説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】対向放電構造を適用することにより,放電開始電圧を低く抑えるとともに発光効率を高めるプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは,所定の間隔をおいて対向配置される第1基板10および第2基板20(以下,「両基板」とする)と,両基板の間の空間を区画することにより形成される複数の放電セル18,28と,両基板の間に,第1方向に沿って伸長して配設されるアドレス電極12と,両基板の間に,アドレス電極12から離隔して,第1方向と交差する第2方向に伸長して配設され,第1方向に沿って相隣接する放電セル18,28の各境界に対応する位置に,第1方向に交互に配設される第1電極31および第2電極32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プラズマディスプレイパネルに係り,より詳しくは放電開始電圧を低く抑えるとともに発光効率を高めることが可能なプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
3電極面放電形プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel,以下「PDP」という。)は,同一面上に配される維持電極および走査電極を含む基板と,両電極と所定の離隔距離を有し且つ交差方向に配されるアドレス電極を含む基板とで構成され,両基板間には放電ガスが充填される。
【0003】
PDPでは,各駆動信号線により互いに独立制御される走査電極とアドレス電極との間の放電(アドレス放電)によって放電の有無が決定され,互いに同一面上に配される維持電極と走査電極との間の放電(維持放電)によって画面が表示される。
【0004】
PDPでは,グロー放電により可視光を発生させるが,グロー放電の発生後,可視光が人の目に到達するまでには複数の過程を経る。すなわち,グロー放電による電子と気体等との衝突は励起状態の気体を生成し,この励起状態の気体から真空紫外線が生じる。可視光は,この真空紫外線が放電セル内の蛍光体に衝突することにより放出され,さらに前面の透明基板を透過して人の目に到達する。上記過程において,維持電極および走査電極に印加される入力エネルギー(印加電圧)は相当消費されることになる。
【0005】
グロー放電は,維持電極と走査電極との間の印加電圧によって発生するが,放電開始電圧以上の非常に高い電圧を必要とする。放電が開始されると,陰極および陽極の周辺の誘電層に生成される空間電荷効果によって,両極間には歪曲された電圧分布が形成される。すなわち,放電のために両電極に印加された電圧の大部分を消費する陰極周辺の陰極シース領域,印加電圧の一部分を消費する陽極周辺の陽極シース領域,電圧を殆ど消費しない両領域間の陽極柱領域で構成される電圧分布が形成される。陰極シース領域では電子加熱の効率が誘電層表面に形成されるMgO保護膜の二次電子放出特性に依存すること,また陽極柱領域では印加電圧の大部分が電子加熱に消費されることは公知である。
【0006】
蛍光体に衝突することにより可視光を放出させる真空紫外線は,励起状態のキセノン(Xe)気体が安定状態に転移する時に生じるが,このキセノン(Xe)気体の励起状態は,キセノン(Xe)気体と電子との衝突によって発生する。このため,電子加熱の効率を高めることでキセノン(Xe)気体と電子との衝突を促進することによって,所定の印加電圧に対して可視光が生成される比率(発光効率)を高めることが可能となる。
【0007】
陰極シース領域では,印加電圧の大部分が消費されるが電子加熱の効率が低く,陽極柱領域では,印加電圧の消費が少なく電子加熱の効率が非常に高い。このため,陽極柱領域(放電ギャップ)を拡大することによって,電子加熱の効率を高め,さらに発光効率を高めることが可能となる。
【0008】
また,放電ギャップに形成される電場(E)と放電ガスの密度(n)との比(E/n)が同一である場合,全体電子の中で消費される電子の比率は,励起状態のキセノン(Xe*),キセノンイオン(Xe+),励起状態のネオン(Ne*),ネオンイオン(Ne+)の順に高く,かつキセノン(Xe)の分圧が増加するほど電子エネルギーが減少することは公知である。
【0009】
このため,電子エネルギーの減少によりキセノン(Xe)の分圧が増加すれば,励起状態のキセノン(Xe*),キセノンイオン(Xe+),励起状態のネオン(Ne*),ネオンイオン(Ne+)で消費される電子の中で,キセノン(Xe)の励起に消費される電子の比率が相対的に高くなることによって発光効率を高めることが可能となる。
【0010】
上記のとおり,陽極柱領域の拡大が電子加熱の効率を高め,キセノン(Xe)分圧の増加が全体電子の中で励起状態のキセノン(Xe*)のために消費される電子加熱の効率を高める。したがって,陽極柱領域の拡大,キセノン(Xe)分圧の増加はいずれも,電子加熱の効率を高めることとなり発光効率を高めることが可能となる。
【0011】
発光効率を高めるためには,低い放電開始電圧のもとで,陽極柱領域の増加およびキセノン(Xe)分圧の増加を実現する必要がある。
【0012】
なお,放電ギャップの距離および電圧が同一である場合,放電開始に必要とされる電圧は,面放電構造と比較して対向放電構造の方が低いことは公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし,従来の技術によれば,陽極柱領域の増加またはキセノン(Xe)分圧の増加は,いずれも放電開始電圧の増加につながるため,PDPの製造費用の増加を来たすという問題がある。
【0014】
本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,放電開始電圧を低く抑えるとともに発光効率を高めることが可能な,新規かつ改良されたPDPを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,所定の間隔をおいて対向配置される第1基板および第2基板と,第1基板と第2基板との間の空間を区画することにより形成される複数の放電セルと,第1基板と第2基板との間に,第1方向に沿って伸長して配設されるアドレス電極と,第1基板と第2基板との間に,アドレス電極から離隔して,第1方向と交差する第2方向に伸長して配設され,第1方向に沿って相隣接する放電セルの各境界に対応する位置に,第1方向に交互に配設される第1電極および第2電極と,を備えるプラズマディスプレイパネルが提供される。本プラズマディスプレイパネルにおいて,第1電極および第2電極は,第1基板と第2基板に対して垂直方向に拡張された横断面形状を有し,相互に所定の間隔をおいて対向に配設される。さらに,アドレス電極は,第1電極または第2電極のいずれかに対応する相隣接する放電セルの各境界に対応する位置に,当該相隣接する放電セルのそれぞれに対応するように第2方向に突出する突出部を有する。
【0016】
また,上記第1基板に隣接して複数の第1の放電空間を区画する第1隔壁層と,第2基板に隣接して複数の第1の放電空間に対向する複数の第2の放電空間を区画する第2隔壁層と,を備え,対向する一対の第1の放電空間および第2の放電空間によって,放電セルが形成されるようにしてもよい。
【0017】
また,上記アドレス電極,第1電極および第2電極は,第1隔壁層と第2隔壁層との間に配設されるようにしてもよい。
【0018】
また,上記第2の放電空間は,第1の放電空間より,大きな容積を有するようにしてもよい。
【0019】
また,上記第1隔壁層は,第1方向に伸長して形成される第1隔壁部材を含み,第2隔壁層は,第1方向に伸長して形成される第3隔壁部材を含むようにしてもよい。
【0020】
また,上記第1隔壁層は,第1隔壁部材と交差して形成される第2隔壁部材をさらに含み,第2隔壁層は,第3隔壁部材と交差して形成される第4隔壁部材をさらに含むようにしてもよい。
【0021】
また,上記アドレス電極は,第2方向に沿って相隣接する一対の放電セルの境界を通るように配設されるようにしてもよい。
【0022】
また,上記第1電極および第2電極は,金属電極で形成されるようにしてもよい。
【0023】
また,上記第1電極および第2電極と前記アドレス電極の外周には,誘電層が形成されるようにしてもよい。
【0024】
また,上記誘電層の外面には,保護膜が形成されるようにしてもよい。
【0025】
また,上記保護膜は,可視光非透過性であるようにしてもよい。
【0026】
また,上記アドレス電極は,第1基板側に隣接して配設され,第1電極および第2電極は,第2基板側に隣接して配設され,アドレス電極の第2基板側の端部が形成する仮想線と,第1電極および第2電極の第1基板側の端部が形成する仮想線との間には,所定の間隔が形成されるようにしてもよい。
【0027】
また,上記アドレス電極の両基板に対して垂直方向の厚さは,第1電極の両基板に対して垂直方向の厚さと比べて,薄くなるようにしてもよい。
【0028】
また,上記アドレス電極の両基板に対して垂直方向の厚さは,第2電極の両基板に対して垂直方向の厚さと比べて,薄くなるようにしてもよい。
【0029】
また,上記各放電セル内に形成される蛍光体層は,放電セルの第1基板側に形成される第1蛍光体層と,第1蛍光体層の蛍光体と同一の色相の蛍光体で形成され,放電セルの第2基板側に形成される第2蛍光体層とを含むようにしてもよい。
【0030】
また,上記第1蛍光体層の厚さは,第2蛍光体層の厚さと比べて厚くなるようにしてもよい。
【0031】
また,アドレシング期間では第2電極に走査パルスが印加され,第2電極に対応して隣接する放電セルの境界にアドレス電極の突出部が対応するようにしてもよい。
【0032】
また,上記アドレス電極は,第1基板側に隣接して配設され,第1電極および第2電極は第2基板側に隣接して配設され,アドレス電極の第2基板側の端面群が形成する仮想平面と,第1電極および第2電極の第1基板側の端面群が形成する仮想平面との間には,所定の間隔が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
以上で説明したように,本発明によれば,対向放電構造を適用することにより,放電開始電圧を低く抑えるとともに発光効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に,添付した図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する発明特定事項については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0035】
図1は,本発明の第1の実施形態にかかるPDPを示す部分的な分解斜視図である。
【0036】
図1に示すとおり,本実施形態にかかるPDPは,基本的に所定の間隔をおいて対向配置される第1基板(背面基板10)および第2基板(前面基板20)と,両基板間に複数の放電空間を区画することにより形成される放電セル18,28を有する。
【0037】
さらに,放電セル18,28は,第1隔壁層(背面板隔壁16)および第2隔壁層(前面板隔壁26)によって区画される。この放電セル18,28内には,真空紫外線を吸収することにより可視光を放出する蛍光体層19,29が形成され,プラズマ放電により真空紫外線を発生するために,放電ガス(例えば,キセノン(Xe)とネオン(Ne)などを含む混合ガス)が充填されている。
【0038】
背面板隔壁16は,背面基板10から前面基板20側に突出して配され,前面板隔壁26は,前面基板20から背面基板10側に突出して配される。背面板隔壁16は,背面基板10に隣接する複数の放電空間(第1の放電空間に相当する。)を区画することにより一側の放電セル18を形成し,前面板隔壁26は,前面基板20に隣接する複数の放電空間(第2の放電空間に相当する。)を区画することにより他側の放電セル28を形成する。
【0039】
上記のとおり,両側に互いに対向する放電空間によって,実質的に一つの放電セルが形成されるため,本実施形態では特に指摘しない限り,“放電セル18,28”は,2つの放電空間を合わせて一つに形成される放電空間を意味する。別の観点によれば,一つに繋がる放電空間である“放電セル18,28”は,背面板隔壁16によって区画される層,前面板隔壁26によって区画される層,電極が配設される中間層の3層で構成されているとみなされ,各層の寸法形状を適切に設定することによって性能の向上が図られる。
【0040】
前面板隔壁26によって区画される放電空間である一側の放電セル28の容積は,背面板隔壁16によって区画される放電空間である他側の放電セル18の容積より大きく設定される。両放電空間(放電セル)の容積差によって,放電セル18,28から放出される可視光は,効果的に前面基板20を透過することが可能となる。
【0041】
背面板隔壁16と前面板隔壁26は,放電セル18,28を四角形または六角形など多様な形状に形成することが可能であるが,本実施形態では四角形に形成される放電セル18,28の場合を例示している。本実施形態では,背面板隔壁16は,背面基板10に配される第1方向に伸長する第1隔壁部材16aと第2方向に伸長する第2隔壁部材16bとを含んで構成される。
【0042】
第1隔壁部材16aが一方向(y軸方向)に伸長して配され,第2隔壁部材16bが第1隔壁部材16aと直交方向に伸長して配されることにより,背面基板10側に放電セル18が独立した放電空間として形成される。
【0043】
前面板隔壁26は,前面基板20に配される第3方向に伸長する第3隔壁部材26aと第4方向に伸長する第4隔壁部材26bとを含んで構成される。第3隔壁部材26aが,第1隔壁部材16aに対応する形状・方向を有し,背面基板10側に突出して配され,第4隔壁部材26bが,第2隔壁部材16bに対応する形状・方向を有し,背面基板10側に突出して配される。
【0044】
よって,前面板隔壁26の第3隔壁部材26aと第4隔壁部材26bが,互いに直交方向に伸長して配されることにより,背面基板10側の放電セル18に対応する形で前面基板20側に放電セル28が形成される。
【0045】
蛍光体層19,29は,背面基板10側の放電セル18に形成される第1蛍光体層19と,前面基板20側の放電セル28に形成される第2蛍光体層29とを含み,放電セル18,28内に形成される。背面板隔壁16により形成される放電セル18とこれに対向して前面板隔壁26により形成される放電セル28は,実質的に一つの放電セル18,28であるため,これらの内部にそれぞれ形成される第1蛍光体層19および第2蛍光体層29は,プラズマ放電で生じる真空紫外線の衝突によって同一色の可視光を放出する材料で形成される。
【0046】
第1蛍光体層19は,第1隔壁部材16aと第2隔壁部材16bの各内側面と放電セル18内の背面基板10の表面に形成される。第2蛍光体層29は,第3隔壁部材26aと第4隔壁部材26bの各内側面と放電セル28内の前面基板20の表面に形成される。
【0047】
図1に示すとおり,第1蛍光体層19は,背面基板10上に背面板隔壁16を配した後,蛍光体を塗布して形成する事もでき,背面基板10を放電セル18の形状に相応するようにエッチングした後,エッチング面に蛍光体を塗布して形成する事も可能である。
【0048】
第2蛍光体層29は,前面基板20上に前面板隔壁26を配した後,蛍光体を塗布して形成する事もでき,前面基板20を放電セル28の形状に相応するようにエッチングした後,エッチング面に蛍光体を塗布して形成する事も可能である。
【0049】
背面基板10のエッチングにより背面板隔壁16を形成すれば,背面基板10と背面板隔壁16は同一材料で形成され,前面基板20のエッチングにより前面板隔壁26を形成すれば,前面基板20と前面板隔壁26は同一材料で形成される。
【0050】
エッチング成形の採用によって,背面板隔壁16と背面基板10とを別途に,または前面板隔壁26と前面基板20とを別途に成形する場合と比べて製造費用を低減することが可能である。
【0051】
第1蛍光体層19は,背面基板10側の放電セル18の内部で,第2蛍光体層29は前面基板20側の放電セル28の内部でそれぞれ真空紫外線を吸収して,前面基板20側に向けて可視光を放出する。また,可視光が,第1蛍光体層19では反射され,第2蛍光体層29では透過されるため,背面基板10に形成される第1蛍光体層19の厚さt1は,前面基板20に形成される第2蛍光体層29の厚さt2より厚く設定されるようにしてもよい(t1>t2)。このことにより,前面基板20を透過する可視光の発光効率が向上する。また,熱歪みを軽減するなどの目的に応じて,背面基板10を光透過性材料で形成する場合,背面基板10の背面に,例えばアルミニウム鍍金による金属被覆を施すことによって発光効率を高めることも可能である。
【0052】
上記により形成される第1蛍光体層19および第2蛍光体層29には,真空紫外線が衝突する。プラズマ放電によりこの真空紫外線を発生させて画像を表示するために,各放電セル18,28に対応するアドレス電極12と,第1電極31(維持電極)および第2電極32(走査電極)が,背面基板10と前面基板20との間に配設される。
【0053】
図2は,本実施形態にかかるPDPにおける電極と放電セルの構造を概略的に示す要部平面図である。
【0054】
図2に示すとおり,アドレス電極12は,背面板隔壁16と前面板隔壁26との間に,維持電極31および走査電極32と直交方向(y軸方向)に伸長して配され,x軸方向に突出する突出部12aを有する。突出部12aを,アドレス電極12の伸長方向(y軸方向)に隣接する2個の放電セル18,18に共有させることにより,当該の隣接する放電セル18を同時にアドレシングさせることもできる。
【0055】
よって,突出部12aは,隣接する放電セル18のうち,維持電極31を共有する放電セル18または走査電極32を共有する放電セル18のいずれかに共有される。
【0056】
図2の一例においては,突出部12aが走査電極32を共有する放電セル18,18に共有されている。このことにより,アドレス電極12および走査電極32は,アドレス電極12の伸長方向(y軸方向)に隣接する放電セル18,18のアドレス放電に関与する。また,隣接する放電セル18が突出部12aを個々に有する構造と比べて,放電セル18,18中の突出部12aによる遮蔽面積が減少するため,可視光の遮蔽が抑制されることによって発光効率と輝度が向上する。
【0057】
また,維持電極31と走査電極32は,背面板隔壁16と前面板隔壁26との間で相互に対向放電構造を呈して配されるため,互いに並列状態で一方向(x軸方向)に伸長して配設される。また,維持電極31および走査電極32は,y軸方向に隣接する放電セル18の両側に交互に配され,それぞれ隣接する放電セル18に共有される。このことにより,維持電極31および走査電極32は,アドレス電極12の伸長方向(y軸方向)に隣接する放電セル18の維持放電に関与する。
【0058】
よって,本実施形態によるPDPでは,複数の維持電極31および走査電極32がそれぞれ偶数行および奇数行に区分されており,偶数行の維持放電に際して,偶数行の維持電極31および走査電極32に維持パルスを印加することにより,奇数行の維持放電に際して,奇数行の維持電極31および走査電極32に維持パルスを印加することにより,最終的に画像が表示される。
【0059】
図3は,図1に示すPDPを結合した状態におけるIII−III線での要部断面図であり,図4は,同様にIV−IV線での要部断面図である。また,図5は,本実施形態にかかるPDPにおける電極の構造を概略的に示す要部斜視図である。
【0060】
図3,図4および図5に示すとおり,アドレス電極12は,背面基板10および前面基板20のz軸方向に対して,背面板隔壁16と前面板隔壁26との間で一方向(y軸方向)に伸長して配設される。
【0061】
すなわち,各アドレス電極12は,第1隔壁部材16aと第3隔壁部材26aとの間に両隔壁部材と平行方向(y軸方向)に伸長して形成される。また,複数のアドレス電極12は,x軸方向に放電セル18に対応する間隔を保持しながら並行に配設される。アドレス電極の突出部12aは,走査電極32を共有して隣接する放電セル18に共有される形で,y軸方向に所定幅wを有してx軸方向に突出される。すなわち,突出部12aは,第2隔壁部材16bと第4隔壁部材26bとの間に,x軸方向に走査電極32と部分的に対応しながら,y軸方向に隣接する放電セル18の内部に突出される。
【0062】
上記のとおり,隣接する放電セル18に共有される走査電極32およびアドレス電極の突出部12aは,相互に対応しながら配設される。よって,走査電極32に走査パルス,アドレス電極12にアドレスパルスをそれぞれ印加することによって,隣接する二つの放電セル18中でアドレス放電が生じる。
【0063】
また,突出部12aは,アドレス電極12に印加されるアドレスパルスを隣接する放電セル18,18内に印加する。このことにより,放電ギャップが,隣接する放電セル18,18,28内で突出部12aと走査電極32との間の小さな間隔で形成されるため,アドレス放電に要する電圧を低く抑えることが可能となる。
【0064】
本実施形態では,アドレス電極12がx軸方向に隣接する放電セル18の間で,第1隔壁部材16aと第3隔壁部材26aとの間に配されるため,x軸方向に隣接する放電セル18を区分することが可能となる。
【0065】
また,維持電極31および走査電極32は,背面基板10および前面基板20のz軸方向に対して,背面板隔壁16と前面板隔壁26との間にアドレス電極12と直交方向(x軸方向)に伸長して配設される。
【0066】
また,維持電極31および走査電極32は,アドレス電極12と電気的に絶縁される。すなわち,維持電極31および走査電極32は,第2隔壁部材16bと第4隔壁部材26bとの間に両隔壁部材と平行方向(x軸方向)に伸長して配設される。また,維持電極31および走査電極32は,アドレス電極12の伸長方向で隣接する放電セル18に共有される形で交互に配設される。
【0067】
本実施形態では,維持電極31および走査電極32が,第2隔壁部材16bと第4隔壁部材26bとの間に,隣接する放電セル18,18と交互に配設されるため,維持電極31および走査電極32が,アドレス電極12の伸長方向(y軸方向)に隣接する放電セル18を区分することが可能となる。
【0068】
走査電極32は,アドレス電極12と共にアドレス期間のアドレス放電に関与して点灯される放電セル18,28を選択する役割を果たす。維持電極31および走査電極32は,維持期間の維持放電に関与して画面を表示する役割を果たす。
【0069】
すなわち,維持電極31には維持期間で維持パルス,走査電極32には維持期間で維持パルス,走査期間で走査パルスがそれぞれ印加される。しかし,各電極は,印加される信号電圧に応じて異なる役割を果たすことが可能であるため,本発明が上記の実施形態に限定される必要はない。
【0070】
維持電極31および走査電極32は,背面基板10と前面基板20との間に配されて,放電セル18,28をその両側(z軸方向)に区画する。上記のごとく構成される対向放電構造では,従来の面放電構造と比べた場合,維持放電のための放電開始電圧を低くすることが可能であり,さらに発光効率を高めることが可能である。
【0071】
また,維持電極31および走査電極32の可能な限り広い面積で対向放電が生じることを目的として,両電極の横断面形状を,各放電セル18,28に対応して背面基板10または前面基板20と垂直方向の長さ(h)を,水平方向の長さ(h)より長く設定することが可能である。このことにより,両電極の対向面間,すなわち図3の左右両側面間で生じる対向放電によって発生する強力な真空紫外線が,放電セル18,28内部の広い面積に形成される蛍光体層19,29と衝突し,多量の可視光が放出される。
【0072】
また,背面板隔壁16と前面板隔壁26との間に,アドレス電極12は背面基板10側に隣接し,維持電極31および走査電極32は前面基板20側に隣接して配設される。
【0073】
また,アドレス電極12の前面基板20側の端部が形成する仮想線Lと,維持電極31および走査電極32の背面基板10側の端部が形成する仮想線Lとの間に,間隔Cが形成される。このことにより,互いに交差される維持電極31および走査電極32とアドレス電極12は,相互に干渉しない状態となる。
【0074】
なお状況によっては,アドレス電極12が背面基板10側に隣接して,維持電極31および走査電極32が前面基板20側に隣接してそれぞれ配設される。よって,アドレス電極の前面基板10側の端面群が形成する仮想平面PL1と,維持電極31および走査電極32の背面基板側の端面群が形成する仮想平面PL2とは平行面を形成し,両平面の間に間隔C1が形成される,とも解釈できる。この場合,平面PL1,PL2は,それぞれ図3の線L1,L2に対応する。本解釈は,特に当該仮想線L1,L2が不明確な場合に適用される。
【0075】
また,背面基板10および前面基板20と垂直方向の断面では,アドレス電極12の高さ(厚さ)tは,維持電極31の高さ(厚さ)tおよび走査電極32の高さ(厚さ)tより低く(薄く)設定される。このことにより,アドレス電極12に印加されるアドレスパルスと比べて,相対的に高電圧の維持パルスを維持電極31および走査電極32に安定的に印加することが可能である。
【0076】
当該維持電極31および走査電極32とアドレス電極12は,非発光領域である背面板隔壁16と前面板隔壁26との間にある放電セル境界部に配されて,発光効率および光透過効率を阻害しないため,通電性に優れる金属で形成することが可能である。
【0077】
維持電極31および走査電極32とアドレス電極12の外面には,壁電荷を蓄積しつつ,各電極間で絶縁構造を形成する誘電層34,35が形成される。
【0078】
また,維持電極31および走査電極32とアドレス電極12は,厚膜セラミックシート(TFCS;Thick Film Ceramic Sheet)法により形成することも可能である。すなわち,維持電極31および走査電極32とアドレス電極12を含む電極部を別途に形成した後,背面板隔壁16が形成されている背面基板10に結合して形成することも可能である。
【0079】
維持電極31および走査電極32とアドレス電極12を被覆する誘電層34,35の表面には,保護膜36を形成することが可能である。特に保護膜36は,放電セル18,28内部の放電空間で生じるプラズマ放電に露出する部分に形成されることが可能である。
【0080】
保護膜36は,誘電層34,35を保護するとともに,低い放電開始電圧を実現するためには高い二次電子放出特性を必要とするが,可視光透過性を有する必要はない。すなわち,維持電極31および走査電極32とアドレス電極12が,前面基板20および背面基板10ではなく両基板の間に配されるため,維持電極31および走査電極32とアドレス電極12を被覆する誘電層34,35に塗布される保護膜36は,可視光非透過性を有する物質で形成することが可能である。保護膜36の構成物質の一例と考えられる可視光非透過性MgOは,可視光透過性MgOと比べて,高い二次電子放出特性を有するため,放電開始電圧をさらに低く抑えることが可能である。上記のMgOの物質特性を利用して,維持電極31および走査電極32を可視光非透過性MgOで被覆し,アドレス電極12を二次電子放出特性の低い物質,例えば可視光透過性MgOで被覆することにより,維持放電時にアドレス電極12を介する放電を生じ難くすることが可能である。上記のとおり両電極間で二次電子放出特性が異なる場合,例えばアドレス電極を陰極にすると放電開始電圧を低減できるなど,放電開始電圧の極性依存性が発現されることが予想されるため,状況を確認した上で放電仕様を決定する必要がある。また,維持放電の駆動波形も陰陽非対称にすることを考慮しなければならない。
【0081】
また,アドレス電極12が同一の誘電率を有する誘電層35で被覆されるため,赤色(R),緑色(G),青色(B)の蛍光体層19,29の間で同一の放電開始電圧が形成され,高い電圧マージンが形成される。
【0082】
本実施形態のPDPでは,背面基板10と前面基板20との間に電極が配され,隣接する放電セル18,28の両側に維持電極31および走査電極32が交互に配設されることによって,隣接する放電セル18,28が維持電極31および走査電極32を共有する。さらに,隣接する放電セル18,28が走査電極32と共にアドレス電極の突出部12aを共有する。
【0083】
本構造の適用によって,各放電セル18,28がアドレス電極の突出部12aを個々に有する構造と比べた場合,放電セル18,28の開口率が確保されることにより発光効率を高める効果を有する。
【0084】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範疇に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるPDPを示す部分的な分解斜視図である。
【図2】同実施形態にかかるPDPにおける電極と放電セルの構造を概略的に示す要部平面図である。
【図3】図1に示すPDPを結合した状態におけるIII−III線での要部断面図である。
【図4】図1に示すPDPを結合した状態におけるIV−IV線での要部断面図である。
【図5】同実施形態にかかるPDPにおける電極の構造を概略的に示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
10 背面基板
12 アドレス電極
12a 突出部
16 背面板隔壁
16a 第1隔壁部材
16b 第2隔壁部材
18,28 放電セル
19,29 蛍光体層
20 前面基板
26 前面板隔壁
26a 第3隔壁部材
26b 第4隔壁部材
31 維持電極
32 走査電極
34,35 誘電層
36 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をおいて対向配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板と前記第2基板との間の空間を区画することにより形成される複数の放電セルと;
前記第1基板と前記第2基板との間に,第1方向に沿って伸長して配設されるアドレス電極と;
前記第1基板と前記第2基板との間に,前記アドレス電極から離隔して,前記第1方向と交差する第2方向に伸長して配設され,前記第1方向に沿って相隣接する放電セルの各境界に対応する位置に,前記第1方向に交互に配設される第1電極および第2電極と;
を備え,
前記第1電極および前記第2電極は,前記第1基板および前記第2基板に対して垂直方向に拡張された横断面形状を有し,相互に所定の間隔をおいて対向に配設され,
前記アドレス電極は,前記第1電極または前記第2電極のいずれかに対応する前記相隣接する放電セルの各境界に対応する位置に,当該相隣接する放電セルのそれぞれに対応するように前記第2方向に突出する突出部を有することを特徴とする,プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記第1基板に隣接して複数の第1の放電空間を区画する第1隔壁層と;
前記第2基板に隣接して前記複数の第1の放電空間に対向する複数の第2の放電空間を区画する第2隔壁層と;
を備え,
対向する一対の前記第1の放電空間および前記第2の放電空間によって,前記放電セルが形成されることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記アドレス電極,前記第1電極および前記第2電極は,前記第1隔壁層と前記第2隔壁層との間に配設されることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第2の放電空間は,前記第1の放電空間より,大きな容積を有することを特徴とする,請求項2または3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記第1隔壁層は,前記第1方向に伸長して形成される第1隔壁部材を含み,
前記第2隔壁層は,前記第1方向に伸長して形成される第3隔壁部材を含むことを特徴とする,請求項2〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第1隔壁層は,前記第1隔壁部材と交差して形成される第2隔壁部材をさらに含み,
前記第2隔壁層は,前記第3隔壁部材と交差して形成される第4隔壁部材をさらに含むことを特徴とする,請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記アドレス電極は,前記第2方向に沿って相隣接する一対の放電セルの境界を通るように配設されることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は,金属電極で形成されることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極と前記アドレス電極の外周には,誘電層が形成されることを特徴とする,請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記誘電層の外面には,保護膜が形成されることを特徴とする,請求項9に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記保護膜は,可視光非透過性であることを特徴とする,請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記アドレス電極は,前記第1基板側に隣接して配設され,
前記第1電極および前記第2電極は,前記第2基板側に隣接して配設され,
前記アドレス電極の前記第2基板側の端部が形成する仮想線と,前記第1電極および前記第2電極の前記第1基板側の端部が形成する仮想線との間には,所定の間隔が形成されることを特徴とする,請求項1〜11のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記アドレス電極の前記両基板に対して垂直方向の厚さは,前記第1電極の前記両基板に対して垂直方向の厚さと比べて,薄いことを特徴とする,請求項1〜12のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記アドレス電極の前記両基板に対して垂直方向の厚さは,前記第2電極の前記両基板に対して垂直方向の厚さと比べて,薄いことを特徴とする,請求項1〜13のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記各放電セル内に形成される蛍光体層は,
前記放電セルの前記第1基板側に形成される第1蛍光体層と,
前記第1蛍光体層の蛍光体と同一の色相の蛍光体で形成され,前記放電セルの前記第2基板側に形成される第2蛍光体層と,
を備えることを特徴とする,請求項1〜14のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記第1蛍光体層の厚さは,前記第2蛍光体層の厚さと比べて厚いことを特徴とする,請求項15に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
アドレシング期間では前記第2電極に走査パルスが印加され,前記第2電極に対応して隣接する放電セルの境界に前記アドレス電極の前記突出部が対応することを特徴とする,請求項1〜16のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記アドレス電極は前記第1基板側に隣接して配設され,前記第1電極および前記第2電極は前記第2基板側に隣接して配設され,
前記アドレス電極の前記第2基板側の端面群が形成する仮想平面と,前記第1電極および前記第2電極の前記第1基板側の端面群が形成する仮想平面との間には,所定の間隔が形成されることを特徴とする,請求項1〜17のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−202719(P2006−202719A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236893(P2005−236893)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】