説明

ブロックトイソシアネート基含有架橋剤分散体の製造方法

本発明は、水性で共溶媒不含有のブロックトイソシアネート基含有PUR分散体の製造方法、該分散体から製造された焼付仕上材、およびその塗膜への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性で共溶媒不含有のブロックトイソシアネート基含有PU分散体の製造方法、該分散体から製造された焼付ワニス、およびその塗膜への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装中に放出される溶媒に関する益々厳しい排出指令の結果として、水性塗料および水性被覆剤の注目度が急上昇している。今日、多分野にわたる応用に利用可能な水性塗料系が存在するが、これらの系は、しばしば、耐溶剤性および耐薬品性または弾性および力学的耐久性に関して、従来の溶媒含有塗料の高い品質水準を達成できない。
【0003】
例えば水性分散体に基づいた水含有塗料系でさえ、しばしば、共溶媒をなお含む。PU分散体について、これらの溶媒を回避することは一般に不可能である。なぜなら、プレポリマーを介した対応する分散体の製造は、しばしば共溶媒を必要とするからである。加えて、共溶媒の不存在下では、PU分散体およびその塗料組成物は、しばしば貯蔵安定性を欠く。特に、溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)は、水性分散体および水性塗料の分野で広く使用されている。その例は、EP-A 0566953またはEP-A 0942023に記載されているブロックトイソシアネート基含有ポリイソシアネート架橋剤分散体である。該架橋剤分散体およびそれらから製造された塗料の全てが、共溶媒としてNMPを含む。
【0004】
溶媒であるNMPは、多くのPU分散体を製造するのに適しているが、EUによって催奇性物質に分類されている。この結果として、今後は該溶媒を可能な限り回避すべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、共溶媒不含有の貯蔵安定なブロックトイソシアネート基含有ポリイソシアネート分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的が特定の製造方法によって達成されることが見出された。本発明は、
a)ポリイソシアネート成分のNCO基を、
b)成分a)のNCO基に基づいて50〜90当量%、好ましくは55〜80当量%の熱除去性ブロッキング剤、
c)成分a)のNCO基に基づいて10〜50当量%、好ましくは15〜40当量%の親水化剤としてのヒドロキシカルボン酸、および
d)成分a)のNCO基に基づいて0〜15当量%、好ましくは3〜12当量%の、イソシアネート反応性基に関して少なくとも二官能性である連鎖延長剤成分
と反応させる、ポリイソシアネート分散体の製造方法であって、まず、成分c)および/またはd)をブロッキング剤b)に溶解し、次いでそれをイソシアネート成分a)に添加し、場合により更なる成分c)を溶けていない状態で添加し、ポリウレタンポリマーを水に分散させる前、間または後に、該ヒドロキシカルボン酸のカルボン酸基を塩基e)で中和する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
反応種の割合は、成分b)、c)およびd)のイソシアネート反応性基に対するイソシアネート成分a)のNCO基の当量比が、1:0.6〜1:1.5になるように好ましくは選択され、1:0.7〜1:1.3が特に好ましい。
【0008】
成分b)、c)およびd)の混合物は場合により加熱してよく、好ましい温度範囲は10℃〜90℃である。該混合物に、アセトンまたはメチルエチルケトンのような(部分的に)水混和性の溶媒を添加することもできる。反応終了後および分散実施後、溶媒を蒸留によって除去できる。
【0009】
a)として、この目的のために使用されるポリイソシアネートは、当業者にそれ自体既知である、好ましくは2以上の官能価を有するNCO官能性化合物である。これらは典型的には、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートまたはトリイソシアネート、並びにそれらのウレタン、アロファネート、ビウレット、ウレトジオンおよび/またはイソシアヌレート基を有する高分子量誘導体であり、該誘導体は2個以上の遊離NCO基も含む。
【0010】
好ましいジイソシアネートまたはポリイソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナト−メチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリイソシアナトノナン、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−および/または4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4−イソシアナトメチルオクタン−1,8−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート、トリイソシアナトノナン、TIN)および/またはウンデカン−1,6,11−トリイソシアネート、並びにそれらの所望の混合物である。
【0011】
このようなポリイソシアネートは、典型的には、0.5重量%〜55重量%、好ましくは3重量%〜30重量%、特に好ましくは5重量%〜25重量%のイソシアネート含有量を有する。
【0012】
本発明の親水化ポリイソシアネートまたはポリウレタンを製造するための特に好ましいポリイソシアネートa)は、前述のタイプに一致し、ビウレット、イソシアヌレートおよび/またはウレトジオン基を含み、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づく。
【0013】
適当なブロッキング剤b)は、例えば、ε−カプロラクタム、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ブタノンオキシムのようなオキシム、ジイソプロピルアミン、アルキルアラニンエステルのようなエステルアミン、ジメチルピラゾール、トリアゾール、および/またはそれらの混合物、並びに場合により更なるブロッキング剤との混合物である。ベンジル−t−ブチルアミン、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、トリアゾールおよび/またはそれらの混合物が好ましい。
【0014】
ヒドロキシカルボン酸c)の例は、モノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸、例えば、2−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸(リシノール酸)、ヒドロキシピバリン酸、乳酸および/またはジメチロールプロピオン酸である。ヒドロキシピバリン酸、乳酸および/またはジメチロールプロピオン酸が好ましく、ヒドロキシピバリン酸が特に好ましい。
【0015】
少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸による親水化に加えて、非イオン的親水化作用を有する適当な化合物を使用することもできる。これらは、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基またはアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、30重量%〜100重量%の画分のエチレンオキシド含有構成単位を含む。1〜3の官能価を有する直鎖構造のポリエーテル、および分枝ポリエーテルが適している。
【0016】
非イオン的親水化化合物は、例えば、一分子あたり平均5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含む、一価のポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールを包含する。これらのアルコールは、従来の方法で、適当な出発分子のアルコキシル化によって得られる種類のものである(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版、19巻、Verlag Chemie, ヴァインハイム、第31〜38頁)。
【0017】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、直鎖ポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかであり、全アルキレンオキシド単位の少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%がエチレンオキシド単位からなる。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含む、単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0018】
適当な連鎖延長剤成分d)は、例えば、ジオール、トリオールおよび/またはポリオールを包含する。例は、エタンジオール、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジ−、トリ−、テトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、オクタン−1,8−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、トリメチロールプロパン、ひまし油、グリセロール、および/または上記製品の混合物、並びに場合により更なるジオール、トリオールおよび/またはポリオールとの混合物である。更に、エトキシル化および/またはプロポキシル化された、ジオール、トリオールおよび/またはポリオール、例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロールおよび/またはヘキサン−1,6−ジオールを使用できる。
【0019】
また、第1級および/または第2級アミノ基を含む、ジアミン、トリアミンおよび/またはポリアミンを使用することもできる。例は、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンまたはヒドラジンである。
【0020】
アミンおよびアルコールの混合物も可能であり、異なったイソシアネート反応性基を含む分子からなる混合官能性の化合物を使用することができ、その例は、N−メチルエタノールアミンおよびN−メチルイソプロパノールアミン、1−アミノプロパノール、ジエタノールアミン、1,2−ヒドロキシエタンチオールまたは1−アミノプロパンチオールである。
【0021】
e)として使用される中和剤の例は、塩基性化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジイソプロピルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニアまたはそれらの所望の混合物である。好ましい中和剤は、第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルヘキシルアミンおよびN,N−ジメチルエタノールアミンであり、N,N−ジメチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0022】
使用される中和剤の量は、一般に、本発明のポリウレタン中に存在するカルボン酸基の中和度(使用されたアミン/水酸化物の存在する酸基に対するモル比)が、少なくとも40%、好ましくは70%〜130%、より好ましくは90%〜110%となるように計算される。この中和は、分散工程または溶解工程の前、間または後に行うことができる。しかしながら、水の添加前に中和することが好ましい。
【0023】
アセトンまたはメチルエチルケトンのような(部分的に)水混和性の溶媒を、反応混合物に添加することもできる。反応終了後、反応混合物に水を添加し、溶媒を留去する。これは、アセトン法またはスラリー法とも称される。この方法の利点は、プレポリマー調製の間、低粘度を実現できるが、溶媒は最終的な分散体中に存在しないことである。
【0024】
水性分散体または水溶液は、一般に、15重量%〜65重量%、好ましくは25重量%〜60重量%、より好ましくは30重量%〜50重量%の固形分を有する。
【0025】
平均粒径は、一般に、5〜200nm、好ましくは8〜150nm、より好ましくは10〜100nmの範囲である。
【0026】
同様に、触媒を反応混合物に添加することもできる。適当な触媒の例は、第3級アミン、錫化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、または塩基性塩を包含する。ジラウリン酸ジブチル錫およびオクチル酸ジブチルが好ましい。
【0027】
本発明のブロックトポリイソシアネート分散体は、焼付ワニスの製造、基材(好ましくは、金属、鉱物、木材、プラスチック)の被覆、工業用塗布、例えば布地の塗布、自動車下地塗りに使用される。この目的のために、本発明の塗料を、ナイフ塗り、浸漬、圧縮空気吹付または無気吹付のような吹付塗布によって、また、静電塗布によって、塗布することができ、例として、高速回転ベルによる静電塗布がある。乾燥フィルム厚は、例えば10〜120μmであり得る。乾燥フィルムを、90〜190℃、好ましくは120〜180℃、より好ましくは130〜170℃の温度範囲で焼付けることによって硬化させる。
【0028】
塗料、接着剤およびエラストマーを製造するために、本発明のブロックトイソシアネート基含有ポリイソシアネート架橋剤分散体を、好ましくは水性分散体状態の、所望のポリオール成分のような少なくとも2官能性のイソシアネート反応性化合物と混合することができる。
【0029】
この種のポリオール成分は、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリウレタン、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリカーボネートジオールまたはヒドロキシル含有ポリマーであり得、その例は、一般的なポリヒドロキシポリアクリレート、ポリアクリレートポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリアクリレートである。これらの成分は一般に、20〜200mgKOH/g、好ましくは50〜130mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。これらのポリヒドロキシル化合物が必要とし得る親水化変性は、例えばEP-A-0 157 291またはEP-A-0 427 028に開示されているような従来法に従って行う。また、焼付中の更なる架橋のため、アミノ架橋剤樹脂(例えばメラミン樹脂および/または尿素樹脂)のような他のアルコール反応性化合物との混合物も可能である。
【0030】
塗料、インク、接着剤および他の組成物は、それ自体既知の方法で本発明の分散体から製造される。ブロックトポリイソシアネートおよびポリオールに加えて、典型的な添加剤および他の助剤(例えば、顔料、充填材、流れ制御剤、消泡剤、触媒)を組成物に添加できる。
【実施例】
【0031】
薬品
Desmodur(登録商標)N 3300:ヘキサメチレンジイソシアネートに基づいたイソシアヌレート、ドイツ国レーフエルクーゼン在Bayer MaterialScience AG製
Bayhydrol(登録商標)D 270:ヒドロキシル含有水性ポリエステル分散体、ドイツ国レーフエルクーゼン在Bayer MaterialScience AG製
Additol XW 395:流れ制御助剤/消泡剤、米国セントルイス在UCB Chemicals社製
Surfynol 104:流れ制御助剤/消泡剤、ドイツ国ハッティンゲン在Air Products社製
ヒドロキシピバリン酸:スウェーデン国パーストープ在Perstorp Specialty Chemicals AB製
【0032】
特に記載のない限り、全てのパーセントは重量による。
特に記載のない限り、全ての分析測定は23℃の温度に基づく。
記載した粘度は、ドイツ国オストフィルデルン在Anton Paar Germany GmbH製回転粘度計を用い、23℃で、DIN 53019に従った回転粘度測定法によって測定した。
特に記載のない限り、NCO含有量は、DIN-EN ISO 11909に従って容量分析で測定した。
記載した粒度は、レーザー相関分光法によって測定した(測定器:Malvern Instr. Limited製Malvern Zetasizer 1000)。
秤量した試料を120℃で加熱することによって、固形分を測定した。一定重量に達したとき、試料を再び秤量し、固形分を計算した。
遊離NCO基のモニタリングを、赤外分光法によって実施した(バンド:2260cm−1)。
【0033】
1)比較実施例1:溶媒としてのNMP中で製造した、本発明に従わない架橋剤分散体
81gのNMP中の214.50g(1.1eq)のDesmodur N 3300を撹拌装置に導入し、この初期導入物を窒素雰囲気下で50℃まで加熱した。60.98g(0.7eq)のブタノンオキシムを約1時間かけて滴加し、一定のイソシアネート値(理論値:6.09%、実測値:6.04%)に達するまで、混合物を80〜90℃で約2時間撹拌した。
【0034】
次いで、5.91g(0.1eq)の1,6−ヘキサンジオールおよび23.60g(0.2eq)のヒドロキシピバリン酸を添加し、イソシアネート基が赤外分光法によってもはや検出されなくなるまで、(約15時間)約90℃の温度で撹拌し続けた。
【0035】
その後、反応混合物を85℃まで冷却し、19.81g(0.220eq)のN,N−ジメチルエタノールアミンを混合し、再び10分間撹拌し、激しく撹拌しながら478.00gの脱イオン水を50℃で混合した。続いて、それを50℃で2時間撹拌し、その後、(約3時間)撹拌しながら室温まで冷却した。
【0036】
得られた分散体は、以下の特性を有していた。
【表1】

【0037】
2)比較実施例2:ブロッキング剤の添加後に連鎖延長剤および親水化剤を添加した、本発明に従わない架橋剤分散体
214.50g(1.1eq)のDesmodur N 3300を撹拌装置に導入し、この初期導入物を窒素雰囲気下で50℃まで加熱した。60.98g(0.7eq)のブタノンオキシムを約1時間かけて滴加し、一定のイソシアネート値(理論値:6.09%、実測値:6.04%)に達するまで、混合物を80〜90℃で約2時間撹拌した。
【0038】
次いで、5.91g(0.1eq)の1,6−ヘキサンジオールおよび23.60g(0.2eq)のヒドロキシピバリン酸を添加し、イソシアネート基が赤外分光法によってもはや検出されなくなるまで、(約15時間)約90℃の温度で撹拌し続けた。
【0039】
その後、反応混合物を85℃まで冷却し、19.81g(0.220eq)のN,N−ジメチルエタノールアミンを混合し、再び10分間撹拌し、激しく撹拌しながら478.00gの脱イオン水を50℃で混合した。続いて、それを50℃で2時間撹拌し、その後、(約3時間)撹拌しながら室温まで冷却した。
【0040】
得られた分散体は、以下の特性を有していた。
【表2】

【0041】
得られた分散体は、貯蔵時、不安定であった;室温で貯蔵した場合も40℃に調節された環境のキャビネット内で貯蔵した場合も、数日以内に、沈澱物が形成された。従って、生成物を塗膜に使用できなかった。
【0042】
3)比較実施例3:ブロッキング剤の添加前に連鎖延長剤および親水化剤を添加した、本発明に従わない架橋剤分散体
214.50g(1.1eq)のDesmodur N 3300を撹拌装置に導入し、この初期導入物を窒素雰囲気下で50℃まで加熱した。5.91g(0.1eq)の1,6−ヘキサンジオールおよび23.60g(0.2eq)のヒドロキシピバリン酸を添加し、一定のイソシアネート値(理論値:6.09%)に達するまで、混合物を80〜90℃で約2時間撹拌した。この添加の間に、反応混合物は高粘度になり、撹拌機の周囲にからみつき、完全な混合物はもはや存在しなかった。
高粘度の結果、実験を継続することができなくなり、中止した。
【0043】
4)比較実施例4:アセトン法による製造で、ブロッキング剤の添加前に連鎖延長剤および親水化剤を添加した、本発明に従わない架橋剤分散体
Desmodur N 3300を100gのアセトンに溶解した以外は、比較実施例2に記載の手順を繰り返した。温度のモニタリングを大気圧でのアセトンの還流によって実施し、約70℃の温度を保った。1,6−ヘキサンジオールおよび23.60g(0.2eq)のヒドロキシピバリン酸を添加してから約2時間後、プレポリマーが撹拌機の周囲にからみついた。100gのアセトンを更に添加したが、プレポリマーを溶解することはできず、実験を中止した。
共溶媒としてアセトンを用いた場合は、所望の架橋剤分散体を得られないことが見出された。
【0044】
5)ブロッキング剤中の連鎖延長剤および親水化剤の溶液を添加した、本発明に従った架橋剤分散体
214.50g(1.1eq)のDesmodur N 3300を撹拌装置に導入し、この初期導入物を窒素雰囲気下で50℃まで加熱した。その中に、60.98g(0.7eq)のブタノンオキシム中5.91g(0.1eq)の1,6−ヘキサンジオールおよび23.60g(0.2eq)のヒドロキシピバリン酸溶液を約1時間かけて滴加した。この滴加は、90℃の温度を超えないような速度で実施した。次いで、イソシアネート基が赤外分光法によってもはや検出されなくなるまで、(約12時間)混合物を90℃で更に撹拌した。
【0045】
その後、反応混合物を85℃まで冷却し、19.81g(0.220eq)のN,N−ジメチルエタノールアミンを混合し、再び10分間撹拌し、激しく撹拌しながら478.00gの脱イオン水を50℃で混合した。続いて、それを50℃で2時間撹拌し、その後、(約3時間)撹拌しながら室温まで冷却した。
【0046】
得られた良好に微分散した黄色分散体は、以下の特性を有していた。
【表3】

【0047】
得られた分散体は、貯蔵時、安定であった;室温で貯蔵した場合も40℃に調節された環境のキャビネット内で貯蔵した場合も、3ヶ月以内は、沈澱物が見られなかった。
【0048】
性能の部
以下の組成のクリアコート材を調製した。クリアコート材を、フィルム製造のために使用した。クリアコート材を室温で10分間乾燥し、次いで165℃で30分間焼付けた。得られたフィルムを性能の観点から評価した。結果を以下の表にまとめる。
【表4】

【0049】
性能試験の過程で、本発明の分散体4)から調製した塗料5)が、流れ、硬度、耐溶剤性および塩水噴霧試験に関して要求を満たすことが見出された。この塗料組成物には、溶媒を添加しなかった。
【0050】
実施例6)は、溶媒を含まないが比較可能な組成物である系を用いており、分散体が本発明の方法によって調製されなければ、許容できる塗料組成物は実現できないことを示している。
【0051】
実施例7)は、比較可能なNMP含有分散体を示す。その技術的塗料特性を、本発明の実施例5の該特性と比較できるが、塩水噴霧試験における塗料膨れ幅が劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリイソシアネート成分のNCO基を、
b)成分a)のNCO基に基づいて50〜90当量%の熱除去性ブロッキング剤、
c)成分a)のNCO基に基づいて10〜45当量%の親水化剤としてのヒドロキシカルボン酸、および
d)任意に、成分a)のNCO基に基づいて0〜15当量%の、イソシアネート反応性基に関して少なくとも二官能性である連鎖延長剤成分
と反応させる、ポリイソシアネート分散体の製造方法であって、まず、成分c)および/またはd)をブロッキング剤b)に溶解し、次いでそれをイソシアネート成分a)に添加し、場合により更なる成分c)を溶けていない状態で添加し、ポリウレタンポリマーを水に分散させる前、間または後に、該ヒドロキシカルボン酸のカルボン酸基を塩基e)で中和する方法。
【請求項2】
イソシアネート成分のNCO基の、他成分のイソシアネート反応性基に対する当量比が、1:0.6〜1:1.5であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分a)として、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づく、ビウレット、イソシアヌレートおよび/またはウレトジオン基を含むポリイソシアネートを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブロッキング剤が、ベンジル−t−ブチルアミン、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、トリアゾールおよび/またはこれらの化合物の混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
親水化剤が、ヒドロキシピバリン酸、乳酸および/またはジメチロールプロピオン酸であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られた分散体。
【請求項7】
請求項6に記載の分散体を用いて得られた塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の塗膜で被覆された基材。
【請求項9】
請求項6に記載のポリイソシアネート分散体を含むバインダー組合せ。

【公表番号】特表2009−517507(P2009−517507A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542635(P2008−542635)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011118
【国際公開番号】WO2007/062760
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】