説明

プラスチック中空板、及びプラスチック中空板の端部処理方法

【課題】取り扱い性及び安全性に優れ、家具の一部としての用途にも適したプラスチック中空板を提供する。
【解決手段】中空構造のプラスチック板本体2と、プラスチック板本体2の開放された端部を形成する各一辺の全域又は略全域を封止可能な略直線状の線状封止体3と、隣り合う線状封止体3の端部間に、これら端部同士を接続し得る状態で配されるコーナー接続体4とを具備してなり、各線状封止体3及び各コーナー接続体4として、外面部33、コーナー外面部44に、それぞれ厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部3a、第1コーナーアール部4aを有するものを適用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック板本体の開放された端部を封止してなるプラスチック中空板、及びプラスチック中空板の端部処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽量性や剛性に優れたプラスチック中空板は、建築材料や自動車の内装材など、種々の用途で活用されている。
【0003】
ところで、このようなプラスチック中空板は、これまで端部を切りっ放しにしたものが通例であったため、用途によっては端部が開放されていることによる不都合、例えば水に関係して使用される場合に端部から内部に水が入るという不都合が生じていた。
【0004】
そこで、このような不都合を解消すべく、近年、中空構造のプラスチック板本体の端部を封止してなるプラスチック中空板が考案、開発され、既に商品化されているものもある。
【0005】
なお、本発明、及び本明細書において、「プラスチック板本体」とは、「プラスチック気泡ボード」、「プラスチック段ボール」、及び「プラスチック折り畳みハニカムボード」、これら全てを包含する概念である。
【0006】
「プラスチック気泡ボード」とは、例えばポリプロピレン等の樹脂をダイから溶融した状態で押し出したシートに、多数のキャップ状の突起を真空成形し、このキャップシートの底面と頂面にそれぞれ平坦なバックシート及びライナーシートを融着させて中空構造の板としてなる成形品をいう。また、「プラスチック段ボール」とは、プラスチックの溶融押し出しにより形成された2枚のシートとそれらを連結して平行に走る多数のリブとからなる成形品をいう。また、「プラスチック折り畳みハニカムボード」とは、プラスチックシートに所定ピッチで垂直方向の部分を与え、長手方向に順次折り重ねることによって形作られるハニカム構造を有する成形品をいう。
【0007】
出願人は、例えば下記特許文献1に示すように、プラスチックチック板本体の縁部とその外側を両面から押さえ板で規制しつつ、プラスチック板本体の厚み寸法に等しい幅をもったプラスチックの化粧帯を縁部に当て、その外側から金属製の当て板を当てるとともに、当て板を介して背後からヒーターで加熱して化粧帯を縁部に融着させることによって端部を封止したプラスチック中空板とする態様や、下記特許文献2に示すように、プラスチック中空板の縁部近傍部位を軟化させて押しつぶすことによって端部を封止する態様、あるいは下記特許文献3に示すように、プラスチック板本体の端部の全体を覆う寸法形状のプラスチックのテープを融着させることによって端部を封止したプラスチック中空板とする態様を発明している。
【特許文献1】特開2003―62917号公報
【特許文献2】特開2005―35071号公報
【特許文献3】特開2006―346904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献3に開示した態様は、プラスチックの化粧帯又はテープで封止した端面がプラスチック板本体の面方向に略直交する垂直な面となるため、プラスチック中空板の端部全域に鋭利な角部が形成されることとなり、このようなプラスチック中空板を取り扱う際に注意を払う必要があった。特に、水に関係して使用する場合にはプラスチック中空板自体又はプラスチック中空板自体を把持する手が濡れることによって滑り易く、取り扱いに尚一層の注意が必要であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示した態様は、プラスチック中空板の端部全域に押し潰された凸部が形成され、やはり取り扱いの便を損なうものであった。
【0010】
さらに、特許文献1や特許文献3に示す態様は、端部の垂直な面に外部から強い衝撃を受けた場合に、化粧帯又はテープがプラスチック中空板本体から剥がれるおそれがあり、端部の脆弱化を招来し得るものであった。
【0011】
このような不具合により、従来のプラスチック中空板は、例えば浴槽用の蓋や、テーブルやデスクの天板等に代表される日常の生活に密着した家具の一部としての用途には不適切な面があった。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、取り扱い性及び安全性に優れ、家具の一部としての用途にも適したプラスチック中空板を提供すること、また、鋭利な角部が形成されないプラスチック中空板の端部処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のプラスチック中空板は、概略方形状をなす中空構造のプラスチック板本体と、当該プラスチック板本体の開放された端部を形成する各一辺の全域又は略全域を封止可能な略直線状をなす線状封止体と、隣り合う前記線状封止体の端部間に、これら端部同士を接続し得る状態で配されるコーナー接続体とを具備してなり、前記各線状封止体及び各コーナー接続体の外面部に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を形成していることを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、線状封止体によってプラスチック板本体の開放された端部を封止するため、プラスチック板本体の内部に水や埃が進入することを防止することができるとともに、プラスチック板本体の端部を包囲する各線状封止体及び各コーナー接続体の外面部に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を形成しているため、プラスチック中空板が、端部全域に丸みを帯びたものとなり、従来のものと比較して取り扱い性、及び安全性に優れ、鋭利な角部が形成される従来品では適用が困難であった浴槽用の蓋や、テーブル等の天板付き家具の天板等、生活に密着した家具の一部としての用途にも適したものとなる。しかも、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部によって、プラスチック中空板の端部の良好な剛性を確保することができる。また、線状封止体及びコーナー接続体が樹脂製であれば、プラスチック中空板全体の重量化を回避することが可能である。
【0015】
線状封止体及びコーナー接続体の好適な実施態様としては、厚み方向に沿った両端部にそれぞれ前記アール部を備えたものや、厚み方向に沿った略全域に前記アール部を備えたものが挙げられる。
【0016】
特に、前記コーナー接続体が、面方向(換言すれば、厚み方向に直交する方向)に広がりを有する部分円弧状の第2アール部を備えたものであれば、プラスチック中空板の隅部も丸みを帯びた形状となり、ハンドリング性がなお一層向上する。
【0017】
また、前記プラスチック板本体が複数又は単一のシート材から形成されるものである場合、前記各アール部の曲率半径r及び前記シート材の厚み寸法tを、〔r≧t〕を満たす値に設定する態様が好ましい。
【0018】
さらに、前記第2アール部の曲率半径R及び前記プラスチック板本体の厚み寸法Tを、〔R≧T〕を満たす値に設定することが望ましい。
【0019】
加えて、前記線状封止体のうち長手方向に直交する方向に沿った寸法W及び前記プラスチック板本体の厚み寸法Tを、〔W≧T〕を満たす値に設定していることが好ましい。
【0020】
このような相対関係を満たす値に設定することにより、各アール部及び第2アール部が直線状に限りなく近くなることを回避することができ、プラスチック中空板の端部を、適切な丸みを帯びたものとすることが可能である。
【0021】
線状封止体とコーナー接続体とを一体的に組み付けるには、前記線状封止体に第1係合部を設け、前記コーナー接続体に第1係合部に係合可能な第2係合部を設け、これら係合部同士を相互に係合させる態様とすればよい。
【0022】
さらに、前記線状封止体及び前記コーナー接続体が中空状のものであれば、プラスチック中空板全体の軽量化を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係るプラスチック中空板の端部処理方法は、概略方形状をなす中空構造のプラスチック板本体の端部を封止する際に適用されるものであり、前記プラスチック板本体の端部を形成する各辺に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を外面部に備え、且つ前記各辺と略同一の長手寸法を有する線状封止体を接着する工程と、これら各線状封止体を接着した後、又は接着する前段階において、隣り合う前記線状封止体の端部間に、前記アール部と同形状のアール部を外面部に有するコーナー接続体を取り付ける工程とを経ることによって、前記プラスチック板本体の開放された端部を封止し、且つ端部全域に丸みを帯びさせることを特徴とする。
【0024】
ここで、「接着する」とは、「各母材を溶剤によって溶かした状態で相互に接触させることによりくっつける」、又は「接着剤を媒介にして部材同士をくっつける」、或いは「各部材を熱によって溶かした状態で相互に接触させることによりくっつける」、これら何れの態様をも含む概念である。
【0025】
このような端部処理方法であれば、簡単な手順で端部を封止処理したプラスチック中空板を形作ることができるとともに、端部全域が丸みを帯びた形状なることにより、取り扱い性及び安全性に優れたプラスチック中空板となり、家具の一部としての用途にも適したものとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、鋭利な角部が形成されず、取り扱い性及び安全性に優れ、家具の一部としての用途にも適したプラスチック中空板、及びプラスチック中空板の端部処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
プラスチック中空板1は、図1に示すように、概略方形状のプラスチック板本体2と、プラスチック板本体2の開放された端部を形成する各一辺の全域又は略全域を封止可能な略直線状をなす樹脂製の線状封止体3と、隣り合う線状封止体3の端部間に、これら端部同士を接続し得る状態で配される樹脂製のコーナー接続体4とを備えたものである。
【0029】
本実施形態では、プラスチック板本体2として、「プラスチック気泡ボード」を適用している。このプラスチック板本体2は、図2に示すように、多数のキャップ状の突起を有するキャップシート21と、キャップシート21を挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート22及びライナーシート23とを一体的に備えた3層状のものである。プラスチック板本体2は、製造工程において適宜の寸法に裁断されるため、端部は開放されている。
【0030】
次に線状封止体3及びコーナー接続体4について説明する。なお、線状封止体3及びコーナー接続体4を説明するにあたって以下に用いる「内方端」及び「基端」とは「相対的にプラスチック板本体2の端部に近い方の端」を指し、「外方端」及び「先端」とは「相対的にプラスチック板本体2の端部から遠い方の端」を指す。
【0031】
線状封止体3は、図3〜図5に示すように、内方端部をプラスチック板本体2の端部に突き当てた状態で接合可能なものであり、外方端部に厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部3aを形成したものである。本実施形態の線状封止体3は、中空状をなし、プラスチック板本体2の端部に接合した状態においてプラスチック板本体2の表面(ライナーシート23)と略面一をなす表面部31と、プラスチック板本体2の裏面(バックシート22)と略面一をなす裏面部32と、表面部31及び裏面部32の外方端同士を接続する外面部33とを備えたものである。この線状封止体3は、外面部33のうち、表面部31との境界近傍領域、及び裏面部32との境界近傍領域に、それぞれ厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部3aを形成している(図4及び図5参照)。さらに、線状封止体3の長手方向両端部に、長手方向へ開放された開口部を閉塞し得る閉塞部34を設け、各閉塞部34にそれぞれ第1係合部35を設けている。本実施形態では、第1係合部35を、線状封止体3の長手方向に突出させた第1凸部35aと凹没させた第1凹部35bとによって構成している。本実施形態の第1凹部35bは、閉塞部34の厚み方向に貫通させた孔である。本実施形態では、線状封止体3として、射出成形による樹脂製の一体品を適用している。
【0032】
コーナー接続体4は、図6及び図7に示すように、面方向に広がりを有する部分円弧状の第2コーナーアール部4b(本発明の「第2アール部」に相当)を備えた概略扇状(より具体的には4分の1円弧状)をなすものである。このコーナー接続体4は、中空状をなし、線状封止体3の端部に連結した状態において線状封止体3の表面部31と略面一をなすコーナー表面部41と、線状封止体3の裏面部32と略面一をなすコーナー裏面部42と、コーナー表面部41及びコーナー裏面部42の縁部のうち辺部分同士を接続し、線状封止体3の端部(具体的には閉塞部34)と対面し得る一対の対面部43と、コーナー表面部41及びコーナー裏面部42の縁部のうち円弧状部分同士を接続するコーナー外面部44とを備えたものである。そして、コーナー外面部44のうち、コーナー表面部41との境界近傍領域、及びコーナー裏面部42との境界近傍領域に、それぞれ線状封止体3のアール部3aと同形状の第1コーナーアール部4aを形成している(図7参照)。さらに、各対面部43に、線状封止体3の第1係合部35に係合可能な第2係合部45を設けている。本実施形態では、第2係合部45を、前記第1凸部35aに係合可能な第2凹部45aと、前記第1凹部35bに係合可能な第2凸部45bとによって構成している。本実施形態の第2凹部45aは、対面部43の厚み方向に貫通させた孔である。本実施形態では、コーナー接続体4として、射出成形による一体品を適用している。
【0033】
本実施形態では、アール部3a及び第1コーナーアール部4aの各曲率半径をrとした場合、これら曲率半径rとプラスチック板本体2を構成する各シート材(キャップシート21、バックシート22、ライナーシート23)の厚み寸法t(図2参照)の相対関係を、以下の式〔1〕満たす関係に設定している。
r≧t・・・式〔1〕
また、第2コーナーアール部4bの曲率半径をRとした場合、この曲率半径Rとプラスチック板本体2の厚み寸法T(図2参照)との相対関係を、以下の式〔2〕を満たす関係に設定している。
R≧T・・・式〔2〕
さらに、線状封止体3のうち長手方向に直交する方向(換言すれば短寸方向)に沿った寸法W(図3参照)と、プラスチック板本体2の厚み寸法Tとの相対関係を、以下の式〔3〕を満たす関係に設定している。
W≧T・・・式〔3〕
次に、本実施形態に係るプラスチック中空板1の組立手順について説明する。
【0034】
先ず、プラスチック板本体2の端部、及び線状封止体3の基端部を接着する。プラスチック板本体2の端部と線状封止体3の基端部との接着方法としては、プラスチック板本体2の端部及び線状封止体3の基端部を溶剤によって溶かした状態で相互に接触させることによりくっつける態様や、接着剤を媒介にしてプラスチック板本体2の端部と線状封止体3の基端部とをくっつける態様、或いは、プラスチック板本体2の端部及び線状封止体3の基端部を熱によって溶かした状態で相互に接触させることによりくっつける態様が挙げられる。これらのうちから適宜選択した接着方法により、プラスチック板本体2の端部である各辺にそれぞれ線状封止体3が一体的に接合される。なお、接着する際には、線状封止体3をプラスチック板本体2の端部に向かって押圧することが好ましく、本実施形態では、図8及び図9に示すように、線状封止体3をプラスチック板本体2の端部に向かって移動させることにより、線状封止体3をプラスチック板本体2の端部に押圧して、線状封止体3をプラスチック板本体2の端部に固着するようにしている。なお、本実施形態の線状封止体3は、表面部31及び裏面部32の基端部位をそれぞれ他の部位よりも肉厚に設定し、接着時の押圧力に耐え得るようにしている。
【0035】
そして、線状封止体3を接着した後、又は接着する前段階において、隣り合う線状封止体3の端部間に、コーナー接続体4を取り付ける。この取付作業は、線状封止体3の端部(具体的には閉塞部324)に設けた第1係合部35とコーナー接続体4の対面部43に設けた第2係合部45とを相互に係合させることによって行う。
【0036】
なお、コーナー接続体4の対をなす対面部43のうち、一方の対面部43にのみ第2係合部45を設け、この第2係合部45と線状封止体3の端部に設けた第1係合部35とを凹凸係合させるとともに、他方の対面部43を線状封止体3の端部に他の手段、例えば上述した各種接着(溶剤を利用した接着、接着剤を利用した接着、熱融着)により一体的に接合する態様としても構わない。この場合、線状封止体3のうち、他方の対面部43に対面する端部には第1係合部を設けなくてもよい。
【0037】
また、組付手順として、プラスチック板本体2の各辺に全ての線状封止体3を接合する前に、対向する線状封止体3同士の組み合わせのうち、一方の組を、プラスチック板本体2の対向する辺にそれぞれ接合し、次いで、両端部に予めコーナー接続体4を取り付け他方の組の線状封止体3を、プラスチック板本体2の残りの辺にそれぞれ接合することによって、隣り合う線状封止体3の端部間にコーナー接続体4を配するようにしてもよい。或いは、予め線状封止体3の端部同士をコーナー接続体4に取り付けて方形状の枠体を組み立てた後に、線状封止体3の基端部をプラスチック板本体2の各辺に接合するようにしてもよい。
【0038】
以上の手順を経て、プラスチック板本体2の開放された端部を封止体3によって封止してなるプラスチック中空板1は、端部が封止されたものであるため、内部に水や埃が浸入することを防止することができるとともに、封止された端部全域がアール部3a、第1コーナーアール部4aによって丸みを帯びたものとなり、さらに四隅も、第2コーナーアール部4bによって丸みを帯びたものとなるため、プラスチック中空板の端部全域に鋭利な角部が形成される従来のものと比較して取り扱い性に優れ、これまでに着目されてきたプラスチック中空板の特性、すなわち軽量性、剛性に加えて、安全性をも兼ね備えたものとなり、汎用的利用が可能となる。
【0039】
このような利点を有するプラスチック中空板1は、例えば浴槽用の蓋として適用することができる。浴槽用の蓋として適用した場合、プラスチック板本体2内部への水の進入を防止することができるのはもちろんのこと、濡れた手でプラスチック中空板1の端部を把持しようとした際に手が滑ったとしても、鋭利な角部によって手や指に裂傷を負うという事態を回避することができるとともに、プラスチック中空板1を誤って足の上に落とした場合であっても、プラスチック中空板1のうち足に触れる部分が丸みを帯びた部分であれば、やはり鋭利な角部によって足に裂傷を負うという事態を回避することができ、安全性及び実用性に富むものとなる。
【0040】
また、このようなプラスチック中空板1は、上述した浴槽用の蓋の他、例えば、テーブルやデスクの天板(一例としてコタツの天板)に適用することも可能である。天板の端部は略鉛直な面で形成されているのが通例であるが、本実施形態に係るプラスチック中空板1は、端部全域が丸みを帯びたものであるため、従来の天板と比較して、安全性に優れたものとなる。またその軽量性ゆえに、天板を支持する支持構造体(具体的にはコタツ本体)に布団を敷く、或いは敷いた布団を片付ける際に、天板を簡単に持ち上げることができ、作業性に資する。なお、プラスチック中空板1を天板として適用する場合、プラスチック中空板1の裏面部に、当該裏面部と当該裏面部に接する部材(例えば天板を支持する支持構造体)との間に摩擦抵抗を生じさせるための摩擦抵抗部を設けておくことにより、天板が不用意に滑ることを防止することができる。
【0041】
このように、本実施形態に係るプラスチック中空板1は、線状封止体3及びコーナー接続体4によってプラスチック板本体2の端部を包囲して封止する枠体を構成し、各線状封止体3及び各コーナー接続体4の外面部33、44に、それぞれ厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部3a、第1コーナーアール部4aを形成しているため、プラスチック中空板1の端部全域に鋭利な角部が形成されることがなく、従来のものと比較して取り扱い性及び安全性に優れ、これまでのプラスチック中空板では適用が困難であった、浴槽用の蓋やテーブルの天板等に代表される日常の生活に密着した家具の一部として適用することが可能となり、汎用性に富むものとなる。
【0042】
しかも、厚み方向に広がりを有するアール部3a、第1コーナーアール部4aによって、プラスチック中空板1の端部の良好な剛性を確保することができるとともに、端部全体が丸みを帯びたものとなることにより、プラスチック中空板1の外観の向上をも有効に図ることができる。さらに、コーナー接続体4によって隣り合う線状封止体3の端部間に形成される隙間を詰めてなる本実施形態に係るプラスチック中空板1は、単体ごとにモジュール化することによって、互換性を確保することもできる。
【0043】
特に、コーナー接続体4が、面方向に広がりを有する部分円弧状の第2コーナーアール部4bを備えたものであるため、コーナー接続体4自体に、第2コーナーアール部4bと第1コーナーアール部4aとからなる3次元的な丸みを帯びさせることができ、ハンドリング性及び安全性がなお一層向上するとともに、このようなコーナー接続体4によって隣り合う線状封止体3の端部同士を接続した場合、一方の線状封止体3の端部と他方の線状封止体3の端部とがコーナー接続体4を介して曲線状に連続しているようになり、外観向上にも資する。
【0044】
さらに、線状封止体3とコーナー接続体4とが相互に別体をなすものであり、線状封止体3の一方に第1係合部35を設け、コーナー接続体4に第1係合部35に係合可能な第2係合部45を設けているため、これら係合部(第1係合部35、第2係合部45)同士を相互に係合させるという簡単な作業によって線状封止体3とコーナー接続体4とを一体的に組み付けることができる。
【0045】
殊に、アール部3a及び第1コーナーアール部4aの各曲率半径r、第2コーナーアール部4bの曲率半径R、線状封止体3の短寸方向に沿った寸法Wを、それぞれ上記式〔1〕、式〔2〕、式〔3〕を満たす値に設定しているため、各アール部3a、32a、32bが直線に限りなく近い形状となることを回避し、プラスチック中空板1の端部全域に適切な丸みを帯びさせることができる。
【0046】
線状封止体3及びコーナー接続体4が中空状のものであるため、プラスチック板本体2自体の軽量性を大きく妨げることがなく、プラスチック中空板1全体の軽量化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るプラスチック中空板1の端部処理方法は、プラスチック板本体2の端部を形成する各辺に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部3aを外面部33に有し、且つ各辺と略同一の長手寸法を有する線状封止体3を接着する工程と、これら各線状封止体3を接着した後、又は接着する前段階において、隣り合う線状封止体3の端部間に、アール部3aと同形状の第1コーナーアール部4aをコーナー外面部44に有するコーナー接続体4を取り付ける工程とを経ることによって、プラスチック板本体2の開放された端部を封止し、且つ端部全域に丸みを帯びさせるようにしているため、簡単な手順で端部を封止処理したプラスチック中空板1を形作ることができるとともに、上述したように端部全域を、丸みを帯びた形状とすることにより、取り扱い性、及び安全性に優れたプラスチック中空板1となり、家具の一部としての用途にも適したものとなる。
【0048】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0049】
例えば、図10及び図11に示すように、線状封止体X31及びコーナー接続体X32が、厚み方向に沿った略全域にアール部X31a、第1コーナーアール部X32aを備えたものであってもよい。なお、図10、図11に示す線状封止体X31及びコーナー接続体X32のうち、前記実施形態に対応する部位には、頭に「X」、「Y」を付して同じ符号を付している。
【0050】
また、図12に示すように、中空状の線状封止体Y3が、表面部Y31と裏面部Y32との基端部(内方端部)近傍部位同士を接続する内方起立部Y36を備えたものであってもよい。これにより、中空状の線状封止体でありながら、長手方向全域に亘る基端部側の強度を有効に高めることができる。なお、図12では、厚み方向に沿った略全域にアール部Y3aを有する線状封止体Y3を例示したが、前記実施形態に示す線状封止体(厚み方向に沿った両端部にそれぞれアール部を備えたもの)に、内方起立部を設ける態様としても勿論構わない。もちろん、線状封止体のうち長手方向に沿って開放された両端部に前記閉塞部を設けるとともに、上述の内方起立部も設けた態様としてもよい。
【0051】
前記実施形態及び図10〜図12では、中空状の線状封止体及びコーナー接続体を示したが、線状封止体及びコーナー接続体として、それぞれ中実のブロック状のものを適用してもよい。
【0052】
また、等断面形状を有する長尺の線状封止体を予め用意しておき、現場や製造ラインでの組立工程等において、プラスチック板本体の辺の長さに応じて線状封止体を所定寸法に裁断するという態様を採用してもよい。このようなものであれば、あらゆるサイズのプラスチック板本体の辺の長さにも対応することができる。この場合、切断した線状封止体の両端部又は何れか一方の端部に、第1係合部を設ければよい。なお、線状封止体が中空状のものであれば、切断した両端部に前記実施形態で述べた閉塞部を設ければ、この閉塞部を利用して第1係合部を設けることができる。
【0053】
また、第1係合部を、単一の第1凸部又は単一の第1凹部によって構成する一方、第2係合部を第1凸部に係合可能な単一の第2凹部、又は第1凹部に係合可能な単一の第2凸部によって構成してもよい。また第1係合部と第2係合部との係合を確実に期すべく、一方の係合部としてフック孔を適用するとともに、他方の係合部としてフック孔に弾性係合可能なフック爪を適用しても構わない。また、第1係合部及び第2係合部として、相互に係合可能な面ファスナを適用してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、線状封止体が中空状のものである場合、両端部に設けた閉塞部に第1係合部を形成した態様を例示したが、線状封止体として、表面部、裏面部、外面部、又は内方起立部に第1係合部を形成しても構わない。この場合、表面部、裏面部、外面部、又は内方起立部のうち、第1係合部を形成する部位の厚み寸法を他の部位の厚み寸法よりも大きく設定しておけば、第1係合部(特に凸部)自体の強度、ひいては組付強度の向上に資する。
【0055】
また、線状封止体とコーナー接続体との接合を上述した接着のみによって行う態様としてもよく、その場合には、線状封止体及びコーナー接続体として、前記第1係合部及び前記第2係合部をそれぞれ備えていないものを適用すればよい。
【0056】
さらに、線状封止体及びコーナー接続体の各外面部の形状として、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を3以上設けた略波形状を採用してもよい。
【0057】
また、線状封止体の長手寸法が、プラスチック板本体の辺よりも若干大きい又は小さい場合には、その誤差を、コーナー接続体のうち、線状封止体の端部に対面し得る対面部を、線状封止体の端部側へ突出させる、又は窪ませることによって吸収し得るように設定してもよい。
【0058】
図1では、略正方形状のプラスチック板本体を例示しているが、略長方形状等、他の四角形状のプラスチック板本体を適用しても構わない。この場合、各線状封止体の長手寸法を、プラスチック板本体の各辺に対応する長さに設定すればよい。
【0059】
プラスチック板本体として、「プラスチック気泡ボード」に替えて、前述の「プラスチック段ボール」、又は「プラスチック折り畳みハニカムボード」を適用しても勿論構わない。
【0060】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラスチック中空板の全体図を模式的に示す図。
【図2】同実施形態におけるプラスチック板本体の一部を模式的に示す図。
【図3】同実施形態における線状封止体を一部省略して模式的に示す図。
【図4】図3のA方向矢視図。
【図5】図3のB―B線断面図。
【図6】同実施形態におけるコーナー接続体を模式的に示す図。
【図7】図6のC方向矢視図。
【図8】本発明の一実施形態に係るプラスチック中空板の端部処理方法を説明するための図。
【図9】図8の次工程を模式的に示す図。
【図10】同実施形態に係る線状封止体の一変形例を図4に対応して示す図。
【図11】同実施形態に係るコーナー接続体の一変形例を図7に対応して示す図。
【図12】同実施形態に係る線状封止体の他の変形例を図4に対応して示す図。
【符号の説明】
【0062】
1…プラスチック中空板
2…プラスチック板本体
3、X3、Y3…線状封止体
3a、X3a、Y3a…アール部
33、X33、Y3…外面部
35…第1係合部
4…コーナー接続体
4a…アール部(第1コーナーアール部)
4b…第2アール部(第2コーナーアール部)
43…対面部
44…外面部(コーナー外面部)
45…第2係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略方形状をなす中空構造のプラスチック板本体と、
当該プラスチック板本体の開放された端部を形成する各一辺の全域又は略全域を封止可能な略直線状をなす線状封止体と、
隣り合う前記線状封止体の端部間に、これら端部同士を接続し得る状態で配されるコーナー接続体とを具備してなり、
前記各線状封止体及び各コーナー接続体の外面部に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を形成していることを特徴とするプラスチック中空板。
【請求項2】
前記各線状封止体及び各コーナー接続体が、厚み方向に沿った両端部にそれぞれ前記アール部を備えたものである請求項1記載のプラスチック中空板。
【請求項3】
前記各線状封止体及び各コーナー接続体が、厚み方向に沿った略全域に前記アール部を備えたものである請求項1記載のプラスチック中空板
【請求項4】
前記コーナー接続体が、面方向に広がりを有する部分円弧状の第2アール部を備えたものである請求項1、2又は3記載のプラスチック中空板。
【請求項5】
前記プラスチック板本体が複数又は単一のシート材から形成されるものであり、前記アール部の曲率半径及び前記シート材の厚み寸法を式〔1〕を満たす値に設定している請求項1、2、3又は4記載のプラスチック中空板。
r≧t・・・式〔1〕
ここで、r:アール部の曲率半径、
t:シート材の厚み寸法
である。
【請求項6】
前記第2アール部の曲率半径及び前記プラスチック板本体の厚み寸法を式〔2〕を満たす値に設定している請求項4記載のプラスチック中空板。
R≧T・・・式〔2〕
ここで、R:第2アール部の曲率半径、
T:プラスチック板本体の厚み寸法
である。
【請求項7】
前記線状封止体のうち長手方向に直交する方向に沿った寸法及び前記プラスチック板本体の厚み寸法を式〔3〕を満たす値に設定している請求項1、2、3、4、5又は6記載のプラスチック中空板。
W≧T・・・式〔3〕
ここで、W:線状封止体のうち長手方向に直交する方向に沿った寸法、
T:プラスチック板本体の厚み寸法
である。
【請求項8】
前記線状封止体に第1係合部を設け、前記コーナー接続体に前記第1係合部に係合可能な第2係合部を設けている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のプラスチック中空板。
【請求項9】
前記線状封止体及び前記コーナー接続体が中空状のものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のプラスチック中空板。
【請求項10】
概略方形状をなす中空構造のプラスチック板本体の端部を封止する際に適用されるプラスチック中空板の端部処理方法であり、
前記プラスチック板本体の端部を形成する各辺に、厚み方向に広がりを有する部分円弧状のアール部を外面部に有し、且つ前記各辺と略同一の長手寸法を有する線状封止体を接着する工程と、
これら各線状封止体を接着した後、又は接着する前段階において、隣り合う前記線状封止体の端部間に、前記アール部と同形状のアール部を外面部に有するコーナー接続体を取り付ける工程とを経ることによって、
前記プラスチック板本体の開放された端部を封止し、且つ端部全域に丸みを帯びさせることを特徴とするプラスチック中空板の端部処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−45220(P2009−45220A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213857(P2007−213857)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】