説明

ブロ−パネル製コンテナ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックのフラット二重壁ブロ−製の非水密性コンテナ、すなわちフラットブロ−パネル製コンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のごとく、昭和30年代に入り急速な経済成長に対し、生活環境施設が不足する現状から、各種のゴミ処理法が制定された後、特に最近、廃棄物処理法が改正され、リサイクル法が制定されて、市民は廃棄物(ゴミをいう)を分別して排出するように義務付けられた。
【0003】そのため、各家庭や事業所などから排出されるゴミの貯溜や保管は、オ−プンステ−ション方式とかバンカ−ステ−ション方式とか呼ばれるように1箇所のステ−ション収集が行われ、そこには分別用ゴミ箱が設置されるようになった。また、ス−パ−マ−ケット等の店頭にゴミ回収ボックス、すなわち、分別用ゴミ箱を設置して、来客が持参するリサイクルゴミを受け入れるリサイクルステ−ションも設置されるようになった。
【0004】かかる分別用ゴミ箱に関し、本出願人は次のような提案をしている(特開平10−81401号公報参照)。
【0005】長方体状有底容器からなるゴミ箱本体をスチ−ル製とし、これに樹脂製ペ−ル(バケツ状中容器ともいう)を複数個収納し、各ペ−ルにポリ袋を懸吊した公衆向けの中形分別用ゴミ箱において、本体上面に、分別されたゴミの専用形状の投入口をもつゴミ箱用蓋を設け、このゴミ箱用蓋を前方下り傾斜にして上方に開くようにし、本体の前面に前扉を設けて前方に開くようにしたので、ペ−ルの上部から前部にかけて全て開放でき、いわゆるフルオ−プンタイプとし、小形で且つ複数のペ−ルの出入れが容易となる、という提案を行っている。
【0006】ところで、最近、かかるスチ−ル製パネルは、次のような理由により、ハイテクブロ−法の一種であるプレスブロ−イング法(ブロ−コンプレッション法)によるプラスチック製フラットパネル(以下、プラスチックの二重壁ブロ−、すなわち、ブロ−パネルという)に置換される傾向がある(杉浦祥吉監修プラスチック成形技術大辞典第380頁より)。
【0007】すなわち、スチ−ル製パネルは、角張っている、鈑金加工時に音がうるさい、溶接に環境問題がある、多種少量生産(小ロット生産)にはプレス型の償却費が過大となる、等短所の理由に対し、ブロ−パネルは、デザインに自由性がある、スナップフィット(嵌め合せ、すなわち、一方の面に係合突起を一体成形し、他方の面の凹部にこの係合突起を嵌め込む構造で、水密にはならないもの)による組立に便利、ブロ−用金型は低圧用軽合金でよい、等の長所理由によるものとされている。
【0008】そこで本発明者らも、前記フルオ−プン化した分別用ゴミ箱をブロ−パネルで構成して、前記長所を発揮させることに着目した。
【0009】その結果、ブロ−パネルで構成したフルオ−プンタイプにした分別用ゴミ箱では、これらの長所の他、フルオ−プンタイプであると共に長方体状有底容器であるため、両側板および後板(背板)が3枚の板をヒンジ結合して1つの部品とすることができ、部品点数を極小化できると共に組立作業が容易となること、スナップフィットによって水密性が損なわれてもペ−ルを収納するので、汚水等の漏洩の心配がないこと、天板すなわち投入口を設けた蓋さえ変更すると非水密性でもよい機密書類用キャビネットに使用でき、しかも、小ロット生産も適しているブロ−金型の償却費を更に節約すること、等の新規な長所を見出した。
【0010】一方、ブロ−パネル製のキャビネットないし収納箱で、その両側板および背板を、3枚のブロ−パネル板を、圧縮成形したヒンジ部により連結して構成し、これらの側板や背板の上下端面に係合突起をそれぞれ設け、天板および底板にそれぞれ設けた凹部にスナップフィットさせて構成したキャビネット等は知られている(例えば実開昭62−200541号公報、特開平9−313262号公報等参照)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかるキャビネット等では、次のような問題があった。
■両側板および背板では、圧縮成形した中実部からなるヒンジ部またはその近傍で折り曲げているので、ブロ−パネルがスチ−ル製パネルに比べ、角張りを避け円みをもたせる、という長所を妨げている。
【0012】■天板は両側板および背板の上端面にスナップフィットさせて固設するので、フルオ−プンタイプのキャビネットには向かない。
【0013】■両側板および背板の内面には、引出しレ−ル等、当該キャビネット等特有の構造を設けているので、これらの板は他の用途には向かない。
【0014】そこで本発明は、かかる問題を克服しながら、フルオ−プンタイプのスチ−ル製分別用ゴミ箱を、ブロ−パネル製分別用ゴミ箱に構成して、かつ、投入口を設けた蓋さえ取換えることにより機密書類用キャビネットにも使用できることを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、1)ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、上部蓋および前扉からなるコンテナで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製コンテナにあって、前記両側板の各後端部を背板に向け、コンテナ用コ−ナア−ルを形成する弯曲部を形成し、該弯曲部の端部外縁に前記圧縮成形されたヒンジ部を設けて背板と連結して円みのあるコンテナにしたことを特徴とするブロ−パネル製コンテナにあり、また、2)ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、ゴミ投入口を設けた上部蓋、および前扉からなるコンテナで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製コンテナにあって、前記ゴミ投入口を設けた上部蓋のみを、水平スリット状の紙投入口を設けた機密書類用上部蓋に取換え可能としたことを特徴とするブロ−パネル製コンテナにあり、また、3)ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、上部蓋および前扉からなるキャビネットで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製機密書類用キャビネットにあって、該キャビネット内に取出自在の紙収容箱を収納し、前記上部蓋に水平スリット状の紙投入口を斜め下向きに開口して、機密紙を前記紙収納箱に積み重ね投入できるようにすると共に、紙収容箱の機密紙を外部から視認困難にしたことを特徴とするブロ−パネル製機密書類用キャビネットにある。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明を、添付図面に示す実施の形態例により詳細に述べる。
【0017】図1は本発明の実施の形態例の要部横断面図、図2は図1を用いた本実施の形態例の機密書類用キャビネットの斜視図、図3は図2の縦断面図、図4は図3の説明図、図5は図2の変形例、すなわち、分別用ゴミ箱の斜視図である。
【0018】なお、本実施の形態例の分別用ゴミ箱は、その先行技術である前掲の特開平10−81401号公報記載の分別用ゴミ箱と共通する部分、例えば寸法、ペ−ル、ポリ袋、前扉の構造等については、図示および説明を省略ないし簡略化しているので、これらを補充する必要がある。
【0019】先ず、本発明の実施の形態例の分別用ゴミ箱1Aのゴミ箱用蓋5Aのみを変更して構成した機密書類用キャビネット(以下、単にキャビネットという)1を概説する。
【0020】図1、2、3、4において、このキャビネット1の両側板2,2、背板3、底板4、蓋(上部蓋)5および前扉7は、いずれもプレスブロ−法によってプラスチック(例えば低分子樹脂やエンプラでも可であるが、一般のものPE)のパリソンを二重壁ブロ−したパネル、すなわち、ブロ−パネルで構成され、前記長所を備えている。
【0021】また、このキャビネット1の寸法が長辺(横巾)約670mm、短辺(奥行)約510mm、高さ約780mmで箱体としては中型であるため、寸法の点からみてもブロ−パネル製に極めて好都合(安価な金型、組立容易、安価な樹脂、強度保持、軽量化、安価なコンテナ等)になっている。
【0022】その上、このキャビネット1内には1つの紙収容箱6が取出自在に収納されていて、その取出しの際は、いわゆるフルオ−プンタイプ(前扉7全部と蓋5とが開けられるタイプ)であるため、簡素化し、かつ、深絞りを避けたブロ−金型で成形された両側板2,2および背板3は、底板4上にスナップフィットで固定でき、ひいては、これらの板(2)(3)は都合よく一体成形して連結することができ、その結果、生産性の向上は勿論、組立時にそれぞれの板(2)(3)を互にスナップフィットする手間を省いている。
【0023】すなわち、両側板2,2の間に背板3を挟んで連結し、その連結部を、プレスブロ−時に部分圧縮成形した中実部からなるヒンジ部(図示せず)により連結している。
【0024】ここで特に、両方の側板2には背板3側に左または右に(前扉7からみて)向けた、キャビネット1のコ−ナア−ル(直交したコ−ナの外面に円みをつけるための円弧をいう)を形成する若干の長さの弯曲部8を設け、該弯曲部8の端部外縁に設けたヒンジ部を介して背板3とそれぞれ連結しているので、ヒンジ部を折曲することなく、所望の円みのデザインの弯曲部8でもってキャビネット1を構成し、ブロ−パネルにおける円みを出す本来の長所を更に生かしている。
【0025】しかも、側板2の長さ(奥行長さ)より背板3の長さ(横巾)が大であるため、この2つの弯曲部8により両者は略同じ寸法となり、略同一形状のブロ−パネルの成形に都合がよい。
【0026】なお、このブロ−パネルは、外面平滑で、その内面に横または奥行き方向に長い複数段の凹部を、部分圧縮成形した中実部により形成したので、二重となり(射出では不可)補強リブとなって、スチ−ル製のものの強度と遜色しない。
【0027】加えて、このキャビネット1の蓋5は左右方向(横巾)長辺の平面視矩形状で、かつ、浅皿状に形成されていて、その後辺を前記背板3の上端面で着脱自在になる、ピン9によるヒンジ結合して後方に開くようにしている(図3参照)。
【0028】この蓋5には長い水平スリット状の紙投入口10を開口し、この紙投入口10を、ブロ−パネル厚(約60mm)で設けられる側断面視で斜め下向きに開口すると共に、紙投入口10の前方に紙投入案内面11を形成している。
【0029】そのため、紙投入者は1枚または複数枚の機密紙(例えばコンピュタ−による折りたたみ印刷紙)12の投入先を紙投入口案内面11に載せて紙投入口10へ押込めば、機密紙12は略水平状でひらひらと紙収容箱6内に落下し略積み重ねられて収容できる。
【0030】したがって、このような紙投入口10であるため、紙収容箱6への収容効率は上がり、しかも、紙投入口10から内部の機密紙12はブロ−パネル厚により視認できないので、前扉7のカギ13の開閉回数を少なくして、機密書類の処理用キャビネット1として好個になる。
【0031】なお、所定の処理業者または担当者は、定期的ないし投入不能の満杯状態となれば、カギ13を開け、前扉7に次いで蓋5を各開放してフルオ−プンにしてから、紙収容箱6を取出す。
【0032】以上要するに、このキャビネット1は、機密書類廃棄処理用という用途に好都合であり、また、ブロ−パネルには丁度よい(深絞りによる困難性回避や生産性向上等)寸法やデザインであり、その上、ブロ−パネルに好個なフルオ−プンタイプの構造となって、つまり、用途、寸法、デザインおよび構造いずれの点からも好都合となり、ひいては、安価な利便のよいキャビネットにすることができる。
【0033】次に、このキャビネット1の蓋5のみを取換えるだけで、分別用ゴミ箱1Aに構成できることを述べる。
【0034】図5において、前記キャビネット1の蓋5の代りに、図5(A)で示すゴミ箱用蓋5Aをピン9(図3参照)によるヒンジ接合すると、同(B)に示すような分別用ゴミ箱1Aが構成できる。
【0035】このゴミ箱用蓋5Aは略山形状に形成され、その前傾斜面に分別されたゴミの専用形状の口をもつゴミ投入口14,15が開口している。これらのゴミ投入口14,15は4角状の窓16を開口し、この窓16に、大径入口および小径出口の短円筒体17や大径入口および小径出口の短角筒体18が着脱自在に固着されている。
【0036】なお、この分別用ゴミ箱1Aの底板4には、その二重壁間に砂または砂鉄を容易に入れると、ウエイトが得られ屋外用に都合がよい。
【0037】次に、以上のキャビネット1や分別用ゴミ箱1Aの細部について概説する。
【0038】前扉7は図示では2板の扉をそれぞれ凹凸嵌合(またはピン)によるヒンジ結合19して両開きにしている。勿論、1枚の片開きでもよい。
【0039】紙収容箱6は上方開口の有底箱であって、予備の折りたたみ式コンテナからなる収容箱20に載置されている。21はストッパ付自在輪であり、22は上下方向アジャスタ付スタンドであって、いずれもブロ−成形時や生産工場でインサ−ト成形やビス止め加工により固着する。23は把持凹部を示す。
【0040】
【発明の効果】本発明の請求項1によると、ブロ−パネルには丁度よい円みのあるデザインとなり、しかも、ブロ−パネルを使用するのに好都合なフルオ−プンタイプに構成して安価なコンテナを提供することができる。
【0041】請求項2によると、特に、上部蓋のみを取換えると分別用ゴミ箱になったり、また、機密書類用キャビネットになり、ひいては、ブロ−パネル成形の金型の償却費を節減することができる。
【0042】請求項3によると、特に、機密書類用キャビネットに好都合となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例の要部横断面図である。
【図2】図1を用いた本実施の形態例の機密書類用キャビネットの斜視図である。
【図3】図2の縦断面図である。
【図4】図3の説明図である。
【図5】図2の変形例である。
【符号の説明】
1…キャビネット、1A…分別用ゴミ箱、2…側板、3…背板、4…底板、5,5A…蓋、6…紙収容箱、7…前扉、8…弯曲部、9…ピン、10…紙投入口、14,15…ゴミ投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、上部蓋および前扉からなるコンテナで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製コンテナにあって、前記両側板の各後端部を背板に向け、コンテナ用コ−ナア−ルを形成する弯曲部を形成し、該弯曲部の端部外縁に前記圧縮成形されたヒンジ部を設けて背板と連結して円みのあるコンテナにしたことを特徴とするブロ−パネル製コンテナ。
【請求項2】 ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、ゴミ投入口を設けた上部蓋、および前扉からなるコンテナで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製コンテナにあって、前記ゴミ投入口を設けた上部蓋のみを、水平スリット状の紙投入口を設けた機密書類用上部蓋に取換え可能としたことを特徴とするブロ−パネル製コンテナ。
【請求項3】 ブロ−パネルによりそれぞれ構成した両側板、底板、上部蓋および前扉からなるキャビネットで、これらの両側板と背板とを圧縮成形によるヒンジ部で連結し、これらの両側板と背板とを底板にスナップフィットによって立設し、前記上部蓋を背板の上端面で着脱自在となるヒンジ結合して上方に開放するようにし、前記前扉を両側板の前端面でヒンジ結合して前方に開放するようにしたフルオ−プンタイプのブロ−パネル製機密書類用キャビネットにあって、該キャビネット内に取出自在の紙収容箱を収納し、前記上部蓋に水平スリット状の紙投入口を斜め下向きに開口して、機密紙を前記紙収納箱に積み重ね投入できるようにすると共に、紙収容箱の機密紙を外部から視認困難にしたことを特徴とするブロ−パネル製機密書類用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3355176号(P3355176)
【登録日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【発行日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−158910(P2000−158910)
【出願日】平成12年5月29日(2000.5.29)
【公開番号】特開2001−335103(P2001−335103A)
【公開日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【審査請求日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)