説明

ブロックポリマー、金属とブロックポリマーの複合体およびデバイス

【課題】金属類とブロックポリマーとが結合した複合体、および前記複合体は、金属類を介した電気的結合が可能であり、ブロックポリマーの高分子鎖を介して対となった電極を設置したデバイスを提供する。
【解決手段】側鎖に、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類の少なくとも一つと結合する有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造を少なくとも一部に有し、かつ前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がらせん状であるブロックポリマー。前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合している金属とブロックポリマーの複合体。前記ブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなる電極とからなるデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合しているデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマー、金属とブロックポリマーの複合体およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子回路の集積化が進む中で有機半導体等の導電性有機物を用いた有機デバイスが注目を浴びている。有機デバイスは曲げることが可能であるといった利点や、また溶液からの製膜が可能になると安価にデバイス作製が出来、大面積でのデバイス作製が可能である利点がある。
【0003】
従来の有機半導体は、ペンタセンのような低分子系の有機半導体とポリチオフェンなどの高分子系半導体がある。高分子系の半導体は特に溶液プロセスとの親和性がよいため大面積のデバイス作製、低価格でのデバイス作製用の導電性材料として注目されている。
【0004】
有機高分子は通常糸鞠状になっているが、置換ポリアセチレンやポリジアセチレン、ポリフェニレンエチニレン等のπ共役高分子は一般に剛直な分子である。また、非剛直な高分子においても結晶構造や配向状態においては糸鞠状ではなく、伸びきり鎖に近い形状を示す。このような直線状の分子、特にπ共役高分子はその両端を電極に結合することで原理的に一分子での電子デバイスとして機能することが期待できる。ここで問題となるのが有機分子と電極との結合である。現状の有機デバイスでは有機分子上に電極として金属を蒸着あるいは電極上に有機分子を製膜することで物理的な接触によりある程度の電気的結合を実現しているが、この分子と電極と界面での電気的結合が有機デバイスの大きな課題となっている。
【0005】
そこで共役高分子と電極とを物理的接触ではなく化学的に結合させることにより、より強固に共役高分子の端部と電極とを結合させ、電気的結合に対する界面の影響を抑える技術が必要とされている。
【0006】
有機分子と電極とを結合させる技術として金−チオール結合を利用した系が報告されている。例えば、特許文献1では、側鎖にチオールを導入した高分子の応用例としては、電極にアクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマーの側鎖にチオールを導入した導電材料を用いた有機電池への応用が記載されている。
【特許文献1】特開平6−163049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、金−チオール結合の電気的な結合についてはまだ不明な点が多く、有機分子と電極とを結合する方法が求められている。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、金属類と結合するブロックポリマーを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、金属類とブロックポリマーとが結合した複合体を提供するものである。
また、本発明は、前記複合体は、金属類を介した電気的結合が可能であため、ブロックポリマーの高分子鎖を介して対となる電極を設置することにより、複数の電極間を一つの分子が橋架けするデバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するブロックポリマーは、側鎖に、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類の少なくとも一つと結合する有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造を少なくとも一部に有し、かつ前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がらせん状であることを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決する金属とブロックポリマーの複合体は、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類とからなる複合体であって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなる電極とからなるデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。
【0012】
また、上記の課題を解決するデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなるナノ粒子と、二つ以上の電極とを有するデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類からなるナノ粒子と結合し、かつ前記ブロックポリマーおよび前記金属類からなるナノ粒子が電極と接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、金属類と結合するブロックポリマーを提供できる。
また、本発明は、金属類とブロックポリマーとが結合した複合体を提供できる。
また、本発明は、前記複合体は、金属類を介した電気的結合が可能であため、ブロックポリマーの高分子鎖を介して対となる電極を設置することにより、複数の電極間を一つの分子が橋架けするデバイスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るブロックポリマーは、側鎖に、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類の少なくとも一つと結合する有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造を少なくとも一部に有し、かつ前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がらせん状であることを特徴とする。
【0015】
前記有機官能基がチオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオアセチル基、イソシアニド基、カルボン酸基もしくはリン酸基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
前記金属が、金、白金、シリコン、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化ケイ素または金と亜鉛との合金であることが好ましい。
前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がπ共役高分子からなることが好ましい。
【0017】
本発明に係る金属とブロックポリマーの複合体は、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類とからなる複合体であって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。
【0018】
前記ブロックポリマーがポリアセチレンであることが好ましい。
前記金属類がナノ粒子であることが好ましい。
本発明に係るデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなる電極とからなるデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。
【0019】
前記ブロックポリマーがポリアセチレンであることが好ましい。
本発明に係るデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなるナノ粒子と、二つ以上の電極とを有するデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類からなるナノ粒子と結合し、かつ前記ブロックポリマーおよび前記金属類からなるナノ粒子が電極と接続していることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、金属や金属酸化物、合金等の導電性表面と結合性を有する有機官能基、たとえば金と結合性のチオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオアセチル基、イソシアニド基、カルボン酸基もしくはリン酸基等をブロックポリマーの一部に導入することで導電性表面との結合を向上させたブロックポリマーが得られることを見出した。
【0021】
また、このブロックポリマーと金属類とを接触さ結合させることで、金属とブロックポリマーの複合体が得られることを見出した。この複合体においてはチオールなどの官能基が一箇所ではなく、複数個金属類と結合するため、機械的にも電気的にもより強い結合が期待できる。
【0022】
高分子半導体はFET等への応用を目指し、国内外で広く研究されている。高分子中のキャリア移動は分子内と分子間に分けることができ、分子内では極めて高速に移動しているが、分子間のホッピング移動がキャリア移動の律速になっていると考えられている。そのため、一分子のみでデバイスを作成すれば非常に高速なキャリア移動を実現できると考えられるが、現状ではまだ実現されていない。
【0023】
本発明の金属とブロックポリマーの複合体によれば導電キャリアのチャネル部分であるブロックポリマーの一部分が金属類の表面と化学的に結合するため、一分子の任意の位置に電極を付与することができ、ブロックポリマー一分子で動作するデバイスを実現することが可能である。また、導電性表面と結合性の部分を一分子内に複数付与することで二端子、三端子の分子デバイスとして応用できるという利点がある。
【0024】
次に、本発明のブロックポリマーについて説明する。本発明に係るブロックポリマーは、側鎖に、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類の少なくとも一つと結合する有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造を少なくとも一部に有することを特徴とする。
【0025】
図1は、本発明のブロックポリマーの一実施態様を示す概略図である。図1において、102、103は、金属類と結合性の良い有機官能基を側鎖に導入したブロック構造、101は有機官能基を持たない高分子鎖を示す。図1(A)のように金属類と結合性の良い有機官能基を繰返し構造を側鎖に導入したブロック構造が一箇所でも良いし、図1(B)のように二箇所以上に配置されても良い。金属類と結合性の良い有機官能基を繰返し構造を側鎖に導入したブロック構造は任意の箇所に配置されて良いが、好ましくは末端に配置されたほうが良い。この際、ブロック構造102と103は同じ構造でも良いし、異なる構造でも良い。
【0026】
金属類としては、金、白金、シリコンのような金属やITO、酸化ケイ素のような金属酸化物、又は金と亜鉛との合金等が挙げられる。また、固体の形状として特に限定されるものはないが、膜状や粒子状などの形状が挙げられる。
【0027】
有機官能基としては、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオアセチル基、イソシアニド基、カルボン酸基もしくはリン酸基等が挙げられる。
また、金あるいは金と亜鉛との合金に結合性の良い有機官能基としては、チオール基(−SH)、スルフィド基(−S−R)、ジチオール基(−S−S−R)、チオアセチル基(−C(O)−S−R)が挙げられる。金および白金に結合性の良い官能基としては、イソシアニド基(−CN)が挙げられる。シリコンに結合性の良い官能基として、ハロゲン化シリル基(X3−Si−、X2−Si(R)−、X−Si(R2)−)、アルデヒド基(−CHO)、ビニル基(H2C=CH−)が挙げられる。ITOに結合性の良い官能基としては、カルボン酸基(−C(O)−O−H)、リン酸基(−P(O)2−O−H)が挙げられる。酸化ケイ素に結合性の良い官能基としては、トリアルコキシシラン((RO)3−Si−)が挙げられる。ケイ素に結合性の良い官能基としては、ハロゲン化シリル基(XR2−Si−)等が挙げられる。ただし、Rはアルキル鎖、Xはハロゲン原子を示す。
【0028】
ブロックポリマーは、ブロック構造の高分子主鎖がらせん状であるブロックコポリマーが挙げられる。繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がπ共役高分子からなることが好ましい。
【0029】
ブロックポリマーの製造方法は、特に限定されるものは無いが、例えば一置換アセチレンのリビング重合触媒である単核ロジウム錯体を用いてポリ置換アセチレンを成長させた後、特定固体表面結合性官能基を導入したアセチレンモノマーを添加することで製造できる。例えば、フェニルアセチレンとメルカプトフェニルアセチレンをアセチレンモノマーを用いてブロック共重合することでフェニル基とメルカプトフェニル基を側鎖に有するポリ((フェニルアセチレン)−co−(メルカプトフェニルアセチレン))ブロックポリマーを製造することができる。
【0030】
ブロックポリマーの製造に用いられるモノマーとしては、アセチレンモノマーが挙げられる。
これらの重合溶媒としては、クロロホルムやテトラヒドロフラン、トルエンのような非極性溶媒だけでなく、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒が使用できる。これらの溶媒は単独もしくは混合して用いることができる。
【0031】
下記の式(1)は置換アセチレンの重合触媒の一例を示す。
【0032】
【化1】

【0033】
次に、本発明に係る金属とブロックポリマーの複合体は、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類とからなる複合体であって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。図2は、本発明に係る金属とブロックポリマーの複合体の一実施態様を示す概略図である。図2において、例えば金属、金属酸化物、合金のいずれかのナノ粒子と、そのナノ粒子と結合する有機官能基を有するブロックポリマーとを接触させると、図2のようなナノ粒子203がブロックポリマー201内の特定のブロック202に結合した複合体が得られる。前記ブロックポリマーがポリアセチレンであることが好ましい。
【0034】
この複合体は金属、金属酸化物、合金のナノ粒子を介した電気的結合により、分子と外部電極との間に良好なコンタクトがとれる。また、バルクにおいてもナノ粒子間の電気的結合により分子−分子間で良好なコンタクトがとれ、バルク全体の電気特性が向上する。
【0035】
次に、本発明に係るデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなる電極とからなるデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする。
【0036】
特定の有機官能基を有するブロックポリマーが、その有機官能基と結合性の固体表面を有する基質に被覆したデバイスは、例えばブロックポリマーを良溶媒の有機溶媒に溶解させ、その溶液と基質とを混合し、静置することで作成できる。
【0037】
図3AおよびBは、本発明に係る本発明に係るデバイスの一実施態様を示す概略図である。図3Aにおいて、例えばチオール基等の金に結合性の側鎖をブロック構造に有するブロックポリマーを作成し、得られたブロックポリマーを良溶媒に溶解させ、金表面を有する基質、例えば片面を金蒸着したマイカ基板等を浸漬させることで、金とチオール基が結合し、基板301の表面に置換ポリアセチレンが集積した膜状のデバイスが得られる。301は基板、302は金属類、303はブロックポリマー、304は金属類と結合性のブロック部、305は電極を示す。
【0038】
このようなデバイスは電子デバイスとして利用できる。例えば、図3Aのようなデバイスの上部から真空蒸着により金薄膜を製膜すると、図3Bのような構造のデバイスが得られる。このデバイスでは上下の電極にブロックポリマーが挟まれたサンドイッチ構造をとっており、各々のポリマー分子が上下電極に結合しているため、分子鎖間でのホッピングの無いデバイスとなる。
【0039】
また、本発明に係るデバイスは、上記のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなるナノ粒子と、二つ以上の電極とを有するデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類からなるナノ粒子と結合し、かつ前記ブロックポリマーおよび前記金属類からなるナノ粒子が電極と接続していることを特徴とする。
【0040】
図4A乃至Cは、本発明に係る本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。図4Aは導電性表面パターンである。401は基板、402は絶縁膜、403,404は金属類からなる電極である。図1(A)に示すようなブロックポリマーの溶液に、図4Aのような導電性表面パターン電極基板を浸漬させることで、導電性表面と結合性ブロック部分が結合し、ある確率で図4Bのような電極構造が得られる。基板処理や外力等による配向処理を行うことでその確率は更に向上する。この電極構造では金属類と結合性のブロック部406と電極403が結合し、対電極である404に対してはブロックポリマーの金属類に対して非結合性のブロック部405が静電的に接触する。
【0041】
また、図2あるいは図3で表される金属類と結合性のブロック部を二つ有するブロックポリマーの溶液に、図4Aのような導電性パターン電極基板を浸漬させることで電極と、金属類と結合性のブロック部が結合し、確率的に図4Cのようなデバイス構造が得られる。この電極構造では金属類と結合性のブロック部406と電極403が結合し、対電極である404に対してもう一つの金属類と結合性のブロック部407が結合する。
【実施例】
【0042】
以下に本発明における置換ポリアセチレンの作成方法及び置換ポリアセチレンを金属電極上に被覆させたデバイスの作製方法について説明する。
以下は側鎖にチオール基を導入したポリフェニルアセチレンのコポリマー作成の実施例、および得られたコポリマーを用いたデバイス構造の実施例である。
【0043】
実施例1
(ロジウム錯体触媒の調製方法)
減圧及び窒素置換後密閉した試験管にトリフェニルホスフィン0.1モルとロジウム(ノルボルナジエン)塩化物二量体0.01モルを入れ、溶媒としてトルエン5mLを加え、0℃に保った後、1,1’,2−トリフェニルビニルリチウムの濃度8×10-3モル/Lのトルエン溶液5mLを入れ、0℃で1時間攪拌することで[ロジウム(ノルボルナジエン)((1,1’,2−トリフェニルビニル)(トリフェニルホスフィン))錯体溶液が得られる。
【0044】
(ポリアセチレンコポリマーの合成方法)
ナス型フラスコに上記方法で得られた濃度1.0×10-3モル/Lのロジウム錯体溶液10mlを入れ、4−メルカプトフェニルアセチレン0.3gとトルエン15mlの混合溶液を注入することにより重合反応を開始させる。反応は20℃で2時間行い、重合が充分進行した後に4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン0.3gを注入し、更に重合反応を行う。反応は20℃で2時間行い、得られるポリマーをメタノールで洗浄、濾過した後、24時間真空乾燥することで目的のポリアセチレン、ポリ((4−メルカプトフェニルアセチレン)−co−(4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン))が得られる。
【0045】
(デバイスの作製方法)
得られたポリ((4−メルカプトフェニルアセチレン)−co−(4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン))をトルエンに溶解させ、10-3g/Lの溶液を調製する。この溶液に片面に金薄膜502を有するマイカ基板501を浸漬させ、1時間放置した後、トルエンで洗浄、乾燥することで図5Aに示すように基板501上に(4−メルカルトフェニルアセチレン)ブロック504が金薄膜502に結合したポリアセチレンブロックポリマー503とマイカ基板の複合デバイスが得られる。
【0046】
実施例2
(トリブロックコポリマー合成方法)
ナス型フラスコに上記方法で得られた濃度1.0×10-3モル/Lのロジウム錯体溶液10mlを入れ、4−メルカプトフェニルアセチレン0.1gとトルエン3.3mlの混合溶液を注入することにより重合反応を開始させる。反応は20℃で30分行い、重合が充分進行した後に4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン0.3gとトルエン3.3mlの混合溶液を注入し、更に重合反応を20℃で1時間行う。重合が充分進行した後に更に4−メルカプトフェニルアセチレン0.1gとトルエン3.3mlの混合溶液を注入し、更に重合反応を20℃で1時間行い、得られるポリマーをメタノールで洗浄、濾過した後、24時間真空乾燥することで目的のポリアセチレン、ポリ((4−メルカプトフェニルアセチレン)−co−(4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン)−co−(4−メルカプトフェニルアセチレン))が得られる。
【0047】
(デバイスの作製方法)
得られたポリ((4−メルカプトフェニルアセチレン)−co−(4−t−ブチルアミドフェニルアセチレン)−co−(4−メルカプトフェニルアセチレン))をトルエンに溶解させ、10-3g/Lの溶液を調製する。この溶液に片面に金蒸着したマイカ基板501を浸漬させ、1時間放置した後、トルエンで洗浄、乾燥することで図5Bに示すような基板上にポリアセチレンを結合させた複合デバイスが得られる。
【0048】
実施例3
(ナノ粒子−ポリマーデバイスの作製方法)
上記実施例2の方法で得られたポリフェニルアセチレンコポリマーをトルエンに溶解させ、10-3g/Lの溶液を調製する。この溶液に金ナノ粒子の分散液を加え、1時間放置した後、トルエンで洗浄、乾燥することで、図6に示すような金ナノ粒子603と、(4−メルカルトフェニルアセチレン)ブロック602が結合したポリアセチレンブロックポリマー601との複合デバイスが得られる。
【0049】
実施例4
(デバイス構造の作成方法)
本実施例によるデバイスは、図7で表される表面に膜厚100nmの金薄膜702を蒸着したマイカ基板701上に形成される。この金基板上に上記実施例2の方法で置換ポリアセチレン膜703を作製し、その上に金薄膜704を真空蒸着することで図7のような二つの金薄膜電極に置換ポリアセチレンが挟まれたデバイス構造が作製できる。
【0050】
実施例5
(デバイス構造の作成方法)
本実施例によるデバイスは、図8で表されるように表面に膜厚100nmの熱酸化膜802を有したハイドープのSi基板801に形成される。803と804は電子ビーム露光を用いたリソグラフィーにより形成した金電極であり、電極間の距離はおよそ50nmである。本電極間に上記実施例1により得られたコポリマーをクロロホルム1.0mlに溶解させ、1.0×10-3重量%の溶液を作成する。この溶液をシリコン基板上にパターニングした金電極上にスピンコート法で塗布することでコポリマー層805を形成する。本実施例で用いるコポリマーの長さはおよそ100nmであり、多数の分子が金電極803と804の両方に接触することになり、金電極803と804の間での分子間のホッピング伝導が抑制される。
【0051】
本デバイスではSi基板801がゲート電極として動作し、801への電圧印加により金電極803と804の間に流れる電流を制御する。
実施例6
上記実施例4のポリアセチレンを実施例3のナノ粒子―ポリアセチレン複合体とした以外は実施例4と同様にして、ナノ粒子−ポリアセチレン複合体のデバイスを作製する。
【0052】
実施例7
上記実施例5のポリアセチレンを実施例3のナノ粒子―ポリアセチレン複合体とした以外は実施例5と同様にして、ナノ粒子−ポリアセチレン複合体のデバイスを作製する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の金属類とブロックポリマーとが結合した複合体は化学的に結合するため、金属類を介した電気的結合が可能である。そのため、ブロックポリマーの高分子鎖を介した対となる電極を設置することにより複数の電極間を一つの分子が橋架けする有機分子デバイスに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のブロックポリマーの一実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明に係る金属とブロックポリマーの複合体の一実施態様を示す概略図である。
【図3A】本発明に係るデバイスの一実施態様を示す概略図である。
【図3B】本発明に係るデバイスの一実施態様を示す概略図である。
【図4A】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図4B】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図4C】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図5A】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図5B】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図6】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図7】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【図8】本発明に係るデバイスの他の実施態様を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
101 金属類と結合性の有機官能基を持たない高分子鎖
102、103 金属類と結合性のブロック部
201 ブロックポリマー
202 金属類と結合性のブロック部
203 金属ナノ粒子
301 基板
302 金属類
303 ブロックポリマー
304 金属類と結合性のブロック部
305 電極
401 基板
402 絶縁膜
403、404 電極
405 金属類に対して非結合性のブロック部
406、407 金属類と結合性のブロック部
501 マイカ基板
502 金薄膜
503 ポリアセチレンブロックポリマー
504 (4−メルカルトフェニルアセチレン)ブロック
601 ポリアセチレンブロックポリマー
602 (4−メルカルトフェニルアセチレン)ブロック
603 金ナノ粒子
701 マイカ基板
702 金薄膜
703 置換ポリアセチレン膜
704 金薄膜
801 Si基板
802 熱酸化膜
803、804 金電極
805 コポリマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類の少なくとも一つと結合する有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造を少なくとも一部に有し、かつ前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がらせん状であることを特徴とするブロックポリマー。
【請求項2】
前記有機官能基がチオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオアセチル基、イソシアニド基、カルボン酸基もしくはリン酸基から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項3】
前記金属が、金、白金、シリコン、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化ケイ素または金と亜鉛との合金であることを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項4】
前記有機官能基を有する繰返し単位のブロック構造の高分子主鎖がπ共役高分子からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のブロックポリマー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類とからなる複合体であって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とする金属とブロックポリマーの複合体。
【請求項6】
前記ブロックポリマーがポリアセチレンであることを特徴とする請求項5に記載の金属とブロックポリマーの複合体。
【請求項7】
前記金属類がナノ粒子であることを特徴とする請求項5または6に記載の金属とブロックポリマーの複合体。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなる電極とからなるデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類と結合していることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
前記ブロックポリマーがポリアセチレンであることを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載のブロックポリマーと、金属、金属酸化物および合金から選ばれる金属類からなるナノ粒子と、二つ以上の電極とを有するデバイスであって、前記ブロックポリマーのブロック構造の一部が前記金属類からなるナノ粒子と結合し、かつ前記ブロックポリマーおよび前記金属類からなるナノ粒子が電極と接続していることを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−57492(P2009−57492A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227018(P2007−227018)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】