説明

プラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置およびその回収方法

【課題】 プラスチック吹付作業時に発生する吹付材のリバウンド材を安定的に供給でき、かつ、施工現場近くに搬送が可能なコンパクトな回収装置および方法を提供する。
【解決手段】 プラスチック耐火物の吹付施工時に発生するリバウンド材の回収装置において、回収した前記リバウンド材を回収現場から吹付装置に供給するための切り出しエジェクタを備えていることを特徴とするプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置およびその回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック耐火物を吹付施工する際に発生するリバウンド材の回収装置およびそのリバウンド材回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック耐火物の施工方法には、ランマー等を用いてプラスチック耐火物を突き固める打ち込み施工と、吹付機を用いてプラスチック耐火物を施工部位に吹付ける吹付施工とがあり、施工条件に合わせて適宜施工方法を選択している。特に炉の壁面や天井部を施工する場合には吹付施工が採用される場合が多い。
【0003】
ただプラスチック耐火物の吹付施工を行う場合、施工部位に接着せず跳ね飛ばされてしまったいわゆるリバウンド材の発生が避けられない。一方このリバウンド材はプラスチック耐火物として再利用することが可能であることも知られている。
【0004】
そこで以前より、リバウンド材の回収装置が開発されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭61−175894号公報
【特許文献2】実開昭62−86960号公報
【0006】
特許文献1では、リバウンド材を吸引式回収装置で吸い取り吹付装置近傍まで搬送する回収装置が紹介されている。また特許文献2のように吸引部に旋回可能な自動吸引式回収装置を取り付けている例もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸引式回収装置でリバウンド材を回収した場合には、リバウンド材の搬送量が変動するため、定量的に吹付機に添加ための切り出し装置を別途取り付ける必要がある。また、粘性のある材料を一度に大量に吸引した場合、吸引ホース内で詰りが発生することがある。
【0008】
一方、吸引による真空圧が高いとリバウンド材に含まれている水分の発散が大きく再度水分を添加する必要があり、その添加量も予測できないうえにバラツキが大きいため、常に施工状況を観察しながら添加量を調整しなければならなかった。
【0009】
さらに、吸引のみで比重の大きいリバウンド材を搬送する場合には、大量の風量を必要とするため吸引設備が大きくなり回収装置の設置場所や運搬等の取り回しが制限され、炉内への搬入が困難だったり、炉外でも十分なスペースのある場所を確保する必要がある。一方吹付装置を炉外に設置する場合も多く、この場合にもリバウンド材を再投入する際の利便性からやはり回収装置を炉外に設置することになる。この場合、ホースによるリバウンド材の長距離搬送を行わざるを得ず前記のような問題がより発生しやすくなる。また特許文献2で紹介されているような装置も、炉内に持ち込むための労力が大きく実用的ではなかった。そして大型の装置は不経済でもある。
【発明を解決するための手段】
【0010】
そこで前記課題を解決するため、リバウンド材の安定的な供給かつ炉内の施工現場近傍に搬入が可能な小型の回収装置とそれを用いた回収方法とを以下のとおり発明した。
【0011】
1)プラスチック耐火物の吹付施工時に発生するリバウンド材の回収装置において、回収した前記リバウンド材を回収現場から吹付装置に供給するための切り出しエジェクタを備えていることを特徴とするプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。(請求項1)
2)サイクロン式分離装置を備えていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。(請求項2)
3)前記サイクロン式分離装置の排出口がロータリーバルブを備えていることを特徴とする請求項2記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。(請求項3)
4)プラスチック耐火物の吹付施工時に発生するリバウンド材の回収方法において、回収した前記リバウンド材を切り出しエジェクタを用いて回収現場からエアー搬送し、吹付装置にリバウンド材を供給することを特徴とするプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。(請求項4)
5)サイクロン式分離装置を併用し、吹付装置にリバウンド材を供給する前に微粉を取り除くことを特徴とする請求項3記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。(請求項4)
6)前記サイクロン式分離装置の排出口がロータリーバルブを備えていることを特徴とする請求項2記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。(請求項6)
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いる切り出しエジェクタとは、定量的にリバウンド材を圧送できるように切り出し装置とエジェクタノズルを有するエジェクタ部とを組み合わせたものである。まず切り出し装置から定量的に切り出されてきたリバウンド材をエジェクタ部入口で吸引し、さらにエジェクタノズルからの気流でエジェクタ部出口から搬送配管(ホース、金属管等)を通して圧送することにより、リバウンド材を吹付装置まで搬送する装置である。
【0013】
このように回収現場側から吸引と圧送とを併用して搬送することで、吹付装置側からの吸引のみの場合と比較して、低風量でかつ安定的にリバウンド材を搬送することができる。また切り出し装置からエジェクタ部にリバウンド材を供給することで、搬送量を一定に保ったり、状況に応じて増減することが容易にできる。
【0014】
低風量でリバウンド材を搬送できるため、前記エジェクタノズルへの気流の供給は、吹付用のコンプレッサーや工場内のエアー配管から供給したり、工場内電源で駆動できる持ち運びの容易な小型コンプレッサーを前記切り出しエジェクタの近くにおいてそこから供給することができる。また前記切り出し装置も工場内電源で駆動できるもので十分である。
【0015】
そのため、従来の吸引式回収装置のように切り出し装置を別途設置することや大型の吸引設備が不要となり、本発明の回収装置本体は、炉内の施工現場近傍に搬入できるほど小型となった。そしてリバウンド材の安定的な供給が低風量でできるため、吸引式回収装置で発生していた諸問題を解決することができた。
【0016】
またリバウンド材が定量的に搬送されてくるため、搬送配管から直接吹付装置にリバウンド材を供給することができる。したがって吹付装置の近辺に別途切り出し装置を設置する必要がなく、吹付装置周辺のスペースも節約できる。
【0017】
また従来の吸引式回収装置では吸引するリバウンド材の量が不安定であり、急に吸引量が増加すると配管内で詰まりが生じることがある。それに対し、本発明では常に一定量のリバウンド材が搬送されるため、配管内で詰まりが生じることがなく安定した搬送が行える。
【0018】
回収装置から送られてきたリバウンド材を吹付装置に添加する前にエアーと分離する場合、従来よりある各種の分離装置や方法を適宜本発明と組み合わせて実施することが可能である。その中で本発明においては、サイクロン式分離装置(以下、サイクロン)を用いてエアーと分離することが好適である。
【0019】
前記サイクロンには吸引ブロアが設置されており、その吸引力を併用することで、前記エジェクタノズルからの気流による搬送を補助することができ、前記切り出しエジェクタの更なる小型化が可能となる。また吸引ブロアについても、施工現場からリバウンド材を吸引するほどの吸引力は不要で、前記サイクロン内でエアーを分離できる程度の吸引力があれば十分なので、リバウンド材からの水分の発散も最小限に抑えることができる。また吸引ブロアの排気口に集塵装置を設置すれば、ブロア排気による発塵を防止できる。
【0020】
ところで前記サイクロンの排出口には、エアーシール性の優れるロータリーバルブを設置することが望ましい。
【0021】
なお前記サイクロンは直接吹付装置にリバウンド材を投入できる位置に設置することが望ましいため、吹付装置が炉外にあるときは前記サイクロンも炉外に設置することになる。この場合でも前記切り出しエジェクタによる吸引・圧送と前記サイクロンによる吸引とを併用しているため、50m以上の長距離搬送も安定的に行うことができる。
【実施例】
【0022】
以下に図1ないし図3により本発明の実施例の一例を紹介するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明のリバンド回収装置を組み合わせたプラスチック耐火物の吹付施工装置の概略図である。
【0024】
フレコン1から材料供給機2に投入された新規プラスチック耐火物は、一定の切り出し速度で吹付装置3に供給され吹付ノズル4から吹付施工され、施工体5を形成する。吹付施工時に発生したリバウンド材6は、人力または機力(図示せず)にて切り出しエジェクタ7に投入される。切り出しエジェクタ7から一定の速度で切り出されたリバウンド材6は、搬送ホース8中を搬送され、サイクロン9にてエアーと分離され、ロータリーバルブ10から直接吹付装置3に再投入される。これにより、常に一定の比率でリバウンド材を新規プラスチック耐火物に添加し続けることができる。切り出しエジェクタ7へのエアーの供給は吹付用コンプレッサー(図示せず)から供給した。
【0025】
図2は、サイクロン式分離装置の概略図である。サイクロン9上部の吸引口11は吸引ブロア12に接続され、ここからサイクロン9内のエアーを吸引している。吸引ブロア12の下流側には集塵機13が設置され、吸引ブロア12からの排気による発塵を防止している。
【0026】
図3は、切り出しエジェクタ7の概略図である。切り出しエジェクタ7は切り出し装置21とエジェクタ部22から構成されている。切り出し装置21から定量的に切り出されたリバウンド材24は、エジェクタ部入口23に投入され、エジェクタノズル25からの気流26により吸引される。さらにその後気流26によりエジェクタ部出口27へと圧送されたリバウンド材28は、搬送ホース8を通ってサイクロン9へと搬送される。
【0027】
前記実施例の構成により加熱炉でプラスチック耐火物の吹付施工を実施した。吹付装置が炉外に設置されたため、リバウンド材の搬送距離が最長60mとなったが、エジェクタノズル25による吸引・圧送とサイクロン9による吸引との併用により、最高搬送量1トン/hと安定した搬送が行えた。また吸引による負圧も小さいことから再度水を添加する必要がなかった。
【0028】
さらに従来の吸引式回収装置と比較してリバウンド材の回収量が約10%向上し、その分プラスチック耐火物の節約と廃棄物の削減につながった。これは吸引式回収装置では吸引し切れないリバウンド材が発生するが、本発明の回収装置では、そのようなリバウンド材でもスコップ等でかき集めて回収することができたためと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のリバンド回収装置を組み合わせたプラスチック耐火物の吹付施工装置の概略図
【図2】サイクロン式分離装置の概略図
【図3】切り出しエジェクタの概略図
【符号の説明】
【0030】
1 フレコン
2 材料供給機
3 吹付装置
4 吹付ノズル
5 施工体
6、24、28 リバウンド材
7 切り出しエジェクタ
8 搬送ホース
9 サイクロン
10 ロータリーバルブ
11 吸引口
12 吸引ブロア
13 集塵機
21 切り出し装置
22 エジェクタ部
23 エジェクタ部入口
25 エジェクタノズル
26 気流
27 エジェクタ部出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック耐火物の吹付施工時に発生するリバウンド材の回収装置において、回収した前記リバウンド材を回収現場から吹付装置に供給するための切り出しエジェクタを備えていることを特徴とするプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。
【請求項2】
サイクロン式分離装置を備えていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。
【請求項3】
前記サイクロン式分離装置の排出口がロータリーバルブを備えていることを特徴とする請求項2記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収装置。
【請求項4】
プラスチック耐火物の吹付施工時に発生するリバウンド材の回収方法において、回収した前記リバウンド材を切り出しエジェクタを用いて回収現場からエアー搬送し、
吹付装置にリバウンド材を供給することを特徴とするプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。
【請求項5】
サイクロン式分離装置を併用してリバウンド材を回収することを特徴とする請求項4記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。
【請求項6】
前記サイクロン式分離装置の排出口がロータリーバルブを備えていることを特徴とする請求項5記載のプラスチック吹付耐火物のリバウンド材回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−243868(P2009−243868A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117834(P2008−117834)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】