説明

ブロック壁体への線・管類配設方法

【課題】 ブロック壁体に線・管類を配設する場合、ブロック壁体に対して穴開け加工や穴埋め作業等を専門業者でない線・管類の配設業者が行うのは非常に面倒であり、しかも穴埋めの仕上がりが専門業者ほどきれいにならない。
【解決手段】 ブロック壁体10を構成する任意のブロック1の前壁11部分を切断して該ブロック1を分離前壁11Aと前壁分離ブロック1Aとに分離しておき、前壁分離ブロック1Aをブロック壁体の一部として線・管類配設位置に組込んでブロック壁体10を構築し、続いて前壁分離ブロック1Aが位置する前面開口部19から線・管類4をブロック壁体10内に配設した後、前面開口部19に分離前壁11Aを組付けるようにすることで、ブロック壁体の構築から線・管類の配設までの作業をブロック施工業者だけで行え、且つブロック壁体外面の補修もブロック施工業者が連続して行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多数の型枠状ブロックを上下・左右に組積みして構築したブロック壁体内に電線や管等の線・管類を配設するためのブロック壁体への線・管類配設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁体として、多数の型枠状ブロックを上下・左右に組積みして構築したブロック壁体がある。この種のブロック壁体に使用される各ブロックは、少なくとも前壁と後壁を有し且つ該前後各壁を少なくとも2つの連結壁で連結して、内部に縦向きの空間部を有する状態で成形されている。尚、この種の型枠状ブロックとして、前壁と後壁の間に1つ又は2つの中間壁を設けた3重壁や4重壁としたものもある。そして、この型枠状ブロックを使用して構築したブロック壁体には、上下に連続する縦空間部が形成されている。
【0003】
又、この種の型枠状ブロックで構築された建築物壁体には、ブロック壁体内に電線、水管(又はガス管)等の線・管類を配設することがあるが、この線・管類は、ブロック壁体を内外に貫通させたりあるいは屋外側からブロック壁体内の縦空間部を通して屋内側に導いたりしている。
【0004】
ところで、ブロック壁体内に線・管類を配設するのに、各ブロックの組積み作業と線・管類の配設作業とを同時進行的に行うのは、非常に面倒であり、且つブロックの組積み作業と線・管類の配設作業とは作業する業者が異なるので、上記両作業を同時進行することはほとんど行われていない。
【0005】
そして、従来では、ブロック壁体に対して線・管類を配設するには、各ブロックを組積みしてブロック壁体を構築した後に、そのブロック壁体に線・管類を配設するようにしている。因に、線・管類をブロック壁体の内外に貫通させて配設する場合には、所定位置のブロックに壁体内外に貫通する貫通穴を形成して、線・管類を該貫通穴を通して配設し、他方、線・管類(フレキシブルなものに限る)を屋外側からブロック壁体内(縦空間部内)を通して屋内側に導く場合には、所定位置のブロックの前壁(屋外側の壁面)に穴を開けてその穴から線・管類を縦空間部内に進入させた後、ブロック壁体上部から屋内側に導く。又、線・管類をブロック壁体に配設した後には、ブロック壁体の前面に形成した穴(線・管類が挿通されている)を塞ぐ必要がある。
【0006】
尚、ブロック壁体内に線・管類を配設した公知文献として、例えば特許文献1(特開2001−107485号公報の図3)に示されるものがある。この特許文献1に記載された線・管類の配設構造では、ブロック壁体内に形成された副空洞(空間部)に線・管類を配設しているが、該線・管類を副空洞にどのようにして配設するのかについての記載はない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−107485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、完成させたブロック壁体に線・管類を配設するのに、従来では、線・管類の配設業者が所定位置のブロックに穴を開けて、その穴からブロック壁体に線・管類を配設し、その後に穴部分を塞ぐ(穴埋めする)、という作業を行っているが、ブロック壁体に対して線・管類配設用の穴開け加工や線・管類配設後の穴埋め作業等を専門業者でない線・管類の配設業者が行うのは非常に面倒であり、しかも穴埋めの仕上がりが専門業者ほどきれいにならない(美観を損ねる)という問題があった。
【0009】
そこで、本願発明は、ブロック壁体に線・管類を配設する作業を簡単に行え、且つその線・管類配設作業をその専門職でないブロック施工業者だけで行えるようにしたブロック壁体への線・管類配設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、内部に空間部を有する型枠状のブロックを上下・左右に組積みして構築したブロック壁体内に電線や管等の線・管類を配設するためのブロック壁体への線・管類配設方法を対象にしている。
【0011】
又、本願のブロック壁体に使用されるブロックは、少なくとも前壁と後壁とを有し、該前後各壁間に縦向きの空間部を有したものであるが、前壁と後壁との間に中間壁(1つ又は2つ)を有したものも採用可能である。
【0012】
本願請求項1の発明
そして、本願請求項1の発明のブロック壁体への線・管類配設方法は、次のようにして行われる。
【0013】
まず、ブロック壁体を構成する任意のブロックの前壁部分を切断して該ブロックを分離前壁と前壁分離ブロックとに分離しておく。分離前壁と前壁分離ブロックとに分離される元のブロックは、ブロック壁体を構成する通常のブロックであり、その通常のブロックの前壁部分をコンクリートカッターで切断することで、該前壁を分離させることができる。尚、前壁を分離させるブロックは、ブロック壁体における線・管類の取込み位置に位置させるものであり、線・管類をブロック壁体の複数箇所から取込む場合には、それと同数のブロックに前壁分離加工を施しておく。又、線・管類の供給側がブロック壁体の屋外側に設置されている場合には、分離前壁のほぼ中央部に線・管類挿通用の貫通穴を形成しておく。
【0014】
そして、上記した前壁分離ブロックと通常の各ブロックとを使用してブロック壁体を構築するが、前壁分離ブロックは、線・管類の基端側が取込まれる位置において前壁を切断した前面開口部が屋外側(前面)に向く姿勢で取付けられる。又、前壁分離ブロックの前面開口部の奥側には、各ブロックの空間部が上下に連続する縦空間部が位置している。尚、前壁分離ブロックは、通常のブロックの前壁がない状態のものであり、それらのブロックを使用してブロック壁体に組積みするのに特に問題は生じない。
【0015】
次に、前壁分離ブロックが位置する前面開口部から線・管類をブロック壁体内に配設する。ところで、線・管類の配設構造として、該線・管類をブロック壁体の内外(厚さ方向)に貫通させるものでは、前壁分離ブロックを組付ける前に、予め前壁分離ブロックの残りの縦壁(後壁や中間壁)に線・管類挿通用の貫通穴を形成しておくとよい。尚、この貫通穴は、ブロック壁体を構築した後に前壁分離ブロックの残りの縦壁にドリルで穴開けしてもよい。そして、線・管類を屋外側から貫通穴に通すことで横向き貫通状態で配設する。他方、線・管類(フレキシブルなものに限る)を屋外側からブロック壁体内(縦空間部内)を通して屋内側に導く場合には、前壁分離ブロックに特別な加工を施す必要がなく、前壁分離ブロックの前面開口部から線・管類を縦空間部内に進入させていき、線・管類の先端側をブロック壁体上部から屋内側に導いて配設する。
【0016】
その後(線・管類の配設後)、前壁分離ブロックの前面開口部に先に切断した分離前壁を組付けて、該前面開口部を塞ぐ。このとき、線・管類の供給側がブロック壁体の屋外側に設置されている場合には、ブロック壁体側に配設した線・管類の基端側を分離前壁の貫通穴に通して、ブロック壁体の屋外側に露出させておく。又、前面開口部の内周面とそこに組付けた分離前壁の外周面との間には、目地モルタルを充填して該分離前壁を前面開口部内に固定する。尚、分離前壁の貫通穴と線・管類との隙間は、適宜の方法で塞いでおく(例えば筒状のスペーサーを挿入したり充填剤を充填する)。
【0017】
ここまでのブロック壁体の組立て作業及び線・管類の配設作業は、線・管類の接続等の高度の技術は不要なので、ブロック施工業者が単独で行うことができる。尚、線・管類の屋外側及び屋内側の最終接続は、専門業者に依頼するとよい。
【0018】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、上記請求項1のブロック壁体への線・管類配設方法において、前壁分離ブロックの前面開口部に組付けられる分離前壁は、前面開口部の天井面及び底面に対してそれぞれピンにより結合させるようにしている。
【0019】
この場合、分離前壁の上面及び下面に予めそれぞれピン嵌挿穴を形成しておく一方、前面開口部の上下にある上側ブロックの前壁下面(前面開口部の天井面となる)及び下側ブロックの前壁上面(前面開口部の底面となる)にもそれぞれピン嵌挿穴を形成しておき(それぞれ分離前壁側のピン嵌挿穴に対応する)、分離前壁とブロック前壁における上下対応位置にある2つのピン嵌挿穴に跨がってそれぞれピンを介設させるようにするとよい。尚、このピンによる結合部は、分離前壁の上面及び下面においてそれぞれ左右に2箇所ずつ設けるとよい。
【発明の効果】
【0020】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の発明のブロック壁体への線・管類配設方法によれば、次のような効果がある。
【0021】
まず、多数のブロックを組積みして構築されたブロック壁体における線・管類取込み位置に、予め前壁を切断した前壁分離ブロックによる前面開口部が形成されており、その前面開口部から線・管類をブロック壁体側に配設し得るので、線・管類の配設作業時にブロック壁体に対して穴開け加工等の面倒な工事を行う必要がなく、従って、ブロック壁体に対する線・管類の配設作業が簡単となる。
【0022】
又、線・管類を上記前面開口部からブロック壁体内に設置するだけなら、専門技術を要することなく、例えばブロック施工業者でも簡単に行うことができ、そのブロック施工業者がブロック壁体を構築するのに続いて線・管類の配設作業を行うことができ、作業の能率が格段に向上する。
【0023】
さらに、線・管類の配設後にブロック壁体の前面開口部を分離前壁で塞ぐようにしているが、この作業も専門業務であるブロック施工業者が連続して行うので、ブロック壁体の外面を難無くきれいに仕上げることができる。
【0024】
又、前壁分離ブロックと分離前壁とは、通常のブロックの前壁部分を切断することで形成できるので、該前壁分離ブロック及び分離前壁を特別に成形しておく必要がない(型枠で製造するブロック種類が多くならない)。
【0025】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、上記請求項1のブロック壁体への線・管類配設方法において、分離前壁を前面開口部の天井面及び底面に対してそれぞれピンにより結合させるようにしている。
【0026】
従って、この請求項2の発明では、上記請求項1の効果に加えて、後で組付けられる分離前壁であっても、その取付け強度が強くなり、地震等による大きな振動があっても後付けした分離前壁が脱落するというトラブルを未然に防止できるという効果がある。
【実施例】
【0027】
図1〜図10を参照して本願の実施例を説明すると、図1〜図8には第1実施例、図9〜図10には第2実施例のブロック壁体への線・管類配設方法を示している。
【0028】
尚、本願でブロック壁体10に配設すべき線・管類4としては、電線や水管やガス管等があるが、図示の各実施例では、線・管類4として水管を採用しており、以下の説明では、線・管類4を単に水管ということがある。
【0029】
図1〜図8に示す第1実施例
第1実施例のブロック壁体への線・管類配設方法では、図1に示す2種類の型枠状ブロック1,2を使用して、図3及び図4に示すような家屋の外壁となるブロック壁体10を構築する。尚、以下の説明では、ブロック壁体10において、屋外側を前面側といい、屋内側を後面側ということがある。
【0030】
図1に示す各ブロック1,2は、それぞれコンクリート製で、左右長さの異なる3つの縦壁11〜13(又は21〜23)を有し、それらの縦壁11〜13(21〜23)を前後に所定間隔をもって左右2つの連結壁で連結して一体成形している。尚、図1の各ブロック1,2では、高さがそれぞれ15cm、奥行き幅が30cm程度のものを採用している。
【0031】
図1における符号1のブロックは、左右長さが20cmの前壁11と、左右長さが40cmの後壁12と、左右長さが30cmの中間壁13とを有している。前壁11の後面と中間壁13の前面との間には前後幅が5cm程度の空間部14を有しており、中間壁13の後面と後壁12の前面との間には前後幅が10cm程度の空間部15を有している。
【0032】
図1における符号2のブロックは、左右長さが40cmの前壁21と、左右長さが20cmの後壁22と、左右長さが30cmの中間壁23とを有している。前壁21の後面と中間壁23の前面との間には前後幅が5cm程度の空間部24を有しており、中間壁23の後面と後壁22の前面との間には前後幅が10cm程度の空間部25を有している。
【0033】
尚、上記符号1及び符号2の各ブロックにおいて、前壁(11,21)、後壁(12,22)、中間壁(13,23)の各肉厚さは約5cmである。又、各ブロック1,2の各空間部14,15(24,25)はそれぞれ上下に貫通している。
【0034】
そして、図1に示す2種類のブロック1,2を左右に並置すると、各ブロック1,2の前壁同士(11と21)、中間壁同士(13と23)、後壁同士(12と22)がそれぞれ連続状態で接合するようになっている。尚、以下の説明では、符号1のブロックを前壁小形側ブロックといい、符号2のブロックを前壁大形側ブロックということがある。
【0035】
この実施例では、それぞれ同数の前壁小形側ブロック1,1・・と前壁大形側ブロック2,2・・を使用して、図3に示すような千鳥積み状のブロック壁体10を構築するが、図3〜図8に示す第1実施例の施工例では、ブロック壁体10の屋外側外面が供給側水管(既設水管)4Aの近傍に位置するように設置される。
【0036】
ところで、本願実施例では、ブロック壁体への線・管類配設方法を行うために、前壁小形側ブロック1の1つに、前壁11部分を切断して、図2に示すように前壁分離ブロック1Aと分離前壁11Aとに分離したものを使用する。この前壁11の分離は、前壁小形側ブロック1を、図1のA−A線部分で切断して、前壁11を鎖線図示(符号11A)するように分離させる。尚、この前壁11の分離加工は、ブロック施工業者であれば、コンクリートカッターを用いて容易に行うことができる。
【0037】
第1実施例の線・管類配設方法は、図5〜図8に示すように、水管4をブロック壁体10の厚さ方向に貫通させて配設するものである。そこで、第1実施例で使用される前壁分離ブロック1Aには、図2に示すように、予め後壁12及び中間壁13にそれぞれ水管挿通用の貫通穴12a,13aを形成しておくとともに、分離前壁11Aにも水管挿通用の貫通穴18を形成しておく。尚、これらの穴開け加工は、ブロック施工業者であれば、ドリルを用いて簡単に行うことができる。
【0038】
又、この第1実施例では、分離前壁11Aを後述する前面開口部19に組付けるのに、上下2箇所ずつピン結合させるようにしているが、結合用のピン6,7としては、ステンレス鋼製で直径が約10mm、長さが約30mmのものが使用される。他方、分離前壁11Aの上面部及び下面部には、それぞれ2つのピン嵌挿穴16,16、17,17を形成している一方、前面開口部19の天井面となる上側ブロック2の前壁21の下面部及び前面開口部19の底面となる下側ブロック2の前壁21の上面部にそれぞれ2つのピン嵌挿穴26,26、27,27を形成している。そして、各ピン6,6、7,7は、後述するように(図6〜図8に示すように)ブロック壁体10の前面開口部19に分離前壁11Aを組込んだ状態で、上下の各ピン嵌挿穴(26と16、17と27)に跨がって配設されるが、そのピンの配設は次の構成及び方法によって可能にしている。
【0039】
即ち、分離前壁11Aの上面部に形成した2つのピン嵌挿穴16,16、及び下側ブロック2の前壁上面部に形成した2つのピン嵌挿穴27,27は、それぞれピン径より僅かに大径でピン長さ(約30mm)の半分長さよりやや短い深さ(例えば10〜12mm程度の深さ)となっている。他方、分離前壁11Aの下面部に形成した2つのピン嵌挿穴17,17、及び上側ブロック2の前壁下面部に形成した2つのピン嵌挿穴26,26は、それぞれピン径より僅かに大径でピン長さ(約30mm)よりやや長い深さ(例えば35mm程度の深さ)となっている。又、ピンの配設作業には、図2に示すようにピン挿入台8が2セット使用される。この各ピン挿入台8は、上下のブロック間の目地3の高さより薄い支持板8aと持ち手8bとを有している。尚、支持板8aは、1mm程度の厚さの板材(鉄板又はプラスチック板)でよい。
【0040】
そして、各ピン6,6(7,7)は、次のようにして組付けられる。まず、図5に示すように、分離前壁11Aを前面開口部19に組付ける前に、下向き開口の各ピン嵌挿穴26,26(及び17,17)内にそれぞれピン6,6(及び7,7)を完全収容させた状態でそれぞれピン挿入台8,8の支持板8aで下方から支持しておく。この際、各ピン挿入台8,8は、ブロック2の前壁21及び分離前壁11Aにそれぞれ適宜の手段(例えば粘着テープ)で仮止めしておくと、ピン挿入台8から手を離しても該ピン挿入台8及びピン6,6(又は7,7)が脱落することがない。次に、図5に鎖線図示(符号11A′)するように前面開口部19内に分離前壁11Aを組込んだ後、図6に示すように各ピン挿入台8,8を目地部分から抜き外せば、各ピン6,7がそれぞれ自重で落下して、ピン下半部が下側の各ピン嵌挿穴16,17内に収容される。この状態では、各ピン6,7が上下2つのピン嵌挿穴(26と16、17と27)に跨がって介在されており、分離前壁11Aの抜外しは不能になる。
【0041】
尚、上記したブロックの構造・形状等は適宜に設計変更可能であり、且つ上記の各種寸法もそれぞれ一例であって、許容される範囲で設計変更できるものである。
【0042】
第1実施例のブロック壁体への線・管類配設方法では、予め図2に示すように、1つの前壁小形側ブロック1に対して、前壁11を切断する加工と、各貫通穴(12a,13a,18)を形成する加工と、各ピン嵌挿穴16,16、17,17を形成する加工を行うとともに、上側ブロック2の前壁下面部と下側ブロック2の前壁上面部にそれぞれ各ピン嵌挿穴26,26、27,27を形成する加工を行っておく。
【0043】
そして、図1に示す通常の各ブロック1,2と、図2に示す加工済みの各ブロック2,2及び前壁分離ブロック1Aを使用し、図3及び図4に示すように既に設置されている供給側水管4Aに対面する位置に前壁分離ブロック1Aとその上下に加工済みブロック2,2が位置するようにして、基礎コンクリート9上に所定段数だけ組積みしてブロック壁体10を構築する。尚、上下・左右に隣接する各ブロック間には、目地モルタル3,3・・が介設されている。このブロック壁体10には、図4に示すように供給側水管4Aに対面する位置の2段目に、分離前壁11Aを切除してなる前面開口部19が形成されているとともに、前壁分離ブロック1Aの後壁12及び中間壁13にそれぞれ貫通穴12a,13aが形成されている。又、このブロック壁体10内には、上下に連続する前側縦空間部31と後側縦空間部32とが形成されている。尚、前側縦空間部31は、前壁大形側ブロック2の前側空間部24と前壁小形側ブロック1の前側空間部14が上下に連続したものであり、後側縦空間部32は、前壁大形側ブロック2の後側空間部25と前壁小形側ブロック1の後側空間部15が上下に連続したものである。
【0044】
この第1実施例のブロック壁体への線・管類配設方法は、ブロック壁体10の厚さ方向に水管4を貫通させて配置させるものであり、図5〜図7の順序で作業を行う。
【0045】
まず、図5に示すように、短尺の水管4を前壁分離ブロック1Aの各貫通穴12a,13aを通して横向き姿勢で設置する。この場合、水管4は、両端部4a,4bがブロック壁体10の内外各壁面よりそれぞれ若干長さだけ突出するようにして配設される。尚、屋内側の貫通穴12aと水管外周面との間には、筒体からなるスペーサー5が嵌挿される(このスペーサーは適宜の充填剤で代替えしてもよい)。
【0046】
次に、前面開口部19に分離前壁11Aを組込む前に、前面開口部19の天井面(上側ブロック2の前壁21の下面)に形成している下向き開口のピン嵌挿穴26(左右2つある)にそれぞれ上側ピン6(左右2つ)を差し込んで、該ピン嵌挿穴26の下端開口をピン挿入台8の支持板8aで蓋をし、他方、分離前壁11Aの下面のピン嵌挿穴17(左右2つある)にも下側ピン7(左右2つ)を差し込んで、該ピン嵌挿穴17の下端開口をピン挿入台8の支持板8aで蓋をする。この状態では、ピン6(及び7)の全長がピン嵌挿穴26(及び17)内に完全収容されている。尚、この各ピン挿入台8,8は、支持板8aでピン嵌挿穴26(及び17)の下端開口を蓋した状態で、ブロック前壁21の外面(及び分離前壁11Aの外面)に例えば粘着テープ等で仮止めしておくと、各ピン挿入台8,8から手を離すことができる。
【0047】
その状態で、ピン7(及びピン挿入台8)付きの分離前壁11Aを鎖線図示(符号11A′)するように前面開口部19内に組込む。そのとき、分離前壁11Aの貫通穴18内に水管4の屋外側端部4bを挿通させる。尚、分離前壁11Aを前面開口部19内に組込む前に、前面開口部19の底面の両端部寄り位置にそれぞれ目地高さと同じ径の細棒(図示していない)を置いておくと、前面開口部19の底面(下ブロック2の前壁21上面)と分離前壁11Aの下面との間に目地用のスペースを確保できる。
【0048】
次に、図6に示すように、上下のピン挿入台8,8を抜き外すと、各上側(下向き開口)のピン嵌挿穴26,17に完全収容されていた上下のピン6,7がそれぞれ自重で下動し、上側ピン6(2つある)がピン嵌挿穴26とピン嵌挿穴16に跨がって介在する一方、下側ピン7(2つある)もピン嵌挿穴17とピン嵌挿穴27に跨がって介在するようになり、分離前壁11Aの前後移動が不能になる。このとき、上記のように前面開口部19の底面上の2本の細棒を置いておくと、分離前壁11Aが該各細棒で支持されて、その下面側に目地用スペースが確保される。
【0049】
そして、図7に示すように、分離前壁11Aの外周面と前面開口部19の内周面との隙間に目地モルタル3aを充填すれば(上記2本の細棒は目地モルタル充填後に抜き外す)、分離前壁11Aを前面開口部19内に固定できる。尚、分離前壁11Aの貫通穴18と水管4との間の隙間に筒体からなるスペーサー5を嵌挿させる(このスペーサーは適宜の充填剤で代替えしてもよい)。
【0050】
このように、分離前壁11Aの組込み状態では、図8に示すように該分離前壁11Aの上部及び下部がそれぞれ2つのピン6,6(及び7,7)で、上下のブロック前壁21,21に連結されているので、分離前壁11Aを後付けしたものであっても、その組付け強度を強くできる。
【0051】
尚、ブロック壁体10には、必要に応じて、前側縦空間部31内に断熱材を充填することができ、又、後側縦空間部32内に鉄筋入りのコンクリートを充填することができる。
【0052】
ここまでの作業は、水管4をブロック壁体10に貫通させたものでも、配管工事に特別な技術を要しないのでブロック施工業者だけで行える。又、ブロック壁体10の外面における水管貫通部分の補修作業は、ブロック施工業者の専門分野であり、壁体外面をきれいに補修する(仕上げる)ことができる。
【0053】
その後、図7に示すように、水管4の屋内側端部4aには、屋内側配管4Cが接続される一方、水管4の屋外側端部4bと供給側水管4Aとが接続管4Bで接続されるが、これらの配管接続作業は、専門の配管施工業者に依頼するとよい。
【0054】
図9〜図10の第2実施例
図9及び図10に示す第2実施例のブロック壁体への線・管類配設方法は、ブロック壁体10内の前側縦空間部31を通して水管4を配設するようにしたものである。尚、この第2実施例では、水管4としてフレキシブルなものを使用する。
【0055】
この第2実施例の場合も、図1に示すように1つの前壁小形側ブロック1の前壁11を切断して、図2に示すように前壁分離ブロック1Aと分離前壁11Aとに分離し、分離前壁11Aに貫通穴18と上下2つずつのピン嵌挿穴16,17を加工しておく。又、前壁分離ブロック1Aの上下に位置する各ブロック2,2の前壁21,21にもそれぞれピン嵌挿穴26,27を加工しておく。尚、この第2実施例の場合は、前壁分離ブロック1Aの後壁12及び中間壁13に貫通穴を加工する必要はない。
【0056】
そして、この第2実施例の場合も、多数の前壁小形側ブロック1及び前壁大形側ブロック2と1つの前壁分離ブロック1Aとを使用して、第1実施例の場合と同様に、基礎コンクリート9上にブロック壁体10を構築し(図9の状態)、該ブロック壁体10の前面開口部19からフレキシブル水管4の先端側を前側縦空間部31内に進入させて、該水管先端側4aをブロック壁体10の上端から屋内側に導いておく。又、フレキシブル水管4の基端部4bは、分離前壁11Aの貫通穴18に挿通させる。
【0057】
続いて、上記第1実施例と同様に、前面開口部19の上側ピン嵌挿穴26(2つある)に上側ピン6を収容してピン挿入台8で蓋し、且つ分離前壁11A下側ピン嵌挿穴17(2つある)に下側ピン7を収容してピン挿入台8で蓋した状態で、分離前壁11Aを前面開口部19内に組込み、各ピン挿入台8,8を抜外すと、図10に示すように、上側ピン6がピン嵌挿穴26とピン嵌挿穴16に跨がって介在する一方、下側ピン7がピン嵌挿穴17とピン嵌挿穴27とに跨がって介在するようになる。そして、分離前壁11Aの周囲に目地モルタル3aを充填し、分離前壁11Aの貫通穴18と水管との間にスペーサー5を嵌挿させる(充填剤で代替えしてもよい)と、ブロック施工業者の作業は完了する。尚、水管4の基端部4bは、供給側水管4Aに接続するが、配管接続工事は、専門の配管施工業者に依頼すればよい。
【0058】
この第2実施例のブロック壁体への線・管類配設方法でも、ブロック施工業者だけでブロック壁体10の構築に続いて水管4の配設を簡単に行えるとともに、ブロック壁体10の外面の補修も専門業者が行うので、壁面の仕上がりがきれいになる。
【0059】
尚、上記各実施例では、ブロック壁体構築用のブロックとして、図1に示すように2種類(前壁小形側ブロック1と前壁大形側ブロック2)のものを使用しているが、他の実施例では、前壁と後壁とが同大きさの1種類のブロックのみを使用することができる。又、上記各実施例では、線・管類として水管を採用しているが、電線やガス管でも同様に扱える。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願実施例の線・管類配設方法が採用されるブロック壁体に使用されるブロックの斜視図である。
【図2】本願第1実施例の線・管類配設方法を行う場合の図1のブロックの前加工状態を示す斜視図である。
【図3】図1及び図2の各ブロックを使用して構築したブロック壁体の正面図である。
【図4】図3のIV−IV拡大断面図である。
【図5】本願第1実施例の線・管類配設方法の水管配設手順の説明図である。
【図6】図5からの状態変化図である。
【図7】図6からの状態変化図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】本願第2実施例の線・管類配設方法の水管配設手順の説明図である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【符号の説明】
【0061】
1はブロック(前壁小形側ブロック)、2はブロック(前壁大形側ブロック)、4は線・管類(水管)、6,7はピン、8はピン挿入台、10はブロック壁体、11は前壁、16,17はピン嵌挿穴、19は前面開口部、31は縦空間部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間部を有する多数個の型枠状ブロック(1,2)を上下・左右に組積みして構築したブロック壁体(10)内に電線や管等の線・管類(4)を配設するためのブロック壁体への線・管類配設方法であって、
前記ブロック壁体(10)を構成する任意のブロック(1)の前壁(11)部分を切断して該ブロック(1)を分離前壁(11A)と前壁分離ブロック(1A)とに分離しておき、
前記前壁分離ブロック(1A)をブロック壁体の一部として線・管類配設位置に組込んで前記ブロック壁体(10)を構築し、
続いて前記前壁分離ブロック(1A)が位置する前面開口部(19)から前記線・管類(4)をブロック壁体(10)内に配設した後、前記前面開口部(19)に前記分離前壁(11A)を組付けることを特徴とするブロック壁体への線・管類配設方法。
【請求項2】
請求項1において、前壁分離ブロック(1A)の前面開口部(19)に組付けられる分離前壁(11A)は、前記前面開口部(19)の天井面及び底面に対してそれぞれピン(6,7)により結合させるようにしていることを特徴とするブロック壁体への線・管類配設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−314163(P2006−314163A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135579(P2005−135579)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(395001862)株式会社琴平工業所 (1)
【出願人】(591247787)ユニテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】