説明

プラスミドキュアリング

本発明はプラスミドキュアリングに関し、詳細には、細菌のような宿主細胞から内在プラスミドつまり内生プラスミドを追放する、効率的でストレスフリーな方法に関する。本発明は、後分離キリング(PSK)システムを含有するプラスミドを有する宿主細胞内に組換え核酸分子を導入することを含む、宿主細胞から後分離キリングシステムを含有するプラスミドを追放する方法において、組換え核酸分子がプラスミドの後分離キリングシステムの毒性効果を中和するように構成され、核酸分子がプラスミドの複製を打ち負かす、または阻害するようにも構成されることを特徴とする方法にまでも及ぶ。本発明はさらに、本方法において使用され得る組換え核酸分子、ならびに本発明の方法および核酸分子のさらなる使用にまでも及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はプラスミドキュアリングに関し、詳細には、細菌などの宿主細胞から内在プラスミドつまり内生プラスミドを追放する、効率的でストレスフリーな方法に関する。本発明は、前記方法において使用される組換えプラスミド、およびそのようなプラスミドを包含する細胞にまで、さらに前記方法を行うためのキットにまでも及ぶ。
【0002】
細菌は、単細胞微生物の大きな群であり、その多くは動物およびヒトに感染症および病気を引起こす。たとえば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)は、細菌の大きな科であり、腸において片利共生的に、かつ病原的に発生し、幅広い病気を引起す。標準的条件下または最適条件下での生存に必要とされる、細菌の必須遺伝子のほとんどは、染色体に含まれる。しかし、多くの細菌は、その多様性および適応性に大いに寄与し得る、種々の可動遺伝因子(MGE)をも有する。これらのMGEは、非ストレス環境下での生存に必須のものを何も有していないが、細菌が生物膜を形成する能力、または抗生物質に耐性である能力などの特殊化した機能にとって重要であろう。
【0003】
プラスミドは最も容易に特定されるMGEである。なぜなら、プラスミドは、染色体とは物理的に離れており、溶菌、および遊離されたDNA分子の電気泳動分離によって視覚化され得るからである。プラスミドは、細菌内に存在し、かつある程度小染色体のように振舞う遺伝因子である。多くの細菌種の全ゲノムの、増大しつつあるDNA配列情報によって、バイオインフォマティクスを用いる機能的予測が可能であるが、プラスミドの、宿主の表現型への寄与を実験的に試験することは今でも重要で、かつ好ましい。
【0004】
従来から、プラスミドによって与えられる表現型を決定するためには、プラスミドを失った、プラスミドフリーの分離個体を獲得して、もしあれば、どの特性が失われたかを決定することと、プラスミドを新たな菌株に伝達し、プラスミドによってどのような新たな表現型が獲得されるかを決定することとが必要である。この実験の重要な部分は、自然宿主からの、内生プラスミドつまり内在プラスミドの追放であり、これはキュアリングと呼ばれるプロセスである。 生来不安定で、宿主から容易に失われ得るプラスミドもあるが、多くのプラスミドは非常に永続的であり、プラスミドフリーの細菌を獲得するのに能動的戦略が必要である。
【0005】
定義によれば、抗生物質または特別な栄養物が存在するようなある条件下を除けば、プラスミドは非必須である。ゆえに、豊かな増殖条件下では、プラスミドを追放することが可能であると考えられる。しかし、自然発生のプラスミドは、何百年にわたって選択圧を生き残ってきたものであるため、非常に安定している傾向にある。したがって、プラスミドを有する細菌にプラスミドがどのような特性を与えるかを解明するためには、プラスミドを追放して、プラスミドを欠く細菌を産生し、プラスミドを持つ細菌とプラスミドを持たない細菌とを比較できることが必須である。
【0006】
菌株の内在プラスミドを除去する(cure)従来の戦略は、何らかの方法で、たとえば高温での増殖によって、または界面活性剤、突然変異原もしくは挿入剤などの他のDNA調節剤の存在下での増殖によって、細菌にストレスを加えることである。あいにく、これらの手順は、宿主にストレスを加え、細菌のストレス応答の一部が突然変異率を増大させるという問題を非常に被る。このことは、プラスミドが追放されるか否かに関わらず、宿主の表現型の変化をもたらし得るので、導き出され得る結論を著しく損なう。
【0007】
宿主細胞の内生プラスミドを除去するための代わりのアプローチは、「プラスミド不和合性」の特性を利用して、内在プラスミドを追放するものである。プラスミド不和合性は、プラスミドの複製および/またはプラスミドの分割、すなわち細胞分裂中の娘細胞への各プラスミドの分離に関して、類似の、または同じシステムを有する場合に、同一細胞内に安定してプラスミドが共存することができないというものである。同一細胞を占有する2つの不和合プラスミドは、両プラスミドに対する選択圧がなければ、細胞分裂中に異なる細胞に分離または分割する傾向がある。一方のプラスミドの、他方のプラスミドとの安定した細胞内共存には、各プラスミドが、互いに独立して、安定したコピー数を確立および維持することができるように独自の複製/分割を制御できることが必要とされる。しかし、一方のプラスミドが他方のプラスミドの存在下で安定したコピー数を維持できないことが、不和合性の特徴である。
【0008】
したがって、2つのプラスミドが、たとえば選択圧下に置かれるといった、同じ臨界工程を経る場合、無作為選択によって一方または他方のプラスミドが優占し、最終的に他方が失われるだろう。この一方のプラスミドの他方による追放は、2つのプラスミドの一方が、他方のプラスミドによって影響を及ぼされない第2の複製システムを有する場合、特に、第2の複製システムが生来、より多くのコピー数を有する場合、効果的に一方向性となり得る。これらの状況下で、通常、より少ないコピー数のプラスミドは、あたかも過剰複製され、かつ細胞内の他方のプラスミドタイプのさらなる複製が断たれるかのように反応して、プラスミドの追放をもたらす。
【0009】
Tatsunoら(Infection and Immunity、第69巻、第6660〜6669頁)は、pO157ゲノムの一部に由来するミニレプリコンの不和合性を用いて、大腸菌(
Escherichia coli)(以降、学名、遺伝子に下線を付す)宿主から内生プラスミドpO157を除去することを試みた。しかし、Tatsunoらは、スクリーニングされた全41の形質転換体から7つのみがプラスミドを失っただけであるという非効率的なキュアリングを観察した。したがって、このグループによって開示される方法は非効率的であった。
【0010】
分裂時に親細胞からプラスミドを受取る確率を増大させるプロセスとは無関係に、プラスミドフリーの分離個体が生存するのを妨げる、多くのプラスミドによって採用される非常に特殊な戦略がある。キラーシステム(killer system)、キリング抗キリング(
killing-anti-killing)、後分離キリング(post-segregational killing)、毒素抗毒素(toxin-antitoxin)、毒物解毒物(poison- antidote)、プラスミド中毒システム(plasmid addiction system)またはプログラム細胞死などの用語はすべて、宿主細胞がプラスミドのコピーを何も受取らなかった場合に選択的に殺されるという状況を記載するのに用いられる。このキリングの分子的基礎は、少なくとも2つのプラスミド遺伝子の存在を必要とする:一方は安定した毒素を特定し、他方は、毒素をコードする遺伝子の致死作用を阻害する、不安定要素をコードする。同定された毒素は今までのところ常にたんぱくであるが、解毒物は、アンチセンスRNA(毒素mRNAの翻訳を阻害する)またはたんぱく(何らかの方法で毒素の効果を阻害する)のいずれかである。
【0011】
ゆえに、細菌の内生プラスミドを除去しようと試みるときに研究者が直面する重大な問題は、不運にも、多くのプラスミドが、内生プラスミドを失った細菌細胞の生存率の損失をもたらす、いわゆる後分離キリングシステム(PSK)をコードすることである。これは、内生プラスミドが、(i)プラスミドの欠損後に有毒として活性化するたんぱく、または(ii)翻訳されて毒素を産生するmRNA、のいずれかを残すために起こる。宿主を死に至らせる毒素の作用は通常、(i)残されるmRNAの発現を制御するレギュレータによって、(ii)毒素の毒性効果を無効にする解毒たんぱくによって、または(iii)毒性mRNAに結合し、かつその効果を中和するアンチセンスRNAによって、抑制される。レギュレータ、解毒たんぱく、およびアンチセンスRNAはすべて、内生プラスミドによってコードされており、不安定であり、したがって、それらをコードする内生プラスミドがもはや宿主内に存在しないと、衰退する。したがって、内生プラスミドが追放された細菌は、死に至る。
【0012】
したがって、宿主細菌からの内生プラスミドの追放と関連する多くの要因が存在するのは当然であり、宿主細胞が生存したままであるように効率的なプラスミド追放が実際面で達成されるか否かが考慮される必要がある。したがって、本発明の目的は、ここで認識されたものであろうと他で認識されたものであろうと、1つ以上の先行技術の問題を未然に防ぐこと、または軽減すること、および宿主細胞から内生プラスミドを除去する改良方法を提供すること、である。
【0013】
本発明の発明者らは、宿主細胞から内生プラスミドを除去または追放するのに関連する重大な問題は細胞死であること、および細胞死は、内生プラスミドが後分離キリングシステム(PSK)をコードしていた場合に起こることを、充分認識していた。ゆえに、プラスミド追放によって引起される細胞死、または細胞生存率の欠如の技術問題を克服するために、発明者らは、宿主細胞から内生プラスミドを追放する改良方法を開発することを目的とする。このことを実行するために、発明者らは、内生プラスミドによってコードされるPSKシステムの一部を組込む、いわゆる組換え追放プラスミド(recombinant
displacement plasmid)を設計した。発明者らは、そのような組換え追放プラスミドの使用が、宿主細胞から、PSKシステムをコードする内生プラスミドを除去する時に非常に有効であることを発見したのには驚いた。
【0014】
ゆえに、本発明の第1の態様に従えば、後分離キリングシステムを含有するプラスミドを有する宿主細胞内に組換え核酸分子を導入することを含む、宿主細胞から後分離キリングシステムを含有するプラスミドを追放する方法において、組換え核酸分子がプラスミドの後分離キリングシステムの毒性効果を中和するように構成され、核酸分子がプラスミドの複製を打ち負かす、または阻害するようにも構成されることを特徴とする方法が提供される。
【0015】
発明者らは、プラスミドの複製システムに不和合性決定因子のみを用いる、宿主細胞から後分離キリングシステムを含有するプラスミドを除去するのに用いられる従来の方法に対して、第1の態様に従う方法が顕著な利点を有することを実証した。本発明に従う方法は、どんな方法によっても、たとえば高温での増殖によって、または界面活性剤、突然変異原もしくは挿入剤などの他のDNA調節剤の存在下での増殖によって、宿主細胞にストレスを加える必要を含まない。さらに、本発明に従う方法は、後分離キリングシステムの効果を誘導し生き残るストレス、またはプラスミドによって産生される他の致死遺伝子産物のストレスを回避する。
【0016】
本発明に従う方法の上記利点は、2つの重要な特徴、すなわち(i)プラスミドの複製を打ち負かすか阻害するように、かつ(ii)プラスミドの後分離キリングシステムの毒性効果を中和するように構成されるという特徴を有する組換え核酸分子を、宿主細胞内に導入することによって可能となる。本発明の方法のこの後者の特徴(すなわち、プラスミドのPSKシステムの中和)は、今日まで、既存のプラスミド追放戦略の設計において認識されてこなかった。さらに、驚いたことに、本発明者らは、本発明に従う方法が、あらゆる宿主細胞から、後分離キリングシステムを有するあらゆるプラスミドを除外するのに適用でき、内在プラスミドの複製領域および安定した遺伝領域、およびPSKシステムの配列をも予測することが可能であると考えている。用語「宿主細胞からのプラスミドの追放」によって、発明者らは宿主細胞からプラスミドを取除く、または除去することを意味する。
【0017】
宿主細胞から追放(または除去)されるプラスミドは、PSKシステムを有する、宿主細胞に存在するあらゆるプラスミドであり得る。たとえば、それらのプラスミドは、たとえば形質転換によって宿主細胞内に導入され、その後宿主細胞から追放される必要のある、外生プラスミドであり得る。用語「外生プラスミド」によって、発明者らは、宿主細胞以外の細胞に起源するか、宿主細胞以外の細胞によって作成または産生されるが、その後何らかの方法によって宿主細胞内に導入される、プラスミドを意味する。
【0018】
しかし、本発明に従う方法は、宿主細胞から追放または除去される必要のある、その宿主細胞にとって内生プラスミドであるプラスミドを、追放するのに用いられることが好ましい。用語「内生プラスミド」によって、発明者らは、宿主細胞に起源するか、宿主細胞によって作成または産生される、プラスミドを意味する。宿主細胞から追放されるプラスミドは、宿主細胞において自己複製し得るか、宿主細胞のゲノム内に統合され得る。
【0019】
宿主細胞から追放されるプラスミドは、後分離キリングシステム(PSK)を含有することは当然であろう。用語「後分離キリングシステム」または「PSK」(ここでは同じ意味で用いられる)によって、発明者らは、プラスミドフリーの分離個体が生存するのを妨げる、プラスミドによって採用される公知の機構のいずれかを意味する。たとえば、キラーシステム、キリング抗キリング、後分離キリング、毒素抗毒素、毒物解毒物、プラスミド中毒システムまたはプログラム細胞死などの、当該技術において公知の用語はどれも、宿主細胞がプラスミドのコピーを含まない場合、宿主細胞を選択的に殺すのに用いられる適切な機構を記載するのに当業者によって使用されるすべての用語であり、したがって用語PSKシステムと類似している。用語PSKはまた、効果的に同じ特性を有する他のシステム、すなわち制限修飾システムおよびバクテリオシン生成物/免疫システム、を含む。PSKシステムは通常、細胞分裂後に作用し始めることは当然であろう。
【0020】
後分離キリング(PSK)システムは通常、2つの要素、(i)毒素、および(ii)解毒物、を含み、双方とも宿主細胞から追放されるプラスミドによって好ましくは遺伝的にコードされていることは当然であろう。毒素遺伝子は、mRNAに転写される核酸配列を含有し得、該mRNAはそれ自身が宿主細胞に有毒であり得るか、その後、(バクテリオシンの場合)宿主細胞および場合によっては類似した周辺の細胞にも有毒であるたんぱくに翻訳され得る。解毒物遺伝子は好ましくは、(i)毒素遺伝子のmRNAへの発現を調節する(たとえば最小化する、または実質的に妨げる)ように構成されるレギュレータたんぱく、(ii)毒性mRNAに結合して毒性mRNAの毒性作用を妨げるように構成されるアンチセンスRNA、または(iii)制限酵素の効果から保護するDNA修飾酵素の場合、たんぱくに結合することによって、または細胞をたんぱくの効果から保護することによって、たんぱくの毒性効果を中和するように構成される解毒たんぱく、のいずれかをコードする核酸配列を含む。
【0021】
宿主細胞が毒性mRNAおよび/または毒性たんぱくをコードしていようとしていまいと、宿主細胞内での毒素遺伝子の発現は、宿主細胞がレギュレータ、アンチセンスRNAおよび/または解毒たんぱくを有していようといまいと、解毒物の不在下であれば死ぬだろうという問題を引起こすことは当然であろう。ゆえに、宿主細胞内に導入される核酸分子は、プラスミドのPSKシステムの毒性効果を中和して宿主細胞死を回避するように構成され、これは、種々の方法によって達成され得る。好ましくは、本発明に従う方法において宿主細胞内に導入される核酸分子は、宿主細胞から追放されるプラスミド上のPSKシステムの解毒部分を遺伝的に補完することができる。用語「遺伝的に補完する」によって、発明者らは、核酸分子が、追放されるプラスミド上にあるのと同じPSKシステムの少なくとも1領域をコードするので、プラスミドが細胞から一旦追放されても、「失われた」遺伝子が、核酸分子にコードされているために、細胞内で補償される、すなわち細胞内に保持されるということを意味する。
【0022】
核酸分子は、宿主細胞から追放されるプラスミド上のPSKシステムの解毒物コード遺伝子を遺伝的に補完することができることが最も好ましい。いくつかのPSKシステムは2つ以上の解毒物コード遺伝子を有し得、そのような場合において、核酸分子は少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの、プラスミド上のPSKシステムの解毒物コード遺伝子を、遺伝的に補完することができることが想定される。有利には、核酸分子が、宿主からのプラスミドの追放後に失われる解毒物コード遺伝子を遺伝的に補完することによって、プラスミド上のPSKシステムによって産生されるあらゆる毒素が中和されて、細胞生存率を維持することを保証する。
【0023】
好ましくは、核酸分子は、追放されるプラスミドによってコードされるPSKシステムの、解毒物コード遺伝子またはその機能変異体の少なくとも1領域を有する。核酸分子は、追放されるプラスミド内のPSKシステムの解毒物コード遺伝子の配列と同じ配列を実質的に有することが好ましい。ゆえに、理想的には、プラスミド上の、PSKシステムの配列、または少なくとも解毒物コード遺伝子の配列が公知であり、それゆえ、この配列が核酸分子において用いられ得て、遺伝的補完が起こり得ることが好ましい。機能は類似するが、種々のPSKシステムを作り出す遺伝子の配列は生物間で変異しているのが当然であり、いくつかの例がここに与えられている。それにもかかわらず、当業者は、追放されるプラスミドによってコードされるPSKシステムの解毒物コード遺伝子の配列をどのように決定するか、または少なくとも予測するか、を知っているはずである。しかし、核酸分子は、追放されるプラスミドのPSKシステムの解毒物コード遺伝子の機能変異体を有し得ることも想定される。
【0024】
用語「PSKシステムの機能変異体」、または「解毒物コード遺伝子の機能変異体」によって、発明者らは、核酸分子の配列(またはこれによってコードされるアミノ酸配列)が、追放されるプラスミド上の、PSKシステムのアミノ酸/核酸配列と、または少なくとも解毒物コード遺伝子と、少なくとも30%、好ましくは40%、より好ましくは50%、さらに好ましくは60%の配列同一性を有することを意味する。PSKシステムおよび解毒物コード遺伝子の適切な配列の例がここで与えられている(hok/sokシステムについて、X05813.1;ccdシステムについて、X00594.1;parD/Eシステムについて、M61010)。追放されるプラスミドのPSKシステムの配列と、好ましくは65%、より好ましくは75%、さらに好ましくは85%、さらに好ましくは90%よりも高い同一性を有するアミノ酸/核酸配列もまた、想定される。好ましくは、核酸分子または該核酸分子によってコードされるアミノ酸の配列は、使用中のPSKの配列と、92%の同一性、さらに好ましくは95%の同一性、さらに好ましくは97%の同一性、さらに好ましくは98%の同一性、最も好ましくは99%の同一性、を有する。
【0025】
当業者は、たとえばhttp://wikiomics.org/wiki/Percentage_identityに記載されるように、どのようにして2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合(percentage identity)を計算するかを充分理解できるであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合を計算するためには、初めに2つの配列のアラインメントが作成されなければならず、次に配列同一性の値が計算される。
【0026】
2つの配列の同一性割合は、(i)たとえばClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(別のプログラムにおいて実行される)、または3D比較に由来する構造的アラインメントといった、配列のアラインメントに使用される方法、ならびに(ii)たとえば局所アラインメント対大域アラインメント、用いたペアスコアマトリックス(たとえばBLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、およびgap-penalty、たとえば関数形式および定数、といった、アラインメント法によって使用されるパラメータに依存して、異なる値をとり得る。
【0027】
アラインメントを作成したら、2つの配列間の同一性割合を計算する多くの異なる方法がある。たとえば、1つには、(i)最短配列の長さ、(ii)アラインメントの長さ、(iii)配列の平均長、(iv)非ギャップ位置の数、または(iv)オーバーハングを除いた等価位置(equivalenced position)の数で、同一の数を除してもよい。さらに、同一性割合はまた、強く長さ依存的であるのは当然であろう。したがって、配列対が短くなるにつて、偶然生じると予測され得る配列同一性は高くなる。
【0028】
ゆえに、たんぱくまたはDNA配列の正確なアラインメントが複雑なプロセスであるのは当然であろう。有名な多重アライメントプログラムClustalW (Thompsonら、1994、Nucleic Acids Research、第22巻、第4673〜4680頁;Thompsonら、1997、Nucleic Acids Research、第24巻、第4876〜4882頁)は、本発明に従うたんぱくまたはDNAの多重アラインメントを作成するのに好ましい方法である。ClustalWに適切なパラメータは以下の通りであり得る:DNAアラインメントについて:Gap Open
Penalty=15.0、Gap Extension Penalty=6.66、Matrix=Identity。たんぱくアラインメントについて:Gap Open Penalty=10.0、Gap Extension Penalty=0.2、Matrix=Gonnet。DNAおよびたんぱくアラインメントについて:ENDGAP=−1、GAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列アラインメントのために、これらのパラメータおよび他のパラメータを変えることが必要であることに気付くであろう。
【0029】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合の計算は、(N/T)×100のようなアラインメントから計算される。ここで、Nは、配列が同一残基を共有する位置の数、Tは、ギャップを含めるがオーバーハングを除いて比較された位置の総数、である。ゆえに、2つの配列間の同一性割合を計算する最も好ましい方法は、(i)たとえば先に設定されたような、適当なパラメータの設定を用いるClustalWプログラムを用いて配列アラインメントを作成し、(ii)N値およびT値を式:配列同一性=(N/T)×100に挿入することを含む。
【0030】
類似の配列を同定する代わりの方法が当業者に公知であろう。たとえば、実質的に類似のヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で、ここで表わされるヌクレオチド配列またはそれらの補完体とハイブリダイズする配列によってコードされるだろう。ストリンジェントな条件によって、発明者らは、ヌクレオチドが、おおよそ45°Cの3×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)での浸漬、およびおおよそ20〜65°Cの0.2×SSC/0.1% SDSでの少なくとも1回の洗浄後に、フィルタ結合DNAまたはRNAにハイブリダイズしていることを意味する。代わりに、実質的に類似のポリペプチドは、ここで表わされるポリペプチド配列とは、少なくとも1つ、かつ、5,10,20,50または100未満のアミノ酸だけ異なり得る。
【0031】
遺伝コードの縮重によって、あらゆる核酸配列は、核酸配列によってコードされるたんぱくの配列に実質的に影響を与えることなく、変異または変化して、その核酸配列の機能的変異体をもたらすことは明らかである。適切なヌクレオチド変異体は、配列内で同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって変更された配列を有し、サイレント変化をもたらすものである。他の適切な変異体は、相同ヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と類似した生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって変更される、すべての配列、または一部の配列を含み、保存的変化をもたらすものである。たとえば、小さい、非極性の、疎水性アミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリンおよびメチオニンを含む。大きい、非極性の、疎水性アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンを含む。極性中性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正電荷(塩基性)アミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンを含む。負電荷(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。したがって、どのアミノ酸が、類似した生物物理学的特性を有するアミノ酸と置換され得るのか、および当業者にとってこれらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列が周知であることは、当然であろう。
【0032】
核酸分子は、種々の方法によってプラスミドのPSKシステムの毒性効果を中和し得る。たとえば、宿主細胞に導入される核酸分子は、プラスミドのPSKシステムの毒性遺伝子のmRNAへの発現を調節するように構成される、レギュレータたんぱくをコードし得る。好ましくは、レギュレータたんぱくは、プラスミドの毒性遺伝子の発現を最小化するか、実質的に妨げるように構成される。ゆえに、毒性mRNAは、追放されるプラスミドによって産生されないので、宿主細胞はプラスミドの追放後に殺されない。
【0033】
代わりに、またはさらに、宿主細胞に導入される核酸分子は、追放されるプラスミドによって産生され得るあらゆる毒性mRNA(必ずではないが通常翻訳されて毒性たんぱくを産生する)に結合して、その毒性作用を妨げるように構成されるアンチセンスRNAをコードし得る。ゆえに、追放されるプラスミドによって産生され得るあらゆる毒性mRNAは中和されるので、宿主細胞はプラスミドの追放後に殺されない。
【0034】
代わりに、またはさらに、宿主細胞に導入される核酸分子は、追放されるプラスミドによって産生され得るあらゆる毒性たんぱくに結合して、その毒性作用を妨げるように構成される解毒たんぱくをコードし得る。ゆえに、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる毒性たんぱくは中和されるので、宿主細胞はプラスミドの追放後に殺されない。
【0035】
代わりに、またはさらに、宿主細胞に導入される核酸分子は、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる制限エンドヌクレアーゼの毒性作用を妨げるように構成される、DNA修飾酵素をコードし得る。ゆえに、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる毒性たんぱくは中和されるので、宿主細胞はプラスミドの追放後に殺されない。
【0036】
代わりに、またはさらに、宿主細胞に導入される核酸分子は、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる分泌毒性たんぱく(通常バクテリオシンと呼ばれる)の毒性作用を妨げるように構成される、免疫たんぱくをコードし得る。ゆえに、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる毒性たんぱくは中和されるので、宿主細胞はプラスミドの追放後に殺されない。
【0037】
前述の場合のそれぞれにおいて、宿主細胞に導入される核酸分子上の解毒遺伝子の供給、ゆえに宿主細胞への解毒物の供給は、プラスミドが宿主細胞から追放または除去された後の宿主の死を妨げることは当然であろう。ゆえに、本発明に従う方法の重要な特徴は、宿主細胞に導入される核酸分子が、追放されるプラスミドによってコードされるPSKシステムの毒性効果を中和し、さらにプラスミドの複製を打ち負かすという二重の効果を有することであるのは当然であろう。その結果、核酸分子は、プラスミドを宿主細胞から追放するだけでなく、さもなければ、追放されるプラスミドのPSKシステムによって産生される毒性mRNAまたは毒性たんぱくの毒性効果によってもたらされることになる宿主細胞死、または宿主細胞の生存率のあらゆる低下を妨げ得る。
【0038】
宿主細胞に導入される核酸分子は、追放されるプラスミドの複製と競争するか、複製を阻害するように構成され、このことがまた多数の異なる方法によって達成され得ることは当然であろう。たとえば、核酸分子は競争するように作用し得、追放されるプラスミドの複製機能を積極的に打ち負かす。たとえば、核酸は、宿主細胞から追放されるプラスミド由来の、複製起源のすべて、もしくは選択された部分を、または1つ以上のレプリコンを有し得る。核酸分子は、宿主細胞から追放されるプラスミドよりも高い割合で複製するように構成され得る。たとえば、核酸分子は、追放されるプラスミドの複製よりも高い割合で核酸分子を複製することができる、複製起源またはレプリコンを有してもよい。
【0039】
用語「レプリコン」によって、発明者らは、複製起源(たとえばoriV)を有し、かつ適切な宿主細胞において個別単位として複製することができる核酸配列を意味する。
【0040】
このプラスミドと核酸分子との競争、および核酸分子を保持する細胞の選択の結果、プラスミドが打ち負かされている細胞が選択され得、したがって宿主細胞から能動的に追放され得る。当業者は、宿主のタイプ、および追放されるプラスミドのタイプに応じて、利用可能なレプリコンの異なるタイプを正しく認識するだろう。大腸菌に適したレプリコンの例は、細菌染色体と同じレプリコンを用い、かつネガティブフィードバックループをコードしているようには思われないoriCであるので、一方のoriCプラスミドの他方による追放は、主に競争を介している。
【0041】
代わりに、またはさらに、核酸分子は、追放されるプラスミドの複製を阻害するように構成してもよい。たとえば、核酸分子は、追放されるプラスミドの複製を阻害または妨げるインヒビタ分子をコードし得る。インヒビタ分子は、RNAまたはたんぱくのいずれかであり得る。ゆえに、有利には、インヒビタがプラスミドの複製を阻害するので、プラスミドはそれによって宿主細胞から追放される。大腸菌に適したインヒビタの例は、IncFIIレプリコンのアンチセンスRNA CopAである。
【0042】
代わりに、阻害効果は、ネガティブおよびポジティブな役割の双方を果たす複製たんぱくの結合部位によってもよく、このことが、複製起源またはレプリコンの他の必須部分を「拘束(handcuffing)」、ひいては阻止し得る。
【0043】
組換え核酸分子の2つの特徴(すなわち、解毒物コード遺伝子、およびレプリコンまたはインヒビタコード遺伝子)は、宿主細胞において発現されるように機能的に連鎖することが好ましい。
【0044】
核酸分子の性質は、宿主から追放されるプラスミドの性質、および宿主それ自身の性質によって決定されるであろうことは当然であろう。ゆえに、核酸分子はRNAを含み得るが、好ましくはDNAを含む。核酸分子は、核酸分子が導入される宿主細胞と同じ生物に由来するのが好ましい。というのも、このことが、宿主細胞において、核酸分子およびその遺伝子の良好な発現の可能性を高めると考えられるからである。
【0045】
核酸分子は、「裸の(naked)」または線状の核酸分子として、あらゆる適切な手段によって宿主細胞内に導入され得る。たとえば、線状核酸分子は、形質転換またはエレクトロポレーションによって細胞内に導入され得る。当業者は、適切なレプリコンを有する適切な線状DNA分子が宿主細胞において効果的に複製および機能し、それによってプラスミドを追放し得ることを充分理解できるであろう。代わりに、核酸分子は、リポソームまたはウイルス粒子内に組込まれ得、その後宿主細胞内に導入され得る。代わりに、核酸分子は、核酸が適切な伝達起源を含有する限り、供与細菌からの接合伝達によって宿主細胞内に導入され得る。
【0046】
しかし、核酸分子は環状であることが好ましい。たとえば、核酸分子は、適切なベクタ内に含有されて組換えベクタを形成し得る。たとえば、ベクタは、当業者に周知であろう、プラスミド、コスミド、ファージ、またはウイルスなどを含むか、それに由来し得る。細菌に適したウイルス(バクテリオファージ)の例はラムダ、P1またはM13を含む。適切なウイルスの例は、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクチニアウイルス、アデノウイルスまたはレントウイルス(lentovirus)を含む。
【0047】
核酸分子がDNAの環状片の形状である実施形態において、核酸分子は「追放プラスミド」または「追放ベクタ」として表され得る。そのような組換えプラスミドまたはベクタは、核酸分子で宿主細胞を形質転換するのにかなり有用である。解毒遺伝子をコードする核酸分子に加えて、分子はまた、宿主細胞における核酸分子の複製に必要な機能的遺伝因子を含み、これによって分子が、追放されるプラスミドの複製を打ち負かし得る。たとえば、分子は、宿主細胞において自己複製し得るように設計されてもよい。この場合、核酸分子は好ましくは、コードする遺伝子の発現を、好ましくは核酸分子の複製を誘導する因子を含む。そのような因子は、遺伝子発現および複製に関連するプロモータおよび調節単位を含み得る。
【0048】
代わりに、組換え核酸分子を、宿主細胞のゲノム内に統合することができるように設計してもよい。そのような実施形態において、核酸分子は好ましくは、たとえば相同組換えによって宿主のゲノム内への標的統合に有利に働く核酸配列を有する。宿主細胞は、線状DNAまたは環状DNAのいずれかとしての核酸分子で形質転換され得、娘細胞の産生をもたらすが、その場合、たとえば特定の転写因子、または遺伝子活性化因子もしくはリプレッサなどによって、宿主細胞における分子の発現の調節が必要とされ得る。代わりに、核酸分子は、宿主細胞の不安定な、すなわち一過性の形質転換に有利に働くように構成してもよく、その場合、発現の調節はあまり重要ではなかろう。
【0049】
本発明に従う方法は、宿主細胞それ自身によって決定されるであろうあらゆる適切な手段によって、宿主細胞内に核酸分子を導入することを含む。たとえば、核酸分子は、トランスフェクション、形質転換、感染、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、細胞融合、プロトプラスト融合、接合伝達、または弾動打ち込み(ballistic
bombardment)によって宿主内に導入され得る。たとえば、伝達は、コーティングされた金粒子による弾動トランスフェクションによって、核酸配列を含有するリポソームによって、ウイルスベクタ(たとえばラムダベクタ)によって、直接の核酸摂取をもたらす手段(たとえば二価陽イオン媒介形質転換)によって、または宿主細胞内への直接の核酸分子の施用によって、なされ得る。
【0050】
核酸分子は好ましくは、クローニングプロセスを促進し、かつ核酸分子で首尾よく形質転換された宿主細胞を単離するのに使用してもよい、選択可能マーカをコードする遺伝子を有する。適切な選択可能マーカの選択は、宿主細胞の性質に依存し、当業者に周知であろう。たとえば、大腸菌において好ましいマーカは、当業者に周知であろうカナマイシン耐性遺伝子を含み得る。
【0051】
好ましくは、一旦核酸分子が宿主細胞内に導入されると、本方法は、内生プラスミドが宿主細胞から追放されるような状態に宿主細胞をさらす工程を含む。この工程は、核酸が定着しており、推測によってプラスミドが不在であろう宿主細胞を選択し得る、適切な培地上での選択を含んでもよい。ゆえに、核酸分子は、プラスミドが宿主細胞から追放される原因となり、また、プラスミドのPSKシステムの毒性効果を中和する能力のおかげで細胞死を防止する。
【0052】
一旦プラスミドが宿主細胞から追放されると、その後、宿主細胞から核酸分子を追放し、それによってプラスミドおよび核酸分子を欠く宿主をもたらすことを要求し得る。ゆえに、好ましくは、本発明に従う方法は、プラスミドが首尾よく追放された後に、核酸分子が宿主細胞から追放されるような状態に宿主細胞をさらす、さらなる工程を含む。この工程は、多数の異なる方法によって達成され得るが、好ましくは、宿主細胞を選択圧にさらすことで、核酸分子が宿主細胞から取除かれて、核酸分子を欠く細胞を選択することを含む。したがって、核酸分子は、適切な選択可能マーカを有することが好ましい。好ましいマーカは、大腸菌で用いるsacB遺伝子を含んでもよく、sacB遺伝子の存在によって宿主はショ糖感受性となる。ゆえに、培地へのショ糖の付加によって、sacB遺伝子を持つ宿主の増殖が妨げられるだろう。
【0053】
実施例において記載されるように、発明者らは、すべてのグラム陰性細菌種において維持することができる、大腸菌のFファミリのプラスミド、および広範な宿主範囲のIncP−1ファミリの研究に焦点を置いている。したがって、発明者らは、本発明に従う方法が、かなり幅広い範囲の種および生物に容易に適用され得ることを想定している。ゆえに、1つの実施形態において、プラスミドが追放され得る宿主細胞は、真核細胞であってもよい。多くの真核生物は、追放される必要があり、いくつかはPSKシステムを有し得、したがって、追放すると宿主細胞死の技術的問題を被る、プラスミドを有することは周知である。たとえば、宿主細胞は酵母細胞であってもよい。たとえば、種々の酵母内のプラスミドは、キラー因子およびキラー因子に対する免疫をコードする。具体例は、
Kluyveromyces lactisのプラスミドpGKL1である(Starkら、Nucleic Acids Research、第12巻、第6011〜6030頁)。
【0054】
しかし、宿主細胞は原核細胞であるのが好ましい。本発明の方法に使用するのに適した原核生物は、マイコプラズマ、藍藻、または細菌(たとえば真正細菌または古細菌)を含み、これらのいずれの生物も、追放される内生プラスミドを有し得ることは当然であろう。好ましくは、宿主細胞は、グラム陽性でも、またはグラム陰性でもよい細菌性宿主細胞である。
【0055】
本発明の方法を用いてプラスミドが除去され得る、適当なグラム陽性細菌は、バチルス属種(Bacillus spp.)、ラクトバチルス属種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス属種(Lactococcus spp.)、ブドウ球菌属種(Staphylococcus spp.)、レンサ球菌属種(Streptococcus spp.)、リステリア属種(Listeria spp.)、腸球菌属種(
Enterococcus spp.)およびクロストリジウム属種(Clostridium spp.)を含む、グラム陽性細菌門(Firmicutes)を含む。
【0056】
バチルス属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、pPOD2000/pTAO1050を含む(Meijerら、FEMS Microbiology Reviews、1998、第21巻、第337〜368頁)。ブドウ球菌属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、pI−1を含む(Aso, Y. J., Koga, H., Sashihara, T., Nagao, J. I., Kanemasa, Y., Nakayama, J.およびSonomoto, K.、2005、Plasmid、第53巻、第164〜178頁)。レンサ球菌属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、pSM19035を含む(Zielenkiewicz, U.およびCeglowski, P.、2005、J. Bacteriol.、第187巻、第6094〜6105頁)。リステリア属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、C20株由来の無名のメガプラスミドを含む(Halami, P. M., Ramesh, A.およびChandrashekar, A.、2000、Food Microbiology、第17巻、第475〜483頁)。腸球菌属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、pAD1を含む(Greenfield, T. J., Ehli, E., Kirshenmann, T., Franch, T., Gerdes, K.およびWeaver, K. E.、2000、Mol. Microbiol.、第37巻、第652〜660頁)。ラクトバチルス属種が持つ、本発明に従う方法を用いて除去され得るプラスミドの例は、pLME300を含む(Gfeller, K. Y., Roth, M., Melle, L.およびTeuber, M.、2003、Plasmid、第50巻、第190〜201頁)。
【0057】
本発明の方法を用いてプラスミドが除去され得る適当なグラム陰性細菌は、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)を含む。たとえば、グラム陰性細菌は、腸内細菌科種(Enterobacteriaceae spp.)、シュードモナス属種(Pseudomonas spp.)、モラクセラ属種(Moraxella spp.)、ヘリコバクタ属種(Helicobacter spp.)、ステノトロフォモナス属種(Stenotrophomonas spp.)、デロビブリオ属種(Bdellovibrio spp.)およびレジオネラ属種(Legionella spp.)を含む。
【0058】
本発明の方法に従って用いられる好ましい宿主細胞は、腸内細菌科のありふれたグラム陰性の条件的嫌気性細菌の属である、エンテロバクタ属種(Enterobacter spp.)を含む。グラム染色すると、これらの細胞は棒状である。これらのいくつかの細菌は病原性であり、易感染性の(通常入院する)宿主の日和見感染の原因となる。尿路および気道は、最もありふれた感染場所である。この属由来の臨床的に重要な2つの種は、Enterobacter
aerogenesおよびEnterobacter cloacaeである。
【0059】
本実施例は、本発明に従う方法の具体的な詳細を与え、発明者らが、大腸菌のFファミリのプラスミド、ならびに、緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)およびEnterobacter
aerogenesにおいて最初は同定されたが、実際は通常グラム陰性細菌に属する、広範な宿主範囲のIncP−1ファミリの研究に焦点を置いていると理解されよう。たとえ発明者らが、本発明の方法がかなり広範な種および生物に容易に適用され得ることを想定するとしても、本発明の方法において用いられる好ましい宿主細胞は、大腸菌を含む。本発明の方法において用いられる別の好ましい宿主細胞は、シュードモナス属種、最も好ましくはP. putidaを含む。
【0060】
ゆえに、本発明に従う方法を用いて宿主細胞から追放され得る好ましいプラスミドの例は、(たとえば、大腸菌由来の)Fファミリプラスミドを含む。Fファミリプラスミド(またはF様プラスミド)は、当業者に周知であり、F剤(F agent)、F因子、Fジェノート(F genote)、稔性剤、および粘性因子プラスミドとも表わされ得る(Firth, N., K. Ippen-IhlerおよびR. Skurray、1996、F.C. Neidhart編、ASM, Washington、第2377〜2401頁)。
【0061】
本発明に従う方法を用いて宿主細胞から追放され得る好ましいプラスミドの別の例は、大腸菌に属する、広範な宿主範囲のプラスミドの、不和合性(Inc)グループP(シュードモナス属種のIncP−1)を含む。不和合性グループ(Incグループ)は、たとえば、腸内細菌に生じるプラスミドのために存在し、別のIncグループは、他の細菌に生じるプラスミドのために存在する。いくつかのいわゆる「広宿主域の」プラスミドは、たとえば、腸内細菌およびシュードモナス属種の双方において生じ得、いくつかのプラスミドは、腸内細菌およびシュードモナスのプラスミドグルーピングスキームの双方においてIncグループに割当てられている。
【0062】
ゆえに、プラスミドは、腸内細菌Incグループのプラスミドを含み得る。腸内細菌Incグループは、接頭語「Inc」の後に文字、および時折ローマ数字またはギリシャ文字を続けることによって指名される。本発明に従う方法を用いて追放され得る、適当な腸内細菌Incグループプラスミドのいくつかの例は、IncFI(Fプラスミド、コリシンプラスミドColV−K94、およびRプラスミドR386など)、IncFII(RIプラスミドR6およびR100など)、ColIb−P9、デルタプラスミドおよびR64などのIncIα(時折IncI1またはIncIと記載される)、IncIγ(R621aなど)、IncN(N3、R46およびR269N−1など)、ならびにIncX(R6Kプラスミドなど)から成る群から独立して選ばれ得る。
【0063】
プラスミドは、シュードモナス属Incグループプラスミドを含み得る。当業者は、シュードモナス属Incグループが、IncP−1からIncP−13まで指名されており、数字がそれぞれ13の異なるタイプの複製システムを表すことを充分理解できるであろう。ゆえに、追放されるプラスミドは、IncP−1からIncP−13までのプラスミドのいずれか1つであり得る。本発明に従う方法を用いて追放され得る、適当なシュードモナス属Incグループプラスミドのいくつかの例は、Inc−P2(Camプラスミド、OctプラスミドおよびRプラスミドpMG1など)、IncP−6(RプラスミドRms149など)、IncP−7(Rms148)、IncP−8(FP2など)、IncP−9(R2、Salプラスミド、およびTolプラスミドなど)、IncP−10(R91など)、Inc−11(RP8およびR151など)、IncP−12(R716など)、およびIncP−13(pMG25など)から成る群から独立して選ばれ得る。
【0064】
本発明に従う方法を用いて追放され得る、共通の腸内細菌およびシュードモナス属のIncグループプラスミドの例は、R55などのIncC(すなわちIncP−3)、およびRSF1010などのIncQ(すなわちIncP−4)から成る群から独立して選ばれ得る。
【0065】
しかし、本発明の方法を用いて追放され得る、好ましい共通の腸内細菌およびシュードモナス属のIncグループプラスミドは、IncP−1アルファプラスミドRP1、RP4、RK2、R68など、IncP−1ベータプラスミドR751、R906、pADP1、pOU1、pJP4、pB3、pB4、pB8、pB10など、IncP−1ガンマプラスミドpQKH54など、およびIncP−1デルタプラスミドpEST4011など、のIncP(すなわちIncP−1)を含む。
【0066】
発明者らは、大腸菌プラスミドpO157(図1に示す;Burland, V., Shao, Y.,
Perna, N. T., Plunkett, G., Sofia, H. J.およびBlattner, F. R.、1998、The complete DNA sequence and analysis of the large virulence plasmid of Escherichia coli 0157: H7. Nucleic Acids Res.、第26巻、第4196〜4204頁; Makino, K., Ishii, K., Yasunaga, T., Hattori, M., Yokoyama, K., Yutsudo, C. H., Kubota, T., Yamaichi, Y., Iida, T., Yamamoto, K., Honda, T., Han, C. G., Ohtsubo, E., Kasamatsu, M., Hayashi, T., Kuhara, S.およびShinagawa, H.、1998、Complete nucleotide sequences of 93-kb and 3.3-kb plasmids of an enterohemorrhagic Escherichia coli O157: H7 derived from Sakai Outbreak. DNA Res.、第5巻、第1〜9頁)が、多くの典型的なF様プラスミドの特色をよく示しており、他のF不和合性グループのプラスミドに典型的な、複数のレプリコン、安定した遺伝機能およびPSKシステムを有することを理解した。したがって、発明者らは、プラスミドpO157のゲノム由来の種々のセグメントを含む、組換え追放プラスミド(pCURE1として表す)を生じることによって、あらゆるF様プラスミドを追放するための洗練されたアプローチを考案した。追放プラスミドはその後、大腸菌宿主細胞内に導入され、適切に培養された。プラスミド複製および安定した遺伝システムの詳細な検討を含む、組換えプラスミドおよび発明努力を用いて、発明者らは、100%の効率の、大腸菌からの内在内生プラスミド(pO157)の追放を達成した。
【0067】
ゆえに、本発明の1つの好ましい実施形態において、本方法は好ましくは、宿主細胞(たとえば大腸菌)からF様プラスミド(たとえばpO157)を追放することを含む。好ましくは、宿主細胞内に導入される核酸分子は、pO157の複製および分節を抑制する、pO157由来の少なくとも1つのレプリコンの機能制御領域(すなわちコピー数制御領域)を好ましくは有する、ベクタを含む。組換え核酸分子が有し得る適当なレプリコンの例は、repFIIAおよびrepFIBを含み、それらの配列はAB011548に示される;座標72000〜73400および26000〜28000。好ましくは、核酸分子はrepFIIAおよび/またはrepFIBを有するが、好ましくは、双方が機能的に連鎖するレプリコンを有する。
【0068】
好ましくは、宿主細胞内に導入される核酸分子は、通常プラスミドフリーの分離個体の生存率を減少させる、pO157から同定されるPSKシステム由来の、適切な制御および解毒領域を有する。pO157由来の適切なPSKシステムの例は、flmA/Chok/sok)システムおよびletA/letBccdA/ccdB)システムを有し、それらの配列はAB01158、それぞれ座標73000〜75000および28000〜29500、に示される。ゆえに、核酸分子は、hok/sokシステムのsok遺伝子、および/またはletABシステム由来のletA遺伝子を有し得る。好ましくは、分子は、機能的に連鎖するsok遺伝子およびletA遺伝子の双方を有する。
【0069】
核酸分子は、機能的に連鎖するrepFIIA、repFIB、sokおよびletAを、それぞれの遺伝子が宿主細胞内で発現されるように有することが最も好ましい。発明者らはPCRを用いて、後分離キリングシステム遺伝子座(sokおよびletA)およびレプリコン(repFIIA、repFIB)のこれらの領域をそれぞれ増幅した。PCRは当業者に周知であり、これらの特徴的な核酸分子の適切な量を増幅するのに使用される適切なプライマおよびPCR反応条件の詳細は、実施例に与えられている。これらのPCR産物はその後、図2に示されるように、小さい不安定なクローニングベクタpAKE604(El-Sayed, A. K., Hothersall, J.およびThomas, C. M.、2001、Microbiology-SGM、第147巻、第2127〜2139頁)内に導入された。
【0070】
pAKE604のヌクレオチド配列(7219bp)は、配列ID No.1として識別される。
【0071】
ベクタpAKE604は、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のsacBマーカ遺伝子を有し、その配列はX02730に示される。グラム陰性細菌におけるsacBマーカ遺伝子の存在は、ショ糖の存在下での増殖によって逆選択され得る。すなわち、sacB遺伝子を有する宿主細胞はショ糖培地において増殖しないだろう。得られた組換え追放ベクタは、pCURE1と表わされた。発明者らは、ショ糖毒性に基づくsacB遺伝子を選択するのに効果的な使用を実証したが、他のマーカも使用され得ると考えている。sacB遺伝子の使用に伴う潜在的な問題は、sacB遺伝子が突然変異し、組換えプラスミドの選択中に問題を起こし得ることである。ゆえに、組換え核酸分子に使用され得る他のマーカは、逆選択剤としてフザリン酸を伴うtetA遺伝子を含む(Maloy, S.R.およびNunn, D.W.、1981、J. Bacteriol.、第145、第1110〜1112頁)。他の制限は、sacB逆選択がグラム陰性細菌においてのみ機能することであるので、代わりの、より一般的な戦略は、たとえばアラビノースの付加が致死遺伝子を誘導し、プラスミド陽性細菌をすべて殺すように、大腸菌由来のaraプロモータなどの強固に調節されるプロモータの制御下で、hokなどの毒素遺伝子を含むことである。ゆえに、1つの好ましい実施形態において、本方法において用いられる核酸分子はpCURE1であり、実質的に図3に示される。
【0072】
pCURE1のヌクレオチド配列(10197bp)は、配列ID No.2として識別される。
【0073】
pCURE1プラスミドのさらなる実施形態(10211bp)は、以下で配列ID No.28として識別される。
【0074】
したがって、本発明の第2の態様において、実質的に図3に示されるように、組換えベクタpCURE1が提供される。pCURE1ベクタの核酸配列は、配列ID No.2および配列ID No.28に与えられる。好ましくは、組換えベクタpCURE2は、配列ID No.28に与えられる核酸配列を有する。有利には、pCURE1は、たとえば大腸菌といった宿主細胞からF様プラスミド(たとえばpO157)を追放するのに使用され得る。
【0075】
pCURE1プラスミドは、たとえば、適切な供与細胞(たとえばS17−1)からの接合伝達といった、あらゆる適切な手段によって、またはエレクトロポレーションによって、宿主細胞内に導入され得る。良好な形質転換体は、周知の選択技術を用いて、たとえば、追放プラスミドを有する形質転換体を選択する選択培地(たとえば、pCURE1上のカナマイシン遺伝子を選択する培地)上に培養物をプレーティングすることによって、容易に選択され得る。一旦追放プラスミドが宿主細胞内に導入されると、内生プラスミド(たとえばpO157)が追放されるであろう。本方法はその後、好ましくは、たとえば、プラスミドの欠損を可能とするような選択がない状態で細菌を増殖させ、その後pCURE1上のsacB遺伝子に対して選択することによって、宿主細胞から追放プラスミドを追放することを含む。このことは、宿主細胞から追放される、内生pO157プラスミドおよびpCURE1追放プラスミドの双方の追放をもたらす。
【0076】
発明者らはその後、pB171(AB024946)、p1658/97(AF550679.1)、pKDSC50(AB040415)およびpWR501(AF348706)などの、他のF様プラスミドのDNA配列から同定される付加的なレプリコンおよびPSKシステムを有する、pCURE1に基づいた派生プラスミドを創出することを決心した。
【0077】
ゆえに、好ましい実施形態において、核酸分子は、F(AP001918;62824〜62927)由来flmA/flmBhok/sok)、p1658/97(AF550679)およびpB171(AB024946)由来srnB/srnC(アンチセンスRNAシステム)、ならびにp1658/97およびpB171由来pemI/pemK(毒素/抗毒素システム)から独立して選ばれる少なくとも1つのPSKシステム由来の解毒物遺伝子を含み、これらの配列は、括弧内に示される配列系統において示される。核酸分子は、これらのPSKシステムのそれぞれに由来するすべての解毒物遺伝子を含むことが最も好ましい。
【0078】
さらに、好ましくは、核酸分子は複製システムRepFIA(F/pHCM1由来)および/またはRepFIIA(pKDSC50由来)を有し、これらの配列は、AP001918(座標49100〜49500)およびAB024946(座標24400〜24700)に示される。得られたベクタはpCURE2と表わされ、幅広い範囲のF様プラスミドを追放することができる。ゆえに、別の好ましい実施形態において、本発明に使用される核酸分子は、実質的に図4に示される、pCURE2である。
【0079】
pCURE2のヌクレオチド配列(12002bp)は、配列ID No.3として識別される。
【0080】
pCURE2プラスミド(12016bp)のさらなる実施形態は、以下で配列ID No.29として識別される。
【0081】
したがって、第3の態様において、実質的に図4に示される、組換えベクタpCURE2が提供される。pCURE2ベクタの核酸配列は、配列ID No.3および配列ID No.29に与えられる。好ましくは、組換えベクタpCURE2は、配列ID No.29に与えられる核酸配列を有する。有利には、pCURE2は、宿主細胞由来のF様プラスミドであるらしいと疑われるあらゆるプラスミドに対して使用され得る。発明者らは、多数の選択F様プラスミドに対してpCURE2を首尾よく試験し、驚くべき有効性があった。このプラスミドを用いて、発明者らはかなり幅広い範囲のF不和合性グループのプラスミドを除去することができた。
【0082】
発明者らはその後、IncP−1のセグメントをも有する、pCURE1と類似した第3の組換えプラスミドを創出することを決心した。これは、IncP−1追放プラスミドを創出して、プラスミドIncP−αおよびIncP−βの除去方法の一般的な適用性を実証することであった。
【0083】
ゆえに、別の好ましい実施形態において、核酸分子は少なくともIncP−1の領域を有し、この配列はL27758に示される。好ましくは、分子は、IncP−1領域:oriVparDおよびkorA/incC由来のセグメントを有する。ゆえに、本方法において使用される核酸分子は、実質的に図5に示される、pCURE11である。
【0084】
pCURE11のヌクレオチド配列(9419bp)は、配列ID No.4として識別される。
【0085】
したがって、第4の態様において、実質的に図5に示される、組換えベクタpCURE11が提供される。有利には、かつ好ましくは、pCURE11は、大腸菌などの宿主細胞由来プラスミドIncP−αおよびIncP−βを除去するための、本発明に従う方法において使用され得る。
【0086】
発明者らはその後、pCURE11に基づき、かつIncP−9のレプリコンを有した、第4の組換え追放プラスミドを創出した。ゆえに、別の好ましい実施形態において、核酸分子はIncP−9のレプリコンを有し、この配列はAF078924に示される。ゆえに、本発明において使用される核酸分子は、実質的に図6に示される、pCURE12である。
【0087】
pCURE12のヌクレオチド配列(10733bp)は、配列ID No.5として識別される。
【0088】
したがって、第5の態様において、実質的に図6に示される、組換えベクタpCURE12が提供される。有利には、pCURE12は、シュードモナス属種から、最も好ましくは、P. putidaからプラスミドを除去するための、本発明に従う方法において使用され得る。
【0089】
実施例において記載されるように、発明者らは、組換え追放プラスミドpCURE1、pCURE2、pCURE11およびpCURE12のそれぞれが、たとえば直接的形質転換(たとえばエレクトロポレーション)または接合(たとえばS17−1由来)のいずれかによって、細菌宿主細胞内に導入され得ることを首尾よく実証した。さらに、発明者らは、これらの追放プラスミドのそれぞれが、高い効率で、組換え追放プラスミドで形質転換された宿主細胞の100%から感受性内在内生プラスミドを追放または除去するのに使用され得ることを発見したのには驚いた。いかなる選択もない増殖後に、ショ糖へのプレーティングが続くと(sacB遺伝子について)、双方のプラスミド(すなわち、内生プラスミド、および組換えプラスミド)を欠いた多くの菌株の単離が可能となる。
【0090】
ゆえに、第6の態様に従えば、第2〜第5の態様のいずれかに従う組換えベクタを含有する細胞が提供される。
【0091】
好ましくは、細胞は原核生物であり、より好ましくは細菌細胞である。細胞は、腸内細菌(たとえば大腸菌)またはシュードモナス属種(たとえばP. putida)である、グラム陰性細胞であるのが好ましい。
【0092】
本発明の第7の態様に従えば、第2〜第5の態様のいずれかに従う組換えベクタ、ならびに(i)組換えベクタと実質的に同じであるが、追放に必要な配列を欠くベクタ、(ii)追放されるプラスミドの宿主への、組換えベクタの接合伝達を可能とする細菌株、および任意で(iii)取扱説明書、の少なくとも1つを含むキットが提供される。好ましくは、キットは(i)〜(iii)のすべてを含む。
【0093】
本発明に従う方法、構成およびキットは、植物、動物およびヒトに影響を及ぼすあらゆる細菌を研究するための種々の商業用途に利用され得ることは当然であろう。ゆえに、本発明に従う方法、構成およびキットは、R&Dツールとして、または治療上の使用のために、または農業において、利用され得る。
【0094】
たとえば、R&Dにおいて、本発明に従う方法、構成およびキットは、プラスミドによって与えられる、具体的な病毒(付着器官など)、または病原(宿主に作用する毒素の生産など)特性を確立するために、本発明のさらなる態様において使用され得る。さらに、別の態様において、本発明に従う方法、構成およびキットは、プラスミドによって与えられる抵抗特性(抗生物質、免疫システムに対する耐性、またはファゴソームで生産される反応化学種などの他の宿主防御、など)を決定するのに使用され得る。たとえば、さらなる態様において、本発明に従う方法、構成およびキットは、プラスミドによって与えられる感受性(具体的に線毛もしくは他の表面付属器に付着し得るファージ、またはプラスミドによってコードされるたんぱく、に対する感受性など)を決定するのに使用され得る。たとえば、別の態様において、本発明に従う方法、構成およびキットはまた、どの抗生物質が、プラスミド誘導生物膜に対して最も効果的であるのかを決定するのに使用され得る。
【0095】
ここで開示されるプラスミド除去技術は、抗生物質耐性遺伝子および他の病毒関連遺伝子などの病毒決定遺伝子を持つプラスミドを有する細菌のターゲティングを可能にすることによって、治療への応用をもたらす。そのようなものとして、この技術は、個体、動物もしくは他の生物、または体もしくは表面に投与されて、関連する病毒決定遺伝子を有する特定のプラスミドの追放によって、具体的な細菌が標的され得、これによって該細菌が、殺されるか弱体化され得、または他の治療薬によって標的されるほどより脆弱にされ得る。生細菌におけるプラスミドの追放について研究室で得たデータは、細菌性病原のターゲティングにおける治療としてのその使用を実証している。
【0096】
発明者によって想定される、本発明に従う方法、構成およびキットの治療上の使用の1つの例は、細菌感染の病原性因子を除去するが、片利共生機能を残すこと、である。インビボ投与技術は、(i)ファージ治療(たとえば、細菌ウイルスの使用)、(ii)ヘモフィルス属(Haemophilus)などの普通に形質転換可能な細菌についての摂取配列を含有する、ユニットの一部としての裸のDNA投与、および(iii)内生DNAの接合伝達を促進する供与細菌、のいずれかを含み得る。
【0097】
代わりに、本発明の別の態様において、本発明に従う方法、構成およびキットは、それら自体は安全で、病毒および耐性決定因子を有するプラスミドによって、侵入に対する免疫が与えられ得る、プロバイオティクス株の開発に応用され得る。発明者らは、このことが、他の細菌からのプラスミドの欠損を引起こす因子を与える能力と組合されるのであれば、商業的可能性もあると考えている。
【0098】
農業において、本発明に従う方法、構成およびキットは、本発明のさらなる態様において、土壌または植物ベースの細菌による病原性/寄生性作用を取除くための作物保護生成物を開発する方法に使用され得る。たとえば、アグロバクテリウムのTiプラスミド(腫瘍誘発プラスミド)は、土壌に存在し、プラスミドを植物体内に感染させる。これによって、細菌がCおよびN源として使用し得る複合アミノ酸を産生する腫瘍/こぶを、植物体上にもたらす。
【0099】
ここに記載される特徴のすべて(あらゆる従属請求項、要約および図面を含む)、および/または開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが互いに排他的である組合せを除いて、前述の態様のいずれかとあらゆる組合せで組合され得る。
【0100】
本発明をより理解するために、および本発明の実施形態がどのように実行され得るのかを示すために、一例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】複製および安定した遺伝に関与すると予測される領域を示す、pO157のプラスミドマップである。マップは、2つのレプリコンおよび2つの後分離キリングシステムがどのようにゲノム上で分散されているかを示す。
【図2】pAKE604のプラスミドマップである。プラスミドの構築のためにのみ選択された制限酵素認識部位が示される。しかし、これらの酵素によって認識されるさらなる部位も示される。
【図3】pCURE1のプラスミドマップである。この図のパート1に示されるプラスミドマップは、配列ID No.2の核酸配列を有するプラスミドマップである。この図のパート2に示されるプラスミドマップは、配列ID No.28の核酸配列を有するプラスミドマップである。プラスミドの構築のためにのみ選択された制限酵素認識部位が示される。しかし、これらの酵素によって認識されるさらなる部位も示される。
【図4】pCURE2のプラスミドマップである。この図のパート1に示されるプラスミドマップは、配列ID No.3の核酸配列を有するプラスミドマップである。この図のパート2に示されるプラスミドマップは、配列ID No.29の核酸配列を有するプラスミドマップである。プラスミドの構築のためにのみ選択された制限酵素認識部位が示される。しかし、これらの酵素によって認識されるさらなる部位も示される。
【図5】pCURE11のプラスミドマップである。プラスミドの構築のためにのみ選択された制限酵素認識部位が示される。しかし、これらの酵素によって認識されるさらなる部位も示される。
【図6】pCURE12のプラスミドマップである。プラスミドの構築のためにのみ選択された制限酵素認識部位が示される。しかし、これらの酵素によって認識されるさらなる部位も示される。
【図7】pCURE1によるpO157の除去を実証するゲルである。大腸菌O157から始まり、pAKE604またはpCURE1のいずれかが形質転換によって導入された。pAKE604を有する形質転換体はすべて、プラスミドプロフィールに基づいて、pO157を保持するが、pCURE1を有する形質転換体はすべてpO157を失った。
【図8】pCURE1の存在によってpO157が追放された大腸菌O157の派生体からの、ショ糖耐性クローンの選択による、pCURE1の欠損を実証するゲルである。
【図9】pCURE11によるIncP−1ベータプラスミドの除去を実証するゲルである。pRK24だけを有する菌株から始まり、pAKE604またはpCURE11のいずれかが形質転換によって導入された。pAKE604を有する形質転換体はすべて、抗生物質耐性およびプラスミドプロフィールに基づいて、pRK24を保持するが、pCURE11を有する形質転換体はすべてpRK24を失った。
【図10】pCURE11を失った細菌のショ糖選択を実証するゲルである。
【図11】pCURE11によるIncP−1ベータプラスミドの除去を実証するゲルである。R751だけを有する菌株から始まり、pAKE604またはpCURE11のいずれかが形質転換によって導入された。pAKE604を有する形質転換体はすべて、抗生物質耐性およびプラスミドプロフィールに基づいて、R751を保持するが、pCURE11を有する形質転換体はすべてR751を失った。
【0102】
実施例
本発明の方法の概要
発明者らは、内生プラスミドの細菌宿主からの、効率的でストレスフリーな追放(除去)のための新たな戦略を考案することを目的とした。本発明に従う方法は、プラスミドのDNA配列または他の詳細な遺伝的プロフィールが利用可能である限り、あらゆるプラスミドを追放するのが容易でストレスを伴わないように設計された。
【0103】
本発明は、宿主において本質的に不安定であるために、低頻度ではあるが、選択がなければ失われる、一連の組換え追放プラスミドベクタ、を生じさせることを含む。大腸菌における用途について、使用されるベクタはpMB1レプリコンに基づく。しかし、他のグラム陰性細菌における使用について、広範な宿主範囲のレプリコン(IncP−9プラスミドpM3由来)が導入されて、他の多くの宿主において複製することを可能とする。組換え追放ベクタを持つ宿主の選択は、抗生物質カナマイシンに対する耐性を与える遺伝子の存在によって達成されるが、他の抗生物質による選択も使用され得る。追放プラスミドはまた、いわゆるsacB遺伝子を有し、宿主がグラム陰性細菌である場合、追放プラスミドを有する宿主細菌細胞をショ糖に対して感受性にする(すなわち、sacB遺伝子は逆選択マーカである)。追放プラスミド内に、追放される内生の親プラスミドの複製システムが組込まれた部分が存在する。ゆえに、追放プラスミドの複製システム部分が親プラスミドに干渉することによって、宿主から親プラスミドを追放する。
【0104】
多くのプラスミドは、内生プラスミドを失った細菌の死をもたらす遺伝子セットを有する。これらの遺伝子セットは、内生プラスミドによって産生される毒素および解毒物をコードすることで機能する。ゆえに、内生プラスミドが失われると、解毒物が分解し、毒素が残留して細菌を殺す。ゆえに、本発明に従う方法の独自の特徴は、解毒物遺伝子を組換え追放プラスミド内に組込むことを含む。ゆえに、追放ベクタは、宿主が追放後も生き続けるように内生プラスミドを追放するために、宿主における追放プラスミドの複製に関与する遺伝子と、後分離キリングシステムの調節部分(たとえば、解毒たんぱくまたはアンチセンスRNA)をコードする遺伝子との組合せから成る。
【0105】
一旦構築されると、組換え追放プラスミドは、形質転換によって、不所望の内生プラスミドを有する細菌株内に直接導入される。代わりに、追放プラスミドは大腸菌株S17−1内に導入される。追放プラスミドはその後、大腸菌株S17−1からの接合伝達によって、不所望の内生プラスミドを有する細菌株内に導入され、供与細菌の増殖を支持しないが、伝達された追放プラスミドを選択するためにカナマイシンを含有するアガー上で、選択される。その結果内在内生プラスミドは追放され、選択アガー上で単一コロニに精製して、どのような選択も全くなく増殖させた後、追放プラスミドをも失った分離個体が選択される。というのも、それらの分離個体は、ショ糖存在下で増殖し得る(ショ糖上で増殖できないことは、追放プラスミド上のsacB遺伝子の存在を示す)からである。
【0106】
構築された追放プラスミドの要約
プラスミドpCURE1(図3に示す)は、以下の配列セグメントから成る:EcoRI(座標3589bp)およびBamHI(座標3628bp)部位にて切断されたpAKE604(7219bp)で、以下の挿入を有する:flmC(座標73732〜73988)、letA(座標51692〜52170)、repFIB(座標48289〜49890)、およびpO157(AF074613)由来RepFIIAcopAB(座標2351〜3053)。
【0107】
プラスミドpCURE2(図4に示す)は、以下の付加的配列セグメントを有するpCURE1から成る:F由来RepFICincC(AP001918、座標49141〜49476)、pKDSC50由来reFIIAcopAB(NC_002638、座標24300〜25062)、p1658/97由来pemI(AF550679、座標40448〜40857)およびp1658/97由来sok(座標124521〜124270)。
【0108】
プラスミドpCURE11(図5に示す)は、以下の配列挿入を有する、EcoRIおよびBamHI部位にて切断されたpAKE604から成る:parD(配列35029〜35395)、korA/incC(配列58936〜59466)およびRK2(L27758)由来oriV(配列12366〜12992)。
【0109】
プラスミドpCURE12(図6に示す)は、以下の付加的配列セグメントを有するpCURE11から成る:pM3/pMT2由来oriV−rep(AF078924、配列2385〜3694)。
【0110】
産生された第1の追放プラスミドpCURE1は、pO157を宿主大腸菌O157から除去するように設計された。プラスミドpO157を選んだのは、他のF不和合性グループのプラスミドに典型的なレプリコンおよびPSKシステムを有するためである(図1に示す)。pCURE1は、pO157由来の2つのレプリコン(repFIIAおよびrepFIB)の機能制御領域部分を含む。pCURE1はまた、pO157から同定された後分離キリングシステム由来の制御/解毒領域を含む(hok/sokシステムのsokおよびletABシステム由来のletA)。プラスミドpCURE1は、100%の効率でpO157を追放すると示された。
【0111】
派生プラスミド、pCURE2(図4)は、F様プラスミドのDNA配列から同定されたすべての付加的レプリコンおよびPSKシステムをpCURE1内に組込むことによって創出された。これらは、PSKシステム−F由来hok/sok、p1658/97およびpB171由来srnB/srnC(アンチセンスRNAシステム)ならびにp1658/97およびpB171由来pemI/pemK(毒素/抗毒素システム);複製システム−F/pHCM1由来RepFIAおよびpKDSC50由来RepFIIA、であった。結果生じたのは、幅広い範囲のF様プラスミドを追放することができるプラスミド(pCURE2)であり、F様プラスミドであるらしいと疑われるあらゆるプラスミドに対して使用され得る。pCURE2は、いくつかの選択されたF様プラスミドに対して首尾よく試験された。
【0112】
構築されたさらなる追放プラスミド(pCURE11、図5に示す)は、pCURE1に基づき、またIncP−1領域由来のセグメント、oriVparDおよびkorA/incCを含有した。このプラスミド(pCURE11)は、大腸菌からIncP−1プラスミドを効率よく追放するのに使用された。IncP−9レプリコンは、pCURE11内に導入されてpCURE12を創出し、これによってシュードモナス属種での複製を可能にした。pCURE12は、シュードモナス属種からのIncP−1プラスミドの追放を引起こすことが示された。
【0113】
材料および方法
細菌株、プラスミドおよび増殖条件
大腸菌K12について、使用した株は以下のとおりであった:DH5α F endA1 hsdR17supE44 thi−1 recA1 gyrA96 relA1 deoR Δ(lacZYA−argF)−Ul69 Φ8OlacZΔM15 λ phoA (5);oriTRK2含有プラスミドを動員する(
mobilise)ように、染色体内に統合したIncP−1アルファ転移遺伝子を有する株、S17−1(Bio-Technology、1983、第1巻、第784−791頁)。大腸菌O157:H7堺株stx−は、解毒物耐性カセットによる毒素遺伝子の定方向突然変異によって得た。これらの研究に用いた具体的な菌株は、大腸菌O157の堺株を用いて、日本の笹川千尋教授の研究室で以下に詳述するようにして得た(Hayashi, T.ら、DNA Research、2001、第8巻、第11〜32頁)。
【0114】
stx1−,stx2−の二重陰性株は、初めに、Km耐性遺伝子由来の平滑化PstIフラグメントを、stxA2遺伝子のSwaI部位内に挿入することによって構築した(以前記載された非極性eae突然変異体の構築に用いたのと本質的に同じ方法である(Infection and immunity、2000、第68巻、第5943〜5952頁))。さらに、stxA1遺伝子の一部および5’フランキング領域由来の624bpのBsiWI(cgtacg)フラグメントを欠失させた。すべての結果は、日本で、および独立して英国(エジンバラ、David Smith博士)で、PCRによって確認した。菌株の非毒素表現型は、抗Stx1または2の抗体結合ラテックスビーズ(デンカ生研、東京)とのRPLA(逆受身ラテックス凝集反応)を用いて、日本において確認した。突然変異株は、親との比較において、Caco−2細胞への付着特性、インビトロの増殖率、タイプIII分泌およびFASテストが本質的に同じであることを示した(すなわち、病原性大腸菌であると予期される病原因子を示す。以下のコメント参照)。さらに、菌株の非毒素性は、エジンバラ大学で、David Smithが、PCRおよびベロ細胞アッセイの双方によって確認した。
【0115】
P. putidaについて、使用した株はKT2440 hsdR1hsdMであった(
Environmental Microbiology、2003、第4巻、第799〜808頁)。
【0116】
すべての大腸菌は37°Cで増殖させたが、P. putidaは30°Cで増殖させた。標準培地は、LBまたはLagar(容積あたり1.5%(w/v)のアガーで固化されたLB)であった。標準濃度で用いた抗生物質は以下のとおりであった:カナマイシン、50μg/ml;ペニシリン、150μg/ml(液体)または300μg/ml(アガー);ストレプトマイシン、30μg/ml;クロラムフェニコール、100μg/ml。概して、標準的な微生物学的技術を、細菌の、増殖、(塩化カルシウム処理による)形質転換および操作に用いた(Sambrook、J., E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989、Molecular Cloning: a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbour Laboratory、ニューヨーク)。接合伝達は、1:10の比(供与対受容)で混合し、滅菌ナイロンメンブレン上でフィルタ処理し、Lアガープレートの表面に少なくとも1時間置き、選択Lアガープレート上にプレーティングする前に生理食塩水またはLBに再懸濁した、定常期の培養物を用いて達成した。
【0117】
DNAの単離、操作およびシーケンス
プラスミド構築作業中のプラスミドDNAのおおよその小規模精製には、修正したBirnboimおよびDoIyの調製法を用いた(Nucleic Acids Research、1979、第7巻、第1513〜1523頁)。Promega pGEM-T Easyベクタシステムを用いて、シーケンスまたはさらなる研究のためのPCR産物をクローニングした。アガロースゲルをTAE中でランさせた(Sambrook, J., E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbour Laboratory、ニューヨーク)。チェーンターミネーション法に基づく、PE-ABI製のBig dyeターミネーティングキットを用いて、DNAシーケンスを実行した(Proceedings of the National Academy of Science USA.、第74巻、第4563〜4567頁)。これは取扱説明書に従って用いた。
【0118】
シーケンシングPCRサイクリングプログラムは、96°C30秒の変性、50°C15秒のアニーリング、および60°C4分の伸長、の25サイクルを含む。傾斜時間を1°/秒に設定した。シーケンス反応物をABI 3700 DNAシーケンサでランした(Functional Genomics lab、バーミンガム大学)。
【0119】
PCR(Polymerase Chain Reaction)
PCR反応を、Mullis, K., Faloona, F., Scharf, S., Saiki, R., Horn, G. およびErhlich, H.、1986、Specific enzymatic amplification of DNA in vitro: the polymerase chain reaction. Cold Spring Harbor Symposium of Quantitative Biology、第51巻、第263〜273頁、によって記載されるように実行した。必要であれば、クローニングのための追加の制限酵素部位に、注目する領域がフランキングするようにプライマを設計した。Alta Bioscience、バーミンガム大学でプライマを合成した。以下の表1は、本研究において設計および使用したすべてのプライマを記載している。
【0120】
【表1】

【0121】
DNAポリメラーゼは、遺伝子クローニングにはBoehringer Mannheim製のExpand High Fidelityシステムを、染色体遺伝子型の確認にはTaqポリメラーゼを用いた。グリセロールを終濃度が5%になるまで診断用PCR反応液に付加した。PCR産物の精製は、Roche製のHIGH pure purificationキットを用いて達成した。標準的なPCR条件は以下のとおりであった:94°C4分の変性;94°C30秒の変性、59°C30秒のアニーリング、57°C15秒のアニーリング、72°C1.2分の伸長、を10サイクル;94°C30秒の変性、59°C30秒のアニーリング、57°C15秒のアニーリング、72°C1.2分の伸長、の20サイクルで、サイクルごとに伸長を5秒インクリメント;72°C7分の最終伸長。
【0122】
pCUREプラスミドの設計および構築の概略
本発明の方法は、本質的に不安定なために、低頻度ではあるが、選択がなければ失われるプラスミドベクタを含む。大腸菌における用途について、使用されるベクタpAKE604(Chemistry & Biology、2003、第10巻、第419〜430頁)は、pMB1レプリコンに基づく。抗生物質カナマイシンへの耐性を与える遺伝子の存在によって、選択が達成される。プラスミドはまた、ペリプラズムにおいてショ糖スタータユニットにショ糖由来の果糖を重合するレバンスクラーゼをコードするsacB遺伝子を有し、sacB遺伝子を有する細菌をショ糖感受性にするので、プラスミドフリーの分離個体が容易に単離され得る。このベクタ内には、追放されるプラスミドの複製システム部分が組み込まれるので、親プラスミドに干渉するだろう。
【0123】
配列が既知のプラスミドから始めて、発明者らは、BLAST検索に基づいて推定の複製機能として注釈が付くあらゆる遺伝子を、および周知のPSKシステムと類似するあらゆる遺伝子を、同定した。関連する複製システムの分子遺伝学と比較して、発明者らは、推定の複製システムが無傷であるかどうか、かつどの因子が、該システムの生命要素の発現を抑制しそうであるか(たとえば、転写リプレッサ、アンチセンスRNAまたは他の翻訳レギュレータ)、またはプロセスにおける生命工程(たとえば複製起源)に対する競争者を抑制しそうであるか、を解明した。
【0124】
1つ以上のこれらの重要な因子を増幅するようにPCRプライマを設計したので、その組合せによって内生プラスミドの複製を阻止する非常によい機会が得られたに違いない。同様に、内生プラスミドにおいて同定されるPSKシステムについて、発明者らは、たんぱくシステムにおける推定の解毒たんぱくを、またはリプレッサアンチセンスRNAをコードする領域を同定した。ここでも、推定のPSKシステムのキリング効果を中和するであろう領域の増幅用プライマを設計した。産物が、異なる制限酵素部位の組合せを有するようにプライマを設計したので、すべてのフラグメントは、制限酵素部位を再生することなく一緒にクローニングされ得る。このことはつまり、共通の部位を繰返して用いて、同じ基礎的クローニング戦略を二度以上用いることを可能とする。たとえば、BamHIの認識部位、およびBglIIの認識部位を有するフラグメントは、これらの酵素によって生ずる共通の付着末端(3’ CTAG 5’)によって連結され得るが、どちらの部位もライゲーション後に再生されない(GGATCCおよびAGATCTはGGATCTに進む)。したがって、制限酵素部位を比較的欠いている、多機能DNAトラクトを創出する。
【0125】
PCR産物をその後、pGEM-T Easyなどのベクタにクローニングした。その際、フラグメントの連結およびpAKE604内への挿入前に配列を調べた。発明者らは、実験において、クローニングベクタとしてベクタpAKE604を選択した。なぜなら、pAKE604は、より低いコピー数のプラスミドの除去を助け、発現するアンチセンスRNA/抗毒素があらゆる内生毒素を完全に滴定する(したがって中和する)ことを保証すると発明者らが考える、高いコピー数を有しているからである。さらに、pAKE604は不安定であり、その宿主にsacB遺伝子由来のショ糖感受性表現型を与え、ショ糖アガー培地上での逆選択を可能とする(「ショ糖感受性のスクリーニング」節参照)。ベクタpAKE604はまた、ペニシリンおよびカナマイシン耐性機能遺伝子を有し、選択を可能とする。pAKE604を有する細菌は、カナマイシン 50μg/mlおよびペニシリン 150μg/mlのLagar上で増殖し得る。
本研究中に使用または構築したプラスミドを以下の表2に記載する。
【0126】
【表2】

【0127】
表2の引用文献
Burland, V., Shao, Y., Perna, N. T., Plunkett, G., Sofia, H. J.およびBlattner, F. R.、1998、The complete DNA sequence and analysis of the large virulence plasmid of Escherichia coli O157 : H7. Nucleic Acids Res.、第26巻、第4196〜4204頁.
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Venkatesan, M. M., Goldberg, M. B., Rose, D. J., Grotbeck, E. J., Burland, V.およびBlattner, F. R.、2001、Complete DNA sequence and analysis of the large virulence plasmid of Shigella flexneri. Infect. Immun.、第69巻、第3271〜3285頁.
【0128】
ショ糖感受性のスクリーニング
sacB遺伝子の機能を周期的に、(内生プラスミドの追放後の)特にpCUREプラスミドを失った細菌を選択するのに使用する前に、調べることが重要である。sacB含有プラスミドを有する一夜培養物を選択下で増殖させ、高い割合のプラスミド保持を保証した。培養物をその後逐次希釈してLagarおよびLagar+5%(w/v)ショ糖上に広げた。プレートを一夜37°Cまたは30°Cにて増殖させ、その後タイプごとのプレートのコロニ数を計測した。通常これによって<0.1%のショ糖耐性コロニが得られ、これは、本質的にすべての細菌核酸が生存できないことを示唆している。
【0129】
標準的なプラスミド除去実験
新たに構築された組換え追放プラスミドを、不所望の内生プラスミドを有する細菌株内に導入した。これは、標準的な技術を用いるコンピテント細菌の形質転換、または大腸菌株S17−1からの接合伝達、のいずれかによって達成し得る。供与細菌の増殖を支持しない(接合を用いた場合、たとえばS17−1)が、伝達されたプラスミドを選択するためのカナマイシンを含有するアガー上で、形質転換体または接合伝達体を選択した。形質転換体または接合伝達体を選択アガー上で単一のコロニに精製し、その後、プラスミドによって保持される選択可能マーカに基づいて、標準的な技術を用いるプラスミドDNAの抽出後の内生プラスミドのバンドについてのスクリーニングによって、または内生プラスミドによってコードされる領域のPCRによって、内在内生プラスミドの有無についてクローンの選択をチェックした。追放の成功は、適切なバンドの欠損によって表わされる。
【0130】
内生プラスミドの効率的な追放を仮定して、精製コロニのショ糖への感受性について調べた。ショ糖感受性コロニは、該コロニがsacB機能遺伝子を有する組換え追放プラスミドをまだ有することを実証した。コロニを、どのような選択もないLBにおいて増殖させ、追放プラスミドを失った分離個体をショ糖存在Lagar上での増殖によって、正の選択をした。pCURE追放プラスミドの不在について、ショ糖耐性コロニを調べた。
【0131】
結果
(1)pCURE1の設計および構築
産生された第1の追放プラスミド、pCURE1は、pO157を宿主大腸菌O157から除去するように設計された。プラスミドpO157を選んだのは、該プラスミドの宿主での効果を決定するという興味のためであったが、該プラスミドは、他のF不和合性グループのプラスミドに典型的なレプリコンおよびPSKシステムを含有するため、有用な試験体を供給した(Nucleic Acids Research、1998、第26巻、第4196〜4204頁)。
【0132】
図1を参照して、複製および安定した遺伝に関与すると予測される領域を表す、pO157のプラスミドマップを示す。これは、2つのレプリコンrepFIIAおよびrepFIB、活性分配遺伝子座sopABC、マルチマ分解(multimer resolution)システムresD、ならびに2つの後分離キリングシステムccdABletAB)およびparBhok/sok)、を有する。プラスミドpCURE1は、2つのレプリコンの機能制御領域部分、および同定された後分離キリングシステム由来の制御/解毒領域(hok/sokシステムのsokおよびletABシステム由来のletA)を含むように設計された。FIIAレプリコンについて、発明者らは、翻訳連結のために、その翻訳がrepの翻訳に必須である短いオープンリーディングフレームの翻訳を直接阻止することによって、rep遺伝子の翻訳を間接的に阻止するアンチセンスRNAをコードする領域、CopAを増幅するために選択した。
【0133】
repFIBレプリコンについて、発明者らは、rep遺伝子、およびRepが結合する関連反復配列(アイテロン)の組合せを選択した。双方は、複製の制御をもたらすように組合う。というのも、阻害は、Rep結合部位間の「拘束」によって生じると考えられるからである。repFIIAレプリコンについて、copA遺伝子座が選ばれたのは、rep遺伝子の翻訳を阻止するアンチセンスRNAをコードするからである。sok/flmB領域について、アンチセンスRNA領域が、hok/flmA遺伝子の翻訳を阻害するために選択された。let/ccd領域について、解毒たんぱくをコードするletA領域が、letB/ccdBが翻訳されるのを妨げるために選択された。プライマは、これらの各遺伝子座を増幅するように設計されており、表1に記載される。PCRは、これらのプライマ、およびpGEM-Teasy内にクローニングされた産物を用いて行われた。クローニングされたセグメントの配列が調べられ、その後順次連結された。sok/flmBの場合、産物シーケンスは、プライマがEcoRI部位を組込んでおり、配列ID No.13が僅かに切断されたことを示したので、EcoRI部位がpGEM-Teasyベクタの挿入部位にフランキングする限り、EcoRI消化はDNAを含むフラグメントを創出した。copAおよびrepFIBセグメントは、それぞれBglII−SalIおよびSalI−XbaI消化によって、pGEM−Tクローンから放出され、BamHIおよびXbaIで切断されたpAKE604と混合されてライゲーションされた。letおよびflmB/sokセグメントは、それぞれXbaI−HindIIIおよびHindIII−EcoRI消化によって、pGEM−Tクローンから放出され、XbaIおよびEcoRIで切断されたpAKE604と混合されてライゲーションされた。DH5αにおける形質転換は、組合された挿入について制限酵素分析によって調べられた。let−sokセグメントは、XbaI−EcoRI消化によって放出され、XbaIおよびEcoRIで切断された、repおよびcopをすでに含んだpAKE604派生体とライゲーションされた。DH5αにおける形質転換は、組合された挿入について制限酵素分析によって調べられた。生じたプラスミドはpCURE1と指定され、図3に示される。
【0134】
pCURE1によって与えられるショ糖感受性は、材料および方法に記載されるように、プラスミドが大腸菌DH5α細胞内に形質転換され、カナマイシン耐性を選択した後に、前述のように調べられた。形質転換体コロニはその後、50μg/ml Kmを含む、または含まないLB内に植菌することによって、pCURE1の選択あり、およびなしの条件下で増殖された。形質転換体が選択下で増殖される場合、ショ糖耐性である集団中の細胞の割合は0.04%であったが、選択なしでは0.13%であり、pCURE1プラスミド、およびsacB遺伝子の欠損を示唆している。このことは、pCURE1が少し不安定であり、選択のない条件下で失われるので、より多くのプラスミドフリーの、ゆえにショ糖耐性の細菌が、選択のない条件下での増殖中に、蓄積することを示唆している。
【0135】
ショ糖上で増殖したコロニからのpCURE1の欠損はその後、Lagar+Km、続いてカナマイシン不在のLA上に、ショ糖プレートに由来する12のコロニをストリークすることによって確認された。細胞は、Lagarプレート上でのみ増殖した。これらの結果は、pCURE1がショ糖感受性を与え、pCURE1が欠損する割合が、選択圧のない場合により大きいことを示すこと、およびpCURE1を失った分離個体がショ糖によって選択され得ることを裏付ける。したがって、発明者らは、sacBが強力な選択可能マーカであると結論した。
【0136】
(2)pCURE1除去能力の検証
大腸菌O157:H7stx−(内生プラスミドpO157を有する)が、カナマイシンによる選択下で、追放プラスミドpCURE1によって形質転換された。形質転換体は、カナマイシン含有Lagar上で精製され、5つのクローンが、DNAの単離およびゲル電気泳動によって、pO157の存在について試験された。5つのクローンすべてがプラスミドを失っていた。pO157陰性形質転換体の選択体はその後、ショ糖プレート上にストリークされ、ショ糖感受性コロニを同定した。すべてのクローンがこの表現型を保持していた。1つのクローンが、選択不在条件下でLBにおいて一夜増殖され、その後ショ糖含有Lagar上に0.1mlのアリコートが広げられた。ショ糖耐性コロニがおおよそ10−3生じ、これら由来のDNAが、標準的なプラスミド単離およびゲル電気泳動によって分析されると、pO157DNAがもはや可視化されないとわかった。プラスミドが染色体内に統合されなかったことを調べるために、PCRが実行されて、pO157配列が増幅されないことを示した。したがって、発明者らは、pO157が完全に追放されたと結論する。
【0137】
pCURE1によるpO157の追放は、さらに11の形質転換体において、0.8%ゲル上で、大腸菌O157:H7stx−、[pCURE1]、大腸菌O157:H7stx−および大腸菌O157:H7stx−[pAKE604]のミニプレップを可視化することによって、示された(図7参照)。ゲルは明らかに、pO157のバンドが、pCURE1形質転換体から欠けているが、pAKE604ネガティブコントロール形質転換体では欠けていないことを示している。ショ糖感受性はまた、前述のように、3つの形質転換体において確認された。さらに、ショ糖上で増殖した12の形質転換体は、ミニプレップによってpCURE1を失ったことが示された(図8参照)。さらに4つのpCURE1構築体が、大腸菌DH5α内に形質転換された。各プレート由来の形質転換体はその後、前述のように、pCURE1の選択なしに増殖されて、プラスミド欠損割合を確立した。結果は、先に得られたものと類似しており、pCURE1がショ糖感受性を与えることを確認した。結果は表3に示される。
【0138】
【表3】

【0139】
(3)pCURE2の構築
より多様な範囲のF不和合性グループのプラスミドを除去するのに使用され得る、pCURE1の派生体が構築された。この追放プラスミドはpCURE2と呼ばれ、図6に示される。
【0140】
pCURE2は、pCURE1で表わされる、repFIIA、repFIB、let毒素/抗毒素システムおよびflmアンチセンスRNAシステム、FI、FII、FI/II不和合性グループのそれぞれからの典型的なプラスミドに対するDNA配列であるpO157レプリコンおよび後分離キリングシステム(PSK)を損なう(blasting)ことによって、設計された。pCURE1に存在しないレプリコンもしくはPSKシステム、または80%未満の同一性を有するものが、pCURE1内にクローニングされた。
【0141】
これらは:PSKシステム−F由来hok/sok、p1658/97およびpB171由来srnB/srnC(アンチセンスRNAシステム)ならびにp1658/97およびpB171由来pemI/pemK(毒素/抗毒素システム);複製システム−F/pHCM1由来RepFIAおよびpKDSC50由来RepFIIA、であった。pAKE604と連結されるこれらの領域の高いコピー数は、レプリコンをスイッチオフするのに充分なはずである。
【0142】
プライマを表1に記載するように設計した。アンチセンスRNAsokおよびsrnCが、それぞれFおよびp1658/97からPCRによって増幅され、pemI抗毒素がp1658/97から増幅され、産物がpGEM-Teasyにクローニングされた。F repFIAレプリコンのincC領域は、起源のものと同じコンセンサスであり、結果として、複製開始たんぱくRepEを結合する、5つの直列反復配列を有する。RepEは、コピー数制御に関与し、不和合性を与える。repFIIAレプリコンは、リプレッサcopBおよびアンチセンスRNAcopAによって調節される。したがって、IncCおよびCopA/copB領域は、表1に記載されるプライマを用いて、それぞれFおよびpKDSC50から増幅され、ここでもpGEM-TEasyにクローニングされた。Fのsokを増幅およびクローニングしようとする再三の試みは失敗し、結局は繰返されなければならない。得られたPCR産物を有する、生じたプラスミドは、制限酵素消化、およびその後の挿入物のシーケンスによって確認された。pKDSC50 copABプラスミドはその後、双方が挿入物の片側に対して切断するBamHIおよびNcoIで切断され、FのrepFIAレプリコン由来のIncCは、pGEM-T派生体から放出されたBamHI−NcoIフラグメントに挿入された。組合せられた領域はその後、XhoIフラグメント上に切出され、pCURE1の、pO157 repFIIB copとrepFIBセグメントとの間のSalI部位内に挿入されて、pCURE1Aを提供した。同様に、発明者らは、同定されたpskシステムの選択されたセグメントを増幅しようと試みた。これは、p1658/97;pB171のpemI遺伝子、およびp1658/97のsok遺伝子については成功したが、FのsrnC遺伝子については成功しなかった。PCR産物は、前述のように、pGEM-Teasyにクローニングされ、調べられた。pemIを有するpGEM-Teasyプラスミドはその後、KpnIおよびPstIで切断され、sokがKpnI−PstIフラグメントに導入された。両遺伝子を有する、生じたプラスミドはその後、NheIで切断され、両遺伝子を有するフラグメントを放出し、その後そのフラグメントがpCURE1AのXbaI部位にライゲーションされて、pCURE2を産生した。
【0143】
結果生じたのは、図4に示されるようなプラスミド(pCURE2)であり、幅広い範囲のF様プラスミドを追放することができるに違いなかった。追放を生じさせる能力が、pKDSC50に対して試験された。結果は、pCURE2が導入されたすべてのクローン(試験された8中8)が、内在プラスミドを失うことを実証した。pCURE2が、本質的にどのような新たなIncF様プラスミドにも追放を生じさせるのかを示すために、さらなる試験が不可欠である。
【0144】
(4)pCURE11の設計および構築
pCURE11と呼ばれる第3の追放プラスミドは、PCRを用いて、IncP−1αプラスミドRK2から、oriV領域、ならびにparDkorAおよびincC遺伝子を増幅し、これらをpAKE604内にクローニングすることによって、構築された。図5を参照して、pCURE11のプラスミドマップを示す。oriVは、シーケンスされた第1のIncP−1αレプリコンの複製起源である。増幅領域は、遺伝子間oriVから離れたtrfA複製開始たんぱくを滴定し、場合によっては、拘束を介して宿主たんぱくによる接近を阻止するのに充分な、9つのアイテロンを含有する(Kittell, B. L.およびHelinski, D. R.、1991、Iteron inhibition of Plasmid RK2 replication in vitro - evidence for intermolecular coupling of replication origins as a mechanism for RK2 replication control. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第88巻、第1389〜1393頁)。ParDは、ポリペプチド産物がDNAジャイレースを標的とするparEによってコードされる後分離キリングシステムに対する抗毒素であり(Jiang, Y., Pogliano, J., Helinski, D. R.およびKonieczny, I.、ParE toxin encoded by the broad-host-range plasmid RK2 is an inhibitor of Escherichia coli gyrase. Mol. Microbiol.、2002、第44巻、第971〜979頁)、2つの遺伝子オペロンを自己調節する。KorAおよびIncCは、中央制御領域(ccr)遺伝子の産物であり、複製に不可欠な、trfA遺伝子を含む(および抑制する)KorAレギュロンを有する(Pansegrau, W., Lanka, E., Barth, P. T., Figurski, D. H., Guiney, D. G., Haas, D., Helinski, D. R., Schwab, H., Stanisich, V. A.およびThomas, C. M.、Complete nucleotide sequence of Birmingham IncP-alpha plasmids - compilation and comparative analysis. J. Mol. Biol.、1994、第239巻、第623〜663頁)。これらの領域は、ここで記載されるように、PCRによって増幅され、pAKE604内にクローニングされた。
【0145】
(5)pCURE11キュアリング特性の検証
pCURE11がIncP−1αプラスミドを宿主から追放する能力が、RK2(Ap、Tc、Km)派生体pRK24(Ap、Tc、Km)を用いて試験された。pRK24は、カナマイシン感受性になるように修飾されていた(Meyer, R., Figurski, D.およびHelinski, D. R.、Physical and genetic studies with restriction endonucleases on the broad host-range plasmid RK2. Mol. Gen. Genet.、1977、第152巻、第129〜135頁)。これによって、pCURE11(Km、Pn)の選択が可能である。pRK24の除去は、その独特のテトラサイクリン耐性を用いて同定することができる。2つのpCURE11構築体(pCURE11クローン3および8)およびpAKE604は、形質転換によって大腸菌DH5α[RK24]内に導入され、pAKE604は次のスクリーニングにおけるネガティブコントロールとして用いられた。形質転換体はカナマイシンを用いて選択された。
【0146】
20のpCURE11クローン3および8の形質転換体、大腸菌DH5α[RK24][pCURE11]、ならびに5つのpAKE604形質転換体が、LA+0.1μg/ml Tc+50μg/ml Kmプレートの5×5グリッド上にストリークされた。このテトラサイクリン濃度は、テトラサイクリン耐性を誘導するのに充分であるが大腸菌細胞を殺さない程度であった。
【0147】
形質転換体はその後、初めにLA+10μg/ml Tc上に、続いてLagar+50μg/ml Km上にレプリカプレーティングされた。このテトラサイクリン濃度は、pRK24を選択するのに充分であった。これは、両Tc濃度での、大腸菌DH5αおよび大腸菌DH5α[pRK24]コントロールの並列試験によって確認された。pAKE604形質転換体はTc 10μg/mlおよびKmプレートの双方で増殖したが、pCURE11形質転換体はKmプレートでのみ増殖した。このことは、pCURE11形質転換体がpRK24を失ったが、親のpAKE604ベクタで形質転換されたものがpRK24を失っていないことを示唆している。pCURE11のIncP−1αキュアリング能力は、ゲル上で異なるプラスミドの存在を視覚化することによってさらに確認された。ゲルは、pCURE11が大腸菌DH5αからpRK24を追放したが、pAKE604親ベクタがpRK24を追放しなかったことを示した(図9参照)。
【0148】
pCURE11クローン3および8で形質転換された大腸菌DH5α[pRK24]の単一コロニは、選択アガー上で単一コロニに精製され、ショ糖感受性について試験され、その後pCURE11の選択なしで増殖された。結果は、pCURE11形質転換体がショ糖感受性を明示し、形質転換体がカナマイシン選択なしに増殖されるとき、pCURE11の欠損がより多くなることを示した。ショ糖上で増殖する形質転換体が、突然変異sacB遺伝子を有することに対立するものとして、pCURE11を失ったことの確認は、安定性試験において用いられた、オリジナルの大腸菌DH5α[pRK24]、pCURE11形質転換体の側に沿って、ショ糖プレート由来の8つのコロニのプラスミドプロフィールをランすることによって、決定された。ゲルは、オリジナルのコロニがpCURE11を含有するが、ショ糖上で増殖したコロニがpCURE11を失っていたことを示した(図10参照)。
【0149】
【表4】

【0150】
これらの結果は明らかに、pCURE11が大腸菌からIncP−1プラスミドを除去し得ること、およびpCURE11フリーの分離個体が、選択なしで形質転換体を増殖させ、その後ショ糖上に培養物をプレーティングすることによって、選択され得ることを実証している。
【0151】
(6)IncP−βキュアリング活性のスクリーニング
pCURE11がIncP−βプラスミドを宿主から除去する能力が、IncP−βプラスミドR751(トリメトプリム耐性)を用いて調査された。pCURE11.3、pCURE11.8およびpAKE604が大腸菌NEM[R751]内に形質転換され、Lagar+50μg/ml Kmプレートを用いて選択された。20のpCURE11構築形質転換体および5つのpAKE604形質転換体が100μg/mlトリメトプリムプレートの5×5グリッド上にストリークされた。pAKE604形質転換体のみが増殖したので、pCURE11形質転換体がR751を失ったことを示唆している。pCURE11がR751を除去したことのさらなる確認は、小規模なプラスミドDNA抽出サンプルのプロフィールをスクリーニングすることで得られた。ゲルは、pCURE11形質転換体がR751を失ったが、pAKE604形質転換体がR751を失ってなかったことを示した(図11参照)。
【0152】
(7)pCURE12の構築
他のグラム陰性細菌におけるキュアリングシステムの使用を実証するために、IncP−9プラスミドpM3のoriV−rep領域がpCURE11内に導入され、これによってpCURE12を創出した。これは、プラスミドpACT1を用いてなされ(Sevastsyanovich, Y. R., Titok, M. A., Krasowiak, R., Bingle, L. E. H.およびThomas, C. M. Ability of IncP-9 plasmid pM3 to replicate in E. coli is dependent on both rep and par functions. Mol. Microbiol.、2005、第57巻、第819〜833頁)、pACT1は、HindIIIおよびSalIで切断されて1309bpのフラグメントを放出し、フラグメントはその後、これらの2つの酵素部位を導入するためにリンカを挿入することによって修飾されたpCURE11の派生体と、ライゲーションされた。
【0153】
図6を参照して、pCURE12のプラスミドマップを示す。プラスミドはシュードモナス属種(P. putida)内に形質転換された。これによって、構築体がシュードモナス属種において複製し、結果としてシュードモナス属種のIncPプラスミドを除去することが可能である。
【0154】
考察
発明者らは、追放されるプラスミドにコードされるPSKシステムの作用を中和する遺伝的領域を組込むキュアリングプラスミドの有効性を試験することを目的とする。この重要な点は、分離個体の選択を可能とするためにsacB遺伝子を有する不安定なプラスミドに連結されたレプリコン部分を用いることによって内在プラスミドの複製を阻止することに関して、他のグループによって報告されてきた他のキュアリングベクタの驚くべき敷衍(extrapolation)である。しかし、この特有の戦略が用いられたのは、目的が、プラスミドの安定した遺伝が、明らかにPSKシステムを欠いている、複製および分離安定性(活性分配システム)システムの組合せによって駆動されている比較的単純なrepABCプラスミドシステムを追放するときであった(Genes and Genetic Systems、2002、第77巻、第1〜9頁)。
【0155】
これは幅広いレプリコンタイプであるが、実行可能である多くのプラスミドがあり、発明者らは2つのそのようなプラスミドファミリを標的にした。結果は、このアプローチが、100%の高効率であり、段階ごとに回収される明白な細菌数から、あらゆる段階での追放による宿主細菌の生存率の損失を全く含まないことを実証している。これは、pO157由来のミニプラスミドの不和合性のみを用いて、成功が実際に非常に限られた、すなわちスクリーニングされた41コロニのうちのたった7つしかプラスミドを失っていなかった、以前に発表されたpO157の追放の試みと、かなり対照をなす(Infection and Immunity、2001、第69巻、第6660〜6669頁)。
【0156】
本発明の発明者らは、ここで記載される原理が、適切なベクタが与えられたあらゆる細菌において等しく効率的に機能すると考えている。発明者らがIncP−1プラスミドを追放しようとしたことを考えれば、腸内細菌以外の種でpAKE604ベクタを可能にすることを基準として、IncP−1レプリコンを実際に用いなかった。発明者らは、集団から急速に失われるように不所望の内在プラスミドをうまく追放するのにかつて使用された事実のようないくつかの利点を明らかに有するが、より狭い宿主範囲を有し、シュードモナス属種以外では不安定な、IncP−9レプリコンを用いた(Microbiology and Virology、1991、第8巻、第18〜23頁)。発明者らは、利用可能なプラスミドの範囲を拡大し、IncP−1レプリコンを一組に含めた。グラム陰性細菌株のDNA配列は別として、内生プラスミドについてほとんど知られていない、グラム陰性細菌株をシーケンスし、どの程度まで、内生プラスミドの効率的なキュアリングに適切なpCUREプラスミドを設計するのに充分な情報を予測することができるかを理解するのは、興味深いであろうと発明者らは考えている。発明者らはまた、グラム陰性細菌の外側へ原理を拡大するために、グラム陰性−グラム陽性のシャトルベクタを開発するよう計画している。これらは前述したのと全く同じように機能するだろうが、不所望の内在プラスミドの複製に干渉し、不所望のプラスミド上のPSKシステムの効果を中和するセグメントを有するようにグラム陽性細菌において機能し得るレプリコンを利用するだろう。
【0157】
ここで記載される本方法は、当業者が、どの遺伝子座がプラスミドの安定した遺伝に干渉し得るかを予測することを可能にする配列情報へのアクセスを有することに依存する。このことは、DNA配列が既知である細菌株に本技術を制限し得る。しかし、新たなプラスミドのシーケンスは、それらの多くが、すでに知られるシステムに関連する遺伝子を有することを明らかにしたので、当業者はバイオインフォマティクスを用いて非常に正確な予測をすることができる。利用可能な配列情報は、あらゆる新たなプラスミドのDNAがフラグメント化および標識化されて、どの周知の安定した遺伝機能を有するかを決定した後、該DNAをスクリーニングするのに用いられ得るアレイを構築するのに使用され得る。その後、「容易に入手可能な」pCUREプラスミド、または創出されるカスタム設計pCUREプラスミドによって、標的され得る。
【0158】
選択された細菌から、プラスミドの効率的な排除を引き起こす遺伝子座のバッテリは、医療および農業の種々の場面で使用され得る。たとえば、集中治療設備における使用のためのプロバイオティクス細菌において、抗生物質耐性を与え得るプラスミドの取得を防止するために、適切な追放プラスミドが使用され得る。同様に、それらは、獣医学に関する場面において広がっている抗生物質耐性への耐性を妨げるのに使用され得る。これらの目的のために、発明者らは、遺伝子が、不安定なプラスミド内よりもむしろ、染色体内に統合されることで、菌株が効率的に安定であったと予想する。このことは、pCUREプラスミド由来のrepおよびpsk必須機能部を、染色体の非必須部由来のDNAセグメントの中央に挿入し、その後これを用いて、DNAが相同組換えによって染色体内に組込まれるのを可能とすることによって、達成されるだろう。
【0159】
概要
要約すれば、本発明に従う方法は、宿主細胞内に導入され得る、一連のカスタム構築された追放プラスミドを提供し、それによって内生プラスミドの将来世代からの追放を生じさせる。結果生じた培養物はその後、オリジナルのプラスミドを含有するあらゆる細胞を除去するために精製され得る。追放プラスミド上のsacBタグ(宿主細胞にショ糖不耐性を与える)が、プラスミドフリーの細菌細胞を選択するのに使用される(なぜなら、sacBタグを有する細胞は死ぬからである)。これらのプラスミドフリーの細胞はその後、たとえば、オリジナルのプラスミドのある細胞の特性と、ない細胞の特性とを比較するのに使用され得る。組換え追放プラスミドは、オリジナルの内生プラスミドDNAの必須部分、すなわち、複製および後分離キリング(PSK)を制御する領域を含む。
【0160】
本発明に従う方法は、大腸菌O157で機能することが証明されており、類似のプラスミドを有する関連の病原株で機能すると考えられる。本方法はグラム陰性細菌からプラスミドを除去するのに使用されるのが好ましい。しかし、最終産物は、幅広い範囲(すなわち、種/菌株の範囲で機能するように設計される)、または種/菌株特異的であり得ることが想定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後分離キリング(PSK)システムを含有するプラスミドを有する宿主細胞内に組換え核酸分子を導入する工程を含む、宿主細胞から後分離キリングシステムを含有するプラスミドを追放する方法において、組換え核酸分子がプラスミドの後分離キリングシステムの毒性効果を中和するように構成され、さらにまた核酸分子がプラスミドの複製を打ち負かす、または阻害するように構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
追放されるプラスミドが内生プラスミドであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
PSKシステムが毒素成分および解毒成分を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
毒素成分および解毒成分が、追放されるプラスミドによって遺伝的にコードされることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
毒素成分がmRNA分子であることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
毒素成分がたんぱくであることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項7】
解毒成分が、毒素遺伝子のmRNAへの発現を調節するように構成されたレギュレータたんぱくであることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項8】
解毒成分が、毒性mRNAに結合して毒性mRNAの毒性作用を妨げるように構成されるアンチセンスRNAであることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項9】
解毒成分が、毒性たんぱくの毒性効果を中和するように構成される解毒たんぱくであることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項10】
組換え核酸分子が、宿主細胞から追放されるプラスミド上のPSKシステムの解毒部分を遺伝的に補完することができることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
組換え核酸分子が、宿主細胞から追放されるプラスミド上のPSKシステムの少なくとも1つの解毒物コード遺伝子を遺伝的に補完することができることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
組換え核酸分子が、宿主細胞から追放されるプラスミド上のPSKシステムの解毒物コード遺伝子の各々を遺伝的に補完することができることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドによってコードされるPSKシステムの解毒物コード遺伝子またはその機能変異体の少なくとも1領域を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組換え核酸分子が、プラスミドのPSKシステムの毒性遺伝子のmRNAへの発現を調節するように構成される、レギュレータたんぱくをコードすることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドによって産生され得るあらゆる毒性mRNAに結合して毒性作用を妨げるように構成される、アンチセンスRNAをコードすることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる毒性たんぱくに結合して毒性作用を妨げるように構成される、解毒たんぱくをコードすることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる制限エンドヌクレアーゼの毒性作用を妨げるように構成される、DNA修飾酵素をコードすることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドによって産生され得る、あらゆる分泌毒性たんぱくの毒性作用を妨げるように構成される、免疫たんぱくをコードすることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドの複製を打ち負かすように構成されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミド由来の、複製起源のすべて、もしくは選択された部分を、または1つ以上のレプリコンを有することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドよりも高い割合で複製するように構成されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドの複製よりも高い割合で組換え核酸分子を複製することができる、複製起源またはレプリコンを有することを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項23】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドの複製を阻害するように構成されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
組換え核酸分子が、追放されるプラスミドの複製を阻害または妨げる、インヒビタ分子をコードすることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
インヒビタ分子がIncFIIレプリコンのアンチセンスRNA CopAであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
解毒物コード遺伝子ならびに複製起源および/またはレプリコンおよび/またはインヒビタ分子をコードする遺伝子が、宿主細胞内で発現されるように機能的に連鎖することを特徴とする請求項13〜18,20,22,24および25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
組換え核酸分子がDNAを含むことを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
組換え核酸分子が、組換え核酸分子の導入される宿主細胞と同じ生物に由来することを特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
組換え核酸分子が環状であることを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
組換え核酸分子が、宿主細胞における核酸分子の複製に必要な機能的遺伝因子を含むことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
組換え核酸分子が宿主細胞のゲノム内に統合することができることを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
組換え核酸分子が、選択可能マーカをコードする遺伝子を有することを特徴とする請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
選択可能マーカをコードする遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
プラスミドが宿主細胞から追放されるような状態に宿主細胞をさらす工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
プラスミドが首尾よく追放された後に、組換え核酸分子が宿主細胞から追放されるような状態に宿主細胞をさらす工程をさらに含むことを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
宿主細胞を選択圧にさらすことで、組換え核酸分子が宿主細胞から取除かれる工程と、その後組換え核酸分子を欠く細胞を選択する工程を含むことを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
組換え核酸分子が適切な選択可能マーカを有することを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
選択可能マーカがsacB遺伝子であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
宿主細胞が真核細胞であることを特徴とする請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
宿主細胞が原核細胞であることを特徴とする請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
原核細胞が、グラム陽性、またはグラム陰性の細菌性細胞であることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
グラム陽性細菌性細胞が、バチルス属種(Bacillus spp.)、ラクトバチルス属種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス属種(Lactococcus spp.)、ブドウ球菌属種(Staphylococcus spp.)、レンサ球菌属種(Streptococcus spp.)、リステリア属種(Listeria spp.)、腸球菌属種(Enterococcus spp.)またはクロストリジウム属種(Clostridium spp.)であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
グラム陰性細菌性細胞が、腸内細菌科種(Enterobacteriaceae spp.)、シュードモナス属種(Pseudomonas spp.)、モラクセラ属種(Moraxella spp.)、ヘリコバクタ属種(Helicobacter spp.)、ステノトロフォモナス属種(Stenotrophomonas spp.)、デロビブリオ属種(Bdellovibrio spp.)またはレジオネラ属種(Legionella spp.)であることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項44】
グラム陰性細菌性細胞が、エンテロバクタ属種(Enterobacter spp.)、好ましくは
Enterobacter aerogenesまたはEnterobacter cloacaeであることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
グラム陰性細菌性細胞が、大腸菌(E. coli)細胞であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項46】
グラム陰性細菌性細胞が、シュードモナス属種(Pseudomonas spp.)、好ましくはP.
putidaであることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項47】
追放されるプラスミドが、Fファミリプラスミド、大腸菌(E. coli)不和合性(Inc)グループPプラスミド、腸内細菌Incグループプラスミド、またはシュードモナス属(Pseudomonas)Incグループプラスミドであることを特徴とする請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
プラスミドが、F様プラスミド、好ましくはpO157であることを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項49】
組換え核酸分子が、pO157由来の少なくとも1つのレプリコンの機能制御領域を有することを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
組換え核酸分子が、好ましくは機能的に連鎖する、repFIIAおよび/またはrepFIBを有することを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項51】
組換え核酸分子が、好ましくは機能的に連鎖する、hok/sokシステムのsok遺伝子、および/またはletABシステム由来のletA遺伝子を有することを特徴とする請求項48〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
組換え核酸分子が、機能的に連鎖するrepFIIA、repFIB、sokおよびletAを、それぞれの遺伝子が宿主細胞内で発現されるように有することを特徴とする請求項48〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
組換え核酸分子がpCURE1であることを特徴とする請求項1〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
組換え核酸分子が、flmA/flmBhok/sok)、srnB/srnC、pB171、およびpemI/pemKから独立して選ばれる少なくとも1つのPSKシステム由来の解毒物遺伝子を有することを特徴とする請求項1〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
組換え核酸分子が、PSKシステムのそれぞれに由来する解毒物遺伝子を有することを特徴とする請求項54記載の方法。
【請求項56】
組換え核酸分子がpCURE2であることを特徴とする請求項54または55記載の方法。
【請求項57】
組換え核酸分子が、IncP−1領域:oriVparDおよびkorA/incC由来のセグメントを有することを特徴とする請求項1〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
組換え核酸分子がpCURE11であることを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項59】
組換え核酸分子がIncP−9のレプリコンをさらに有することを特徴とする請求項57記載の方法。
【請求項60】
組換え核酸分子がpCURE12であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項61】
実質的に図3に示される組換えベクタpCURE1。
【請求項62】
実質的に図4に示される組換えベクタpCURE2。
【請求項63】
実質的に図5に示される組換えベクタpCURE11。
【請求項64】
実質的に図6に示される組換えベクタpCURE12。
【請求項65】
請求項61〜64のいずれか1項に定義される組換えベクタを有することを特徴とする細胞。
【請求項66】
請求項61〜64のいずれか1項に記載の組換えベクタ、ならびに(i)組換えベクタと実質的に同じであるが、追放に必要な配列を欠くベクタ、(ii)追放されるプラスミドの宿主への、組換えベクタの接合伝達を可能とする細菌株、および任意で(iii)取扱説明書、の少なくとも1つを含むことを特徴とするキット。
【請求項67】
プラスミドによって与えられる、具体的な病毒または病原特性を確立する方法における使用のための、請求項1〜66のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項68】
プラスミドによって与えられる抵抗特性を決定する方法における使用のための、請求項1〜67のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項69】
プラスミドによって与えられる感受性を決定する方法における使用のための、請求項1〜68のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項70】
どの抗生物質が、プラスミド誘導生物膜に対して最も効果的であるのかを決定する方法における使用のための、請求項1〜69のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項71】
細菌感染の病原性因子を除去するが、片利共生機能を残す方法における使用のための、請求項1〜70のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項72】
それら自体は安全で、病毒および耐性決定因子を有するプラスミドによって、侵入に対する免疫が与えられ得る、プロバイオティクス株を開発する方法における使用のための、請求項1〜71のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。
【請求項73】
土壌または植物ベースの細菌による病原性/寄生性作用を取除くための作物保護生成物を開発する方法における使用のための、請求項1〜72のいずれか1項に定義される方法、組換えベクタまたはキット。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−536027(P2009−536027A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508480(P2009−508480)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001682
【国際公開番号】WO2007/129087
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(305031567)ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム (12)
【Fターム(参考)】