説明

ブリ類の肉類変色防止方法

【課題】ブリ類の肉類変色防止方法、特に、ブリ類の低温貯蔵中における血合い肉の変色を効果的に防止する方法を提供すること。
【解決手段】飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合した飼料を用いて、2か月以上、ブリ類を飼育する期間を設けることにより、ブリ類の低温貯蔵中における血合い肉の変色を効果的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリ類の肉類変色防止方法、特に、アスタキサンチン及びγ−オリザノールを配合した飼料を用いてブリ類を飼育する期間を設けることにより、ブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、魚介類の食卓への需要を賄うために、水産飼料を用いた魚介類の人工養殖が盛んに行われている。これら魚介類の人工養殖において問題となるのは、養殖した魚介類が、天然のものに比べて体表の色や、肉質において必ずしも同等のものが得られないということである。例えば、天然のサケ類は自然界のエビやカニに含まれるカロチノイド色素を摂取し、蓄積して赤橙色の肉色を呈しているが、養殖のサケ類は、その肉色を天然のサケ類に近い色にするために、カロチノイド色素を添加した飼料で飼育する必要がある。
【0003】
水産動物に良く見られるカロチノイドには、β−カロチン、ルティン、ゼアキサンチン、ツナキサンチン、アスタキサンチン等があるが、魚介類の体色等を彩る赤色系の色の主なカロチノイドはアスタキサンチンであり、ブリの表皮の色などはツナキサンチンが色素源であることが知られている。魚介類の体色や肉色は、該主なカロチノイドの他にいくつかのカロチノイドによって独特の色を形成していることが多いが、魚介類などはいずれもカロチノイドを生合成することができないので、餌からカロチノイドを摂取している。
【0004】
従来より、カロチノイド系色素を用いた魚介類の体色或いは肉色改善の方法が開示されている。例えば、特開平4−63552号公報には、アスタキサンチンを主成分とするカロチノイド系色素を20ppm以上含有するイカ油からなる飼料を用いて、カニ、クルマエビなどの甲殻類や、マダイ、錦鯉、キンギョ、サケ、マス類の体色及び肉色などの赤色系の色、或いはブリの表皮の色を改善する方法が、特開平4−158749号公報には、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、β−カロチン、カンタキサンチン、ルティン、ツナキサンチン等のカロチノイド系色素微粉末とレシチンとからなる魚類飼料用添加剤を用いて、マダイやニジマス、カンパチ等の魚類の体表色素、筋肉色素、魚卵色素の色揚げを行なう方法が開示されている。
【0005】
また、特開平5−304898号公報には、アスタキサンチンに、黄色系キサントフィルやカロチンを含有するスピルナのような藻類を配合したマダイ用色素材を用いて、マダイの色揚げを行なう方法が、特開平7−231755号公報には、アスタキサンチン及びグルタチオンを含有する赤色肉魚類用肉色改善飼料を用いて、ニジマスのような養殖の赤色肉魚類において、天然魚と同様の鮮やかな赤色の肉色に改善する方法が、特開平9−299039号公報には、アスタキサンチン等のキサントフィル類の色素を添加してなる赤色魚用飼料に、ビタミンC、ビタミンEを配合して、タイに給与することにより、養殖タイの色調を改善する方法が開示されている。
【0006】
更に、特開2002−58433号公報には、ブドウ種子又はその抽出物、グアバ又はその抽出物、或いは大豆イソフラボン等と、アスタキサンチンを含有する飼料を用いて、マダイの体色を改善する方法が、特開2005−27662号公報には、トウガラシや、カプサイシンのようなトウガラシ成分に、アスタキサンチンを配合したサケの肉色改善剤を用いて、サケの肉色をより赤橙色に改善する方法が、特開2008−99558号公報には、少なくともアスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを含むカロチノイド色素混合飼料を用いて穏やかな赤橙色の肉食を有するサケ類を生産する方法が開示されている。このように、従来より、アスタキサンチン系のカロチノイド色素を用いて、サケやタイ、或いはニジマスのような赤色肉魚類の体表の色や、肉色の改善を行う各種の方法が知られている。
【0007】
一方で、ブリは致死後その筋肉、特に血合い肉の色が速やかに変色し、商品価値が低下することが問題となっている。このようなブリの血合い肉(血合筋)の経時的変色を防止する方法として、いくつかの方法が開示されている。例えば、特開平11−266792号公報には、トウガラシや、緑茶又はチョウジ、或いはその成分のような血合筋色調改善或いは保持機能を有する天然食品素材を含む魚類飼料を用いて、ブリ等の刺身に加工したときの血合筋の色調変化を抑制する方法が、特開2002−233316号公報には、ビタミンE及びビタミンCを含有する養殖用飼料を用いて、ブリ類のような血合筋を有する魚類の血合い肉(血合筋)の経時的変色を防止する方法が開示されている。
【0008】
また、特開2005−278593号公報には、n−3高度不飽和脂肪酸の占める割合が8〜15%である20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料に、ビタミンC及びビタミンEを含有させたブリ類用飼料を用いて、1〜3か月間ブリ類を飼育することによって、ブリ類のフィレー加工調理後の血合筋の経時的な変色を防止する方法が開示されている。このように、ブリの血合い肉(血合筋)の経時的変色を防止する方法として、いくつかの方法が開示されているが、これらは、トウガラシや、ビタミンC或いは20%以上の油脂といったような、特定の成分をブリ類用飼料に配合するものであるため、ブリ類の飼料として必ずしも望ましいものではなく、また、その効果も必ずしも満足のいくものではなかった。
【0009】
他方で、γ−オリザノールを魚介類用飼料に添加する方法も開示されている。例えば、特開2006−50901号公報には、マダイ、サケ、マスなどの魚介類の養殖やニワトリ、ウシ、豚などの畜産における色揚げ、卵質向上効果、孵化率向上などの目的から飼料に配合されているアスタキサンチンのようなカロチノイド含有水畜産飼料に、該カロチノイドの抗酸化安定を目的として、天然植物由来のフェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸或いはγ−オリザノールのようなフェノールプロパノイド化合物或いはフィチン酸を含有させることが開示されている。しかし、該開示のものは、アスタキサンチンや、γ−オリザノールからなる魚介類用飼料を用いて、ブリ類の血合い肉(血合筋)の経時的変色を防止することを直接示唆しているものではない。また、「2008年度日本水産学会春季大会」講演要旨集85頁には、「γ−オリザノールによるブリ血合肉変色防止(長阪玲子ら)」について、触れられている。しかしながら、該開示のものも、アスタキサンチンや、γ−オリザノールからなる魚介類用飼料を用いて、ブリ類の血合い肉(血合筋)の経時的変色を防止することを直接示唆しているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−63552号公報
【特許文献2】特開平4−158749号公報
【特許文献3】特開平5−304898号公報
【特許文献4】特開平7−231755号公報
【特許文献5】特開平9−299039号公報
【特許文献6】特開平11−266792号公報
【特許文献7】特開2002−58433号公報
【特許文献8】特開2002−233316号公報
【特許文献9】特開2005−27662号公報
【特許文献10】特開2005−278593号公報
【特許文献11】特開2006−50901号公報
【特許文献12】特開2008−99558号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「2008年度日本水産学会春季大会」講演要旨集85頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ブリ、カンパチ、ヒラマサなどのブリ類の肉類変色防止方法を提供すること、特に、ブリは致死後、低温貯蔵中において、その筋肉、特に血合い肉の色が速やかに変色し、その商品価値が低下することが問題となることから、本発明の課題は、ブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を効果的に防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、養魚飼料を用いての魚介類の養殖と、養殖された魚介類の肉質との関連、特に、ブリ類の養殖と、ブリ類の肉類変色の関連について鋭意検討する中で、ブリ類の養殖において、ブリ類をアスタキサンチンとγ−オリザノールを特定の割合で配合した飼料を用いて、所定の期間飼育することにより、水揚げ(出荷)後、ブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を効果的に防止することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合した飼料を用いて、2か月以上、ブリ類を飼育する期間を設けることにより、ブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を効果的に防止する方法からなる。本発明において、ブリ類の飼育に用いる飼料は、飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜20mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、50〜400mg/kgのγ−オリザノールを配合した飼料であることが好ましい。本発明において、本発明のアスタキサンチン及びγ−オリザノールを配合した飼料によりブリ類の飼育をする期間は、水揚げ(出荷)前の少なくとも2か月であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合したブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を防止するためのブリ類飼育用飼料を包含する。
【0016】
すなわち具体的には本発明は、(1)飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合した飼料を用いて、2か月以上、ブリ類を飼育する期間を設けることを特徴とするブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法や、(2)飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜20mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、50〜400mg/kgのγ−オリザノールを配合した飼料を用いてブリ類を飼育することを特徴とする上記(1)記載のブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法や、(3)アスタキサンチン及びγ−オリザノールを配合した飼料によるブリ類の飼育期間が、水揚げ前の少なくとも2か月であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法や、(4)飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合したブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を防止するためのブリ類飼育用飼料からなる。
【発明の効果】
【0017】
従来より、ブリは致死後、低温貯蔵中において、その筋肉、特に血合い肉の色が速やかに変色し、その商品価値が低下することが問題となっていたが、本発明により、ブリの致死後、低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中においても、その筋肉、特に血合い肉の色の変色を効果的に防止し、商品価値の高いブリ類を提供することができる。又、本発明は、該ブリ類を飼育するためのブリ類飼育用の飼料を提供する。該飼料は、上記のように低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中においても、その筋肉、特に血合い肉の色の変色を効果的に防止し、商品価値の高いブリ類を提供するものであるが、アスタキサンチンやγ−オリザノールのような成分の配合であるため、ブリ類の飼育飼料としても、添加成分の影響によりブリの飼料に対する嗜好性低下といった問題が生ずる恐れがなく、ブリ類飼育用の飼料として適合性の高い飼料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における、本発明のブリ類用配合飼料を用いたブリ類の肉質改善効果についての試験において、各飼料に対するブリ切り身の貯蔵中における変色の推移を示す写真である。
【図2】本発明の実施例における、本発明のブリ類用配合飼料を用いたブリ類の肉質改善効果についての試験において、各飼料に対するブリ切り身の貯蔵中における変色指標b/a値の変化を示す図である。
【図3】本発明の実施例における、本発明のブリ類用配合飼料を用いたブリ類の肉質改善効果についての試験において、ブリ類用配合飼料におけるアスタキサンチン及びγ−オリザノールの配合比によるブリ切り身の貯蔵中における変色予防効果(変色指標b/a値)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合した飼料を用いて、2か月以上、ブリ類を飼育する期間を設けることにより、ブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を防止する方法からなる。
【0020】
本発明において、ブリ類飼育用の飼料に配合される、アスタキサンチンとしては、従来、養殖魚の色調の調整、すなわち色揚げに用いられていたものを用いることができる。従来、一般に色揚げに用いられていたアスタキサンチン源の主なものとしては、カニ殻、ザリガニ、南極オキアミ、イサザアミ、イカナゴの生又は冷凍品、それらのミール、乾燥品、それらの色素抽出油等を挙げることができる。植物性のアスタキサンチン源としては、パプリカ、ホウセンカ、アドニス等を挙げることができる。更に、藻類であるヘマトコッカス、ファフィア酵母等も挙げることができる。アスタキサンチン色素は、かかる動植物源から、直接油分として分離するか、有機溶媒等を用いて、油分などとともに抽出することにより分離することができる。
【0021】
本発明において、ブリ類飼育用の飼料に配合される、γ−オリザノールは、該成分を含有する植物素材からの成分の抽出・分離精製によって調製し、用いることができる。かかる植物素材としては、米糠等の穀類糠やコンブ等を挙げることができる。ブリ類のような養魚用配合飼料の調製の観点からは、米糠を用いることができる。該養魚用配合飼料の調製に用いる米糠は、適宜、米油に含有されるγ−オリザノールを用いて、γ−オリザノール強化米糠として用いることができる。米糠のような穀類素材から、γ−オリザノールを濃縮・分離するには、穀類素材等からの溶媒による抽出・分離により行なうことができ、かかる抽出・分離には一般に、ヘキサン、エタノール、アセトン、メタノールなどの有機溶媒が用いられる。
【0022】
本発明において、ブリ類の肉質改善のために用いるブリ類飼育用飼料としては、アスタキサンチンと、γ−オリザノールを飼料中に特定の割合で配合する点を除いては、通常、ブリ類の養殖に用いられているブリ類養魚用配合飼料を用いることができる。飼料中のアスタキサンチンとγ−オリザノールの配合割合としては、飼料中のアスタキサンチン含有量5〜100mg/kgに対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合する。飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜20mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、50〜400mg/kgのγ−オリザノールを配合した飼料を用いることが好ましい。特に好ましくは、飼料中のアスタキサンチン含有量5〜15mg/kgに対して、50〜300mg/kgのγ−オリザノールを配合する。
【0023】
本発明においては、本発明のブリ類の肉質改善のためのブリ類飼育用飼料を用いて、ブリ類の水揚げ(出荷)前の、少なくとも2か月以上、ブリ類を飼育する。本発明の方法により、肉質の改善されたブリ類を提供することができ、該ブリ類は、出荷後の低温貯蔵中においても、血合い肉の変色が効果的に防止され、商品価値の高いブリ類を提供する。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
[γ−オリザノール、アスタキサンチン配合飼料を用いた低温貯蔵中におけるブリ血合い肉変色防止効果試験]
【0026】
<試験方法>
表1に示す飼料配合例の飼料を用いて、ブリを2か月飼育し、これを水揚げした後、3.5℃で冷蔵した。9時間後にフィレーとして4℃で貯蔵した後、24時間後に切り身とし、デジタルカメラにて撮影した(0時間)。更に、4℃貯蔵中における切り身の写真を24及び48時間後に撮影した。得られた画像の血合肉部分についてImage JによってLab変換し、変色の指標としてb値(緑色)のa値(赤色)による商b/a値を用いて貯蔵中におけるブリ血合肉の変色を評価した。
【0027】
【表1】

【0028】
<結果>
本試験において、ブリ切り身の貯蔵中における変色の推移を、デジタルカメラにより撮影した結果を、図1に示した。図1において、A:対照飼料;B:アスタキサンチン含有飼料;C:アスタキサンチン+γ−オリザノール含有飼料によって飼育したものをそれぞれ示す。図1に示すように、対照区Aに比べてアスタキサンチン含有区Bの方が、更に、アスタキサンチン+γ−オリザノール含有区Cの方が変色の進行が効果的に抑制された。
【0029】
本試験において、貯蔵中におけるブリ切り身の変色指標b/a値の変化を図2に示す。図2に示すように、変色の指標b/a値の上昇がアスタキサンチン+γ−オリザノール含有区で著しく有意に抑制された(p<0.01,Kruskal-Wallis+Scheffe tests)。
【実施例2】
【0030】
[ブリ類用配合飼料におけるアスタキサンチン及びγ−オリザノールの配合比によるブリ切り身の貯蔵中における変色予防効果(変色指標b/a値)試験]
【0031】
<試験方法>
ブリ類用配合飼料におけるアスタキサンチン及びγ−オリザノールの配合比によるブリ切り身の貯蔵中における変色予防効果への影響について試験するために、配合飼料中のアスタキサンチンとγ−オリザノールの配合比について、次の配合比の飼料を調製し、実施例1と同様にして、飼育実験を行った:[7mg/kgアスタキサンチン+10mg/kgγ−オリザノール]、[7mg/kgアスタキサンチン+50mg/kgγ−オリザノール]、[7mg/kgアスタキサンチン+150mg/kgγオリザノール]。
【0032】
<結果>
結果を図3(ブリ類用配合飼料におけるアスタキサンチン及びγ−オリザノールの配合比によるブリ切り身の貯蔵中における変色予防効果)に示す。図3に示されるように[7mg/kgアスタキサンチン+10mg/kgγ−オリザノール]配合区に比べて、[7mg/kgアスタキサンチン+50mg/kgγ−オリザノール]配合区(飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、約7倍量のγ−オリザノール)では著しく変色が抑制された。そして、[7mg/kgアスタキサンチン+150mg/kgγオリザノール]配合区(飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、約20倍量のγ−オリザノール)でも変色が抑えられ、その効果は[7mg/kgアスタキサンチン+50mg/kgγ−オリザノール]配合区とほぼ同等であった。これらのことから、飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、約7〜20倍量のγ−オリザノールを配合することにより、ブリ切り身の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における顕著な変色予防効果が得られることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合した飼料を用いて、2か月以上、ブリ類を飼育する期間を設けることを特徴とするブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法。
【請求項2】
飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜20mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、50〜400mg/kgのγ−オリザノールを配合した飼料を用いてブリ類を飼育することを特徴とする請求項1記載のブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法。
【請求項3】
アスタキサンチン及びγ−オリザノールを配合した飼料によるブリ類の飼育期間が、水揚げ前の少なくとも2か月であることを特徴とする請求項1又は2記載のブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色防止方法。
【請求項4】
飼料中のアスタキサンチン含有量が5〜100mg/kgであり、該飼料中のアスタキサンチン含有量に対して、少なくとも7倍量のγ−オリザノールを配合したブリ類の低温貯蔵及び/又は冷凍貯蔵中における血合い肉の変色を防止するためのブリ類飼育用飼料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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