説明

プライズゲーム機における弾発射装置

【課題】発射した弾を、他の弾の重さを利用することにより、複雑な機構および電気を用いることなく自然の力を利用して回収でき、その回収動作もプレイヤに興味を感じさせることができるプライズゲーム機における弾発射装置を提供する。
【解決手段】プライズゲーム機10は、景品フロア4内の後部に可動景品台30が配置され、前方に弾発射装置20が設けられている。弾発射装置20はプレイヤの操作にしたがって発射リング13にセットされている弾A(発射弾)11がバネの付勢力によって発射される。発射された弾A11は弾B12の重量により、元の位置に復帰した発射リング13の上に引き上げられる。発射された弾A11が可動景品台30に陳列されている景品に当たり、景品が落下すれば、落下した景品は景品取出口3より取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾を景品に当てることにより景品を獲得するプライズゲーム機の弾発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームセンタなどに、陳列台に陳列された景品に向けて弾を発射し景品に当てて景品を落とし獲得する、いわゆるプライズゲーム機が設置されている。
この種のプライズゲーム機として射的ゲーム機における弾発射機構が提案されている(特許文献1)。
この弾発射機構は弾にワイヤが結ばれており、発射された弾は複雑な回収機構によりワイヤを巻き取り回収するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−141483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の弾発射の機構は、弾を回収する際、ワイヤを引っ張る構造となっているためワイヤ自体および力が掛かる機構部への負担が大きく、故障を起こしやすくなると考えられる。また、駆動するモータ数も多数必要であり、装置がコスト高になるという欠点がある。
【0005】
本発明の目的は、発射した弾を、他の弾の重さを利用することにより、複雑な機構および電気を用いることなく自然の力を利用して回収でき、その回収動作もプレイヤに興味を感じさせることができるプライズゲーム機における弾発射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、陳列した景品に弾を当てることにより景品を落下させて獲得するプライズゲーム機において、発射弾と、該発射弾にワイヤによって接続され該発射弾より重い発射弾回収錘と、リング形状の下方が回動可能に支持された発射リング部材と、前記発射リングを所定角度傾けたとき、傾いた発射リング位置を保持する保持部材,前記保持部材の保持を解除することにより前記発射リングを付勢力によって回転させるバネ部材および前記発射リングが付勢力により回転した後、前記発射リングを前記付勢力に逆らって垂直軸の反対方向の前記所定角度まで傾ける駆動部を有する発射メカ部とを備え、前記発射リングを所定角度傾けた状態で該発射リング上に前記発射弾が搭載され、前記発射メカ部によって前記発射弾が発射された後、前記発射リングで前記発射弾回収錘を受け、前記発射リングを所定角度まで戻して前記発射弾回収錘を落下させることにより、該発射弾回収錘の重量により前記発射弾を所定角度になった発射リング上に引き上げることを特徴とする。
本発明の請求項2は請求項1記載の発明において前記保持部材は、ソレノイド装置であり、前記ソレノイド装置のオフにより前記所定角度傾けた発射リングの位置を保持し、該ソレノイド装置をオンすることにより、保持を解除することを特徴とする。
本発明の請求項3は請求項2記載の発明においてモータの出力軸に第1ギアを設け、前記発射リングの回転軸に第3ギアを設け、前記第1ギアの出力を第3ギアに伝達する第2ギアを設け、第2ギアの軸に前記ソレノイド装置の駆動棒を係止させ、前記ソレノイド装置をオンすることにより前記第2ギアを軸方向に移動させ前記第1ギアと第2ギアの噛合を外すことにより前記発射リングがバネ部材の付勢力によって回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、弾の反対側に重量の重い弾を付ける事で自然回収を可能にし、ワイヤ負担も無く、弾回収をする為の機構が不要で、回収のためにモータも使わないため、コスト減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による弾発射装置を用いたプライズゲーム機の外観斜視図である。
【図2A】弾発射装置と可動景品台の位置関係を示す側面図で、弾を発射する前の状態を示す図である。
【図2B】弾発射装置と可動景品台の位置関係を示す側面図で、弾を発射した状態を示す図である。
【図3】弾発射装置の詳細を示す斜視図である。
【図4A】弾発射装置の構造を示す図で、弾を発射する前の状態を示している。
【図4B】弾発射装置の構造を示す図で、弾を発射した状態を示している。
【図5】弾発射から元の初期状態に移行するまでの動作の流れを説明するための図である。
【図6】コンパネ部の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図6を参照して本発明による弾発射装置を詳細に説明する。
図1は、本発明による弾発射装置を用いたプライズゲーム機の外観斜視図である。
プライズゲーム機10は、景品フロア4内の後部に可動景品台30が配置され、前方に弾発射装置20が設けられている。可動景品台30に景品が取り付けられる。弾発射装置20はプレイヤの操作にしたがって発射リング13にセットされている弾A(発射弾)11がバネの付勢力によって発射される。
プライズゲーム機内部は周辺透明ウインドウ5によって外部と遮蔽され、プレイヤは各方向から内部を見ることができる。前面にコンパネ部2が配置され、その下に景品取出口3が設けられている。弾A11が可動景品台30の景品に当たって景品が落下すれば、落下した景品は景品取出口3より取り出すことができる。
【0010】
図2A,図2Bは、弾発射装置の発射の動作を説明するための側面図である。
可動景品台30は各フレーム31,31・・・(図1参照),各フレームが掛け渡されている支持フレーム39,40より構成され、支持フレーム39と40は軸41で回動可能に接続されている。支持フレーム40の下端に長溝34が形成され、長溝34がプライズゲーム機筐体側に植設されているピン33に嵌合されている。支持フレーム39の上端にギア35が回動可能に設けられている。モータ37,モータ出力を減速するギア群38およびギア群38の終端に取り付けられたギア36より構成されるモータ駆動部は、プライズゲーム機筐体側に取り付けられ、ギア36がギア35に噛合している。
モータ37を駆動することにより可動景品台30の中央部分を前に押し出したり、後ろに後退させることにより、景品の陳列位置を前後に調整することが可能である。
【0011】
一方、弾発射装置20は左右移動レーン15に左右に移動可能に取り付けられ、左右移動レーン15の両端はプライズゲーム機筐体前面両側に設けられた上下移動レーン29,29(図1参照)に上下移動可能に取り付けられている。
弾発射装置20はプレイヤの操作によって左右位置および上下位置に移動し、プレイヤは景品の1つを狙って撃ち落とすことが可能である。
弾発射装置20は弾A11と弾Aより重い弾B(発射弾回収錘)12がワイヤ16で接続されている。バネの付勢力が与えられる発射リング13は、バネの付勢力を利用して弾A11を発射することができる。
【0012】
図3に弾発射装置20の詳細を示す。
発射メカ部14の筐体の形状は直方体で、両端部は曲面形状(略半円)である。発射メカ部14の上部に回動可能に発射リング13が取り付けられ、発射メカ部14の下部は左右移動レーン15を左右に移動可能なように取り付けられている。発射リング13の所定角度傾いた位置は、バネの付勢力に逆らって回転させられた位置であり、傾いた発射リング13の上に弾A11が載っている。弾A11にワイヤ16が接続され、その先端に弾B12がぶら下がっている。発射メカ部14の両端部の曲面形状は、弾B12が発射によって引っ張り上げられたとき、および弾A11が弾B12の重量により引っ張り上げられたとき、円滑に曲面上を上昇するためである。
この図3の状態は図2Aの弾発射装置20の状態と同じである。
弾発射装置20により弾A11を発射した状態が図2Bであり、発射された弾A11は発射された力によって弾B12を引き上げ、発射リング13が垂直軸より右方向に向かって所定角度振れる。引き上げられた弾B12は発射リング13の背面側に載り停止する。弾A11は弾B12の停止によって飛ぶ距離が制限される。
【0013】
図4A,図4Bは、弾発射装置の構造を示す図で、弾を発射する前の状態および弾を発射した後の状態を示している。
軸23が発射メカ部14筐体に貫通した状態で回動可能に取り付けられ、軸23の両端は、全周の略1/4を切り欠いた発射リング13の端面13a,13bに固定されている。軸23にギア21が回動可能に嵌挿され、巻きバネ22が挿通されている。巻きバネ22の一端は発射メカ部14筐体に固定され、他端はギア21に固定されている。
また、解放ギア19に固定された解放ギア軸26が軸27に嵌挿され、解放ギア19に固定された解放ギア軸26は回動可能で左右に移動可能となっている。軸27は発射メカ部14筐体を貫通した状態で固定されている。
さらに発射メカ部14筐体に固定されたモータ17の出力軸にギア18が固定されている。ギア21とギア18の間に解放ギア19が配置され、モータ17の回転出力が解放ギア19を介してギア21に伝達されるようになっている。
【0014】
発射メカ部14筐体にはソレノイド24が固定され、ソレノイド24の駆動棒24aの先端に引掛部25が取り付けられている。引掛部25の先端は係止溝25aを有している。解放ギア軸26は軸径を細くした嵌合部26aを有し、係止溝25aはこの嵌合部26aに係合している。
弾A11を発射できる待機状態は図4Aで、発射リング13は垂直軸に対し左方向にθ1 度傾いた状態であり、弾A11を発射した直後の状態は図4Bで垂直軸に対し右方向にθ2 度傾いた状態である。
ソレノイド24のオン動作により弾A11を発射した直後、ソレノイド24はオフ動作するため、駆動棒24aは突出し再度解放ギア19はギア21と噛合し、ギア18の回転をギア21に伝達可能となる。そしてモータ17が駆動開始し、発射リング13がθ2 度傾いた状態から垂直方向に回転し、さらに垂直軸を越えて左方向にθ1 度傾いて停止する。
【0015】
このときのモータ駆動により巻きバネ22は変形させられ発射リング13を右方向に回転させる付勢力がチャージされる。図4Aの状態で、ソレノイド24をオン動作させると、解放ギア19は引っ込むため、ギア21と解放ギア19の係止は解かれ、発射リング13はチャージされた付勢力によって右方向に回転し、弾A11が発射される。
【0016】
図5は弾発射から元の初期状態に移行するまでの動作の流れを説明するための図である。
弾A11は発射リング13の上に載っており、弾B12はワイヤ16によって弾A11にぶら下がっている(図5(a))。
発射リング13が回転すると、弾A11は勢いよく発射され、弾B12も弾A11に引かれて上昇する(図5(b))。
弾B12は発射リング13の位置まで上昇すると、発射リング13によって制限され発射リング13の上に載った状態となる。弾A11は弾B12に対しぶら下がった状態となる(図5(c))。つぎに発射リング13が元の位置に向かって回転を始めるため、弾B12は発射リング13より落下する(図5(d))。
【0017】
弾B12は弾A11より重いため、弾B12が下がり弾A11が上昇することとなる(図5(e))。そして発射リング13が左方向にθ1 傾いた位置で停止すると、上昇した弾A11が発射リング13の上に載り、弾B12がぶら下がった状態の初期状態に戻る(図5(f))。弾A11の回収動作は弾B12の重量を利用して行うため、その機構は単純である。
【0018】
図6はコンパネ部の詳細を説明するための図である。
コンパネ部2に遊び方を説明するための説明文をアクリル面とコンパネ本体の間に挟み込むインスト44,8方向に操作可能なレバー45,弾を発射させる弾発射ボタン46,料金情報,メンテナンス情報を表示するVFD47,コイン投入口48が設けられている。
所定のコインをコイン投入口48に入れることによりゲームが可能となる。プレイヤがレバー45を上下方向に倒すことにより弾発射装置20は上下移動レーン29上を上下方向に移動する。レバー45を操作している間、その方向に図示しないモータが作動しプレイヤが狙う景品の高さまで移動する。
【0019】
狙う高さを調整した後、レバー45を左右に倒すことにより、狙った高さの景品群の1つに狙いを定めることができる。
つぎに弾発射ボタン46を押すことにより、弾A11が発射され狙いを定めた景品に向けて飛ぶ。弾A11が当たれば、当たった景品の係止が外れ落下する。
【0020】
以上の実施の形態の発射メカ部の筐体形状が、両端曲面の直方体である例を説明したが、発射メカ部の筐体形状は、弾A11,弾B12が引き上げられたとき円滑に上昇する面を持つ形状であるならば他の形状であってもよい。また、弾は球状ではなく、楕円球であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
イベント会場やゲームセンタに設置されるプライズゲーム機である。
【符号の説明】
【0022】
2 コンパネ部
3 景品取出口
4 景品フロア
5 周辺透明ウインドウ
10 プライズゲーム機
11 弾A
12 弾B
13 発射リング
14 発射メカ部
15 左右移動レーン
16 ワイヤ
17 モータ
18,21 ギア
19 開放ギア
20 弾発射装置
23 軸
24 ソレノイド
25 引掛部
26 開放ギア軸
29 上下移動レーン
44 インスト
45 レバー
46 弾発射ボタン
47 VFD(蛍光表示管)
48 コイン投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陳列した景品に弾を当てることにより景品を落下させて獲得するプライズゲーム機において、
発射弾と、
該発射弾にワイヤによって接続され該発射弾より重い発射弾回収錘と、
リング形状の下方が回動可能に支持された発射リング部材と、
前記発射リングを所定角度傾けたとき、傾いた発射リング位置を保持する保持部材,前記保持部材の保持を解除することにより前記発射リングを付勢力によって回転させるバネ部材および前記発射リングが付勢力により回転した後、前記発射リングを前記付勢力に逆らって垂直軸の反対方向の前記所定角度まで傾ける駆動部を有する発射メカ部と、
を備え、
前記発射リングを所定角度傾けた状態で該発射リング上に前記発射弾が搭載され、前記発射メカ部によって前記発射弾が発射された後、前記発射リングで前記発射弾回収錘を受け、前記発射リングを所定角度まで戻して前記発射弾回収錘を落下させることにより、該発射弾回収錘の重量により前記発射弾を所定角度になった発射リング上に引き上げることを特徴とするプライズゲーム機における弾発射装置。
【請求項2】
前記保持部材は、ソレノイド装置であり、
前記ソレノイド装置のオフにより前記所定角度傾けた発射リングの位置を保持し、該ソレノイド装置をオンすることにより、保持を解除することを特徴とする請求項1記載のプライズゲーム機における弾発射装置。
【請求項3】
モータの出力軸に第1ギアを設け、
前記発射リングの回転軸に第3ギアを設け、
前記第1ギアの出力を第3ギアに伝達する第2ギアを設け、
第2ギアの軸に前記ソレノイド装置の駆動棒を係止させ、
前記ソレノイド装置をオンすることにより前記第2ギアを軸方向に移動させ前記第1ギアと第2ギアの噛合を外すことにより前記発射リングがバネ部材の付勢力によって回転することを特徴とする請求項2記載のプライズゲーム機における弾発射装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259575(P2010−259575A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111926(P2009−111926)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(310009993)株式会社タイトー (207)