説明

プッシュ錠

【課題】簡単な構成で解錠番号の設定を機械的に行うことができ、部品点数が少なくメンテナンスも容易なプッシュ錠を提供する。
【解決手段】複数のプッシュボタン18が突没自在に出入りする前面板部12を有する。前面板部12の内側の面に当接配置された摺動板部82と、摺動板部82の側端面から側方に延設された複数のスライド凸部50と、摺動板部82に設けられた板状部分であって、前面板部12と対向する面に形成された前カム溝88aを備える。反対側には、後カム溝88bが形成されたカム板部88を備える。回転ツマミ24の回転動作と、スライダ40のスライドを相互に連動させるツマミジョイナ42を備える。スライダ40のスライド動作と、デッドボルト26の回転動作を相互に連動させるデッドボルトジョイナ44を備える。プッシュボタン18の円柱部の側面に、軸方向に所定の間隔を開けて、一対のスライド制御溝48a,48bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、郵便物の受け箱や荷物収納用のロッカー等の扉に取り付けられるプッシュ錠であって、特に解錠時に押圧するボタン番号の設定及び変更を機械的に行うプッシュ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプッシュ錠として、例えば、特許文献1に開示されているように、突没自在に取り付けられた複数のプッシュボタン(キー駒)と、プッシュボタンに嵌装された鍵型カム片と、プッシュボタンを突出させるためのリセットプレートと、鍵型プレートとの位置関係によって施錠又は解錠の状態を決定する開閉プレートと、鍵型カム片との位置関係によって解錠又は施錠の状態を規定するセットプレート、及び上記各部材を動作可能に支持する筺体(キーケーシング)等で構成されたキー装置がある。このキー装置は、各プッシュボタンやセットプレート等を所定の手順で移動させることよって、個々の鍵型カム片とセットプレートとの位置関係を自在に変更し、解錠可能とするプッシュボタンを選択的に設定することができる。従って、郵便受け箱等の管理者は、個々のプッシュボタンにボタン番号を付番しておけば、解錠可能とするボタン番号(以下、解錠番号と称す)を自ら設定し、且つ自由に変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−328613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のキー装置は、部品点数が多く、構造も複雑で組み立て工数もかかるため、部材費や組立費が比較的高価となるものであった。また、多くの部品が複雑に摺動又は嵌合する構造のため、メンテナンスを頻繁に行う必要があった。
【0005】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、簡単な構成で解錠番号の設定を機械的に行うことができ、部品点数が少なくメンテナンスも容易なプッシュ錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、荷物や郵便物等の物品を収容する収容空間の開口部を開閉する扉に取り付けられ、前記扉の前面側に位置し突出状態に配置された複数のボタン部分のうち、特定のボタン部分を押込状態にすることによって解錠するプッシュボタン錠であって、使用者が操作する回転ツマミと、前記扉を閉じたとき前記収容空間の開口部の縁部に設けられた係合部材に係合して閉扉状態を保持するデッドボルトと、円柱部と前記円柱部の一端に延設された前記ボタン部分である前頭部と前記円柱部の他の一端に延設された後頭部とを有するプッシュボタンと、前記プッシュボタンの前記円柱部が突没自在に出入りする複数のボタン孔が形成された前面板部と、前記前面板部に対面した後面板部と前記複数のプッシュボタンを支持する係合板部等のボタン支持部とが設けられた裏板と、前記筺体と前記裏板の内側空間に配置され、前記前面板部の内側の面に当接配置された摺動板部と、前記摺動板部の側端面から側方に延設された複数のスライド凸部と、前記摺動板部に設けられた板状部分であって、前記前面板部と対向する面に前カム溝が形成されているとともに前記後面板部と対向する面に後カム溝が形成されたカム板部とが設けられ、前記ボタン孔の整列方向にスライド可能に保持されたスライダと、前記筺体の前面板部に開口された軸孔部分に配置され、前記スライダの前記前カム溝及び前記回転ツマミに係合し、前記回転ツマミの回転動作と前記スライダのスライド動作を相互に連動させるツマミジョイナと、前記裏板の後面板部に開口された軸孔部分に配置され、前記前記スライダの前記後カム溝及び前記デッドボルトに係合し、前記スライダのスライド動作と前記デッドボルトの回転動作を相互に連動させるデッドボルトジョイナとを備え、前記プッシュボタンの前記円柱部の側面であって中心軸を挟んで対向する位置に、軸方向に所定の間隔を開けて、一対のスライド制御溝が設けられ、前記スライド制御溝は、前記スライド凸部が当該スライド制御溝の内側を通過可能な溝形状を有し前記複数のプッシュボタンが突出及び押し込み方向に移動し、前記スライド制御溝が前記複数のスライド凸部に対向する位置にあるとき、前記回転ツマミを正方向に回すと、前記スライド凸部が前記スライド制御溝の内側を通過して前記スライダが正方向にスライド移動し、同時に、当該スライド移動に連動して前記デッドボルトが回転し、前記係合部材との係合が解かれることによって解錠され、前記スライド制御溝の位置が前記複数のスライド凸部に対向する位置以外の位置にあるとき、前記プッシュボタンと前記スライド凸部との干渉によって、前記回転ツマミの正方向の回転及び前記スライダの正方向のスライド移動が制限され、前記デッドボルトと前記係合部材とが係合する施錠状態が保持されるプッシュ錠である。
【0007】
また、前記スライダの前記摺動板部に、前記複数のプッシュボタンの前記後頭部の先端角部に当接する傾斜面が形成された複数のボタン押戻部が設けられ、前記回転ツマミを負方向に回すことによって前記スライダが負方向にスライド移動し、前記複数のプッシュボタンを一律に突出状態にする構成を備えている。
【0008】
また、前記スライダの前記摺動板部に、前記複数のプッシュボタンの前記後頭部の先端角部に当接する傾斜面が形成された複数のボタン押戻部が設けられ、前記デッドボルトが回転することによって前記スライダが負方向にスライド移動し、前記スライダ複数のプッシュボタンを一律に突出状態にする構成を備えている。
【0009】
また、前記裏板のボタン支持部は、前記後面板部から内側に向けて立設された可撓性を有する係合板部と、前記係合板部の側面に形成された係合凸部とで構成され、前記プッシュボタンの側面には、前記係合凸部を係合可能な突没位置決め溝が形成され、前記プッシュボタンは、撓みの復帰力を有する前記係合板部と前記筺体の前記ボタン孔の内壁との間で挟持され、前記突没位置決め溝又は前記スライド制御溝に係合した前記係合凸部によって突出状態及び押込状態の位置決めがなされている。
【0010】
また、前記前面板部は、その周縁部の背面側に立設された側壁部を有し前記ボタン孔が前記前面板部内に一方向に整列して配置された中空の筺体に設けられ、前記筺体は、前記前面板部と側壁部が連続する内側角部に、前記ボタン孔の周縁部から背面側に回転止ガイドが立設され、前記プッシュボタンは後頭部の側面に回転止突起が形成され、前記プッシュボタンが突出状態のとき、前記プッシュボタンは、前記回転止ガイドが前記回転止突起と係合することによって自身の回転が制限されて保持され、前記プッシュボタンが押込状態のとき、自身が回転自在に保持される構成を備えている。
【0011】
さらに、前記複数のプッシュボタン及びボタン孔は、一方向の複数列に整列して配置されている。
【発明の効果】
【0012】
この発明のプッシュ錠によれば、部品点数の少ないシンプルな構造で実現することができ、安価で組み立て易くメンテナンスも容易である。そして、この発明のプッシュ錠は、郵便受け箱等の管理者が特定のプッシュボタンを180度回すことによって、解除番号の設定と変更を容易に行うことができるものである。
【0013】
また、回転式デッドボルトを用いることにより、使用者が操作する回転ツマミやデッドボルト自体の回転方向をあらかじめ自由に設定しておくことができる。また、扉を開閉する時の静音化も容易である。
【0014】
また、プッシュボタンをバネ性を備えた係合板部と係合凸部で成るボタン支持部で支持することによって、プッシュボタンの突没動作が俊敏で歯切れよく行なわれ、また、そのプッシュボタンの動きが圧力として使用者の指先に伝わり、使用感が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態のプッシュ錠を示す正面図(a)、平面図(b)及び左側面図(c)である。
【図2】この実施形態のプッシュ錠が取り付けられた郵便受け箱を示す斜視図である。
【図3】図3の郵便受け箱の扉を開閉する様子を示す横断面図(a),(c)、及びデッドボルトの動作を示す模式図(b),(d)である。
【図4】この実施形態のプッシュ錠の構成部品を示す分解斜視図である。
【図5】この実施形態の回転ツマミを示す斜視図(a),(b)である。
【図6】この実施形態のデッドボルトを示す斜視図(a),(b)である。
【図7】この実施形態のプッシュボタンを示す正面図(a)、下面図(b)、斜視図(c),(d)である。
【図8】この実施形態の筺体を示す斜視図(a),(b)である。
【図9】この実施形態の裏板を示す斜視図(a),(b)である。
【図10】この実施形態の筺体と裏板でプッシュボタンを支持する構造を示す部分断面図(a),(b)である。
【図11】この実施形態のスライダを示す斜視図(a),(b)である。
【図12】この実施形態のツマミジョイナを示す斜視図(a),(b)である。
【図13】この実施形態のデッドボルトジョイナを示す斜視図(a),(b)である。
【図14】この実施形態のツマミジョイナの回転動作とスライダのスライド動作の関係を示す模式図(a),(b),(c)である。
【図15】この実施形態のスライダのスライド凸部とプッシュボタンのスライド制御溝の位置関係を示すA−A断面図(a),(b),(c)である。
【図16】この実施形態のスライダがプッシュボタンを突出状態にリセットする動作を示す模式図である。
【図17】この実施形態のデッドボルトジョイナの回転動作とスライダのスライド動作の関係を示す模式図(a),(b),(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明のプッシュ錠の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態のプッシュ錠10は、後述するように郵便受け箱30の開口部を開閉する扉32に取り付けられ、ボタン番号が付与された8個のボタン部材を用いて扉32の施錠と解錠を可能にする。そして、プッシュ錠10は、図2に示すように、ビルやマンション等に設けられる集合式の郵便受け箱30等で使用され、各郵便受け箱30の扉32に1個ずつ取り付けられるものである。
【0017】
プッシュ錠10は、図1に示すように、略矩形の前面板部12と、その裏面周縁部分に立設する側壁部14とで成る筺体16を備えている。前面板部12の中央部には長手方向2列に整列してボタン孔14aが8箇所に形成され、筺体16の内側に配置された8個のプッシュボタン18の前頭部18aが各ボタン孔12aから突出している。各プッシュボタン18にはボタン番号「1」〜「8」が付番され、ボタン孔12aの近傍に各々表示されている。また、側壁部14の上端に裏板20が取り付けられ、筺体16の開口部分を塞ぐようにネジ22で固定されている。
【0018】
前面板部12の表面の左端部分には回転ツマミ24が取り付けられている。回転ツマミ24は、使用者の操作によって時計回り(以下、正方向とする)と反時計回り(以下、逆方向とする。)に、初期位置から±60度ほど回すことができる。 回転ツマミ24は、一体成形された合成樹脂であり、図5に示すように、略円柱形状の本体24aと、本体24aの側面から側方に延設されたツマミ部24bを備えている。本体24aは、中心が回転ツマミ24の回転軸であり、一方の底面に後述するツマミジョイナ42の嵌合凸部74aに嵌合する嵌合凹部24cが形成されている。ツマミ部24bは、使用者が回転ツマミ24を回転させ易くする取っ手の働きをする。
【0019】
回転ツマミ24に対して筺体16と裏板20を挟んで反対側には、略長円形のデッドボルト26が取り付けられている。デッドボルト26は、回転ツマミ24の回転軸と同心に回転軸を有し、正方向及び逆方向に回転する。なお、デッドボルト26は、回転ツマミ24と対向する側の面に、前面板部12とほぼ平行な係合面26aが設けられ、反対側の面に、前面板部12に対して所定の傾斜角を有する摺動面26bが設けられている。
【0020】
デッドボルト26は、一体成形された合成樹脂であり、上述の通り略楕円形状を有し、郵便受け箱30の係合部材34の裏面34b側に係合するほぼ平坦な係合面26aと、係合面26aの端縁から連続して形成され、係合部材34の表面34a側に摺接する2つの連続平面で成る摺動面26bを備えている。さらに、図6に示すように、デッドボルト26の長手方向の一方の端部に、回転軸となるネジ36aを挿通するネジ穴26cが開口されている。そして、デッドボルト26は、図4に示すように、ネジ36a及びナット36bを介して後述するデッドボルトジョイナ44に取り付けられ、デッドボルトジョイナ44がプッシュ錠10に組み付けられた状態で、係合面26aが筺体16の前面板部12とほぼ平行になる。なお、係合面26bには、平坦な面の所定部分に筋状の凸凹溝が形成され、係合部材34との係合動作がより円滑に行われるように調節されている。
【0021】
プッシュボタン18は、鋳造やプレス加工等によって形成された金属体であり、図7に示すように、断面円形の円柱部18aと、円柱部18aの一端を断面同一に延設された前頭部18bと、円柱部18aの他端に延設された後頭部18cとを有している。
【0022】
円柱部18aは、筺体16に円形に開口したボタン孔12a内を突没自在に出入りする部分である。また、断面が円形であるため、当該摺動方向の軸を中心に回転することができる。
【0023】
前頭部18bは、ボタン孔12aから外側に突出し、使用者が操作するボタン部分として指で押圧等される部分である。ここでは、円柱部18aと断面形状が同じため、使用者がプッシュボタン18を押し込んだとき、前頭部18bが筺体16のボタン孔12aの周縁部に干渉しない。
【0024】
また、円柱部18aには、後頭部18cとの境界付近部分の側面であって、上記中心軸を挟んで対向する位置に一対の回転止め突起46が設けられている。回転止め突起46は、後述する筺体16の回転制御部49と係合したとき、プッシュボタン18の回転移動を妨げる働きをする。回転止め突起46と回転制御部49については、後で述べる。さらに、円柱部18aには、後頭部18cとの境界付近の側面であって、一対の回転止め突起46の位置に対して90度ずれた位置に、断面が矩形に凹んだ第一及び第二のスライド制御溝48a,48bが一対に設けられている。スライド制御溝48a,48bの溝形状は互いに等しく、その溝幅及び深さは、後述するスライダ40のスライド凸部50が溝内を自在にスライドできる寸法に設定されている。また、第一のスライド制御溝48aは、後頭部18cとの境界に配置され、第二のスライド制御溝48bは、やや前頭部18b寄りに配置されている。2つのスライド制御溝48a,48bの位置ずれの寸法(上記中心軸の方向のピッチ)をdと定義すると、ここでは、ピッチdが各溝の幅寸法とほぼ等しくなっている。円柱部18aの側面であって、第一のスライド制御溝48aと上記中心軸を挟んで対向する位置に、断面が略半円状に凹んだ突没位置決め溝52が設けられている。その溝幅及び深さは、後述する裏板20の係合突起54aが係合可能で、且つ後述するスライダ40のスライド凸部50が溝内をスライド移動できない小さな寸法に設定されている。
【0025】
後頭部18cは、円柱部18aから連続した矩形状で角部が大きく面取りされた略正方形の断面形状を有している。そして、第一のスライド制御溝48a及び突没位置決め溝52からピッチdだけ離れた位置に、突没位置決め溝56a,56bが設けられている。突没位置決め溝56a,56bの溝形状は、突没位置決め溝52と同様である。さらに、後頭部18cの先端面の中央に、プッシュボタン18を回転させるためのマイナス形ドライバと係合するドライバ用溝58が設けられている。ドライバ用溝58は、第一のスライド制御溝48a及び第二のスライド制御溝48bと平行に設けられ、ドライバ用溝58で区分けされた当該先端面の一方の部分に、プッシュボタン18の回転位置の目印になるマーク60が刻印表示されている。
【0026】
筺体16は、一体成形された合成樹脂であり、上述のように、略矩形の前面板部12と、その裏側の面の周縁部分から立設した側壁部14とを備えている。前面板部12は、図8(a)に示すように、中央部に8個のボタン孔12aが設けられ、一方の端部に軸孔62が設けられ、後述するツマミジョイナ42の軸部76と、回転ツマミ24の本体24aに嵌合する嵌合凸部74が通過することができる。
【0027】
また、図8(b)に示すように、前面板部12の内側の面の中央部を長手方向に横切る位置に、断面が矩形に凹んだレール状のガイド溝63が設けられている。ガイド溝63は、後述するスライダ40の筋状突起84と係合し、スライダ40のスライド移動を補助する働きをする。
【0028】
さらに、図8(b)に示すように、前面板部12と側壁部14とが連続する筺体16の内側角部に、プッシュボタン18の回転動作を制御する回転制御部49が設けられている。回転制御部48は、各ボタン孔12aの内壁の約3分の1の部分を延長する円弧面を形成する小径段部49aと、小径段部49aの円弧面と同心で僅かに大きな直径の円弧面を延長する大径段部49bで構成されている。小径段部49aの長さ(ボタン孔12aとの境界から大径端部49bとの境界までの長さ)は、プッシュボタン18のピッチdとほぼ等しい。小径段部49aと大径段部49bの半径の差である段差は、プッシュボタン18の回転止め突起46の突出高さ寸法よりも僅かに大きい寸法である。従って、プッシュ錠10が組み立てられた状態でプッシュボタン18が突没方向に移動したとき、一対の回転止め突起46が大径段部49bの位置にあるときは、プッシュボタン12を回すことができる。一方、回転止め突起46がピッチdだけ突出方向に移動して小径段部49aの位置にあるときは、一対の回転止め突起46が小径段部49aの上端面49cに係止され、プッシュボタン12を回すことができない。
【0029】
また、筺体16の側壁部14の根元部分であって、隣り合う回転制御部49の間に、矩形の裏板固定孔64が複数設けられている。裏板固定孔64は、筺体16に裏板20を組み付けるとき、後述する裏板20の固定片66の先端部と嵌合して裏板20を一時的に保持し、ネジ22で固定するまでの間、仮固定する働きをする。裏板20は、一体成形された合成樹脂であり、筺体16の開口部である側壁部14上端を塞ぐ後面板部68を備えている。図9に示すように、後面板部68には、筺体16に取り付けられた状態でプッシュボタン18のドライバ用溝58を外部に露出させ、外部からを操作することを可能にするドライバ用孔70が設けられている。
【0030】
また、後面板部68の長手方向の一方の端部には、後述するデッドボルトジョイナ44を収容するために外向きに膨らんだジョイナ収容部72が設けられ、さらに、ジョイナ収容部72の中央部に、デッドボルト26とネジ固定されるデッドボルトジョイナ44の軸部78が通過可能な軸孔80が設けられている。後面板部68の周縁部の所定位置に、裏板20を筺体16に仮固定するための固定片66が複数設けられている。固定片66は、先端部に突起が設けられ、筺体16の裏板固定孔64に嵌合可能に形成された板状部分である。さらに、後面板部68の中央部には、プッシュボタン18を支持するボタン支持部である複数の係合板部54が設けられ、その先端部に係合突起54aが形成されている。係合板部54は、後面板部68から内側に向けて立設され、板厚方向に可撓性を有している。また、係合凸部54aは、プッシュボタン18の突没位置決め溝52,56a,56b、及びスライド制御溝48a,48bに対して、係合板部54の可撓方向に係合可能に設けられている。
【0031】
次に、組み上げられたプッシュ錠10において、後面板部68の係合板部54がプッシュボタン18を支持する動作を、図10に基づいて説明する。まず、図10(a)は、図1に示す8個のプッシュボタン18のうち、番号「1」と「5」が付されたプッシュボタン18(1)及び18(5)が、突出した状態で支持されている様子を示している。プッシュボタン18(1)は、撓みの復帰力を有する係合板部54と筺体16のボタン孔12aの内壁に挟持され、突没位置決め溝56bに係合した係合凸部54aによって突出状態の位置決めがされている。また、プッシュボタン18(5)は、同じく係合板部54と筺体16のボタン孔12a内壁に挟持され、突没位置決め溝56aに係合した係合凸部54aによって突出状態の位置決めがされている。
【0032】
プッシュボタン18(1),18(5)は、前頭部18aを所定の圧力で押すことによって、後面板部68の係合板部54が撓み、係合凸部54aの係合が解除され、押し込むことができる。そして、ピッチdだけ押し込まれると、図10(b)の状態に支持される。すなわち、プッシュボタン18(1)は、撓みの復帰力を有した係合板部54と筺体16のボタン孔12a内壁に挟持され、係合凸部54aが突没位置決め溝52に係合して押込状態の位置決めがされる。また、プッシュボタン18(5)は、同じく係合板部54と筺体16のボタン孔12a内壁に挟持され、係合凸部54aが第一のスライド制御溝48aに係合して押込状態の位置決めがされる。
【0033】
プッシュボタン18は、図10(a),(b)で例示した状態と、円柱部18aの中心軸を中心に180度回転した向きに設定される場合もあるが、同様の機構で支持される。
【0034】
なお、プッシュボタン18の突没の位置決めは、図10(a)と(b)に示す2段階で行われる。例えば、プッシュボタン18が図10(a)の突出状態よりもさらに突出しようとしても、プッシュボタン18の回転止め突起46が筺体16のボタン孔12a周縁部に係止されることによって防止され、反対に図11(b)の押込状態よりもさらに押し込もうとしても、プッシュボタン18の後頭部18cの角部が裏板20のドライバ用孔70周縁部に係止されることによって防止される。また、係合板部54の撓みの復帰力が作用することによって、プッシュボタン18が突出状態と押込状態の中間的な位置に停留することはない。
【0035】
また、プッシュボタン18の回転止め突起46と筺体16の回転制御部49との関係について述べると、図10(a)の突出状態では、回転止め突起46が小径段部49aの位置にあり、図10(b)の押込状態では、回転止め突起46が大径段部49bの位置にある。従って、プッシュボタン18は、押込状態においてのみ回転させることができる。
【0036】
スライダ40は、合成樹脂により一体成形され、筺体16と裏板20の内側の空間に配置されて、回転ツマミ24やデッドボルト26が回転することによって、長手方向にスライド可能に設けられた部材である。スライダ40は、図11に示すように、細長の摺動板部82を備え、さらに、摺動板部82の一方の面には、中央部を長手方向に横切る筋状突起84が設けられている。この摺動板部82は、筺体16の前面板部12の内側の面に当接配置され、筋状突起84がレール状のガイド溝63内に係合した状態で直線的にスライド移動することができる。
【0037】
摺動板部82の左右の端面には、上述したプッシュボタン18のスライド制御溝48a,48b内を通過可能なスライド凸部50が延設されている。スライド凸部50の長さは、プッシュボタン18の直径とほぼ等しい。
【0038】
摺動板部82の各スライド凸部50近傍部分には、筋状突起84の突出方向と反対向きにボタン押戻部86が立設されている。ボタン押戻部86は、先端部分にプッシュボタン18の後頭部18cの先端角部に当接可能な傾斜面86aが形成されており、摺動板部82が所定の方向にスライド移動すると、傾斜面86cによって後頭部18cが押圧され、押込状態のプッシュボタン18を突出状態に押し戻す働きをする。
【0039】
摺動板部82の長手方向の一端には、カム板部88が延設されている。カム板部88は、筺体16の前面板部12と対向する面に前カム溝88aが、裏板20の後面板部68と対向する面に後カム溝88bが各々形成されている。前カム溝88aは、後述するツマミジョイナ42のカム突起90と係合する。一方、後カム溝88bは、後述するデッドボルトジョイナ44のカム突起92と係合する。そして、スライダ40は、当該カム機構によって駆動され、プッシュボタン18が整列する方向にスライド移動することができる。
【0040】
ツマミジョイナ12は、合成樹脂により一体成形され、図12に示すように、円筒状の軸部76と、軸部76の側面から延設されたアーム94を備えている。アーム94は、軸部76のスライダ40に近接する側の端部に設けられ、スライダ40のカム板部88と対向するアーム先端部分に、前カム溝88a内に係合可能なカム突起90が形成されている。軸部76の反対側の端面には、十字形に配置された嵌合凸部74が設けられている。軸部76の中空部分は、嵌合凸部74に嵌合させて取り付けられた回転ツマミ24を固定するためのネジ38を通す孔である。
【0041】
また、アーム94のカム突起90が設けられたのと反対側の面には、バネ取り付け用突起96が設けられている。バネ取り付け用突起96は、プッシュ錠10に組み立てられた状態で、筺体16の所定部分に一端が接続された図示しないコイルバネが取り付けられる。このコイルバネは、所定の外力によってツマミジョイナ42が回転し、その外力が取り除かれるとツマミジョイナ42を回転の初期位置(回転の中心位置)に復帰させる働きをする。
【0042】
デッドボルトジョイナ44も合成樹脂により一体成形されたものであり、図13に示すように、円筒状の軸部78と、軸部78の側面から延設されたアーム98を備えている。アーム98は、軸部78のスライダ40に近接する側に寄せて設けられ、スライダ40のカム板部88と対向するアーム先端部分に、後カム溝88b内に係合可能なカム突起92が形成されている。軸部78の反対側の端面には。矩形の嵌合凸部100が設けられている。軸部78の中空部分は、嵌合凸部100に嵌合させて取り付けられたデッドボルト26を固定するためのネジ36aを通す孔である。
【0043】
また、アーム98のカム突起92が設けられたのと反対側の面には、バネ取り付け用突起102が設けられている。バネ取り付け用突起102は、プッシュ錠10に組み立てられた状態で、裏板20の所定部分に一端が接続された図示しないコイルバネが取り付けられる。このコイルバネは、所定の外力によってデッドボルトジョイナ44が回転し、その外力が取り除かれるとデッドボルトジョイナ44を回転の初期位置(回転の中心位置)に復帰させる働きをする。
【0044】
次に、上記の部材がプッシュ錠10に組み立てられたときの、ツマミジョイナ42とスライダ40で構成されるカム機構の動作と、スライダ40がスライド移動したときのプッシュボタン18の動作について、図14〜図16に基づいて説明する。図14は、プッシュ錠10を前面板部12の側から筺体16内を透視し、ツマミジョイナ42、スライダ40、プッシュボタン18を現わした模式図である。
【0045】
図14(a)は、ツマミジョイナ42の回転の初期位置であり、ツマミジョイナ42は、アーム94が図14の左側に向いている。このとき、スライダ40は、筋状突起88が図示しない筺体18のガイド溝63内に係合し、アーム94と同様に図14の左右方向に配置される。また、ボタンスイッチ18(1)〜18(8)は、スライダ40の摺動板部82の上下両側に配置されている。また、スライダ40のボタン押戻部86の傾斜面86aは、プッシュボタン18(1)〜18(8)の位置に対して左側にずれた位置に配置されている。
【0046】
図示しない回転ツマミ24を正方向に回すと、図14(b)に示すように、ツマミジョイナ42も軸部76を軸に正方向に回転する。すると、プッシュボタン18による制限を受けない場合は、ツマミジョイナ42のアーム90が左斜め上方に傾き、カム突起90がスライダ40の前カム溝88a内を移動し、スライダ40が左方向にスライド移動する。
【0047】
スライダ40が左方向に移動しようとするとき、スライダ40のスライド凸部50と近接するプッシュボタン18との干渉が問題になる。すなわち、プッシュボタン18の第一又は第二のスライド制御溝48a,48bが、スライド凸部50がスライドする位置にあれば干渉が生じない。例えば、図15(a)の場合、プッシュボタン18(1),(5)はいずれも突出状態であり、各々の第一のスライド制御溝48aがスライド凸部50の位置にある。従って、スライド凸部50とプッシュボタン18は干渉せず、図14(b)のスライド移動が円滑に行われる。しかし、図15(b)の場合、プッシュボタン18(1)が180度回転した状態で取り付けられ、突没位置決め溝52がスライド凸部50の位置にある。突没位置決め溝52は、スライド凸部50が内側を通過できない溝幅と深さに形成されているので、スライド凸部50と干渉が生じ、図14(b)のスライド移動が妨げられる。しかし、図15(b)のプッシュボタン18(1)を押し込んで図15(c)の状態にすれば、図15(a)と同様に、図14(b)のスライド移動が可能になる。
【0048】
一方、図14(a)の初期位置から回転ツマミ24を負方向に回すと、図14(c)に示すように、ツマミジョイナ42が軸部76を軸に負方向に回転する。すると、ツマミジョイナ42のアーム90が左斜め下方に傾き、カム突起90がスライダ40の前カム溝88a内を移動し、スライダ40が右方向にスライド移動する。このとき、スライド凸部50は、近接するプッシュボタン18から離れる方向に移動するためプッシュボタン18との干渉は生じず、スライダ40は円滑にスライド移動することができる。
【0049】
スライダ40が右方向にスライド移動するとき、スライダ40のボタン押戻部86は、全てのプッシュボタン18(1)〜18(8)を突出した状態にする動作を行う。例えば、図14(a)のように、スライダ40が初期位置にあるとき、図16(a)に示すように、プッシュボタン18(8)が押込状態、プッシュボタン18(7)が突出状態になっている場合を考える。その状態から、スライダ40が右方向に移動すると、プッシュボタン18(8)の後頭部18cの先端角部にボタン押戻部86の傾斜面86aが当接し、プッシュボタン18(8)が突出方向に押し戻されるように移動する。一方、プッシュボタン18(7)は当初から突出しているので、スライダ40が移動してもボタン押戻部86の傾斜面86aと接触することなく、そのまま突出状態が維持される。このようにして、全てのプッシュボタン18を突出状態にするいわゆるリセット動作が円滑に行われる。
【0050】
次に、プッシュ錠10に組み立てられたときの、デッドボルトジョイナ44とスライダ40で構成されるカム機構の動作について、図17に基づいて説明する。図17は、プッシュ錠10を後面板部68の側から内部を透視し、デッドボルトジョイナ44、スライダ40、プッシュボタン18を現わした模式図である。
【0051】
図17(a)は、デッドボルトジョイナ44が回転していない初期位置であり、デッドボルトジョイナ44は、アーム98が図17の左側に向いている。このとき、スライダ40は、図示しない筋状突起88が筺体18のガイド溝60内に係合し、アーム98と同様に図17の左右方向に配置されている。また、ボタンスイッチ18(1)〜18(8)は、スライダ40の摺動板部82の上下両側に配置される。また、スライダ40のボタン押戻部86の傾斜面86aは、プッシュボタン18(1)〜18(8)の位置に対して左側にずれた位置に配置されている。
【0052】
図示しないデッドボルト24を正方向に回すと、図17(b)に示すように、デッドゾルトジョイナ44も軸部78を軸に正方向(回転ツマミ24の側から見て正方向)に回転する。すると、デッドボルトジョイナ44のアーム98が左斜め下方に傾き、カム突起992がスライダ40の後カム溝88b内を移動し、スライダ40が右方向にスライド移動する。
【0053】
一方、図17(a)の初期位置から回転ツマミ24を負方向(回転ツマミ24の側から見て負方向)に回すと、図17(c)に示すように、デッドボルトジョイナ44が軸部78を軸に負方向に回転する。すると、デッドボルトジョイナ44のアーム98が左斜め下方に傾き、カム突起92がスライダ40の後カム溝88b内を移動し、正方向に回したときと同様に、スライダ40が右方向にスライド移動する。
【0054】
スライダ40が右方向に移動するとき、スライド凸部50は、近接するプッシュボタン18から離れる方向に移動するためプッシュボタン18との干渉は生じず、スライダ40は円滑にスライド移動することができる。そして、スライダ40が右方向にスライド移動することによって、図16と同様に、スライダ40のボタン押戻部86が、全てのプッシュボタン18(1)〜18(8)を突出した状態にするリセット動作を行う。
【0055】
なお、プッシュ錠10では、ツマミジョイナ42の軸部78とデッドボルトジョイナ44の軸部78の互いの一端同士が係合している。そして、その係合構造は、ツマミジョイナ42を回転させると、ツマミジョイナ42と一体にデッドボルトジョイナ44も回転するが、デッドボルトジョイナ44を回転させても、ツマミジョイナ42は回転しない構造になっている。
【0056】
この実施形態のプッシュ錠10を設けた郵便受け箱30の扉32の開閉は、従来の一般的なプッシュ錠と同様である。まず、扉32が開いた状態から閉じていくと、図3(a)に示すように、郵便受け箱30の開口部の縁部に固定された係合部材34の表面34aがデッドボルト26の摺動面26bに当接する。さらに扉32を閉じていくと、デッドボルト26は、図3(b)に示すように係合部材34により摺動面26bが押されて初期位置から正方向(回転ツマミ24の側から見て正方向)に回転し、係合部材34が摺動面26b上を横切ったところで当接状態が解除される。そして、図3(c)に示すように扉32をほぼ閉じ切ると、デッドボルト26は係合部材34の裏面34b側に達し、図示しないスプリングの回復力によって回転の初期位置に復帰し、図3(d)に示すように、係合部材34の裏面34bとデッドボルト26の係合面26aとが互いに当接または近接して係合し、扉32が閉じた状態を保持する。
【0057】
一方、扉32を開くときは、まず施錠状態を解錠状態にするため、解錠番号に該当するプッシュボタン18を順番に押し込むみ、回転ツマミ24を手で正方向に回す。正しい解錠番号であれば、回転ツマミ24が回転しその回転に連動してデッドボルト26も正方向に回転し、デッドボルト26の係合面26aと係合部材34の係合が解除される。そして、回転ツマミ24を回した状態のまま手前に引くことによって扉32を開けることができる。
【0058】
ここで、扉32を閉じるとき、デッドボルト44は係合部材34に押されて回転するが、使用者が手で握っている回転ツマミ24は回転しないので、使用者は回転ツマミ24を持った手を捻ることなく自然な動作で扉32を閉じることができる。また、デッドボルト26が回転するとき、全てのプッシュボタン18を突出状態にするリセット動作が同時に行われるので、リセットのための特別な操作を行う必要がない。
【0059】
一方、扉32を開くとき、まず施錠状態を解錠状態にするため解錠番号に該当するプッシュボタン18を押し込む。プッシュボタン18は、図15(b)及び図15(c)のプッシュボタン18(1)のように、突出状態のときにスライダ40のスライド凸部と干渉し、押込状態では干渉しないように取り付けられると、解錠番号に該当するプッシュボタン18になる。なお、解錠番号の設定は、プッシュボタン18を押し込んだ状態で180度回すことによって変更することができる。例えば、図15(b),(c)のプッシュボタン18(1)を、図15(a)のプッシュボタン18(1)のように回せば、容易に設定の変更をすることができる。
【0060】
解除番号に該当するプッシュボタン18を押し込んで、回転ツマミ24を正方向に回すと、回転ツマミ24の回転に連動してデッドボルト26も正方向に回転する。すると、デッドボルト26と係合部材34の係合が解除されるので、回転ツマミ24を回した状態のまま手前に引くことによって扉32を開けることができる。
【0061】
なお、解錠番号に該当しないプッシュボタン18を誤って押し込んだときは、回転ツマミ24は回転できず、回転ツマミ24を負方向に回してリセット動作を行い、全てのプッシュボタン18を突出状態に戻した後で改めて押し直せばよい。
【0062】
また、解錠番号を変更するときは、扉32を開けた状態で、変更するプッシュボタン18を押込状態にした後、後頭部18cのドライバ用溝58にドライバを差し込み、マーク60を目印にして回せばよい。なお、プッシュボタン18は、プッシュボタン18の回転止め突起46と筺体16の回転制御部49の作用により、押込状態でしか回すことができない。従って、押込状態で前頭部18b側から回そうとしても、前頭部18bの突出量が小さいため、前頭部18bを持って回すことはできない。すなわち、第三者が解錠番号の設定を外部から勝手に変更することはできず、安全である。
【0063】
なお、この発明のプッシュ錠は上記実施形態に限定されるものではなく、筺体に設けられた複数のボタン孔を、前面板部内の所定の円周に沿った一方向に整列配置し、さらに、スライダが当該円周の方向に回転してスライドするよう保持される構成にしてもよい。また、回転ツマミとツマミジョイナは、筺体との組み付けが可能であれば、一体に形成してもよい。デッドボルトとデッドボルトジョイナも同様に、裏板との組み付けが可能であれば、各々一体に形成してもよい。さらに、プッシュボタンの数は特に制限されず、プッシュボタンの数を増減することによって解錠番号の桁数を自在に変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 プッシュ錠
12 全面板部
12a ボタン孔
14 側壁部
16 筺体
18 プッシュボタン
18a 円柱部
18b 前頭部
18c 後頭部
20 裏板
24 回転ツマミ
26 デッドボルト
30 郵便受け箱
32 扉
34 係合部材
40 スライダ
42 ツマミジョイナ
44 デッドボルトジョイナ
46 回転止め突起
48a 第一のスライド制御溝
48b 第二のスライド制御溝
49 回転制御部
49a 小径段部
49b 大径段部
49c 上端面
50 スライド凸部
52,56a,56b 突没位置決め溝
54 係合板部
54a 係合突起
68 後面板部
82 摺動板部
86 ボタン押戻部
86a 傾斜面
88 カム板部
88a 前カム溝
88b 後カム溝
90,92 カム突起
94,98 アーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する収容空間の開口部を開閉する扉に取り付けられ、前記扉の前面側に位置し突出状態に配置された複数のボタン部分のうち、特定のボタン部分を押込状態にすることによって解錠するプッシュボタン錠において、
使用者が操作する回転ツマミと、
前記扉を閉じたとき、前記収容空間の開口部の縁部に設けられた係合部材に係合して閉扉状態を保持するデッドボルトと、
円柱部と、前記円柱部の一端に延設された前記ボタン部分である前頭部と、前記円柱部の他端に延設された後頭部とを有するプッシュボタンと、
前記プッシュボタンの前記円柱部が突没自在に出入りする複数のボタン孔が形成された前面板部と、
前記前面板部に対面した後面板部と、前記複数のプッシュボタンを支持するボタン支持部とが設けられた裏板と、
前記筺体と前記裏板の内側空間に配置され、前記前面板部の内側の面に当接配置された摺動板部と、前記摺動板部の側端面から側方に延設された複数のスライド凸部と、前記摺動板部に設けられた板状部分であって、前記前面板部と対向する面に前カム溝が形成されているとともに、前記後面板部と対向する面に後カム溝が形成されたカム板部とが設けられ、前記ボタン孔の整列方向にスライド可能に保持されたスライダと、
前記前面板部に開口された軸孔部分に配置され、前記スライダの前記前カム溝及び前記回転ツマミに係合し、前記回転ツマミの回転動作と前記スライダのスライド動作を相互に連動させるツマミジョイナと、
前記裏板の後面板部に開口された軸孔部分に配置され、前記前記スライダの前記後カム溝及び前記デッドボルトに係合し、前記スライダのスライド動作と前記デッドボルトの回転動作を相互に連動させるデッドボルトジョイナとを備え、
前記プッシュボタンの前記円柱部の側面であって中心軸を挟んで対向する位置に、軸方向に所定の間隔を開けて、一対のスライド制御溝が設けられ、
前記スライド制御溝は、前記スライド凸部が当該スライド制御溝の内側を通過可能な溝形状を有し
前記複数のプッシュボタンが突出及び押し込み方向に移動し、前記スライド制御溝が前記複数のスライド凸部に対向する位置にあるとき、前記回転ツマミを正方向に回すと、前記スライド凸部が前記スライド制御溝の内側を通過して前記スライダが正方向にスライド移動し、同時に、当該スライド移動に連動して前記デッドボルトが回転し、前記係合部材との係合が解かれることによって解錠され、
前記スライド制御溝の位置が前記複数のスライド凸部に対向する位置以外の位置にあるとき、前記プッシュボタンと前記スライド凸部との干渉によって、前記回転ツマミの正方向の回転及び前記スライダの正方向のスライド移動が制限され、前記デッドボルトと前記係合部材とが係合する施錠状態が保持されることを特徴とするプッシュ錠。
【請求項2】
前記スライダの前記摺動板部に、前記複数のプッシュボタンの前記後頭部の先端角部に当接する傾斜面が形成された複数のボタン押戻部が設けられ、
前記回転ツマミを逆回転することによって前記スライダが負方向にスライド移動し、前記複数のプッシュボタンを一律に突出状態にする請求項1記載のプッシュ錠。
【請求項3】
前記スライダの前記摺動板部に、前記複数のプッシュボタンの前記後頭部の先端角部に当接する傾斜面が形成された複数のボタン押戻部が設けられ、
前記デッドボルトが回転することによって前記スライダが負方向にスライド移動し、前記スライダ複数のプッシュボタンを一律に突出状態にする請求項1又は2記載のプッシュ錠。
【請求項4】
前記裏板のボタン支持部は、前記後面板部から内側に向けて立設された可撓性を有する係合板部と、前記係合板部の側面に形成された係合凸部とで構成され、
前記プッシュボタンの側面には、前記係合凸部を係合可能な突没位置決め溝が形成され、
前記プッシュボタンは、撓みの復帰力を有する前記係合板部と前記前面板部の前記ボタン孔の内壁との間で挟持され、前記突没位置決め溝又は前記スライド制御溝に係合した前記係合凸部によって突出状態及び押込状態の位置決めがなされる請求項1乃至3のいずれか記載のプッシュ錠。
【請求項5】
前記前面板部は、その周縁部の背面側に立設された側壁部を有し、前記ボタン孔が前記前面板部内に一方向に整列して配置された中空の筺体に設けられ、
前記筺体は、前記前面板部と側壁部が連続する内側角部に、前記ボタン孔の周縁部から背面側に回転止ガイドが立設され、
前記プッシュボタンは、後頭部の側面に回転止突起が形成され、
前記プッシュボタンが突出状態のとき、前記プッシュボタンは、前記回転止ガイドが前記回転止突起と係合することによって自身の回転が制限されて保持され、前記プッシュボタンが押込状態のとき、自身が回転自在に保持される請求項1乃至4のいずれか記載のプッシュ錠。
【請求項6】
前記複数のプッシュボタン及びボタン孔は、複数列に整列して配置された請求項1乃至5のいずれか記載のプッシュ錠。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−47212(P2011−47212A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197162(P2009−197162)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(591006117)株式会社ナガエ (16)