説明

プラスチック積層まな板及びその製造方法

【課題】デザインや使いやすさの機能を追求したプラスチック積層まな板及びその製造方法、特に、最近の料理の見た目の美しさの食材形状を整えるのに容易なまな板を提供する。
【解決手段】透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体からなる積層まな板1において、複数枚の積層板本体2の一部にその積層板本体2のプラスチック板又はシートよりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチック板又はシートの図柄板を設けて、この図柄印刷面の図柄4がまな板の外面から視認可能に一体化して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デザインや使いやすさの機能を追求したプラスチック積層まな板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
特に、最近の料理は味の追求はもとよりであるが、見た目の美しさを求める傾向が強く表れて来ている。本発明はこのような要請に応える衛生的なまな板の開発を目的とする。
【背景技術】
【0003】
プラスチックシートの複数枚を積層したまな板は、古く昭和44年出願の特許文献1に見られる。ここには、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂薄板を複数枚重ね合わせてその周縁を加熱溶融するか、接着剤を塗布するなどして剥ぎ取り自在に一体化することが開示されている。このようにすると、まな板表面の汚れに応じて表面シートを適宜はぎ取ることで、清潔にかつきれいに使用することができるので、好都合である。
【0004】
しかし、まな板上で食材に包丁を入れる際、寸法を整えるのに多くの場合、目分量か、最初に切った食材をずらして寸法を合わせて切っている。そこで、労せずして正確に寸法を合わせて食材を安全に切る目的で、まな板に目盛を設けることが提案、実施されてきた。目盛はセンチ、丸、三角、分度器を入れて好みに合わせて施されている。目盛りをまな板につけることについては、多くの提案がなされ、たとえば特許文献2〜4を挙げることができる。
【0005】
特許文献2には、透明又は半透明のまな板の中に定規を組み入れることが記載され、特許文献3にも、従来、まな板の外側周面に付けていた目盛り線に代えて表面に目盛り線を有する透明性合成樹脂板を中に入れ、その外側に同じ透明性合成樹脂材料の外層を設けたものが提案されている。
【0006】
また、特許文献4には、まな板本体上にくりぬいた目盛り又は方眼目盛りの図柄に、違った色の同素材などを流し込んで表現した目盛り付まな板が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特公昭47−51757号公報
【特許文献2】実開平2−146548号公報(考案の詳細な説明、図1、図2)
【特許文献3】実開昭63−189145号公報(考案の詳細な説明、図1、図2)
【特許文献4】実開平6−46643号公報(考案の詳細な説明、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリエチレン等の合成樹脂薄板を複数枚重ね合わせてその周縁を加熱溶融した積層まな板は、清潔にかつきれいに使用することができるので、好都合である。このような積層まな板に目盛り等を付ける方法につき、内部の積層板に目盛りを印刷等して、積層一体化することが考えられるが、まな板の反りの原因になったり、熱による収縮で正確な目盛りを形成できなかったり、あるいは、目盛り付き積層板の部分で剥離するなどのトラブルが生じやすいことが課題となっていた。
【0009】
そこで従来は、特許文献2に見られるように、透明又は半透明のまな板の中に定規を埋設したり、特許文献3に記載されているように、まな板の外側周面に付けていた目盛り線に代えて表面に目盛り線を有する透明性合成樹脂板を中に入れ、その外側に同じ透明性合成樹脂材料の外層を一体成形したりする方法で解決していた。また、特許文献4には、まな板本体上にくりぬいた目盛り又は方眼目盛りの図柄に、違った色の同素材などを流し込んで表現した目盛り付まな板としている。
【0010】
しかしながら、このような方法では多数の薄板からなる積層まな板には応用できない手段である。本発明者も種々の材料や方法について例えば、まな板と同種又は異種のプラスチックシートや紙、不織布など種々検討を加えた結果、本発明の解決手段に至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体からなる積層まな板において、複数枚の積層板本体の一部に該積層板本体のプラスチック板又はシートよりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチック板又はシートの図柄板を設けて、この図柄印刷面の図柄がまな板の外面から視認可能に一体化して構成したことにある。したがって、まな板本来の機能に加えて、まな板の使いやすさ、あるいは美的センスを付加したプラスチック積層まな板である。
【0012】
このような機能をまな板に確実に、かつ、耐久性の高い特性を付与するために、積層体本体材料が融点120〜180℃のプラスチックであり、図柄板材料が融点160〜280℃のプラスチックである材料の組み合わせが好ましい。
【0013】
プラスチック積層まな板に用いる積層体本体材料の融点120〜180℃のプラスチックはポリオレフィン系プラスチックが主体であり、図柄板材料の融点160〜280℃のプラスチックはポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系プラスチックあるいはABS樹脂のいずれかが、利用できる。
【0014】
特に、ポリエステル系プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレートや、あるいはポリエチレンテレフタレートとアクリル樹脂の混合物からなるシートが、まな板本体のポリオレフィンプラスチックとの積層一体性や図柄の印刷性において好ましい材料である。
【0015】
図柄板の印刷面の図柄は、例えば、目盛り、文字、記号、図形、絵画、挿し絵、写真又はこれらに類する図柄であって、特に限定されない。目盛りを主体にする場合も、全体的に淡い模様を重ねたり、まな板を記念品にしたりする際には、その記念になるデザインキャラクタあるいは学校名、記章、その他の出所標示マークなど様々な態様で印刷できる。これらの図柄がまな板の表面から視認できるように、透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体でまな板を構成する。
【0016】
透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体からなる積層まな板の製造に際しては、複数枚の積層板本体の一部に該積層板本体のプラスチック板又はシートよりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチック板又はシートの図柄板を積層し、
前記図柄印刷面の図柄がまな板の外面から視認可能に積層板本体内に埋設し、積層板本体とともに外周を加熱溶融して一体化する。
【0017】
ここで、図柄印刷面を有する図柄板は、ポリエステル系プラスチックがポリエチレンテレフタレートとアクリル樹脂の混合物のシート(例えばOHP用フィルムシート)の表面に図柄をPPC複写機で転写して得られるものが、最も好ましい。カラー印刷の場合もPPCカラー複写機を用いて同様に印刷が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラスチック積層まな板は、以上のような構成とすることにより、従来のポリエチレン等の合成樹脂薄板を複数枚重ね合わせてその周縁を加熱溶融した積層まな板であるから、清潔にかつきれいに使用することができる。このような積層まな板に目盛り等を付けて、使いやすい機能を与えても、まな板の反りや熱による収縮がなく、正確な目盛りが形成でき、目盛り付き積層板の部分で剥離するなどのトラブルが全く見られなかった。
【0019】
したがって、従来のように、透明又は半透明のまな板の中に定規を埋設したり、まな板の外側周面に目盛り線を付けたり、あるいは、表面に目盛り線を有する透明性合成樹脂板を中に入れ、その外側に同じ透明性合成樹脂材料の外層を一体成形したりする方法に比べてきわめて安価に製造することができる。
【0020】
更に、積層まな板の内部に積層する材料として本発明で特定した材料を用いることで、積層まな板と同種又は異種の他のプラスチックシートや紙、不織布などでは得られない、まな板本体との優れた積層一体性や図柄の印刷性が得られ、堅牢かつ優美なプラスチック積層まな板となる。そのため、過酷な使用条件にある料理学校、レストラン、食堂などにおける使用に耐え、業務用はもとより、一般家庭においても食品原材料の切り揃えが迅速簡単に行え、調理品の見映えが向上する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面及び実施例に基づき、本発明のプラスチック積層まな板の構造及び性能について具体的かつ詳細に説明する。図1は本発明に係るプラスチック積層まな板の表面図であり、図2は同部分破断裏面図である。図3は図1中のA−A断面部分拡大図である。図4乃至図7は本発明に用いる図柄板の目盛り及び図柄印刷面の各例を示す平面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明のプラスチック積層まな板1は、積層板本体2の表積層板21を通して表面から目盛りの図柄4が透けて見える。これは、図2の部分破断裏面図に示すように、透明又は半透明の積層板本体2が3枚のプラスチック板である表積層板21、中間積層板22及び裏積層板23からなり、これらプラスチック板の層間に積層板本体2よりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチックシートの図柄板3が挿入されているからである。まな板の図柄が同一でない場合は、中間積層板22に着色を施して見苦しくない程度の半透明性にする。図2又は図3に示すものは、表図柄板31及び裏図柄板32を設けて、これらの図柄板3に印刷された図柄4がまな板の表裏外面からそれぞれの図柄のみが各面から視認可能に積層板本体2と一体化して積層まな板1を構成している。
【0023】
図柄板3の印刷面の図柄4は、図1に見られる表積層板21を通して視認できる表図柄板31に印刷された図柄である。この図柄は目盛りを主体とした図4に示すもので、中央3本の中央平行線41からなる図柄と細かい目盛りのまな板側縁目盛42、42からなる図柄、及びその中間にある粗い中間目盛43、43からなる図柄で構成されるように表図柄板31に印刷されている。図5の図柄は裏図柄板32に設けられたもので、丸形のケーキや蒸しパンなどを等分に切るのに好適な円形等分割目盛44とまな板側縁目盛42とが印刷されたものであって、図2にみられる裏積層板23を通して視認できる。これにより、殆どの丸形ケーキを等分割することができる。
【0024】
図柄板3には、これらの目盛りを主体とした図柄に加えて、あるいは独立して、まな板の発注者の依頼により文字、記号、図形、絵画、挿し絵、写真又はこれらに類する図柄の1種又は2種以上を同時に印刷することも可能である。例えば、図6に示すような図柄板の中央に格子目盛45を長手方向縁部に側縁外向目盛46、46を設けたものや、図7に見られる星形目盛47としてこれに符号5として七分割△符号51と十四分割□符号52を付加して、図5の円形等分割目盛44では等分割できない、七分割や十四分割を容易にしたものが挙げられる。これには星形の中点を示す中点○符号53と、中点を通る中央目盛48が付加されて、クッキングスクール、ケーキ店、軽食喫茶店などにおいて重宝するまな板が製造できる。
【0025】
ここで、図1〜3に示すプラスチック積層まな板1の製造方法を具体的に説明する。まず、複数枚の積層板本体2には透明又は半透明のプラスチック板として厚さ3mmのポリエチレン(LDPE)の板材を3枚用意した。その内、2枚は無着色で表積層板21と裏積層板23とし、1枚は薄いピンク色に着色した透明性の劣るもので中間積層板22とした。ポリエチレン樹脂は融点120〜180℃のものが使用でき、ここでは耐熱温度90℃、耐冷温度-30℃の規格をクリアさせるためと、包丁での切り心地を満足させる樹脂として融点141℃のものを選んだ。
【0026】
一方、図柄板3として、ポリエチレン積層板本体2よりも高融点の融点160〜280℃のプラスチックとして、透明性、印刷性の良好な図柄印刷面を有する融点260℃のポリエチレンテレフタレート(PET)とアクリル樹脂(PMMA)の混合物の透明シートを用意した。この透明シートはPET99.8%とPMMA0.2%の混合樹脂で、ここではオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用の複写フィルムシートである。したがって、本発明の図柄板3としては好適で、シートの表面に図柄4をPPC複写機によって印刷して高性能なものが得られる。
【0027】
上記のポリエチレン積層板3枚と、図4と図5にみられる図柄板としてOHP用の複写フィルムシートの2枚とを図2に示す部分破断裏面図にみられる順序に積層しプレス成形した後、周囲をガスバーナであぶって融着一体化した。
【0028】
本発明で用いた図柄板は、PPC複写機で簡便に製作できる紙に印刷したものに比べてシャープな図柄が得られ、製作時にずれたりすることがない。また、紙の図柄板を用いた場合、仮にまな板周縁の融着部が部分的に剥がれて水が侵入すると、図柄が乱れて使用できなくなるようなトラブルが発生する。ところが、本発明の例えばOHP用の複写フィルムシートを用いると、このようなトラブルは皆無であり、紙と同様に各種小規模生産にも効率よく対応できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るプラスチック積層まな板の表面図である。
【図2】本発明に係るプラスチック積層まな板の部分破断裏面図である。
【図3】本発明に係るプラスチック積層まな板の図1中のA−A断面部分拡大図である。
【図4】本発明に用いる図柄板の目盛り印刷面の一例を示す平面図である。
【図5】本発明に用いる図柄板の目盛り印刷面の他の例を示す平面図である。
【図6】本発明に用いる図柄板の目盛り印刷面の他の例を示す平面図である。
【図7】本発明に用いる図柄板の図柄印刷面の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 プラスチック積層まな板
2 積層板本体
21 表積層板
22 中間積層板
23 裏積層板
3 図柄板
31 表図柄板
32 裏図柄板
4 図柄
41 中央平行線
42 側縁目盛
43 中間目盛
44 円形等分割目盛
45 格子目盛
46 側縁外向目盛
47 星形目盛
48 中央目盛
5 符号
51 七分割△符号
52 十四分割□符号
53 中点○符号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体からなる積層まな板において、複数枚の積層板本体の一部に該積層板本体のプラスチック板又はシートよりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチック板又はシートの図柄板を設けて、前記図柄印刷面の図柄がまな板の外面から視認可能に一体化してなる、プラスチック積層まな板。
【請求項2】
積層体本体材料が融点120〜180℃のプラスチックであり、図柄板材料が融点160〜280℃のプラスチックである請求項1記載のプラスチック積層まな板。
【請求項3】
積層体本体材料の融点120〜180℃のプラスチックがポリオレフィン系プラスチックであり、図柄板材料の融点160〜280℃のプラスチックがポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系プラスチック、ABS樹脂のいずれかである請求項1又は2記載のプラスチック積層まな板。
【請求項4】
ポリエステル系プラスチックがポリエチレンテレフタレートとアクリル樹脂の混合物である請求項3記載のプラスチック積層まな板。
【請求項5】
図柄板の印刷面の図柄は、目盛り、文字、記号、図形、絵画、挿し絵、写真又はこれらに類する図柄である請求項1記載のプラスチック積層まな板。
【請求項6】
透明又は半透明のプラスチック板又はシートの複数枚の積層板本体からなる積層まな板の製造に際して、複数枚の積層板本体の一部に該積層板本体のプラスチック板又はシートよりも高融点の図柄印刷面を有するプラスチック板又はシートの図柄板を積層し、前記図柄印刷面の図柄がまな板の外面から視認可能に積層板本体内に埋設し、積層板本体とともに外周を加熱溶融して一体化する、プラスチック積層まな板の製造方法。
【請求項7】
図柄印刷面を有する図柄板は、ポリエステル系プラスチックがポリエチレンテレフタレートとアクリル樹脂の混合物のシートの表面に図柄をPPC複写機で転写して得られる請求項6記載のプラスチック積層まな板の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−264184(P2008−264184A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110921(P2007−110921)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(500448920)山県化学株式会社 (1)
【Fターム(参考)】