説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】
パネル内に放電ガスを導入する際に不純物が混入するのを防止し、放電特性の安定したプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】
パネルに接続されたガラス管の一部を加熱真空排気時に冷却することで、パネルから出た不純ガスを冷却したガラス管内に吸着させる。その後、放電ガスを導入し、ガラス管の冷却部分よりもパネルに近い部分を加熱溶融することで、封止切断を行う。これによりパネルから排出された不純ガスが、放電ガスの導入時にパネル内に持ち込まれるのを防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のテレビジョン受像機や公衆表示装置等の画像表示デバイスに用いるプラズマディスプレイパネル(以下PDPとも略記する)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPDPとして、AC型の3電極面放電型PDPが知られている。その構造は2枚の基板を所定間隔を持って張り合わせ、構成されている。PDPは加熱しながらパネル内の真空排気を行い、He,Ne,Xe等の放電ガスを導入することで、放電させ画像表示を行っている。
上述したPDPパネルの製造方法において、パネルに導入する放電ガスは放電特性の安定性確保、及び放電電圧の低電圧化のため、高い純度であることが必要となる。このために、従来はガス封入前にパネルを加熱排気することでパネル内の不純ガスを除去するという工程を持っている。
【0003】
しかしながら、この方法では、パネルから排気された不純ガスは真空排気装置の配管内に付着し、放電ガスの導入時に再びパネル内に持ち込まれることとなる。これにより放電ガスの純度が十分ではなくなる。これを防止する方法の一例として、パネルに接続したガラス管の内部のチップオフ時にパネルの外となる部分にゲッターを配置し、パネルの加熱真空排気時にゲッターを活性化させることで、放電ガスの導入時にパネル内に持ち込まれる不純ガスを吸着させ、放電ガス導入後は、ゲッター設置部よりもパネルに近い側でガラス管の封止切断を行うという手法がある。(特許文献1)
【特許文献1】特開平11−329246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パネルの加熱真空排気の際に配管内に吸着した不純ガスが放電ガス導入時にパネル内に持ち込まれることを防ぐためにガラス管内にゲッターを設けるという手段はパネルの真空排気毎に新しいゲッターを設置する必要があり、コスト増の一因となっている。本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ゲッターを使用せず、加熱真空排気時にパネルから排気された不純ガスが放電ガスの導入時に再びパネル内に持ち込まれるのを防ぐものである。これにより、従来に比べ、低コストで放電特性が安定し、パネル面内の放電特性が均一な、高品質のプラズマディスプレイパネルを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、パネルを加熱真空排気する際に用いられるパネルに接続したガラス管の一部を冷却することにより、パネルから排出された不純ガスをガラス内に吸着させる。これにより、放電ガス導入による不純ガスがパネル内に持込まれるのを防ぐことを特徴とするものである。
【0006】
すなわち、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、背面基板の放電空間とつながっている排気孔に、真空排気及びガス導入を行うためのガラス管を接続し、そのガラス管の一部に冷却機構を取り付け、ガラス管と真空排気装置及びガスボンベとを接続し、冷却機構を作動させながら、加熱真空排気及び放電ガス導入を行うことを特徴とする製造方法である。
【0007】
さらに、本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、パネルに接続するガラス管の形状において、突起形状を有し、その突起部を冷却することを特徴している。
これらの方法により、パネル内を真空排気する際に排出される不純ガスはガラス管の冷却された管内に付着することで、放電ガスの導入の際に不純ガスがパネル内に持ち込まれずに、高品質のプラズマディスレイパネルを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱真空排気時にパネルに接続したガラス管の一部を冷却することでパネルから排出される不純ガスをガラス管の冷却した管内に付着させる。これにより、ゲッターを使用せず、不純ガスが放電ガス導入時にパネル内に持ち込まれるのを防止することが出来る。以上、本発明によれば、低コストで、放電特性が安定し、パネル面内での放電特性が均一なプラズマディスプレイパネルを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
以下に本発明におけるプラズマディスプレイパネル(PDP)の製造方法の具体例を図1から図6により説明する。
図3は本発明に係る3電極面放電型PDPの傾視図である。このPDPは前面基板101と背面基板102に電極、誘電体層、蛍光体層、隔壁等を形成し、張り合わせた構造となっている。
図3において前面基板101には、透明電極103とバス電極104からなる表示電極105が設けられ、その上に誘電体層106が設けられている。また、誘電体層106上には誘電体層106を保護するための保護層107が形成されている。保護層107には放電電圧を下げるために2次電子放出係数の高い材料(MgO等)が使われる。
【0011】
背面基板102には、アドレス電極108が前面基板101の透明電極103及びバス電極104とそれぞれ交差する方向に形成されている。アドレス電極108上には誘電体層109が形成され、その上にアドレス電極108と平行して隔壁110が形成される。その隔壁110の間には、それぞれ、赤、緑、青の発光を有する蛍光体層111が設けられている。
【0012】
図4は図3に示したPDPの断面図である。前面基板101と背面基板102はガラスペーストからなる封着剤114bで封着されている。封着材114bは前面基板101の周囲に塗布され、400度程度に加熱することで軟化し、前面基板101と背面基板102を封着するものである。背面基板102には、加熱真空排気を行うための排気孔112が背面基板102のコーナー部に背面基板102を貫通するように設けられている。また、排気孔112にはガラス管2がガラスペーストからなる封着材114aによって取り付けられており、真空排気時の加熱によって背面基板102に封着される。そして、前面基板101の透明電極103及びバス電極104と、背面基板102のアドレス電極108を交差するように基板どうしを張り合わせたものがPDP1となる。
【0013】
図1は、本発明におけるPDPの製造方法を示す概略図である。図1において、加熱炉13内に設置されたPDP1はガラス管2、ガラス管2と第一の配管3を繋げる為の接続ヘッド8、第1の配管3、真空バルブ4、第3の配管5を通して真空排気装置6に接続される。PDP1は、加熱炉13により加熱され、真空排気バルブ4を開けることで、ガラス管2から第1の配管3、第3の配管5を通して真空排気装置6によって真空排気が行われる。また、ガラス管2の途中には冷却機構7が取り付けられており、水冷によりガラス管2の一部を冷却することでパネルから排出された不純ガスの一部を管内に吸着させている。冷却機構7は循環させる冷却水の放熱のために炉外の熱交換器15へとホース14によって接続されている。熱交換器15は温度の上がった冷却水の放熱と冷却機構7への冷却水の循環をさせるための物である。PDP1内の加熱真空排気により、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)、有機物(CxHy,CxHyOz)等のPDP1内の不純物ガスをガラス管2や真空排気装置6に接続された第3の配管5を通して真空排気装置6へと排出する。このとき、冷却機構7の取り付けられたガラス管2a内には、冷却機構による冷却温度よりも沸点が高い有機系物質(例えば、C6H12O3 )が吸着する。これが放電ガス導入時に不純物となる物質であり、第1の配管3内部に付着して残留することを防止する。そして、第一の配管3は真空バルブ4の前で分岐して、ガス導入を行うためのガス導入バルブ9、第2の配管10、流量調整器11、ガスボンベ12に接続されている。PDP1内の加熱真空排気完了後、PDP1及びガラス管2をおおよそ100℃以下まで冷却し、冷却機構7による冷却を行ったまま、真空排気バルブ4を閉じ、ガス導入バルブ9を開き、流量調整器10でガスの流量を調整しつつ第2の配管10、第1の配管3、ガラス管2を通じて放電ガスをPDP1内に導入する。この際、冷却機構7により、ガラス管2aはPDP1及びガラス管2よりも低い温度に冷却される。これにより、放電ガス導入の際、気化してパネルへ導入される不純物を冷却機構7により冷却されたガラス管2aの内壁に付着させて、PDP1への混入を防止することができる。ガス導入完了後、冷却機構7を止め、ガラス管2のA部を加熱溶融させ、封止・切断する。これによりPDP1を真空排気装置6や第1の配管3から切り離す。その後、エージング工程を経てパネルが完成する。
【0014】
次に冷却機構7の構成を図6に示す。冷却機構7は熱伝導率の高い銅等の棒状の金属から出来ており、ガラス管を通すための空孔を設け、その周りに冷却水を流すための冷却管7aを設けたものとなっている。そして、真空排気及びガス導入中に冷却管7aに冷却水を流すことでガラス管2aを冷却するものである。尚、冷却機構7を通って温度の上がった冷却水は、熱交換器14を通ることで放熱が行われ、再度冷却機構7へと循環する。
【0015】
次に図5により本発明におけるプラズマディスプレイパネルの製造工程にそって、更に詳細に説明する。まず最初に前面基板101と背面基板102を電極を交差させるように張り合わせる(ステップS1)。次に、背面基板102に接続されたガラス管2の一部2aに冷却機構7を取り付ける(ステップS2)。次に、ガラス管2を接続ヘッド8に接続し、冷却機構7を動作させ、冷却を開始する(ステップS3)。その後、ガラス管2とPDP1を加熱することで、基板の周囲に塗布されたガラスペーストによる封着剤114によって、封着をし(ステップS4)、真空排気装置6を用いPDP1内の真空排気を開始する。ここでPDP1から気化して排出された不純物の一部は冷却機構7により冷却されたガラス管2aの内壁に付着し、真空排気装置6への排気経路には付着しないようにする。このときの加熱処理は、約2時間をかけて430℃以上に昇温し、約4時間保持した後、約2時間かけて100℃以下まで冷却するというプロファイルを用いる。この加熱処理と同時に真空排気を行う(ステップS5)。真空排気終了後、PDP1を100℃程度まで冷却し(ステップS6)、冷却機構7は動作させたまま真空排気バルブ4を閉じ、ガス導入バルブ9を開き、流量調整器10でガスの流量を調整しつつNeガスにXeガスを5〜20%混合させた放電ガスをPDP1内に導入する(ステップS7)。この際にも放電ガスに混入している不純物の一部は冷却機構7により冷却されたガラス管2aの内壁に付着し、PDP1への導入を防止できる。放電ガスの圧力が50〜60kPa程度になったらガス導入バルブ9を閉じ、ガス導入を完了させる。その後、冷却機構を止め、ガラス管2のA部をガスバーナー等で加熱溶融させ、封止・切断する(ステップS8)。これによりPDP1を真空排気装置6から切り離す。その後、エージング工程を経てパネルが完成する(ステップS9)。
【実施例2】
【0016】
上述した本発明の実施の形態におけるPDPの製造装置において、ガラス管の冷却部の形状を突起状にすることでより効果が期待できる。そのための構成を図2に示す。図においてガラス管2’の途中に突起部2’bを作成したものを背面基板102に封着剤114aによって取り付ける。そして、その突起部2’bに冷却機構7を取り付け、冷却水を流し冷却する。そして、PDP1とガラス管2’を加熱することで、前面基板101と背面基板102を封着し、ガス導入バルブ9を閉じたまま真空排気バルブ4を開けガラス管2’を通じて真空排気装置6でPDP1を真空排気する。この時、ガラス管2’の突起部2’bの管内に有機系物質が吸着する。真空排気終了後、PDP1を冷却し、ガラス管2’を通して放電ガスをパネル内に導入する。ガス導入完了後、冷却機構7を止め、ガラス管2’のA部を加熱・溶融させ、封止切断することによりPDP1を真空排気装置6から切り離す。その後、エージング工程を経てパネルが完成する。
【0017】
本実施例では、冷却する突起部は主な排気経路とは分かれるため、実施例1よりも吸着する不純物量は少なくなる。しかし、不純ガス中の有機物の量は二酸化炭素や水に比べて微量であるため、少量の低減でも効果が見られる。また、放電ガスの主な導入経路とも分かれているため、放電ガスの純度が保たれるという利点もある。
以上、この発明の実施例を図にて詳述したが、具体的な構成はこの実施例に限られる物ではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更される。例えば、上記実施例における突起の形状は図に示された物に限る物ではなく、不純ガスを溜め放電ガス導入経路と分かれていることを満たしていれば任意の形状の物とする。また、冷却方法としては今回水冷による物をとしたが、冷却ガスや液体窒素などさらに低温まで下げることで不純ガスの吸着効果を高めることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明におけるPDPの製造方法は、パネル内から排気された不純ガスを排気装置および配管内に吸着されるのを防ぐことで、放電ガスによるパネル内の不純ガス持込を抑制するため、安定した放電特性を持ち、パネル面内での放電特性が均一な、高品質のPDPを製造する用途として有用である。また、同様の構造を有する他のフラットパネルディスプレイの製造用途にも応用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例におけるプラズマディスプレイパネルの製造装置の概略構成図
【図2】本発明の別の実施例におけるプラズマディスプレイパネルの製造装置の概略構成図
【図3】AC型PDPの構造の一部を抜き出した傾斜図
【図4】AC型PDPの構造の一部を拡大した断面図
【図5】本発明におけるプラズマディスプレイパネルの排気工程における製造工程図
【図6】本発明における冷却機構の断面図
【符号の説明】
【0020】
1 プラズマディスプレイパネル
2 ガラス管
3 第一の配管
4 真空排気バルブ
5 第3の配管
6 真空排気装置
7 冷却機構
8 接続ヘッド
9 ガス導入バルブ
10 第2の配管
11 流量調整器
12 ガスボンベ
13 加熱炉
14 ホース
15 熱交換器
2’ ガラス管
101 前面基板
102 背面基板
103 維持電極
104 走査電極
105 表示電極
106 誘電体層
107 保護層
108 アドレス電極
109 誘電体層
110 隔壁
111 蛍光体層
112 排気孔
114a 封着剤
114b 封着剤
7a 冷却管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示電極対と該表示電極対を覆う誘電体層及び保護層を形成した前面基板と、前記表示電極対と交差する方向に形成したアドレス電極と前記アドレス電極上を覆う誘電体層と放電空間を区画する隔壁及び蛍光体層を形成した背面基板とを重ね合わせ、加熱することにより基板周囲を封着材で封着すると共に、前記背面基板に設けた排気孔に接続したガラス管を通じてパネル内の不純ガスを排出し、排気完了後、前記ガラス管を通じて放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記パネル内の不純ガスを排気するときに、前記ガラス管を冷却することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記放電ガスを封入した後に、前記ガラス管を冷却した部分よりもプラズマディスプレイパネルの側を切断し、封止することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記ガラス管の形状が突起部を有し、該突起部を冷却することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153049(P2010−153049A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326791(P2008−326791)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】