説明

ブローモールド成形チューブからステントを製作する方法

ポリマーチューブが周囲圧力よりも高い内部のチューブ圧力を有し、ポリマーチューブが軸に沿って加熱されるにつれて(335)、半径方向の変形がポリマーチューブの軸に沿って伝播して、変形したポリマーチューブからのステントの製作において使用されるポリマーチューブ(301)を半径方向に変形させるステップと;ポリマーチューブから製作されたステントの選択された破壊耐性を提供するように変形を制御するステップと;変形したポリマーチューブからステントを製作するステップとを備える;ステントを製作する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステント製造用のポリマーチューブをブローモールド成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体内の管腔への埋込みに適した、径方向に拡張可能な内部人工器官に関する。「内部人工器官」は、体内に設置される人工のデバイスを指す。「管腔」とは、血管などの管状器官の空洞を指す。
【0003】
ステントはそのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般的に円柱状の形状をしたデバイスで、血管又は尿路及び胆管など他の解剖学的管腔の一セグメントを開いた状態に保持し、時には拡張するよう機能する。ステントは、血管中のアテローム硬化型狭窄の治療によく使用される。「狭窄」は、体内の導管又は開口部の直径が狭小化又は収縮することを指す。そのような治療においてステントは、身体の血管を補強し、血管系における血管形成の後の再狭窄を阻止する。「再狭窄」は、一見して成功裏に(例えば、バルーン血管形成、ステントによる治療又は弁形成によって)治療を受けた後の、血管内又は心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0004】
ステントを用いた患部又は病変の治療は、ステントの送達及び展開の両方を含む。「送達」は、体内の管腔を通して、治療を要する血管内の病変部のような領域にステントを導入及び輸送することを指す。「展開」は、治療領域において管腔内でステントを拡張することを指す。ステントの送達及び展開は、カテーテルの一端部の回りにステントを配置すること、皮膚を通して体内の管腔へカテーテルの端部を挿入すること、体内の管腔内のカテーテルを所望の治療位置へ進めること、治療位置でステントを拡張すること、及び管腔からカテーテルを除去することによって成し遂げられる。
【0005】
バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、カテーテル上に配置したバルーンの周囲に設置される。ステントの設置は、典型的にはステントをバルーンに圧着するか、又は縮みしわを付けるように押し付けるステップを備える。次いでバルーンを膨らませることによって、ステントを拡張する。次いでバルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜く。自己拡張型ステントの場合には、ステントは、引込み式シース又はソックス状のカバーを介してカテーテルに固定してもよい。ステントが体内の所望の位置にある時点で、シースを引き抜いて、ステントを自己拡張させることができる。
【0006】
ステントは、いくつかの機械的な必要条件を満たすことができなければならない。第1に、ステントは、構造上の負荷、すなわちステントが血管の壁を支えることによりステントにかけられる径方向の圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントには適切な径方向の強度がなくてはならない。径方向の強度は、径方向の圧縮力に抵抗するステントの性能であり、ステントの周方向の強度および剛性に起因する。それ故、径方向の強度および剛性は、フープ強度および剛性、または、周方向強度および剛性ということもできる。
【0007】
鼓動する心臓が誘発する周期的な負荷を含む、様々な荷重がステントにかかることになるが、ステントは、一度拡張されれば、そのサイズおよび形状を耐用年数の間十分に維持しなくてはならない。例えば、径方向の荷重はステントを内向きに後退(リコイル/スプリングバック)させてしまうことがある。一般的に、後退(リコイル/スプリングバック)は最小限にすることが望ましい。
【0008】
加えて、ステントは、圧着、拡張、および周期的負荷を許容するために十分な可撓性を持っていなくてはならない。ステントを、蛇行した血管通路を通じて送達し、線状でないか、もしくは湾曲しやすい展開部位に適合できるようにするために、長手方向の可撓性が重要となる。また、最終的には、有害な血管反応を誘発しないように、ステントは生体適合性を有さねばならない。
【0009】
ステントの構造は、典型的には、業界でストラット(支柱)あるいはバーアーム(棒腕)としばしば呼ばれる相互接続する構造要素の、パターン又は網目を含む骨格により構成される。骨格はワイヤ、チューブ、または円柱形状に巻かれたシートから形成することができる。骨格は、ステントを径方向に圧縮(圧着可能なように)および径方向に拡張(展開可能なように)できるように設計されている。従来のステントは、あるパターンを持つ個別の構造要素の相互間の動作を介して、拡張および収縮することができるように設けられている。
【0010】
さらに、薬剤ステントは、金属骨格またはポリマー骨格のいずれかの表面に、活性薬剤、生理活性薬剤、あるいは薬剤を含むポリマー担体をコーティングすることにより製作するものとしてもよい。ポリマー骨格は活性薬剤または薬剤の担体として使用することもできる。
【0011】
さらに、ステントは生体分解性であることが望ましいだろう。多くの治療用途において、例えば血管開通の維持および/または薬物送達などの、意図された機能が遂行されるまで、身体内のステントの存在は限られた期間の間必要であろう。したがって、生体吸収性ポリマーなどの、生体分解性材料、生体吸収性材料、および/または生体侵食性材料から製作されたステントは、それらの臨床的な必要性が終了した後にのみ、完全に侵食されるように構成されるべきである。
【0012】
ステントなどの埋込み可能な医療デバイスは、高い半径方向の強度および十分な破壊靭性を含む、重要な複数の特性を有する。埋込み可能な医療デバイスにおける使用のために適切でありえるいくつかの結晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーは、これらの特性のうちのいくつか、特に、破壊靭性に関する潜在的な欠点を有している。
【発明の概要】
【0013】
本発明の様々な実施の形態は、ポリマーチューブが周囲の圧力よりも高い内部のチューブ圧力を有し、チューブが軸に沿って加熱されるにつれて半径方向の変形がチューブの軸に沿って伝播するように、変形したチューブからのステントの製作において使用するポリマーチューブを半径方向に変形させるステップと;チューブから製作されたステントの選択された破壊耐性を提供するために、伝播速度または半径方向の変形の速度を制御するステップと;変形したチューブからステントを製作するステップとを備える;ステントを製作する方法を含む。
【0014】
本発明のさらなる実施の形態は、ポリマーチューブが周囲の圧力よりも高い内部のチューブ圧力を有し、チューブが軸に沿って加熱されるにつれて半径方向の変形がチューブの軸に沿って伝播するように、変形したチューブからのステントの製作において使用されるポリマーチューブを半径方向に変形させるステップと;チューブから製作されたステントの選択された破壊耐性を提供するために、ポリマーチューブの温度を制御するステップと;変形したチューブからステントを製作するステップとを備える;ステントを製作する方法を含む。
【0015】
本発明の追加の実施の形態は、チューブの内圧を変形圧力にまで増大させるステップと;変形温度までチューブを加熱するために、ポリマーチューブの軸に沿って熱源を平行移動(軸に平行に移動)させるステップと;チューブの加熱および圧力の増大がチューブを半径方向に拡張することを可能とするように、熱源がポリマーチューブの軸に沿って平行移動するにつれてチューブが半径方向に拡張することを許容するステップと;チューブから製作されたステントの選択された破壊耐性を提供するために、変形圧力、熱源の平行移動速度、変形温度からなるプロセスパラメータの群から選択される1つまたは複数のプロセスパラメータを制御するステップと;変形したチューブからステントを製作するステップとを備える;ステントを製作する方法を含む。
【0016】
本発明の他の実施の形態は、チューブから製作されたステントの選択された破壊耐性を提供するために、変形圧力、熱源の平行移動速度、変形温度からなるプロセスパラメータの群から選択される、チューブの半径方向の変形プロセスの1つまたは複数のプロセスパラメータを決定するステップと;変形したチューブからステントを製作するステップとを備え;該半径方向の変形プロセスは:チューブの内圧を変形圧力まで増大させるステップと;チューブを変形温度まで加熱するために、ポリマーチューブの軸に沿って熱源を平行移動させるステップと;チューブの加熱および圧力の増大がチューブの半径方向への拡張を可能とするように、熱源がポリマーチューブの軸に沿って平行移動するにつれてチューブの半径方向への拡張を許容するステップとを有する;ステントを製造する方法を含む。
【0017】
本発明のさらなる実施の形態は、ポリラクチドチューブの内圧を120psi乃至130psiの範囲にまで増大させるステップと;チューブを摂氏190度乃至摂氏210度の範囲にまで加熱するために、0.5mm/s乃至0.7mm/sの範囲の平行移動速度でポリマーチューブの軸に沿って熱源を平行移動させるステップと;チューブの加熱および圧力の増大がチューブの半径方向の拡張を可能とするように、熱源がポリマーチューブの軸に沿って平行移動するにつれてチューブが半径方向に拡張することを許容するステップと;変形したチューブからステントを製作するステップとを備える;ステントを製作する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はステントを示す図である。
【図2】図2はチューブを示す図である。
【図3A】図3Aは、ポリマーチューブのブローモールド成形を示す図である。
【図3B】図3Bは、ポリマーチューブのブローモールド成形を示す図である。
【図3C】図3Cは、ポリマーチューブのブローモールド成形を示す図である。
【図4】図4は、結晶核形成速度および結晶成長速度、ならびに結晶化の全体的な速度の概略的なプロットを示す図である。
【図5】図5は、PLLA(ポリ(L−ラクチド))のRCG(結晶成長速度)についての実験結果を示す図である。
【図6】図6はステントを示す図である。
【図7】図7は、異なる拡張プロセスパラメータを有するチューブから製作されたステントにおいて観察されたクラックの数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の様々な実施の形態は、ステントの軸方向および円周方向の一方または両方に沿って、十分なもしくは最適な靭性および選択された機械的特性を有する、ポリマーステントを製作する方法に関する。本発明は自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステントグラフト、およびその移植(例えば大動脈への移植)を含むデバイスに適用可能だが、その適用はこれらのみに限定されるものではない。
【0020】
本発明のために、以下のように用語を定義する。
【0021】
「ガラス転移温度」(Tg)は、大気圧において脆性のガラス質状態から変形可能な固体または延性を有する状態にポリマーの非晶性ドメインが変化する温度である。言いかえれば、Tgは、ポリマーの鎖の中でセグメント運動の開始が生じる温度に対応する。非晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーが温度上昇に曝露される場合、温度が上昇するにつれて、ポリマーの膨張係数および熱容量はともに増大し、分子運動の増大を示す。温度が上昇するにつれても、サンプル中の実際のモル体積(molecular volume)は一定のままであり、そのため、より高い膨張係数は、システムに関連した自由体積の増大、およびしたがって分子が移動する自由度の増大を指し示す。熱容量の増大は、運動による熱散逸の増大に対応する。所与のポリマーのTgは加熱速度に依存的でありえるか、ポリマーの熱履歴によって影響を受けうる。さらに、ポリマーの化学構造は、流動性に影響することによってガラス転移に強く影響を及ぼす。
【0022】
「応力」は、平面内の小領域を通して作用する力におけるような、単位面積当たりの力を指す。応力は、それぞれ垂直応力及び剪断応力と呼ばれる、平面に対して垂直及び平行な成分に分割することができる。引張応力は、例えば、伸び(長さの増大)をもたらす、適用された応力の法線方向成分である。さらに、圧縮応力は、それらの縮み(長さの減少)を結果として生じる、材料に適用された応力の法線方向成分である。応力は材料の変形をもたらすことができ、それは長さにおける変化を示す。サンプルが応力を受けている場合、「伸び」または「縮み」は、材料のサンプルの長さの増大または減少として定義することができる。
【0023】
「歪み」は、加えられた応力または荷重により材料に生じる伸びまたは縮みの量を指す。歪みは、もとの長さの割合またはパーセンテージ(すなわち、もとの長さで割った長さの変化)として表現することができる。歪みはしたがって、伸びについては正であり、縮みについては負である。
【0024】
「弾性率」は、物質に加えられた単位面積当たりの力すなわち応力の成分を、加えられた力により生じる、加えられた力の軸に沿ったひずみで割った比率と定義される。例えば、物質は引張弾性率と圧縮弾性率の両方を有している。
【0025】
「ピーク時応力」は、材料が破壊の前に耐える最大の引張応力である。破断時応力は引張強度とも呼ぶことができる。破断時応力は、もとの横断面積で割った、試験の間に適用された最大の荷重により算出される。
【0026】
「破断時応力」は破壊時の材料の引張応力である。
【0027】
「靭性」は、破壊の前に吸収されるエネルギーの量であり、すなわちある材料(物質)を破壊するために必要な仕事量と同等である。靭性の一つの基準は、応力−ひずみ曲線の下の、ひずみゼロから破壊ひずみまでの領域に示される面積である。応力は材料上の引張力に比例し、歪みはその長さに比例する。応力−ひずみ曲線の下に示される面積は、破断前のポリマーが伸張する距離(ひずみ)における応力の積分に比例する。この積分はサンプルを破断するために必要な仕事量(エネルギー)である。靭性は、破断する前にサンプルが吸収することができるエネルギーの測定値である。靭性と強度との間には差異がある。強いが靭性がない材料は脆性材料と呼ばれる。脆性の物質は強いが、破断の前にあまり変形させることができない。
【0028】
ステントは、複数の相互に接続する構造要素またはストラット(支柱)のパターンを含むスキャフォールドまたは基材を有することができる。図1は、ステント100の概観の例を示す図である。ステント100は、軸160を有する円筒形状に設けられており、多数の相互に接続する構造要素またはストラット110を有するパターンを含む。一般に、ステントは半径方向に圧縮(クリンプ)されうるように、および半径方向に拡張(展開可能に)されうるように、ステントパターンがデザインされる。圧縮および拡張の際に関与する応力は、一般的に、ステントパターンの様々な構造要素の全体にわたって分配される。本発明は、図1において図示されたステントパターンに限定されていない。ステントパターンのバリエーションは事実上無限である。
【0029】
ステントの下層構造または基材は、生体分解性ポリマーもしくは生体分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組合せから、完全にまたは少なくとも部分的に製作することができる。さらに、デバイスの表面用のポリマーベースのコーティングは、生体分解性ポリマーもしくは生体分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組合せでありえる。
【0030】
ステント100などのステントは、シートを巻き、接合して、チューブを形成することによって、ポリマーチューブまたはシートから製作するものとしてもよい。例えば、図2はチューブ200を示す図である。チューブ200は、外径205および内径210を有する円筒形状である。図2は、チューブ200の外側表面215および円筒軸220もまた示す。いくつかの実施の形態において、埋込み可能な医療デバイスの製作前のポリマーチューブの直径は、約0.2mm乃至約5.0mm、またはより狭い範囲では約1mm乃至約3mmの間としてもよい。ポリマーチューブは、押出モールド成形または射出モールド成形を含むが、これらに限定されない様々なタイプの方法によって形成するものとしてもよい。
【0031】
ステントパターンは、チューブ上のパターンをレーザー切断することによってポリマーチューブ上に形成するものとしてもよい。使用することができるレーザーの代表的な例は、エキシマー、二酸化炭素、およびYAGを含むが、これらに限定されない。他の実施の形態において、化学エッチングを使用して、チューブ上にパターンを形成するものとしてもよい。
【0032】
図1に示すステント100のパターンは、構造の全体にわたって変形して、半径方向の拡張および圧縮ならびに縦方向(長さ方向)の湾曲を可能にする。パターンは、直線状か、または比較的直線状のストラットの部分を含むものとしてもよい(一例として部分120)。さらに、パターンは、屈曲要素130、140、および150を含むものとしてもよい。
【0033】
ステントが半径方向の圧縮を許容するようにクリンプされる場合、屈曲要素は内側に屈曲する。ステントが半径方向の拡張を許容するように拡張する場合、屈曲要素は外側へも屈曲する。展開の後は、ステントは血管壁からの静的および周期的な圧縮荷重の下におかれる。したがって、屈曲要素は使用の間に変形にさらされる。「使用」は、製造(製作)、アセンブリング(例えば、カテーテル上にステントをクリンプするアセンブリング)、治療部位までの身体の管腔の中への、および管腔を通したステントの送り、ならびに治療部位でのステントの展開、ならびに展開後の処理を含むが、これらに限定されない。
【0034】
さらに、送りの間に蛇行する血管経路を通過して操作される際、ステント100は軸160に沿って湾曲にさらされる。直線状でない展開部位に順応させなければならない場合もまた、ステント100は湾曲にさらされる。
【0035】
ステントにとって重要な複数の機械的特性がある。これらは、高い半径方向の強度、適切な靭性、低いリコイル(/スプリングバック)、および物理的老化に対する耐性を含む。ステントは、血管の壁を支持するように、ステント上に課された構造的荷重(すなわち半径方向の圧縮力)に耐える半径方向における適切な強度を特に有していなければならない。半径方向の強度は、ステントの円周方向のまわりのステントの強度と関連している。さらに、ステントがクリンピング、拡張、および湾曲を許容する十分な柔軟性を示すように、ステントは十分な靭性を保持しなくてはならない。ステントは、特に歪みの大きい領域におけるクラック形成に対して耐性を有するように、十分な靭性を有するべきである。リコイル(/スプリングバック)は、展開した直径からのステントの半径方向の内側への後退を指す。
【0036】
ステントは、全体をまたは部分的に、生体分解性ポリマーで製作することができる。生体分解性のステントは、もはや必要でない場合には、インプラント部位から侵食されて無くなるように構成することができる。生体分解性のステントは、必要であるならば、治療された血管上でのさらなる手術または介入を可能とし、後のステント血栓症(ステント展開の数か月または数年後に表面上に血餅が形成される症状)の可能性を減少させる。ガラス質であるか、または体温以上でガラス転移温度(Tg)を有する、いくつかの結晶性または半結晶性の生体分解性のポリマーは、生理学的条件におけるそれらの強度および剛性のためにステントの材料として特に魅力的である。かかるガラス質のポリマーは、加水分解などの化学分解を介して吸収されることが可能である。生理学的条件は、インプラントが人体内で曝露される条件を指す。生理学的条件は、人体温度(およそ摂氏37度)を含むが、これに限定されない。
【0037】
しかしながら、かかるポリマーの機械的特性は、ステントの材料として適切であるように改善することを必要とされるだろう。例えば、ステントのストラットは、血管の壁を支持するのに十分な半径方向の強度を有するためには、望ましくないほど大きくなければならないだろう。したがって、かかるポリマーの強度は改善を必要とするだろう。さらに、かかるポリマーの靭性は、特にステントに適用する使用のために望まれるよりも低くなるだろう。例えば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)などのポリマーは剛性があり強いが、生理学的条件下では脆性となる傾向を有する。これらのポリマーは、破損の前に塑性変形をほとんど、またはまったく生じない、生理学的条件における脆性破壊メカニズムを示しうる。かかるポリマーから製作されたステントは、ステントの使用の範囲に関しては不十分な靭性を有する。この結果として、ステントの機械的破損をもたらし得るクラックが、特に歪みの大きい領域において誘導される可能性がある。
【0038】
さらに、リコイル(/スプリングバック)は、ポリマー鎖の緩和または再構成から生じるクリープおよび応力緩和により生じうる。クリープは、適用荷重にさらされたポリマー構成物において生じる漸進的な変形を指す。応力緩和は、変形(または歪み)が一定の場合に生じ、一定の変形を維持するのに必要な力(応力)の低下によって示される。
【0039】
物理的老化もまたかかる半結晶性ポリマーに関する問題となりえる。物理的老化は、本明細書において使用される場合、半結晶性ポリマーの非晶領域(非晶性ドメイン)の高密度化を指す。高密度化は、材料または材料の領域の密度の増大であり、ポリマー鎖の再配列から生じる。高密度化は、ポリマーの破壊靭性を低下させる傾向を有する。
【0040】
一般に、ポリマーの機械的特性は、そのモルフォロジー(形態)またはミクロ構造に依存する。本発明の様々な実施の形態は、前駆物であるポリマー構成物をステントへと加工して、ステントの望ましい機械的特性または選択された機械的特性を得るステップを備える。かかる望ましい機械的特性または選択された機械的特性は、特定の構造またはモルフォロジー(形態)に対応することができる。本発明の実施の形態は、選択された特性または望ましい特性を得るプロセシングの条件を調節するステップを備える。
【0041】
モルフォロジー(形態)は、結晶化度、ポリマー鎖の分子配向、および結晶サイズを含むが、これらに限定されない。ポリマーは、完全に非晶性か、部分的に結晶性か、またはほとんど完全に結晶性でありえる。部分的に結晶性のポリマーは、非晶領域(非晶性ドメイン)によって分離された結晶領域(結晶性ドメイン)を含んでいる。結晶化の程度はすべての結晶領域(結晶性ドメイン)の合計である。分子配向は、ポリマー鎖の縦軸または共有結合軸に沿ったポリマー鎖の相対的配向を指す。配向は、ポリマー鎖の結晶領域(結晶性ドメイン)および非晶領域(非晶性ドメイン)の両方の配向を指すことができる。
【0042】
モルフォロジー(形態)と機械的特性との間の関係は、上述の半結晶性ポリマーの欠点のうちのいくつかの解決において使用することができる。一般に、ポリマーの弾性率は結晶化度が増大するに従って増大する。上述の通り、高い結晶化度を有する半結晶性ポリマーは脆性であり、クラッキングに感受性がありえる。非晶性ポリマーはより可撓性であるか、またはより延性があるだろうが、半径方向の強度は不十分であろう。さらに、ポリマー中の結晶領域(結晶性ドメイン)のサイズは機械的特性に影響することができる。ポリマー中の結晶化度を維持しながら結晶の領域またはドメインのサイズを低下させることは、ポリマーの破壊靭性を増大させるものといえる。
【0043】
さらに、ポリマーの強度および靭性は、ポリマー鎖の配向によって影響されうる。半結晶性ポリマーの靭性は、結晶領域(結晶性ドメイン)および非晶領域(非晶性ドメイン)の両方のポリマー鎖の配向の誘導によって増大させることができる。さらに、ポリマーの強度は好ましい配向の方向に沿ってもまた増大される。
【0044】
結晶性ドメイン(結晶領域)は、ドメイン間の非晶領域(非晶性ドメイン)のポリマー鎖を繋ぐネットポイントとして作用することができると考えられる。所与の結晶化度におけるより小さなドメインはより多数のドメインをもたらして分子を繋ぎ、靭性の増大をもたらす。非晶領域(非晶性ドメイン)の強度および靭性は、非晶領域(非晶性ドメイン)の配向の誘導によってさらに増大することができる。誘導された配向を有する多数のネットポイントおよび結束分子がより高い強度および破壊靭性を導くことができるものと期待できる。
【0045】
本発明の特定の実施の形態は、ポリマーチューブなどのステントの前駆物である構成物を加工して、構成物が所望の特性または選択された特性を有するように、構成物中のポリマーのモルフォロジー(形態)を変更するステップを備える。ポリマーに応力を加えることによってポリマーの機械的特性を変更できることが当業者に周知である(James L. White and Joseph E. Spruiell, Polymer and Engineering Science, 1981, Vol. 21, No. 13)。応力の適用は、加えられる応力の方向に沿って機械的特性を変更し得る、応力の方向に沿った分子の配向を誘導することができる。押出加工によって形成されたチューブは、円周方向におけるポリマー鎖の整列がないか、または実質的にない傾向を有するので、ポリマーチューブなどの構成物中に誘導される配向は特に有益でありえる。射出モールド成形により製作されたチューブは、軸方向および円周方向の両方において比較的低い程度のポリマー鎖の整列を有している。
【0046】
特定の実施の形態において、ステントの前駆物である構成物のプロセシング(加工)は、選択された機械的特性または所望の機械的特性を得るようなポリマーチューブの半径方向の変形、軸方向の変形、またはその両方を含むことができる。プロセシング(加工)は、結晶化度、結晶サイズおよび分子配向を含むポリマー構成物の構造またはモルフォロジー(形態)的特徴を変更することができる。プロセシング(加工)は、外側に向けた半径方向の力の適用を介して半径方向にポリマーチューブを変形させるステップを備えることができる。半径方向の力は、周囲の圧力以上のチューブ内の流体の内圧によるものであってもよい。周囲の圧力(周囲圧力)は、典型的には、大気圧でのまたは大気圧に近いチューブの外側の圧力に対応する。
【0047】
さらに、変形は、変形の前にチューブを加熱することによって促進することができる。さらに、チューブは、チューブの変形の前におよび変形の間にも加熱することができる。いくつかの実施の形態において、チューブは、チューブのポリマーのTgよりも高い温度に加熱することができる。
【0048】
さらなる実施の形態において、ポリマーチューブは軸方向に変形または伸張させることができる。チューブは、1つの端部を固定した状態でもう1つの端部に引張力を加えるか、または両方の端部に引張力を加えることによって、軸方向に変形させることができる。チューブの温度はチューブの変形の前に変形温度まで上昇され、変形の間に変形温度に維持されてもよい。変形温度は、チューブのポリマーのTgまたはTgよりもわずかに低い温度から、チューブのポリマーの融解温度までの範囲でありえる。「Tgよりもわずかに低い温度」とは、ポリマーのTgよりも5%低い温度からTgまでの温度を指すことができる。チューブの温度は、変形の間に一定の速度または非線形な速度でも上昇させることができる。
【0049】
チューブの半径方向の拡張の程度(およびしたがって誘導された半径方向の配向および強度)は、半径方向の拡張の比率(RE)によって定量化することができる。
【0050】
【数1】

【0051】
REの比率は拡張パーセントとしても表すことができる。
【0052】
【数2】

【0053】
同様に、軸方向の伸長の程度(およびしたがって誘導された軸方向の配向および強度)は、軸方向の伸長の比率(AE)によって定量化することができる。
【0054】
【数3】

【0055】
AE比率は軸伸長パーセントとしても表すことができる。
【0056】
【数4】

【0057】
さらなる実施の形態において、チューブは変形した状態に維持されながら、変形したチューブを熱硬化または焼鈍(アニール処理)することができる。かかる実施の形態において、チューブ内の内圧または軸方向の張力は、変形した状態にチューブを維持するレベル(程度)でありえる。変形したチューブは、変形温度、または変形温度よりも高いもしくは変形温度よりも低い温度において維持するものとしてもよい。熱硬化または焼鈍(アニール処理)は、ポリマー中の内部応力を緩和する(逃がす)ことができる。さらに、熱硬化または焼鈍(アニール処理)は、結晶化が継続することを可能とし、結晶化度のさらなる増大を結果として生じる。熱硬化または焼鈍(アニール処理)の間に、ポリマー鎖を平衡化された立体配置に近づくように再構成させ、内部応力を軽減する。
【0058】
さらに、続いて変形したチューブを冷却することができる。チューブは、Tgよりも高い温度からTgよりも低い温度にゆっくり冷却することができる。あるいは、チューブは、Tgよりも低い温度から周囲温度へ迅速に冷却または急冷することができる。チューブは、冷却の間、変形した直径に維持することができる。
【0059】
本発明の特定の実施の形態において、ポリマーチューブはブローモールド成形によって変形させることができる。バルーンブロー装置は、ポリマーチューブの半径方向の変形に適合させることができる。ブローモールド成形において、チューブは、チューブの中へ流体を送ってチューブ内の内圧を増大させることによって半径方向に変形させることができる。ポリマーチューブは、1つの端部を固定して保持するとともに、もう1つの端部に張力源によって引張力を加えることによって、軸方向に変形させることができる。あるいは、引張力はチューブの両方の端部に加えることができる。チューブは、半径方向の拡張の前に、半径方向の拡張の間に、および/または半径方向の拡張の後に、軸方向に伸長することができる。
【0060】
いくつかの実施の形態において、ブローモールド成形は円筒状の部材またはモールド型の中にチューブを最初に配置するステップを備えることができる。モールド型は、チューブの外径または表面の変形をモールド型の内径に限定することによって、チューブの半径方向の変形の程度を制御する。モールド型の内径は、ポリマーチューブの所望の直径以下の直径に設けるものとしてもよい。あるいは、流体の温度および圧力を、モールド型の使用に対する代替物として、またはモールド型と組み合わせて使用して、チューブの内径の変形を限定することによって、半径方向の変形の程度を制御してもよい。
【0061】
上述のように、チューブの温度は、変形の間にポリマーのTgよりも高い温度に加熱することができる。ポリマーチューブは、変形の前に、変形の間に、および変形に続いても加熱することができる。いくつかの実施の形態において、チューブは、チューブの円筒軸に沿った発熱源の平行移動によって加熱することができる。熱源が平行移動されチューブを加熱するにつれて、半径方向の変形はチューブの軸に沿って伝播する。他の実施の形態において、チューブは、熱源に加えて、モールド型またはチューブ内へと送られた流体によって加熱されることで、拡張することができる。モールド型は、例えば、モールド型の上の、モールド型の中の、および/またはモールド型に隣接する発熱素子によって加熱することができる。
【0062】
特定の実施の形態は、遠位端部におけるポリマーチューブの第1のシーリング、ブロッキングまたは閉鎖を有することができる。端部は続いて行なわれる製造工程において開くことができる。続いて、流体(通常は、空気、窒素、酸素、アルゴンなどのような気体)を、ポリマーチューブの近位端部の中へと送ってチューブ内の圧力を増大させるものとしてもよい。チューブ内の流体の圧力は、チューブを半径方向に拡張することができる。
【0063】
さらに、チューブの内部の圧力、チューブの円筒軸に沿った張力、およびチューブの温度は、ポリマーチューブが熱硬化されることを可能とする期間の間、周囲のレベルよりも高く維持するものとしてもよい。熱硬化は、選択された時間の期間の間、ポリマーのTg以上かつポリマーのTmよりも低い温度でチューブを維持するステップを備えることができる。選択された期間は、約1分乃至約2時間の間、またはより狭い範囲では、約2分乃至約10分の間としてもよい。次に、圧力の低下および/もしくは張力の低下の前に、または圧力の低下および/もしくは張力の低下の後に、ポリマーチューブはTgよりも低い温度にまで冷却することができる。チューブの冷却は、チューブが、その形成後に適切な形状、サイズ、および長さを維持することを確実にするよう支援する。冷却に際して、変形したチューブは、モールド型の内部表面によって課された長さおよび形状を保持する。
【0064】
図3A〜Cは、ブローモールド成形によるポリマーチューブの変形を示す概略的なブローモールド成形システム300を示す図である。いくつかの実施の形態において、ステントの製造で使用されるポリマーチューブの直径は1mm乃至3mmとしてもよい。しかしながら、本発明は、1mm未満または3mmを越えるポリマーチューブに適用可能である。ポリマーチューブの壁厚は0.03mm乃至0.06mmとしてもよいが、本発明は、0.03mm未満および0.06mmを越える壁厚を有するチューブに適用できる。
【0065】
図3Aは、モールド型310内に位置する、変形していない外径305を有するポリマーチューブ301の軸方向の断面を図示する。モールド型310は、ポリマーチューブ301の半径方向の変形を直径315(モールド型310の内径)に限定する。ポリマーチューブ301は遠位端部320で閉じるものとしてもよい。遠位端部320は続いて行なわれる製造工程において開くことができる。矢印325によって示されるように、ポリマーチューブ301の開いた近位端部321の中へと流体を送り、チューブ301内の内圧を増大させて、チューブ301を半径方向に変形させるものとしてもよい。引張力を近位端部321、遠位端部320または両方に加えることができる。
【0066】
矢印335および340によって示されるように、ポリマーチューブ301は、加熱した流体をチューブ301の2つの円周上の位置に方向付ける流体ポートを有するノズル330によって加熱される。図3Bは、チューブ301、モールド型310、および構造部材360を有するノズル330を示す、半径方向の横断面を図示する。追加の流体ポートはチューブ301の他の円周上の位置に位置することができる。矢印355によって示されるように、加熱した流体をチューブ301の周囲に流して、周囲温度よりも高い温度までモールド型310およびチューブ301を加熱する。
【0067】
ノズル330は、矢印365および367によって示されるようなチューブ301の縦軸に沿って平行移動する。ノズル330がモールド型310の軸に沿って平行移動するに従って、チューブ301は半径方向に変形する。図3Cに示されるように、チューブ301の温度の上昇および圧力の増大は、チューブ301の変形を引き起こす。
【0068】
図3Cは、チューブ301の変形しているセクション372および変形したセクション370を有するシステム300を示す図である。矢印380によって示されるように、セクション372は半径方向に変形する。変形したセクション370は、モールド型310の内径と同じ外径を有する。
【0069】
上述の変形プロセスのプロセシングパラメータは、変形温度、変形圧力(または力)、ノズルの平行移動速度、熱硬化温度、および熱硬化の時間を含むが、これらに限定されない。変形速度は、少なくとも変形圧力、変形温度、および熱源またはノズルの平行移動速度に依存するものと考えられる。変形速度は、半径方向における半径方向成分、およびチューブの軸に沿った半径方向の変形の伝播速度に対応する軸方向成分の両方を有する。半径方向における変形は図3C中の矢印380によって示され、軸方向成分は図3C中の矢印382によって示される。半径方向の変形速度は変形圧力に、より高い依存性を有し、軸方向成分はチューブの軸に沿った熱源の平行移動速度に、より高い依存性を有すると考えられる。ポリマーの変形は時間依存的なプロセスであるので、変形速度は変形したポリマーのモルフォロジー(形態)および構造にさらに影響するものと考えられる。変形したチューブのモルフォロジー(形態)およびひいては機械的特性は、プロセシングパラメータに依存するものと考えられる。
【0070】
本発明の実施の形態は、ポリマーチューブのブローモールド成形プロセスのプロセシングパラメータを決定または最適化するステップを備える。かかる実施の形態において、プロセシングパラメータは、ブローモールド成形したチューブまたは変形したチューブから製作されたステントの所望の機械的特性を達成または提供するように決定または最適化される。いくつかの実施の形態において、プロセシングパラメータは、所望の機械的特性を提供する変形したチューブのポリマーの選択されたモルフォロジー(形態)を得るように決定または最適化することができる。さらに、かかる実施の形態において、プロセシングパラメータは、変形温度、変形圧力、およびノズルの移動速度を含むが、これらに限定されない。本発明のさらなる実施の形態は、所望の機械的特性を提供するポリマーチューブのブローモールド成形プロセスのプロセシングパラメータを制御するステップ、調整するステップ、または変更するステップを備える。これらの実施の形態において、ステントは続いてブローモールド成形チューブから製作することができる。
【0071】
いくつかの実施の形態において、所望の機械的特性を提供するプロセシングパラメータは、2つまたは複数のチューブをブローモールド成形するように決定または最適化することができる。2つまたは複数のチューブが少なくとも1つの異なるプロセシングパラメータによりブローモールド成形されるように、1つまたは複数のプロセシングパラメータを変化させるものとしてもよい。続いてステントはチューブから製作することができ、ステントの機械的特性およびパフォーマンスは公知の検査技術を使用して測定される。例えば、半径方向の強度および弾性率を測定することができる。靭性および破壊耐性は、ステントが展開直径まで拡張するか、または展開直径よりも大きく拡張した状態における、ストラットの破壊および破断を調べることによって評価することができる。さらに、実施例において後に論じられるように、チューブのモルフォロジー(形態)(例えば、結晶化度、ポリマー鎖の分子配向、および結晶サイズ)は、公知の検査技術によって測定することができる。
【0072】
さらに、所望の機械的特性は、半径方向における高い強度、高い靭性、高い弾性率、および低いリコイル(/スプリングバック)を含むことができる。ポリマーチューブから製作されたポリマーステントは、ステントの拡張に際して破損に対する高い耐性を有することができる。破損に対する高い耐性は、展開直径までのステントの拡張に際して、ステントのストラット中に少数のクラックが存在することもしくはクラックが存在しないこと、または破断されたストラットが無いことによって、実証することができる。かかる実施の形態において、プロセシングパラメータを変更して、結晶化度、ポリマー鎖の分子配向、および結晶サイズなどのモルフォロジー(形態)的特徴を変化させることができる。
【0073】
特定の実施の形態において、軸方向の伝播速度、半径方向の変形速度、変形温度、またはその任意の組合せを、最適化および制御することで、選択された破壊耐性などの、ステントの選択された機械的特性または所望の機械的特性を提供することができる。かかる実施の形態において、軸方向の伝播速度または半径方向の変形速度は、変形圧力、または熱源の平行移動速度またはそれらの組合せによって制御または調節することができる。
【0074】
変形プロセスの温度を使用して、結晶性ドメイン(結晶領域)の結晶化度およびサイズを制御することができる。一般に、結晶化は、ポリマーのTg乃至Tmの間の範囲の温度でポリマーにおいて生じる傾向を有する。この範囲における結晶化速度は温度に応じて変化する。図4は、結晶核形成速度(R)、結晶成長速度(RCG)、および結晶化の全体的な速度(RCO)の図式的なプロットを示す。結晶核形成速度は新しい結晶の成長速度であり、結晶成長速度は形成された結晶の成長の速度である。結晶化の全体的な速度は曲線RおよびRCGの合計である。
【0075】
特定の実施の形態において、変形の間のチューブの温度は、選択された結晶化度および結晶サイズの分布を提供する結晶化速度を有するように制御することができる。いくつかの実施の形態において、温度は、結晶核形成速度が結晶成長速度よりも大きい範囲でありえる。例えば、図4中に示されるように、温度は「X」によって示されるような範囲でありえる。かかる実施の形態において、温度は、結晶核形成速度が比較的高く、結晶成長速度が比較的低い範囲でありえる。例えば、温度は、結晶成長速度に対する結晶核形成速度の比率が2、5、10、50、100、または100以上である範囲でありえる。例示的な実施の形態において、温度は、約Tg乃至約0.6(Tm−Tg)+Tg、または約Tg乃至約0.9(Tm−Tg)+Tgでありえる。
【0076】
これらの条件の下で、結果として生じるポリマーは比較的小さく比較的多数の結晶性ドメイン(結晶領域)を有することができる。ドメインの数が増加し、結晶性ドメイン(結晶領域)のサイズが減少すると、ポリマーの破壊靭性を、脆性挙動を減少させるか、または最小限として、増大させることができる。記述されるような変形およびポリマーチューブによって、結晶のサイズは、約15ミクロン未満、約10ミクロン未満、約6ミクロン未満、約2ミクロン未満、または約1ミクロン未満の範囲とすることができる。
【0077】
図5は、PLLA(ポリ(L−ラクチド))のRCG(結晶成長速度)についての実験結果を示す(Eur. Polymer Journal, 2005)。領域Yにおいて、速い結晶核形成速度および遅い結晶成長速度を有し、領域Zにおいて、遅い結晶核形成速度および速い結晶成長速度がある。
【0078】
特定の実施の形態において、プロセシングパラメータを変更して、高い配向度を有するポリマー鎖を有する比較的小さな結晶性ドメイン(結晶領域)を有するアモルファス組織により構成されるモルフォロジー(形態)を得ることができる。結晶性ドメイン(結晶領域)のサイズは、図4に示される範囲Xにおける温度の調節によって、最小限にすることができる。圧力およびノズルの移動速度を調節して所望の機械的特性を得ることもできる。後述の実施例において示されるように、変形圧力およびノズルの移動速度を調節して、変形したポリマーチューブの強度および靭性を増大させることができる。
【0079】
ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性、または生体侵食性でありえる。生体安定性は、生体分解性でないポリマーを指す。用語、生体分解性、生体吸収性、および生体侵食性は交換可能に使用され、血液などの体液に曝露された場合に、完全に分解および/または侵食されることができ、身体によって徐々に再吸収、吸収および/またはが消失されることができるポリマーを指す。分解プロセスおよび結果的な吸収プロセスならびにポリマーの除去は、例えば加水分解、代謝プロセス、全体侵食または表面侵食および同種のものによって引き起こされうる。
【0080】
分解、侵食、吸収、および/または再吸収のプロセスが完了した後、ステントの一部が残らないか、または生体安定性のスキャフォールド上にコーティングを適用した事例においては、ポリマーがデバイス上に残らないことが理解される。いくつかの実施の形態において、非常にごくわずかな痕跡または残渣が残されていてもよい。生体分解性のポリマーから製作されたステントでは、ステントは、例えば、血管開通の維持および/または薬物送達などのその意図された機能が遂行されるまでの時間の継続期間において、身体の中に残るように意図されている。
【0081】
埋込み可能な医療デバイスの製作またはコーティングに使用することができるポリマーの代表的な例は、ポリ(N‐アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ハイドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリハロゲン化ビニリデン(ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。使用することができるポリ(乳酸)に基づいた他のタイプのポリマーは、グラフトコポリマー、ABブロックコポリマー(「ジブロック−コポリマー」)またはABA型ブロックコポリマー(「トリブロック−コポリマー」)などのブロックコポリマーまたはその混合物を含んでいる。
【0082】
埋込式医療デバイスの製造またはコーティングにおける使用にとりわけ十分に適合するポリマーのさらなる代表例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(通称名EVOHまたは商標名EVALとして一般的に知られる)、ポリ(ブチルメタアクリレート)、ポリ(ビニリデンフルオライド−コ−ヘキサフルオロプロペン)(例えばニュージャージー州Thorofare所在のSolvay Solexis PVDFから入手できるSOLEF 21508)、ポリビニリデンフルオライド(あるいは、ペンシルベニア州Philadelphia所在のATOFINA Chemicalsから入手できるKYNARとして知られる)、エチレンビニルアセテートコポリマー、およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0083】
以下で説明する実施例および実験データは、説明の目的のためのみに開示されるものであり、本発明の限定を一切意味しない。以下の実施例は本発明の理解を支援するために与えられるが、本発明が実施例の特定の材料または手順に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0084】
以下の実施例は、拡張したPLLAチューブのモルフォロジー(形態)および機械的特性の調整または最適化について記述する。市販で入手可能なバルーンブローアーまたはバルーン拡張器を、ポリマーチューブを半径方向に拡張するために使用した。拡張器は異なるプロセス条件でのモルフォロジー(形態)の変化を可能にするように改造された。改造された拡張器は変位制御機能を有している。変位制御機能は、同じソースまたは押し出しチューブのロットからの異なった機械特性を有する拡張チューブのサンプルの製作を可能にする。
【0085】
ポリマーチューブのモルフォロジー(形態)およびステントの機械的特性に対する3つのプロセスパラメータの影響を調査した。これらのパラメータは、変形温度、変形圧力およびノズルの移動速度を含んでいる。チューブは各々のパラメータについての2つの異なる値を使用して変形させ、チューブおよびステントの特性に対するパラメータの影響、ならびにパラメータの値の異なる組合せについて検討した。これらの値の3つの組合せを使用して変形操作を実行して、最適値および組合せのパラメータの値を決定した。
【0086】
表1は、変形温度ならびに相対的な変形の圧力および速度の値を示す。高温および低温、ならびに高圧および低圧、ならびに低速および高速のノズルの移動速度を使用した。異なるパラメータの値は、異なる結晶化速度、半径方向の変形速度、および軸方向の変形速度をもたらすものと考えられる。高温は、低温に比べて、より大きな結晶化速度をもたらす。高圧は、低圧に比べて、より大きな半径方向の変形速度をもたらす。高速のノズルの移動速度は、低速のノズルの移動速度よりも大きな軸方向の変形速度をもたらす。
【0087】
【表1】

【0088】
チューブは、表1において示される3つの異なる組合せまたはパラメータの値のオプションを使用して変形させられた。表2は、プロセシングパラメータの値の3つの組合せを示す。
【0089】
【表2】

【0090】
ポリマーチューブは、各々のオプションについてのプロセシング条件で変形させた。続いて、チューブは機械的検査用のステントへと製作された。図6は、検査において使用したステントのステントパターンを示す。ステントは3.0mmの展開用にデザインされた。ステントは16時間、摂氏40度のオーブンにおける熱硬化によって老化させた。ステントは、検査において破損を誘導するために、3.5mmおよび4.0mmに展開した。この検査技術は、極限条件での早期のステントの破損の観察を可能にする。ステントは、同じ寸法を有する拡張されたチューブであって、異なるプロセシング条件により拡張されたチューブから製作された。
【0091】
ステントの靭性は、3.5mmおよび4mmの直径で展開した場合のゼロ時間時点でのステントサンプル中に観察されたクラックの数の比較によって査定された。図7は、オプション2およびオプション3を使用して加工したチューブから製作されたステントにおいて観察されたクラックの数を示すグラフである。2つの異なるクラックサイズの範囲が定められた。「>25%」は、ストラットの幅の25%を超えるクラックを示す。「>50%」は、ストラットの幅の50%を超えるクラックを示す。図7において示されるように、各々のクラックサイズについてのオプション3のステントのクラックの数は、オプション2のステントの対応するクラックサイズのものよりも少ない。
【0092】
表3は、オプション1およびオプション2のパラメータにより加工されたチューブから製作されたステントについてのクラックのデータを示す。各々のオプションによる4つのステントについての結果が示される。表3では、3.5mmまで展開したステントの各々のクラックの範囲が示される。オプション2のステントについてのクラックの累積数は、オプション1のステントについてのクラックの累積数よりも少ないものといえる。検査されたステントのうちのどれについても、3.5mmにおいては、破断されたストラットは観察されなかった。オプション1のステントは、4mmの展開においては、オプション2のステントよりもより多くの破断されたストラットを有していた。
【0093】
【表3】

【0094】
表4は、表2において示される3つのプロセシングオプションの比較を要約する。表4に示されるように、オプション3は、図7および表3において実証される最もよい機械的パフォーマンスを提供する。変形したチューブの外観もプロセシング条件によって影響される。オプション3のパラメータは、透明な外観を有するチューブをもたらす。ひとつにはより低い温度が多数のより小さな結晶性ドメイン(結晶領域)の形成をもたらすために、オプション3が最もよい機械的パフォーマンスを提供するものと考えられる。さらに、より遅い変形速度が、内部応力が減少された配向した分子構造の発達を促進するために、オプション3はより優れているものといえる。
【0095】
【表4】

【実施例2】
【0096】
表5は、3つのステント材料について優れたステントパフォーマンスを提供する、チューブの拡張のための望ましいプロセシング条件を示す。第1の材料は100%PLLAである。第2のものは、靭性を増大させるために分散したエラストマーブロックコポリマーを有するPLLAを含むPLLA/エラストマーポリマーブレンドである。エラストマーコポリマーは、(CL−co−GA)−b−PLLAである。(CL−co−GA)ブロックは分散したエラストマー相を形成し、PLLAブロックは、PLLAマトリックスとエラストマー相との間の接着を増強する。第3の材料は、分散したバイオセラミックナノ粒子を有するポリマーブレンドである。
【0097】
【表5】

【実施例3】
【0098】
以下の実施例は、拡張したPLLAチューブのモルフォロジー(形態)に対する変形温度の影響に関する研究について記述する。表6は、研究された4つのサンプルについて示す。ステントサンプルの1および4は摂氏200度で拡張したチューブから製作され、サンプルの2および3は摂氏300度で拡張したチューブから製作された。
【0099】
【表6】

【0100】
示差走査熱量測定法(DSC)を使用して、サンプルの各々の結晶化度を決定した。表7は、結晶化のエンタルピー、融解のエンタルピー、および各々のサンプルについての結晶化度%を示す。予想されるように、結晶化度%は、より高い温度におけるより高い結晶成長速度のために、サンプル2および3よりもサンプル1および4においてより低い。
【0101】
【表7】

【0102】
広角X線散乱(WAXS)を使用して、拡張したチューブにおける結晶サイズを測定した。チューブサンプルは、チューブの軸に沿って水平およびチューブの軸に垂直に鉛直の両方でスキャンした。表8は、4つのステントサンプルについてのWAXSの結果を示す。予想されるように、結晶成長速度がより低い温度においてはより小さいために、サンプル1および4は、サンプル2および3よりも小さな結晶サイズを有していた。
【0103】
【表8】

【0104】
本発明の特定の実施の形態を示し、記述してきたが、本発明のより広い態様を逸脱しない限り、変更および変形を施すことも可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項はその範囲において本発明の真の精神および範囲に含まれる全ての変更および変形を包含する。
【符号の説明】
【0105】
100 ステント
110 ストラット(ステント)
120 ストラット(直線状部分)(ステント)
130 ストラット(屈曲要素)(ステント)
140 ストラット(屈曲要素)(ステント)
150 ストラット(屈曲要素)(ステント)
160 軸(ステント)
200 チューブ
205 外径(チューブ)
210 内径(チューブ)
215 外側表面(チューブ)
220 円筒軸(チューブ)
300 ブローモールド成形システム
301 ポリマーチューブ
305 変形前の外径(ポリマーチューブ)
310 モールド型
315 内径(モールド型)
320 遠位端部(ポリマーチューブ)
321 近位端部(ポリマーチューブ)
325 矢印(流体の送り方向)
330 ノズル
335 矢印(加熱した流体の流れ方向/ノズル)
340 矢印(加熱した流体の流れ方向/ノズル)
355 矢印(加熱した流体の流れ方向/ノズル)
360 構造部材(ノズル)
365 矢印(平行移動方向/ノズル)
367 矢印(平行移動方向/ノズル)
370 変形したセクション(ポリマーチューブ)
372 変形中のセクション(ポリマーチューブ)
380 矢印(半径方向の変形)
382 矢印(軸方向の変形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーチューブが周囲よりも高い内部圧力を有し、前記ポリマーチューブが前記ポリマーチューブの軸に沿って加熱されるにつれて前記ポリマーチューブの半径方向の変形が前記軸に沿って伝播するように、前記変形したポリマーチューブからステントを製作する際に使用される前記ポリマーチューブを半径方向に変形させるステップと;
前記ポリマーチューブから製作されるステントの選択された破壊耐性を提供するために、前記伝播の速度または前記半径方向の変形の速度を制御するステップと;
前記変形したポリマーチューブからステントを製作するステップとを備える;
ステントを製作する方法。
【請求項2】
前記ポリマーチューブから製作されるステントの選択された破壊耐性を提供するために、前記ポリマーチューブの温度を制御するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半径方向の変形の速度は、前記ポリマーチューブの内圧を制御するステップによって制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、生体安定性ポリマー、生体分解性ポリマー、またはその組合せにより構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステントの選択された破壊耐性は、半径方向に拡張された場合の前記ステントの破壊耐性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーチューブの前記伝播の速度または前記半径方向の変形の速度を制御するステップは、前記伝播の速度または前記半径方向の変形の速度を調節するステップまたは維持するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーチューブは、PLLA、PLGA、その混合物およびコポリマーにより構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリマーチューブが周囲よりも高い内部圧力を有し、前記ポリマーチューブが前記ポリマーチューブの軸に沿って加熱されるにつれて前記ポリマーチューブの半径方向の変形が前記軸に沿って伝播するように、前記変形したポリマーチューブからステントを製作する際に使用される前記ポリマーチューブを半径方向に変形させるステップと;
前記ポリマーチューブから製作されるステントの選択された破壊耐性を提供するために、前記ポリマーチューブの温度を制御するステップと;
前記変形したポリマーチューブからステントを製作するステップとを備える;
ステントを製作する方法。
【請求項9】
前記温度を制御して、選択された破壊耐性を提供する前記ポリマーチューブのモルフォロジーを提供する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステントの選択された破壊耐性は、半径方向に拡張された場合の前記ステントの破壊耐性を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記温度を制御して、分散させた結晶領域を有する非晶性マトリックスにより構成された前記変形したポリマーチューブのモルフォロジーを提供する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶領域は、約10ミクロン未満の結晶サイズにより構成された、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度を制御して、約40%未満の結晶化度により構成された前記変形したポリマーチューブのモルフォロジーを提供する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記温度は、約Tg乃至約0.6(Tm−Tg)+Tgとなるように制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーチューブの内圧を変形圧力にまで増大させるステップと;
変形温度まで前記ポリマーチューブを加熱するために前記ポリマーチューブの軸に沿って熱源を移動させるステップと;
前記ポリマーチューブの加熱および前記内圧の増大が前記ポリマーチューブの半径方向の拡張を可能とするように、前記熱源が前記ポリマーチューブの軸に沿って移動するにつれて前記ポリマーチューブが半径方向に拡張することを許容するステップと;
前記ポリマーチューブから製作されるステントの選択された破壊耐性を提供するために、変形圧力、熱源の平行移動速度、変形温度からなる群から選択される1つまたは複数のプロセスパラメータを制御するステップと;
前記変形したポリマーチューブからステントを製作するステップとを備える;
ステントを製作する方法。
【請求項16】
前記ステントの選択された破壊耐性は、半径方向に拡張された場合の前記ステントの破壊耐性を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度を制御して、分散した結晶領域を有する非晶性マトリックスにより構成された前記変形したポリマーチューブのモルフォロジーを提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記温度を制御して、約40%未満の結晶化度により構成された前記変形したポリマーチューブのモルフォロジーを提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーチューブから製作されるステントの選択された破壊耐性を提供するために、変形圧力、熱源の移動速度、変形温度からなる群から選択される、前記ポリマーチューブの半径方向の変形プロセスの1つまたは複数のプロセスパラメータを決定するステップと;
前記変形したポリマーチューブからステントを製作するステップとを備え;
前記変形プロセスは:
前記ポリマーチューブの内圧を変形圧力にまで増大するステップと;
前記ポリマーチューブを変形温度にまで加熱するために、前記ポリマーチューブの軸に沿って熱源を移動させるステップと;
前記ポリマーチューブの加熱および前記内圧の増大が前記ポリマーチューブの半径方向の拡張を可能とするように、前記熱源が前記ポリマーチューブの軸に沿って移動するにつれて前記ポリマーチューブが半径方向に拡張することを許容するステップとを有する;
ステントを製作する方法。
【請求項20】
ポリラクチドチューブの内圧を120psi乃至130psiの範囲にまで増大させるステップと;
前記ポリラクチドチューブを摂氏190度乃至摂氏210度の範囲にまで加熱するために、0.5mm/s乃至0.7mm/sの範囲の移動速度で前記ポリラクチドチューブの軸に沿って熱源を移動させるステップと;
前記ポリラクチドチューブの加熱および前記内圧の増大が前記ポリラクチドチューブの半径方向の拡張を可能とするように、前記熱源が前記ポリラクチドチューブの軸に沿って移動するにつれて前記ポリラクチドチューブが半径方向に拡張することを許容するステップと;
前記変形したポリラクチドチューブからステントを製作するステップとを備える;
ステントを製作する方法。
【請求項21】
拡張前の前記ポリラクチドチューブの壁の厚みが0.03mm乃至0.05mmの範囲、およびチューブの直径が1mm乃至3mmの範囲である、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−505982(P2011−505982A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538092(P2010−538092)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/086054
【国際公開番号】WO2009/076350
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】