プラスミドDNAの精製方法
プラスミドDNA精製方法において一般的なツーコア単位操作の代替の操作を包含する、大規模な発酵体制を含む製造プロセスから、臨床等級のプラスミドDNAを単離する方法が開示されている。本明細書に開示されている新規上流及び下流の精製方法は、製造コストの低下と方法の頑強性の増加をもたらす。ここに開示されている精製方法の一方又は両方は、DNAプラスミド精製技術に関連する本分野において公知の追加の精製工程と組み合わせて使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年1月31日に出願された米国仮出願60/648,670号の利益を主張し、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、プラスミドDNA精製プロセスにおいて一般的なツーコア単位操作の代替法を包含する、大規模発酵方式を含む製造プロセスから臨床等級のプラスミドDNAを単離する方法に関する。本明細書に開示されている新規上流及び下流精製プロセスは、製造コストの低下とプロセスの頑強性の増加をもたらす。本発明の一部として記載されている新規上流精製プロセスは、まず、プラスミドDNAを含有する宿主細胞可溶化液が生成され、次いで、宿主細胞細片の凝集によって清澄化される2段階溶解/可溶化液清澄化プロセスを含む。本発明の一部として記載されている新規下流精製プロセスは、プラスミドDNAが濃縮された宿主細胞可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿と、及び接線流ろ過モード下での前記沈殿されたDNAの精密ろ過を包含する。本明細書に開示された精製プロセスの一方又は両方は、プラスミドDNA精製技術と関連する本分野で公知のさらなる精製工程と組み合わせて使用し得る。
【背景技術】
【0003】
ポリヌクレオチドワクチンは、特定の疾病に対して防御免疫を誘導するための画期的アプローチであり、中和抗体を生成するとともに、より好ましい細胞媒介性免疫反応を活性化する(Montgomery,D.L.et al.,1993,Cell Biol.169:244−247;Ulmer,J.B.et al.,1993,Science 259:1745−1749)。目的の抗原をコードする遺伝子と哺乳動物細胞中で活性なプロモーターとを含むプラスミドDNAが身体に投与され、筋肉細胞によって内部に取り込まれる。抗原DNAは転写及び翻訳され、発現されたタンパク質は、T細胞提示のために細胞表面へと輸送される。疾病モデルでのDNAワクチンの前臨床免疫原性と有効性は、多数の感染性疾患に対して実証されている(総説として、Gurunathan S.et al.,2000,Ann.Rev.Immunol.18:927−974を参照。)。プラスミドDNAは、さらに、機能的遺伝子の体内への投与、標的細胞への前記遺伝子の送達及び疾病状態を選択的に調節するための治療用産物の発現を包含する遺伝子治療処置について是認されている。
【0004】
従って、遺伝子治療は、遺伝的欠陥の予防、治療又は治癒に対する代替法となる。プラスミドDNAをベースとした多くの遺伝子治療臨床試験が開始されている(総説として、Mountain,A.,2000,TIBTECH 18:119−128;and Ferber,D.,2001,Science 294:1638−1642を参照)。
【0005】
医薬等級のプラスミドDNAの大量の製造及び精製は、ポリヌクレオチドワクチン及び遺伝子治療プロトコールの両者の適用性にとって極めて重要である。予防又は治療計画の一環として、疾病を撲滅するためにDNAワクチン又は遺伝子治療処置を使用する可能性があるヒト使用者の数は極めて多く、臨床等級プラスミドDNAに対する大きな需要をもたらしている。従って、DNAワクチンと遺伝子治療処置の選択肢が何れも提供しなければならない利点を完全に開発し、及び活用するために、高収率のプラスミドDNA産生プロセス及び精製プロセスが必要である(Shamlou,P.A.,2003,Biotechnol.Appl.Biochem.77:207−218)。小規模プラスミドDNA精製法に関する従来の調査にも関わらず、臨床等級プラスミドDNAの製造及び精製の規模を拡大することには問題が存在することが明らかとなっている(Prazeres,D.M.F.et al.,1999,TlBTECH 17:169−174)。さらに、画期的な大規模製造プロセスは、最適化と市場化への早さに対する要求及び必要性に対する経済的な関心との釣り合いをとらなければならない(Shamlou,2003,上記)。本発明は、生産コストを低下させ、プロセスの頑強性を増加させるプラスミドDNAの精製のための、高度に生産性があり、拡張可能であり、及び再現性のあるプロセスを開示する。本プロセスは、宿主細胞細片のポリマー凝集を含む新しい溶解及び可溶化液清澄化手法を開示する。この新規溶解及び凝集手法は、(ポリエチレングリコール又はアルコールを使用する)プラスミドDNAの沈殿と、及び接線流ろ過モード下でのその後の精密ろ過を包含する新規下流仕上げ工程と組み合わせ得る。
【0006】
増殖培地から細菌細胞を単離するために、化学的凝集が一般に使用され、遠心より安価な代替法となっている(例えば、Lee,J.and C.V.Viswanathan,1974,Lab.Pract.23:297−298;Cumming,R.H.,et al.,1996,Bioseparation 6:17−23)。凝集の機序は複雑であり、温度、イオン環境、生理的熟成、凝集剤、表面剪断及び凝集されるべき材料など多くの変化要因に依存する(McGregor,W.C.andR.K.Finn,1969,Biotechnol.Bioeng.11:127−138)。細菌細胞細片に関しては、数個の研究が本機序について分析しているに過ぎない。PerssonI.−L.及びB.Lindman(“Flocculation of Cell Debris for Improved Separation by Centrifugation,”Flocculation in Biotechnology and Separation Systems,Ed.Y.A.Attia,Amsterdam:Elsevier,1987,429−439)は、研究室及び予備生産研究でE.コリ細胞細片を凝集させるために、陽イオン性多価電解質、キトサン及びポリエチレンイミンの組み合わせを使用した。正に帯電したポリマー粒子は、E.コリ細胞細片を凝集させるためにも使用されている(Kim,C.W.,et al.,“Removal of Cell and Cell Debris by Electrostatic Adsorption of Positively Charged Polymeric Particles”,Flocculation in Biotechnology and Separation Systems,Ed.Y.A.Attia,Amsterdam:Elsevier,1987,429−439)。しかしながら、ポリマー凝集剤を使用して、拡張可能なプロセスの設計のために清澄化された細菌可溶化液を生成可能であることは認識されていなかった。
【0007】
微生物細胞発酵から臨床等級プラスミドDNAを精製する際の最後の工程は、先行する上流精製工程から持ち込まれた、宿主細胞由来の全ての残留不純物及び/又はプロセス夾雑物を除去すること、並びに最終の産物を濃縮すること及び緩衝液交換を包含する。本発明は、プラスミドDNA精製を完結させるための最終仕上げ操作において、接線流ろ過モードでの精密ろ過と組み合わせて、ポリエチレングリコール(例えば、Lis,J.T.and R.Schleif,1975,Nucleic Acids Res.2:383−389;Sadhu,C.and L.Gedamu,1988,Biotechniqms 6:20−21;Yeung,M.C.and A.S.Lau,1993,Biotechniques 15:381−382;and Horn,N.A.et al.,1995,Hum.Gene Ther.6:565−573を参照)又はアルコール(例えば、Wallace,D.M.,“Precipitation of Nucleic Acids,”Methods in Enzymology:Guide to Molecular Cloning Techniques,Eds.S.L.Berger and A.R.Kimmel,1987,41−48;Serghini,M.A.et al.,1989,Nucleic Acids Res.17:3604参照)を用いてDNAを沈殿させるという周知の方法を使用する。本プロセスは、最終仕上げプロセスにおいて一般に使用されている限外ろ過操作に必要とされる高い再循環速度及び大きな膜面積を省略する。
【0008】
1996年10月1日に、Marquet,M.らに対して発行された米国特許第5,561,064号は、医薬等級プラスミドDNAの精製中に使用された分画的ポリエチレングリコール(「PEG」)沈殿戦略を開示する。重要なことに、第一のPEG沈殿工程は、清澄化された可溶化液の生産後及び陰イオン交換クロマトグラフィーのサイズ排除前に実施する。
【0009】
1998年1月13日にHorn,N.らに発行された米国特許第5,707,812号は、クロマトグラフィーマトリックス(プラスミドDNAは、その後、クロマトグラフィーマトリックスから、PEGを含有する緩衝液中に溶出される。)へのプラスミドDNAの結合を増強させるための縮合剤としてPEGを使用することを開示している。
【発明の開示】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、微生物細胞から医薬等級のプラスミドDNAを単離する方法に関し、本方法は、製造プロセスからのプラスミドDNAの精製に代わる要素となり、大規模発酵方式を含み、製造コストの低下とプロセスの頑強性の増加をもたらす。本発明は、さらに、新規上流(すなわち、宿主細胞可溶化液の清澄化の前及び宿主細胞可溶化液の清澄化を含む。)及び新規下流(すなわち、可溶化液清澄化後)精製工程を含むプラスミドDNA精製プロセスにおいて一般的なツーコア単位操作に関する。より具体的には、本明細書に開示されている上流精製工程は、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞からまず細胞可溶化液が生成され、次いで、宿主細胞細片を除去するための凝集によって前記細胞可溶化液が清澄化される2つの部分からなる溶解/可溶化液清澄化操作を含む。本発明の新規下流精製方プロセスは、残留不純物を除去するために上流及び先行する下流精製工程を介して高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液をまず沈殿させた後、接線流ろ過モード下での精密ろ過に供される最終濃縮/仕上げ操作を包含する。これらの工程は、本分野で公知のさらなる精製工程とさらに組み合わせて使用することができ、及び/又は、好ましくはDNAプラスミド精製技術に関連する本分野で公知の他の方法と組み合わせて、上記工程の少なくとも1つが省略される。
【0011】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている方法は、細菌細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルスを含む(但し、これらに限定されない。)微生物細胞(エシェリヒア・コリ(「E.コリ」)が好ましい微生物宿主である。)からの臨床等級DNAプラスミドの精製を可能とする。本明細書に記載されている方法によって精製された臨床等級プラスミドDNAは、ワクチンとして又は遺伝子治療ビヒクルとして、ヒトに投与するのに極めて有用である。本発明の方法は、臨床等級DNAプラスミド精製の微生物細胞からの精製について具体的に述べられているが、前記方法の適用は、微生物細胞からの精製に限定されない。従って、本発明は、さらに、本明細書に開示されている新規工程の1つ又はそれ以上を用いて、哺乳動物細胞から精製された臨床等級プラスミドDNAの単離並びに様々な宿主細胞(例えば、微生物又は哺乳動物)からの別の生物分子(例えば、タンパク質)の単離及び精製に関する。
【0012】
本発明は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。宿主微生物細胞の溶解は、リゾチームの存在下又は不存在下で行うことができる。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片は、ポリエチレングリコール(「PEG」)で凝集される。細胞可溶化液を清澄化させるために使用されるPEGを含む(これに限定されない。)凝集剤は、溶解緩衝液(例えば、標準的なSTET緩衝液)の成分として含めることができ、又は溶解が起こった後に、細胞可溶化液に添加することができる。凝集された宿主細胞細片は、例えば、沈降及びデカント又は遠心法(連続的遠心を含むが、これに限定されない。)によって宿主細胞可溶化液から除去することが可能であり、清澄化された細胞可溶化液をもたらす。凝集された細胞細片が除去された後、清澄化された細胞可溶化液中の高次コイルプラスミドDNAは、さらに、下流の精製プロセスによって、残留夾雑物から精製される。従って、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されている新規上流精製プロセスを用いて、高次コイルプラスミドDNAを含有する清澄化された宿主細胞可溶化液を生成する方法に関する。
【0013】
本発明は、さらに、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本明細書に記載されているアルカリpHシフト及びその後の中和工程は、凝集操作のために宿主細胞可溶化液を調製するのに役立つが、前記pHシフトは、前記可溶化液への凝集剤の添加前又は添加後の何れにおいても行うことが可能である。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、濃縮された塩基溶液の添加により、アルカリ値(例えば、約pH12−13)へとシフトされ、可溶性宿主細胞染色体DNAの変性を可能とする。アルカリシフトされた細胞可溶化液は、次いで、濃縮された酸溶液の添加により、概ね、最初の溶解緩衝液のpHまで中和され、好ましくは、約8−9の間のpHを有する細胞可溶化液をもたらす。従って、本発明の一実施形態は、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)塩基の添加により前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることによって、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、細胞がその中に溶解された生理的緩衝液のpHまで中和すること、及び(d)凝集剤(PEGを含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされ、中和された細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0014】
本発明の上流溶解及び可溶化液清澄化技術の後に、(i)CTABを含む(これに限定されない。)陽イオン性界面活性剤を用いた、清澄化された可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿、(ii)塩溶液によるプラスミドの溶解、(iii)水和したケイ酸カルシウム上への残留不純物の吸着、及び(iv)臨床等級プラスミド調製物の最終調合に先立つ、ポリエチレングリコール又はアルコールによる精製されたプラスミドDNAの沈殿、を含む(これらに限定されない。)多数の下流精製プロセスが続くことが可能である。
【0015】
本発明は、さらに、大規模発酵方式から臨床等級プラスミドDNAを単離するための新規下流精製プロセスに関し、粉末化されたプラスミドDNA産物をもたらす最終濃縮/仕上げ工程に相当する。本発明の下流精製プロセスは、先行する精製工程の結果、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液から残留不純物を除去するように作用する。従って、本発明は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。工程(a)における高次コイルプラスミドDNAの沈殿は、ポリエチレングリコール又はアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)を用いた周知の方法によって行い得る。工程(b)の精密ろ過プロセスは、プラスミドDNA精製プロセスの最終濃縮/緩衝液交換操作において一般に使用されている限外ろ過操作を直接置換することができ、再循環速度、フィルター膜面積及び総バッチ容積を最小限に抑える。
【0016】
本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、本明細書に開示されている新規下流濃縮/仕上げ精製プロセスにおける第一の工程として、濃縮され、清澄化された細胞可溶化液(すなわち、上流及び先行する下流精製プロセスにより、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された宿主細胞可溶化液)からPEGを用いて沈殿される。前記沈殿されたプラスミドDNAは、次いで、接線流ろ過モード下で稼働される精密ろ過に供せられる。従って、本発明の一実施形態は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の精密ろ過プロセスは、段階的なろ過プロセスの一環であり得る。従って、本発明の一実施形態において、上記PEG沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過及びその後の透析ろ過が沈殿されたプラスミドDNAスラリーを濃縮し、並びに残留RNA及び不純物を清澄化する第一のろ過工程を含む段階的ろ過プロセスを介して濃縮される。第二のろ過工程は、DNA沈殿内のPEGをエタノールと置き換え、さらに、プラスミドDNAを濃縮し、微細な粉末化された形態を得るために乾燥させることが可能な脱水されたプラスミドDNAの最終湿潤産物が得られる。この第二のろ過工程は、撹拌された細胞操作下でのフィルター乾燥装置(例えば、単一プレートNutscheフィルター乾燥機)中で行うことが可能であり、圧力ろ過及び真空乾燥を可能とする。従って、本発明は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モードでの精密ろ過を含む段階的ろ過プロセスを用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。前記段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEGの濃度を含有し、及び場合により十分な塩の濃度を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。さらなる実施形態において、(d)及び(e)の第二のろ過及び透析工程は、圧力ろ過の下で、及び撹拌された細胞モードで、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で行われる。
【0017】
さらに、本発明は、(a)エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含む(但し、これらに限定されない。)アルコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、前記精密ろ過濃縮工程は、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)エタノール性溶液のエタノール濃度が高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール性溶液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む段階的ろ過プロセスの一部である。さらなる実施形態において、(c)及び(d)の第二のろ過及び透析工程は、圧力ろ過の下で、及び撹拌された細胞モードで、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で行われる。
【0018】
本明細書において互換的に使用される「臨床等級のプラスミドDNA」と「医薬等級のプラスミドDNA」という用語は、遺伝子治療及び/又はポリヌクレオチドワクチン接種用途を含む(但し、これらに限定されない。)あらゆる公知の予防的又は治療的適応症のためのヒトへの投与に対して許容される純度のレベルである、宿主細胞から単離されたプラスミドDNAの調製物を表す。
【0019】
本明細書において使用される「非高次コイルプラスミドDNA」とは、切れ目が入った、開放環状及び直鎖などのプラスミドDNAの他のあらゆる形態を含む高次コイルプラスミドDNAでないあらゆるDNA並びに宿主ゲノムDNAを表す。
【0020】
本明細書において使用される「NTU」とは、標準化された濁度単位(normalized turbidity unit)を表す。濁度とは、浸漬されたプローブの光場によって通過する粒子の「計数」として定義される。溶液の濁度は、レーザーをベースとした光散乱装置を用いてモニタリングすることが可能である。
【0021】
本明細書において使用される「PEG」とは、ポリエチレングリコールを表す。
【0022】
本明細書において使用される「OD600」とは、600nmでの光学密度、mL当りの細胞の数の光散乱、分光学光度法測定を表す。
【0023】
本明細書において使用される「L.O.D」とは、検出限界(limit of detection)を表す。
【0024】
本明細書において使用される「MW」とは、ダルトンで表した分子量を表す。
【0025】
本明細書において使用される「LRATM」とは、Lipid Removal AgentTMを表す。
【0026】
本明細書において使用される「CTAB」とは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はセチルトリメチルアンモニウムブロミドを表す。
【0027】
本明細書において使用される「hcCaSiO3」とは、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムを表す。
【0028】
本明細書において使用される「IPA」とは、イソプロパノールを表す。
【0029】
本明細書において使用される「MF」とは、精密ろ過を表す。
【0030】
本明細書において使用される「UF」とは、限外ろ過を表す。
【0031】
本明細書において使用される「STET緩衝液」とは、約50mMのTris−HCl(約pH7.0−9.0)、約50−100mMのEDTA、約8%スクロース及び約2%Triton(R)−X−100を含む緩衝液を表す。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生産コストの減少とプロセスの頑強性の増加をもたらす、臨床等級プラスミドDNAを精製する大規模化可能な方法に関する。プラスミドDNA精製のための主要な単位操作は、細胞溶解、ろ過(精密ろ過/限外ろ過)及びクロマトグラフィーを含むと、しばしば考えられている。しかしながら、大規模なスケールで医薬等級プラスミドDNAを単離する場合、前記特定された主要な単位操作は、最低の単位コストで大きな量と高い品質をともに得るという本プロセスの最終目標に適合させるために調整しなければならない。例えば、複数のクロマトグラフィー工程のための、樹脂及び緩衝液などの原材料の支出は、大規模なプラスミドDNA精製プロセスに適用される場合、非常に高い単位コストと乏しい能力をもたらすことが明らかとされている。最近開示された米国特許出願09/875,379号(米国公開番号US2002/0012990)は、臨床等級品質(すなわち、少なくともヒトワクチン接種及びヒト遺伝子治療用途において有用)のプラスミドDNAのグラム量の単離を確保しながら、相対的に高価なクロマトグラフィー工程を不要とする別のプラスミドDNA精製プロセスを明らかにした。本発明は、さらに、臨床等級プラスミドDNAの精製のための経済的で、大規模化可能なプロセスを与えるという最終目標に拡張される。この目的のために、本発明は、プラスミドDNA精製プロセスのツーコア操作の代替操作として、清澄化された細胞可溶化液の生成及び高次コイルプラスミドDNAの最終濃縮/仕上げを特定する。
【0033】
従って、本発明は、新規上流(すなわち、宿主細胞可溶化液の清澄化の前及び宿主細胞可溶化液の清澄化を含む。)及び新規下流(すなわち、可溶化液清澄化より後)精製操作を含むプラスミドDNA精製プロセスに共通するツーコア単位操作に関する。開示されている上流精製工程は、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞(微生物細胞を含むが、これに限定されない。)からまず細胞可溶化液が生成され、次いで、前記細胞可溶化液を凝集によって清澄化し、宿主細胞細片を除去する、2つの部分からなる溶解/可溶化液清澄化手順を含む。目的のプラスミドDNAは清澄化された可溶化液中に残存し、目的のプラスミドDNAは、下流プロセスを介して、清澄化された可溶化液からさらに精製される。本発明の開示された下流精製工程は、先行する前記濃縮手順後に残存する残留不純物の除去を助けるために、まず、(先行精製工程の結果)プラスミドDNAが濃縮された溶液からプラスミドDNAを沈殿させ、接線流ろ過モードで精密ろ過(「MF」)に供されるプロセスを含む採集濃縮/仕上げ工程を包含する。次いで、プラスミドDNA産物粉末を形成するために、精製されたプラスミドDNAを乾燥させることができる。本明細書にさらに記載され、及び例示されているように、本発明の上流及び下流精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に開示されている精製方法を含む(但し、これに限定されない。)さらなる精製プロセスを伴う。このため、臨床等級プラスミドDNAの回収をもたらす大規模化可能な総合的精製プロセスを策定するために、本明細書に記載されている精製工程の一方又は両方を使用することは、本発明の範囲に属する。プラスミドDNA及び必要とされるプラスミドDNAの品質の特定のロットに対して必要とされる精製スキームを適切に改変することは、当業者の裁量に属する。本発明の新規精製工程を使用する様々な実施例が、本明細書に記載されているが、これらの実施例は、決して、本明細書の開示を限定することを意図したものではない。
【0034】
本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明のさらなる実施形態において、宿主細胞細片は、ポリエチレングリコール(「PEG」)で凝集される。従って、本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片をPEGで凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0035】
微生物宿主細胞は、溶解前に発酵溶媒から採集され、適切な希釈になるように、滅菌された生理的に許容可能な緩衝液(例えば、標準的なSTET緩衝液)中に再懸濁される。当業者であれば、最適な溶解条件が、部分的に、溶解緩衝液内の微生物宿主細胞の濃度に依存することを認識する。最適な溶解が生じる溶解緩衝液中の宿主細胞濃度(OD600)は、下記実施例1において、E.コリ宿主細胞を用いて示されるように、容易に測定することが可能である。最適な溶解条件は、宿主細胞の乾燥細胞重量(「DCW」)希釈に関して測定することも可能である。本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスによってE.コリ宿主細胞を溶解した場合には、70の当初OD600が好ましいものであり得る(実施例1参照)。あるいは、本明細書において、本発明者らは、約23g/LのDCWで、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞の溶解が強固な溶解をもたらすことも決定した。前記宿主細胞の溶解は、精製されるべき染色体外高次コイルプラスミドDNA、可溶性の宿主細胞染色体DNA又はゲノムDNA及び宿主細胞細片(例えば、不溶性の宿主細胞染色体DNA又はゲノムDNA、細胞膜、細胞小器官及び修飾された固体)を含む(但し、これらに限定されない。)溶液を生成する。本発明の本実施形態の細胞溶解工程は、酵素リゾチームの存在下又は不存在下の何れにおいても起こり得る。細菌細胞中で、リゾチームは、細菌のペプチドグリカン細胞壁を分解するように作用して、ペプチドグリカン層のN−アセチルムラミン酸(NAM)及びN−アセチルグルコサミン(NAG)の間のβ結合を加水分解する。これは、内部細胞膜を露出させ、例えば、界面活性剤によるさらなる破壊に対して、内部細胞膜を脆弱な状態とする。従って、リゾチームの添加は、細菌細胞を溶解する穏やかな方法に相当し、より大きなプラスミドの機械的破壊が生じる可能性をより少なくする。
【0036】
本明細書の実施例中に教示されているとおり、最終的なプロセスの収率に対するリゾチーム添加の効果は、容易に決定される。目的の高次コイルプラスミドDNAをその中で増幅するために選択された微生物の、好ましくは細菌の宿主細胞に応じて、当業者は、リゾチーム添加が前記プラスミドの精製をさらに補助する(例えば、精製されたプラスミドDNAの収率を最終的に最大化する。)かどうかを経験的に決定することが可能である。本発明の一実施形態において、E.コリ細胞を用いた本明細書の実施例中に例示されているように、目的の高次コイルプラスミドDNAを含む宿主微生物細胞は、リゾチームの存在下で、標準的なSTET緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロース、pH8.2)中で溶解される。本明細書に開示されている全ての塩基性緩衝液再懸濁の処方に対して改変を行い得ること、及び、本発明での使用に適していることが、当業者に自明である。従って、本発明のプロセスの結果に対して実質的に影響を与えず又は変化させない全ての塩基性緩衝液の処方が、本明細書に記載されているプロセスの範囲に属するものとされる。しかしながら、特に、下流のCTABをベースとした沈殿が想定されている場合、本発明の溶解工程は、Mg++及びC++などの二価陽イオンを効果的に除去するキレート物質(例えば、EDTA)、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton(R)をベースとする界面活性剤)並びにスクロースを含む生理的に許容される緩衝液の存在下で実施する。EDTAは、EDTAによって会合されなければDNAseを活性化する二価の金属イオンを会合させることにより、DNAse活性を阻害する。二価の金属イオンはプラスミドのCTABとの錯化を妨げるので、EDTAは、CTABをベースとした下流沈殿工程において好ましい役割を果たし続ける。さらに、プラスミドDNAを沈殿させるCTABの濃度範囲は、Triton(R)及びDNA濃度の両方に依存する(例えば、米国特許出願09/875,379号参照、上記。)。緩衝液のpH範囲は、特定の微生物株に対して決定された最良の結果に従って調整し得るが、好ましいpH範囲は約7.0−9.0の間であり、約8.0−8.5のpH範囲が最適である。
【0037】
本発明の別の実施形態において、完全な細胞溶解は、PCT国際出願PCT/US95/09749号(公開番号WO96/02658)及びPCT/US96/07083(WO96/36706)(参照により本明細書に組み込まれる。)中に開示されている熱交換装置に宿主細胞を通過させることを含むことができ、前記細胞は、リゾチームで処理されてもよく、処理されなくてもよいが、好ましくは、熱に曝露する前に、リゾチームで処理される。著しい流体の動的力を生成することが知られている高圧ホモゲナイザーは、高次コイルプラスミドDNAを損傷するリスク及び/又は所望されるプラスミドのサイズと同等のサイズまでゲノムDNAを剪断するリスクのために、本発明の宿主細胞溶解工程に対しては好ましくない。しかしながら、剪断損傷からDNAを保護することが明らかとなっている機械的細胞溶解技術(例えば、2002年12月26日にUS20020197637号として公開された米国特許出願10/158,753号に記載されているような、圧縮剤、核酸を凝集させる小さなポリカチオン、の存在下での溶解)を使用することができる。
【0038】
本発明のさらなる態様には、上述のように、工程(a)で生成された宿主微生物細胞可溶化液を、アルカリpHシフトに供した後に、細胞が最初にその中で溶解された緩衝液によって規定される前記可溶化液の当初pHまで、概ね中和される。従って、本発明の一実施形態において、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主微生物細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされた工程(b)の可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。さらなる実施形態において、前記pHシフトされた可溶化液は、PEGを用いて、宿主細胞細片を凝集させることによって清澄化される。宿主細胞可溶化液のアルカリpHシフト及びその後の中和は、凝集剤の可溶化液への添加の前に行い得る。あるいは、凝集剤は、初期溶解緩衝液の成分として、宿主細胞可溶化液中に存在し、又はアルカリpHシフト及び中和工程の前に、溶解が起こった後に添加され得る。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、その中に細胞が最初に懸濁及び溶解される緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロースからなる標準的なSTET緩衝液、pH8.2)の結果、概ね約pH7.0と約pH9.0の間、好ましくは約pH8.0と約pH8.5の間にある。アルカリpHシフトは、可溶性宿主細胞染色体DNAの完全な変性を可能とする値まで(例えば、概ね、約pH12と約pH13の間)、可溶化液のpHをシフトさせることを含む。時間が経過するにつれて、この上昇されたpHに高次コイルプラスミドDNAを曝露させることにより、プラスミドの変性も引き起こされるが、プラスミドDNAのサイズが小さいために、条件が中和されると、容易に再度のアニーリングを行う。可溶化液のpHは、プラスミドDNAが急速に変性し、剪断損傷に対して増加した感受性を有する約pH13を超えて上昇されないことが重要である。可溶化液のpHは、5Nの水酸化ナトリウム(「NaOH」)を含む(但し、これに限定されない。)濃縮された塩基溶液の添加によって上昇させることが可能であり、次いで、染色体DNAを確実に変性させるために、ある一定の長さの時間にわたり(例えば、約60分)、pHシフトされた細胞可溶化液を上昇されたpHに保つ。次いで、細胞可溶化液のpHは、濃縮された酸溶液(濃縮された酢酸溶液(例えば、約1.7と2.5の間の規定度を有する酢酸)を含むが、これに限定されない。)の添加によって、中和され、宿主細胞がその中で最初に溶解された緩衝液のpHまで、概ね可溶化液のpHを減少させる。
【0039】
理論に拘泥するものではないが、本明細書に記載されているpHシフトは、BirnboimとDolyによって最初に記載された古典的なアルカリ溶解技術(1979、Nucleic Acid Res.7:1513−1523)に、大まかに比較し得る。BirnboimとDolyのアルカリ溶解法は、変性により、宿主細胞のゲノムDNAとタンパク質を同時に除去できること、及び、次いで、変性された材料を選択的に沈殿させ得ることで周知である。伝統的なアルカリ溶解操作は、グルコース又はフルクトースを加えたTris緩衝液を含む細胞再懸濁溶液を使用し、この懸濁液には、高塩基溶液及びドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)界面活性剤が細胞溶解のために添加される。高塩基は、高分子量染色体DNAを選択的且つ完全に変性させる。次いで、pH5.5の(酢酸を加えた)3M酢酸カリウムの添加によって可溶化液が中和されると染色体DNAは沈殿するが、プラスミドDNAは上清中に保持される。しかしながら、重要なことには、大きなプロセス容量、複数のプロセス容器が必要であること、高pH及び酢酸ナトリウムの高レベルでのDNAの剪断感受性が報告されていることなど(これらに限定されない。)、プラスミドDNAの大規模な精製のためにこの伝統的なアルカリ溶解方法の使用に付随する大きな欠点が存在する(Chamsart,S.et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.75:387−392参照)。上記説明のとおり、本発明の本実施形態の塩基性pHシフトは、当初微生物細胞可溶化液中に存在する染色体DNA又はゲノムDNAを変性させるためにも重要である。高次コイルプラスミドDNAに対する高pH(例えば、pH12)の影響を調べた本明細書に記載されている実験は(実施例7に記載されている。下記。)、高い羽根車先端速度で、1時間超にわたり、pH12に曝露されたときに、高次コイルプラスミドDNAに対する損傷が存在しないことを示している。本明細書に記載されているアルカリpHシフト及びその後の中和工程が宿主ゲノムDNAの一部を溶液から除去するのに対して、完全な排除は達成されず、続いて行われる凝集操作が必要となる。従って、本発明の塩基性pHシフト工程及びその後の中和工程は、凝集操作のための宿主細胞可溶化液を調製するために実施されるのであって、細胞を溶解させ、又は可溶化液それ自体を清澄化させるために行われるのではない。従って、特定の理論に拘泥するものではないが、本発明のpHシフトは、細胞細片のその後の凝集のために重要な調製工程であることが明らかとなっている(さらに以下に記載されている。実施例1参照。)。
【0040】
同じく、本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主微生物細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。宿主細胞可溶化液が生成された後、並びに、上記アルカリpHシフト及びその後の中和工程に場合により供した後、宿主細胞細片(例えば、不溶性ゲノム宿主細胞DNA、細胞膜、修飾された固体)を除去するために、宿主細胞可溶化液は凝集され、高次コイルプラスミドDNA及び可溶性染色体DNA又はゲノムDNAを含む(これらに限定されない。)成分を含有する清澄化された可溶化液を生成する。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片の凝集を達成する凝集剤が、当初溶解緩衝液の成分である。あるいは、前記凝集剤は、溶解が起こった後に、宿主細胞可溶化液に添加することが可能である。本明細書に開示されている方法による細胞可溶化液の凝集は、前記微生物細胞可溶化液の分離可能性を大幅に増大させる。低カット界面活性剤沈殿工程(例えば、CTAB)は、可溶性タンパク質のレベルをさらに減少させるために、凝集後に実施することが可能である。細胞細片は、凝集後に溶液から沈降することができ(例えば、沈降/デカント)、又は、連続的遠心を含む(但し、これに限定されない。)遠心(例えば、15,000×g、15分)を介して、容易に除去することが可能である。可溶化液から残留固体を除去するために、遠心に加えて、仕上げろ過(例えば、セルロース又は珪藻土をベースとしたデプスフィルターを使用)も使用することが可能である。凝集された細胞細片が除去された後、可溶化液上清中に残存する高次コイルプラスミドDNAは、次いで、当業者に公知の精製プロセス(例えば、米国特許出願09/875,379号、上記)を包含する下流精製プロセス及び/又は本発明の一部として開示された新規下流工程によって、他の夾雑物からさらに精製除去される。
【0041】
宿主細胞細片の凝集とは、細胞粒子の凝集、すなわち細胞細片凝集塊の形成を表す。「凝集剤」又は「凝集因子」とは、粒子状懸濁液を清澄化するために使用される物質(例えば、ポリマー)であり、前記物質は、懸濁液に添加されたときに、凝集塊の形成を誘導する。凝集された物質(不溶性の粒子状物質に相当する。)は、通常、重力下で沈降する。しかしながら、本明細書に記載されている細胞細片浮遊塊を含む巨大な不溶性浮遊塊(すなわち、凝集の結果として形成される凝集された物質)は、低速遠心又は単純なろ過方法によって、溶液から容易に分離することが可能である。表面電荷、凝集されるべき物質の化学的及び物理的特徴、凝集剤の吸着速度及び濃度、粒子衝突速度及び濃度並びに懸濁液の混合条件を含む(これらに限定されない。)多くの異なる因子が、凝集の程度に影響を与え得る。凝集は、添加された凝集剤の電荷(「電荷中和」)又はその分子量(「架橋凝集」)の何れかの結果として起こると考えられる(Cumming,R.H.et al.,1996,Bioseparation 6:17−23参照)。電荷中和を介した凝集は、凝集されるべき物質の電荷とは反対の電荷を有する凝集剤間の接着によって起こり、表面電荷の全体的な中和又は電荷の局所的な反転を引き起こし、効果的な粒子の衝突と増加された浮遊塊の成長を可能とする。電荷中和機序を介した凝集の効率性は、凝集剤の分子量又はそのポリマー化の程度に依存しない。これと比べて、架橋凝集による細胞物質の凝集は、帯電した凝集剤又は非イオン性凝集剤とともに起こり得、凝集剤の分子量及び/又はポリマー化の程度に一層依存する。架橋凝集は、通常、コロイド状粒子の分散液に高分子量ポリマーを添加することによって達成される。凝集剤は、ループ及び尾部高次構造で粒子の2以上の表面に吸着することにより、これらを一緒に連結する。
【0042】
本明細書に記載されている宿主細胞細片を凝集させるために、帯電した(例えば、陰イオン性又は陽イオン性)又は帯電していない、合成(例えば、ポリエチレングリコール)又は天然に存在する(例えば、キトサン)ポリマーなど(但し、これらに限定されていない。)、多数の異なる凝集剤を使用することが可能である。従って、本発明の一実施形態において、上述のように作製された宿主細胞可溶化液中で細胞細片凝集を引き起こすために、ポリマー凝集剤が使用される。本プロセスにおける細胞細片の凝集塊形成に影響を与えるために凝集剤の種類を選択する場合には、凝集され、その後廃棄されることが予定されている物質の特徴及び留保される(すなわち、精製される)ことが予定されている物質の特徴をともに検討することが重要である。プラスミドDNA精製体制において、検討すべき重要事項は、DNAが負に帯電した生体分子であるので、細菌の細胞細片を凝集することが最も一般的に知られている凝集剤である正に帯電した凝集剤は望ましくないということである。正に帯電した凝集剤は、精製されることが予定されたプラスミドDNAとともに細胞細片を凝集させる。従って、本明細書に記載されている凝集工程を実施するために、負に帯電したポリマーを選択することが好ましく、より好ましくは帯電していないポリマーが選択される。この目的のために、ポリエチレングリコール(「PEG」)は、プラスミドを含有する可溶化液に対する費用対効果が優れた無毒の凝集剤であることが本明細書に示されている。PEGは、400から15,000超までの分子量ポリマーの範囲を作製する反復単位(−O−CH2−CH2−)から構成される非イオン性ポリマーである(例えば、最大400,000の分子量を有するPEGポリマーが市販されている。)。PEGは、殆どの有機溶媒と適合性があり、優れた水溶解性を有する。PEGは、さらに、多くの市販薬及び軟膏中の成分であるので、証明された安全性特性を有している。本明細書の実施例に示されているように、PEGは、微生物可溶化溶液から宿主細胞細片の凝集を誘導するが、PEGによって誘導されるこの凝集の正確な機序は明確でない。PEGは、細胞細片がポリマーと直接相互作用する伝統的な架橋凝集機序を介して作用して、ポリマー表面上に吸着することが可能である。あるいは、PEGは、可溶化液の特定されていない成分を溶液から排除することができ、この排除された物質は、次いで、宿主細胞細片を凝集させるように作用する。従って、本明細書において、PEGは、微生物宿主細胞細片の凝集剤として特定されており、ここで、「凝集剤」は、直接又は間接的な機序を介して、宿主細胞細片の凝集を誘導する物質として定義される。
【0043】
十分なPEG濃度はDNAを沈殿させることが可能であることがLisとSchleif(1975;上記)によって示されており、従って、本明細書に記載されている方法において凝集剤としてPEGが選択されるのであれば、使用されるPEGの濃度は、本発明の凝集工程の間にプラスミドDNA沈殿の可能性を最小限に抑えることが重要である。上述のように、PEGは非イオン性ポリマーであるので、凝集の程度は、ポリマーの分子量及びポリマー化の程度の両方に依存する可能性がある。当業者であれば、精製されるべきプラスミドDNAのサイズ及びプラスミドDNA増幅のために使用される具体的な宿主細胞など、様々な要因に留意しながら、宿主細胞細片の最も効率的な凝集を達成するために、PEGの最も適切な濃度及び分子量を経験的に決定することが可能である。本明細書において使用される、特定の宿主細胞可溶化液を凝集するために使用されるPEGポリマーの最も適切な濃度及び分子量は、前記可溶化液の最も効率的な凝集(すなわち、プラスミドDNA沈殿の最小量と組み合される、凝集された細胞細片の最大量を達成する。)をもたらすものを表す。例えば、高濃度の低分子量PEGを使用する場合と同様、高分子量PEGを用いることにより、低濃度の比較的に効率的な凝集が達成され得る。従って、PEGポリマー濃度と分子量の間に密接な相互作用が存在すること、従って、凝集目的のために、本明細書に開示されている全ての具体的なPEG濃度及びPEG分子量は指針と考えるべきであり、総じて、本発明に対する限定ではないことを理解すべきである。
【0044】
実施例1において、細菌細胞細片の沈降に対するPEG凝集の効果を一般的に特徴付けるために、最初に、スクリーニング研究を実施した。PEGは、特に、E.コリ細胞可溶化液の塩基/酸処理後(例えば、約pH8.5から約12.5までのpHシフト、次いで、約pH8.5まで戻る。)において、E.コリ細胞細片の高度に効率的な凝集剤であることが決定された。目的のプラスミドDNAを含有するE.コリ発酵から得られる細菌細胞可溶化液は、(1)STET緩衝液(上記)中に細胞を再懸濁し、及び20℃でリゾチームとともに温置すること、(2)STET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームとともに温置し、次いで、可溶化液を塩基/酸処理に供すること、並びに(4)3%PEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームとともに温置し、可溶化液を塩基/酸処理に供すること、という(図1に示されているような)4つの異なる方法によって作製された。図1からの結果は、重力のみにより、2日間にわたって物質を沈降させた後の、pHシフトされ、PEG処理された可溶化液(可溶化液#4)中の細胞細片の高度に効率的な凝集を示している。図1に示されている可溶化液及びその変形は、観察されたPEG誘導性凝集を特徴付けるためにさらに検査された(図2参照)。前記可溶化液の一定分量を15分間温置し、次いで遠心した。濁度測定(図3)は、塩基/酸処理に供された可溶化液に添加された場合の、凝集剤としてのPEGの作用を示しており、対照可溶化液(可溶化液#2)の730NTUに比べて、5%PEG3000で凝集した後には(可溶化液#6)、16NTUの溶液濁度であることを示している。プラスミドDNA含有懸濁液から凝集された物質を分離するための清澄化戦略として、連続的な遠心を使用することが可能であり、清澄化された可溶化液を調製するための仕上げろ過を用いずに、20NTU未満の清澄度が達成されることを、これらの結果は示している。実施例1は、さらに、細菌細胞細片の凝集に対するPEG濃度及び分子量の効果を示しており、宿主細胞細片の最も効率的な凝集を達成するための戦略を設計する場合に、当業者が、どのようにして、適切なPEG濃度及び分子量を特定できるかについて記載している。プラスミドDNAを含有する宿主細菌細胞からの細胞細片の凝集に対するPEG濃度及び分子量の効果は、細胞細片の沈降性能に基づく迅速なスクリーニング法を用いて調べた。まず、プラスミドDNAを含有するE.コリ細胞をリゾチームの存在下で溶解し、上述のように、塩基/酸処理に供した。様々なPEG原溶液(PEG400−6000)を、可溶化液の10mL分取試料中に混合して、約1%と15%(w/v)の間のPEG濃度を得る。次いで、混合物を、約16時間、室温で沈降させた。沈降された固体の容積及び上清の濁度(OD600)を測定した(図4A参照)。さらに、PEG3000を凝集剤として用いて、DNA濃度(AEXアッセイによって測定)及び上清の濁度を調べた(図4B)。これらの結果は、例えば、細胞細片は凝集するが、DNAは沈殿しないPEG3000濃度範囲が存在することを示している(図4B参照)。約0%と10%%(w/v)の間の濃度範囲にわたって、類似のプラスミドDNA沈殿曲線もPEG6000に対して作製した(図5参照)。
【0045】
従って、本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)ポリマー(ポリエチレングリコール(「PEG」)を含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む方法によって、大規模な微生物発酵から精製される。工程(a)の宿主細胞は、生理的緩衝液(例えば、上述のような標準的STET緩衝液)中、リゾチームの存在下又は不存在下で、好ましくはリゾチームの存在下で溶解することが可能である。あるいは、採集された宿主細胞は、PCT国際出願PCT/US95/09749(上記)及びPCT/US96/07083(上記)中に開示されているような熱交換装置への通過を介して溶解することが可能である。ポリマー(PEGを含むが、これに限定されない。)による工程(b)の宿主細胞細片の凝集は、細胞細片の最大量が浮遊塊へと凝集されるように行われ、前記浮遊塊は沈殿されたプラスミドDNAの最小量を含有する。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片は、PEG、好ましくは約1000超、より好ましくは約1450と約15,000の間の分子量のPEG、最も好ましくはPEG600の添加によって、約2%と約5%(w/v)の間、より好ましくは約3%と約4%(w/v)の間、最も好ましくは、約3.7%(w/v)の最終濃度まで、凝集される。
【0046】
本発明のさらなる実施形態において、宿主細胞細片の凝集の前に、特に、記載されている可溶化液清澄化プロセスのための凝集剤としてPEGが選択される場合、宿主細胞可溶化液は、本明細書に記載されているように、アルカリpHシフト及びその後の中和工程へと供される。従って、前記実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)ポリマー(ポリエチレングリコールを含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(b)の前記pHシフトされた可溶化液を清澄化することを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法を含む。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、その中に宿主細胞が最初に懸濁及び溶解される緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロースからなる標準的なSTET緩衝液、pH8.2)の結果、概ね約pH7と約pH9の間、好ましくは約pH8.0とpH8.5の間にある。次いで、細胞可溶化液のpHは、可溶性染色体DNAの完全な変性を可能とする値まで(例えば、概ね、約pH12と約pH13の間)までシフトされる。上述のように、pHは、5NのNaOHなどの(但し、これに限定されない。)濃縮された塩基溶液の添加によって上昇させることが可能であり、次いで、染色体DNAを確実に変性させるために、ある一定の長さの時間にわたり(例えば、60分)、pHシフトされた細胞可溶化液を上昇されたpHに保つ。しかしながら、pHは、プラスミドDNAが急速に変性し、剪断損傷に対して増加した感受性を示すような程度まで(すなわち、約pH13超)上昇されないことが重要である。次いで、細胞可溶化液のpHは、濃縮された酸溶液((例えば、約1.7と2.5の間の規定度を有する)濃縮された酢酸溶液を含むが、これに限定されない。)の添加によって、中和され、宿主細胞がその中で最初に溶解された緩衝液のpHまで、概ね可溶化液のpHを減少させる。従って、本発明の一実施形態は、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、宿主細胞がその中に溶解された当初の生理的緩衝液のpHまで、好ましくは約pH7と約pH9の間のpHまで、より好ましくは約pH8.0とpH8.5の間のpHまで中和すること、並びに(d)ポリマー(ポリエチレングリコール(「PEG」)を含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされ、中和された細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。細胞がその中で溶解される生理的緩衝液(例えば、本明細書に記載されているような標準的STET緩衝液は、リゾチームを含有してもよく、又は含有しなくてもよい。これに代えて、アルカリpHシフト及びその後の中和工程は、PEGを細胞可溶化液に添加した後に行うことが可能である。例えば、PEGは、宿主細胞細片を凝集させるために経験的に決定された濃度で、当初の溶解緩衝液中に存在することができ、ここにおいて、前記PEG含有細胞可溶化液は、次いで、前記細胞細片の効率的凝集を達成するために、本明細書に記載されているアルカリpHシフト/中和工程に供される(実施例1参照)。本発明は、さらに、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、工程(a)の宿主細胞可溶化液のpHまで中和すること、(d)PEG6000の前記可溶化液への添加で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(c)の細胞可溶化液を清澄化すること、及び(e)工程(d)の前記凝集された宿主細胞細片を遠心し、高次コイルプラスミドDNAを含有する上清を取得すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、工程(a)の生理的溶解緩衝液は、リゾチームを含有し、及び約pH7と約pH9の間のpH、好ましくは約pH8と約pH8.5の間のpHを有する標準的なSTET緩衝液である。別の実施形態において、濃縮されたPEG6000溶液は、約3.7%(w/v)の濃度になるように、前記可溶化液に添加される。本発明の本部分のさらなる実施形態において、PEG凝集剤は、連続的な遠心条件下で、アルカリシフトされ、中和された宿主細胞可溶化液へ、工程(d)において供給され、上清中に残存するプラスミドDNAを有する凝集された細胞細片の沈殿物を取得する。
【0047】
本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞は、リゾチームの存在下又は不存在下で、好ましくはリゾチームの存在下で、生理的緩衝液中において温置され、塩基性pHシフト及びその後の中和工程(上述のとおり)に供される。これは、高次コイルプラスミドDNAを上清中に保持しながら、細胞細片(例えば、不溶性の、ゲノム又は染色体宿主細胞DNA、細胞膜及び修飾された固体)を凝集することによって清澄化するために前記微生物細胞可溶化液をさらに調製する新規溶解手法に相当する。この溶解手法は、Lee及びSagarに付与された米国特許第6,197,553号に記載されており、リゾチーム溶解後に急速な加熱及び冷却を含む大規模なプラスミドDNAの精製のための以前に開示された溶解プロセスの濃縮を2回行うことが可能である。従って、本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスは、プロセス容積の大幅な減少を可能とする。さらに、本明細書に記載されている新規溶解プロセスは、より以前に開示された溶解技術に比べて、より単純な手法である。例えば、米国特許第6,197,533号の熱溶解手法に必要とされる2つの巨大なタンクと比べて、1つのタンク中で実施できるので、大幅な資本コストが節約され、複雑な直列の熱交換機ではなく、成分の混合と添加のみを必要とする。さらに、本発明の新規溶解及び凝集手法は、凝集された細胞細片の沈降及びプラスミドDNA含有上清のデカント及び遠心など(これらに限定されない。)、細胞細片が容易に除去されるフィードを生成する。プラスミドDNA含有上清が形成されるにつれて、これを連続的に除去するバッチ又は連続的遠心の何れも使用することが可能である。(宿主細胞細片の凝集を介した)本発明の新規溶解及び可溶化液清澄化技術の後には、(i)陽イオン性界面活性剤(好ましくは、CTAB)を用いた、清澄化された可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿、(ii)塩溶液によるプラスミドの溶解、及び(iii)水和されたケイ酸カルシウム上への残留不純物の吸着を含む(但し、これらに限定されない。)下流精製プロセスが続くことが可能である。好ましい下流工程は、PEG又はアルコールの何れかによって誘導された沈殿後の精密ろ過分離による高次コイルプラスミドDNAの濃縮及び仕上げである(下記参照)。従って、本発明の別の実施形態は、本明細書に新規に開示されている新規2工程溶解/可溶化液清澄化プロセス以外のさらなる精製工程に依拠する。本発明の一部として含まれるプロセス工程の組み合わせには、例えば、以下のもの:(i)リゾチームの存在下又は不存在下、好ましくはリゾチームの存在下での細胞溶解、(ii)PEGによって誘導された凝集などの(但し、これに限定されない。)細胞細片の凝集を介した可溶化液清澄化、(iii)CTABなどの界面活性剤を用いたプラスミドDNAの単回又は段階的沈殿、(iv)塩溶液によるプラスミドの選択的溶解、(v)hcCaSiO3上への単回又は段階的吸着による残留不純物の除去、及び(vi)濃縮された製剤溶液を容易にそこから調製することができる安定なバルク産物を与える、精製されたプラスミドDNAの、PEG又はアルコール(例えば、エタノール性)によって誘導された沈殿が含まれ得る。
【0048】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている方法は、細菌細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルスを含む(但し、これらに限定されない。)微生物細胞(E.コリ)が好ましい微生物宿主である。)からの臨床等級プラスミドDNAの精製を可能とする。従って、E.コリ発酵以外の微生物発酵が本発明における使用に適していることが、当業者に自明である。さらに、本発明の方法は、専ら微生物細胞から臨床等級プラスミドDNAを精製することに限定されるものではなく、従って、哺乳動物細胞を含む他の細胞種から前記プラスミドDNAを精製することを含み、適切な細胞密度が達成されると推測される。従って、哺乳動物培養系中で、又は微生物発酵から増幅された臨床等級プラスミドDNAの精製が、本発明の一部として想定される。異なる宿主細胞種の特異性に対して調整するために、本発明の細部を改変し、及び最適化することは、当業者の能力の範疇に属する。例えば、選択された宿主細胞に応じて、可溶化液凝集のための準備的工程として、アルカリpHシフト及びその後の中和に、増幅されたプラスミドDNAを含有する当初細胞可溶化液を供することは不要であり得る。リゾチーム温置のみ、及び/又は熱溶解と組み合わせたリゾチーム温置は、凝集し易い細胞可溶化液を効果的に調製するのに十分であり得る。当業者であれば、細菌細胞からの精製について本明細書に詳しく開示されている採集及び溶解/可溶化液清澄化プロセスを、哺乳動物細胞からの精製に容易に適合させることが可能である。例えば、前記当業者は、細菌細胞の溶解を補助するのに有効なリゾチームの添加が、哺乳動物細胞の溶解には必要でないことに気付く。代わりに、本明細書に記載されているアルカリpHシフトは、完全な哺乳動物細胞の溶解をもたらし得る。同様に、酵母細胞からのプラスミドDNAの精製は、リゾチームを酵母溶解酵素(例えば、リトカーゼ)に置換することによって有利となる可能性があるが、本明細書に開示されているアルカリpHシフトが好ましく、酵母溶解酵素は不要であり得る。従って、当業者は、本明細書の開示及び詳細な実施例を用いて、本発明の一部として記載されている方法を容易に改変することが可能であり、プラスミドDNAを増幅するために選択された宿主細胞がどのような種類であれ、これを適用できる。従って、本願は、大規模な「微生物発酵」からのプラスミドDNAの精製に焦点を絞って書かれているが、この用語は、本発明を微生物発酵に限定するものではない。従って、本明細書を通じて、「微生物発酵」という用語は、宿主細胞増殖又は増幅プロセスのあらゆる種類に対するものとして読み替えることができる。
【0049】
本明細書に開示されている方法によって単離及び精製されるべきプラスミドは、実質的にあらゆるサイズのあらゆる染色体外DNA分子(例えば、高コピー数又は低コピー数/細胞)であり得る。従って、宿主細胞(好ましくは、微生物宿主細胞)中で増幅できる実質的にあらゆるプラスミドを、本発明の方法によって単離することができることが当業者に自明である。本明細書に記載されている方法によって精製された臨床等級プラスミドDNAは、ワクチンとして又は遺伝子治療ビヒクルとして、ヒトに投与するのに極めて有用である。
【0050】
詳しく上述されているように、(微生物細胞細片の凝集を介した)本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスについて提案されている使用は、例えば、ポリヌクレオチドワクチン又は遺伝子治療ベクターとして使用するための大規模微生物発酵から臨床等級プラスミドDNAを精製することである。さらに、本発明は、本明細書に記載されている新規溶解/可溶化液清澄化プロセスを含む、高次コイルプラスミドDNAを含有する清澄化された宿主細胞可溶化液を生成する方法に関する。重要なことには、本明細書に記載されている新規溶解/可溶化液清澄化技術は、タンパク質、モノクローナル抗体、融合タンパク質、ゲノムDNA、RNA、脂質及び多糖など(但し、これらに限定されない。)、あらゆる組換え生物分子の微生物宿主からの精製に拡張することが可能である。従って、(i)宿主細胞可溶化液の生成、(ii)場合によって行われる、塩基性pHシフト及びその後の中和工程、並びに(iii)宿主細胞細片の凝集による前記細胞可溶化液の清澄化を包含する、本明細書に記載されている溶解/可溶化液清澄化プロセスは、例えば、E.コリ、他の細菌宿主、他の微生物宿主(例えば、酵母)又は哺乳動物細胞を用いた、あらゆる組換え生物分子の産生に拡張され得る。特定の宿主細胞種及び精製されるべき特定の生成物生物分子の両方の特異性に対して調整するために、(凝集を介した)本発明の溶解/可溶化液清澄化プロセスを改変することは、当業者の能力の範疇に属する。例えば、プラスミドDNA以外の生物分子の精製のために本発明に開示されているものに関連する効率的及び効果的な溶解/可溶化液清澄化プロセスを設計する場合、最大のpH安定性に加えて、本明細書に記載されているアルカリpHシフト/中和工程の間に上昇したpH条件に曝露される時間を考慮する必要がある。アルカリpHシフトを含む本明細書に記載されている上流精製工程は、上昇したpHへの短期間の曝露に対して、精製されるべき生物分子が耐えることができる限り、及びポリエチレングリコールの低レベルによって沈殿されない限り、魅力的な精製工程である。さらに、DNAが夾雑物であると考えられるプロセス(例えば、タンパク質精製プロセス)において、PEG濃度は、凝集された細胞細片とともにDNAを沈殿させるためにPEG濃度を上昇させることが可能である。
【0051】
本発明の大規模な微生物発酵は、選択された微生物細胞の増殖にとって適切であるいずれかの液体培地中で培養され得る。同じく、本発明は、哺乳動物細胞の増殖に適した全ての培地を使用することが可能である大規模な哺乳動物細胞培養からプラスミドDNAを精製する方法を提供するために容易に適合させることが可能である。開示されている方法は、より小さな発酵又は培養容量に対して適用可能であるが、本発明の特に有用な態様は、大規模な細胞発酵又は培養への拡張可能性である。本明細書において使用される「大規模」という用語は、約5リットルを超える総細胞発酵容量又は約5リットルを超える発酵容量から採集された細胞であると考えられる。本発明の大規模な発酵法は、約300〜2000リットルの発酵に相当する(但し、これらに限定されない。)臨床サイズロットに適用可能である。本発明の一部として記載されている上流精製プロセスの場合、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞は、まず、細胞ペースト又はスラリーを提供するために、培地から採集される。採集工程の最終目標は、精製において使用するための細胞を濃縮及び洗浄することである。遠心又は精密ろ過など(但し、これらに限定されない。)、液体培地から細胞を採集する全ての慣用的手段が適切である。例えば、採集工程は、(i)500kDaの見かけの分子量のA/GTech膜を横切る接線流ろ過を用いて細胞を濃縮すること、及び(ii)滅菌された生理的食塩水を用いて、濃縮された細胞を透析ろ過することを含むろ過プロセスからなり得る。このようなろ過プロセス中の重要なパラメータには、膜間圧力、入口圧力、クロスフロー速度、濃度因子及び流量が含まれる。さらに、細胞は、連続的遠心を用いて採集され得る。細菌細胞に対する採集手法の詳しい記載については、以下の実施例の部9を参照されたい。
【0052】
本発明は、さらに、大規模発酵体制から臨床等級プラスミドDNAを単離するための新規下流精製プロセスに関し、粉末化されたプラスミドDNA産物をもたらす最終濃縮/仕上げ工程に相当する。プラスミドDNA精製体制に関する場合のように、本明細書において使用される下流精製プロセスとは、上流精製プロセスの結果(例えば、本発明の一部として記載されている上流精製プロセスの凝集工程後)、当初の宿主細胞可溶化液が清澄化された後に起こる精製プロセスを表す。目的のプラスミドDNAは、前記上流精製プロセス後に、清澄化された可溶化液中に残存する。本発明の最終濃縮/仕上げ工程は、上流プロセス及び先行する下流プロセスの両方の結果として、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液から残留不純物を除去するために使用される下流精製技術を表す。前記残留不純物には、宿主細胞ゲノムDNA、先行する精製プロセス後に残存する細胞タンパク質又は先行する精製工程の結果として存在するプロセス成分(例えば、プラスミドDNAを選択的に沈殿させるために使用される界面活性剤)が含まれ得る。本発明の一部として記載される新規下流精製工程は、高次コイルプラスミドDNAを濃縮し、及びより実行可能な緩衝液容量中への再懸濁を可能としながら、残留不純物から最終的に高次コイルプラスミドDNAを精製するためのより初期の工程のあらゆる様々な組み合わせとともに使用され得る。従って、本明細書に記載及び例示されているように、本発明の新規下流精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に開示されている精製方法及び本発明の一部として開示された新規上流精製プロセスを含む(但し、これに限定されない。)さらなる精製プロセスを伴う。臨床等級プラスミドDNAの回収をもたらす拡張可能な総合的精製プロセスを設計する場合に、最終濃縮/仕上げ精製技術に相当する、本明細書に記載されている新規下流精製工程を含めることは、本発明の範囲に属する。プラスミドDNA及び必要とされるプラスミドDNAの品質の特定のロットに対して必要とされる精製スキームを適切に改変することは、当業者の裁量に属する。
【0053】
従って、本発明の一実施形態は、下流濃縮/仕上げ工程を包含し、前記下流精製工程は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード(「TFF」)下での精密ろ過(「MF」)によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含む大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。プラスミドDNA精製体制の最終仕上げ工程の一部としてプラスミドDNAを濃縮するために、限外ろ過(「UF」)ではなく、MFを用いた沈殿を使用することは、数多くの理由のために好ましい。まず、溶液相プラスミドDNAは、工場生産量を精製するために限外ろ過法を大規模化した場合に、剪断損傷を受け易い。さらに、溶液粘度は、精密ろ過条件下で低下するので、増加した濃度でより管理可能であり、及びフィルター面積を減少させる物質を与える。これにより、透析ろ過緩衝液に対して必要な容量を大幅に低下させることもできる。上記(a)において沈殿させるべき高次コイルプラスミドDNAは、先行する上流及び下流プロセスの結果として、細胞可溶化液が濃縮されており、従って、本発明の濃縮/仕上げ精製技術は、全プラスミド精製体制における最後のプロセスの1つとなっている。例えば、本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、以下の工程:(i)リゾチームの存在下又は不存在下での、好ましくはリゾチームの存在下での細胞溶解、(ii)本明細書に記載されているポリマー(例えば、PEG)による細胞細片の凝集など(但し、これに限定されない。)可溶化液の清澄化、(iii)陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)など、界面活性剤による、プラスミドDNAの単回又は段階的沈殿、(iv)塩溶液を用いた、プラスミドDNAの選択的溶解、(v)hcCaSiO3上への単回又は段階的な吸着による残留不純物の除去、及び(vi)接線流ろ過モード下での前記沈殿されたプラスミドの沈殿及び精密ろ過を介したプラスミドDNAの濃縮を含む(但し、これらに限定されない。)プロセスによって、大規模微生物発酵の細胞可溶化液から精製される。このリストのうち、本発明の最終濃縮/仕上げ工程は、単位操作(vi)に相当する。上に列記されているさらなる精製プロセスは、当業者に公知であるか、又は、例えば、本願及び/又は米国特許出願09/875,379号(上記)(参照により、本明細書に組み込まれる。)中に詳しく記載されている。
【0054】
本発明の最終下流濃縮/仕上げ精製工程を実行する前に、先行する上流及び下流精製プロセスの結果、高次コイルプラスミドDNAは宿主細胞可溶化液中に濃縮されている。例えば、本発明の前記最終濃縮/仕上げ精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に例示されている複数プロセスのプラスミドDNA精製方式内に組み込むことが可能であり、粉末化された形態の臨床等級プラスミドDNAの大量をもたらし、これは、所望であれば、選択した液体製剤中に再懸濁することが可能である。一例として、(例えば、本発明の一部として記載されている新規上流精製プロセスを含む(但し、これらに限定されない。)上流精製プロセスによって)微生物宿主細胞可溶化液の清澄化後、前記清澄化された可溶化液からプラスミドDNAを沈殿させるために、陽イオン性界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド(CTAB))を使用し得る。プラスミドDNAの選択的沈殿のためにはCTABが好ましいが、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド(TTA)、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルアリールトリメチルアンモニムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアミン:クロリド又はブロミド塩、ドデシルアミン又はクロリド塩及びセチルジメチルエチルアンモニウムブロミド又はクロリドを含む(但し、これらに限定されない。)その他のモノアルキルトリメチルアミノ塩を使用し得る。さらに、プラスミドDNAを選択的に沈殿させるために、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(例には、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びベンゾエトニウムクロリド(BTC)が含まれる。)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(市販の製品には、ドミフェンブロミド(DB)、ジデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物及びオクチルドデシルジメチルアンモニウムクロリド又はブロミドが含まれる。)、ヘテロ芳香族アンモニウム塩(市販の製品には、セチルピリジニウムハロゲン化物(CPC又は臭化物塩及びヘキサデシルピリジニウムブロミド又はクロリド)が含まれる。)、シス異性体1−[3−クロロアリル]−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、アルキル−イソキノリニウムブロミド、及びアルキルジメチルナフチルメチルアンモニウムクロリド(BTCH110)、多置換された四級アンモニウム塩(市販の製品には、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリナート及びアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート)、ビス四級アンモニウム塩(製品例には、1,10−ビス(2−メチル−4−アミノキノリニウムクロリド)−デカン、1,6−ビス[1−メチル−3−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−プロピルジメチルアンモニウムクロリド]ヘキサン又はトリクロロビソニウムクロリドBuckman BrochuresによってCDQと称されるビスクアット(bisquat)並びにポリマー製四級アンモニウム塩(ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、ポリ[N−3−ジメチルアンモニオ]プロピル]N−[3−エチレンオキシエチレンジメチルアンモニオ)プロピル]尿素ジクロリド及びα−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド]などのポリイオネンを含む。)などの、別の四級アンモニウム化合物を使用することが可能である。
【0055】
単回又は段階的様式の何れかで、凝集され及び/又は清澄化された宿主細胞可溶化液からプラスミドDNAを沈殿させるために、CTABを含む(但し、これに限定されない。)陽イオン性界面活性剤を使用することが可能であり、その例は、米国特許出願09/875,379号(上記)中に開示されている。段階的な沈殿プロセスには、低カット及び高カット沈殿工程が含まれる。細胞細片及び非高次コイルプラスミドDNAを細胞可溶化液から沈殿させるのを助けるために低カット沈殿工程を使用することが可能であり、目的の高次コイルプラスミドDNAは上清中に残存する。本発明の一実施形態において、前記細胞可溶化液は、凝集されるが、凝集された物質を未だ除去しなくてもよく、又は既に清澄化されていてもよい(すなわち、例えば、凝集された物質の遠心を介した後凝集及び可溶化液の清澄)。この低カット沈殿の後には、高カット沈殿工程が続くことが可能であり、これにより、目的の高次コイルプラスミドDNAは、タンパク質、RNA及びエンドトキシンなどの可溶性不純物から沈殿除去される。米国特許出願09/875,379号(上記)に詳述されているように、陽イオン性界面活性剤CTABの段階的添加は、STET緩衝液中の清澄化された可溶化液に2%(w/v)CTAB溶液を供給すること、約0.25%〜約0.35%(w/v)のCTAB、より好ましくは、約0.1%から0.2%(w/v)のCTABからCTABによって誘導された第一の沈殿を生成した後、約0.40%〜約0.60%からCTABによって誘導された第二の沈殿を生成することを含むことができ、前記範囲は、標準的なSTET溶解緩衝液(例えば、約50mMのTris−HCl、約pH7.0−9.0、約50−100mMのEDTA、約8%のスクロース及び約2%のTriton(R)−X−100)と同時に使用するのが最良である。様々な緩衝液系の何れかの特性に対して調整するために沈殿範囲を変化させることは当業者の能力の範疇に属する。従って、本発明の一実施形態において、低カット界面活性剤沈殿工程は、凝集後に細胞可溶化液を含有するDNA−プラスミドから残留タンパク質及びエンドトキシンをさらに除去するために使用される(実施例1、下記参照。)。より具体的には、ホットスポットろ過を防ぐために、約1時間にわたって、約0.15%の最終濃度まで、40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを細胞可溶化液に添加することが可能である。この低カット界面活性剤沈殿工程が、凝集された可溶化液に対して、前記可溶化液の清澄化前に(すなわち、凝集された細胞細片の除去前に)行われる場合には、前記可溶化液は、続いて、遠心法のみによって、又は仕上げろ過工程と組み合わせた遠心法によって清澄化することが可能である。本発明のさらなる実施形態において、単回の高カット界面活性剤沈殿工程は、全下流プラスミドDNA精製プロセスにおける第一の工程として(すなわち、可溶化液清澄化後に)使用することが可能である。従って、一実施形態において、約0.40%と約0.60%の間の最終濃度まで、本発明の新規上流精製プロセスによって作成された、凝集された及び/又は清澄化された可溶化液にCTABが添加され、前記範囲は、上記標準的なSTET溶解緩衝液とともに使用すると最良である。同じく、様々な緩衝液系の何れかの特性に対して調整するために前記沈殿範囲を変化させることは当業者の能力の範疇に属する。従って、(例えば、単独で、又は仕上げろ過と組み合わせた、沈降/デカント又は遠心方法によって)宿主細胞細片浮遊塊を除去する前又は除去する後に、何れかの残留タンパク質及びエンドトキシン(低カット工程)及び/又は高次コイルプラスミドDNA(高カット工程)が沈殿されるような最終濃度まで、細胞可溶化液に2%(w/v)界面活性剤溶液を供給することによって、陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)を添加することが可能であり、ここで、両界面活性剤沈殿工程は、プラスミドDNAを不純物からさらに分離させる機能を果たす。(米国特許出願09/875,379号、上記に記載されているような)その後の塩溶解のために、(高次コイルプラスミドDNAを含有する)フィルターケーキ沈殿物を生じさせるために、単回又は段階的な陽イオンベースの界面活性剤工程には、ろ過工程を伴う。(高次コイルされたプラスミドDNAを含む)回収されたフィルターケーキの塩溶解は、最適なイオン強度及び組成の緩衝溶液中で行われる。様々な塩の増分で、溶液中の高次コイルプラスミドの濃度を測定することによって、又は、間接的に、溶液粘度を測定することによって濃度が測定される。
【0056】
本発明の一部として記載されている新規濃縮/仕上げ工程を介して、そこから高次コイルプラスミドDNAが精製される、プラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液の生成を補助するために使用され得る別の先行する下流精製技術は、合成の水和されたケイ酸カルシウムLRATM(Advanced Minerals Corporation,Lompoc,CA 93438)など、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウム(hcCaSiO3)上に、単回又は段階的な様式で、残存不純物を吸着させることである。米国特許出願09/875,379(上記)中に詳しく記載されているように、微生物宿主細胞可溶化液へのhcCaSiO3の添加により、高次コイルプラスミドDNAから離れて残留不純物が吸着される。水和されたケイ酸カルシウムは、様々な不純物(界面活性剤(例えば、CTAB、Triton(R))、エンドトキシン、ゲノムDNA、プラスミド分解物、タンパク質及びRNAを含むが、これらに限定されない。)に結合する。添加に必要とされるhcCaSiO3の正確な量は、(i)存在する不純物の量、(ii)緩衝液の状態(例えば、塩濃度)、(iii)溶液中の総DNAの量、(iv)溶液の容量によって支配され、並びに、おそらくは(v)精製プロセスを通じて使用される塩の温度及び種類を含む他の変数によって支配される。従って、具体的な精製操作中に添加されるべきhcCaSiO3の量は変動し得ることが明白である。添加されるべきhcCaSiO3の量は、上述の条件に応じて、及び特定の操作に対して利用可能なhcCaSiO3のロットに応じて生じ得る差に応じて、最大約200gのhcCaSiO3/総DNAのグラムの範囲にある。実施例の部8は、約8から約200グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラムの範囲についての指針を与える。典型的なプラスミドDNA精製操作の間、添加されたhcCaSiO3の好ましい範囲は、約125から200グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラム、より好ましくは、約30と約70グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラムである。本発明者らは、典型的なプラスミド精製操作には、約30−70gのhcCaSiO3/総DNAのグラムが必要であることを見出した。但し、この場合にも、hcCaSiO3吸着条件は、上で説明された条件に関して、上方向又は下方向に規模を変動させることができ、従って、200グラムのhcCaSiO3/総DNAグラムまで、前記範囲の高い方の末端でhcCaSiO3を添加する必要がある可能性がある。例えば、NaClのより高い濃度は、DNA及びその他の不純物に対するLRATMの能力を増加させる。従って、幾つかの例では、より高い塩濃度を検討することが有用であり、これは、必要とされるhcCaSiO3の量を減少させるはずである。有用な塩濃度は、例えば、最大約5MのNaClのNaClを用いた範囲であり得ると予測される。上述のように、hcCaSiO3上への不純物の吸着は、単回又は段階的な様式で起こり得る。本明細書の実施例8に記載されているように、第一の吸着工程が、界面活性剤によって誘導された沈殿されたプラスミドDNAの塩溶解と組み合わされる段階的LRA吸着プロセスは、より頑強な再溶解をもたらす。次いで、(a)再懸濁中のケイ酸カルシウムの量を最小化するために、及び(b)残留宿主細胞ゲノム、開環プラスミド及び直鎖プラスミドDNAを低下させるための最初の仕上げ工程として作用するために、第二段階のケイ酸カルシウムバッチ吸着が使用される。
【0057】
先行する様々な上流及び下流両精製技術の結果として高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液を生成すると共に、一般に、全プロセスの最終産物精製工程に相当する濃縮及び最終緩衝液交換工程の幾つかの種類が実施される。この最終濃縮/仕上げ工程によって、実質的に全ての残留不純物がプラスミドDNA含有溶液から除去され、前記プラスミドDNAを、生理的に許容される緩衝液中に所望の産物濃度に濃縮することが確保される。本発明は、接線流ろ過モードでの精密ろ過と組み合わせて、DNA沈殿剤(例えば、ポリエチレングリコール、アルコール、PEI、ポリアミン、陽イオン性界面活性剤、込み合ったポリマー(crowding polymer)、三重螺旋剤(triplex agent)及びその他の有機剤)を用いる周知の方法によるプラスミドDNAの沈殿を含む新規最終濃縮/仕上げ工程の開示に関する。本明細書に記載されている新規濃縮/仕上げ工程の最終目標は、粉末製剤をもたらすプラスミドDNAの精製である。しかしながら、前記粉末化された産物が所望の液体中に再懸濁される場合には、液体製剤も実現することができる。本発明のこの部分は、大規模なプラスミドDNA精製体制をしばしば悩ませるスケールアップの問題を解決する。例えば、精密ろ過濃縮と組み合わせた、PEG又はアルコールの何れかによるプラスミドDNA沈殿を使用することにより、プラスミドDNA精製プロセスのための最終緩衝液交換/濃縮手法において一般的に使用される最終限外ろ過手法を直接置き換えることが可能である。限外ろ過は、しばしば、高い再循環速度と大きな膜面積を必要とし、夾雑物の排除を最小にする。以前の出願である米国特許出願09/875,379(上記)に開示されているバッチアルコール沈殿ベースのバッチプロセスは、これらの限界を回避し、必要な膜面積と再循環速度を劇的に減少させ、粉末化されたDNAを作製して大量貯蔵の必要性を最小化する。しかしながら、バッチアルコール沈殿は、大きな溶媒比と過剰な溶媒廃棄物の廃棄を必要とし、大規模な溶媒沈殿に対しては非実用的である。精密ろ過をベースとした本発明のプロセスは、別の液体大量限外ろ過アプローチに必要とされる膜面積を大幅に減少させ、アルコール沈殿とともに使用されると、連続的な溶媒回収系が、アルコール沈殿された産物のバッチ型ろ過にしばしば伴う困難を回避する。
【0058】
従って、本発明は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の一実施形態において、前記高次コイルプラスミドDNAは、ポリエチレングリコール(PEG)及びアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)からなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(a)において沈殿される。工程(a)において高次コイルプラスミドDNAを沈殿させるために使用され得るさらなるDNA沈殿剤には、PEI、ポリアミン、陽イオン性界面活性剤、込み合ったポリマー、三重螺旋剤及びその他の有機溶媒が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
従って、本発明は、(a)ポリエチレングリコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。PEGによるプラスミドDNAの沈殿は急速且つ穏やかであり、DNAに対してほとんど損傷を引き起こさない(Humphreys,G.O.et al.,1975,Biochim.Biophys.Acta.383:457−463)。本明細書において先述されているように、プラスミドDNAのPEG沈殿は、DNA溶液中のポリマーの濃度に高度に依存する(Humphreys et al.,1975、上記参照)。10%の最終濃度になるように、清澄化された細胞質抽出物にPEGを添加することは、前記抽出物内に含有された全てのプラスミドDNAを沈殿させ、幾つかのRNA及び多くのタンパク質を溶液中に残存させることが示された(Pulleyblank,D.et al.,1983,Molc.Biol.Rep.9:191−195)。Lis及びSchlief(1975、上記)は、PEGを用いて、異なる分子量のDNA分子を分離できることを示した。より高い分子量のDNAがより低いPEG濃度で優先的に沈殿することを決定した後、彼らは、様々なPEG濃度を用いて前記分子を沈殿させることを基礎とした、プラスミドDNA分子用のサイズ分画法を開発した。PEGは、伸長されたコイル状態からコンパクトな球状状態へのDNA分子の凝集を促進し(Minagawa, K et al.,1994,Biopolymers 34:555−558)、ここにおいて、前記DNA分子は、一次相転移を行う (Yoshikawa,K.et al.,1996,J.Am.Chem.Soc.118:929−930)。PEGの低濃度において、DNA分子は伸長されたコイルとして留まるが、高い濃度では、DNA分子は小さな球状高次構造へと収縮する。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、PEGがプラスミド含有溶液に添加されるにつれて、PEGは、DNAとではなく、水分子と相互作用するように、PEGは体積排除によってDNAを沈殿させるものと考えられる。DNAは、その負の表面電荷の故に、PEGとは相互作用しない。より多くのPEGが添加されるにつれて、この排除効果は、局所DNA濃度が最終的に溶解度の限界を超えるまで、より多くのDNAを小さなポケット中に無理に詰め込む。本明細書の実施例に示されているように、完全な沈殿に必要とされるPEGの濃度は、主に、塩濃度、PEG分子量、産物の不純度及びプラスミドサイズの関数である。
【0060】
上述のように、プラスミドDNAの、PEGによって誘導された沈殿の機序は、プラスミドDNA含有溶液中のPEG沈殿剤の濃度及び分子量の両方に大きく依存する。下記の実施例の部に記載されているように、400から10,000DaまでのPEG分子量が、溶液からプラスミドDNAを沈殿させる能力について調べた(図7B)。前記研究は、DNAが10%(w/v)のPEG400中で完全に可溶性であるが、PEGの分子量が増加するにつれて、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界質量が減少することを示している。従って、本明細書に例示されている精製プロセスは、本発明のこの本部分についての沈殿剤として、PEG6000又はPEG8000の何れかを使用するが、当業者であれば、プラスミドDNAを効果的に沈殿させるために、実質的にあらゆる分子量のPEG、特に、約3,000〜約20,000のPEG分子量範囲の間で使用することが可能なことを理解する。しかしながら、本明細書に記載されている最終濃縮/仕上げ技術の一部として、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる具体的な分子量のPEGを選択する場合、前記PEG分子量を補完するためにPEG濃度を調整しなければならない。特に本願の教示に照らして、この決定を行うことは当業者の能力の範疇に属する。例えば、LRA後のろ液からプラスミドDNAを完全に沈殿させるためのPEG8000の適切な濃度を決定することは、本明細書に示されている(実施例の部3)。0.3と1.0mg/mLの間のDNA濃度は大規模な精製手法において遭遇する可能性があるので、この0.3と1.0mg/mLの間でDNA濃度を変動させて、異なる温度及び総DNA濃度の下でこの試験を行った。PEG濃度が約2%(w/v)を上回ると、PEG8000の溶液中でDNA溶解度の急減が認められた(図7A参照)。しかしながら、調べた範囲については、溶液温度又はDNA濃度によるDNA溶解度に対する影響は存在しなかった。図7A中の結果は、検査した濃度範囲内のDNAが約4%のPEG8000によって完全に沈殿されることを示しているのに対して、実施例の部3に記載されている研究の残りでは8%のPEG8000濃度が選択され、2倍の安全係数を与えた。あるいは、実施例8に例示されている精製プロセスは、プラスミドDNAを沈殿させるために10%のPEG6000溶液を使用する。図5に示されている濃度範囲は、プラスミドDNAが、少なくとも8%のPEG6000溶液中に完全に沈殿されることを示している。従って、本発明の一実施形態において、本発明の新規下流濃縮/仕上げプロセスにおける第一の工程として、濃縮されたPEG6000溶液(例えば、50%w/v)は、(例えば、CTABによって誘導されるプラスミドDNAの選択的沈殿及び水和されたケイ酸カルシウム上への不純物の吸着など(但し、これらに限定されない)の先行する精製プロセスの結果)、10%(w/v)の最終濃度まで高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液に供給される。DNA沈殿を確実に完結させるために、プラスミドDNA含有細胞可溶化液をPEGとともに温置する時間を評価することも重要である。PEG添加後の保持時間がDNA沈殿を完結させるのに十分であることを確保するために、PEG沈殿の速度論を調べることが可能である。下記の実施例の部(実施例3)に開示されている研究において、PEGとの約5分の温置期間後にDNAの99%超が沈殿し(図8参照)、例えば、本明細書に例示されている精製プロセスに使用されているように、2時間の保持時間が十分すぎることを示している。
【0061】
下記の実施例の部に詳述されているように、米国特許出願09/875,379(上記)に開示されている従来のDNA精製プロセスは、濃縮されたプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞可溶化液(例えば、LRA後のろ液などの、ケイ酸カルシウム後のろ液)からプラスミドDNAを精製するための最終仕上げプロセスの一部として、膜限外ろ過/濃縮工程を使用した。この後に、調合緩衝液PBS中への緩衝液交換のために10倍の透析ろ過を行った(図6A参照)。この最終仕上げ工程は、約100L又はこれ以下の容量で満足できるが、これより大きな製造規模の精製プロセスは、ポンプサイズ及び流速が技術の限界に達し始めることを示した。従って、プロセスのスケールアップという問題の多い課題を回避するために、本発明は、プラスミドDNA精製方式において一般的に用いられる最終仕上げ技術(例えば、第一の限外ろ過、濃縮工程後の透析ろ過、緩衝液交換工程)を、PEG沈殿工程後に行われる、接線流ろ過下での精密ろ過を含むDNA濃縮プロセスを置き換えることに関する(図6Aを図6Bと比較されたい。)。接線流ろ過下での精密ろ過は、段階的ろ過プロセスの一要素に相当し(前記精密ろ過(及びその後の透析ろ過)は、前記プロセスの第一の部分である。)、沈殿されたDNA溶液から残留RNA及び不純物を排除するのに役立つ。第二のろ過工程(及びその後の透析ろ過)は何れも、DNAをさらに濃縮し、PEGをエタノールと置換して、微細な粉末化された形態を取得するために最終の湿潤産物を完全な真空下で乾燥できるように、DNAを脱水する。この最終濃縮/仕上げ技術には、先に開示されたプロセス(図6を参照)の限外ろ過/透析ろ過技術に比べて、より多くの工程を必要とするが、本明細書に記載されているPEG沈殿プロセスは、産物の品質を損なうことなく、又は極端に大きなポンプ及び流速の使用を必要とすることなく、大きな製造容積により容易に拡張することが可能である。重要なことに、この新しいプロセスは、さらに不純物を低下させる最終精製工程を含むが、先行するプロセスは、濃縮及び緩衝液交換のために使用されるに過ぎなかった。さらに、前記工程が無菌的に実施される限り、上記第二のろ過/透析ろ過工程中にエタノールを添加するために、DNA産物が乾燥された後の滅菌ろ過の必要性がなくなっている。重要なことに、粉末化された産物は、液体製剤中に再懸濁することも可能である。従って、本明細書に記載されている新規単位操作の利点は、おそらく2桁又はそれ以上、残留RNAレベルをさらに低下させること、過剰な流速及び大きなポンプが必要なくなること、サイクル時間が短縮すること、並びに粉末化された産物が生成されることであり、必要な保存スペースが減少し、おそらくは、より安定な産物が得られる。
【0062】
プラスミドDNAが、一旦、上述のようにPEGにより沈殿されたら、PEGによって沈殿されたプラスミドDNAスラリーを同時に濃縮する精密ろ過工程を介して、溶液から不純物が排除され、ここにおいて、前記精密ろ過工程は、接線流ろ過モード下で行われる。従って、この精密ろ過プロセスは、浸透液とともに失われた不純物を消費して、沈殿されたプラスミドDNAを保持液中に濃縮する。膜ろ過は、精製体制において広く使用されている分離技術である。膜の種類に応じて、膜ろ過は、精密ろ過又は限外ろ過として分類することが可能である。精密ろ過は、約0.1〜約10.0ミクロンの間の典型的な膜孔径を用いた、サイズ排除圧力駆動膜プロセスを表す。(1)シングルパス、デッドエンド又はダイレクトフローろ過(「DFF」)及び(2)クロスフロー又は接線流ろ過(「TFF」)という2つの主要な膜ろ過方法が存在する。DFFを使用すると、沈殿されたプラスミドDNAスラリーから排除されるべき不純物は、しばしば、沈殿されたプラスミドDNAとともに膜表面に目詰まりした状態になり得ることが見出された。TFFは、沈殿されたプラスミド溶液を再循環させることによって、この目詰まりの問題を解決し、溶液が、膜の表面まで接線方向に流れるようにする(クロスフローという用語と同義)。液体の掃引作用は、ゲル層の形成及び表面の汚損を最小限に抑えるように作用し、従って、TFFは、しばしば、DFFより速く、より効率的である。全ての接線流技術に関連する2つの重要な変数、すなわち、膜間圧力(すなわち、フィルターの孔を通じて不純物を押す力)及びクロスフロー速度(すなわち、膜を横切った可溶化液の流速)が存在する。液体は、フィルターの膜表面を横切って(クロスフロー)、試料フィードから汲み出され、保持液として、試料フィード中に戻される。締め具又はバルブによって保持液チューブに負荷される背圧は、膜孔より小さな不純物を、フィルターを通じて、ろ液(又は浸透液)画分中に誘導する膜間圧を生み出す。クロスフローは、膜の表面上に保持されているより大きな分子を掃引して、保持液としてフィードに戻す。従って、TFFを効率的に用いるための重要なポイントは、試料の最大容量が、孔の目詰まりを作り出すことなしにろ過できるように、膜間圧及びクロスフロー速度を制御することである。
【0063】
下記実施例の部は、精密ろ過の間にTFFを使用することは、沈殿されたプラスミドDNAを濃縮し(すなわち、作業容積を低下させる。)、沈殿後に溶液中に残された全ての残留RNA及び非産物可溶性物質を洗浄除去するように作用する。開示されている特定の実施例では、米国特許出願09/875,379号(上記)に定義されているLRA後のろ液は、3MのNaCl、1.0mg/mLの精製されたDNA及び幾らかの残留RNAのプラスミド含有溶液である。プラスミドDNAを沈殿させるためにPEG8000MWを使用し、最終溶液濃度が約8%(w/v)になるまで、15分にわたって、約33%(w/v)の濃縮された溶液として添加した。沈殿を2時間放置した後、0.45ミクロンの中空ファイバー膜、接線流フィルターを用いて濃縮した。膜上への搭載は、180gのDNA/膜面積m2であった。再循環速度は9L/m2/分であり、流量は、2.5L/m2/分に調節した。20倍濃縮が達成されるまで、浸透液を収集した。本発明の一実施形態において、TFF下で精密ろ過を用いて、本明細書に記載されているように、PEGによって沈殿されたDNAが濃縮された後、次いで、PEG溶液に対して沈殿を透析ろ過し、ここにおいて、前記透析ろ過緩衝液は、プラスミドDNAが透析ろ過中に沈殿された状態を確実に保つのに十分な濃度のPEG及び塩を含有する。例えば、透析ろ過緩衝液が、先行する沈殿工程中で使用されたPEGの概ね同じパーセント(例えば、上記例では、及び実施例の部3でさらに記載されているように、8%w/vPEG8000)及び約1.2MのNaClを含有する場合には、プラスミドDNAは、沈殿された状態を保つ。実験は、約100と約600mMのNaClの間の塩濃度が、50%(v/v)エタノール溶液中にDNAを沈殿させ続けるのに好ましいことを示している。従って、以下でさらに記載されている第二のろ過/透析ろ過工程が600mM付近のNaCl限界で稼働するためには、第一の透析ろ過から出る塩濃度は約1.2Mであることが好ましい。より高いNaCl濃度値を使用することが可能であるが、これは、その後のエタノール添加/脱水工程(以下でさらに記載されている。)の間に、残留塩のより大量の沈殿を引き起こし得る。あるいは、より低いNaCl濃度(例えば、100mM)を加えた緩衝液に対して、沈殿されたDNAを透析ろ過することが可能であるが、これらの条件下では、前記緩衝液のPEG濃度は、低い塩を補うように増加させるべきである。本明細書の実施例に示されているように、プラスミドDNAは、まず、約8%(w/v)の最終溶液濃度のPEG8000を用いて沈殿された場合には、上記TFF精密ろ過後に、沈殿されたDNAスラリーを透析ろ過するために、約1.2MのNaClを加えた約8%(w/v)のPEG8000溶液が好ましい。PEGは体積排除によってDNAを沈殿させ、エタノール沈殿を用いた場合のように脱水によって沈殿させるのではないので、PEGによって沈殿されたプラスミドは、混合によって、より小さな片へと解離され得る柔らかなゲル様沈殿を形成する。
【0064】
プラスミドDNAが、まず、PEGで沈殿される、本発明の最終濃縮仕上げ工程の第二のろ過/透析ろ過プロセスは、(a)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを部分的に脱水すること、(b)ろ過によって、工程(a)の脱水されたプラスミドDNA沈殿を濃縮すること、及び(c)100%エタノールに対して、沈殿されたプラスミドDNAを透析ろ過することを含む。PEGによって沈殿され、(先行するMF/透析ろ過工程を介して)濃縮されたプラスミドは、沈殿の特徴が体積排除から脱水機序へと変化するような最終エタノール濃度になるように、透析ろ過された沈殿へ、エタノール性溶液(例えば、100%又は200アルコール度数)を供給することによって脱水することが可能である。その結果、沈殿されたプラスミドDNAの物理的特性は、ゲル様物質から、より硬く、より圧縮可能な沈殿へと変化する。得られた沈殿は、多孔性の構造へと詰め込まれて、第二のろ過工程(上記工程(b))において、優れた流量と高い搭載能力をもたらす。本発明によれば、約100%(v/v)未満のエタノールを含有するエタノール性溶液中で沈殿したDNAを温置すると、沈殿した高次コイルプラスミドDNAのエタノールによる部分的脱水が生じる。従って、上記工程(a)の部分的脱水を達成するために、異なるエタノール濃度を使用することが可能であるが、約30−80%(v/v)の間の範囲内の最終エタノール濃度が好ましい。約30%(v/v)を下回る濃度は、DNAを再び溶液中に再溶解させるリスクがあるのに対して、約80%(v/v)を上回る濃度は、プラスミドDNAとともに、塩を沈殿させ始める。本発明の一実施形態において、PEGによって沈殿され、(上記先行するMF/透析ろ過工程を介して)濃縮されたプラスミドは、50%(v/v)の最終濃度まで、100%(200アルコール度数)のエタノールの添加によって脱水される。プラスミドDNA沈殿を脱水させた後、前記沈殿されたDNAスラリーは、ろ過によってさらに(例えば、約30g/Lまで)濃縮され、次いで、真空乾燥の準備のために、100%エタノールに対して透析ろ過される。本明細書に記載されている実施例において、脱水されたプラスミドDNAスラリーは、圧力ろ過及び真空乾燥(一般に、単一プレートNutscheフィルター乾燥機として知られている。)を可能とする撹拌された細胞操作下において、フィルター乾燥機中での前記第二のろ過によって濃縮される。前記系の撹拌された細胞操作は、チャンネルを通じた前記溶液の再循環によるのではなく、羽根車によって、フィルター表面上に、アルコール沈殿されたDNA溶液の流れを作り出す。本明細書に開示された第二のろ過/透析ろ過プロセスを例示するために使用されたフィルター乾燥機には、25μmのステンレス鋼メッシュフィルターが装着される。従って、新規下流濃縮/仕上げプロセスの本部分の第二のろ過工程は、撹拌された細胞モード下で、約0.1μm未満と100μmの間の孔径、好ましくは、約25μmの孔径のフィルターを有する単一プレートNutscheフィルターを使用して行われる。孔径は、ろ液及び全ての付随する不純物をフィルターに通過させながら、プラスミドDNA沈殿物をフィルター上に捕捉するためにのみ重要である。下記の実施例において、濃縮されたDNA沈殿物は、次いで、同じフィルター−乾燥機ユニット中、3.2L/m2/分に制御された流量、100%(200アルコール度数)アルコールに対して透析ろ過される。ろ過に引き続き、25〜37℃で約24時間、粉末を真空下で乾燥し、微細な産物粉末を形成する。あるいは、粉末化されたDNA産物は、選択した製剤緩衝液中に再懸濁することも可能である。この第二のろ過/透析ろ過操作は、残存する全てのPEGを溶液から除去するために、産物をさらに脱水するために、及び可能な限り多くの塩を除去するために実施される。
【0065】
従って、本発明は、(a)ポリエチレングリコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モードでの精密ろ過を含む段階的ろ過プロセスを用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。この段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過モード下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された形態に保つのに十分なPEGの十分な濃度を含有し、及び高次コイルプラスミドDNAを沈殿された形態に保つのに十分な塩を場合により含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。好ましい実施形態において、工程(b)の透析ろ過緩衝液は、約10%(w/v)のPEG6000と約1.2MのNaClを含有する。この沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過及び第一の透析ろ過工程後に、約30%と約80%(v/v)の間の最終濃度になるようにエタノールを添加することにより、工程(c)において脱水することができる。好ましい実施形態において、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過/透析ろ過保持液へのエタノールの添加により、約50%(v/v)の最終濃度まで部分的に脱水される。さらなる好ましい実施形態において、上記工程(d)及び(e)の第二のろ過及び透析ろ過は、撹拌された細胞モードで動作される単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)ステンレス鋼のメッシュ(またな均等物)スクリーンが装着されたフィルター乾燥機中で行われる。従って、本発明は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(b)接線流ろ過下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、(c)エタノールの添加により、前記濃縮された、沈殿されたDNAを部分的に脱水すること、及び(d)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記部分的に脱水された、沈殿されたDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0066】
本発明は、さらに、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを、アルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮することを含む大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。前記限外ろ過が、標準的なポンプ(例えば、ローブポンプ)を用いた工場規模の製造方法に改変される場合に、溶液相プラスミドが剪断損傷を受け易いので、産物プラスミドDNAを濃縮するために、限外ろ過ではなく、(PEG又はアルコールの何れかによる)沈殿の使用が好まれる。米国特許出願09/875,379(上記)中に記載されている、より初期の開発作業は、プラスミドDNAの乾燥粉末形態を得るためにバッチモードで沈殿溶媒としてエタノールを使用できることを示した。しかしながら、このアプローチは、沈殿後ろ過及び洗浄工程に関して一貫しておらず、洗浄グラジエントを徐々に負荷しなければ、遅いろ過速度と著しいケーキの圧縮を示す。従って、本発明の一実施形態において、本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程は、プラスミドDNAの精製された原末形態を最終的に生成するために、接線流ろ過モードでの精密ろ過によって増強されたアルコール沈殿を特徴とする。本アプローチの強化として、精密ろ過を同時に行う連続的沈殿は、バッチアルコール沈殿法に比べて、容器容積を著しく減少させ得る。
【0067】
前述されているように、細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる(PEG又はアルコールにより沈殿させることを含むが、これに限定されない。)という第一の工程を包含する本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程を実施する前に、上流精製プロセス及び先行する下流精製プロセス(上で詳しく記載されている。)の両方の結果として、前記細胞可溶化液中では高次コイルプラスミドDNAが濃縮されている。高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液が生成されたら、前記プラスミドDNA含有可溶化液は、全ての残留不純物を除去するためにさらに処理され、プラスミドDNA精製体制中の最終仕上げ工程に相当する。アルコール沈殿を含む本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程を実証するために、まず、(米国特許出願09/875,379号(上記)に記載されているように)LRA後のろ液から、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる。何らかの特定の理論に拘泥するものではないが、様々な溶媒(エタノール、イソプロパノール及びメタノール)及び塩がプラスミドDNAを沈殿する能力を調べる、本明細書の実施例の部に記されている実験は、DNA沈殿の機序に対して洞察を与える。DNAは、互いに反発する、負に帯電したリン酸基に加えて、疎水性の塩基対を含有する。ホスファートの反発が克服されれば、疎水性領域が堆積し、DNAが溶液から沈殿する。図9Bは、プラスミドの溶解度が、塩又は溶媒の何れかを添加することによって減少することを示している。溶液のイオン強度(塩濃度)は、静電的に溶解度に対して影響を与え、ここで、陽イオンは、負に帯電したホスファート基の反発を遮蔽する。当業者は、本明細書に記載されている調査及び本分野で既に開示されている調査を用いて、本発明の最終濃縮/仕上げ精製工程中の第一の工程として、プラスミドDNAをアルコールで沈殿させるときの、溶媒と塩の間の相互作用を理解する。
【0068】
上述のように、本発明の一実施形態は、(a)エタノールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本明細書の実施例の部に詳しく記載されている研究は、約30%と33%(v/v)の間のエタノール濃度及び約1.8と3.4Mの間のNaCl濃度により、0.5g/Lのプラスミド溶液中で、プラスミドDNAの溶解度の鋭い減少が起こることを示す。上述のように、当業者であれば、アルコールによるプラスミドDNA沈殿の効率において、溶液イオン強度(塩濃度)が役割を果たしていることを認識し、従って、前記プラスミドの沈殿を達成するために特定のDNA濃度のプラスミド溶液に対して十分な濃度で塩及びエタノールを与える必要があることを認識する。さらに、プラスミドDNAがその後のろ過及び洗浄工程の間に沈殿された状態を確実に保つために、前記成分の適切な濃度を維持することの重要性が、当業者によって認識される。本発明の一実施形態において、本明細書に開示されている下流濃縮/仕上げプロセス(上記工程(a))の第一の工程として、約40%(v/v)の最終濃度まで、プラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液(細胞可溶化液は、概ね約3MのNaClを含有する。)にエタノールを添加することにより、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる。
【0069】
本発明のさらなる実施形態において、プラスミドDNAがアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)によって沈殿された後に、前記沈殿されたプラスミドは、次いで、段階的ろ過プロセスを介して濃縮される。前記段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過モード下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)エタノール性溶液のエタノール濃度が高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール性溶液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。本明細書に記載されている実施例において、枝付きフラスコ及び0.2ミクロンの膜フィルター(2.1cm2のフィルター面積)を用いて、直接フローろ過の下、80%(v/v)EtOHに対して、沈殿したプラスミド溶液(約40%(v/v)エタノール及び約3M NaClで沈殿された0.86g/Lのプラスミド溶液)を透析ろ過する試みが行われた。ろ過が進行するにつれて、流動の著しい減少が顕著であり、ゲル様フィルターケーキの形成がもたらされた。大規模なバッチろ過の場合、従って、5フィートの直径の0.2ミクロンフィルター(19.6平方フィートの膜面積)を用いると、直接フロー下でのろ過は、243時間後に完了すると推定された。この非実用的なろ過時間のために、表面積の大きな接線流ろ過(「TFT(tangential flow filtration)」)膜が代替法として検討された。この目的のために、0.22μmPVDF接線流ろ過膜を用いて、約40%(v/v)エタノール及び約3MのNaClで沈殿されたプラスミドDNAを精密ろ過した。懸濁液は15mL/分で容易にろ過され、実験中、浸透液の流量は減少しない。このことは、膜表面から固体が自由に除去され、ケーキ層を形成しなかったことを示している。
【0070】
アルコールによって誘導されるプラスミド沈殿を伴う段階的ろ過プロセスの精密ろ過工程及び第一の透析ろ過工程は、残留塩及び過剰の水を溶液からともに除去するために、並びに同時に、アルコール沈殿された(例えば、エタノール沈殿された)プラスミドDNAを濃縮するために行われる。このプロセスは、浸透液とともに失われた塩及び水を消費して、沈殿されたプラスミドDNAを保持液中に濃縮する(すなわち、作業容積を減少する。)。濃縮され、沈殿されたプラスミドDNAは、次いで、透析ろ過され、同じく、塩の除去を補助する。本発明の一実施形態において、TEF精密ろ過によって濃縮された、エタノールで沈殿されたプラスミドDNAは、続いて、約60%と約100%の間のエタノールを含む溶液に対して透析ろ過される。プラスミドDNAは、塩の不存在下でさえ、80%v/vエタノール溶液中に完全に不溶性であるので、プラスミドDNAが不溶性である条件を維持しながら、懸濁液からNaClを除去するために、80%エタノールを用いた透析ろ過を使用することが可能である。次いで、沈殿されたプラスミドDNAスラリーを、第二のろ過工程によってさらに濃縮し、100%(アルコール度数200)エタノールに対して、二度目の透析ろ過を行う。本発明の一実施形態において、この第二のろ過/透析ろ過プロセスは、上述のように、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で実施される。湿潤粉末は(例えば、25〜37℃で)真空乾燥することが可能であり、得られた粉末化されたDNA産物は、選択した調合緩衝液中に再懸濁され得る。
【0071】
バッチモードでの、アルコールによって誘導されたプラスミド沈殿は、バッチ容量及び沈殿のために必要とされるエタノールの量の両方を保持するのに十分大きな容器を必要とする。しかしながら、一定の容量を維持するために精密ろ過がそこから同時に液体を除去する、より小さな中間の容器中に、フィード及びエタノールの両方を連続的に汲み入れることができるのであれば、高い溶媒比で沈殿が実施される場合でも、大きな沈殿容器はもはや必要とされない。このモードでは、溶媒廃棄液は、浸透液を継続的に蒸留し、沈殿容器へとリサイクルすることによっても最小化することが可能である。従って、本発明の一実施形態は、(a)アルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)を用いて前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含み、工程(a)及び工程(b)が、連続的な沈殿/精密ろ過条件下で行われる、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを生成する方法に関する。前記連続的沈殿/精密ろ過プロセスは、精密ろ過が同じ容器から同時に実施されて一定容積を保ちながら、撹拌された容器に、エタノールとプラスミド溶液が連続的に添加される場合に行われる。このアプローチに対する補助として、浸透液の連続的な蒸留は、濃縮されたエタノールの沈殿へのリサイクルを提供して、必要とされる溶媒容量を最小化し、より高く、より好ましいアルコール濃度での沈殿を可能とする。従って、本発明の一部として含まれる連続的な沈殿/精密ろ過プロセスは、アルコール(例えば、エタノール)の回収を含んでもよく、又は含まなくてもよい。以下の実施例の部に詳しく記載されているように、精密ろ過膜の目詰まりを避けるために、精密ろ過の開始前に、プラスミド粒子が完全に脱水できる十分な待機時間が必要である。沈殿されたプラスミドDNAが完全に脱水されることを確実にすることは、水和された大きな粒子によるチャネルの目詰まりのために引き起こされ得る圧力の増加をなくすことにも役立つ。連続的な沈殿/精密ろ過アプローチは、沈殿のために高いアルコールレベルを必要とするある種の調製に対して特に魅力的であり得る。
【0072】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている新規上流及び新規下流精製プロセスは、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から得られる高次コイルプラスミドDNAの単離のための単一のプロセス中に組み合わされる。従って、本発明は、さらに、(a)生理的緩衝液中に、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解して、宿主細胞可溶化液を形成させること、(b)宿主細胞細片を凝集することによって前記宿主細胞可溶化液を清澄化させ、高次コイルプラスミドDNAを溶液中に保持すること、(c)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び (d)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、上記工程(a)の宿主細胞可溶化液は、リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中での微生物宿主細胞の溶解によって作製される。本発明の本部分の別の実施形態において、工程(a)の宿主細胞可溶化液は、PCT国際出願PCT/US95/09749号及びPCT/US96/07083号に開示されているように、熱交換装置を通じて微生物宿主細胞を通過させることによって作製される。詳しく上述されているように、ポリエチレングリコール(PEG)は、微生物細胞からの高次コイルプラスミドDNAの下流精製のための準備において、清澄化された細胞可溶化液を作製するための、宿主細胞細片の効果的な凝集剤であることが本明細書において示されている。従って、本発明の本部分の一実施形態において、宿主細胞可溶化液は、PEGを用いて、上記工程(b)において清澄化される。PEG凝集剤は、当初の溶解緩衝液の成分であることができ、又は溶解が起こった後に、細胞可溶化液に添加することができる。上で説明されているように、宿主細胞可溶化液を清澄化するために使用されるPEG凝集剤の量は、その分子量に依存する。本発明の好ましい実施形態において、本明細書に記載されているように、宿主細胞細片を凝集するために、約3.7%(w/v)のPEG6000が使用されるが、凝集の達成に対するPEGポリマー濃度と分子量の間の密接な相互関係の故に、本明細書に開示されている全ての具体的PEG濃度及びPEG分子量は指針と解するべきであり、全体として本発明を限定すると解するべきではない。凝集用の細胞可溶化液を調製するために、前記可溶化液は、アルカリpHシフトに供されることができ、続いて、凝集の前に中和に供されることができる。アルカリpHシフトは、濃縮された塩基の添加により、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値へと上昇させることを含む。アルカリシフトされた宿主細胞可溶化液のその後の中和は、約pH7と約pH9の間の値まで、前記細胞可溶化液のpHを低下させる(すなわち、アルカリシフト前の可溶化液の概ね同じレベルまでpHを低下させる。)ことを含む。アルカリpHシフト及びその後の中和プロセスは、PEG凝集剤の添加前又は添加後の何れにおいても行い得る。従って、本発明は、(a)リゾチームを含有するSTET緩衝液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解させること、(b)アルカリpHシフト及びその後の中和へ、前記宿主細胞可溶化液を供すること、(c)PEG凝集剤で宿主細胞細片を凝集させることにより、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、(d)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、並びに(e)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の一実施形態において、溶液中に存在する高次コイルプラスミドDNAは、アルコール(例えば、40%v/vエタノール)及びPEG(例えば、10%w/vPEG6000)からなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(d)において沈殿される。さらに、上記工程(e)の濃縮工程は、段階的なろ過プロセスであり得る。前記プラスミドDNAが、まず、PEGで沈殿されるのであれば、前記段階的ろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEG及び塩を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。前記プラスミドDNAが、まず、アルコール(例えば、エタノール)で沈殿されるのであれば、前記段階的ろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程、(b)アルコール性溶液の濃度が前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿されたままに保つのに十分であるアルコール性溶液(例えば、エタノール)に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)アルコール(例えば、100%エタノール)に対する第二の透析ろ過工程と、を含む。
【0073】
この目的のために、本発明は、さらに、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記高次コイルプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに(n)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされた方法に関する。本発明の一実施形態では、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。このような事例では、高カット沈殿工程は、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0074】
本発明は、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液の十分量に宿主細胞を溶解させること、(c)宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、STET緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに (n)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスに関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。前記高カット沈殿工程は、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0075】
本発明は、さらに、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、(c)宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残りの不純物を吸着させること、(j)エタノールで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAをさらに濃縮すること、並びに(m)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスに関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。このような事例では、高カット沈殿工程は、次いで、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0076】
本発明は、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液の十分量で宿主細胞を溶解させること、(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、STET緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)エタノールで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAをさらに濃縮すること、並びに(m)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスにも関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。次いで、前記高カット沈殿工程が、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0077】
本明細書に挙げられている全ての公報は、本発明に関連して使用され得る方法及び材料を記載及び開示する目的で含められる。本明細書の記載は、以前の発明に基づいて、本発明がこのような開示の日付に先行させる権利を有しないことを認めるものと解釈すべきではない。
【0078】
添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について記載してきたが、本発明はこれらの厳密な実施形態に限定されないこと、及び添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本発明の中に様々な変化及び改変が当業者によって実施され得ることを理解すべきである。
【0079】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を以下の実施例に限定するものではない。
【実施例1】
【0080】
PEGによる宿主細胞細片の凝集
分析方法―利用される分析方法は、(i)陰イオン交換(「AEX」)HPLCアッセイ、(ii)Eゲル(Invitrogen;臭化エチジウム含有0.8%アガロース)を使用するゲル電気泳動、及び(iii)TaqmanPCRアッセイを使用するqPCRを含む。Eゲルは、ウェルあたり20μLの負荷で、60Vで50分間行った。Eゲルアッセイを行う前に、試料をエタノール沈殿(2当量)により前処理し、Eppendorf微量遠心管中で5分間遠心分離し、上清を注ぎ移し、ペレットを、5分間乾燥させた後、pH8.0の10mMトリス緩衝液中に再懸濁した。その後、前処理した試料を1×TAE緩衝液中に希釈した後、Eゲルに負荷した。qPCR分析に提供される試料にういて、同一の前処理を実施した。
【0081】
リゾチームによる溶解―まず、E.コリの可溶化研究を実施して、溶解性能に及ぼすリゾチームの影響、塩基/酸処理(pH12−13になるように塩基添加及びその後、pH約7−9なるように、酸の添加により中和)及び温度を評価した。45のOD600になるように再懸濁した細胞を使用して、細胞の可溶化を評価した。リゾチームなしでの可溶化は温度又は塩基/酸処理にかかわらず、より低い収量をもたらした。標準的なSTET緩衝液(50mMトリス−HCl、100mMのEDTA、2%(v/v)Triton(R)−X−100、8%(w/v)スクロース、pH8.2)中で、塩基/酸処理を行わずに、リゾチーム(500U/mL Ready−LyseTM;Epicentre)を用いて20℃で行った溶解は、37℃での溶解と比較したとき、より低いプラスミドDNA回収(約0.3g/LのプラスミドDNA濃度)を生じた。リゾチーム温置(500U/mL)の使用後に塩基/酸処理を行うことによって、最大収量が達成された。塩基/酸処理は、濃NaOH(5Mストック;0.25Mの最終溶液濃度)の添加、15分の温置及び酢酸(5Mストック;0.25Mの最終溶液濃度)の添加からなった。プラスミドDNA収量は、20℃又は37℃のいずれかで温置され、塩基/酸処理へ供された、OD600が45の可溶化液から、約0.5g/Lであった。
【0082】
可溶化液凝集研究―スクリーニング研究を実施して、細胞細片の沈殿に及ぼすPEG凝集の効果を特徴付けた。図1は、OD600が45の異なるE.コリ可溶化液(プラスミドDNA含有)の入った4つのNalgene瓶を示す。瓶1は、STET緩衝液(上述)中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチーム(500U/mL Ready−Lyse(商標))とともに温置することによって生成された可溶化液を含有する。瓶2は、瓶1と同じ可溶化液を含有するが、塩基/酸工程は、リゾチーム温置後に実施した(pHシフトは約8.5から約12.5まで進み、約8.5へ戻る)。3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチーム(500U/mL)とともに温置することによって、瓶3中の可溶化液を生成した。瓶4は、瓶3と同じ可溶化液を含有するが、塩基/酸工程は、リゾチーム温置後に実施した。pHのシフトされ、PEG処理された材料は、2日にわたって重力のみにより沈殿し、遠心分離中の成果の改善が得られるであろうことを示した。PEGは、細胞細片の、特に宿主細胞可溶化液の塩基/酸処理後(すなわち、pHシフトはpH約8.5からpH約12.5まで進んだ後、pH約8.5まで戻った;上述のとおり)の凝集剤として特によく作用すると判定した。実際、PEGの添加は、逆の効果をもたらし、すなわち、塩基/酸処理へ供されなかった可溶化液へ適用された場合、細片はペレットにするのがより困難となった。
【0083】
PEGにより誘導される凝集をさらに検査するため、図2に記載のように処理された様々な細胞可溶化液を50mLの遠心管へ一定分量に分けた。瓶を回転式ミキサーにおいて15分間温置した後、遠心分離した。図2に示された結果は、塩基/酸処理へ供された可溶化液へ添加されたときの、凝集剤としてのPEGの作用を示す。図3は、図2において検査された6つの試料の上清についての濁度測定結果を示す。コントロールの730NTU濁度(チューブ2)と比較した、5%の最終PEG濃度での遠心分離後の15.5NTUの溶液濁度(チューブ6)を示した。このことは、遠心分離が、仕上げのろ過を使用せずに20未満のNTU清澄に到達する清澄戦略として使用できることを示す。これらの結果は、PEGは、塩基/酸処理前又は後のいずれかで添加される場合、効果的な凝集剤であることも示す。
【0084】
細胞細片の凝集に及ぼすPEG分子量の効果―細胞細片の沈殿性能に基づいた迅速スクリーニング法を使用して、凝集に及ぼすPEGの濃度及び分子量の効果を研究した。リゾチーム(500U/mL)の存在下で細胞を温置し、上述の塩基/酸処理へ供した。様々なPEGストック溶液を可溶化液の10mL量へと混合し、生じた混合物を室温で約16時間沈殿させた。沈殿した固体の体積及び上清の濁度(OD600)を測定した(図4A)。高濃度のPEGは、公知のDNA沈殿剤であり、DNA濃度も測定した。図4Bは、PEG3000を使用した研究に関する(AEXアッセイによって測定される)DNA濃度及び上清濁度の両者を示す。細胞細片は凝集するがDNAは沈殿しないPEG3000濃度範囲があることも結果は示す。結果は、PEG3000濃度が約5%より上に増加された場合、DNAが沈殿することも示す。
【0085】
PEG6000DNA凝集実験―アルカリによりpHシフトされた後中和された可溶化液を利用して、プラスミドDNA沈殿曲線をPEG6000に関して作成した。沈殿曲線を図5に示す。このデータから、本発明の可溶化/可溶化液清澄化工程の間の約3.7%のPEG6000濃度が、宿主細胞細片の凝集の間にプラスミドDNAを沈殿させる何らかの危険性を十分に排除する(6%超のPEG6000)。
【0086】
効果的な可溶化に関する細胞スラリー濃度の上限―リゾチーム温置後の、可溶化液の清澄化のための塩基/酸処理及びPEG添加を含む、上述の新規の可溶化法を使用して可溶化できる細胞の最大濃度を測定するための研究を実施した。幾つかの細胞スラリー濃度(600nmでの光学密度OD600に関して表される。)を研究した。70の初期のOD600が最適であることを決定し、約0.7g/Lの全DNA濃度で可溶化液が清澄化された。この初期の細胞可溶化液へ塩基、酸及びPEG溶液を添加した後、そのもとの値から〜60までOD600をわずかに希釈する。
【0087】
CTAB低カット不純物沈殿―PEG6000による凝集の後、溶解性タンパク質のレベルを低下させるために(可溶化液の清澄化の前に)凝集された可溶化液へ、CTABが添加されうることがわかった。40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを0.15%(w/v)の最終濃度へ1時間かけて添加することによって、このことを実施した。図18は、最終的なCTAB濃度の関数としてBCAアッセイによって測定されたタンパク質レベルを示す。0.1%(w/v)と0.2%(w/v)との間のCTABで最小のタンパク質濃度が得られる。
【0088】
凝集手法時の連続的な遠心分離―連続的な遠心分離条件をシミュレートするため、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞可溶化液のPEG凝集を、(CTC3)Westfalia遠心分離モデルで検査した。この遠心分離モデルは、固体を除去することはできないが、より大きな生成量の遠心分離と同じ内部幾何学構造を有する。前記遠心分離は、固体に関する保持能力1Lの2Lボールを有する。(リゾチーム温置、アルカリpHシフト及びその後の中和を介して生成される)関心対象の高次コイルプラスミドDNAを含有し、PEG6000で凝集された宿主細胞可溶化液は、250mL/分で10,000×gで作動するユニットを通過した。可溶化液の約18Lが、ボールを充填する前にユニットを通過できた。固体は非常に厚く、圧縮されたが、実施の時間経過にわたってDNA濃度に損失はなかった。濁度は、最終清澄化可溶化液において30NTU未満であった。
【0089】
仕上げろ過―上述の遠心分離手法に加え、遠心分離された可溶化液から残留固体を除去するために、仕上げ深層ろ過が利用できる。例えば、セルロース又は珪藻土をベースとした深層フィルター(例、Millipore DE40又はCE50フィルター)は、約70L/m2の概算負荷で使用できる。
【実施例2】
【0090】
リゾチーム温置、塩基/酸処理及びPEG凝集後のプラスミドDNA精製
分析方法―実施例1の方法を参照してほしい。
30Lの可溶化:2,000LのE.コリ発酵工程から回収される高次コイルプラスミドDNAを含有する凍結細胞を、温かい(約35℃の)水槽中で解凍し、5インチのA310羽根車を備えた50LのLee Tank中のSTET緩衝液(50mMトリスHCl、100mMのEDTA、2%(v/v)Triton(R)X−100、8%(w/v)スクロース、pH8.2)を使用して、OD600が70になるよう希釈した。30Lの再懸濁容積を達成した。Ready−LyseTMリゾチーム(500U/mL、Epicentre)を添加し、生じた細胞スラリーを37℃で約2時間温置した。細胞スラリーをその後20℃へ冷却し、5MNaOHを60分間かけて表面下モードでゆっくり添加し、リゾチームの可溶化液のpHを約12まで増大させた。30分の保持時間の後、2.5M酢酸を60分かけて添加し、pHを8ないし9へ低下させた。RCM6(塩類溶液、150mMのNaCl)中のPEG3000(50%(w/v))をその後ゆっくり添加して、5%(w/v)のPEGの最終濃度にした。NaOH、酢酸、及びPEG3000の添加後の総可溶化液容積は、30L(約70のOD600)から35L(約60のOD600)まで増大した。PEGで凝集された可溶化液をその後、1LのJLA8.1000遠心瓶に移し、15.9kGで15分間遠心した。上清をプールし、約17NTUの濁度を有する清澄化した可溶化液を生じた。プールした清澄化可溶化液をその後、4℃で保存した。
【0091】
4.3Lの溶解:直径3インチのA310羽根車を有する7Lのジャケットのついたガラス容器を使用して、高次コイルプラスミドDNAを含有する1LのE.コリ発酵から同じ4.3Lの溶解を完了した。容器は丸底で、直径は10インチであり、液体レベルは約8インチであった。羽根車を、概ね15度の角度で配置し、400rpmの速度で作動させた。Ready−LyseTMリゾチーム(500U/mL)を添加し、pHシフト前に37℃で2.5時間温置した。その後、温度を20ないし25℃まで低下させ、60分かけて、5NNaOH(0.0150L、0.25Mの最終溶液濃度)を添加した。塩基添加後のpHは12.5であった。塩基の添加後、(羽根車の剪断によるいずれかのDNA分解を防止するのを補助するために)混合速度を250rpmまで下げ、可溶化液を高pHで30分間温置した。60分かけて、0.25Mの最終溶液濃度になるように、濃酢酸(2.5N、0.3L)を添加した。酸添加の5分間、より良好な混合のために、羽根車速度を350rpmまで上昇させた。酸添加後の最終的なpHは8.4であった。その後1時間かけて、濃縮したPEG3000(50%;0.475L)ストックを添加した。約30分間置いた後、1LのBeckman遠心瓶中に、可溶化液を一定分量に分け、15kGで15分間遠心分離した。20μm、直径4インチのステンレス鋼スクリーンを通じて、得られた上清を10LのNalgene容器中に傾斜して移し、全ての大きな粒子を捕捉した。
【0092】
結果―実施例1に記載のプローブ実験の結果のように、4.3Lの溶解手法を実施した。清澄化された可溶化液の総DNA濃度は、ゲル電気泳動アッセイによって測定されたところによれば、0.8g/Lであった。宿主ゲノムDNA濃度のqPCR分析から得られた結果を表1に示す。清澄化された可溶化液は、約2%のゲノムDNAを含有するに過ぎないことが測定され、これは、熱溶解法を使用して典型的に達成されるゲノムDNAレベルの有意な低下(約10ないし15%)である。このゲノムDNAの低下は、プラスミドDNAと比較して、E.コリゲノムDNAの低い拡散能による。E.コリゲノムDNAが約400kbであり、典型的なプラスミドDNA分子が約10kbであるため、質量の差は、劇的に異なる拡散能を引き起こす。塩基性条件下でDNAを変性させると、プラスミドDNAは迅速に再アニールできるのに対し、ゲノムDNAは再アニールできないので、細胞細片との二次的な相互作用を生じ及び総ゲノムDNAレベルの低下を生じる。
【0093】
【表1】
【0094】
溶解手法を、30L規模でも実施した。結果は、87%のピーク3を有する、総DNAの0.74g/Lの収量であり、ピーク3の百分率(%)は、2つの陰イオン交換ピークの比であり、高次コイルのDNAの百分率と相関している。この相関は、ピーク3の百分率が高ければ高いほど、高次コイルプラスミドDNAの百分率が高いことになる。表2は、溶解時の異なる工程でのAEXアッセイの結果を示す。表2の最後の列は、本明細書に記載されている上流精製プロセスで到達可能な増大されたDNA濃度を示す。さらに、清澄化可溶化液の最終濁度は、12.1NTUであった。
【0095】
【表2】
【0096】
本明細書に記載されている新規溶解は、約0.9g/LのDNA濃度及び70のOD600で実施できる。従って、この高濃度のために、タンクを実質的により小さくすることができ、熱可溶化手法と比べ、大きな処理容器を必要としない。この溶解は、従来のプラスミドDNA生産処理の濃度のほぼ2倍で実施でき、単一のタンクを利用し、E.コリ染色体DNAレベルを低下させ、及び新規のPEGをベースとした凝集工程を介する下流の固体分離を簡素化する。
【実施例3】
【0097】
最終的なDNA仕上げプロセス:
PEG沈殿及びPEG沈殿物の精密ろ過法
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/875,379号(米国公報番号US2002/0012990)に記載されている従来のDNA精製処理は、ケイ酸カルシウム(例、LRA)のろ液を、約7+mg/mLのDNAまで濃縮するために、プロセスの終了時に限外ろ過(「UF」)工程を利用し、その後、製剤緩衝液PBSへの緩衝液交換のための10×の透析ろ過を利用した(図6A参照)。この最終的な仕上げ工程は、約100L以下の容積では満足のいくものであったが、より大きな製造規模の精製処理は、ポンプサイズ及び流速が技術の限界に到達し始めることを示した。これらのプロセス規模の拡大の問題を回避するため、プラスミドDNAプロセスの最終UF工程を、PEG沈殿手法及びその後の2つの個別のろ過/透析ろ過工程と置換した(図6B参照)。接線流ろ過モードの下での微量ろ過を含む第一のろ過/透析ろ過工程は、沈殿したスラリーを濃縮し、残留RNA及び不純物を除去する。第二のろ過/透析ろ過工程は、PEGをエタノールと置換し、DNAを脱水する。最終湿潤生成物を十分な真空下で乾燥させ、DNAの微細粉末形態を得る。この工程を無菌的に実施する限り、エタノール添加により生成物を乾燥させた後にろ過滅菌する必要はない。従来の仕上げ処理は、新規のPEG沈殿処理の4工程と比較して、2つの工程を必要とするだけであったが、PEG処理は、生成物の品質に欠陥を生じたり、非常に大きなポンプ及び流速の使用を必要としたりせずに、製造容積に対して大規模に実現可能である。新規の処理には、不純物をさらに低下させるためのさらなる精製工程も含まれるのに対し、従来の処理は、プラスミドを濃縮し、緩衝液交換のために提供されるのみであった。この新規のユニット操作には、残留RNAレベルをおそらくは2対数以上まで低下させる能力があり、過剰の流速及び大きなポンプを必要とせず、周期時間を短縮し、必要な貯蔵空間を削減し、おそらくはより安定した生成物を提供する粉末化した生成物を提供する。
【0098】
PEG中のDNA溶解性(沈殿のキネティクス)―LRA後のろ液中のプラスミドDNAを完全に沈殿させる必要のあるPEG8000の濃度を、変動する温度及び総DNA濃度の下で検討した。DNA濃度は0.3mg/mLと1.0mg/mLとの間で変動させた。何故ならばこれが大規模精製手法において遭遇する値と見込まれるからである。図7Aは、PEG濃度が2%(w/v)超であるとき、PEG8000の溶液中のDNAの溶解度の急激な低下があることを示す。研究された範囲に関する溶液温度又はDNA濃度によって、DNA溶解度に何ら影響はなかった。図7Aの結果は、DNAが約4%のPEG8000によって完全に沈殿することを示すが、しかしながら、2×の安全要素を提供するため、本研究の残りにおいて8%のPEG8000濃度を選択した。
【0099】
別のサイズのポリマーが沈殿により適しているかどうかを決定するため、PEGの異なる分子量を評価した。図7Bは、研究された範囲に関して400分子量のPEG中でDNAが完全に溶解性であることを示し、ポリマーの分子量が増大するにつれ、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界的な質量は低下する。このことは、例えば、分子量3,000と10,000の間の何らかのPEGがDNAを効果的に沈殿させるのに使用でき、結果的にPEG濃度が調整されることを示す。
【0100】
PEG添加後の2時間の保持時間が、DNA沈殿を完了させるのに十分であることを確認するため、PEG沈殿のキネティクスを研究した。図8は、約5分後、DNAの99%超が沈殿することを示し、2時間の保持時間が十分すぎることを示す。
【0101】
実験手法―残留RNA及び他の溶解性不純物を除去することによってプラスミドDNAをさらに精製するため、以下の仕上げプロセスを開発し、高次コイルDNA及び幾らかの残留塩からなる最終的な粉末化した生成物を生じた。粉末化した生成物は、液体製剤中再懸濁できる。
【0102】
本発明の新規の下流濃縮/仕上げ処理を示すために使用される出発溶液は、米国特許出願第09/875,379号(上述)に記載のLRA後のろ液である。溶液の組成は、3MNaCl、1.0mg/mLの精製されたDNA及び幾らかの残留RNAである。PEG8000分子量(Fluka)を使用して、DNAを沈殿させ、3000ないし10,000の分子量範囲を検討した。LRA後のろ液をまず20℃に加温し、中程度の速度(50rpm)で撹拌バーを使用して撹拌した。最終溶液濃度が8%(w/v)になるまで、約33%(w/v)の濃縮ストック溶液としてPEG8000を15分かけて添加した。沈殿物を2時間寝かした後、Amersham Biosciences社製の0.45ミクロンの中空のファイバー膜の接線流フィルターを使用して濃縮した。膜上での負荷は、膜の面積1m2あたり180gのDNAであった。再循環速度は、9L/m2/分であり、流量を2.5L/m2/分で調節した。20×濃度に到達するまで、透過を調節し、濃縮した保持液をその後、5透析容積のための1.2MのNaCl中の8%(w/v)のPEG8000に対して透析ろ過した。この保持液を回収し、膜の4.5L/m2の容積で1.2MのNaCl中の8%(w/v)PEG8000を使用して膜を洗浄した。この洗浄を保持液産物と組み合わせることができる。200度数のエタノールの1当量の表面下の添加によって、最終的な保持液を50%(v/v)エタノールまで調整した。エタノール添加の間、沈殿したスラリーを十分に撹拌したままにし、エタノールの「ホットスポット」の形成を回避した。250ミクロンの316Lステンレス鋼(SS)フィルタースクリーンが装備されたフィルター乾燥機中で、この溶液を約30g/Lの沈殿したDNAスラリーまで濃縮した後、6透析容積のための200度数のエタノールに対して透析ろ過し、流量は3.2L/m2/分に調節した。スラリーを懸濁したままにするために、この透析ろ過の間、中程度の撹拌を使用した。フィルターの負荷は0.3kgDNA/m2であったが、この数は不十分負荷のフィルターを使用して実施した実験から得られたため、この負荷は下限値であると考慮されるべきである。ろ過後、粉末を真空下で、25ないし37℃で24時間乾燥させた。
【0103】
分析方法―260、280、及び320nmの波長での紫外線分光法によって、DNA濃度を得た。DNAは、260nmの波長での1吸収単位あたり50(μg/mL)−1(cm)−1の消衰係数を有する。純度を評価するために、260/280nmの比を算出した。1cm経路長のクォーツ微量キュベットへ試料(500μL)を負荷した。フーリエ変換赤外分光法(「FTIR」)を使用して、PEG濃度を評価した。RiboGreenアッセイによって、RNA濃度を評価した。
【0104】
PEGにより沈殿したスラリーの濃縮(TFFでの精密ろ過法を含む第一のろ過/透析ろ過工程)―PEG沈殿の後、接線流ろ過(「TFF」)モードでの精密ろ過法、続く透析ろ過を介する第一の濃縮工程(図6B参照)を使用して、生成物の作業容積を低下させ、沈殿後の溶液中に残留するいずれもの残留RNA及び非生成物可溶性物質を除去した。透析ろ過緩衝液は、透析ろ過中にプラスミドDNAが沈殿したままになっていることを確かにするために適切なPEG濃度及び塩濃度であるべきである。例えば、透析緩衝液が従来の沈殿工程において使用されているPEGのほぼ同一の百分率(例えば、上述の実施例中の8%(w/v)PEG)及び約1.2MのNaClを含有する場合、プラスミドDNAは沈殿したままである。上述の実施例条件において、NaCl濃度が1.2Mをはるかに下回って低下する場合、DNAを沈殿したままにするためにさらなるPEGが必要であり得る。実験は、100mMと600mMの間のNaClの最小の必要な塩濃度が、50%(v/v)エタノール溶液中でDNAを沈殿したままにするのに必要であることを示している。従って、上限の600mMのNaCl近くで操作するため、第一透析ろ過後の塩濃度は、少なくとも1.2MNaClである必要がある。1.2MNaClの値は、その後のエタノール添加工程のためにも十分効果がある。
【0105】
本明細書に記載のPEG沈殿、それに続く精密ろ過法/透析ろ過工程は、RNAの相当な低下を示す。表3は、上述の精製処理の1.2MのNaCl中の8%PEGに対する第一の透析ろ過工程にわたるRNAクリアランスを示す。表4は、PEG沈殿工程にわたる総クリアランスを示す。表3は、RNAのほとんどが初期の透析容積の後に除去され、第三の値まで定量可能な限界を下回ることを示す。表4は、残留RNAがほぼ2対数まで低下することを示す。この低下は、RNAの供給濃度がより高い場合、おそらくより大きくなる。最終生成物のRNA濃度は、L.O.D.近くであった。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
PEGクリアランス(第二ろ過/透析ろ過工程)―プラスミドDNAを濃縮し不純物を除去するための、第一ろ過(すなわち精密ろ過法)並びにPEG及びNaClに対する透析工程の後、200度数のエタノールを15分かけて供給することによって、50%(v/v)エタノールになるように、プラスミドDNA生成物を調整した。これにより、沈殿の特徴を容積排除から脱水機序まで変化させ、沈殿したDNAの物理的特性をゲル状の物質からより硬質のほとんど圧縮できない沈殿物へと変化させる。得られた沈殿は、第二のろ過工程での良好な流量及び高い負荷容量に至る多孔性構造へと充填する。異なるエタノール濃度が、調整工程について可能であるが、約30%(v/v)と80%(v/v)の間の範囲内のエタノール濃度が好ましい。30%の危険性を下回る濃度は、DNAを溶液へと再溶解する一方、80%を上回る濃度は、DNAとともに塩を沈殿し始める。
【0109】
第二ろ過工程後の200度数のエタノールに対する透析ろ過(図6B参照)を使用して、溶液中のいずれもの残留PEGを除去し、粉末をさらに脱水し、できるだけ多くの塩を除去した。撹拌されたセルモードのもとでのフィルター乾燥機システムでのろ過の後、200度数のエタノールに対する6×透析ろ過によって、エタノールで調整されたフィードを50mg/mLのDNA濃度まで低下させた。上述の実施例において、フィルター負荷は、0.3kg DNA/m2であったが、この負荷は、使用されたフィルターの設定は不十分負荷であるため、下限値であると考慮される。フィルターを通じての流量を、3.2L/m2/分で調節した。最終PEG濃度をFTIRによってアッセイしたとき、全ての読み取りは検出限界を下回った(0.05%PEG未満)。湿潤粉末をその後回収し、25ないし37℃で真空乾燥した。乾燥した生成物中に過剰の塩が残留する場合、硬く光沢があり、再溶解するのが非常に困難になる。
【0110】
検査されたプラスミドDNAの最終収率は、90%を超えており、約90%のDNA、5%のNaCl、残留水、残留エタノール、及びおそらくは残留PEGの純度を有する。
【実施例4】
【0111】
アルコールによるプラスミドDNA沈殿
材料及び方法―米国特許出願第09/875,379号(上述)で記載の方法により、以下の実験に使用されるプラスミドDNAを精製した後、表記の濃度になるように希釈した。エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウムをFisherから購入した。渦巻撹拌で混合した検査チューブの実験において、プラスミド溶解性データを得た。沈殿剤をプラスミド溶液へ添加した後、シリンジフィルターを使用して上清試料を採取し、ろ過した試料中のプラスミドの濃度をMolecular Devicesによる紫外線プレートリーダーで測定した。アルコールは紫外線光を吸収するため、SpeedVacを使用してアルコールを含有する全ての試料を乾燥させ、測定前に水中で再溶解した。ジクロロフルオレセインを指示薬として使用して、硝酸銀で滴定することによって、塩化ナトリウムイオン濃度を測定した。
【0112】
エタノールによるプラスミド沈殿―図9Aは、33、50及び67%のエタノールレベルで、1.8Mと3.4Mの間のNaCl供給濃度で回収されたプラスミドDNA溶解性データを示す。急激な溶解性の低下が、30%エタノールと33%エタノールの間で生じた。30%エタノールで、プラスミドは、使用される塩濃度では沈殿しなかった。33%以上のエタノールで、溶解性は、0.5g/Lの初期のプラスミド濃度に関して約99%の沈殿収率に対応した。エタノール添加前に基づいて全てのNaCl濃度を報告し、その報告は、最終溶液中のNaCl濃度が報告されたものよりも低かったことを意味する。図9Aは、1.8ないし3.4Mのエタノール添加前濃度でのプラスミド溶解性に及ぼすNaClの効果がほとんどないことを示す。しかしながら、NaClを使用しないとき、70%の過剰量のエタノール濃度が、1.0g/Lのフィード原液を使用して溶液からプラスミドを沈殿し始めるのに必要であることを観察した。従って、NaClは、明らかにプラスミド溶解性にある役割を担っている。
【0113】
これをさらに探究するため、NaClのより低い濃度を、エタノールの様々な濃度とともに使用した。結果を図9Bに要約する。点線は、沈殿が生じなかった場合の各溶液に関して存在するプラスミド濃度を表す。この値は、供給プラスミド濃度が一定のままであるため、エタノールレベルとともに変動する。明確な「塩析」効果を観察する。図9Bの結果は、ろ過したDNAから塩を洗浄する重要性を提示する。例えば、プラグタイプの洗浄がほとんどなされない場合、低塩及び低アルコールの組み合わせが生じ得、プラスミドを再溶解する。プラスミドを溶解せずに塩化ナトリウムを除去する洗浄プロトコールの開発を援助するため、様々なエタノール組成でのNaClの溶解度を測定した。このデータを図10に示す。
【0114】
イソプロパノール(「IPA」)によるプラスミド沈殿―表5は、IPA−NaCl系の限界値を検査する実験に関して集められた全ての溶解度データを要約する。アルコール添加前に基づいて、NaCl濃度を報告する。95%超の収率が観察される条件を灰色で強調する。アルコール又は塩の濃度の増大がまず、プラスミド溶解度の低下を生じたことは明白である。しかしながら、高いアルコール濃度又は塩濃度では、さらなる添加が溶解度を増大させた。
【0115】
【表5】
【0116】
図11は、2つのIPA濃度でのIPA−NaCl系に関する「塩析」及び「塩溶」の極値を示す。この図は、塩のみの効果を示すが、表5は、この効果が一定の塩濃度でのIPAに関しても達成されることを示す。これらの結果は、タンパク質沈殿に対して類似であり、そこでは静電遮蔽が「塩析」を生じるが、十分な濃度のカオトロープは「塩溶」を生じる。このことは、DNA沈殿が塩基対間の分子間疎水性相互作用の結果であることを示す。穏やかにカオトロピックのNaClを使用して得られる結果と比較して、コスモトロープである酢酸ナトリウムを有するIPA中のプラスミドの溶解度を、様々な条件で測定した。図12及び12Bは、本実験の結果を要約する。67%エタノールで、酢酸ナトリウムの存在は、プラスミドの溶解度を低下させるが、他の百分率点では、プラスミド溶解度は、NaClの等しい濃度を用いた場合と比べて、酢酸ナトリウムを用いた場合に、実際により高い。
【0117】
メタノールによるプラスミド沈殿―1ないし3MのNaClと組み合わされた33%及び50%のメタノール濃度では、プラスミドを沈殿することができなかった。これは、プロセスへの使用に関してメタノールが望ましくなくなるが、67%ではプラスミドを沈殿できた。表6は、これらの結果を表示する。「塩析」現象は、はっきりと明白である。
【0118】
【表6】
【0119】
アルコール沈殿実験の要約―3MのNaClを含有するプラスミド溶液へエタノールを添加すると、プラスミド溶解度の急激な低下が、30%と33%の間のエタノール濃度で生じる。33%以上のエタノールで、0.5g/Lのプラスミド溶液に関する溶解度をベースとした収率は、約99%である。水−エタノール混合物中で、NaClの濃度の増大は、プラスミドの溶解度を低下させる(すなわち「塩析」)。水−EPA混合物中で、塩析濃度を超える塩の添加は、溶解度を増大させる(「塩溶」)。コスモトロピックの酢酸ナトリウムを置換するとき、塩析及び塩溶の両効果は低減した。メタノールには、高濃度の塩溶液からプラスミドを沈殿させる能力があるが、50%超の溶媒レベルを必要とする。
【実施例5】
【0120】
最終的なDNA仕上げプロセス:アルコール沈殿
上述のように、TFFモードでのプラスミドDNAのPEG沈殿及び精密ろ過法は、大規模プラスミドDNA精製処理の最終濃縮/仕上げ工程において限外ろ過を置換する実行可能な選択肢である。米国特許出願第09/875,379号(上述)に記載の初期の開発作業は、エタノールが、沈殿溶媒として利用でき、プラスミドDNAの乾燥粉末形態を獲得できることを示した。しかしながら、速度はゆっくりで、ケーキの極度の圧縮は、段階的な洗浄勾配を適用するにもかかわらず明白であった。本実施例は、精密ろ過法によって増大されるアルコール沈殿を特徴とするプラスミドDNAの精製されたバルクの粉末形態を調製するための処理を記載する。本アプローチを強化するものとして、精密ろ過法と同時の連続的な沈殿が、バッチ法と比較して容器の容積を有意に低下させ得る。
【0121】
材料及び方法―実施例4の「材料及び方法」を参照してほしい。圧力ゲージ及び0.45μmシリンジフィルターつきのPellicon XL精密ろ過カートリッジを、Milliporeから購入した。真空ろ過装置及び膜をFisherから購入した。
【0122】
バルクのプラスミド粉末を調製するための段階的なろ過/透析ろ過処理―プラスミド沈殿に関して必要な条件を溶解度データが一度確立した時点で、ろ過による沈殿した粉末の回収を試行した。
【0123】
メタノールに対するその少量の容積の必要性及びIPAに対するその頑強性のため、沈殿のための最適な溶媒としてエタノールを選択した。
【0124】
沈殿したプラスミドをろ過する第一の試行において、0.86g/Lプラスミド及び3MNaClを含有するLRA後のろ液溶液200mLへエタノール134mLをゆっくり添加し、40%(v/v)エタノールの最終濃度を生じた。枝つきフラスコ及びフィルター面積が2.1cm2の0.2ミクロンの膜フィルターを使用して、ろ過を試行した。枝つきフラスコに真空20inを供給した。初期のろ過試行は、ろ過が進行するにつれ、流量の有意な低下を示し、ゲル状のフィルターケーキを形成した。使用されたフィルターは、酢酸セルロース及び硝酸セルロースからなるFisherブランドの膜であった。図13は、この懸濁液を使用する実験中に回収されるろ過データを示す。もとの40%(v/v)エタノール濃度でデータを採取し、50%(v/v)の濃度を生じるためにエタノールを添加した後に再度採取した。時間/容積(t/V)対容積(V)のプロットにおける比較的に真っ直ぐな線は、ほぼ非圧縮性のケーキを示す。50%エタノールによる有意に高いろ過速度を観察する。本データを使用して、直径5フィートのフィルター(19.6平方フィートの膜面積)を使用する大規模バッチろ過に必要な時間を概算した。算出された概算値は、40%エタノールを使用する場合には243時間であり、50%(v/v)エタノールを使用する場合には44時間である。これらの実用的でないろ過時間のため、大きな面積の接線流ろ過(「TFF」)膜を代替法として検討した。
【0125】
沈殿したプラスミドの精密ろ過法での第一の試行には、0.22μmのPVDF膜を備えたMillipore Pellicon XL TFFカートリッジを使用した。整流装置のついたガラス混合容器中で撹拌されたプラスミド溶液へエタノールをゆっくり添加することによって沈殿を達成し、40(v/v)エタノールの濃度に到達した。プラスミド溶液の初期のNaCl濃度は3Mであった。沈殿剤を2時間かけて添加し、約30分寝かした後、30mL/分の再循環流速を使用して、精密ろ過法を試行した。図14Aは、経時的に回収された透過液の容積を示す。沈殿した懸濁液中のDNAの初期濃度も、各データセットに関して示す。懸濁液は、15mL/分で簡単にろ過し、実験の時間経過にわたって透過液流量に減少はなかった。供給圧力ゲージは、ろ過を通じて約10psigの読み取りを維持した。本結果は、固体を膜表面から自由に除去し、ケーキ層を形成しなかったことを示す。初期懸濁液の容積は、各場合において500mLであった。
【0126】
スラリーを脱水してろ過及び乾燥に適するようにするため、濃縮した懸濁液をその後、エタノールの高濃度に対して透析ろ過した。この透析ろ過は、単離前及びフィルター乾燥機中での乾燥の前にどのようなNaClも除去する。プラスミドは80%(v/v)エタノール溶液中で不溶性であるため、80%(v/v)での透析ろ過を使用して、懸濁液からNaClを除去できる一方、プラスミドが不溶性である条件を維持できる。図14Bは、透析ろ過中のエタノール及び塩の濃度を示し、図9Bは、エタノール濃度が80%(v/v)に到達する前の残留する塩の少量が、再溶解からプラスミドを保護することを示す。ろ過を通じてのエタノール濃度でのNaCl溶解度も示す。沈殿した懸濁液の透析ろ過において、透過液の流量は、約15mL/分で一定のままであった。
【0127】
乾燥粉末を調製する第一試行において、約4g/LのDNAになるように濃縮した後、80%(v/v)エタノールの2つの容積に対してプラスミド懸濁液を透析した。その後、25mm直径、0.2ミクロンのPES膜での真空ろ過により、固体を回収した。一晩乾燥させた後、生成物の様相は、89.4%エタノールでのエタノール/水の共沸混合物により、塊状になった。湿潤ケーキのエタノール濃度が共沸混合物の組成よりも低かったため、水の組成は乾燥中に濃縮され、固体を塊にした。その後の調合の試行も80%(v/v)エタノールによる透析ろ過後のろ過を使用したが、その後、純粋なエタノールによる幾度ものケーキ透析ろ過洗浄を付加して、ケーキ中に残留する80%(v/v)エタノールを置換した。洗浄は、湿潤ケーキ中のエタノールレベルが乾燥前の共沸混合物組成を超過することを確実にした。粉末を、37℃で一晩真空乾燥させた。残りの材料は、乾燥した、自由に流動する白色粉末であった。水中の材料を再溶解し、260nmでの吸光度を測定すると、粉末は97%の純度であることが示された。沈殿及び精密ろ過に関する収率は93%であった。
【0128】
要約―エタノール(40ないし50%(v/v))を使用して沈殿させたプラスミドの真空ろ過は、ゲル状にもかかわらず、ほぼ非圧縮性のケーキを生じたが、ろ過速度は受容できないほどゆっくりであり、接線流ろ過の必要性を示した。沈殿したプラスミドを濃縮した後(アルコール透析ろ過により)脱水するために、接線流精密ろ過法を首尾よく使用した。全量ろ過及びアルコールの多いスラリーの洗浄は実用的となり、真空乾燥によって自由に流動する粉末を生じた。沈殿、精密ろ過法、回収及び乾燥の組み合わせた工程に関する収率は93%であり、固体は(A260による)97%純度であった。研究室規模で観察される流量に基づいて、本処理は、膜面積215平方フィートを使用して8時間で40,000Lのバッチに関して実施できた。
【実施例6】
【0129】
プラスミドDNAの連続的なアルコール沈殿及び精密ろ過法:容器及びアルコール容積の縮小
バッチモードでのプラスミド沈殿は、沈殿に必要なバッチ容積及びエタノール量の両者を保持するのに十分大きな容器を必要とする。精密ろ過法がアルコールを同時に除去して一定の容積を維持する比較的小さな中間的な容器へと、供給物及びエタノールの両者が連続的に汲み出され得る場合、大きな沈殿容器はもはや必要ではなく、高い溶媒比で沈殿が実施される場合でさえ不要である。このモードにおいて、溶媒廃棄物は、透過液を連続的に蒸留し、沈殿容器へとリサイクルすることによって最小化できる。
【0130】
エタノール回収のない連続的な沈殿/精密ろ過アプローチをまず、限外ろ過及び精密ろ過の両膜を使用して試行した。これらの実験において、エタノールを、撹拌した容器中のフィード溶液へゆっくり添加して、約40%(v/v)のアルコール濃度に到達することによって、最初の500mLの沈殿した懸濁液を調製した。粒子は、約30分かけて完全に脱水できた。ろ過面積50cm2のPellicon XL TFFカートリッジを使用して、得られた懸濁液の精密ろ過を実施した。懸濁液の容積が一度約300mLまで低下すると、供給溶液及びエタノール溶液を添加して、懸濁液の容積を一定に維持した。図15Aは、100kDのPES膜を使用する連続的な沈殿/精密ろ過に関するデータを示す。ろ過カートリッジに対する供給流速は、30mL/分であった。図が示すように、透過液約200mLを連続処理の間に回収した後、流量は、その初期値の約20%まで低下した。0.22μmカートリッジを使用する試行において、同様の流量の低下を観察した。カートリッジを経由する圧力の上昇は、添加開始直後に明らかであった。圧力のこの上昇は、観察されたバッチ精密ろ過においては存在しない。この試行は、大きさ14、内径5/16”の柔軟なMasterflexチューブを使用し、ろ過中に供給物及びエタノールを添加した。この柔軟なチューブは、バッチ沈殿に使用される細いチューブよりも大きかった。
【0131】
精密ろ過が成功裏に実施できるためには、先立って脱水時間が必要であるように考えられるため、容器とフィルターとの間の保持容積は、粒子が膜に到達する前に乾燥しきることができる時間のずれを作成することによって、ろ過速度を改善し得る。沈殿容器とフィルターとの間のチューブの長さを挿入して、30mL/分の流速で1分の時間のずれを作成することによって、この理論を研究室規模で検査した。図15Bは、容器とフィルターとの間の1分の時間のずれを挿入した試行に関するデータを示す。この試行は、40%(v/v)エタノール及び30mL/分へ設定された供給ポンプも使用したが、この場合、0.1ミクロンのPVDF膜を使用した。時間のずれを伴う処理が、200mLの透過液の容積を上回って、図15Aで見られるよりも小さな流量%の損失を示すことは明白である。しかしながら、図15Aのデータよりも初期速度はゆっくりである。時間のずれを作成するために使用されるチューブの長さが、ペリスタポンプのスリップを生じ、撹拌した容器からの流速を低下させる摩擦抵抗をもたらすことが起こり得る。カートリッジを経由した迅速な圧力の増大を、ろ過中の供給物及びエタノールの添加のために14サイズのMasterflexチューブも使用したこの試行に関して再度観察する。
【0132】
図15Cは、エタノール濃度を50%(v/v)に上昇させ、一方で図15Bと同一の時間のずれの設定を使用した実験に関するデータを示す。この試行において、透過液流量のゆっくりとした低下は、40%(v/v)エタノール試行から幾分小さくなったが、圧力の増大はさらにより劇的であった。圧力の増大により実行できなくなった30分後にのみろ過を停止した。この試行はまた、ろ過中の供給物及びエタノールの添加のために14サイズのMasterflexチューブを使用した。
【0133】
図15AないしCの迅速な圧力増大は、半連続的沈殿/精密ろ過処理の実行可能性に関する問題である。透過液の速度が受容可能である場合でさえ、望ましいスラリー濃度に到達する前にチャネル閉塞によって生じる圧力の増大は、ろ過を終結させる。チャネル閉塞は大きな水和した粒子によって生じるようである。連続処理アプローチの間により小さな粒子を作製する試行において、ろ過の間に供給物及びエタノールを添加するために、先行実験で使用された5/16”のMasterflexチューブに替えて、細いHPLCチューブを使用した。図16Aは、HPLCチューブを使用して、供給物及び40%(v/v)エタノールを時間のずれなく添加した試行に関するデータを示す。カートリッジを介する圧力の増大は、先行実験ほどには劇的ではなく、図15Aに示すように、時間のずれのない先行実験と比較して相対的な流量の低下を改善する。細いチューブを出るより高い直線速度が、プラスミド溶液へのより細かなアルコール分散を生じ、それによりアルコールの局所的な過剰を回避するようである。アルコールの組成が不均一であるため、一連の沈殿及び再水和が生じ、膜チャネルを閉塞し得る大きな粘着性のある粒子が生じる。図16Bは、50%(v/v)エタノールによる同様の試行に関するデータを示す。透過液流量のゆっくりとした低下の速度は、50%(v/v)エタノールでのより迅速な脱水により、図16Aよりも非常にゆっくりである。より高い溶媒濃度での性能の改善は、沈殿のためにエタノールを多量に使用する他の生成物に対して良好な兆しである。
【0134】
要約―プラスミド沈殿容器のサイズは、一定の容積を維持するように、同一の容器から精密ろ過を同時に実施しながら、撹拌した容器へエタノール及びプラスミド溶液を連続的に添加する連続的な処理によって縮小できる。このアプローチに付随して、透過液の連続的な蒸留は、沈殿への濃縮したエタノールのリサイクルを提供し、必要な溶媒容積を最小化し、より高くより好ましくさえあるアルコール濃度で沈殿を可能にする。精密ろ過及び限外ろ過の両膜を使用する連続沈殿/ろ過の実験運転において、バッチ沈殿後に得られる定常な透過液の流量とは対照的に、透過液の流量が低下した後、定常速度に到達した。バッチの場合とは対照的に、カートリッジを介する圧力の増大も観察した。LASENTECによるバッチの沈殿の粒子サイズのモニタリングは、たぶん凝集及び脱水が同時に起こることを反映するアルコールの添加後約15分の寝かし時間をとって、粒子の平衡サイズを増大させる必要があることを示す。新たに形成された孔を目詰まりさせる粒子は接線フィルターへ直ちに引き抜かれるので、連続処理アプローチにおいて、この寝かし時間を提供できなかったことが、流量値の低下の原因と説明し得る。連続沈殿/精密ろ過アプローチにおける容器とフィルターとの間の粒子の寝かしを可能にする1分間のホールドアップ量の追加により、透過液の流量を改善した。半連続的アプローチの間の供給物及びエタノールの添加のためのより小さな直径のチューブの使用は、カートリッジを介する圧力を低下させ、流量も改善させた。細いチューブ口を出る液体のより高い直線的な速度は、バルクの懸濁液へのエタノール及び供給物の分散を改善しているようであり、これにより迅速に脱水し膜チャネルを詰まらせない、より均一でより小さな粒子を供給する。
【実施例7】
【0135】
pHシフトされたDNA可溶化液への剪断
材料及び方法―7Lのジャケット付きガラス容器に、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有するOD600=300のE.コリ細胞2Lを懸濁して、STET緩衝液中OD600=70にした。これに、組換えリゾチーム500単位/mLを添加し、37±2℃に加温した。回収した細胞を、この可溶化緩衝液中で少なくとも2時間温置した。材料約5Lをさらなる研究のために採取し、残りの4.7Lを利用して、300フィート/分から2000フィート/分までの尖端速度を用いて、増加した剪断速度へこの可溶化液を暴露した。速度を最終的な尖端速度2000ft/分まで、増大させる前に、各尖端速度で材料を10分間保持した。最後に、尖端速度を300ft/分まで低下させ、pH12の可溶化液を一晩混合した。
【0136】
結果―本発明の上流の可溶化/可溶化液清澄化プロセスの実施(すなわち、リゾチームの可溶化/pHシフト/PEG凝集)による可能性ある分解問題を判断するため、多様な尖端速度へ暴露したpH12の可溶化液の剪断感度を測定した。表7は、DNA濃度(g/L)及び0.8%アガロースゲルによって測定された高次コイルプラスミドDNA含有量の百分率(「%SC」)を定量した結果を示す。尖端速度が2000フィート/分に増大するまで、高い総DNA濃度及び高次コイルプラスミドDNAの百分率を維持した。従って、2000フィート/分までの尖端速度ではプラスミドDNAに対する損傷を記録せず、本発明の一部として開示される可溶化技術が、可溶化容器中でDNAを剪断せずに宿主細菌細胞を可溶化するのに十分であることを示した。
【0137】
【表7】
【実施例8】
【0138】
プラスミドDNAの精製
可溶化/可溶化液の清澄化―目的のプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞を、まず、STET緩衝液(50mMトリス、100mMのEDTA、2%TritonX−100、及び8%(w/v)スクロース、〜pH8.2)中で、OD600が約70になるまで懸濁する。組換えリゾチームを1167U/mLで添加し(Epicentre technologies)、混合物をまず37±5℃にした後、2時間温置した。温置が完了した後、1時間かけて、5NNaOHを可溶化液へ添加して、最終濃度を0.24Nにし、1時間温置させた。0.5ないし1時間かけて、2.5N酢酸を添加することによって、溶液をpH8.0±1.0に戻した。可溶化液をその後、50%(w/v)スラリー(150mMのNaCl中)に1時間かけて3.7%(w/v)になるまで添加したPEG6000により凝集させた。凝集した可溶化液の清澄化を遠心分離(例、Sharples AS26遠心分離機)により実施し、凝集した細胞細片を除去する(バッチの遠心分離も選択肢の一つであるが)。遠心分離後の濁度は30NTU未満である。遠心分離後のより低い値を望む場合、仕上げのろ過を使用して、残留する細胞細片を除去するのに役立てられる。例えば、約70L/m2の負荷でMillipore DE40又はCE50デプスフィルターを有する12インチのCunoろ過ハウジングを使用して、10NTU未満の濁度に到達することができる。
【0139】
さらに、特に下流のLRAIIろ過を実施する場合には、可溶性タンパク質及びエンドトキシンを除去するために、CTAB低カット沈殿工程を約0.15%(w/v)まで実施することが可能である。これは、40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを、凝集した可溶化液へ1時間かけて添加してホストスポットろ過を防止することによって実施できる。材料はその後、上述の清澄化のために使用できる状態となる。
【0140】
CTAB沈殿―高次コイルプラスミドDNAを、清澄化した宿主細胞可溶化液から、10g/LのCelpure P300(珪藻土)の存在下で0.50%(w/v)CTABにより誘導される単一の沈殿工程により沈殿させる。40mMのNaCl中の2%(w/v)CTAB溶液を、清澄化した可溶化液へ2時間かけて添加し、ホットスポット形成を防止する。可溶化液をろ過し、フィルターケーキをまず、50mMのNaCl含有の5%IPAのバッチ容積の4分の1で洗浄する。その後、50mMのNaClのバッチ容積の10分の1で、フィルターケーキを洗浄する。CTAB及びTriton(登録商標)X−100のミセルは、DNA沈殿の原因である。遊離CTABを上回るプラスミドDNAに関するCTAB/TritonX−100ミセルの選択性の増大は、二本鎖DNAの主鎖上でのリン酸塩の電荷の配置によるミセル中でのCTABの電荷の整列による。洗浄したケーキをその後、再溶解工程へ持ち込む。
【0141】
再溶解及びケイ酸カルシウムバッチ吸着―再溶解は、CTAB沈殿したDNA含有ケーキを、撹拌したフィルタータンクから手動で取り出すことを必要とする。このケーキをその後、3MNaCl中に再懸濁し、1.2g/LのDNA濃度にする(ここで、該標的DNA濃度は、約0.3ないし約1.2g/Lの範囲であり得る。)。当初の3MNaCl負荷は、1gのDNAあたり25gのLRAIIを含有し、最小4時間温置する。この最初のLRAII温置は、段階的な処理で実施でき、ここで、1gのDNAあたり12.5gのLRAIIの初期負荷を最小4時間温置した後、1gのDNAあたり12.5gの2回目のLRAIIをさらなる時間(最小6時間)温置する。懸濁した材料をその後、濃度に関して(例、AEXアッセイ)、及びゲル電気泳動(60Vで30ないし50分間のEゲルでの泳動)によってアッセイする。この当初の温置工程の後、Eゲル電気泳動によって85%SCを下回る高次コイルの各百分率点について1gのDNAあたり0.5ないし0.75gのLRAIIを添加する。この混合物を一晩寝かせ、濃度及び高次コイルになった百分率に関してバルクを再度アッセイする。材料が85%SCを超える場合、ろ過を開始し、85%SCを超えない場合、より多くのLRAIIを添加する。
【0142】
バルク溶液中のCelpure及びLRAIIの総量に比例する膜面積を有する12インチのCunoハウジング(高さ4)を使用して、再溶解したプラスミドDNA溶液をろ過する。一般に、Celpure又はLRAII1gは、容積〜4mLまでを必要とする。LRA及びCelpureの総量に基づいて、Millipore CE50深層ろ過カートリッジ(12in円、6セル)の適切な数を、上述のCunoフィルターハウジングにおいて利用する。ろ過が完了した後、3MNaClの十分量を負荷して、ハウジングを充填し、30分間再循環させる。この材料を保存し、洗浄を反復する。これらの洗浄工程は、Celpure及びLRAIIケーキに伴われているプラスミドDNAの大きな百分率を回収するためである。第二のLRAII処理のために、材料をその後、別のタンクの中に置く。
【0143】
第二のケイ酸カルシウムバッチ吸着―第二のLRAII温置を実施し、残留するE.コリ宿主細胞DNAの実質的な除去を確実にする。1gのDNAあたり約10gのLRAIIをプラスミド溶液へ添加し、4時間温置する。その後、ゲル電気泳動(Eゲルで60Vで30ないし50分間)により溶液をアッセイし、高次コイルプラスミドDNA純度が90%超に到達するまで2時間ごとに、1gのDNAあたり2gでLRAIIを負荷し、その後の各添加の前にアッセイする。この第二のLRAII段階が、単一の30”の0.45μmのDuraporeフィルターを保持する1ないし2のMillipore Series 2000ハウジングを利用する場合、ろ過は、適切なケーキ容量を有し、下流工程への水和したケイ酸カルシウムのバイパスを防止する。
【0144】
PEGに基づく沈殿及びエタノール粉末化―ポリエチレングリコール(PEG)の添加による沈殿工程後の2つの個別のろ過/透析ろ過工程は、DNA精製処理における最後の仕上げ工程である。50%(w/v)のPEG6000溶液を第二のLRAIIろ液へ添加して、最終濃度を10%(w/v)にし、1.2MのNaClの最終的な塩濃度に調製した。中空ファイバーのMF膜工程を使用して第一のろ過工程を実施し、沈殿したスラリーを濃縮し、残留RNA及び不純物を清澄化する。その後、5透析容積のための1.2MのNaCl中の10%(w/v)PEG6000に対して、濃縮したスラリーを透析ろ過する。撹拌したフィルター容器をベースとした第二ろ過工程を使用して、その後、保持液をさらに濃縮する。まず、200度数のエタノール1当量を30分かけて表面下で添加することによって、50%(v/v)エタノールになるように保持液を調整し、PEGをエタノールと置換し、DNAを脱水する。その後、25μmの孔サイズのステンレス鋼スクリーンを使用してユニットの中で溶液を濃縮し、6透析容積のための200度数のエタノールに対して透析ろ過する。最終的なエタノール沈殿した生成物を真空乾燥して、DNAの微細な粉末形態を得る。粉末バルクが一度生じると、材料は再懸濁できる(例、5ないし9g/L)。1500mL/分/m2の流速で約400g/m2の負荷でMillipore Millipak 200フィルター(0.22μm、PVDF)を使用して、再懸濁したDNA溶液のろ過滅菌を実施できる。
【0145】
代表的な処理の収量/不純物(除去)データ―2つのDNAプラスミドであるプラスミドA及びプラスミドBに関する上述の処理の収量は、プラスミド17.2g及び19.0gであった(図17A及びB参照)。図17Aは、両生産運転の高次コイルプラスミドDNAの総収量を示し、図17Bは、処理の時間経過にわたる重要な不純物レベルを示す。本アッセイ結果は、全ての重要な不純物が、アッセイの定量化レベルを下回って低下したことを示す。
【実施例9】
【0146】
細菌細胞採集手法
採集工程の目的は、精製において使用するために、目的の生体分子(高次コイルプラスミドDNAを含むが、これに限定されるわけではない。)を含有する宿主細胞(細菌細胞、例えば、E.コリを含むが、これに限定されるわけではない。)を濃縮し、洗浄することである。この実施例は、目的の高次コイルプラスミドDNAを保持するE.コリ宿主細胞の回収を記載する。
【0147】
500MWCO(UFP−500−E−75)の6×3.7m2のGE Healthcare(旧A/G Tech)の、平行に置かれた中空ファイバーカートリッジ(合計22.2m2)を操作する。重要なパラメータは、膜通過圧力(「TMP」)、入り口圧、交差流速、濃縮因子及び流量である。回収時の培養物の光学密度は80ないし100のOD600の範囲に及び容積生産性は約1gプラスミド/Lである。回収時に、発酵槽ブロスを10℃未満に冷却する。精密ろ過及び分散を通じて、保持容器及び/又は保持回線の冷却によってこの温度を維持する。調節バルブによって保持液背圧を制御することによってTMPを初期的に10pisgに維持することによって、採集工程を操作する。交差流速を50mL/分/ファイバー(22.2m2には300LPM)に設定する。バッチが濃縮されると、供給圧力は増大する。供給圧力が25psig(TMP〜15psig)に到達すると、〜25psigの供給圧力を維持する必要のため、交差流速は低下する。濃縮因子は、OD600測定結果と相関する乾燥細胞重量(DCW)に基づく。300の最終的なOD600は、精製のための目標である。開発運転において得られた80ないし100の当初培養物のOD600に基づいて、3ないし4倍の濃縮因子が必要である。
【0148】
目的の濃縮因子に到達するまで、又は(多量のバイオマス培養の場合)有意な流動性低下を観察されるまで、濃縮を実施する。流動性レベル限界値は、濃縮の終了のかぎとするために定義できる。濃縮の終了時に、リン酸ナトリウム溶液(RCM635―0.12MのNaCl、5mM二塩基性リン酸ナトリウム(無水Na2HPO4)、1mM塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO41水和物))の約4透析容積を使用して、透析ろ過を実施し、濃縮した細胞を洗浄する。濃縮時に目的の濃縮因子に到達しなかった場合、透析ろ過終了時にバッチをさらに濃縮する。濃縮及び透析ろ過は、ブロスのタンクへの供給速度を調整して透過液の速度を補正することによって、保持液容器中で定常液体レベルを維持しながら、供給及び滲出モードで実施すべきである。
【0149】
透析ろ過の終了時において、細胞ペーストは、分配の間、10℃未満にて十分に混合された状態で維持されるべきである。一定分量を、2LのNalgene瓶又は8LのStedimバッグのいずれかに分配し、その後の保存のために−60℃未満に凍結する。ドライアイス槽又は直立型冷凍庫中での静止凍結が、許容される凍結方法である。
【0150】
宿主細胞の回収に使用される処理装置の仕様の例を表8に列挙する。この例において、保持液容器と命名される600L容器は、処理できる材料の量を制限する。3×の最小濃縮因子を仮定すると、培養物約1200Lの最適な処理容積を回収し得る。この容積は、透析ろ過前の濃縮されたペーストの任意の希釈のための、タンク中における十分な上部空き高を確保にする。1200Lの培養物容積による膜への負荷は、54L/m2であろう。
【0151】
【表8】
【0152】
バッチのための濃縮因子はブロス光学密度のプロセス中の測定および濃縮後の約300のOD600の目的を基礎に算出されることが推奨される。この例を使用する場合、1200Lの当初培養物容積は、下流処理のための細胞ペースト300L超を生成する。バッチをまず少なくとも3倍に(又は多量のバイオマス培養物の場合、流量低下を観察するまで)濃縮した後、リン酸ナトリウム溶液の4透析容積で透析ろ過し、最終的に300のOD600の最終標的まで濃縮する。緩衝液最小1600Lが透析ろ過に必要であり、さらなる400Lが使用前の膜調整に必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、2日間にわたって沈降させたE.コリ細胞可溶化液を示している。ボトル1中の可溶化液は、STET緩衝液(本明細書中に定義されている。)中に細胞を再懸濁し、20℃にてリゾチームと共に(500U/mL)温置することによって作製された。ボトル2中の可溶化液は、リゾチーム温置後に、pH12までpHを上昇させるために第一の塩基が添加され、次いで、pHを中和するために酸が添加されたことを除き、ボトル1中の可溶化液と同様である。ボトル3中の可溶化液は、3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃にてリゾチームと共に温置することによって作製された。ボトル4の可溶化液は、アルカリpHシフトを誘導し、続いて中和を誘導するために、リゾチーム温置後に、ボトル2について記載されているとおりに塩基及び酸を順次添加したことを除き、ボトル3中の可溶化液と同様である。この図は、アルカリ可溶化液由来の細胞細片に対する凝集剤としてのPEGの可能性を示している。
【図2】図2は、45の当初OD600を有する様々な細胞可溶化液を含有し、及び16,000×gで5分間遠心された50mLの遠心管を示している。チューブ1中の可溶化液は、STET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームと共に温置することによって作製された。リゾチーム温置後にアルカリpHシフト及びその後の中和(図1に対して上述されているとおり。)に供されたことを除き、チューブ2中の可溶化液はチューブ1中の可溶化液と同じである。チューブ3中の可溶化液は、3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームと共に温置することによって作製された。リゾチーム温置後にアルカリpHシフト及びその後の中和に供されたことを除き、チューブ4中の可溶化液はチューブ3中の可溶化液と同じである。アルカリpHシフト/中和工程後にPEGが添加されたことを除き、チューブ5中の可溶化液はチューブ2中の可溶化液と同じである。アルカリpHシフト/中和工程後に5%のPEG3000の最終濃度が添加されたことを除き、チューブ6中の可溶化液はチューブ2中の可溶化液と同じである。
【図3】図3は、図2に示されている可溶化液についての濁度測定を示す。Lys=リゾチーム;PS=pHシフト;PEG STET=3%PEG3000+STET。
【図4】図4A及び4Bは、E.コリ細胞細片の凝集に対するPEG分子量の効果を示している。リゾチームの存在下で細胞を温置し、アルカリpHシフト/酸中和に供した。異なる分子量(PEG400−6000)のPEG原溶液を、可溶化液の10mL分取試料に添加して、約1.0%と15.0%の間の最終PEG濃度を達成する。得られた混合物を、約16時間、室温で沈降させた後、OD600測定を行った(図4A)。図4Bは、PEG3000のみを用いた検討について、OD600依存性及び溶液中のDNA濃度のプロットを示している。
【図5】図5は、リゾチーム/pHシフトされた可溶化液中のPEG6000の漸増濃度(0−8%w/v)に対するプラスミドDNA沈殿曲線を示している。
【図6】図6A及び6Bは、大規模なプラスミドDNA精製プロセスの2つの最終濃縮/仕上げ操作の一般的なプロセスフロー図を比較している。
【図7】図7A及び7Bは、異なるPEG溶液中でのDNAの溶解度を図示している。図7Aは、PEG濃度が2%w/v超である場合に、PEG8000の溶液中のDNAの溶解度が急減することを示していて、調べた範囲について溶液の温度又はDNA濃度に起因するDNA溶解度への影響は存在しない。図7Bは、研究した範囲について、DNAが400MW PEG中で完全に可溶性であるが、分子量が増加するにつれて、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界質量が減少することを示している。
【図8】図8は、PEG8000溶液中でのDNA沈殿の速度論を図示している。図8は、約5分後に、当初DNAの99%超が沈殿することを示している。
【図9】図9A及び9Bは、プラスミドDNAの水−エタノール混合物中溶解度データを示している。NaClの濃度は、エタノールを除いた濃度に基づいている。図9Aは、1.8〜3.4MのNaCl濃度は、プラスミドの溶解度に対して殆ど影響がないことを示している。図9Bでは、エタノールの様々な濃度を用いてNaClのより低濃度を研究した。破線は、沈殿が起こらないときに、各溶液について存在するであろうプラスミド濃度を表している。
【図10】図10は、様々なエタノール濃度でのNaClの溶解度を示している。
【図11】図11は、2つのIPA濃度でのIPA−NaCl系についての「塩析」及び「塩溶」の極限を表している。
【図12】図12A及び12Bは、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウム塩を加えた、25%(A)又は67%(B)IPA中でのプラスミド溶解度を図示している。
【図13】図13は、3MのNaCl溶液から沈殿されたプラスミドDNAについてのデッドエンドろ過データのVmaxプロットを示している(0.22ミクロンセルロース膜、2.1cm2ろ過面積、20インチHg真空)。このろ過データは、まず、最初の40%エタノール濃度から得られ、次いで、再び、50%の濃度を得るためにエタノールを添加した後に得られた。t/V対Vプロット中の相対的にまっすぐな線は、ほぼ非圧縮性のケーキを示している。50%エタノールを用いると、有意により高いろ過速度が観察される。
【図14】図14Aは、沈殿されたプラスミドの精密ろ過の間に経時的に収集された透過液の容量を示している。沈殿された懸濁液中のDNAの当初濃度が、各データセットについて示されており、当初の懸濁液容量は500mLであった。懸濁液は15mL/分で容易にろ過され、実験中、透過液の流量は減少せず、ろ過の全体を通じて、10psigの圧力測定値を維持した。図14Bは、80%v/vエタノールを加えた沈殿されたプラスミド懸濁液の透析ろ過中のエタノール及びNaCl濃度を示している。
【図15】図15A−Cは、ろ過時にフィード及びエタノールの添加をするためのMasterflexサイズ14(5/16’’)導管を用いる接線流ろ過(「TFF」)条件下での精密ろ過の間に試みた3つの連続的アルコール沈殿を示している。図15Aは、100kDのPES膜を使用し、40%v/vエタノールで沈殿させる連続的沈殿/精密ろ過研究から得られた結果を示している。ろ過カートリッジへのフィード流速は、約30mL/分であった。浸透液の約200mLを集めた後、流量は、その初期値の約20%まで減少した。図15Bは、0.1ミクロンのPVDF膜を使用し、40%v/vエタノールで沈殿させた連続的沈殿/精密ろ過研究から得られた結果を示している。フィード流速は、同じく約30mL/分であったが、容器とフィルターの間に1分のラグタイムを導入した。図15Cは、図15B中の実験と同様に行われた実験(0.1μmのPVDF膜、1分のラグタイム)から得られた結果を示しているが、プラスミドDNAを沈殿させるために、40%のエタノールではなく50%エタノールを使用した。浸透液流量の減少は、40%v/vエタノール実験(図15B)から僅かに低下し、圧力の増加により、30分を超えてろ過実験の実験を継続することは不可能であった。
【図16】図16A及び16Bは、ろ過時にフィード及びエタノールを添加するためのHPLC導管を用いるTFF下での精密ろ過を用いて試みた2つの連続的アルコール沈殿を示している。図16Aは、40%エタノール濃度を使用し、ラグタイムを用いない連続的沈殿/精密ろ過を示している。
【図17】図17A及び17Bは、実施例8に記載されているプラスミドDNA精製プロセスを用いた2つの精製操作のプロセス収率(A)及び不純物レベル(B)を示している。各プラスミドの精製は、OD600=70の75−80L、17.5−18.6Lの発酵から得られたE.コリ可溶化液を用いて開始した。図17Aは、高次コイルプラスミドDNAのグラムで表した量(「scDNA(g)」)及び精製プロセスの様々な段階における高次コイルDNAのパーセント(「%scDNA」)を比較している。細胞可溶化液(「Lys」);宿主細胞細片の凝集後の清澄化された可溶化液(「CL」);第一のケイ酸カルシウムバッチ吸着及びろ過後のDNAスラリー(「LRA1F」)、第二のケイ酸カルシウムバッチ吸着及びろ過後のDNAスラリー(「LRA2F」)、並びにPEG沈殿及びその後の精密ろ過工程の間に粉末化された、再懸濁されたDNA(「FRB」)。図17Bは、図17Aに記載されている精製プロセスの同じ段階でのエンドトキシン(logEU/mL)、タンパク質(%)及びRNA(%)の量を比較している。
【図18】図18は、PEG6000で凝集された細胞可溶化液中の、最終CTAB濃度の関数としてのタンパク質レベル(BCAアッセイによって測定)を示しており、ここで、CTABは、40mMのNaCl中に2%(w/v)CTABを添加することによって、可溶化液中に導入される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年1月31日に出願された米国仮出願60/648,670号の利益を主張し、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、プラスミドDNA精製プロセスにおいて一般的なツーコア単位操作の代替法を包含する、大規模発酵方式を含む製造プロセスから臨床等級のプラスミドDNAを単離する方法に関する。本明細書に開示されている新規上流及び下流精製プロセスは、製造コストの低下とプロセスの頑強性の増加をもたらす。本発明の一部として記載されている新規上流精製プロセスは、まず、プラスミドDNAを含有する宿主細胞可溶化液が生成され、次いで、宿主細胞細片の凝集によって清澄化される2段階溶解/可溶化液清澄化プロセスを含む。本発明の一部として記載されている新規下流精製プロセスは、プラスミドDNAが濃縮された宿主細胞可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿と、及び接線流ろ過モード下での前記沈殿されたDNAの精密ろ過を包含する。本明細書に開示された精製プロセスの一方又は両方は、プラスミドDNA精製技術と関連する本分野で公知のさらなる精製工程と組み合わせて使用し得る。
【背景技術】
【0003】
ポリヌクレオチドワクチンは、特定の疾病に対して防御免疫を誘導するための画期的アプローチであり、中和抗体を生成するとともに、より好ましい細胞媒介性免疫反応を活性化する(Montgomery,D.L.et al.,1993,Cell Biol.169:244−247;Ulmer,J.B.et al.,1993,Science 259:1745−1749)。目的の抗原をコードする遺伝子と哺乳動物細胞中で活性なプロモーターとを含むプラスミドDNAが身体に投与され、筋肉細胞によって内部に取り込まれる。抗原DNAは転写及び翻訳され、発現されたタンパク質は、T細胞提示のために細胞表面へと輸送される。疾病モデルでのDNAワクチンの前臨床免疫原性と有効性は、多数の感染性疾患に対して実証されている(総説として、Gurunathan S.et al.,2000,Ann.Rev.Immunol.18:927−974を参照。)。プラスミドDNAは、さらに、機能的遺伝子の体内への投与、標的細胞への前記遺伝子の送達及び疾病状態を選択的に調節するための治療用産物の発現を包含する遺伝子治療処置について是認されている。
【0004】
従って、遺伝子治療は、遺伝的欠陥の予防、治療又は治癒に対する代替法となる。プラスミドDNAをベースとした多くの遺伝子治療臨床試験が開始されている(総説として、Mountain,A.,2000,TIBTECH 18:119−128;and Ferber,D.,2001,Science 294:1638−1642を参照)。
【0005】
医薬等級のプラスミドDNAの大量の製造及び精製は、ポリヌクレオチドワクチン及び遺伝子治療プロトコールの両者の適用性にとって極めて重要である。予防又は治療計画の一環として、疾病を撲滅するためにDNAワクチン又は遺伝子治療処置を使用する可能性があるヒト使用者の数は極めて多く、臨床等級プラスミドDNAに対する大きな需要をもたらしている。従って、DNAワクチンと遺伝子治療処置の選択肢が何れも提供しなければならない利点を完全に開発し、及び活用するために、高収率のプラスミドDNA産生プロセス及び精製プロセスが必要である(Shamlou,P.A.,2003,Biotechnol.Appl.Biochem.77:207−218)。小規模プラスミドDNA精製法に関する従来の調査にも関わらず、臨床等級プラスミドDNAの製造及び精製の規模を拡大することには問題が存在することが明らかとなっている(Prazeres,D.M.F.et al.,1999,TlBTECH 17:169−174)。さらに、画期的な大規模製造プロセスは、最適化と市場化への早さに対する要求及び必要性に対する経済的な関心との釣り合いをとらなければならない(Shamlou,2003,上記)。本発明は、生産コストを低下させ、プロセスの頑強性を増加させるプラスミドDNAの精製のための、高度に生産性があり、拡張可能であり、及び再現性のあるプロセスを開示する。本プロセスは、宿主細胞細片のポリマー凝集を含む新しい溶解及び可溶化液清澄化手法を開示する。この新規溶解及び凝集手法は、(ポリエチレングリコール又はアルコールを使用する)プラスミドDNAの沈殿と、及び接線流ろ過モード下でのその後の精密ろ過を包含する新規下流仕上げ工程と組み合わせ得る。
【0006】
増殖培地から細菌細胞を単離するために、化学的凝集が一般に使用され、遠心より安価な代替法となっている(例えば、Lee,J.and C.V.Viswanathan,1974,Lab.Pract.23:297−298;Cumming,R.H.,et al.,1996,Bioseparation 6:17−23)。凝集の機序は複雑であり、温度、イオン環境、生理的熟成、凝集剤、表面剪断及び凝集されるべき材料など多くの変化要因に依存する(McGregor,W.C.andR.K.Finn,1969,Biotechnol.Bioeng.11:127−138)。細菌細胞細片に関しては、数個の研究が本機序について分析しているに過ぎない。PerssonI.−L.及びB.Lindman(“Flocculation of Cell Debris for Improved Separation by Centrifugation,”Flocculation in Biotechnology and Separation Systems,Ed.Y.A.Attia,Amsterdam:Elsevier,1987,429−439)は、研究室及び予備生産研究でE.コリ細胞細片を凝集させるために、陽イオン性多価電解質、キトサン及びポリエチレンイミンの組み合わせを使用した。正に帯電したポリマー粒子は、E.コリ細胞細片を凝集させるためにも使用されている(Kim,C.W.,et al.,“Removal of Cell and Cell Debris by Electrostatic Adsorption of Positively Charged Polymeric Particles”,Flocculation in Biotechnology and Separation Systems,Ed.Y.A.Attia,Amsterdam:Elsevier,1987,429−439)。しかしながら、ポリマー凝集剤を使用して、拡張可能なプロセスの設計のために清澄化された細菌可溶化液を生成可能であることは認識されていなかった。
【0007】
微生物細胞発酵から臨床等級プラスミドDNAを精製する際の最後の工程は、先行する上流精製工程から持ち込まれた、宿主細胞由来の全ての残留不純物及び/又はプロセス夾雑物を除去すること、並びに最終の産物を濃縮すること及び緩衝液交換を包含する。本発明は、プラスミドDNA精製を完結させるための最終仕上げ操作において、接線流ろ過モードでの精密ろ過と組み合わせて、ポリエチレングリコール(例えば、Lis,J.T.and R.Schleif,1975,Nucleic Acids Res.2:383−389;Sadhu,C.and L.Gedamu,1988,Biotechniqms 6:20−21;Yeung,M.C.and A.S.Lau,1993,Biotechniques 15:381−382;and Horn,N.A.et al.,1995,Hum.Gene Ther.6:565−573を参照)又はアルコール(例えば、Wallace,D.M.,“Precipitation of Nucleic Acids,”Methods in Enzymology:Guide to Molecular Cloning Techniques,Eds.S.L.Berger and A.R.Kimmel,1987,41−48;Serghini,M.A.et al.,1989,Nucleic Acids Res.17:3604参照)を用いてDNAを沈殿させるという周知の方法を使用する。本プロセスは、最終仕上げプロセスにおいて一般に使用されている限外ろ過操作に必要とされる高い再循環速度及び大きな膜面積を省略する。
【0008】
1996年10月1日に、Marquet,M.らに対して発行された米国特許第5,561,064号は、医薬等級プラスミドDNAの精製中に使用された分画的ポリエチレングリコール(「PEG」)沈殿戦略を開示する。重要なことに、第一のPEG沈殿工程は、清澄化された可溶化液の生産後及び陰イオン交換クロマトグラフィーのサイズ排除前に実施する。
【0009】
1998年1月13日にHorn,N.らに発行された米国特許第5,707,812号は、クロマトグラフィーマトリックス(プラスミドDNAは、その後、クロマトグラフィーマトリックスから、PEGを含有する緩衝液中に溶出される。)へのプラスミドDNAの結合を増強させるための縮合剤としてPEGを使用することを開示している。
【発明の開示】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、微生物細胞から医薬等級のプラスミドDNAを単離する方法に関し、本方法は、製造プロセスからのプラスミドDNAの精製に代わる要素となり、大規模発酵方式を含み、製造コストの低下とプロセスの頑強性の増加をもたらす。本発明は、さらに、新規上流(すなわち、宿主細胞可溶化液の清澄化の前及び宿主細胞可溶化液の清澄化を含む。)及び新規下流(すなわち、可溶化液清澄化後)精製工程を含むプラスミドDNA精製プロセスにおいて一般的なツーコア単位操作に関する。より具体的には、本明細書に開示されている上流精製工程は、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞からまず細胞可溶化液が生成され、次いで、宿主細胞細片を除去するための凝集によって前記細胞可溶化液が清澄化される2つの部分からなる溶解/可溶化液清澄化操作を含む。本発明の新規下流精製方プロセスは、残留不純物を除去するために上流及び先行する下流精製工程を介して高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液をまず沈殿させた後、接線流ろ過モード下での精密ろ過に供される最終濃縮/仕上げ操作を包含する。これらの工程は、本分野で公知のさらなる精製工程とさらに組み合わせて使用することができ、及び/又は、好ましくはDNAプラスミド精製技術に関連する本分野で公知の他の方法と組み合わせて、上記工程の少なくとも1つが省略される。
【0011】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている方法は、細菌細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルスを含む(但し、これらに限定されない。)微生物細胞(エシェリヒア・コリ(「E.コリ」)が好ましい微生物宿主である。)からの臨床等級DNAプラスミドの精製を可能とする。本明細書に記載されている方法によって精製された臨床等級プラスミドDNAは、ワクチンとして又は遺伝子治療ビヒクルとして、ヒトに投与するのに極めて有用である。本発明の方法は、臨床等級DNAプラスミド精製の微生物細胞からの精製について具体的に述べられているが、前記方法の適用は、微生物細胞からの精製に限定されない。従って、本発明は、さらに、本明細書に開示されている新規工程の1つ又はそれ以上を用いて、哺乳動物細胞から精製された臨床等級プラスミドDNAの単離並びに様々な宿主細胞(例えば、微生物又は哺乳動物)からの別の生物分子(例えば、タンパク質)の単離及び精製に関する。
【0012】
本発明は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。宿主微生物細胞の溶解は、リゾチームの存在下又は不存在下で行うことができる。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片は、ポリエチレングリコール(「PEG」)で凝集される。細胞可溶化液を清澄化させるために使用されるPEGを含む(これに限定されない。)凝集剤は、溶解緩衝液(例えば、標準的なSTET緩衝液)の成分として含めることができ、又は溶解が起こった後に、細胞可溶化液に添加することができる。凝集された宿主細胞細片は、例えば、沈降及びデカント又は遠心法(連続的遠心を含むが、これに限定されない。)によって宿主細胞可溶化液から除去することが可能であり、清澄化された細胞可溶化液をもたらす。凝集された細胞細片が除去された後、清澄化された細胞可溶化液中の高次コイルプラスミドDNAは、さらに、下流の精製プロセスによって、残留夾雑物から精製される。従って、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されている新規上流精製プロセスを用いて、高次コイルプラスミドDNAを含有する清澄化された宿主細胞可溶化液を生成する方法に関する。
【0013】
本発明は、さらに、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本明細書に記載されているアルカリpHシフト及びその後の中和工程は、凝集操作のために宿主細胞可溶化液を調製するのに役立つが、前記pHシフトは、前記可溶化液への凝集剤の添加前又は添加後の何れにおいても行うことが可能である。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、濃縮された塩基溶液の添加により、アルカリ値(例えば、約pH12−13)へとシフトされ、可溶性宿主細胞染色体DNAの変性を可能とする。アルカリシフトされた細胞可溶化液は、次いで、濃縮された酸溶液の添加により、概ね、最初の溶解緩衝液のpHまで中和され、好ましくは、約8−9の間のpHを有する細胞可溶化液をもたらす。従って、本発明の一実施形態は、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)塩基の添加により前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることによって、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、細胞がその中に溶解された生理的緩衝液のpHまで中和すること、及び(d)凝集剤(PEGを含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされ、中和された細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0014】
本発明の上流溶解及び可溶化液清澄化技術の後に、(i)CTABを含む(これに限定されない。)陽イオン性界面活性剤を用いた、清澄化された可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿、(ii)塩溶液によるプラスミドの溶解、(iii)水和したケイ酸カルシウム上への残留不純物の吸着、及び(iv)臨床等級プラスミド調製物の最終調合に先立つ、ポリエチレングリコール又はアルコールによる精製されたプラスミドDNAの沈殿、を含む(これらに限定されない。)多数の下流精製プロセスが続くことが可能である。
【0015】
本発明は、さらに、大規模発酵方式から臨床等級プラスミドDNAを単離するための新規下流精製プロセスに関し、粉末化されたプラスミドDNA産物をもたらす最終濃縮/仕上げ工程に相当する。本発明の下流精製プロセスは、先行する精製工程の結果、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液から残留不純物を除去するように作用する。従って、本発明は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。工程(a)における高次コイルプラスミドDNAの沈殿は、ポリエチレングリコール又はアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)を用いた周知の方法によって行い得る。工程(b)の精密ろ過プロセスは、プラスミドDNA精製プロセスの最終濃縮/緩衝液交換操作において一般に使用されている限外ろ過操作を直接置換することができ、再循環速度、フィルター膜面積及び総バッチ容積を最小限に抑える。
【0016】
本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、本明細書に開示されている新規下流濃縮/仕上げ精製プロセスにおける第一の工程として、濃縮され、清澄化された細胞可溶化液(すなわち、上流及び先行する下流精製プロセスにより、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された宿主細胞可溶化液)からPEGを用いて沈殿される。前記沈殿されたプラスミドDNAは、次いで、接線流ろ過モード下で稼働される精密ろ過に供せられる。従って、本発明の一実施形態は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の精密ろ過プロセスは、段階的なろ過プロセスの一環であり得る。従って、本発明の一実施形態において、上記PEG沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過及びその後の透析ろ過が沈殿されたプラスミドDNAスラリーを濃縮し、並びに残留RNA及び不純物を清澄化する第一のろ過工程を含む段階的ろ過プロセスを介して濃縮される。第二のろ過工程は、DNA沈殿内のPEGをエタノールと置き換え、さらに、プラスミドDNAを濃縮し、微細な粉末化された形態を得るために乾燥させることが可能な脱水されたプラスミドDNAの最終湿潤産物が得られる。この第二のろ過工程は、撹拌された細胞操作下でのフィルター乾燥装置(例えば、単一プレートNutscheフィルター乾燥機)中で行うことが可能であり、圧力ろ過及び真空乾燥を可能とする。従って、本発明は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モードでの精密ろ過を含む段階的ろ過プロセスを用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。前記段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEGの濃度を含有し、及び場合により十分な塩の濃度を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。さらなる実施形態において、(d)及び(e)の第二のろ過及び透析工程は、圧力ろ過の下で、及び撹拌された細胞モードで、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で行われる。
【0017】
さらに、本発明は、(a)エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含む(但し、これらに限定されない。)アルコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、前記精密ろ過濃縮工程は、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)エタノール性溶液のエタノール濃度が高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール性溶液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む段階的ろ過プロセスの一部である。さらなる実施形態において、(c)及び(d)の第二のろ過及び透析工程は、圧力ろ過の下で、及び撹拌された細胞モードで、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で行われる。
【0018】
本明細書において互換的に使用される「臨床等級のプラスミドDNA」と「医薬等級のプラスミドDNA」という用語は、遺伝子治療及び/又はポリヌクレオチドワクチン接種用途を含む(但し、これらに限定されない。)あらゆる公知の予防的又は治療的適応症のためのヒトへの投与に対して許容される純度のレベルである、宿主細胞から単離されたプラスミドDNAの調製物を表す。
【0019】
本明細書において使用される「非高次コイルプラスミドDNA」とは、切れ目が入った、開放環状及び直鎖などのプラスミドDNAの他のあらゆる形態を含む高次コイルプラスミドDNAでないあらゆるDNA並びに宿主ゲノムDNAを表す。
【0020】
本明細書において使用される「NTU」とは、標準化された濁度単位(normalized turbidity unit)を表す。濁度とは、浸漬されたプローブの光場によって通過する粒子の「計数」として定義される。溶液の濁度は、レーザーをベースとした光散乱装置を用いてモニタリングすることが可能である。
【0021】
本明細書において使用される「PEG」とは、ポリエチレングリコールを表す。
【0022】
本明細書において使用される「OD600」とは、600nmでの光学密度、mL当りの細胞の数の光散乱、分光学光度法測定を表す。
【0023】
本明細書において使用される「L.O.D」とは、検出限界(limit of detection)を表す。
【0024】
本明細書において使用される「MW」とは、ダルトンで表した分子量を表す。
【0025】
本明細書において使用される「LRATM」とは、Lipid Removal AgentTMを表す。
【0026】
本明細書において使用される「CTAB」とは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はセチルトリメチルアンモニウムブロミドを表す。
【0027】
本明細書において使用される「hcCaSiO3」とは、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムを表す。
【0028】
本明細書において使用される「IPA」とは、イソプロパノールを表す。
【0029】
本明細書において使用される「MF」とは、精密ろ過を表す。
【0030】
本明細書において使用される「UF」とは、限外ろ過を表す。
【0031】
本明細書において使用される「STET緩衝液」とは、約50mMのTris−HCl(約pH7.0−9.0)、約50−100mMのEDTA、約8%スクロース及び約2%Triton(R)−X−100を含む緩衝液を表す。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生産コストの減少とプロセスの頑強性の増加をもたらす、臨床等級プラスミドDNAを精製する大規模化可能な方法に関する。プラスミドDNA精製のための主要な単位操作は、細胞溶解、ろ過(精密ろ過/限外ろ過)及びクロマトグラフィーを含むと、しばしば考えられている。しかしながら、大規模なスケールで医薬等級プラスミドDNAを単離する場合、前記特定された主要な単位操作は、最低の単位コストで大きな量と高い品質をともに得るという本プロセスの最終目標に適合させるために調整しなければならない。例えば、複数のクロマトグラフィー工程のための、樹脂及び緩衝液などの原材料の支出は、大規模なプラスミドDNA精製プロセスに適用される場合、非常に高い単位コストと乏しい能力をもたらすことが明らかとされている。最近開示された米国特許出願09/875,379号(米国公開番号US2002/0012990)は、臨床等級品質(すなわち、少なくともヒトワクチン接種及びヒト遺伝子治療用途において有用)のプラスミドDNAのグラム量の単離を確保しながら、相対的に高価なクロマトグラフィー工程を不要とする別のプラスミドDNA精製プロセスを明らかにした。本発明は、さらに、臨床等級プラスミドDNAの精製のための経済的で、大規模化可能なプロセスを与えるという最終目標に拡張される。この目的のために、本発明は、プラスミドDNA精製プロセスのツーコア操作の代替操作として、清澄化された細胞可溶化液の生成及び高次コイルプラスミドDNAの最終濃縮/仕上げを特定する。
【0033】
従って、本発明は、新規上流(すなわち、宿主細胞可溶化液の清澄化の前及び宿主細胞可溶化液の清澄化を含む。)及び新規下流(すなわち、可溶化液清澄化より後)精製操作を含むプラスミドDNA精製プロセスに共通するツーコア単位操作に関する。開示されている上流精製工程は、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞(微生物細胞を含むが、これに限定されない。)からまず細胞可溶化液が生成され、次いで、前記細胞可溶化液を凝集によって清澄化し、宿主細胞細片を除去する、2つの部分からなる溶解/可溶化液清澄化手順を含む。目的のプラスミドDNAは清澄化された可溶化液中に残存し、目的のプラスミドDNAは、下流プロセスを介して、清澄化された可溶化液からさらに精製される。本発明の開示された下流精製工程は、先行する前記濃縮手順後に残存する残留不純物の除去を助けるために、まず、(先行精製工程の結果)プラスミドDNAが濃縮された溶液からプラスミドDNAを沈殿させ、接線流ろ過モードで精密ろ過(「MF」)に供されるプロセスを含む採集濃縮/仕上げ工程を包含する。次いで、プラスミドDNA産物粉末を形成するために、精製されたプラスミドDNAを乾燥させることができる。本明細書にさらに記載され、及び例示されているように、本発明の上流及び下流精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に開示されている精製方法を含む(但し、これに限定されない。)さらなる精製プロセスを伴う。このため、臨床等級プラスミドDNAの回収をもたらす大規模化可能な総合的精製プロセスを策定するために、本明細書に記載されている精製工程の一方又は両方を使用することは、本発明の範囲に属する。プラスミドDNA及び必要とされるプラスミドDNAの品質の特定のロットに対して必要とされる精製スキームを適切に改変することは、当業者の裁量に属する。本発明の新規精製工程を使用する様々な実施例が、本明細書に記載されているが、これらの実施例は、決して、本明細書の開示を限定することを意図したものではない。
【0034】
本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明のさらなる実施形態において、宿主細胞細片は、ポリエチレングリコール(「PEG」)で凝集される。従って、本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片をPEGで凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0035】
微生物宿主細胞は、溶解前に発酵溶媒から採集され、適切な希釈になるように、滅菌された生理的に許容可能な緩衝液(例えば、標準的なSTET緩衝液)中に再懸濁される。当業者であれば、最適な溶解条件が、部分的に、溶解緩衝液内の微生物宿主細胞の濃度に依存することを認識する。最適な溶解が生じる溶解緩衝液中の宿主細胞濃度(OD600)は、下記実施例1において、E.コリ宿主細胞を用いて示されるように、容易に測定することが可能である。最適な溶解条件は、宿主細胞の乾燥細胞重量(「DCW」)希釈に関して測定することも可能である。本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスによってE.コリ宿主細胞を溶解した場合には、70の当初OD600が好ましいものであり得る(実施例1参照)。あるいは、本明細書において、本発明者らは、約23g/LのDCWで、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞の溶解が強固な溶解をもたらすことも決定した。前記宿主細胞の溶解は、精製されるべき染色体外高次コイルプラスミドDNA、可溶性の宿主細胞染色体DNA又はゲノムDNA及び宿主細胞細片(例えば、不溶性の宿主細胞染色体DNA又はゲノムDNA、細胞膜、細胞小器官及び修飾された固体)を含む(但し、これらに限定されない。)溶液を生成する。本発明の本実施形態の細胞溶解工程は、酵素リゾチームの存在下又は不存在下の何れにおいても起こり得る。細菌細胞中で、リゾチームは、細菌のペプチドグリカン細胞壁を分解するように作用して、ペプチドグリカン層のN−アセチルムラミン酸(NAM)及びN−アセチルグルコサミン(NAG)の間のβ結合を加水分解する。これは、内部細胞膜を露出させ、例えば、界面活性剤によるさらなる破壊に対して、内部細胞膜を脆弱な状態とする。従って、リゾチームの添加は、細菌細胞を溶解する穏やかな方法に相当し、より大きなプラスミドの機械的破壊が生じる可能性をより少なくする。
【0036】
本明細書の実施例中に教示されているとおり、最終的なプロセスの収率に対するリゾチーム添加の効果は、容易に決定される。目的の高次コイルプラスミドDNAをその中で増幅するために選択された微生物の、好ましくは細菌の宿主細胞に応じて、当業者は、リゾチーム添加が前記プラスミドの精製をさらに補助する(例えば、精製されたプラスミドDNAの収率を最終的に最大化する。)かどうかを経験的に決定することが可能である。本発明の一実施形態において、E.コリ細胞を用いた本明細書の実施例中に例示されているように、目的の高次コイルプラスミドDNAを含む宿主微生物細胞は、リゾチームの存在下で、標準的なSTET緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロース、pH8.2)中で溶解される。本明細書に開示されている全ての塩基性緩衝液再懸濁の処方に対して改変を行い得ること、及び、本発明での使用に適していることが、当業者に自明である。従って、本発明のプロセスの結果に対して実質的に影響を与えず又は変化させない全ての塩基性緩衝液の処方が、本明細書に記載されているプロセスの範囲に属するものとされる。しかしながら、特に、下流のCTABをベースとした沈殿が想定されている場合、本発明の溶解工程は、Mg++及びC++などの二価陽イオンを効果的に除去するキレート物質(例えば、EDTA)、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton(R)をベースとする界面活性剤)並びにスクロースを含む生理的に許容される緩衝液の存在下で実施する。EDTAは、EDTAによって会合されなければDNAseを活性化する二価の金属イオンを会合させることにより、DNAse活性を阻害する。二価の金属イオンはプラスミドのCTABとの錯化を妨げるので、EDTAは、CTABをベースとした下流沈殿工程において好ましい役割を果たし続ける。さらに、プラスミドDNAを沈殿させるCTABの濃度範囲は、Triton(R)及びDNA濃度の両方に依存する(例えば、米国特許出願09/875,379号参照、上記。)。緩衝液のpH範囲は、特定の微生物株に対して決定された最良の結果に従って調整し得るが、好ましいpH範囲は約7.0−9.0の間であり、約8.0−8.5のpH範囲が最適である。
【0037】
本発明の別の実施形態において、完全な細胞溶解は、PCT国際出願PCT/US95/09749号(公開番号WO96/02658)及びPCT/US96/07083(WO96/36706)(参照により本明細書に組み込まれる。)中に開示されている熱交換装置に宿主細胞を通過させることを含むことができ、前記細胞は、リゾチームで処理されてもよく、処理されなくてもよいが、好ましくは、熱に曝露する前に、リゾチームで処理される。著しい流体の動的力を生成することが知られている高圧ホモゲナイザーは、高次コイルプラスミドDNAを損傷するリスク及び/又は所望されるプラスミドのサイズと同等のサイズまでゲノムDNAを剪断するリスクのために、本発明の宿主細胞溶解工程に対しては好ましくない。しかしながら、剪断損傷からDNAを保護することが明らかとなっている機械的細胞溶解技術(例えば、2002年12月26日にUS20020197637号として公開された米国特許出願10/158,753号に記載されているような、圧縮剤、核酸を凝集させる小さなポリカチオン、の存在下での溶解)を使用することができる。
【0038】
本発明のさらなる態様には、上述のように、工程(a)で生成された宿主微生物細胞可溶化液を、アルカリpHシフトに供した後に、細胞が最初にその中で溶解された緩衝液によって規定される前記可溶化液の当初pHまで、概ね中和される。従って、本発明の一実施形態において、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主微生物細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされた工程(b)の可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。さらなる実施形態において、前記pHシフトされた可溶化液は、PEGを用いて、宿主細胞細片を凝集させることによって清澄化される。宿主細胞可溶化液のアルカリpHシフト及びその後の中和は、凝集剤の可溶化液への添加の前に行い得る。あるいは、凝集剤は、初期溶解緩衝液の成分として、宿主細胞可溶化液中に存在し、又はアルカリpHシフト及び中和工程の前に、溶解が起こった後に添加され得る。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、その中に細胞が最初に懸濁及び溶解される緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロースからなる標準的なSTET緩衝液、pH8.2)の結果、概ね約pH7.0と約pH9.0の間、好ましくは約pH8.0と約pH8.5の間にある。アルカリpHシフトは、可溶性宿主細胞染色体DNAの完全な変性を可能とする値まで(例えば、概ね、約pH12と約pH13の間)、可溶化液のpHをシフトさせることを含む。時間が経過するにつれて、この上昇されたpHに高次コイルプラスミドDNAを曝露させることにより、プラスミドの変性も引き起こされるが、プラスミドDNAのサイズが小さいために、条件が中和されると、容易に再度のアニーリングを行う。可溶化液のpHは、プラスミドDNAが急速に変性し、剪断損傷に対して増加した感受性を有する約pH13を超えて上昇されないことが重要である。可溶化液のpHは、5Nの水酸化ナトリウム(「NaOH」)を含む(但し、これに限定されない。)濃縮された塩基溶液の添加によって上昇させることが可能であり、次いで、染色体DNAを確実に変性させるために、ある一定の長さの時間にわたり(例えば、約60分)、pHシフトされた細胞可溶化液を上昇されたpHに保つ。次いで、細胞可溶化液のpHは、濃縮された酸溶液(濃縮された酢酸溶液(例えば、約1.7と2.5の間の規定度を有する酢酸)を含むが、これに限定されない。)の添加によって、中和され、宿主細胞がその中で最初に溶解された緩衝液のpHまで、概ね可溶化液のpHを減少させる。
【0039】
理論に拘泥するものではないが、本明細書に記載されているpHシフトは、BirnboimとDolyによって最初に記載された古典的なアルカリ溶解技術(1979、Nucleic Acid Res.7:1513−1523)に、大まかに比較し得る。BirnboimとDolyのアルカリ溶解法は、変性により、宿主細胞のゲノムDNAとタンパク質を同時に除去できること、及び、次いで、変性された材料を選択的に沈殿させ得ることで周知である。伝統的なアルカリ溶解操作は、グルコース又はフルクトースを加えたTris緩衝液を含む細胞再懸濁溶液を使用し、この懸濁液には、高塩基溶液及びドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)界面活性剤が細胞溶解のために添加される。高塩基は、高分子量染色体DNAを選択的且つ完全に変性させる。次いで、pH5.5の(酢酸を加えた)3M酢酸カリウムの添加によって可溶化液が中和されると染色体DNAは沈殿するが、プラスミドDNAは上清中に保持される。しかしながら、重要なことには、大きなプロセス容量、複数のプロセス容器が必要であること、高pH及び酢酸ナトリウムの高レベルでのDNAの剪断感受性が報告されていることなど(これらに限定されない。)、プラスミドDNAの大規模な精製のためにこの伝統的なアルカリ溶解方法の使用に付随する大きな欠点が存在する(Chamsart,S.et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.75:387−392参照)。上記説明のとおり、本発明の本実施形態の塩基性pHシフトは、当初微生物細胞可溶化液中に存在する染色体DNA又はゲノムDNAを変性させるためにも重要である。高次コイルプラスミドDNAに対する高pH(例えば、pH12)の影響を調べた本明細書に記載されている実験は(実施例7に記載されている。下記。)、高い羽根車先端速度で、1時間超にわたり、pH12に曝露されたときに、高次コイルプラスミドDNAに対する損傷が存在しないことを示している。本明細書に記載されているアルカリpHシフト及びその後の中和工程が宿主ゲノムDNAの一部を溶液から除去するのに対して、完全な排除は達成されず、続いて行われる凝集操作が必要となる。従って、本発明の塩基性pHシフト工程及びその後の中和工程は、凝集操作のための宿主細胞可溶化液を調製するために実施されるのであって、細胞を溶解させ、又は可溶化液それ自体を清澄化させるために行われるのではない。従って、特定の理論に拘泥するものではないが、本発明のpHシフトは、細胞細片のその後の凝集のために重要な調製工程であることが明らかとなっている(さらに以下に記載されている。実施例1参照。)。
【0040】
同じく、本発明の一実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主微生物細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。宿主細胞可溶化液が生成された後、並びに、上記アルカリpHシフト及びその後の中和工程に場合により供した後、宿主細胞細片(例えば、不溶性ゲノム宿主細胞DNA、細胞膜、修飾された固体)を除去するために、宿主細胞可溶化液は凝集され、高次コイルプラスミドDNA及び可溶性染色体DNA又はゲノムDNAを含む(これらに限定されない。)成分を含有する清澄化された可溶化液を生成する。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片の凝集を達成する凝集剤が、当初溶解緩衝液の成分である。あるいは、前記凝集剤は、溶解が起こった後に、宿主細胞可溶化液に添加することが可能である。本明細書に開示されている方法による細胞可溶化液の凝集は、前記微生物細胞可溶化液の分離可能性を大幅に増大させる。低カット界面活性剤沈殿工程(例えば、CTAB)は、可溶性タンパク質のレベルをさらに減少させるために、凝集後に実施することが可能である。細胞細片は、凝集後に溶液から沈降することができ(例えば、沈降/デカント)、又は、連続的遠心を含む(但し、これに限定されない。)遠心(例えば、15,000×g、15分)を介して、容易に除去することが可能である。可溶化液から残留固体を除去するために、遠心に加えて、仕上げろ過(例えば、セルロース又は珪藻土をベースとしたデプスフィルターを使用)も使用することが可能である。凝集された細胞細片が除去された後、可溶化液上清中に残存する高次コイルプラスミドDNAは、次いで、当業者に公知の精製プロセス(例えば、米国特許出願09/875,379号、上記)を包含する下流精製プロセス及び/又は本発明の一部として開示された新規下流工程によって、他の夾雑物からさらに精製除去される。
【0041】
宿主細胞細片の凝集とは、細胞粒子の凝集、すなわち細胞細片凝集塊の形成を表す。「凝集剤」又は「凝集因子」とは、粒子状懸濁液を清澄化するために使用される物質(例えば、ポリマー)であり、前記物質は、懸濁液に添加されたときに、凝集塊の形成を誘導する。凝集された物質(不溶性の粒子状物質に相当する。)は、通常、重力下で沈降する。しかしながら、本明細書に記載されている細胞細片浮遊塊を含む巨大な不溶性浮遊塊(すなわち、凝集の結果として形成される凝集された物質)は、低速遠心又は単純なろ過方法によって、溶液から容易に分離することが可能である。表面電荷、凝集されるべき物質の化学的及び物理的特徴、凝集剤の吸着速度及び濃度、粒子衝突速度及び濃度並びに懸濁液の混合条件を含む(これらに限定されない。)多くの異なる因子が、凝集の程度に影響を与え得る。凝集は、添加された凝集剤の電荷(「電荷中和」)又はその分子量(「架橋凝集」)の何れかの結果として起こると考えられる(Cumming,R.H.et al.,1996,Bioseparation 6:17−23参照)。電荷中和を介した凝集は、凝集されるべき物質の電荷とは反対の電荷を有する凝集剤間の接着によって起こり、表面電荷の全体的な中和又は電荷の局所的な反転を引き起こし、効果的な粒子の衝突と増加された浮遊塊の成長を可能とする。電荷中和機序を介した凝集の効率性は、凝集剤の分子量又はそのポリマー化の程度に依存しない。これと比べて、架橋凝集による細胞物質の凝集は、帯電した凝集剤又は非イオン性凝集剤とともに起こり得、凝集剤の分子量及び/又はポリマー化の程度に一層依存する。架橋凝集は、通常、コロイド状粒子の分散液に高分子量ポリマーを添加することによって達成される。凝集剤は、ループ及び尾部高次構造で粒子の2以上の表面に吸着することにより、これらを一緒に連結する。
【0042】
本明細書に記載されている宿主細胞細片を凝集させるために、帯電した(例えば、陰イオン性又は陽イオン性)又は帯電していない、合成(例えば、ポリエチレングリコール)又は天然に存在する(例えば、キトサン)ポリマーなど(但し、これらに限定されていない。)、多数の異なる凝集剤を使用することが可能である。従って、本発明の一実施形態において、上述のように作製された宿主細胞可溶化液中で細胞細片凝集を引き起こすために、ポリマー凝集剤が使用される。本プロセスにおける細胞細片の凝集塊形成に影響を与えるために凝集剤の種類を選択する場合には、凝集され、その後廃棄されることが予定されている物質の特徴及び留保される(すなわち、精製される)ことが予定されている物質の特徴をともに検討することが重要である。プラスミドDNA精製体制において、検討すべき重要事項は、DNAが負に帯電した生体分子であるので、細菌の細胞細片を凝集することが最も一般的に知られている凝集剤である正に帯電した凝集剤は望ましくないということである。正に帯電した凝集剤は、精製されることが予定されたプラスミドDNAとともに細胞細片を凝集させる。従って、本明細書に記載されている凝集工程を実施するために、負に帯電したポリマーを選択することが好ましく、より好ましくは帯電していないポリマーが選択される。この目的のために、ポリエチレングリコール(「PEG」)は、プラスミドを含有する可溶化液に対する費用対効果が優れた無毒の凝集剤であることが本明細書に示されている。PEGは、400から15,000超までの分子量ポリマーの範囲を作製する反復単位(−O−CH2−CH2−)から構成される非イオン性ポリマーである(例えば、最大400,000の分子量を有するPEGポリマーが市販されている。)。PEGは、殆どの有機溶媒と適合性があり、優れた水溶解性を有する。PEGは、さらに、多くの市販薬及び軟膏中の成分であるので、証明された安全性特性を有している。本明細書の実施例に示されているように、PEGは、微生物可溶化溶液から宿主細胞細片の凝集を誘導するが、PEGによって誘導されるこの凝集の正確な機序は明確でない。PEGは、細胞細片がポリマーと直接相互作用する伝統的な架橋凝集機序を介して作用して、ポリマー表面上に吸着することが可能である。あるいは、PEGは、可溶化液の特定されていない成分を溶液から排除することができ、この排除された物質は、次いで、宿主細胞細片を凝集させるように作用する。従って、本明細書において、PEGは、微生物宿主細胞細片の凝集剤として特定されており、ここで、「凝集剤」は、直接又は間接的な機序を介して、宿主細胞細片の凝集を誘導する物質として定義される。
【0043】
十分なPEG濃度はDNAを沈殿させることが可能であることがLisとSchleif(1975;上記)によって示されており、従って、本明細書に記載されている方法において凝集剤としてPEGが選択されるのであれば、使用されるPEGの濃度は、本発明の凝集工程の間にプラスミドDNA沈殿の可能性を最小限に抑えることが重要である。上述のように、PEGは非イオン性ポリマーであるので、凝集の程度は、ポリマーの分子量及びポリマー化の程度の両方に依存する可能性がある。当業者であれば、精製されるべきプラスミドDNAのサイズ及びプラスミドDNA増幅のために使用される具体的な宿主細胞など、様々な要因に留意しながら、宿主細胞細片の最も効率的な凝集を達成するために、PEGの最も適切な濃度及び分子量を経験的に決定することが可能である。本明細書において使用される、特定の宿主細胞可溶化液を凝集するために使用されるPEGポリマーの最も適切な濃度及び分子量は、前記可溶化液の最も効率的な凝集(すなわち、プラスミドDNA沈殿の最小量と組み合される、凝集された細胞細片の最大量を達成する。)をもたらすものを表す。例えば、高濃度の低分子量PEGを使用する場合と同様、高分子量PEGを用いることにより、低濃度の比較的に効率的な凝集が達成され得る。従って、PEGポリマー濃度と分子量の間に密接な相互作用が存在すること、従って、凝集目的のために、本明細書に開示されている全ての具体的なPEG濃度及びPEG分子量は指針と考えるべきであり、総じて、本発明に対する限定ではないことを理解すべきである。
【0044】
実施例1において、細菌細胞細片の沈降に対するPEG凝集の効果を一般的に特徴付けるために、最初に、スクリーニング研究を実施した。PEGは、特に、E.コリ細胞可溶化液の塩基/酸処理後(例えば、約pH8.5から約12.5までのpHシフト、次いで、約pH8.5まで戻る。)において、E.コリ細胞細片の高度に効率的な凝集剤であることが決定された。目的のプラスミドDNAを含有するE.コリ発酵から得られる細菌細胞可溶化液は、(1)STET緩衝液(上記)中に細胞を再懸濁し、及び20℃でリゾチームとともに温置すること、(2)STET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームとともに温置し、次いで、可溶化液を塩基/酸処理に供すること、並びに(4)3%PEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームとともに温置し、可溶化液を塩基/酸処理に供すること、という(図1に示されているような)4つの異なる方法によって作製された。図1からの結果は、重力のみにより、2日間にわたって物質を沈降させた後の、pHシフトされ、PEG処理された可溶化液(可溶化液#4)中の細胞細片の高度に効率的な凝集を示している。図1に示されている可溶化液及びその変形は、観察されたPEG誘導性凝集を特徴付けるためにさらに検査された(図2参照)。前記可溶化液の一定分量を15分間温置し、次いで遠心した。濁度測定(図3)は、塩基/酸処理に供された可溶化液に添加された場合の、凝集剤としてのPEGの作用を示しており、対照可溶化液(可溶化液#2)の730NTUに比べて、5%PEG3000で凝集した後には(可溶化液#6)、16NTUの溶液濁度であることを示している。プラスミドDNA含有懸濁液から凝集された物質を分離するための清澄化戦略として、連続的な遠心を使用することが可能であり、清澄化された可溶化液を調製するための仕上げろ過を用いずに、20NTU未満の清澄度が達成されることを、これらの結果は示している。実施例1は、さらに、細菌細胞細片の凝集に対するPEG濃度及び分子量の効果を示しており、宿主細胞細片の最も効率的な凝集を達成するための戦略を設計する場合に、当業者が、どのようにして、適切なPEG濃度及び分子量を特定できるかについて記載している。プラスミドDNAを含有する宿主細菌細胞からの細胞細片の凝集に対するPEG濃度及び分子量の効果は、細胞細片の沈降性能に基づく迅速なスクリーニング法を用いて調べた。まず、プラスミドDNAを含有するE.コリ細胞をリゾチームの存在下で溶解し、上述のように、塩基/酸処理に供した。様々なPEG原溶液(PEG400−6000)を、可溶化液の10mL分取試料中に混合して、約1%と15%(w/v)の間のPEG濃度を得る。次いで、混合物を、約16時間、室温で沈降させた。沈降された固体の容積及び上清の濁度(OD600)を測定した(図4A参照)。さらに、PEG3000を凝集剤として用いて、DNA濃度(AEXアッセイによって測定)及び上清の濁度を調べた(図4B)。これらの結果は、例えば、細胞細片は凝集するが、DNAは沈殿しないPEG3000濃度範囲が存在することを示している(図4B参照)。約0%と10%%(w/v)の間の濃度範囲にわたって、類似のプラスミドDNA沈殿曲線もPEG6000に対して作製した(図5参照)。
【0045】
従って、本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び(b)ポリマー(ポリエチレングリコール(「PEG」)を含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(a)の前記可溶化液を清澄化すること、を含む方法によって、大規模な微生物発酵から精製される。工程(a)の宿主細胞は、生理的緩衝液(例えば、上述のような標準的STET緩衝液)中、リゾチームの存在下又は不存在下で、好ましくはリゾチームの存在下で溶解することが可能である。あるいは、採集された宿主細胞は、PCT国際出願PCT/US95/09749(上記)及びPCT/US96/07083(上記)中に開示されているような熱交換装置への通過を介して溶解することが可能である。ポリマー(PEGを含むが、これに限定されない。)による工程(b)の宿主細胞細片の凝集は、細胞細片の最大量が浮遊塊へと凝集されるように行われ、前記浮遊塊は沈殿されたプラスミドDNAの最小量を含有する。本発明の一実施形態において、宿主細胞細片は、PEG、好ましくは約1000超、より好ましくは約1450と約15,000の間の分子量のPEG、最も好ましくはPEG600の添加によって、約2%と約5%(w/v)の間、より好ましくは約3%と約4%(w/v)の間、最も好ましくは、約3.7%(w/v)の最終濃度まで、凝集される。
【0046】
本発明のさらなる実施形態において、宿主細胞細片の凝集の前に、特に、記載されている可溶化液清澄化プロセスのための凝集剤としてPEGが選択される場合、宿主細胞可溶化液は、本明細書に記載されているように、アルカリpHシフト及びその後の中和工程へと供される。従って、前記実施形態は、(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフト及びその後の中和に供すること、並びに(c)ポリマー(ポリエチレングリコールを含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(b)の前記pHシフトされた可溶化液を清澄化することを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法を含む。本発明の一実施形態において、当初細胞可溶化液のpHは、その中に宿主細胞が最初に懸濁及び溶解される緩衝液(例えば、50mMのTris−HCl、100mMのEDTA、2%v/vのTriton(R)−X−100、8%w/vのスクロースからなる標準的なSTET緩衝液、pH8.2)の結果、概ね約pH7と約pH9の間、好ましくは約pH8.0とpH8.5の間にある。次いで、細胞可溶化液のpHは、可溶性染色体DNAの完全な変性を可能とする値まで(例えば、概ね、約pH12と約pH13の間)までシフトされる。上述のように、pHは、5NのNaOHなどの(但し、これに限定されない。)濃縮された塩基溶液の添加によって上昇させることが可能であり、次いで、染色体DNAを確実に変性させるために、ある一定の長さの時間にわたり(例えば、60分)、pHシフトされた細胞可溶化液を上昇されたpHに保つ。しかしながら、pHは、プラスミドDNAが急速に変性し、剪断損傷に対して増加した感受性を示すような程度まで(すなわち、約pH13超)上昇されないことが重要である。次いで、細胞可溶化液のpHは、濃縮された酸溶液((例えば、約1.7と2.5の間の規定度を有する)濃縮された酢酸溶液を含むが、これに限定されない。)の添加によって、中和され、宿主細胞がその中で最初に溶解された緩衝液のpHまで、概ね可溶化液のpHを減少させる。従って、本発明の一実施形態は、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、宿主細胞がその中に溶解された当初の生理的緩衝液のpHまで、好ましくは約pH7と約pH9の間のpHまで、より好ましくは約pH8.0とpH8.5の間のpHまで中和すること、並びに(d)ポリマー(ポリエチレングリコール(「PEG」)を含むが、これに限定されない。)で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記pHシフトされ、中和された細胞可溶化液を清澄化すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。細胞がその中で溶解される生理的緩衝液(例えば、本明細書に記載されているような標準的STET緩衝液は、リゾチームを含有してもよく、又は含有しなくてもよい。これに代えて、アルカリpHシフト及びその後の中和工程は、PEGを細胞可溶化液に添加した後に行うことが可能である。例えば、PEGは、宿主細胞細片を凝集させるために経験的に決定された濃度で、当初の溶解緩衝液中に存在することができ、ここにおいて、前記PEG含有細胞可溶化液は、次いで、前記細胞細片の効率的凝集を達成するために、本明細書に記載されているアルカリpHシフト/中和工程に供される(実施例1参照)。本発明は、さらに、(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、工程(a)の宿主細胞可溶化液のpHまで中和すること、(d)PEG6000の前記可溶化液への添加で宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(c)の細胞可溶化液を清澄化すること、及び(e)工程(d)の前記凝集された宿主細胞細片を遠心し、高次コイルプラスミドDNAを含有する上清を取得すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、工程(a)の生理的溶解緩衝液は、リゾチームを含有し、及び約pH7と約pH9の間のpH、好ましくは約pH8と約pH8.5の間のpHを有する標準的なSTET緩衝液である。別の実施形態において、濃縮されたPEG6000溶液は、約3.7%(w/v)の濃度になるように、前記可溶化液に添加される。本発明の本部分のさらなる実施形態において、PEG凝集剤は、連続的な遠心条件下で、アルカリシフトされ、中和された宿主細胞可溶化液へ、工程(d)において供給され、上清中に残存するプラスミドDNAを有する凝集された細胞細片の沈殿物を取得する。
【0047】
本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞は、リゾチームの存在下又は不存在下で、好ましくはリゾチームの存在下で、生理的緩衝液中において温置され、塩基性pHシフト及びその後の中和工程(上述のとおり)に供される。これは、高次コイルプラスミドDNAを上清中に保持しながら、細胞細片(例えば、不溶性の、ゲノム又は染色体宿主細胞DNA、細胞膜及び修飾された固体)を凝集することによって清澄化するために前記微生物細胞可溶化液をさらに調製する新規溶解手法に相当する。この溶解手法は、Lee及びSagarに付与された米国特許第6,197,553号に記載されており、リゾチーム溶解後に急速な加熱及び冷却を含む大規模なプラスミドDNAの精製のための以前に開示された溶解プロセスの濃縮を2回行うことが可能である。従って、本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスは、プロセス容積の大幅な減少を可能とする。さらに、本明細書に記載されている新規溶解プロセスは、より以前に開示された溶解技術に比べて、より単純な手法である。例えば、米国特許第6,197,533号の熱溶解手法に必要とされる2つの巨大なタンクと比べて、1つのタンク中で実施できるので、大幅な資本コストが節約され、複雑な直列の熱交換機ではなく、成分の混合と添加のみを必要とする。さらに、本発明の新規溶解及び凝集手法は、凝集された細胞細片の沈降及びプラスミドDNA含有上清のデカント及び遠心など(これらに限定されない。)、細胞細片が容易に除去されるフィードを生成する。プラスミドDNA含有上清が形成されるにつれて、これを連続的に除去するバッチ又は連続的遠心の何れも使用することが可能である。(宿主細胞細片の凝集を介した)本発明の新規溶解及び可溶化液清澄化技術の後には、(i)陽イオン性界面活性剤(好ましくは、CTAB)を用いた、清澄化された可溶化液からのプラスミドDNAの沈殿、(ii)塩溶液によるプラスミドの溶解、及び(iii)水和されたケイ酸カルシウム上への残留不純物の吸着を含む(但し、これらに限定されない。)下流精製プロセスが続くことが可能である。好ましい下流工程は、PEG又はアルコールの何れかによって誘導された沈殿後の精密ろ過分離による高次コイルプラスミドDNAの濃縮及び仕上げである(下記参照)。従って、本発明の別の実施形態は、本明細書に新規に開示されている新規2工程溶解/可溶化液清澄化プロセス以外のさらなる精製工程に依拠する。本発明の一部として含まれるプロセス工程の組み合わせには、例えば、以下のもの:(i)リゾチームの存在下又は不存在下、好ましくはリゾチームの存在下での細胞溶解、(ii)PEGによって誘導された凝集などの(但し、これに限定されない。)細胞細片の凝集を介した可溶化液清澄化、(iii)CTABなどの界面活性剤を用いたプラスミドDNAの単回又は段階的沈殿、(iv)塩溶液によるプラスミドの選択的溶解、(v)hcCaSiO3上への単回又は段階的吸着による残留不純物の除去、及び(vi)濃縮された製剤溶液を容易にそこから調製することができる安定なバルク産物を与える、精製されたプラスミドDNAの、PEG又はアルコール(例えば、エタノール性)によって誘導された沈殿が含まれ得る。
【0048】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている方法は、細菌細胞、植物細胞、酵母及びバキュロウイルスを含む(但し、これらに限定されない。)微生物細胞(E.コリ)が好ましい微生物宿主である。)からの臨床等級プラスミドDNAの精製を可能とする。従って、E.コリ発酵以外の微生物発酵が本発明における使用に適していることが、当業者に自明である。さらに、本発明の方法は、専ら微生物細胞から臨床等級プラスミドDNAを精製することに限定されるものではなく、従って、哺乳動物細胞を含む他の細胞種から前記プラスミドDNAを精製することを含み、適切な細胞密度が達成されると推測される。従って、哺乳動物培養系中で、又は微生物発酵から増幅された臨床等級プラスミドDNAの精製が、本発明の一部として想定される。異なる宿主細胞種の特異性に対して調整するために、本発明の細部を改変し、及び最適化することは、当業者の能力の範疇に属する。例えば、選択された宿主細胞に応じて、可溶化液凝集のための準備的工程として、アルカリpHシフト及びその後の中和に、増幅されたプラスミドDNAを含有する当初細胞可溶化液を供することは不要であり得る。リゾチーム温置のみ、及び/又は熱溶解と組み合わせたリゾチーム温置は、凝集し易い細胞可溶化液を効果的に調製するのに十分であり得る。当業者であれば、細菌細胞からの精製について本明細書に詳しく開示されている採集及び溶解/可溶化液清澄化プロセスを、哺乳動物細胞からの精製に容易に適合させることが可能である。例えば、前記当業者は、細菌細胞の溶解を補助するのに有効なリゾチームの添加が、哺乳動物細胞の溶解には必要でないことに気付く。代わりに、本明細書に記載されているアルカリpHシフトは、完全な哺乳動物細胞の溶解をもたらし得る。同様に、酵母細胞からのプラスミドDNAの精製は、リゾチームを酵母溶解酵素(例えば、リトカーゼ)に置換することによって有利となる可能性があるが、本明細書に開示されているアルカリpHシフトが好ましく、酵母溶解酵素は不要であり得る。従って、当業者は、本明細書の開示及び詳細な実施例を用いて、本発明の一部として記載されている方法を容易に改変することが可能であり、プラスミドDNAを増幅するために選択された宿主細胞がどのような種類であれ、これを適用できる。従って、本願は、大規模な「微生物発酵」からのプラスミドDNAの精製に焦点を絞って書かれているが、この用語は、本発明を微生物発酵に限定するものではない。従って、本明細書を通じて、「微生物発酵」という用語は、宿主細胞増殖又は増幅プロセスのあらゆる種類に対するものとして読み替えることができる。
【0049】
本明細書に開示されている方法によって単離及び精製されるべきプラスミドは、実質的にあらゆるサイズのあらゆる染色体外DNA分子(例えば、高コピー数又は低コピー数/細胞)であり得る。従って、宿主細胞(好ましくは、微生物宿主細胞)中で増幅できる実質的にあらゆるプラスミドを、本発明の方法によって単離することができることが当業者に自明である。本明細書に記載されている方法によって精製された臨床等級プラスミドDNAは、ワクチンとして又は遺伝子治療ビヒクルとして、ヒトに投与するのに極めて有用である。
【0050】
詳しく上述されているように、(微生物細胞細片の凝集を介した)本発明の新規溶解/可溶化液清澄化プロセスについて提案されている使用は、例えば、ポリヌクレオチドワクチン又は遺伝子治療ベクターとして使用するための大規模微生物発酵から臨床等級プラスミドDNAを精製することである。さらに、本発明は、本明細書に記載されている新規溶解/可溶化液清澄化プロセスを含む、高次コイルプラスミドDNAを含有する清澄化された宿主細胞可溶化液を生成する方法に関する。重要なことには、本明細書に記載されている新規溶解/可溶化液清澄化技術は、タンパク質、モノクローナル抗体、融合タンパク質、ゲノムDNA、RNA、脂質及び多糖など(但し、これらに限定されない。)、あらゆる組換え生物分子の微生物宿主からの精製に拡張することが可能である。従って、(i)宿主細胞可溶化液の生成、(ii)場合によって行われる、塩基性pHシフト及びその後の中和工程、並びに(iii)宿主細胞細片の凝集による前記細胞可溶化液の清澄化を包含する、本明細書に記載されている溶解/可溶化液清澄化プロセスは、例えば、E.コリ、他の細菌宿主、他の微生物宿主(例えば、酵母)又は哺乳動物細胞を用いた、あらゆる組換え生物分子の産生に拡張され得る。特定の宿主細胞種及び精製されるべき特定の生成物生物分子の両方の特異性に対して調整するために、(凝集を介した)本発明の溶解/可溶化液清澄化プロセスを改変することは、当業者の能力の範疇に属する。例えば、プラスミドDNA以外の生物分子の精製のために本発明に開示されているものに関連する効率的及び効果的な溶解/可溶化液清澄化プロセスを設計する場合、最大のpH安定性に加えて、本明細書に記載されているアルカリpHシフト/中和工程の間に上昇したpH条件に曝露される時間を考慮する必要がある。アルカリpHシフトを含む本明細書に記載されている上流精製工程は、上昇したpHへの短期間の曝露に対して、精製されるべき生物分子が耐えることができる限り、及びポリエチレングリコールの低レベルによって沈殿されない限り、魅力的な精製工程である。さらに、DNAが夾雑物であると考えられるプロセス(例えば、タンパク質精製プロセス)において、PEG濃度は、凝集された細胞細片とともにDNAを沈殿させるためにPEG濃度を上昇させることが可能である。
【0051】
本発明の大規模な微生物発酵は、選択された微生物細胞の増殖にとって適切であるいずれかの液体培地中で培養され得る。同じく、本発明は、哺乳動物細胞の増殖に適した全ての培地を使用することが可能である大規模な哺乳動物細胞培養からプラスミドDNAを精製する方法を提供するために容易に適合させることが可能である。開示されている方法は、より小さな発酵又は培養容量に対して適用可能であるが、本発明の特に有用な態様は、大規模な細胞発酵又は培養への拡張可能性である。本明細書において使用される「大規模」という用語は、約5リットルを超える総細胞発酵容量又は約5リットルを超える発酵容量から採集された細胞であると考えられる。本発明の大規模な発酵法は、約300〜2000リットルの発酵に相当する(但し、これらに限定されない。)臨床サイズロットに適用可能である。本発明の一部として記載されている上流精製プロセスの場合、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞は、まず、細胞ペースト又はスラリーを提供するために、培地から採集される。採集工程の最終目標は、精製において使用するための細胞を濃縮及び洗浄することである。遠心又は精密ろ過など(但し、これらに限定されない。)、液体培地から細胞を採集する全ての慣用的手段が適切である。例えば、採集工程は、(i)500kDaの見かけの分子量のA/GTech膜を横切る接線流ろ過を用いて細胞を濃縮すること、及び(ii)滅菌された生理的食塩水を用いて、濃縮された細胞を透析ろ過することを含むろ過プロセスからなり得る。このようなろ過プロセス中の重要なパラメータには、膜間圧力、入口圧力、クロスフロー速度、濃度因子及び流量が含まれる。さらに、細胞は、連続的遠心を用いて採集され得る。細菌細胞に対する採集手法の詳しい記載については、以下の実施例の部9を参照されたい。
【0052】
本発明は、さらに、大規模発酵体制から臨床等級プラスミドDNAを単離するための新規下流精製プロセスに関し、粉末化されたプラスミドDNA産物をもたらす最終濃縮/仕上げ工程に相当する。プラスミドDNA精製体制に関する場合のように、本明細書において使用される下流精製プロセスとは、上流精製プロセスの結果(例えば、本発明の一部として記載されている上流精製プロセスの凝集工程後)、当初の宿主細胞可溶化液が清澄化された後に起こる精製プロセスを表す。目的のプラスミドDNAは、前記上流精製プロセス後に、清澄化された可溶化液中に残存する。本発明の最終濃縮/仕上げ工程は、上流プロセス及び先行する下流プロセスの両方の結果として、高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液から残留不純物を除去するために使用される下流精製技術を表す。前記残留不純物には、宿主細胞ゲノムDNA、先行する精製プロセス後に残存する細胞タンパク質又は先行する精製工程の結果として存在するプロセス成分(例えば、プラスミドDNAを選択的に沈殿させるために使用される界面活性剤)が含まれ得る。本発明の一部として記載される新規下流精製工程は、高次コイルプラスミドDNAを濃縮し、及びより実行可能な緩衝液容量中への再懸濁を可能としながら、残留不純物から最終的に高次コイルプラスミドDNAを精製するためのより初期の工程のあらゆる様々な組み合わせとともに使用され得る。従って、本明細書に記載及び例示されているように、本発明の新規下流精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に開示されている精製方法及び本発明の一部として開示された新規上流精製プロセスを含む(但し、これに限定されない。)さらなる精製プロセスを伴う。臨床等級プラスミドDNAの回収をもたらす拡張可能な総合的精製プロセスを設計する場合に、最終濃縮/仕上げ精製技術に相当する、本明細書に記載されている新規下流精製工程を含めることは、本発明の範囲に属する。プラスミドDNA及び必要とされるプラスミドDNAの品質の特定のロットに対して必要とされる精製スキームを適切に改変することは、当業者の裁量に属する。
【0053】
従って、本発明の一実施形態は、下流濃縮/仕上げ工程を包含し、前記下流精製工程は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード(「TFF」)下での精密ろ過(「MF」)によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含む大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。プラスミドDNA精製体制の最終仕上げ工程の一部としてプラスミドDNAを濃縮するために、限外ろ過(「UF」)ではなく、MFを用いた沈殿を使用することは、数多くの理由のために好ましい。まず、溶液相プラスミドDNAは、工場生産量を精製するために限外ろ過法を大規模化した場合に、剪断損傷を受け易い。さらに、溶液粘度は、精密ろ過条件下で低下するので、増加した濃度でより管理可能であり、及びフィルター面積を減少させる物質を与える。これにより、透析ろ過緩衝液に対して必要な容量を大幅に低下させることもできる。上記(a)において沈殿させるべき高次コイルプラスミドDNAは、先行する上流及び下流プロセスの結果として、細胞可溶化液が濃縮されており、従って、本発明の濃縮/仕上げ精製技術は、全プラスミド精製体制における最後のプロセスの1つとなっている。例えば、本発明の一実施形態において、高次コイルプラスミドDNAは、以下の工程:(i)リゾチームの存在下又は不存在下での、好ましくはリゾチームの存在下での細胞溶解、(ii)本明細書に記載されているポリマー(例えば、PEG)による細胞細片の凝集など(但し、これに限定されない。)可溶化液の清澄化、(iii)陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)など、界面活性剤による、プラスミドDNAの単回又は段階的沈殿、(iv)塩溶液を用いた、プラスミドDNAの選択的溶解、(v)hcCaSiO3上への単回又は段階的な吸着による残留不純物の除去、及び(vi)接線流ろ過モード下での前記沈殿されたプラスミドの沈殿及び精密ろ過を介したプラスミドDNAの濃縮を含む(但し、これらに限定されない。)プロセスによって、大規模微生物発酵の細胞可溶化液から精製される。このリストのうち、本発明の最終濃縮/仕上げ工程は、単位操作(vi)に相当する。上に列記されているさらなる精製プロセスは、当業者に公知であるか、又は、例えば、本願及び/又は米国特許出願09/875,379号(上記)(参照により、本明細書に組み込まれる。)中に詳しく記載されている。
【0054】
本発明の最終下流濃縮/仕上げ精製工程を実行する前に、先行する上流及び下流精製プロセスの結果、高次コイルプラスミドDNAは宿主細胞可溶化液中に濃縮されている。例えば、本発明の前記最終濃縮/仕上げ精製工程は、米国特許出願09/875,379号(上記)に例示されている複数プロセスのプラスミドDNA精製方式内に組み込むことが可能であり、粉末化された形態の臨床等級プラスミドDNAの大量をもたらし、これは、所望であれば、選択した液体製剤中に再懸濁することが可能である。一例として、(例えば、本発明の一部として記載されている新規上流精製プロセスを含む(但し、これらに限定されない。)上流精製プロセスによって)微生物宿主細胞可溶化液の清澄化後、前記清澄化された可溶化液からプラスミドDNAを沈殿させるために、陽イオン性界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド(CTAB))を使用し得る。プラスミドDNAの選択的沈殿のためにはCTABが好ましいが、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド(TTA)、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルアリールトリメチルアンモニムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はクロリド、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルアミン:クロリド又はブロミド塩、ドデシルアミン又はクロリド塩及びセチルジメチルエチルアンモニウムブロミド又はクロリドを含む(但し、これらに限定されない。)その他のモノアルキルトリメチルアミノ塩を使用し得る。さらに、プラスミドDNAを選択的に沈殿させるために、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(例には、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びベンゾエトニウムクロリド(BTC)が含まれる。)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(市販の製品には、ドミフェンブロミド(DB)、ジデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物及びオクチルドデシルジメチルアンモニウムクロリド又はブロミドが含まれる。)、ヘテロ芳香族アンモニウム塩(市販の製品には、セチルピリジニウムハロゲン化物(CPC又は臭化物塩及びヘキサデシルピリジニウムブロミド又はクロリド)が含まれる。)、シス異性体1−[3−クロロアリル]−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、アルキル−イソキノリニウムブロミド、及びアルキルジメチルナフチルメチルアンモニウムクロリド(BTCH110)、多置換された四級アンモニウム塩(市販の製品には、アルキルジメチルベンジルアンモニウムサッカリナート及びアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート)、ビス四級アンモニウム塩(製品例には、1,10−ビス(2−メチル−4−アミノキノリニウムクロリド)−デカン、1,6−ビス[1−メチル−3−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−プロピルジメチルアンモニウムクロリド]ヘキサン又はトリクロロビソニウムクロリドBuckman BrochuresによってCDQと称されるビスクアット(bisquat)並びにポリマー製四級アンモニウム塩(ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、ポリ[N−3−ジメチルアンモニオ]プロピル]N−[3−エチレンオキシエチレンジメチルアンモニオ)プロピル]尿素ジクロリド及びα−4−[1−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド]などのポリイオネンを含む。)などの、別の四級アンモニウム化合物を使用することが可能である。
【0055】
単回又は段階的様式の何れかで、凝集され及び/又は清澄化された宿主細胞可溶化液からプラスミドDNAを沈殿させるために、CTABを含む(但し、これに限定されない。)陽イオン性界面活性剤を使用することが可能であり、その例は、米国特許出願09/875,379号(上記)中に開示されている。段階的な沈殿プロセスには、低カット及び高カット沈殿工程が含まれる。細胞細片及び非高次コイルプラスミドDNAを細胞可溶化液から沈殿させるのを助けるために低カット沈殿工程を使用することが可能であり、目的の高次コイルプラスミドDNAは上清中に残存する。本発明の一実施形態において、前記細胞可溶化液は、凝集されるが、凝集された物質を未だ除去しなくてもよく、又は既に清澄化されていてもよい(すなわち、例えば、凝集された物質の遠心を介した後凝集及び可溶化液の清澄)。この低カット沈殿の後には、高カット沈殿工程が続くことが可能であり、これにより、目的の高次コイルプラスミドDNAは、タンパク質、RNA及びエンドトキシンなどの可溶性不純物から沈殿除去される。米国特許出願09/875,379号(上記)に詳述されているように、陽イオン性界面活性剤CTABの段階的添加は、STET緩衝液中の清澄化された可溶化液に2%(w/v)CTAB溶液を供給すること、約0.25%〜約0.35%(w/v)のCTAB、より好ましくは、約0.1%から0.2%(w/v)のCTABからCTABによって誘導された第一の沈殿を生成した後、約0.40%〜約0.60%からCTABによって誘導された第二の沈殿を生成することを含むことができ、前記範囲は、標準的なSTET溶解緩衝液(例えば、約50mMのTris−HCl、約pH7.0−9.0、約50−100mMのEDTA、約8%のスクロース及び約2%のTriton(R)−X−100)と同時に使用するのが最良である。様々な緩衝液系の何れかの特性に対して調整するために沈殿範囲を変化させることは当業者の能力の範疇に属する。従って、本発明の一実施形態において、低カット界面活性剤沈殿工程は、凝集後に細胞可溶化液を含有するDNA−プラスミドから残留タンパク質及びエンドトキシンをさらに除去するために使用される(実施例1、下記参照。)。より具体的には、ホットスポットろ過を防ぐために、約1時間にわたって、約0.15%の最終濃度まで、40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを細胞可溶化液に添加することが可能である。この低カット界面活性剤沈殿工程が、凝集された可溶化液に対して、前記可溶化液の清澄化前に(すなわち、凝集された細胞細片の除去前に)行われる場合には、前記可溶化液は、続いて、遠心法のみによって、又は仕上げろ過工程と組み合わせた遠心法によって清澄化することが可能である。本発明のさらなる実施形態において、単回の高カット界面活性剤沈殿工程は、全下流プラスミドDNA精製プロセスにおける第一の工程として(すなわち、可溶化液清澄化後に)使用することが可能である。従って、一実施形態において、約0.40%と約0.60%の間の最終濃度まで、本発明の新規上流精製プロセスによって作成された、凝集された及び/又は清澄化された可溶化液にCTABが添加され、前記範囲は、上記標準的なSTET溶解緩衝液とともに使用すると最良である。同じく、様々な緩衝液系の何れかの特性に対して調整するために前記沈殿範囲を変化させることは当業者の能力の範疇に属する。従って、(例えば、単独で、又は仕上げろ過と組み合わせた、沈降/デカント又は遠心方法によって)宿主細胞細片浮遊塊を除去する前又は除去する後に、何れかの残留タンパク質及びエンドトキシン(低カット工程)及び/又は高次コイルプラスミドDNA(高カット工程)が沈殿されるような最終濃度まで、細胞可溶化液に2%(w/v)界面活性剤溶液を供給することによって、陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)を添加することが可能であり、ここで、両界面活性剤沈殿工程は、プラスミドDNAを不純物からさらに分離させる機能を果たす。(米国特許出願09/875,379号、上記に記載されているような)その後の塩溶解のために、(高次コイルプラスミドDNAを含有する)フィルターケーキ沈殿物を生じさせるために、単回又は段階的な陽イオンベースの界面活性剤工程には、ろ過工程を伴う。(高次コイルされたプラスミドDNAを含む)回収されたフィルターケーキの塩溶解は、最適なイオン強度及び組成の緩衝溶液中で行われる。様々な塩の増分で、溶液中の高次コイルプラスミドの濃度を測定することによって、又は、間接的に、溶液粘度を測定することによって濃度が測定される。
【0056】
本発明の一部として記載されている新規濃縮/仕上げ工程を介して、そこから高次コイルプラスミドDNAが精製される、プラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液の生成を補助するために使用され得る別の先行する下流精製技術は、合成の水和されたケイ酸カルシウムLRATM(Advanced Minerals Corporation,Lompoc,CA 93438)など、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウム(hcCaSiO3)上に、単回又は段階的な様式で、残存不純物を吸着させることである。米国特許出願09/875,379(上記)中に詳しく記載されているように、微生物宿主細胞可溶化液へのhcCaSiO3の添加により、高次コイルプラスミドDNAから離れて残留不純物が吸着される。水和されたケイ酸カルシウムは、様々な不純物(界面活性剤(例えば、CTAB、Triton(R))、エンドトキシン、ゲノムDNA、プラスミド分解物、タンパク質及びRNAを含むが、これらに限定されない。)に結合する。添加に必要とされるhcCaSiO3の正確な量は、(i)存在する不純物の量、(ii)緩衝液の状態(例えば、塩濃度)、(iii)溶液中の総DNAの量、(iv)溶液の容量によって支配され、並びに、おそらくは(v)精製プロセスを通じて使用される塩の温度及び種類を含む他の変数によって支配される。従って、具体的な精製操作中に添加されるべきhcCaSiO3の量は変動し得ることが明白である。添加されるべきhcCaSiO3の量は、上述の条件に応じて、及び特定の操作に対して利用可能なhcCaSiO3のロットに応じて生じ得る差に応じて、最大約200gのhcCaSiO3/総DNAのグラムの範囲にある。実施例の部8は、約8から約200グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラムの範囲についての指針を与える。典型的なプラスミドDNA精製操作の間、添加されたhcCaSiO3の好ましい範囲は、約125から200グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラム、より好ましくは、約30と約70グラムのhcCaSiO3/総DNAのグラムである。本発明者らは、典型的なプラスミド精製操作には、約30−70gのhcCaSiO3/総DNAのグラムが必要であることを見出した。但し、この場合にも、hcCaSiO3吸着条件は、上で説明された条件に関して、上方向又は下方向に規模を変動させることができ、従って、200グラムのhcCaSiO3/総DNAグラムまで、前記範囲の高い方の末端でhcCaSiO3を添加する必要がある可能性がある。例えば、NaClのより高い濃度は、DNA及びその他の不純物に対するLRATMの能力を増加させる。従って、幾つかの例では、より高い塩濃度を検討することが有用であり、これは、必要とされるhcCaSiO3の量を減少させるはずである。有用な塩濃度は、例えば、最大約5MのNaClのNaClを用いた範囲であり得ると予測される。上述のように、hcCaSiO3上への不純物の吸着は、単回又は段階的な様式で起こり得る。本明細書の実施例8に記載されているように、第一の吸着工程が、界面活性剤によって誘導された沈殿されたプラスミドDNAの塩溶解と組み合わされる段階的LRA吸着プロセスは、より頑強な再溶解をもたらす。次いで、(a)再懸濁中のケイ酸カルシウムの量を最小化するために、及び(b)残留宿主細胞ゲノム、開環プラスミド及び直鎖プラスミドDNAを低下させるための最初の仕上げ工程として作用するために、第二段階のケイ酸カルシウムバッチ吸着が使用される。
【0057】
先行する様々な上流及び下流両精製技術の結果として高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液を生成すると共に、一般に、全プロセスの最終産物精製工程に相当する濃縮及び最終緩衝液交換工程の幾つかの種類が実施される。この最終濃縮/仕上げ工程によって、実質的に全ての残留不純物がプラスミドDNA含有溶液から除去され、前記プラスミドDNAを、生理的に許容される緩衝液中に所望の産物濃度に濃縮することが確保される。本発明は、接線流ろ過モードでの精密ろ過と組み合わせて、DNA沈殿剤(例えば、ポリエチレングリコール、アルコール、PEI、ポリアミン、陽イオン性界面活性剤、込み合ったポリマー(crowding polymer)、三重螺旋剤(triplex agent)及びその他の有機剤)を用いる周知の方法によるプラスミドDNAの沈殿を含む新規最終濃縮/仕上げ工程の開示に関する。本明細書に記載されている新規濃縮/仕上げ工程の最終目標は、粉末製剤をもたらすプラスミドDNAの精製である。しかしながら、前記粉末化された産物が所望の液体中に再懸濁される場合には、液体製剤も実現することができる。本発明のこの部分は、大規模なプラスミドDNA精製体制をしばしば悩ませるスケールアップの問題を解決する。例えば、精密ろ過濃縮と組み合わせた、PEG又はアルコールの何れかによるプラスミドDNA沈殿を使用することにより、プラスミドDNA精製プロセスのための最終緩衝液交換/濃縮手法において一般的に使用される最終限外ろ過手法を直接置き換えることが可能である。限外ろ過は、しばしば、高い再循環速度と大きな膜面積を必要とし、夾雑物の排除を最小にする。以前の出願である米国特許出願09/875,379(上記)に開示されているバッチアルコール沈殿ベースのバッチプロセスは、これらの限界を回避し、必要な膜面積と再循環速度を劇的に減少させ、粉末化されたDNAを作製して大量貯蔵の必要性を最小化する。しかしながら、バッチアルコール沈殿は、大きな溶媒比と過剰な溶媒廃棄物の廃棄を必要とし、大規模な溶媒沈殿に対しては非実用的である。精密ろ過をベースとした本発明のプロセスは、別の液体大量限外ろ過アプローチに必要とされる膜面積を大幅に減少させ、アルコール沈殿とともに使用されると、連続的な溶媒回収系が、アルコール沈殿された産物のバッチ型ろ過にしばしば伴う困難を回避する。
【0058】
従って、本発明は、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の一実施形態において、前記高次コイルプラスミドDNAは、ポリエチレングリコール(PEG)及びアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)からなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(a)において沈殿される。工程(a)において高次コイルプラスミドDNAを沈殿させるために使用され得るさらなるDNA沈殿剤には、PEI、ポリアミン、陽イオン性界面活性剤、込み合ったポリマー、三重螺旋剤及びその他の有機溶媒が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
従って、本発明は、(a)ポリエチレングリコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。PEGによるプラスミドDNAの沈殿は急速且つ穏やかであり、DNAに対してほとんど損傷を引き起こさない(Humphreys,G.O.et al.,1975,Biochim.Biophys.Acta.383:457−463)。本明細書において先述されているように、プラスミドDNAのPEG沈殿は、DNA溶液中のポリマーの濃度に高度に依存する(Humphreys et al.,1975、上記参照)。10%の最終濃度になるように、清澄化された細胞質抽出物にPEGを添加することは、前記抽出物内に含有された全てのプラスミドDNAを沈殿させ、幾つかのRNA及び多くのタンパク質を溶液中に残存させることが示された(Pulleyblank,D.et al.,1983,Molc.Biol.Rep.9:191−195)。Lis及びSchlief(1975、上記)は、PEGを用いて、異なる分子量のDNA分子を分離できることを示した。より高い分子量のDNAがより低いPEG濃度で優先的に沈殿することを決定した後、彼らは、様々なPEG濃度を用いて前記分子を沈殿させることを基礎とした、プラスミドDNA分子用のサイズ分画法を開発した。PEGは、伸長されたコイル状態からコンパクトな球状状態へのDNA分子の凝集を促進し(Minagawa, K et al.,1994,Biopolymers 34:555−558)、ここにおいて、前記DNA分子は、一次相転移を行う (Yoshikawa,K.et al.,1996,J.Am.Chem.Soc.118:929−930)。PEGの低濃度において、DNA分子は伸長されたコイルとして留まるが、高い濃度では、DNA分子は小さな球状高次構造へと収縮する。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、PEGがプラスミド含有溶液に添加されるにつれて、PEGは、DNAとではなく、水分子と相互作用するように、PEGは体積排除によってDNAを沈殿させるものと考えられる。DNAは、その負の表面電荷の故に、PEGとは相互作用しない。より多くのPEGが添加されるにつれて、この排除効果は、局所DNA濃度が最終的に溶解度の限界を超えるまで、より多くのDNAを小さなポケット中に無理に詰め込む。本明細書の実施例に示されているように、完全な沈殿に必要とされるPEGの濃度は、主に、塩濃度、PEG分子量、産物の不純度及びプラスミドサイズの関数である。
【0060】
上述のように、プラスミドDNAの、PEGによって誘導された沈殿の機序は、プラスミドDNA含有溶液中のPEG沈殿剤の濃度及び分子量の両方に大きく依存する。下記の実施例の部に記載されているように、400から10,000DaまでのPEG分子量が、溶液からプラスミドDNAを沈殿させる能力について調べた(図7B)。前記研究は、DNAが10%(w/v)のPEG400中で完全に可溶性であるが、PEGの分子量が増加するにつれて、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界質量が減少することを示している。従って、本明細書に例示されている精製プロセスは、本発明のこの本部分についての沈殿剤として、PEG6000又はPEG8000の何れかを使用するが、当業者であれば、プラスミドDNAを効果的に沈殿させるために、実質的にあらゆる分子量のPEG、特に、約3,000〜約20,000のPEG分子量範囲の間で使用することが可能なことを理解する。しかしながら、本明細書に記載されている最終濃縮/仕上げ技術の一部として、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる具体的な分子量のPEGを選択する場合、前記PEG分子量を補完するためにPEG濃度を調整しなければならない。特に本願の教示に照らして、この決定を行うことは当業者の能力の範疇に属する。例えば、LRA後のろ液からプラスミドDNAを完全に沈殿させるためのPEG8000の適切な濃度を決定することは、本明細書に示されている(実施例の部3)。0.3と1.0mg/mLの間のDNA濃度は大規模な精製手法において遭遇する可能性があるので、この0.3と1.0mg/mLの間でDNA濃度を変動させて、異なる温度及び総DNA濃度の下でこの試験を行った。PEG濃度が約2%(w/v)を上回ると、PEG8000の溶液中でDNA溶解度の急減が認められた(図7A参照)。しかしながら、調べた範囲については、溶液温度又はDNA濃度によるDNA溶解度に対する影響は存在しなかった。図7A中の結果は、検査した濃度範囲内のDNAが約4%のPEG8000によって完全に沈殿されることを示しているのに対して、実施例の部3に記載されている研究の残りでは8%のPEG8000濃度が選択され、2倍の安全係数を与えた。あるいは、実施例8に例示されている精製プロセスは、プラスミドDNAを沈殿させるために10%のPEG6000溶液を使用する。図5に示されている濃度範囲は、プラスミドDNAが、少なくとも8%のPEG6000溶液中に完全に沈殿されることを示している。従って、本発明の一実施形態において、本発明の新規下流濃縮/仕上げプロセスにおける第一の工程として、濃縮されたPEG6000溶液(例えば、50%w/v)は、(例えば、CTABによって誘導されるプラスミドDNAの選択的沈殿及び水和されたケイ酸カルシウム上への不純物の吸着など(但し、これらに限定されない)の先行する精製プロセスの結果)、10%(w/v)の最終濃度まで高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液に供給される。DNA沈殿を確実に完結させるために、プラスミドDNA含有細胞可溶化液をPEGとともに温置する時間を評価することも重要である。PEG添加後の保持時間がDNA沈殿を完結させるのに十分であることを確保するために、PEG沈殿の速度論を調べることが可能である。下記の実施例の部(実施例3)に開示されている研究において、PEGとの約5分の温置期間後にDNAの99%超が沈殿し(図8参照)、例えば、本明細書に例示されている精製プロセスに使用されているように、2時間の保持時間が十分すぎることを示している。
【0061】
下記の実施例の部に詳述されているように、米国特許出願09/875,379(上記)に開示されている従来のDNA精製プロセスは、濃縮されたプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞可溶化液(例えば、LRA後のろ液などの、ケイ酸カルシウム後のろ液)からプラスミドDNAを精製するための最終仕上げプロセスの一部として、膜限外ろ過/濃縮工程を使用した。この後に、調合緩衝液PBS中への緩衝液交換のために10倍の透析ろ過を行った(図6A参照)。この最終仕上げ工程は、約100L又はこれ以下の容量で満足できるが、これより大きな製造規模の精製プロセスは、ポンプサイズ及び流速が技術の限界に達し始めることを示した。従って、プロセスのスケールアップという問題の多い課題を回避するために、本発明は、プラスミドDNA精製方式において一般的に用いられる最終仕上げ技術(例えば、第一の限外ろ過、濃縮工程後の透析ろ過、緩衝液交換工程)を、PEG沈殿工程後に行われる、接線流ろ過下での精密ろ過を含むDNA濃縮プロセスを置き換えることに関する(図6Aを図6Bと比較されたい。)。接線流ろ過下での精密ろ過は、段階的ろ過プロセスの一要素に相当し(前記精密ろ過(及びその後の透析ろ過)は、前記プロセスの第一の部分である。)、沈殿されたDNA溶液から残留RNA及び不純物を排除するのに役立つ。第二のろ過工程(及びその後の透析ろ過)は何れも、DNAをさらに濃縮し、PEGをエタノールと置換して、微細な粉末化された形態を取得するために最終の湿潤産物を完全な真空下で乾燥できるように、DNAを脱水する。この最終濃縮/仕上げ技術には、先に開示されたプロセス(図6を参照)の限外ろ過/透析ろ過技術に比べて、より多くの工程を必要とするが、本明細書に記載されているPEG沈殿プロセスは、産物の品質を損なうことなく、又は極端に大きなポンプ及び流速の使用を必要とすることなく、大きな製造容積により容易に拡張することが可能である。重要なことに、この新しいプロセスは、さらに不純物を低下させる最終精製工程を含むが、先行するプロセスは、濃縮及び緩衝液交換のために使用されるに過ぎなかった。さらに、前記工程が無菌的に実施される限り、上記第二のろ過/透析ろ過工程中にエタノールを添加するために、DNA産物が乾燥された後の滅菌ろ過の必要性がなくなっている。重要なことに、粉末化された産物は、液体製剤中に再懸濁することも可能である。従って、本明細書に記載されている新規単位操作の利点は、おそらく2桁又はそれ以上、残留RNAレベルをさらに低下させること、過剰な流速及び大きなポンプが必要なくなること、サイクル時間が短縮すること、並びに粉末化された産物が生成されることであり、必要な保存スペースが減少し、おそらくは、より安定な産物が得られる。
【0062】
プラスミドDNAが、一旦、上述のようにPEGにより沈殿されたら、PEGによって沈殿されたプラスミドDNAスラリーを同時に濃縮する精密ろ過工程を介して、溶液から不純物が排除され、ここにおいて、前記精密ろ過工程は、接線流ろ過モード下で行われる。従って、この精密ろ過プロセスは、浸透液とともに失われた不純物を消費して、沈殿されたプラスミドDNAを保持液中に濃縮する。膜ろ過は、精製体制において広く使用されている分離技術である。膜の種類に応じて、膜ろ過は、精密ろ過又は限外ろ過として分類することが可能である。精密ろ過は、約0.1〜約10.0ミクロンの間の典型的な膜孔径を用いた、サイズ排除圧力駆動膜プロセスを表す。(1)シングルパス、デッドエンド又はダイレクトフローろ過(「DFF」)及び(2)クロスフロー又は接線流ろ過(「TFF」)という2つの主要な膜ろ過方法が存在する。DFFを使用すると、沈殿されたプラスミドDNAスラリーから排除されるべき不純物は、しばしば、沈殿されたプラスミドDNAとともに膜表面に目詰まりした状態になり得ることが見出された。TFFは、沈殿されたプラスミド溶液を再循環させることによって、この目詰まりの問題を解決し、溶液が、膜の表面まで接線方向に流れるようにする(クロスフローという用語と同義)。液体の掃引作用は、ゲル層の形成及び表面の汚損を最小限に抑えるように作用し、従って、TFFは、しばしば、DFFより速く、より効率的である。全ての接線流技術に関連する2つの重要な変数、すなわち、膜間圧力(すなわち、フィルターの孔を通じて不純物を押す力)及びクロスフロー速度(すなわち、膜を横切った可溶化液の流速)が存在する。液体は、フィルターの膜表面を横切って(クロスフロー)、試料フィードから汲み出され、保持液として、試料フィード中に戻される。締め具又はバルブによって保持液チューブに負荷される背圧は、膜孔より小さな不純物を、フィルターを通じて、ろ液(又は浸透液)画分中に誘導する膜間圧を生み出す。クロスフローは、膜の表面上に保持されているより大きな分子を掃引して、保持液としてフィードに戻す。従って、TFFを効率的に用いるための重要なポイントは、試料の最大容量が、孔の目詰まりを作り出すことなしにろ過できるように、膜間圧及びクロスフロー速度を制御することである。
【0063】
下記実施例の部は、精密ろ過の間にTFFを使用することは、沈殿されたプラスミドDNAを濃縮し(すなわち、作業容積を低下させる。)、沈殿後に溶液中に残された全ての残留RNA及び非産物可溶性物質を洗浄除去するように作用する。開示されている特定の実施例では、米国特許出願09/875,379号(上記)に定義されているLRA後のろ液は、3MのNaCl、1.0mg/mLの精製されたDNA及び幾らかの残留RNAのプラスミド含有溶液である。プラスミドDNAを沈殿させるためにPEG8000MWを使用し、最終溶液濃度が約8%(w/v)になるまで、15分にわたって、約33%(w/v)の濃縮された溶液として添加した。沈殿を2時間放置した後、0.45ミクロンの中空ファイバー膜、接線流フィルターを用いて濃縮した。膜上への搭載は、180gのDNA/膜面積m2であった。再循環速度は9L/m2/分であり、流量は、2.5L/m2/分に調節した。20倍濃縮が達成されるまで、浸透液を収集した。本発明の一実施形態において、TFF下で精密ろ過を用いて、本明細書に記載されているように、PEGによって沈殿されたDNAが濃縮された後、次いで、PEG溶液に対して沈殿を透析ろ過し、ここにおいて、前記透析ろ過緩衝液は、プラスミドDNAが透析ろ過中に沈殿された状態を確実に保つのに十分な濃度のPEG及び塩を含有する。例えば、透析ろ過緩衝液が、先行する沈殿工程中で使用されたPEGの概ね同じパーセント(例えば、上記例では、及び実施例の部3でさらに記載されているように、8%w/vPEG8000)及び約1.2MのNaClを含有する場合には、プラスミドDNAは、沈殿された状態を保つ。実験は、約100と約600mMのNaClの間の塩濃度が、50%(v/v)エタノール溶液中にDNAを沈殿させ続けるのに好ましいことを示している。従って、以下でさらに記載されている第二のろ過/透析ろ過工程が600mM付近のNaCl限界で稼働するためには、第一の透析ろ過から出る塩濃度は約1.2Mであることが好ましい。より高いNaCl濃度値を使用することが可能であるが、これは、その後のエタノール添加/脱水工程(以下でさらに記載されている。)の間に、残留塩のより大量の沈殿を引き起こし得る。あるいは、より低いNaCl濃度(例えば、100mM)を加えた緩衝液に対して、沈殿されたDNAを透析ろ過することが可能であるが、これらの条件下では、前記緩衝液のPEG濃度は、低い塩を補うように増加させるべきである。本明細書の実施例に示されているように、プラスミドDNAは、まず、約8%(w/v)の最終溶液濃度のPEG8000を用いて沈殿された場合には、上記TFF精密ろ過後に、沈殿されたDNAスラリーを透析ろ過するために、約1.2MのNaClを加えた約8%(w/v)のPEG8000溶液が好ましい。PEGは体積排除によってDNAを沈殿させ、エタノール沈殿を用いた場合のように脱水によって沈殿させるのではないので、PEGによって沈殿されたプラスミドは、混合によって、より小さな片へと解離され得る柔らかなゲル様沈殿を形成する。
【0064】
プラスミドDNAが、まず、PEGで沈殿される、本発明の最終濃縮仕上げ工程の第二のろ過/透析ろ過プロセスは、(a)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを部分的に脱水すること、(b)ろ過によって、工程(a)の脱水されたプラスミドDNA沈殿を濃縮すること、及び(c)100%エタノールに対して、沈殿されたプラスミドDNAを透析ろ過することを含む。PEGによって沈殿され、(先行するMF/透析ろ過工程を介して)濃縮されたプラスミドは、沈殿の特徴が体積排除から脱水機序へと変化するような最終エタノール濃度になるように、透析ろ過された沈殿へ、エタノール性溶液(例えば、100%又は200アルコール度数)を供給することによって脱水することが可能である。その結果、沈殿されたプラスミドDNAの物理的特性は、ゲル様物質から、より硬く、より圧縮可能な沈殿へと変化する。得られた沈殿は、多孔性の構造へと詰め込まれて、第二のろ過工程(上記工程(b))において、優れた流量と高い搭載能力をもたらす。本発明によれば、約100%(v/v)未満のエタノールを含有するエタノール性溶液中で沈殿したDNAを温置すると、沈殿した高次コイルプラスミドDNAのエタノールによる部分的脱水が生じる。従って、上記工程(a)の部分的脱水を達成するために、異なるエタノール濃度を使用することが可能であるが、約30−80%(v/v)の間の範囲内の最終エタノール濃度が好ましい。約30%(v/v)を下回る濃度は、DNAを再び溶液中に再溶解させるリスクがあるのに対して、約80%(v/v)を上回る濃度は、プラスミドDNAとともに、塩を沈殿させ始める。本発明の一実施形態において、PEGによって沈殿され、(上記先行するMF/透析ろ過工程を介して)濃縮されたプラスミドは、50%(v/v)の最終濃度まで、100%(200アルコール度数)のエタノールの添加によって脱水される。プラスミドDNA沈殿を脱水させた後、前記沈殿されたDNAスラリーは、ろ過によってさらに(例えば、約30g/Lまで)濃縮され、次いで、真空乾燥の準備のために、100%エタノールに対して透析ろ過される。本明細書に記載されている実施例において、脱水されたプラスミドDNAスラリーは、圧力ろ過及び真空乾燥(一般に、単一プレートNutscheフィルター乾燥機として知られている。)を可能とする撹拌された細胞操作下において、フィルター乾燥機中での前記第二のろ過によって濃縮される。前記系の撹拌された細胞操作は、チャンネルを通じた前記溶液の再循環によるのではなく、羽根車によって、フィルター表面上に、アルコール沈殿されたDNA溶液の流れを作り出す。本明細書に開示された第二のろ過/透析ろ過プロセスを例示するために使用されたフィルター乾燥機には、25μmのステンレス鋼メッシュフィルターが装着される。従って、新規下流濃縮/仕上げプロセスの本部分の第二のろ過工程は、撹拌された細胞モード下で、約0.1μm未満と100μmの間の孔径、好ましくは、約25μmの孔径のフィルターを有する単一プレートNutscheフィルターを使用して行われる。孔径は、ろ液及び全ての付随する不純物をフィルターに通過させながら、プラスミドDNA沈殿物をフィルター上に捕捉するためにのみ重要である。下記の実施例において、濃縮されたDNA沈殿物は、次いで、同じフィルター−乾燥機ユニット中、3.2L/m2/分に制御された流量、100%(200アルコール度数)アルコールに対して透析ろ過される。ろ過に引き続き、25〜37℃で約24時間、粉末を真空下で乾燥し、微細な産物粉末を形成する。あるいは、粉末化されたDNA産物は、選択した製剤緩衝液中に再懸濁することも可能である。この第二のろ過/透析ろ過操作は、残存する全てのPEGを溶液から除去するために、産物をさらに脱水するために、及び可能な限り多くの塩を除去するために実施される。
【0065】
従って、本発明は、(a)ポリエチレングリコールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モードでの精密ろ過を含む段階的ろ過プロセスを用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。この段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過モード下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された形態に保つのに十分なPEGの十分な濃度を含有し、及び高次コイルプラスミドDNAを沈殿された形態に保つのに十分な塩を場合により含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。好ましい実施形態において、工程(b)の透析ろ過緩衝液は、約10%(w/v)のPEG6000と約1.2MのNaClを含有する。この沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過及び第一の透析ろ過工程後に、約30%と約80%(v/v)の間の最終濃度になるようにエタノールを添加することにより、工程(c)において脱水することができる。好ましい実施形態において、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAは、精密ろ過/透析ろ過保持液へのエタノールの添加により、約50%(v/v)の最終濃度まで部分的に脱水される。さらなる好ましい実施形態において、上記工程(d)及び(e)の第二のろ過及び透析ろ過は、撹拌された細胞モードで動作される単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)ステンレス鋼のメッシュ(またな均等物)スクリーンが装着されたフィルター乾燥機中で行われる。従って、本発明は、(a)PEGで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(b)接線流ろ過下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、(c)エタノールの添加により、前記濃縮された、沈殿されたDNAを部分的に脱水すること、及び(d)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記部分的に脱水された、沈殿されたDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。
【0066】
本発明は、さらに、(a)前記高次コイルプラスミドDNAを、アルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮することを含む大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。前記限外ろ過が、標準的なポンプ(例えば、ローブポンプ)を用いた工場規模の製造方法に改変される場合に、溶液相プラスミドが剪断損傷を受け易いので、産物プラスミドDNAを濃縮するために、限外ろ過ではなく、(PEG又はアルコールの何れかによる)沈殿の使用が好まれる。米国特許出願09/875,379(上記)中に記載されている、より初期の開発作業は、プラスミドDNAの乾燥粉末形態を得るためにバッチモードで沈殿溶媒としてエタノールを使用できることを示した。しかしながら、このアプローチは、沈殿後ろ過及び洗浄工程に関して一貫しておらず、洗浄グラジエントを徐々に負荷しなければ、遅いろ過速度と著しいケーキの圧縮を示す。従って、本発明の一実施形態において、本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程は、プラスミドDNAの精製された原末形態を最終的に生成するために、接線流ろ過モードでの精密ろ過によって増強されたアルコール沈殿を特徴とする。本アプローチの強化として、精密ろ過を同時に行う連続的沈殿は、バッチアルコール沈殿法に比べて、容器容積を著しく減少させ得る。
【0067】
前述されているように、細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる(PEG又はアルコールにより沈殿させることを含むが、これに限定されない。)という第一の工程を包含する本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程を実施する前に、上流精製プロセス及び先行する下流精製プロセス(上で詳しく記載されている。)の両方の結果として、前記細胞可溶化液中では高次コイルプラスミドDNAが濃縮されている。高次コイルプラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液が生成されたら、前記プラスミドDNA含有可溶化液は、全ての残留不純物を除去するためにさらに処理され、プラスミドDNA精製体制中の最終仕上げ工程に相当する。アルコール沈殿を含む本発明の最終下流濃縮/仕上げ工程を実証するために、まず、(米国特許出願09/875,379号(上記)に記載されているように)LRA後のろ液から、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる。何らかの特定の理論に拘泥するものではないが、様々な溶媒(エタノール、イソプロパノール及びメタノール)及び塩がプラスミドDNAを沈殿する能力を調べる、本明細書の実施例の部に記されている実験は、DNA沈殿の機序に対して洞察を与える。DNAは、互いに反発する、負に帯電したリン酸基に加えて、疎水性の塩基対を含有する。ホスファートの反発が克服されれば、疎水性領域が堆積し、DNAが溶液から沈殿する。図9Bは、プラスミドの溶解度が、塩又は溶媒の何れかを添加することによって減少することを示している。溶液のイオン強度(塩濃度)は、静電的に溶解度に対して影響を与え、ここで、陽イオンは、負に帯電したホスファート基の反発を遮蔽する。当業者は、本明細書に記載されている調査及び本分野で既に開示されている調査を用いて、本発明の最終濃縮/仕上げ精製工程中の第一の工程として、プラスミドDNAをアルコールで沈殿させるときの、溶媒と塩の間の相互作用を理解する。
【0068】
上述のように、本発明の一実施形態は、(a)エタノールで前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿されたプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本明細書の実施例の部に詳しく記載されている研究は、約30%と33%(v/v)の間のエタノール濃度及び約1.8と3.4Mの間のNaCl濃度により、0.5g/Lのプラスミド溶液中で、プラスミドDNAの溶解度の鋭い減少が起こることを示す。上述のように、当業者であれば、アルコールによるプラスミドDNA沈殿の効率において、溶液イオン強度(塩濃度)が役割を果たしていることを認識し、従って、前記プラスミドの沈殿を達成するために特定のDNA濃度のプラスミド溶液に対して十分な濃度で塩及びエタノールを与える必要があることを認識する。さらに、プラスミドDNAがその後のろ過及び洗浄工程の間に沈殿された状態を確実に保つために、前記成分の適切な濃度を維持することの重要性が、当業者によって認識される。本発明の一実施形態において、本明細書に開示されている下流濃縮/仕上げプロセス(上記工程(a))の第一の工程として、約40%(v/v)の最終濃度まで、プラスミドDNAが濃縮された細胞可溶化液(細胞可溶化液は、概ね約3MのNaClを含有する。)にエタノールを添加することにより、高次コイルプラスミドDNAを沈殿させる。
【0069】
本発明のさらなる実施形態において、プラスミドDNAがアルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)によって沈殿された後に、前記沈殿されたプラスミドは、次いで、段階的ろ過プロセスを介して濃縮される。前記段階的なろ過プロセスは、(a)接線流ろ過モード下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、(b)エタノール性溶液のエタノール濃度が高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール性溶液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。本明細書に記載されている実施例において、枝付きフラスコ及び0.2ミクロンの膜フィルター(2.1cm2のフィルター面積)を用いて、直接フローろ過の下、80%(v/v)EtOHに対して、沈殿したプラスミド溶液(約40%(v/v)エタノール及び約3M NaClで沈殿された0.86g/Lのプラスミド溶液)を透析ろ過する試みが行われた。ろ過が進行するにつれて、流動の著しい減少が顕著であり、ゲル様フィルターケーキの形成がもたらされた。大規模なバッチろ過の場合、従って、5フィートの直径の0.2ミクロンフィルター(19.6平方フィートの膜面積)を用いると、直接フロー下でのろ過は、243時間後に完了すると推定された。この非実用的なろ過時間のために、表面積の大きな接線流ろ過(「TFT(tangential flow filtration)」)膜が代替法として検討された。この目的のために、0.22μmPVDF接線流ろ過膜を用いて、約40%(v/v)エタノール及び約3MのNaClで沈殿されたプラスミドDNAを精密ろ過した。懸濁液は15mL/分で容易にろ過され、実験中、浸透液の流量は減少しない。このことは、膜表面から固体が自由に除去され、ケーキ層を形成しなかったことを示している。
【0070】
アルコールによって誘導されるプラスミド沈殿を伴う段階的ろ過プロセスの精密ろ過工程及び第一の透析ろ過工程は、残留塩及び過剰の水を溶液からともに除去するために、並びに同時に、アルコール沈殿された(例えば、エタノール沈殿された)プラスミドDNAを濃縮するために行われる。このプロセスは、浸透液とともに失われた塩及び水を消費して、沈殿されたプラスミドDNAを保持液中に濃縮する(すなわち、作業容積を減少する。)。濃縮され、沈殿されたプラスミドDNAは、次いで、透析ろ過され、同じく、塩の除去を補助する。本発明の一実施形態において、TEF精密ろ過によって濃縮された、エタノールで沈殿されたプラスミドDNAは、続いて、約60%と約100%の間のエタノールを含む溶液に対して透析ろ過される。プラスミドDNAは、塩の不存在下でさえ、80%v/vエタノール溶液中に完全に不溶性であるので、プラスミドDNAが不溶性である条件を維持しながら、懸濁液からNaClを除去するために、80%エタノールを用いた透析ろ過を使用することが可能である。次いで、沈殿されたプラスミドDNAスラリーを、第二のろ過工程によってさらに濃縮し、100%(アルコール度数200)エタノールに対して、二度目の透析ろ過を行う。本発明の一実施形態において、この第二のろ過/透析ろ過プロセスは、上述のように、単一プレートNutscheフィルター乾燥機を含む(但し、これに限定されない。)フィルター乾燥機中で実施される。湿潤粉末は(例えば、25〜37℃で)真空乾燥することが可能であり、得られた粉末化されたDNA産物は、選択した調合緩衝液中に再懸濁され得る。
【0071】
バッチモードでの、アルコールによって誘導されたプラスミド沈殿は、バッチ容量及び沈殿のために必要とされるエタノールの量の両方を保持するのに十分大きな容器を必要とする。しかしながら、一定の容量を維持するために精密ろ過がそこから同時に液体を除去する、より小さな中間の容器中に、フィード及びエタノールの両方を連続的に汲み入れることができるのであれば、高い溶媒比で沈殿が実施される場合でも、大きな沈殿容器はもはや必要とされない。このモードでは、溶媒廃棄液は、浸透液を継続的に蒸留し、沈殿容器へとリサイクルすることによっても最小化することが可能である。従って、本発明の一実施形態は、(a)アルコール(エタノール、メタノール及びイソプロパノールを含むが、これらに限定されない。)を用いて前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含み、工程(a)及び工程(b)が、連続的な沈殿/精密ろ過条件下で行われる、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを生成する方法に関する。前記連続的沈殿/精密ろ過プロセスは、精密ろ過が同じ容器から同時に実施されて一定容積を保ちながら、撹拌された容器に、エタノールとプラスミド溶液が連続的に添加される場合に行われる。このアプローチに対する補助として、浸透液の連続的な蒸留は、濃縮されたエタノールの沈殿へのリサイクルを提供して、必要とされる溶媒容量を最小化し、より高く、より好ましいアルコール濃度での沈殿を可能とする。従って、本発明の一部として含まれる連続的な沈殿/精密ろ過プロセスは、アルコール(例えば、エタノール)の回収を含んでもよく、又は含まなくてもよい。以下の実施例の部に詳しく記載されているように、精密ろ過膜の目詰まりを避けるために、精密ろ過の開始前に、プラスミド粒子が完全に脱水できる十分な待機時間が必要である。沈殿されたプラスミドDNAが完全に脱水されることを確実にすることは、水和された大きな粒子によるチャネルの目詰まりのために引き起こされ得る圧力の増加をなくすことにも役立つ。連続的な沈殿/精密ろ過アプローチは、沈殿のために高いアルコールレベルを必要とするある種の調製に対して特に魅力的であり得る。
【0072】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている新規上流及び新規下流精製プロセスは、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から得られる高次コイルプラスミドDNAの単離のための単一のプロセス中に組み合わされる。従って、本発明は、さらに、(a)生理的緩衝液中に、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解して、宿主細胞可溶化液を形成させること、(b)宿主細胞細片を凝集することによって前記宿主細胞可溶化液を清澄化させ、高次コイルプラスミドDNAを溶液中に保持すること、(c)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び (d)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の本部分の一実施形態において、上記工程(a)の宿主細胞可溶化液は、リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中での微生物宿主細胞の溶解によって作製される。本発明の本部分の別の実施形態において、工程(a)の宿主細胞可溶化液は、PCT国際出願PCT/US95/09749号及びPCT/US96/07083号に開示されているように、熱交換装置を通じて微生物宿主細胞を通過させることによって作製される。詳しく上述されているように、ポリエチレングリコール(PEG)は、微生物細胞からの高次コイルプラスミドDNAの下流精製のための準備において、清澄化された細胞可溶化液を作製するための、宿主細胞細片の効果的な凝集剤であることが本明細書において示されている。従って、本発明の本部分の一実施形態において、宿主細胞可溶化液は、PEGを用いて、上記工程(b)において清澄化される。PEG凝集剤は、当初の溶解緩衝液の成分であることができ、又は溶解が起こった後に、細胞可溶化液に添加することができる。上で説明されているように、宿主細胞可溶化液を清澄化するために使用されるPEG凝集剤の量は、その分子量に依存する。本発明の好ましい実施形態において、本明細書に記載されているように、宿主細胞細片を凝集するために、約3.7%(w/v)のPEG6000が使用されるが、凝集の達成に対するPEGポリマー濃度と分子量の間の密接な相互関係の故に、本明細書に開示されている全ての具体的PEG濃度及びPEG分子量は指針と解するべきであり、全体として本発明を限定すると解するべきではない。凝集用の細胞可溶化液を調製するために、前記可溶化液は、アルカリpHシフトに供されることができ、続いて、凝集の前に中和に供されることができる。アルカリpHシフトは、濃縮された塩基の添加により、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値へと上昇させることを含む。アルカリシフトされた宿主細胞可溶化液のその後の中和は、約pH7と約pH9の間の値まで、前記細胞可溶化液のpHを低下させる(すなわち、アルカリシフト前の可溶化液の概ね同じレベルまでpHを低下させる。)ことを含む。アルカリpHシフト及びその後の中和プロセスは、PEG凝集剤の添加前又は添加後の何れにおいても行い得る。従って、本発明は、(a)リゾチームを含有するSTET緩衝液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解させること、(b)アルカリpHシフト及びその後の中和へ、前記宿主細胞可溶化液を供すること、(c)PEG凝集剤で宿主細胞細片を凝集させることにより、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、(d)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、並びに(e)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮することを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法に関する。本発明の一実施形態において、溶液中に存在する高次コイルプラスミドDNAは、アルコール(例えば、40%v/vエタノール)及びPEG(例えば、10%w/vPEG6000)からなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(d)において沈殿される。さらに、上記工程(e)の濃縮工程は、段階的なろ過プロセスであり得る。前記プラスミドDNAが、まず、PEGで沈殿されるのであれば、前記段階的ろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程、(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEG及び塩を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、を含む。前記プラスミドDNAが、まず、アルコール(例えば、エタノール)で沈殿されるのであれば、前記段階的ろ過プロセスは、(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程、(b)アルコール性溶液の濃度が前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿されたままに保つのに十分であるアルコール性溶液(例えば、エタノール)に対する第一の透析ろ過工程と、(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに(d)100%(v/v)アルコール(例えば、100%エタノール)に対する第二の透析ろ過工程と、を含む。
【0073】
この目的のために、本発明は、さらに、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記高次コイルプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに(n)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされた方法に関する。本発明の一実施形態では、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。このような事例では、高カット沈殿工程は、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0074】
本発明は、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液の十分量に宿主細胞を溶解させること、(c)宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、STET緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに (n)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスに関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。前記高カット沈殿工程は、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0075】
本発明は、さらに、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、(c)宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残りの不純物を吸着させること、(j)エタノールで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAをさらに濃縮すること、並びに(m)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスに関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。このような事例では、高カット沈殿工程は、次いで、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0076】
本発明は、(a)発酵ブロス又は培地から微生物宿主細胞を採集すること、(b)リゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液の十分量で宿主細胞を溶解させること、(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、STET緩衝液のpHまで中和すること、(e)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記沈殿されたプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、(i)水和され、結晶化された、ケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残留不純物を吸着させること、(j)エタノールで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過を用いて、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、(l)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記脱水された高次コイルDNAをさらに濃縮すること、並びに(m)エタノールを除去するために乾燥させ、微細な粉末化されたDNA産物を残存させることを含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する組み合わされたプロセスにも関する。本発明の一実施形態において、直前に記載されている精製プロセスにおいて、段階的な界面活性剤の沈殿が使用される。前記段階的プロセスは、細胞可溶化液から残留タンパク質とエンドトキシンを除去するための第一の低カット沈殿工程に続き、プラスミドDNAを沈殿させるための高カット沈殿工程を含む。第一の低カット工程は、凝集された宿主細胞細片の除去の前に実施することが可能である。次いで、前記高カット沈殿工程が、清澄化された可溶化液を用いて(すなわち、宿主細胞細片の除去後に)行われ、上記工程(g)によって代表される。
【0077】
本明細書に挙げられている全ての公報は、本発明に関連して使用され得る方法及び材料を記載及び開示する目的で含められる。本明細書の記載は、以前の発明に基づいて、本発明がこのような開示の日付に先行させる権利を有しないことを認めるものと解釈すべきではない。
【0078】
添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について記載してきたが、本発明はこれらの厳密な実施形態に限定されないこと、及び添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本発明の中に様々な変化及び改変が当業者によって実施され得ることを理解すべきである。
【0079】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を以下の実施例に限定するものではない。
【実施例1】
【0080】
PEGによる宿主細胞細片の凝集
分析方法―利用される分析方法は、(i)陰イオン交換(「AEX」)HPLCアッセイ、(ii)Eゲル(Invitrogen;臭化エチジウム含有0.8%アガロース)を使用するゲル電気泳動、及び(iii)TaqmanPCRアッセイを使用するqPCRを含む。Eゲルは、ウェルあたり20μLの負荷で、60Vで50分間行った。Eゲルアッセイを行う前に、試料をエタノール沈殿(2当量)により前処理し、Eppendorf微量遠心管中で5分間遠心分離し、上清を注ぎ移し、ペレットを、5分間乾燥させた後、pH8.0の10mMトリス緩衝液中に再懸濁した。その後、前処理した試料を1×TAE緩衝液中に希釈した後、Eゲルに負荷した。qPCR分析に提供される試料にういて、同一の前処理を実施した。
【0081】
リゾチームによる溶解―まず、E.コリの可溶化研究を実施して、溶解性能に及ぼすリゾチームの影響、塩基/酸処理(pH12−13になるように塩基添加及びその後、pH約7−9なるように、酸の添加により中和)及び温度を評価した。45のOD600になるように再懸濁した細胞を使用して、細胞の可溶化を評価した。リゾチームなしでの可溶化は温度又は塩基/酸処理にかかわらず、より低い収量をもたらした。標準的なSTET緩衝液(50mMトリス−HCl、100mMのEDTA、2%(v/v)Triton(R)−X−100、8%(w/v)スクロース、pH8.2)中で、塩基/酸処理を行わずに、リゾチーム(500U/mL Ready−LyseTM;Epicentre)を用いて20℃で行った溶解は、37℃での溶解と比較したとき、より低いプラスミドDNA回収(約0.3g/LのプラスミドDNA濃度)を生じた。リゾチーム温置(500U/mL)の使用後に塩基/酸処理を行うことによって、最大収量が達成された。塩基/酸処理は、濃NaOH(5Mストック;0.25Mの最終溶液濃度)の添加、15分の温置及び酢酸(5Mストック;0.25Mの最終溶液濃度)の添加からなった。プラスミドDNA収量は、20℃又は37℃のいずれかで温置され、塩基/酸処理へ供された、OD600が45の可溶化液から、約0.5g/Lであった。
【0082】
可溶化液凝集研究―スクリーニング研究を実施して、細胞細片の沈殿に及ぼすPEG凝集の効果を特徴付けた。図1は、OD600が45の異なるE.コリ可溶化液(プラスミドDNA含有)の入った4つのNalgene瓶を示す。瓶1は、STET緩衝液(上述)中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチーム(500U/mL Ready−Lyse(商標))とともに温置することによって生成された可溶化液を含有する。瓶2は、瓶1と同じ可溶化液を含有するが、塩基/酸工程は、リゾチーム温置後に実施した(pHシフトは約8.5から約12.5まで進み、約8.5へ戻る)。3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチーム(500U/mL)とともに温置することによって、瓶3中の可溶化液を生成した。瓶4は、瓶3と同じ可溶化液を含有するが、塩基/酸工程は、リゾチーム温置後に実施した。pHのシフトされ、PEG処理された材料は、2日にわたって重力のみにより沈殿し、遠心分離中の成果の改善が得られるであろうことを示した。PEGは、細胞細片の、特に宿主細胞可溶化液の塩基/酸処理後(すなわち、pHシフトはpH約8.5からpH約12.5まで進んだ後、pH約8.5まで戻った;上述のとおり)の凝集剤として特によく作用すると判定した。実際、PEGの添加は、逆の効果をもたらし、すなわち、塩基/酸処理へ供されなかった可溶化液へ適用された場合、細片はペレットにするのがより困難となった。
【0083】
PEGにより誘導される凝集をさらに検査するため、図2に記載のように処理された様々な細胞可溶化液を50mLの遠心管へ一定分量に分けた。瓶を回転式ミキサーにおいて15分間温置した後、遠心分離した。図2に示された結果は、塩基/酸処理へ供された可溶化液へ添加されたときの、凝集剤としてのPEGの作用を示す。図3は、図2において検査された6つの試料の上清についての濁度測定結果を示す。コントロールの730NTU濁度(チューブ2)と比較した、5%の最終PEG濃度での遠心分離後の15.5NTUの溶液濁度(チューブ6)を示した。このことは、遠心分離が、仕上げのろ過を使用せずに20未満のNTU清澄に到達する清澄戦略として使用できることを示す。これらの結果は、PEGは、塩基/酸処理前又は後のいずれかで添加される場合、効果的な凝集剤であることも示す。
【0084】
細胞細片の凝集に及ぼすPEG分子量の効果―細胞細片の沈殿性能に基づいた迅速スクリーニング法を使用して、凝集に及ぼすPEGの濃度及び分子量の効果を研究した。リゾチーム(500U/mL)の存在下で細胞を温置し、上述の塩基/酸処理へ供した。様々なPEGストック溶液を可溶化液の10mL量へと混合し、生じた混合物を室温で約16時間沈殿させた。沈殿した固体の体積及び上清の濁度(OD600)を測定した(図4A)。高濃度のPEGは、公知のDNA沈殿剤であり、DNA濃度も測定した。図4Bは、PEG3000を使用した研究に関する(AEXアッセイによって測定される)DNA濃度及び上清濁度の両者を示す。細胞細片は凝集するがDNAは沈殿しないPEG3000濃度範囲があることも結果は示す。結果は、PEG3000濃度が約5%より上に増加された場合、DNAが沈殿することも示す。
【0085】
PEG6000DNA凝集実験―アルカリによりpHシフトされた後中和された可溶化液を利用して、プラスミドDNA沈殿曲線をPEG6000に関して作成した。沈殿曲線を図5に示す。このデータから、本発明の可溶化/可溶化液清澄化工程の間の約3.7%のPEG6000濃度が、宿主細胞細片の凝集の間にプラスミドDNAを沈殿させる何らかの危険性を十分に排除する(6%超のPEG6000)。
【0086】
効果的な可溶化に関する細胞スラリー濃度の上限―リゾチーム温置後の、可溶化液の清澄化のための塩基/酸処理及びPEG添加を含む、上述の新規の可溶化法を使用して可溶化できる細胞の最大濃度を測定するための研究を実施した。幾つかの細胞スラリー濃度(600nmでの光学密度OD600に関して表される。)を研究した。70の初期のOD600が最適であることを決定し、約0.7g/Lの全DNA濃度で可溶化液が清澄化された。この初期の細胞可溶化液へ塩基、酸及びPEG溶液を添加した後、そのもとの値から〜60までOD600をわずかに希釈する。
【0087】
CTAB低カット不純物沈殿―PEG6000による凝集の後、溶解性タンパク質のレベルを低下させるために(可溶化液の清澄化の前に)凝集された可溶化液へ、CTABが添加されうることがわかった。40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを0.15%(w/v)の最終濃度へ1時間かけて添加することによって、このことを実施した。図18は、最終的なCTAB濃度の関数としてBCAアッセイによって測定されたタンパク質レベルを示す。0.1%(w/v)と0.2%(w/v)との間のCTABで最小のタンパク質濃度が得られる。
【0088】
凝集手法時の連続的な遠心分離―連続的な遠心分離条件をシミュレートするため、高次コイルプラスミドDNAを含有する宿主細胞可溶化液のPEG凝集を、(CTC3)Westfalia遠心分離モデルで検査した。この遠心分離モデルは、固体を除去することはできないが、より大きな生成量の遠心分離と同じ内部幾何学構造を有する。前記遠心分離は、固体に関する保持能力1Lの2Lボールを有する。(リゾチーム温置、アルカリpHシフト及びその後の中和を介して生成される)関心対象の高次コイルプラスミドDNAを含有し、PEG6000で凝集された宿主細胞可溶化液は、250mL/分で10,000×gで作動するユニットを通過した。可溶化液の約18Lが、ボールを充填する前にユニットを通過できた。固体は非常に厚く、圧縮されたが、実施の時間経過にわたってDNA濃度に損失はなかった。濁度は、最終清澄化可溶化液において30NTU未満であった。
【0089】
仕上げろ過―上述の遠心分離手法に加え、遠心分離された可溶化液から残留固体を除去するために、仕上げ深層ろ過が利用できる。例えば、セルロース又は珪藻土をベースとした深層フィルター(例、Millipore DE40又はCE50フィルター)は、約70L/m2の概算負荷で使用できる。
【実施例2】
【0090】
リゾチーム温置、塩基/酸処理及びPEG凝集後のプラスミドDNA精製
分析方法―実施例1の方法を参照してほしい。
30Lの可溶化:2,000LのE.コリ発酵工程から回収される高次コイルプラスミドDNAを含有する凍結細胞を、温かい(約35℃の)水槽中で解凍し、5インチのA310羽根車を備えた50LのLee Tank中のSTET緩衝液(50mMトリスHCl、100mMのEDTA、2%(v/v)Triton(R)X−100、8%(w/v)スクロース、pH8.2)を使用して、OD600が70になるよう希釈した。30Lの再懸濁容積を達成した。Ready−LyseTMリゾチーム(500U/mL、Epicentre)を添加し、生じた細胞スラリーを37℃で約2時間温置した。細胞スラリーをその後20℃へ冷却し、5MNaOHを60分間かけて表面下モードでゆっくり添加し、リゾチームの可溶化液のpHを約12まで増大させた。30分の保持時間の後、2.5M酢酸を60分かけて添加し、pHを8ないし9へ低下させた。RCM6(塩類溶液、150mMのNaCl)中のPEG3000(50%(w/v))をその後ゆっくり添加して、5%(w/v)のPEGの最終濃度にした。NaOH、酢酸、及びPEG3000の添加後の総可溶化液容積は、30L(約70のOD600)から35L(約60のOD600)まで増大した。PEGで凝集された可溶化液をその後、1LのJLA8.1000遠心瓶に移し、15.9kGで15分間遠心した。上清をプールし、約17NTUの濁度を有する清澄化した可溶化液を生じた。プールした清澄化可溶化液をその後、4℃で保存した。
【0091】
4.3Lの溶解:直径3インチのA310羽根車を有する7Lのジャケットのついたガラス容器を使用して、高次コイルプラスミドDNAを含有する1LのE.コリ発酵から同じ4.3Lの溶解を完了した。容器は丸底で、直径は10インチであり、液体レベルは約8インチであった。羽根車を、概ね15度の角度で配置し、400rpmの速度で作動させた。Ready−LyseTMリゾチーム(500U/mL)を添加し、pHシフト前に37℃で2.5時間温置した。その後、温度を20ないし25℃まで低下させ、60分かけて、5NNaOH(0.0150L、0.25Mの最終溶液濃度)を添加した。塩基添加後のpHは12.5であった。塩基の添加後、(羽根車の剪断によるいずれかのDNA分解を防止するのを補助するために)混合速度を250rpmまで下げ、可溶化液を高pHで30分間温置した。60分かけて、0.25Mの最終溶液濃度になるように、濃酢酸(2.5N、0.3L)を添加した。酸添加の5分間、より良好な混合のために、羽根車速度を350rpmまで上昇させた。酸添加後の最終的なpHは8.4であった。その後1時間かけて、濃縮したPEG3000(50%;0.475L)ストックを添加した。約30分間置いた後、1LのBeckman遠心瓶中に、可溶化液を一定分量に分け、15kGで15分間遠心分離した。20μm、直径4インチのステンレス鋼スクリーンを通じて、得られた上清を10LのNalgene容器中に傾斜して移し、全ての大きな粒子を捕捉した。
【0092】
結果―実施例1に記載のプローブ実験の結果のように、4.3Lの溶解手法を実施した。清澄化された可溶化液の総DNA濃度は、ゲル電気泳動アッセイによって測定されたところによれば、0.8g/Lであった。宿主ゲノムDNA濃度のqPCR分析から得られた結果を表1に示す。清澄化された可溶化液は、約2%のゲノムDNAを含有するに過ぎないことが測定され、これは、熱溶解法を使用して典型的に達成されるゲノムDNAレベルの有意な低下(約10ないし15%)である。このゲノムDNAの低下は、プラスミドDNAと比較して、E.コリゲノムDNAの低い拡散能による。E.コリゲノムDNAが約400kbであり、典型的なプラスミドDNA分子が約10kbであるため、質量の差は、劇的に異なる拡散能を引き起こす。塩基性条件下でDNAを変性させると、プラスミドDNAは迅速に再アニールできるのに対し、ゲノムDNAは再アニールできないので、細胞細片との二次的な相互作用を生じ及び総ゲノムDNAレベルの低下を生じる。
【0093】
【表1】
【0094】
溶解手法を、30L規模でも実施した。結果は、87%のピーク3を有する、総DNAの0.74g/Lの収量であり、ピーク3の百分率(%)は、2つの陰イオン交換ピークの比であり、高次コイルのDNAの百分率と相関している。この相関は、ピーク3の百分率が高ければ高いほど、高次コイルプラスミドDNAの百分率が高いことになる。表2は、溶解時の異なる工程でのAEXアッセイの結果を示す。表2の最後の列は、本明細書に記載されている上流精製プロセスで到達可能な増大されたDNA濃度を示す。さらに、清澄化可溶化液の最終濁度は、12.1NTUであった。
【0095】
【表2】
【0096】
本明細書に記載されている新規溶解は、約0.9g/LのDNA濃度及び70のOD600で実施できる。従って、この高濃度のために、タンクを実質的により小さくすることができ、熱可溶化手法と比べ、大きな処理容器を必要としない。この溶解は、従来のプラスミドDNA生産処理の濃度のほぼ2倍で実施でき、単一のタンクを利用し、E.コリ染色体DNAレベルを低下させ、及び新規のPEGをベースとした凝集工程を介する下流の固体分離を簡素化する。
【実施例3】
【0097】
最終的なDNA仕上げプロセス:
PEG沈殿及びPEG沈殿物の精密ろ過法
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/875,379号(米国公報番号US2002/0012990)に記載されている従来のDNA精製処理は、ケイ酸カルシウム(例、LRA)のろ液を、約7+mg/mLのDNAまで濃縮するために、プロセスの終了時に限外ろ過(「UF」)工程を利用し、その後、製剤緩衝液PBSへの緩衝液交換のための10×の透析ろ過を利用した(図6A参照)。この最終的な仕上げ工程は、約100L以下の容積では満足のいくものであったが、より大きな製造規模の精製処理は、ポンプサイズ及び流速が技術の限界に到達し始めることを示した。これらのプロセス規模の拡大の問題を回避するため、プラスミドDNAプロセスの最終UF工程を、PEG沈殿手法及びその後の2つの個別のろ過/透析ろ過工程と置換した(図6B参照)。接線流ろ過モードの下での微量ろ過を含む第一のろ過/透析ろ過工程は、沈殿したスラリーを濃縮し、残留RNA及び不純物を除去する。第二のろ過/透析ろ過工程は、PEGをエタノールと置換し、DNAを脱水する。最終湿潤生成物を十分な真空下で乾燥させ、DNAの微細粉末形態を得る。この工程を無菌的に実施する限り、エタノール添加により生成物を乾燥させた後にろ過滅菌する必要はない。従来の仕上げ処理は、新規のPEG沈殿処理の4工程と比較して、2つの工程を必要とするだけであったが、PEG処理は、生成物の品質に欠陥を生じたり、非常に大きなポンプ及び流速の使用を必要としたりせずに、製造容積に対して大規模に実現可能である。新規の処理には、不純物をさらに低下させるためのさらなる精製工程も含まれるのに対し、従来の処理は、プラスミドを濃縮し、緩衝液交換のために提供されるのみであった。この新規のユニット操作には、残留RNAレベルをおそらくは2対数以上まで低下させる能力があり、過剰の流速及び大きなポンプを必要とせず、周期時間を短縮し、必要な貯蔵空間を削減し、おそらくはより安定した生成物を提供する粉末化した生成物を提供する。
【0098】
PEG中のDNA溶解性(沈殿のキネティクス)―LRA後のろ液中のプラスミドDNAを完全に沈殿させる必要のあるPEG8000の濃度を、変動する温度及び総DNA濃度の下で検討した。DNA濃度は0.3mg/mLと1.0mg/mLとの間で変動させた。何故ならばこれが大規模精製手法において遭遇する値と見込まれるからである。図7Aは、PEG濃度が2%(w/v)超であるとき、PEG8000の溶液中のDNAの溶解度の急激な低下があることを示す。研究された範囲に関する溶液温度又はDNA濃度によって、DNA溶解度に何ら影響はなかった。図7Aの結果は、DNAが約4%のPEG8000によって完全に沈殿することを示すが、しかしながら、2×の安全要素を提供するため、本研究の残りにおいて8%のPEG8000濃度を選択した。
【0099】
別のサイズのポリマーが沈殿により適しているかどうかを決定するため、PEGの異なる分子量を評価した。図7Bは、研究された範囲に関して400分子量のPEG中でDNAが完全に溶解性であることを示し、ポリマーの分子量が増大するにつれ、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界的な質量は低下する。このことは、例えば、分子量3,000と10,000の間の何らかのPEGがDNAを効果的に沈殿させるのに使用でき、結果的にPEG濃度が調整されることを示す。
【0100】
PEG添加後の2時間の保持時間が、DNA沈殿を完了させるのに十分であることを確認するため、PEG沈殿のキネティクスを研究した。図8は、約5分後、DNAの99%超が沈殿することを示し、2時間の保持時間が十分すぎることを示す。
【0101】
実験手法―残留RNA及び他の溶解性不純物を除去することによってプラスミドDNAをさらに精製するため、以下の仕上げプロセスを開発し、高次コイルDNA及び幾らかの残留塩からなる最終的な粉末化した生成物を生じた。粉末化した生成物は、液体製剤中再懸濁できる。
【0102】
本発明の新規の下流濃縮/仕上げ処理を示すために使用される出発溶液は、米国特許出願第09/875,379号(上述)に記載のLRA後のろ液である。溶液の組成は、3MNaCl、1.0mg/mLの精製されたDNA及び幾らかの残留RNAである。PEG8000分子量(Fluka)を使用して、DNAを沈殿させ、3000ないし10,000の分子量範囲を検討した。LRA後のろ液をまず20℃に加温し、中程度の速度(50rpm)で撹拌バーを使用して撹拌した。最終溶液濃度が8%(w/v)になるまで、約33%(w/v)の濃縮ストック溶液としてPEG8000を15分かけて添加した。沈殿物を2時間寝かした後、Amersham Biosciences社製の0.45ミクロンの中空のファイバー膜の接線流フィルターを使用して濃縮した。膜上での負荷は、膜の面積1m2あたり180gのDNAであった。再循環速度は、9L/m2/分であり、流量を2.5L/m2/分で調節した。20×濃度に到達するまで、透過を調節し、濃縮した保持液をその後、5透析容積のための1.2MのNaCl中の8%(w/v)のPEG8000に対して透析ろ過した。この保持液を回収し、膜の4.5L/m2の容積で1.2MのNaCl中の8%(w/v)PEG8000を使用して膜を洗浄した。この洗浄を保持液産物と組み合わせることができる。200度数のエタノールの1当量の表面下の添加によって、最終的な保持液を50%(v/v)エタノールまで調整した。エタノール添加の間、沈殿したスラリーを十分に撹拌したままにし、エタノールの「ホットスポット」の形成を回避した。250ミクロンの316Lステンレス鋼(SS)フィルタースクリーンが装備されたフィルター乾燥機中で、この溶液を約30g/Lの沈殿したDNAスラリーまで濃縮した後、6透析容積のための200度数のエタノールに対して透析ろ過し、流量は3.2L/m2/分に調節した。スラリーを懸濁したままにするために、この透析ろ過の間、中程度の撹拌を使用した。フィルターの負荷は0.3kgDNA/m2であったが、この数は不十分負荷のフィルターを使用して実施した実験から得られたため、この負荷は下限値であると考慮されるべきである。ろ過後、粉末を真空下で、25ないし37℃で24時間乾燥させた。
【0103】
分析方法―260、280、及び320nmの波長での紫外線分光法によって、DNA濃度を得た。DNAは、260nmの波長での1吸収単位あたり50(μg/mL)−1(cm)−1の消衰係数を有する。純度を評価するために、260/280nmの比を算出した。1cm経路長のクォーツ微量キュベットへ試料(500μL)を負荷した。フーリエ変換赤外分光法(「FTIR」)を使用して、PEG濃度を評価した。RiboGreenアッセイによって、RNA濃度を評価した。
【0104】
PEGにより沈殿したスラリーの濃縮(TFFでの精密ろ過法を含む第一のろ過/透析ろ過工程)―PEG沈殿の後、接線流ろ過(「TFF」)モードでの精密ろ過法、続く透析ろ過を介する第一の濃縮工程(図6B参照)を使用して、生成物の作業容積を低下させ、沈殿後の溶液中に残留するいずれもの残留RNA及び非生成物可溶性物質を除去した。透析ろ過緩衝液は、透析ろ過中にプラスミドDNAが沈殿したままになっていることを確かにするために適切なPEG濃度及び塩濃度であるべきである。例えば、透析緩衝液が従来の沈殿工程において使用されているPEGのほぼ同一の百分率(例えば、上述の実施例中の8%(w/v)PEG)及び約1.2MのNaClを含有する場合、プラスミドDNAは沈殿したままである。上述の実施例条件において、NaCl濃度が1.2Mをはるかに下回って低下する場合、DNAを沈殿したままにするためにさらなるPEGが必要であり得る。実験は、100mMと600mMの間のNaClの最小の必要な塩濃度が、50%(v/v)エタノール溶液中でDNAを沈殿したままにするのに必要であることを示している。従って、上限の600mMのNaCl近くで操作するため、第一透析ろ過後の塩濃度は、少なくとも1.2MNaClである必要がある。1.2MNaClの値は、その後のエタノール添加工程のためにも十分効果がある。
【0105】
本明細書に記載のPEG沈殿、それに続く精密ろ過法/透析ろ過工程は、RNAの相当な低下を示す。表3は、上述の精製処理の1.2MのNaCl中の8%PEGに対する第一の透析ろ過工程にわたるRNAクリアランスを示す。表4は、PEG沈殿工程にわたる総クリアランスを示す。表3は、RNAのほとんどが初期の透析容積の後に除去され、第三の値まで定量可能な限界を下回ることを示す。表4は、残留RNAがほぼ2対数まで低下することを示す。この低下は、RNAの供給濃度がより高い場合、おそらくより大きくなる。最終生成物のRNA濃度は、L.O.D.近くであった。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
PEGクリアランス(第二ろ過/透析ろ過工程)―プラスミドDNAを濃縮し不純物を除去するための、第一ろ過(すなわち精密ろ過法)並びにPEG及びNaClに対する透析工程の後、200度数のエタノールを15分かけて供給することによって、50%(v/v)エタノールになるように、プラスミドDNA生成物を調整した。これにより、沈殿の特徴を容積排除から脱水機序まで変化させ、沈殿したDNAの物理的特性をゲル状の物質からより硬質のほとんど圧縮できない沈殿物へと変化させる。得られた沈殿は、第二のろ過工程での良好な流量及び高い負荷容量に至る多孔性構造へと充填する。異なるエタノール濃度が、調整工程について可能であるが、約30%(v/v)と80%(v/v)の間の範囲内のエタノール濃度が好ましい。30%の危険性を下回る濃度は、DNAを溶液へと再溶解する一方、80%を上回る濃度は、DNAとともに塩を沈殿し始める。
【0109】
第二ろ過工程後の200度数のエタノールに対する透析ろ過(図6B参照)を使用して、溶液中のいずれもの残留PEGを除去し、粉末をさらに脱水し、できるだけ多くの塩を除去した。撹拌されたセルモードのもとでのフィルター乾燥機システムでのろ過の後、200度数のエタノールに対する6×透析ろ過によって、エタノールで調整されたフィードを50mg/mLのDNA濃度まで低下させた。上述の実施例において、フィルター負荷は、0.3kg DNA/m2であったが、この負荷は、使用されたフィルターの設定は不十分負荷であるため、下限値であると考慮される。フィルターを通じての流量を、3.2L/m2/分で調節した。最終PEG濃度をFTIRによってアッセイしたとき、全ての読み取りは検出限界を下回った(0.05%PEG未満)。湿潤粉末をその後回収し、25ないし37℃で真空乾燥した。乾燥した生成物中に過剰の塩が残留する場合、硬く光沢があり、再溶解するのが非常に困難になる。
【0110】
検査されたプラスミドDNAの最終収率は、90%を超えており、約90%のDNA、5%のNaCl、残留水、残留エタノール、及びおそらくは残留PEGの純度を有する。
【実施例4】
【0111】
アルコールによるプラスミドDNA沈殿
材料及び方法―米国特許出願第09/875,379号(上述)で記載の方法により、以下の実験に使用されるプラスミドDNAを精製した後、表記の濃度になるように希釈した。エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウムをFisherから購入した。渦巻撹拌で混合した検査チューブの実験において、プラスミド溶解性データを得た。沈殿剤をプラスミド溶液へ添加した後、シリンジフィルターを使用して上清試料を採取し、ろ過した試料中のプラスミドの濃度をMolecular Devicesによる紫外線プレートリーダーで測定した。アルコールは紫外線光を吸収するため、SpeedVacを使用してアルコールを含有する全ての試料を乾燥させ、測定前に水中で再溶解した。ジクロロフルオレセインを指示薬として使用して、硝酸銀で滴定することによって、塩化ナトリウムイオン濃度を測定した。
【0112】
エタノールによるプラスミド沈殿―図9Aは、33、50及び67%のエタノールレベルで、1.8Mと3.4Mの間のNaCl供給濃度で回収されたプラスミドDNA溶解性データを示す。急激な溶解性の低下が、30%エタノールと33%エタノールの間で生じた。30%エタノールで、プラスミドは、使用される塩濃度では沈殿しなかった。33%以上のエタノールで、溶解性は、0.5g/Lの初期のプラスミド濃度に関して約99%の沈殿収率に対応した。エタノール添加前に基づいて全てのNaCl濃度を報告し、その報告は、最終溶液中のNaCl濃度が報告されたものよりも低かったことを意味する。図9Aは、1.8ないし3.4Mのエタノール添加前濃度でのプラスミド溶解性に及ぼすNaClの効果がほとんどないことを示す。しかしながら、NaClを使用しないとき、70%の過剰量のエタノール濃度が、1.0g/Lのフィード原液を使用して溶液からプラスミドを沈殿し始めるのに必要であることを観察した。従って、NaClは、明らかにプラスミド溶解性にある役割を担っている。
【0113】
これをさらに探究するため、NaClのより低い濃度を、エタノールの様々な濃度とともに使用した。結果を図9Bに要約する。点線は、沈殿が生じなかった場合の各溶液に関して存在するプラスミド濃度を表す。この値は、供給プラスミド濃度が一定のままであるため、エタノールレベルとともに変動する。明確な「塩析」効果を観察する。図9Bの結果は、ろ過したDNAから塩を洗浄する重要性を提示する。例えば、プラグタイプの洗浄がほとんどなされない場合、低塩及び低アルコールの組み合わせが生じ得、プラスミドを再溶解する。プラスミドを溶解せずに塩化ナトリウムを除去する洗浄プロトコールの開発を援助するため、様々なエタノール組成でのNaClの溶解度を測定した。このデータを図10に示す。
【0114】
イソプロパノール(「IPA」)によるプラスミド沈殿―表5は、IPA−NaCl系の限界値を検査する実験に関して集められた全ての溶解度データを要約する。アルコール添加前に基づいて、NaCl濃度を報告する。95%超の収率が観察される条件を灰色で強調する。アルコール又は塩の濃度の増大がまず、プラスミド溶解度の低下を生じたことは明白である。しかしながら、高いアルコール濃度又は塩濃度では、さらなる添加が溶解度を増大させた。
【0115】
【表5】
【0116】
図11は、2つのIPA濃度でのIPA−NaCl系に関する「塩析」及び「塩溶」の極値を示す。この図は、塩のみの効果を示すが、表5は、この効果が一定の塩濃度でのIPAに関しても達成されることを示す。これらの結果は、タンパク質沈殿に対して類似であり、そこでは静電遮蔽が「塩析」を生じるが、十分な濃度のカオトロープは「塩溶」を生じる。このことは、DNA沈殿が塩基対間の分子間疎水性相互作用の結果であることを示す。穏やかにカオトロピックのNaClを使用して得られる結果と比較して、コスモトロープである酢酸ナトリウムを有するIPA中のプラスミドの溶解度を、様々な条件で測定した。図12及び12Bは、本実験の結果を要約する。67%エタノールで、酢酸ナトリウムの存在は、プラスミドの溶解度を低下させるが、他の百分率点では、プラスミド溶解度は、NaClの等しい濃度を用いた場合と比べて、酢酸ナトリウムを用いた場合に、実際により高い。
【0117】
メタノールによるプラスミド沈殿―1ないし3MのNaClと組み合わされた33%及び50%のメタノール濃度では、プラスミドを沈殿することができなかった。これは、プロセスへの使用に関してメタノールが望ましくなくなるが、67%ではプラスミドを沈殿できた。表6は、これらの結果を表示する。「塩析」現象は、はっきりと明白である。
【0118】
【表6】
【0119】
アルコール沈殿実験の要約―3MのNaClを含有するプラスミド溶液へエタノールを添加すると、プラスミド溶解度の急激な低下が、30%と33%の間のエタノール濃度で生じる。33%以上のエタノールで、0.5g/Lのプラスミド溶液に関する溶解度をベースとした収率は、約99%である。水−エタノール混合物中で、NaClの濃度の増大は、プラスミドの溶解度を低下させる(すなわち「塩析」)。水−EPA混合物中で、塩析濃度を超える塩の添加は、溶解度を増大させる(「塩溶」)。コスモトロピックの酢酸ナトリウムを置換するとき、塩析及び塩溶の両効果は低減した。メタノールには、高濃度の塩溶液からプラスミドを沈殿させる能力があるが、50%超の溶媒レベルを必要とする。
【実施例5】
【0120】
最終的なDNA仕上げプロセス:アルコール沈殿
上述のように、TFFモードでのプラスミドDNAのPEG沈殿及び精密ろ過法は、大規模プラスミドDNA精製処理の最終濃縮/仕上げ工程において限外ろ過を置換する実行可能な選択肢である。米国特許出願第09/875,379号(上述)に記載の初期の開発作業は、エタノールが、沈殿溶媒として利用でき、プラスミドDNAの乾燥粉末形態を獲得できることを示した。しかしながら、速度はゆっくりで、ケーキの極度の圧縮は、段階的な洗浄勾配を適用するにもかかわらず明白であった。本実施例は、精密ろ過法によって増大されるアルコール沈殿を特徴とするプラスミドDNAの精製されたバルクの粉末形態を調製するための処理を記載する。本アプローチを強化するものとして、精密ろ過法と同時の連続的な沈殿が、バッチ法と比較して容器の容積を有意に低下させ得る。
【0121】
材料及び方法―実施例4の「材料及び方法」を参照してほしい。圧力ゲージ及び0.45μmシリンジフィルターつきのPellicon XL精密ろ過カートリッジを、Milliporeから購入した。真空ろ過装置及び膜をFisherから購入した。
【0122】
バルクのプラスミド粉末を調製するための段階的なろ過/透析ろ過処理―プラスミド沈殿に関して必要な条件を溶解度データが一度確立した時点で、ろ過による沈殿した粉末の回収を試行した。
【0123】
メタノールに対するその少量の容積の必要性及びIPAに対するその頑強性のため、沈殿のための最適な溶媒としてエタノールを選択した。
【0124】
沈殿したプラスミドをろ過する第一の試行において、0.86g/Lプラスミド及び3MNaClを含有するLRA後のろ液溶液200mLへエタノール134mLをゆっくり添加し、40%(v/v)エタノールの最終濃度を生じた。枝つきフラスコ及びフィルター面積が2.1cm2の0.2ミクロンの膜フィルターを使用して、ろ過を試行した。枝つきフラスコに真空20inを供給した。初期のろ過試行は、ろ過が進行するにつれ、流量の有意な低下を示し、ゲル状のフィルターケーキを形成した。使用されたフィルターは、酢酸セルロース及び硝酸セルロースからなるFisherブランドの膜であった。図13は、この懸濁液を使用する実験中に回収されるろ過データを示す。もとの40%(v/v)エタノール濃度でデータを採取し、50%(v/v)の濃度を生じるためにエタノールを添加した後に再度採取した。時間/容積(t/V)対容積(V)のプロットにおける比較的に真っ直ぐな線は、ほぼ非圧縮性のケーキを示す。50%エタノールによる有意に高いろ過速度を観察する。本データを使用して、直径5フィートのフィルター(19.6平方フィートの膜面積)を使用する大規模バッチろ過に必要な時間を概算した。算出された概算値は、40%エタノールを使用する場合には243時間であり、50%(v/v)エタノールを使用する場合には44時間である。これらの実用的でないろ過時間のため、大きな面積の接線流ろ過(「TFF」)膜を代替法として検討した。
【0125】
沈殿したプラスミドの精密ろ過法での第一の試行には、0.22μmのPVDF膜を備えたMillipore Pellicon XL TFFカートリッジを使用した。整流装置のついたガラス混合容器中で撹拌されたプラスミド溶液へエタノールをゆっくり添加することによって沈殿を達成し、40(v/v)エタノールの濃度に到達した。プラスミド溶液の初期のNaCl濃度は3Mであった。沈殿剤を2時間かけて添加し、約30分寝かした後、30mL/分の再循環流速を使用して、精密ろ過法を試行した。図14Aは、経時的に回収された透過液の容積を示す。沈殿した懸濁液中のDNAの初期濃度も、各データセットに関して示す。懸濁液は、15mL/分で簡単にろ過し、実験の時間経過にわたって透過液流量に減少はなかった。供給圧力ゲージは、ろ過を通じて約10psigの読み取りを維持した。本結果は、固体を膜表面から自由に除去し、ケーキ層を形成しなかったことを示す。初期懸濁液の容積は、各場合において500mLであった。
【0126】
スラリーを脱水してろ過及び乾燥に適するようにするため、濃縮した懸濁液をその後、エタノールの高濃度に対して透析ろ過した。この透析ろ過は、単離前及びフィルター乾燥機中での乾燥の前にどのようなNaClも除去する。プラスミドは80%(v/v)エタノール溶液中で不溶性であるため、80%(v/v)での透析ろ過を使用して、懸濁液からNaClを除去できる一方、プラスミドが不溶性である条件を維持できる。図14Bは、透析ろ過中のエタノール及び塩の濃度を示し、図9Bは、エタノール濃度が80%(v/v)に到達する前の残留する塩の少量が、再溶解からプラスミドを保護することを示す。ろ過を通じてのエタノール濃度でのNaCl溶解度も示す。沈殿した懸濁液の透析ろ過において、透過液の流量は、約15mL/分で一定のままであった。
【0127】
乾燥粉末を調製する第一試行において、約4g/LのDNAになるように濃縮した後、80%(v/v)エタノールの2つの容積に対してプラスミド懸濁液を透析した。その後、25mm直径、0.2ミクロンのPES膜での真空ろ過により、固体を回収した。一晩乾燥させた後、生成物の様相は、89.4%エタノールでのエタノール/水の共沸混合物により、塊状になった。湿潤ケーキのエタノール濃度が共沸混合物の組成よりも低かったため、水の組成は乾燥中に濃縮され、固体を塊にした。その後の調合の試行も80%(v/v)エタノールによる透析ろ過後のろ過を使用したが、その後、純粋なエタノールによる幾度ものケーキ透析ろ過洗浄を付加して、ケーキ中に残留する80%(v/v)エタノールを置換した。洗浄は、湿潤ケーキ中のエタノールレベルが乾燥前の共沸混合物組成を超過することを確実にした。粉末を、37℃で一晩真空乾燥させた。残りの材料は、乾燥した、自由に流動する白色粉末であった。水中の材料を再溶解し、260nmでの吸光度を測定すると、粉末は97%の純度であることが示された。沈殿及び精密ろ過に関する収率は93%であった。
【0128】
要約―エタノール(40ないし50%(v/v))を使用して沈殿させたプラスミドの真空ろ過は、ゲル状にもかかわらず、ほぼ非圧縮性のケーキを生じたが、ろ過速度は受容できないほどゆっくりであり、接線流ろ過の必要性を示した。沈殿したプラスミドを濃縮した後(アルコール透析ろ過により)脱水するために、接線流精密ろ過法を首尾よく使用した。全量ろ過及びアルコールの多いスラリーの洗浄は実用的となり、真空乾燥によって自由に流動する粉末を生じた。沈殿、精密ろ過法、回収及び乾燥の組み合わせた工程に関する収率は93%であり、固体は(A260による)97%純度であった。研究室規模で観察される流量に基づいて、本処理は、膜面積215平方フィートを使用して8時間で40,000Lのバッチに関して実施できた。
【実施例6】
【0129】
プラスミドDNAの連続的なアルコール沈殿及び精密ろ過法:容器及びアルコール容積の縮小
バッチモードでのプラスミド沈殿は、沈殿に必要なバッチ容積及びエタノール量の両者を保持するのに十分大きな容器を必要とする。精密ろ過法がアルコールを同時に除去して一定の容積を維持する比較的小さな中間的な容器へと、供給物及びエタノールの両者が連続的に汲み出され得る場合、大きな沈殿容器はもはや必要ではなく、高い溶媒比で沈殿が実施される場合でさえ不要である。このモードにおいて、溶媒廃棄物は、透過液を連続的に蒸留し、沈殿容器へとリサイクルすることによって最小化できる。
【0130】
エタノール回収のない連続的な沈殿/精密ろ過アプローチをまず、限外ろ過及び精密ろ過の両膜を使用して試行した。これらの実験において、エタノールを、撹拌した容器中のフィード溶液へゆっくり添加して、約40%(v/v)のアルコール濃度に到達することによって、最初の500mLの沈殿した懸濁液を調製した。粒子は、約30分かけて完全に脱水できた。ろ過面積50cm2のPellicon XL TFFカートリッジを使用して、得られた懸濁液の精密ろ過を実施した。懸濁液の容積が一度約300mLまで低下すると、供給溶液及びエタノール溶液を添加して、懸濁液の容積を一定に維持した。図15Aは、100kDのPES膜を使用する連続的な沈殿/精密ろ過に関するデータを示す。ろ過カートリッジに対する供給流速は、30mL/分であった。図が示すように、透過液約200mLを連続処理の間に回収した後、流量は、その初期値の約20%まで低下した。0.22μmカートリッジを使用する試行において、同様の流量の低下を観察した。カートリッジを経由する圧力の上昇は、添加開始直後に明らかであった。圧力のこの上昇は、観察されたバッチ精密ろ過においては存在しない。この試行は、大きさ14、内径5/16”の柔軟なMasterflexチューブを使用し、ろ過中に供給物及びエタノールを添加した。この柔軟なチューブは、バッチ沈殿に使用される細いチューブよりも大きかった。
【0131】
精密ろ過が成功裏に実施できるためには、先立って脱水時間が必要であるように考えられるため、容器とフィルターとの間の保持容積は、粒子が膜に到達する前に乾燥しきることができる時間のずれを作成することによって、ろ過速度を改善し得る。沈殿容器とフィルターとの間のチューブの長さを挿入して、30mL/分の流速で1分の時間のずれを作成することによって、この理論を研究室規模で検査した。図15Bは、容器とフィルターとの間の1分の時間のずれを挿入した試行に関するデータを示す。この試行は、40%(v/v)エタノール及び30mL/分へ設定された供給ポンプも使用したが、この場合、0.1ミクロンのPVDF膜を使用した。時間のずれを伴う処理が、200mLの透過液の容積を上回って、図15Aで見られるよりも小さな流量%の損失を示すことは明白である。しかしながら、図15Aのデータよりも初期速度はゆっくりである。時間のずれを作成するために使用されるチューブの長さが、ペリスタポンプのスリップを生じ、撹拌した容器からの流速を低下させる摩擦抵抗をもたらすことが起こり得る。カートリッジを経由した迅速な圧力の増大を、ろ過中の供給物及びエタノールの添加のために14サイズのMasterflexチューブも使用したこの試行に関して再度観察する。
【0132】
図15Cは、エタノール濃度を50%(v/v)に上昇させ、一方で図15Bと同一の時間のずれの設定を使用した実験に関するデータを示す。この試行において、透過液流量のゆっくりとした低下は、40%(v/v)エタノール試行から幾分小さくなったが、圧力の増大はさらにより劇的であった。圧力の増大により実行できなくなった30分後にのみろ過を停止した。この試行はまた、ろ過中の供給物及びエタノールの添加のために14サイズのMasterflexチューブを使用した。
【0133】
図15AないしCの迅速な圧力増大は、半連続的沈殿/精密ろ過処理の実行可能性に関する問題である。透過液の速度が受容可能である場合でさえ、望ましいスラリー濃度に到達する前にチャネル閉塞によって生じる圧力の増大は、ろ過を終結させる。チャネル閉塞は大きな水和した粒子によって生じるようである。連続処理アプローチの間により小さな粒子を作製する試行において、ろ過の間に供給物及びエタノールを添加するために、先行実験で使用された5/16”のMasterflexチューブに替えて、細いHPLCチューブを使用した。図16Aは、HPLCチューブを使用して、供給物及び40%(v/v)エタノールを時間のずれなく添加した試行に関するデータを示す。カートリッジを介する圧力の増大は、先行実験ほどには劇的ではなく、図15Aに示すように、時間のずれのない先行実験と比較して相対的な流量の低下を改善する。細いチューブを出るより高い直線速度が、プラスミド溶液へのより細かなアルコール分散を生じ、それによりアルコールの局所的な過剰を回避するようである。アルコールの組成が不均一であるため、一連の沈殿及び再水和が生じ、膜チャネルを閉塞し得る大きな粘着性のある粒子が生じる。図16Bは、50%(v/v)エタノールによる同様の試行に関するデータを示す。透過液流量のゆっくりとした低下の速度は、50%(v/v)エタノールでのより迅速な脱水により、図16Aよりも非常にゆっくりである。より高い溶媒濃度での性能の改善は、沈殿のためにエタノールを多量に使用する他の生成物に対して良好な兆しである。
【0134】
要約―プラスミド沈殿容器のサイズは、一定の容積を維持するように、同一の容器から精密ろ過を同時に実施しながら、撹拌した容器へエタノール及びプラスミド溶液を連続的に添加する連続的な処理によって縮小できる。このアプローチに付随して、透過液の連続的な蒸留は、沈殿への濃縮したエタノールのリサイクルを提供し、必要な溶媒容積を最小化し、より高くより好ましくさえあるアルコール濃度で沈殿を可能にする。精密ろ過及び限外ろ過の両膜を使用する連続沈殿/ろ過の実験運転において、バッチ沈殿後に得られる定常な透過液の流量とは対照的に、透過液の流量が低下した後、定常速度に到達した。バッチの場合とは対照的に、カートリッジを介する圧力の増大も観察した。LASENTECによるバッチの沈殿の粒子サイズのモニタリングは、たぶん凝集及び脱水が同時に起こることを反映するアルコールの添加後約15分の寝かし時間をとって、粒子の平衡サイズを増大させる必要があることを示す。新たに形成された孔を目詰まりさせる粒子は接線フィルターへ直ちに引き抜かれるので、連続処理アプローチにおいて、この寝かし時間を提供できなかったことが、流量値の低下の原因と説明し得る。連続沈殿/精密ろ過アプローチにおける容器とフィルターとの間の粒子の寝かしを可能にする1分間のホールドアップ量の追加により、透過液の流量を改善した。半連続的アプローチの間の供給物及びエタノールの添加のためのより小さな直径のチューブの使用は、カートリッジを介する圧力を低下させ、流量も改善させた。細いチューブ口を出る液体のより高い直線的な速度は、バルクの懸濁液へのエタノール及び供給物の分散を改善しているようであり、これにより迅速に脱水し膜チャネルを詰まらせない、より均一でより小さな粒子を供給する。
【実施例7】
【0135】
pHシフトされたDNA可溶化液への剪断
材料及び方法―7Lのジャケット付きガラス容器に、目的の高次コイルプラスミドDNAを含有するOD600=300のE.コリ細胞2Lを懸濁して、STET緩衝液中OD600=70にした。これに、組換えリゾチーム500単位/mLを添加し、37±2℃に加温した。回収した細胞を、この可溶化緩衝液中で少なくとも2時間温置した。材料約5Lをさらなる研究のために採取し、残りの4.7Lを利用して、300フィート/分から2000フィート/分までの尖端速度を用いて、増加した剪断速度へこの可溶化液を暴露した。速度を最終的な尖端速度2000ft/分まで、増大させる前に、各尖端速度で材料を10分間保持した。最後に、尖端速度を300ft/分まで低下させ、pH12の可溶化液を一晩混合した。
【0136】
結果―本発明の上流の可溶化/可溶化液清澄化プロセスの実施(すなわち、リゾチームの可溶化/pHシフト/PEG凝集)による可能性ある分解問題を判断するため、多様な尖端速度へ暴露したpH12の可溶化液の剪断感度を測定した。表7は、DNA濃度(g/L)及び0.8%アガロースゲルによって測定された高次コイルプラスミドDNA含有量の百分率(「%SC」)を定量した結果を示す。尖端速度が2000フィート/分に増大するまで、高い総DNA濃度及び高次コイルプラスミドDNAの百分率を維持した。従って、2000フィート/分までの尖端速度ではプラスミドDNAに対する損傷を記録せず、本発明の一部として開示される可溶化技術が、可溶化容器中でDNAを剪断せずに宿主細菌細胞を可溶化するのに十分であることを示した。
【0137】
【表7】
【実施例8】
【0138】
プラスミドDNAの精製
可溶化/可溶化液の清澄化―目的のプラスミドDNAを含有するE.コリ細胞を、まず、STET緩衝液(50mMトリス、100mMのEDTA、2%TritonX−100、及び8%(w/v)スクロース、〜pH8.2)中で、OD600が約70になるまで懸濁する。組換えリゾチームを1167U/mLで添加し(Epicentre technologies)、混合物をまず37±5℃にした後、2時間温置した。温置が完了した後、1時間かけて、5NNaOHを可溶化液へ添加して、最終濃度を0.24Nにし、1時間温置させた。0.5ないし1時間かけて、2.5N酢酸を添加することによって、溶液をpH8.0±1.0に戻した。可溶化液をその後、50%(w/v)スラリー(150mMのNaCl中)に1時間かけて3.7%(w/v)になるまで添加したPEG6000により凝集させた。凝集した可溶化液の清澄化を遠心分離(例、Sharples AS26遠心分離機)により実施し、凝集した細胞細片を除去する(バッチの遠心分離も選択肢の一つであるが)。遠心分離後の濁度は30NTU未満である。遠心分離後のより低い値を望む場合、仕上げのろ過を使用して、残留する細胞細片を除去するのに役立てられる。例えば、約70L/m2の負荷でMillipore DE40又はCE50デプスフィルターを有する12インチのCunoろ過ハウジングを使用して、10NTU未満の濁度に到達することができる。
【0139】
さらに、特に下流のLRAIIろ過を実施する場合には、可溶性タンパク質及びエンドトキシンを除去するために、CTAB低カット沈殿工程を約0.15%(w/v)まで実施することが可能である。これは、40mMのNaCl中の2%(w/v)CTABを、凝集した可溶化液へ1時間かけて添加してホストスポットろ過を防止することによって実施できる。材料はその後、上述の清澄化のために使用できる状態となる。
【0140】
CTAB沈殿―高次コイルプラスミドDNAを、清澄化した宿主細胞可溶化液から、10g/LのCelpure P300(珪藻土)の存在下で0.50%(w/v)CTABにより誘導される単一の沈殿工程により沈殿させる。40mMのNaCl中の2%(w/v)CTAB溶液を、清澄化した可溶化液へ2時間かけて添加し、ホットスポット形成を防止する。可溶化液をろ過し、フィルターケーキをまず、50mMのNaCl含有の5%IPAのバッチ容積の4分の1で洗浄する。その後、50mMのNaClのバッチ容積の10分の1で、フィルターケーキを洗浄する。CTAB及びTriton(登録商標)X−100のミセルは、DNA沈殿の原因である。遊離CTABを上回るプラスミドDNAに関するCTAB/TritonX−100ミセルの選択性の増大は、二本鎖DNAの主鎖上でのリン酸塩の電荷の配置によるミセル中でのCTABの電荷の整列による。洗浄したケーキをその後、再溶解工程へ持ち込む。
【0141】
再溶解及びケイ酸カルシウムバッチ吸着―再溶解は、CTAB沈殿したDNA含有ケーキを、撹拌したフィルタータンクから手動で取り出すことを必要とする。このケーキをその後、3MNaCl中に再懸濁し、1.2g/LのDNA濃度にする(ここで、該標的DNA濃度は、約0.3ないし約1.2g/Lの範囲であり得る。)。当初の3MNaCl負荷は、1gのDNAあたり25gのLRAIIを含有し、最小4時間温置する。この最初のLRAII温置は、段階的な処理で実施でき、ここで、1gのDNAあたり12.5gのLRAIIの初期負荷を最小4時間温置した後、1gのDNAあたり12.5gの2回目のLRAIIをさらなる時間(最小6時間)温置する。懸濁した材料をその後、濃度に関して(例、AEXアッセイ)、及びゲル電気泳動(60Vで30ないし50分間のEゲルでの泳動)によってアッセイする。この当初の温置工程の後、Eゲル電気泳動によって85%SCを下回る高次コイルの各百分率点について1gのDNAあたり0.5ないし0.75gのLRAIIを添加する。この混合物を一晩寝かせ、濃度及び高次コイルになった百分率に関してバルクを再度アッセイする。材料が85%SCを超える場合、ろ過を開始し、85%SCを超えない場合、より多くのLRAIIを添加する。
【0142】
バルク溶液中のCelpure及びLRAIIの総量に比例する膜面積を有する12インチのCunoハウジング(高さ4)を使用して、再溶解したプラスミドDNA溶液をろ過する。一般に、Celpure又はLRAII1gは、容積〜4mLまでを必要とする。LRA及びCelpureの総量に基づいて、Millipore CE50深層ろ過カートリッジ(12in円、6セル)の適切な数を、上述のCunoフィルターハウジングにおいて利用する。ろ過が完了した後、3MNaClの十分量を負荷して、ハウジングを充填し、30分間再循環させる。この材料を保存し、洗浄を反復する。これらの洗浄工程は、Celpure及びLRAIIケーキに伴われているプラスミドDNAの大きな百分率を回収するためである。第二のLRAII処理のために、材料をその後、別のタンクの中に置く。
【0143】
第二のケイ酸カルシウムバッチ吸着―第二のLRAII温置を実施し、残留するE.コリ宿主細胞DNAの実質的な除去を確実にする。1gのDNAあたり約10gのLRAIIをプラスミド溶液へ添加し、4時間温置する。その後、ゲル電気泳動(Eゲルで60Vで30ないし50分間)により溶液をアッセイし、高次コイルプラスミドDNA純度が90%超に到達するまで2時間ごとに、1gのDNAあたり2gでLRAIIを負荷し、その後の各添加の前にアッセイする。この第二のLRAII段階が、単一の30”の0.45μmのDuraporeフィルターを保持する1ないし2のMillipore Series 2000ハウジングを利用する場合、ろ過は、適切なケーキ容量を有し、下流工程への水和したケイ酸カルシウムのバイパスを防止する。
【0144】
PEGに基づく沈殿及びエタノール粉末化―ポリエチレングリコール(PEG)の添加による沈殿工程後の2つの個別のろ過/透析ろ過工程は、DNA精製処理における最後の仕上げ工程である。50%(w/v)のPEG6000溶液を第二のLRAIIろ液へ添加して、最終濃度を10%(w/v)にし、1.2MのNaClの最終的な塩濃度に調製した。中空ファイバーのMF膜工程を使用して第一のろ過工程を実施し、沈殿したスラリーを濃縮し、残留RNA及び不純物を清澄化する。その後、5透析容積のための1.2MのNaCl中の10%(w/v)PEG6000に対して、濃縮したスラリーを透析ろ過する。撹拌したフィルター容器をベースとした第二ろ過工程を使用して、その後、保持液をさらに濃縮する。まず、200度数のエタノール1当量を30分かけて表面下で添加することによって、50%(v/v)エタノールになるように保持液を調整し、PEGをエタノールと置換し、DNAを脱水する。その後、25μmの孔サイズのステンレス鋼スクリーンを使用してユニットの中で溶液を濃縮し、6透析容積のための200度数のエタノールに対して透析ろ過する。最終的なエタノール沈殿した生成物を真空乾燥して、DNAの微細な粉末形態を得る。粉末バルクが一度生じると、材料は再懸濁できる(例、5ないし9g/L)。1500mL/分/m2の流速で約400g/m2の負荷でMillipore Millipak 200フィルター(0.22μm、PVDF)を使用して、再懸濁したDNA溶液のろ過滅菌を実施できる。
【0145】
代表的な処理の収量/不純物(除去)データ―2つのDNAプラスミドであるプラスミドA及びプラスミドBに関する上述の処理の収量は、プラスミド17.2g及び19.0gであった(図17A及びB参照)。図17Aは、両生産運転の高次コイルプラスミドDNAの総収量を示し、図17Bは、処理の時間経過にわたる重要な不純物レベルを示す。本アッセイ結果は、全ての重要な不純物が、アッセイの定量化レベルを下回って低下したことを示す。
【実施例9】
【0146】
細菌細胞採集手法
採集工程の目的は、精製において使用するために、目的の生体分子(高次コイルプラスミドDNAを含むが、これに限定されるわけではない。)を含有する宿主細胞(細菌細胞、例えば、E.コリを含むが、これに限定されるわけではない。)を濃縮し、洗浄することである。この実施例は、目的の高次コイルプラスミドDNAを保持するE.コリ宿主細胞の回収を記載する。
【0147】
500MWCO(UFP−500−E−75)の6×3.7m2のGE Healthcare(旧A/G Tech)の、平行に置かれた中空ファイバーカートリッジ(合計22.2m2)を操作する。重要なパラメータは、膜通過圧力(「TMP」)、入り口圧、交差流速、濃縮因子及び流量である。回収時の培養物の光学密度は80ないし100のOD600の範囲に及び容積生産性は約1gプラスミド/Lである。回収時に、発酵槽ブロスを10℃未満に冷却する。精密ろ過及び分散を通じて、保持容器及び/又は保持回線の冷却によってこの温度を維持する。調節バルブによって保持液背圧を制御することによってTMPを初期的に10pisgに維持することによって、採集工程を操作する。交差流速を50mL/分/ファイバー(22.2m2には300LPM)に設定する。バッチが濃縮されると、供給圧力は増大する。供給圧力が25psig(TMP〜15psig)に到達すると、〜25psigの供給圧力を維持する必要のため、交差流速は低下する。濃縮因子は、OD600測定結果と相関する乾燥細胞重量(DCW)に基づく。300の最終的なOD600は、精製のための目標である。開発運転において得られた80ないし100の当初培養物のOD600に基づいて、3ないし4倍の濃縮因子が必要である。
【0148】
目的の濃縮因子に到達するまで、又は(多量のバイオマス培養の場合)有意な流動性低下を観察されるまで、濃縮を実施する。流動性レベル限界値は、濃縮の終了のかぎとするために定義できる。濃縮の終了時に、リン酸ナトリウム溶液(RCM635―0.12MのNaCl、5mM二塩基性リン酸ナトリウム(無水Na2HPO4)、1mM塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO41水和物))の約4透析容積を使用して、透析ろ過を実施し、濃縮した細胞を洗浄する。濃縮時に目的の濃縮因子に到達しなかった場合、透析ろ過終了時にバッチをさらに濃縮する。濃縮及び透析ろ過は、ブロスのタンクへの供給速度を調整して透過液の速度を補正することによって、保持液容器中で定常液体レベルを維持しながら、供給及び滲出モードで実施すべきである。
【0149】
透析ろ過の終了時において、細胞ペーストは、分配の間、10℃未満にて十分に混合された状態で維持されるべきである。一定分量を、2LのNalgene瓶又は8LのStedimバッグのいずれかに分配し、その後の保存のために−60℃未満に凍結する。ドライアイス槽又は直立型冷凍庫中での静止凍結が、許容される凍結方法である。
【0150】
宿主細胞の回収に使用される処理装置の仕様の例を表8に列挙する。この例において、保持液容器と命名される600L容器は、処理できる材料の量を制限する。3×の最小濃縮因子を仮定すると、培養物約1200Lの最適な処理容積を回収し得る。この容積は、透析ろ過前の濃縮されたペーストの任意の希釈のための、タンク中における十分な上部空き高を確保にする。1200Lの培養物容積による膜への負荷は、54L/m2であろう。
【0151】
【表8】
【0152】
バッチのための濃縮因子はブロス光学密度のプロセス中の測定および濃縮後の約300のOD600の目的を基礎に算出されることが推奨される。この例を使用する場合、1200Lの当初培養物容積は、下流処理のための細胞ペースト300L超を生成する。バッチをまず少なくとも3倍に(又は多量のバイオマス培養物の場合、流量低下を観察するまで)濃縮した後、リン酸ナトリウム溶液の4透析容積で透析ろ過し、最終的に300のOD600の最終標的まで濃縮する。緩衝液最小1600Lが透析ろ過に必要であり、さらなる400Lが使用前の膜調整に必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、2日間にわたって沈降させたE.コリ細胞可溶化液を示している。ボトル1中の可溶化液は、STET緩衝液(本明細書中に定義されている。)中に細胞を再懸濁し、20℃にてリゾチームと共に(500U/mL)温置することによって作製された。ボトル2中の可溶化液は、リゾチーム温置後に、pH12までpHを上昇させるために第一の塩基が添加され、次いで、pHを中和するために酸が添加されたことを除き、ボトル1中の可溶化液と同様である。ボトル3中の可溶化液は、3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃にてリゾチームと共に温置することによって作製された。ボトル4の可溶化液は、アルカリpHシフトを誘導し、続いて中和を誘導するために、リゾチーム温置後に、ボトル2について記載されているとおりに塩基及び酸を順次添加したことを除き、ボトル3中の可溶化液と同様である。この図は、アルカリ可溶化液由来の細胞細片に対する凝集剤としてのPEGの可能性を示している。
【図2】図2は、45の当初OD600を有する様々な細胞可溶化液を含有し、及び16,000×gで5分間遠心された50mLの遠心管を示している。チューブ1中の可溶化液は、STET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームと共に温置することによって作製された。リゾチーム温置後にアルカリpHシフト及びその後の中和(図1に対して上述されているとおり。)に供されたことを除き、チューブ2中の可溶化液はチューブ1中の可溶化液と同じである。チューブ3中の可溶化液は、3%のPEG3000を含有するSTET緩衝液中に細胞を再懸濁し、20℃でリゾチームと共に温置することによって作製された。リゾチーム温置後にアルカリpHシフト及びその後の中和に供されたことを除き、チューブ4中の可溶化液はチューブ3中の可溶化液と同じである。アルカリpHシフト/中和工程後にPEGが添加されたことを除き、チューブ5中の可溶化液はチューブ2中の可溶化液と同じである。アルカリpHシフト/中和工程後に5%のPEG3000の最終濃度が添加されたことを除き、チューブ6中の可溶化液はチューブ2中の可溶化液と同じである。
【図3】図3は、図2に示されている可溶化液についての濁度測定を示す。Lys=リゾチーム;PS=pHシフト;PEG STET=3%PEG3000+STET。
【図4】図4A及び4Bは、E.コリ細胞細片の凝集に対するPEG分子量の効果を示している。リゾチームの存在下で細胞を温置し、アルカリpHシフト/酸中和に供した。異なる分子量(PEG400−6000)のPEG原溶液を、可溶化液の10mL分取試料に添加して、約1.0%と15.0%の間の最終PEG濃度を達成する。得られた混合物を、約16時間、室温で沈降させた後、OD600測定を行った(図4A)。図4Bは、PEG3000のみを用いた検討について、OD600依存性及び溶液中のDNA濃度のプロットを示している。
【図5】図5は、リゾチーム/pHシフトされた可溶化液中のPEG6000の漸増濃度(0−8%w/v)に対するプラスミドDNA沈殿曲線を示している。
【図6】図6A及び6Bは、大規模なプラスミドDNA精製プロセスの2つの最終濃縮/仕上げ操作の一般的なプロセスフロー図を比較している。
【図7】図7A及び7Bは、異なるPEG溶液中でのDNAの溶解度を図示している。図7Aは、PEG濃度が2%w/v超である場合に、PEG8000の溶液中のDNAの溶解度が急減することを示していて、調べた範囲について溶液の温度又はDNA濃度に起因するDNA溶解度への影響は存在しない。図7Bは、研究した範囲について、DNAが400MW PEG中で完全に可溶性であるが、分子量が増加するにつれて、DNAを沈殿させるのに必要なPEGの臨界質量が減少することを示している。
【図8】図8は、PEG8000溶液中でのDNA沈殿の速度論を図示している。図8は、約5分後に、当初DNAの99%超が沈殿することを示している。
【図9】図9A及び9Bは、プラスミドDNAの水−エタノール混合物中溶解度データを示している。NaClの濃度は、エタノールを除いた濃度に基づいている。図9Aは、1.8〜3.4MのNaCl濃度は、プラスミドの溶解度に対して殆ど影響がないことを示している。図9Bでは、エタノールの様々な濃度を用いてNaClのより低濃度を研究した。破線は、沈殿が起こらないときに、各溶液について存在するであろうプラスミド濃度を表している。
【図10】図10は、様々なエタノール濃度でのNaClの溶解度を示している。
【図11】図11は、2つのIPA濃度でのIPA−NaCl系についての「塩析」及び「塩溶」の極限を表している。
【図12】図12A及び12Bは、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウム塩を加えた、25%(A)又は67%(B)IPA中でのプラスミド溶解度を図示している。
【図13】図13は、3MのNaCl溶液から沈殿されたプラスミドDNAについてのデッドエンドろ過データのVmaxプロットを示している(0.22ミクロンセルロース膜、2.1cm2ろ過面積、20インチHg真空)。このろ過データは、まず、最初の40%エタノール濃度から得られ、次いで、再び、50%の濃度を得るためにエタノールを添加した後に得られた。t/V対Vプロット中の相対的にまっすぐな線は、ほぼ非圧縮性のケーキを示している。50%エタノールを用いると、有意により高いろ過速度が観察される。
【図14】図14Aは、沈殿されたプラスミドの精密ろ過の間に経時的に収集された透過液の容量を示している。沈殿された懸濁液中のDNAの当初濃度が、各データセットについて示されており、当初の懸濁液容量は500mLであった。懸濁液は15mL/分で容易にろ過され、実験中、透過液の流量は減少せず、ろ過の全体を通じて、10psigの圧力測定値を維持した。図14Bは、80%v/vエタノールを加えた沈殿されたプラスミド懸濁液の透析ろ過中のエタノール及びNaCl濃度を示している。
【図15】図15A−Cは、ろ過時にフィード及びエタノールの添加をするためのMasterflexサイズ14(5/16’’)導管を用いる接線流ろ過(「TFF」)条件下での精密ろ過の間に試みた3つの連続的アルコール沈殿を示している。図15Aは、100kDのPES膜を使用し、40%v/vエタノールで沈殿させる連続的沈殿/精密ろ過研究から得られた結果を示している。ろ過カートリッジへのフィード流速は、約30mL/分であった。浸透液の約200mLを集めた後、流量は、その初期値の約20%まで減少した。図15Bは、0.1ミクロンのPVDF膜を使用し、40%v/vエタノールで沈殿させた連続的沈殿/精密ろ過研究から得られた結果を示している。フィード流速は、同じく約30mL/分であったが、容器とフィルターの間に1分のラグタイムを導入した。図15Cは、図15B中の実験と同様に行われた実験(0.1μmのPVDF膜、1分のラグタイム)から得られた結果を示しているが、プラスミドDNAを沈殿させるために、40%のエタノールではなく50%エタノールを使用した。浸透液流量の減少は、40%v/vエタノール実験(図15B)から僅かに低下し、圧力の増加により、30分を超えてろ過実験の実験を継続することは不可能であった。
【図16】図16A及び16Bは、ろ過時にフィード及びエタノールを添加するためのHPLC導管を用いるTFF下での精密ろ過を用いて試みた2つの連続的アルコール沈殿を示している。図16Aは、40%エタノール濃度を使用し、ラグタイムを用いない連続的沈殿/精密ろ過を示している。
【図17】図17A及び17Bは、実施例8に記載されているプラスミドDNA精製プロセスを用いた2つの精製操作のプロセス収率(A)及び不純物レベル(B)を示している。各プラスミドの精製は、OD600=70の75−80L、17.5−18.6Lの発酵から得られたE.コリ可溶化液を用いて開始した。図17Aは、高次コイルプラスミドDNAのグラムで表した量(「scDNA(g)」)及び精製プロセスの様々な段階における高次コイルDNAのパーセント(「%scDNA」)を比較している。細胞可溶化液(「Lys」);宿主細胞細片の凝集後の清澄化された可溶化液(「CL」);第一のケイ酸カルシウムバッチ吸着及びろ過後のDNAスラリー(「LRA1F」)、第二のケイ酸カルシウムバッチ吸着及びろ過後のDNAスラリー(「LRA2F」)、並びにPEG沈殿及びその後の精密ろ過工程の間に粉末化された、再懸濁されたDNA(「FRB」)。図17Bは、図17Aに記載されている精製プロセスの同じ段階でのエンドトキシン(logEU/mL)、タンパク質(%)及びRNA(%)の量を比較している。
【図18】図18は、PEG6000で凝集された細胞可溶化液中の、最終CTAB濃度の関数としてのタンパク質レベル(BCAアッセイによって測定)を示しており、ここで、CTABは、40mMのNaCl中に2%(w/v)CTABを添加することによって、可溶化液中に導入される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び
(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項2】
前記宿主細胞可溶化液がポリエチレングリコール(PEG)凝集剤により凝集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)における宿主細胞がリゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び
(b)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項5】
工程(a)における宿主細胞がリゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
STET緩衝液がPEGを含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
PEGが、溶解後に、宿主細胞可溶化液に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
PEG凝集剤の分子量が約1450Daと約15,000Daの間にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEGの添加前に、その後の中和に供される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記細胞可溶化液のpHを約pH7と約pH9の間の値に低下させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PEGが、連続的遠心条件下で、前記アルカリシフトされ、中和された宿主細胞可溶化液に供給され、上清中に高次コイルプラスミドDNAを有する凝集された細胞細片の沈殿物を取得する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEGの添加後に、その後の中和に供される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、PEG含有宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記可溶化液のpHを約pH7と約pH9の間の値に低下させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、
(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、
(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、
(d)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(c)の細胞可溶化液を清澄化すること、及び
(e)工程(d)の前記凝集された宿主細胞細片を除去し、可溶性高次コイルプラスミドDNAを含有する溶液上清を取得すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項15】
工程(a)の生理的溶解緩衝液が標準的なSTET緩衝液である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細片及び非高次コイルプラスミドを沈殿させるために、工程(d)及び(e)の間に界面活性剤によって誘導される沈殿工程が追加され、細胞可溶化液をさらに清澄化する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
界面活性剤が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)である、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び
(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項19】
高次コイルプラスミドDNAが、アルコール及びPEGからなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(a)において沈殿される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高次コイルプラスミドDNAがPEGによって沈殿される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記沈殿された高次コイルDNAが、
(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過工程と、
(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEG及び塩を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、
(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、
(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに
(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、
を含む段階的ろ過プロセスにおいて濃縮される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)の前記透析ろ過緩衝液が、約10%(w/v)PEG6000と約1.2MのNaClを含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
沈殿された高次コイルプラスミドDNAが、エタノールの添加により、約50%(v/v)の最終濃度まで部分的に脱水される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二のろ過濃縮工程が、撹拌された細胞フィルター乾燥機中で起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
高次コイルプラスミドDNAがエタノールによって沈殿される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAが、
(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、
(b)エタノール溶液中のエタノールの濃度が前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール溶液に対する第一の透析ろ過工程と、
(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに
(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、
を含む段階的ろ過プロセスによって濃縮される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)のエタノール溶液中のエタノールの濃度が約80%(v/v)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第二のろ過濃縮工程が、撹拌された細胞フィルター乾燥機中で起こる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(a)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、
(b)接線流ろ過下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
(c)エタノールの添加により、前記濃縮され、沈殿されたDNAを部分的に脱水すること、及び
(d)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記部分的に脱水され、沈殿されたDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項30】
(a)生理的緩衝溶液中にて、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、
(b)PEG凝集剤で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、
(c)PEGにより前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び
(d)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項31】
工程(a)中の前記宿主細胞が標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEG凝集剤の添加前に、その後の中和に供される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記可溶化液のpHを概ねアルカリシフト以前のそのpHまで低下させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(a)発酵ブロスから微生物宿主細胞を採集すること、
(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、
(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、
(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、
(e)PEGの添加により宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、
(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、
(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、
(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記高次コイルプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、
(i)水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残りの不純物を吸着させること、
(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、
(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、
(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、
(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに
(n)エタノールを除去するために乾燥させること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項35】
前記微生物細胞が標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細片及び非高次コイルプラスミドを沈殿させるために、低カットヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される、工程(e)及び(f)の間の沈殿工程が追加され、細胞可溶化液をさらに清澄化する、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び
(b)宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項2】
前記宿主細胞可溶化液がポリエチレングリコール(PEG)凝集剤により凝集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)における宿主細胞がリゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、及び
(b)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項5】
工程(a)における宿主細胞がリゾチームを含有する標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
STET緩衝液がPEGを含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
PEGが、溶解後に、宿主細胞可溶化液に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
PEG凝集剤の分子量が約1450Daと約15,000Daの間にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEGの添加前に、その後の中和に供される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記細胞可溶化液のpHを約pH7と約pH9の間の値に低下させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PEGが、連続的遠心条件下で、前記アルカリシフトされ、中和された宿主細胞可溶化液に供給され、上清中に高次コイルプラスミドDNAを有する凝集された細胞細片の沈殿物を取得する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEGの添加後に、その後の中和に供される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、PEG含有宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記可溶化液のpHを約pH7と約pH9の間の値に低下させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)生理的緩衝溶液中で、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、
(b)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、工程(a)の宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、
(c)アルカリシフトされた工程(b)の細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、
(d)PEGで宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(c)の細胞可溶化液を清澄化すること、及び
(e)工程(d)の前記凝集された宿主細胞細片を除去し、可溶性高次コイルプラスミドDNAを含有する溶液上清を取得すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項15】
工程(a)の生理的溶解緩衝液が標準的なSTET緩衝液である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細片及び非高次コイルプラスミドを沈殿させるために、工程(d)及び(e)の間に界面活性剤によって誘導される沈殿工程が追加され、細胞可溶化液をさらに清澄化する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
界面活性剤が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)である、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
(a)前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び
(b)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項19】
高次コイルプラスミドDNAが、アルコール及びPEGからなる群から選択される沈殿剤を用いて、工程(a)において沈殿される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高次コイルプラスミドDNAがPEGによって沈殿される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記沈殿された高次コイルDNAが、
(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過工程と、
(b)高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分なPEG及び塩を含有するPEG含有透析ろ過緩衝液に対する第一の透析ろ過工程と、
(c)沈殿された高次コイルプラスミドDNAがエタノールの添加によって部分的に脱水される脱水工程と、
(d)第二のろ過濃縮工程と、並びに
(e)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、
を含む段階的ろ過プロセスにおいて濃縮される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)の前記透析ろ過緩衝液が、約10%(w/v)PEG6000と約1.2MのNaClを含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
沈殿された高次コイルプラスミドDNAが、エタノールの添加により、約50%(v/v)の最終濃度まで部分的に脱水される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二のろ過濃縮工程が、撹拌された細胞フィルター乾燥機中で起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
高次コイルプラスミドDNAがエタノールによって沈殿される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAが、
(a)接線流ろ過の下での精密ろ過を含む第一のろ過濃縮工程と、
(b)エタノール溶液中のエタノールの濃度が前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿された状態に保つのに十分であるエタノール溶液に対する第一の透析ろ過工程と、
(c)第二のろ過濃縮工程と、並びに
(d)100%(v/v)エタノールに対する第二の透析ろ過工程と、
を含む段階的ろ過プロセスによって濃縮される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)のエタノール溶液中のエタノールの濃度が約80%(v/v)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第二のろ過濃縮工程が、撹拌された細胞フィルター乾燥機中で起こる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(a)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、
(b)接線流ろ過下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
(c)エタノールの添加により、前記濃縮され、沈殿されたDNAを部分的に脱水すること、及び
(d)撹拌された細胞フィルター乾燥機中で前記部分的に脱水され、沈殿されたDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項30】
(a)生理的緩衝溶液中にて、高次コイルプラスミドDNAを含有する微生物宿主細胞を溶解し、宿主細胞可溶化液を形成すること、
(b)PEG凝集剤で宿主細胞細片を凝集させることによって、前記宿主細胞可溶化液を清澄化すること、
(c)PEGにより前記高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、及び
(d)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルプラスミドDNAを濃縮すること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項31】
工程(a)中の前記宿主細胞が標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
宿主細胞可溶化液がアルカリpHシフトに供され、及び、PEG凝集剤の添加前に、その後の中和に供される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アルカリpHシフト及びその後の中和が、宿主細胞可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のアルカリ値に上昇させること、及び、その後、前記可溶化液のpHを概ねアルカリシフト以前のそのpHまで低下させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(a)発酵ブロスから微生物宿主細胞を採集すること、
(b)生理的溶解溶液の十分量の中で宿主細胞を溶解させること、
(c)前記可溶化液のpHを約pH12と約pH13の間のpHまで上昇させることにより、宿主細胞可溶化液をアルカリpHシフトに供すること、
(d)アルカリシフトされた細胞可溶化液を、概ね、溶解緩衝液のpHまで中和すること、
(e)PEGの添加により宿主細胞細片を凝集させることによって、工程(d)の細胞可溶化液を清澄化すること、
(f)前記凝集された宿主細胞細片を除去すること、
(g)ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される沈殿を用いて、高次コイルプラスミドDNAを選択的に沈殿させること、
(h)最適化されたイオン強度の、及び水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムをさらに含有する十分に確定された緩衝液中に前記高次コイルプラスミドDNAを再溶解し、及び不純物を吸着させること、
(i)水和され、結晶化されたケイ酸カルシウムによって誘導される第二の吸着により、残りの不純物を吸着させること、
(j)PEGで高次コイルプラスミドDNAを沈殿させること、
(k)接線流ろ過モード下での精密ろ過によって、前記沈殿された高次コイルDNAを濃縮すること、
(l)エタノールの添加により、前記沈殿された高次コイルDNAを部分的に脱水すること、
(m)撹拌された細胞フィルター乾燥機で前記脱水された高次コイルDNAを濃縮すること、並びに
(n)エタノールを除去するために乾燥させること、
を含む、大規模な微生物発酵の細胞可溶化液から高次コイルプラスミドDNAを精製する方法。
【請求項35】
前記微生物細胞が標準的なSTET緩衝液中で溶解される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
細片及び非高次コイルプラスミドを沈殿させるために、低カットヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドによって誘導される、工程(e)及び(f)の間の沈殿工程が追加され、細胞可溶化液をさらに清澄化する、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−528035(P2008−528035A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553283(P2007−553283)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/003015
【国際公開番号】WO2006/083721
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/003015
【国際公開番号】WO2006/083721
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
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