉末薬剤を流出穴421から効率良くかつ余すことなく確実にミル部5に排出することができる。
【0024】
[吸入式投薬器の操作方法]前述の図1〜図7に示す吸入式投薬器1の操作手順は以下の通りである。まず最初に、図1(B)に示す、吸入式投薬器1の筐体2から突出する回収リール34の一部34Aが矢印方向(反時計回り)にロックするまで回される。回収リール34の回転によりそれに連動して供給リール32が矢印方向(時計回り)に回転し、ブリスタテープ4がミル部5に供給される。ブリスタテープ4はガイド35に案内されてミル部5に供給される。回収リール34が一定量回転すると、位置決め機構3によりミル部5に未使用のブリスタ40が位置決めされ、この位置でブリスタ40がロックされる。
【0025】
穴生成機構7の押圧部71が弾性体72の弾性力に抗して押し込まれ、押圧部71に連結された流出穴生成針75は位置決めされロックされたブリスタ40の内包部42Aにおいてシール材41に吸入穴411を生成し、基材42に流出穴421を生成する(図5参照。)。引き続き、吸入穴生成針76は位置決めされロックされたブリスタ40の内包部42Aにおいてシール材41に吸入穴412を生成する。この流出穴421及び吸入穴412を生成する操作が開始されると、回収リール34のロックが解除される。そして、押圧部71が弾性体72の弾性力により元の位置に戻させると、ブリスタ40の内包部42Aには流出穴421、吸入穴411及び412が開口する。
【0026】
操作者は、吸入式投薬器1のマウスピース6をくわえ、吸引を開始する。この操作により、ブリスタ40の内包部42Aに内包される粉末薬剤は流出穴421を通じてミル部5に放出される。ここで、ブリスタ40の内包部42Aにおいては、流出穴421の周囲に吸入穴412が配設され、この吸入穴412に吸入された流体は内包部42Aの内壁に沿って流出穴421に抜ける流体経路を生成することができるので、内包部42Aの内壁に残存する粉末薬剤の流出を助長することができる。更に、ブリスタ40の内包部42Aにおいて、吸入穴412に対向する位置の基材42に段差423が配設されているので、この吸入穴412に吸入された流体は段差423で乱流となり、粉末薬剤を攪拌し、内包部42Aの内壁において粉末薬剤の流動性を向上し、固化を妨げ、そして付着することを防止することができる。
【0027】
このように構成される吸入式投薬器1によれば、ブリスタ40に内包される粉末薬剤を吸入穴412から吸入される流体によりブリスタ40内に残存させることなくブリスタ40の流出穴421から確実に投薬することができる。更に、穴生成機構7はブリスタ40に流出穴421を生成する構成に加えて吸入穴412を生成する簡易な構成を加えただけなので、小型化若しくは低コスト化の少なくともいずれか一方を実現することができる。
【0028】
一方、第1実施形態に係るブリスタ40(ブリスタテープ4)においては、基材42に段差423を備え、シール材41に生成される吸入穴412から流入される流体に乱流を発生させることができるので、ブリスタ40に内包される粉末薬剤を攪拌し残存させることなく確実に投薬することができる。更に、基材42に段差423を生成する簡易な構成を加えただけなので、小型化若しくは低コスト化の少なくともいずれか一方を実現することができるブリスタ40(ブリスタテープ4)を提供することができる。
【0029】
(第2実施形態)本発明の第2実施形態は、前述の第1実施形態に係るブリスタ40(ブリスタテープ4)の変形例を説明するものである。第2実施形態に係る吸入式投薬器1の穴生成機構7においては、図8に示すように、ブリスタ40の内包部42Aの周辺部分において、シール材41に平面形状C型の吸入穴412が配設されている。吸入穴412は、流出穴421を中心としてその周囲の図中上下2カ所に配設されている。吸入穴412は、平面形状が円の吸入穴を中心軸を中心とする同心円上に連続配置したものである。図示しないが、穴生成機構7の吸入穴生成針76は、このような吸入穴412を生成することができる形状において構成されている。
【0030】
本発明は前述の実施形態に限定されるものではない。例えば、前述の第1実施形態に係るブリスタ40(ブリスタテープ4)には内包部42Aにおいて流出穴421の周囲に合計8個の吸入穴412が配設されているが、この数に限定されるものではなく、本発明は、8個を除く自然数の個数の吸入穴412を配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、吸入式投薬器に取り付けられるブリスタに利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 吸入式投薬器
3 位置決め機構
40 ブリスタ
41 シール材
42 基材
411、412 吸入穴
421 流出穴
423 段差
42A 内包部
5 ミル部
7 穴生成機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材と、
粉末薬剤を内包して前記シール材に貼り付けられた基材と、を備え、
流出穴が生成される周囲において前記シール材の流体を吸入する吸入穴の生成箇所に対向し、前記流体に乱流を発生させる段差を前記基材に備えたことを特徴するブリスタ。
【請求項2】
前記ブリスタは、テープ状に形成され、吸入式投薬器に設けられるリール部に巻かれることを特徴とする請求項1に記載のブリスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91047(P2012−91047A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30207(P2012−30207)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2007−243824(P2007−243824)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【出願人】(592088426)有限会社ドット (17)
【Fターム(参考)】