説明

ブレーカ装置

【課題】 スイッチの切り替え操作の操作抵抗を小さくする。
【解決手段】 ブレーカ装置10のケース本体21には、ターミナル30とともに固定電極40がボルト50にて取り付けられている。このターミナル30は、ボルト50に通されたスペーサ51の端面と取付基部24との間でボルト50の締め付け力で強固に固定され、固定電極40はスペーサ51の通されたスプリングワッシャ52の弾性力によりターミナル30側に押しつけられ、かつ、そのスプリングワッシャ52の残りの撓み代を撓ませて傾くことができる状態で取り付けられている。これにより、可動電極44に固定電極40が押された際に、両者間の摺動抵抗が小さくなるように固定電極40の傾きが自動調整され、スイッチ操作を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーカ装置に関する。
【0002】
【先行技術】本出願人が開発したブレーカ装置として、未公開ではあるが、図4に示すものがある。以下、図に基づいて説明すると、このブレーカ装置1のケース2内には、一対の丸棒状の固定電極3,3が同軸上に離間対向状態に配され、電線Dの端末に圧着されたターミナル4とともに、ケース2にインサート成形されたナット5にボルトBにて共締めされている。そして、この固定電極3には、その固定電極3に嵌入可能な筒状の可動電極6がスライド可能に支持され、レバー7の回動操作によりその可動電極6を、両固定電極3,3に差し込ませたオン状態と、一方の固定電極3のみに差し込ませたオフ状態とにスイッチ操作できるようにしてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したこの種の丸棒状の電極に筒状の電極を嵌入させるブレーカ装置では、各電極が厳密に同軸上に配されていない場合、具体的には、ケース2の成形精度のばらつきにより固定電極3,3同士の軸芯がズレて取り付けられている場合は、固定電極3と可動電極6との摺動抵抗が大きくなり、スイッチ操作に要する操作力が大きくなるという課題があった。
【0004】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、スイッチの切り替え操作の操作抵抗が小さいブレーカ装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
<請求項1の発明>請求項1の発明は、互いに嵌合可能な固定電極と可動電極のうち、一方の電極を導電回路のターミナルと共に締め付け部材によってベースに取り付け、スイッチ操作に基づき、他方の電極を移動させて一方の電極に嵌合及び離脱させるようにしたブレーカ装置において、締め付け部材は、ターミナル及び一方の電極に挿通されるネジ軸と、このネジ軸より径が大きく、一方の電極の遊挿孔を貫通してターミナルに突き当てられる径大部とからなり、ネジ軸の頭部を一方の電極との間に弾性部材がその撓み代を残した状態で配されているところに特徴を有する。
【0006】<請求項2の発明>請求項2の発明は、一対の棒状の固定電極を同軸線上に離間対向状態にし、それぞれを導電回路のターミナルと共に締め付け部材によってベースに取り付け、固定電極に嵌合可能な筒状の可動電極を、スイッチ操作に基づき、両固定電極を架け渡すように嵌合させたオン状態と、一方の固定電極にのみ嵌合させたオフ状態との間で移動できるようにしたブレーカ装置において、締め付け部材は、ターミナル及び固定電極に挿通されるネジ軸と、このネジ軸より径が大きく、固定電極の遊挿孔を貫通してターミナルに突き当てられる径大部とからなり、ネジ軸の頭部を固定電極との間にスプリングワッシャがその撓み代を残した状態で配されているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>請求項1の構成によれば、ネジ部の頭部とターミナルとの間隔は、径大部の長さ範囲に一定に確保される。一方の電極は、この径大部に貫通される部分が遊挿孔となっており、かつ、この一方の電極とネジの頭部との間に配された弾性部材が撓み代を残した状態となっているので、一方の電極は外力を受けた場合に弾性部材を撓ませて傾くことができる。
【0008】ここで、一方の電極が正規の組み付け向きより傾いている場合、スイッチ操作いよって、他方の電極が一方の電極に嵌合され始めると、一方の電極は他方の電極から同軸上に並べられる力を受けて傾きが修正され、嵌合抵抗が小さい状態で両電極が嵌合する。即ち、このブレーカ装置によれば、操作抵抗が小さくなるように一方の電極の傾きが自動調整され、スイッチ操作を容易に行える。
【0009】<請求項2の発明>請求項2の構成によれば、ネジ部の頭部とターミナルとの間隔は、径大部の長さ範囲に一定に確保される。固定電極は、この径大部に貫通される部分が遊挿孔となっており、かつ、この固定電極とネジの頭部との間に配されたスプリングワッシャが撓み代を残した状態となっているので、固定電極は外力を受けた場合にスプリングワッシャを撓ませて傾くことができる。
【0010】ここで、両固定電極が正規の組み付け向きより相互に傾いている場合、スイッチ操作によって、一方の固定電極のみに嵌合された可動電極が他方の固定電極に嵌合され始めると、両固定電極は可動電極から同軸上に並べられる力を受けて傾きが修正され、嵌合抵抗が小さい状態で両電極が嵌合する。即ち、このブレーカ装置によれば、操作抵抗が小さくなるように固定電極の傾きが自動調整され、スイッチ操作を容易に行える。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のブレーカ装置を具体化した一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。本実施形態のブレーカ装置10が備える合成樹脂製のケース20は、上面が開放された直方体のケース本体21に、その開放上面を塞ぐようにパネル22を取り付けてなり、ケース本体21の四隅部に設けた取り付け脚部23を介して機器等に固定可能となっている。このケース本体21の長手方向の両端部には、後述の固定電極40とターミナル30とをこのケース本体21に取り付けるための取付基部24,24が設けられている。取付基部24は、ケース本体21の側壁25,25同士の高さ方向の中間部分を架け渡すように形成されるとともにその内部にナット26がインサート成形され(図2参照)、その取付基部24の上面24Aにナット26のネジ孔26Aが上方へと開放されている。また、この取付基部24より外方には、両側壁25,25の上端同士を差し渡すように保護壁27が形成され、この保護壁27と取付基部24との間に形成された空間27Aから、ターミナル30を取付基部24の上面24Aへと差し込み可能となっている。
【0012】そのターミナル30は、ボルト用孔31を備えた矩形平板部32にバレル部33を備え、そこに電線Dの端末が圧着されている。なお、この矩形平板部32の幅は、取付基部24両側の側壁25,25同士の間隔とほぼ同じに形成され、ボルト締めの際に伴うターミナル30のまわり止めを図ってある。
【0013】固定電極40は対をなして、ターミナル30とともに取付基部24,24にそれぞれ取り付けられ、図2に示すように、同軸線上に離間対向状態となっている。以下、左右の固定電極40を区別する場合には、図2の右側のものには符号に「R」を添え、左側のものには「L」を添えることとする。この固定電極40は、後述の可動電極44を嵌入可能な丸棒部41を備えており、この丸棒部41は、図2の右側の固定電極40Rの方が左側の固定電極40Lより長くなっている。また、各固定電極40の丸棒部41の一端には矩形平板状の取付部42が設けられ、そこには上記したターミナル30よりスペーサ用孔43が形成されている。このスペーサ用孔43は本発明にかかる「遊挿孔」に相当し、次述のスペーサ51の外径よりも大きく形成され、固定電極40はこのスペーサ用孔43にスペーサ51を通された状態で傾けることができる。なお、この取付部42の幅は、上記したターミナル30の矩形平板部32と同様に取付基部24両側の側壁25,25同士の間隔とほぼ同じに形成され、ボルト締めに伴う固定電極40のまわり止めが図られている。
【0014】さて、固定電極40を取り付けるためのボルト50には、筒状のスペーサ51が通され、そのスペーサ51の外周に、ボルト頭50A側からスプリングワッシャ52、平ワッシャ53の順に通されている。このスペーサ51の径は、固定電極40のスペーサ用孔43には挿通可能で、かつ、ターミナル30のボルト用孔31には挿通されない大きさとなっている。これにより、固定電極40がスペーサ51に通され、ターミナル30がスペーサ51の端面に付き当てられた状態となってボルト50が取付座24のナット26へとネジ締めされる。また、そのスペーサ51の長さは、この固定電極40の取付部42の厚さ、平ワッシャ53の厚さ、及び、スプリングワッシャ52の自然長とを合わせた寸法より若干短く設定され、ボルト50が締められた状態では、スプリングワッシャ52が撓み代を残した状態で撓められる。
【0015】また、図2右側の固定電極40Rの丸棒部41Rには、組み付け時に、円筒状の可動電極44が挿通されている。可動電極44は、その内周面には、ルーバ接点(図示せず)が装着され、外周面には、合成樹脂性の連結体45が取り付けられている。そして、その連結体45に突出形成された連結軸46によって次述のレバー55に連結れる。
【0016】レバー55は合成樹脂により形成され、一対のアーム片56の上端部の間に、ハンドル部57を差し渡した全体として門形状をなす。このレバー55は、上記した固定電極40を跨ぐようにしてそのアーム片56がケース本体21内にパネル22のスリット22Aを介して差し込まれ、そのアーム片56先端の孔56Aに回動軸58を通してケース本体21に回動可能に支持されている。また、アーム片56の中間には長孔56Bが形成され、ここに上記した可動電極44の連結軸46が嵌合されてレバー55の回動操作を可動電極44のスライド移動に変換可能としている。
【0017】次に、本実施形態の作用について述べる。ブレーカ装置10の組み付けは以下のように行われる。まず、短い固定電極40Lをケース本体21に固定する。そのために、ボルト50にスペーサ51を通し、その外周に、スプリングワッシャ52、平ワッシャ53、固定電極40Lの順にボルト頭50A側へと差し込む。そして、ターミナル30を空間27Aからケース本体21内に侵入させてナット26のネジ孔26Aとターミナル30のボルト用孔31とを整合させ、その上方から上記したボルト50をネジ孔26Aに差し込み、例えば、ソケットレンチ等で締める。すると、ターミナル30は、スペーサ51の端面と取付基部24との間にボルト50の締め付け力で強固に固定され、固定電極40Lは平ワッシャ53を介してスプリングワッシャ52の弾性力でターミナル30側に押しつけられた状態となり、そのスプリングワッシャ52を撓ませて傾くことができる状態で取り付けられる(図3参照)。
【0018】次に、パネル22のスリット22Aにレバー55のアーム片56,56を通し、そのアーム片56,56間に可動電極44を挟み、両連結軸46,46を旋回させるようにしてアーム片56の長孔56Bに係合させる。そして、上記した短い固定電極40Lの場合と同様に、ボルト50にスペーサ51、スプリングワッシャ52、平ワッシャ53、固定電極40Rを挿通させ、その状態のままで、固定電極40Rを可動電極44に通す。ここで、パネル22を短い固定電極40L側にずらして長い固定電極40Rのボルト50がパネル22に隠れないようにし、上記した短い固定電極40Lの場合と同様にしてターミナル30とともに取付基部24にボルト50を締める。最後に、レバー55の孔56Aに回動軸58を通し、パネル22をケース本体21の上方開放部に押し込んで組み付けが完了する。
【0019】さて、ブレーカ装置10のスイッチ操作は以下のように行われる。ブレーカ装置10はオフ状態では、図2に示すように、レバー55が同図右側に倒れ、可動電極44が固定電極40Rのみに嵌入された状態となっている。このオフ状態からオン状態にするには、レバー55に手を掛けて、同図反時計回りに回動させる。すると、可動電極44は、固定電極40Rに沿って図左側に移動し、その端部が反対側の固定電極40Lに嵌入され、両固定電極40R,40L同士を架け渡した状態となって、各ターミナル30に接続された電線D同士が導通される。
【0020】ここで、対をなす固定電極40R,40L同士が厳密に同軸上に配されておらず、互いの軸線方向が傾いて取り付けられている場合、スイッチ操作により移動した可動電極44が左側の固定電極40Lに嵌合され始めると、両固定電極40L,40Rは可動電極44から同軸上に並べられる力を受けて傾きが修正され、嵌合抵抗が小さい状態で両電極が嵌合する。
【0021】即ち、本実施形態のブレーカ装置10によれば、スイッチ操作の際に、操作抵抗が小さくなるように固定電極40の傾きが自動調整され、スイッチ操作を容易に行える。
【0022】<他の実施形態>本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0023】(1)本実施形態では、丸棒状の電極40をケース本体21に固定し、円筒状の電極44を可動させるようにしてあるが、円筒状の電極を固定側とし、丸棒状の電極を可動側としたブレーカ装置に本発明を適用してもよい。
【0024】(2)また、本実施形態のスペーサとボルトに替え、段付きボルトを用いた構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーカ装置の分解斜視図
【図2】ブレーカ装置の側断面図
【図3】固定電極が傾いた状態を示す側断面図
【図4】先行技術としてのブレーカ装置の側断面図
【符号の説明】
10…ブレーカ装置
20…ケース(ベース)
30…ターミナル
40…固定電極
44…可動電極
50…ボルト(締め付け部材)
51…スペーサ(筒状スペーサ)
52…スプリングワッシャ(弾性部材)
D…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに嵌合可能な固定電極と可動電極のうち、一方の電極を導電回路のターミナルと共に締め付け部材によってベースに取り付け、スイッチ操作に基づき、他方の電極を移動させて前記一方の電極に嵌合及び離脱させるようにしたブレーカ装置において、前記締め付け部材は、前記ターミナル及び前記一方の電極に挿通されるネジ軸と、このネジ軸より径が大きく、前記一方の電極の遊挿孔を貫通して前記ターミナルに突き当てられる径大部とからなり、前記ネジ軸の頭部を前記一方の電極との間に弾性部材がその撓み代を残した状態で配されていることを特徴をするブレーカ装置。
【請求項2】 一対の棒状の固定電極を同軸線上に離間対向状態にし、それぞれを導電回路のターミナルと共に締め付け部材によってベースに取り付け、前記固定電極に嵌合可能な筒状の可動電極を、スイッチ操作に基づき、両固定電極を架け渡すように嵌合させたオン状態と、一方の固定電極にのみ嵌合させたオフ状態との間で移動できるようにしたブレーカ装置において、前記締め付け部材は、前記ターミナル及び前記固定電極に挿通されるネジ軸と、このネジ軸より径が大きく、前記固定電極の遊挿孔を貫通して前記ターミナルに突き当てられる径大部とからなり、前記ネジ軸の頭部を前記固定電極との間にスプリングワッシャがその撓み代を残した状態で配されていることを特徴をするブレーカ装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開平10−172386
【公開日】平成10年(1998)6月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−336111
【出願日】平成8年(1996)12月16日
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)