説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】アドレス放電の安定化および無効消費電力を低減できるプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】所定の間隔をおいて対向配置される第1基板10および第2基板20と,第1基板10と第2基板20との間で,いずれか一つの基板に隣接して配置され,第1方向(x軸方向)に隣接する各々放電セル17を囲み,第1方向に沿って連結して形成される第1電極31と,基板の平面に対して垂直な方向に沿って第1電極31と所定の間隔をおいて基板に対して他の基板に隣接して配置され,第1方向に隣接する各々放電セル17を囲み,第1方向に連結して形成される第2電極32と,垂直方向に第2電極32から所定の間隔をおいて配置され,第2電極32と直交する方向に延長して形成され,第2電極32の形状に対応して形成される突出部11aを備えるアドレス電極11とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プラズマディスプレイパネルに係り,より詳しくは,アドレス放電を安定化させ,互いに隣接するアドレス電極の相互間のキャパシタンスによる無効消費電力を低減させるプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルには,3電極面放電型がある。この3電極面放電型を例に取って説明すると,プラズマディスプレイパネルは,維持電極,走査電極およびアドレス電極を備える。維持電極と走査電極は,前面基板の同一面上に並んで備えられる。アドレス電極は,維持電極および走査電極と交差する方向に沿って形成され,背面基板に備えられる。
【0003】
この前面基板と背面基板との間に,つまり,維持電極および走査電極とアドレス電極との間に隔壁を備える。この隔壁は,並んで配置される維持電極および走査電極がアドレス電極と交差する部分に対応して放電セルを形成する。この放電セルには,放電ガスが充填される。
【0004】
このプラズマディスプレイパネルは,走査電極に印加される走査パルスとアドレス電極に印加されるアドレスパルスによるアドレス放電で,点灯される放電セルを選択し,このように選択した放電セルの維持電極と走査電極に交互に印加される維持パルスによる維持放電で画像を実現する。
【0005】
このプラズマディスプレイパネルは,維持電極と走査電極とを放電空間の前方(前面基板)に備えるので,維持電極と走査電極の各内面でプラズマ放電を発生させ,このプラズマ放電を背面基板側に拡散させる。このプラズマ放電は,放電セル内の蛍光体を励起させ,可視光を発生させる。
【0006】
前面基板に備えられる維持電極および走査電極は,放電セルの開口率を低減させ,放電セル内で発生されて,前面基板へ向かう可視光の透過率を低下させる。
【0007】
したがって,3電極面放電型プラズマディスプレイパネルは,低い輝度および低い発光効率を備えることになる。このような3電極面放電型プラズマディスプレイパネルを長時間用いる場合,電界によって放電ガスの荷電粒子が,蛍光体にイオンスパッタリングを起こす。これにより,永久残像が発生することもある。これを解決するために開発されているプラズマディスプレイパネルは,維持電極と走査電極とを放電セルの側面を囲むような構造にして備え,アドレス電極を背面基板に備え,放電セルの開口率を高めて可視光の透過率を向上させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,上記の従来のプラズマディスプレイパネルは,走査電極とアドレス電極との間の間隔が,一つの放電セル内で走査電極全領域にわたって均一ではないので,走査電極およびアドレス電極の間の放電安定化に不利な問題を有する。
【0009】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,走査電極とアドレス電極の間のアドレス放電を安定化させ,隣接するアドレス電極の相互間のキャパシタンスによる無効消費電力を低減させるプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明の第1の観点によれば,所定の間隔をおいて,対向配置される第1基板および第2基板と,第1基板と第2基板との間に備えられて,放電セルを形成する隔壁層と,放電セル内に形成される蛍光体層と,第1基板と第2基板との間で,第1基板および第2基板のいずれか一つの基板に隣接して配置され,第1方向に隣接する各々放電セルを囲み,第1方向に沿って連結して形成される第1電極と,上記基板の平面に対して垂直方向に沿って第1電極から所定の間隔をおいて,上記基板に対して他の基板に隣接して配置され,第1方向に隣接する各々放電セルを囲み,第1方向に連結して形成される第2電極と,上記垂直方向に第2電極から所定の間隔をおいて配置され,第2電極と直交する方向に延長して形成され,第2電極の放電セルを囲む形状に対応して形成される突出部を備えるアドレス電極とを含むプラズマディスプレイパネルが提供される。
【0011】
本発明によれば,第1基板と第2基板との間に,第1電極および第2電極を備え,第1電極および第2電極を,第1基板および第2基板の平面に対して垂直方向に所定の間隔をおいて配置し,かつ,第1方向に隣接する各々放電セルを囲むように形成する。従って,第1電極および第2電極は,各々に印加される信号電圧によって形成される電界を放電セルの中心に集中させることができる。そのため,発光効率を向上でき,長時間放電時にも放電によって生成するイオンが電界によって蛍光体層に衝突しない。したがって,イオンスパッタリングによる蛍光体層の損傷を防止することができる。さらに,第1電極および第2電極は,放電セルの開口率および可視光の透過率を向上することができる。そして,アドレス電極を第2電極と直交する方向に形成して,第2電極から上記垂直方向に所定の間隔をおいて配置し,アドレス電極の突出部を対応する放電セルの内面形状に対応して突出するように形成するので,放電セルにおいて,アドレス電極と第2電極の対向面積が増加できるため,アドレス放電を安定化できる。さらに,アドレス電極の突出部は,放電セルに対応して形成されるので,非放電領域では,互いに隣接するアドレス電極間の距離が大きくなり,互いに隣接するアドレス電極間のキャパシタンスを低減させて,無効消費電力を低減することができる。
【0012】
アドレス電極の突出部は,放電セルの内面形状に対応するように突出して形成されてもよい。突出部の外郭端は,放電セルの内側に位置されてよい。
【0013】
第1電極および第2電極は,放電セルにおいて,上記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,第1電極および第2電極の各々は,対応する各々放電セルを囲む楕円形に形成されてもよい。この時,アドレス電極の突出部は,放電セルの内面形状に対応する楕円形の板状で形成されてもよい。
【0014】
第1電極および第2電極は,放電セルにおいて,上記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,第1電極および第2電極の各々は,対応する各々放電セルを囲む円形に形成されてもよい。この時,アドレス電極の突出部は,放電セルの内面形状に対応する円形の板状に形成されてもよい。
【0015】
第1電極および第2電極は,放電セルにおいて,上記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,第1電極および第2電極の各々は,対応する各々放電セルを囲む多角形に形成されてもよい。この時,アドレス電極の突出部は,放電セルの内面形状に対応する多角形の板状に形成されてもよい。
【0016】
第1電極および第2電極は,通電性に優れた金属材で形成されてもよい。第1電極および第2電極は,絶縁構造を形成する誘電層で覆われてもよい。誘電層は,放電セルの内面において,保護膜で覆われてもよい。
【0017】
アドレス電極は,第1基板に備えられてもよく,隔壁層は,アドレス電極が形成される第1基板上に備えられてもよく,第1電極および第2電極は,隔壁層と第2基板との間に備えられてもよい。
【0018】
放電セルは,第1電極および第2電極の形状に対応する円筒,楕円筒および多角形筒のうちのいずれか一つで形成されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば,背面基板と前面基板との間で,維持電極と走査電極とを放電セルの外郭に対応するように形成して,背面基板および前面基板の平面に対して垂直方向に沿って所定の間隔をおいて配置するので,放電セルの開口率および可視光の透過率をそれぞれ向上させることができる。また,維持電極および走査電極の各々を放電セルの外郭を囲むように形成して,維持電極および走査電極を垂直方向に所定の間隔をおいて配置する。そして,アドレス電極を走査電極と直交して配置し,アドレス電極は,放電セルの内面形状に対応するように突出して形成される突出部を備え,走査電極で突出部を囲むようにするので,突出部によって,走査電極とアドレス電極との対向面積を増大でき,走査電極とアドレス電極との間のアドレス放電を安定化させることができる。さらに,非放電領域では,突出部を備えないようにして,隣接するアドレス電極の間隔を増大させてキャパシタンスを低減させ,これにより無効消費電力を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は,本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを分解して示す斜視図である。図2は,図1のII−II線に沿う平断面図である。図3は,図2のIII−III線に沿う断面図である。図4は,本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【0022】
図1を参照して,プラズマディスプレイパネルを説明すると,本発明の実施形態のプラズマディスプレイパネルは,基本的に,所定の間隔をおいて,対向配置される第1基板10(以下,‘背面基板'という。)と第2基板20(以下,‘前面基板'という。)と,背面基板10と前面基板20との間に備えられる隔壁層16とを含む。
【0023】
隔壁層16は,背面基板10と前面基板20との間で,複数の放電セル17を区画形成する。隔壁層16は,図3に示す第1実施形態のように,背面基板10に形成されてもよいし,図示していないが,前面基板20に形成されてもよい。または,背面基板10または前面基板20に分離して形成されてもよいし,背面基板10または前面基板20に一体に形成されてもよい。
【0024】
隔壁層16は,放電セル17を多様な形状に形成可能とする。図4に示す第1実施形態は,略楕円筒に形成される放電セル17を例示している。図2を参照すると,略楕円筒形の放電セル17は,背面基板10の平面(x−y平面)方向に対して,y軸方向に沿う長軸(L1)の内面およびx軸方向に沿う短軸(L2)の内面とを有するので,放電セル17の内面の各位置から,放電セル17の中心までの距離が互いに異なるように形成される。
【0025】
放電セル17は,真空紫外線を吸収して可視光を放出する蛍光体層19を備える。プラズマ放電で真空紫外線を発生させるように,放電セル17は,放電ガス(一例としてネオン(Ne)とキセノン(Xe)等を含む混合ガス)を充填している。
【0026】
蛍光体層19は,隔壁層16によって形成される放電セル17の内面と,放電セル17を形成する前面基板20および背面基板10のいずれか一方または両方に形成されてもよい。図3で図示されるように,蛍光体層19が背面基板10に形成される場合,蛍光体層19は,放電セル17の内部で真空紫外線を吸収して可視光を放出し,前面基板20側にこの可視光を反射させる反射型蛍光体で形成される。
【0027】
また,蛍光体層19が前面基板20に形成される場合(図示せず),蛍光体層19は,放電セル17内部で真空紫外線を吸収して可視光を放出し,前面基板20にこの可視光を透過させる透過型蛍光体で形成される。また,蛍光体層19は,前面基板20と背面基板10の双方に形成されてもよい。
【0028】
本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは,蛍光体層19に衝突する真空紫外線をプラズマ放電で生成して画像を実現するために,背面基板10と前面基板20との間にアドレス電極11,第1電極31および第2電極32を備える。図1を参照すると,アドレス電極11は,x軸方向に直交するy軸方向に沿って形成され,各々放電セル17に対応するように,x軸方向に並んで配置される。第1電極31(以下,‘維持電極’という)は,第1方向(x軸方向)に沿って形成され,第1方向に隣接する各々放電セル17の外郭を囲む。第2電極32(以下,‘走査電極'という)は,維持電極31およびアドレス電極11に対して,垂直方向(z軸方向)に所定の間隔をおいて配置されて,第1方向(x軸方向)に沿って形成され,第1方向に隣接する各々放電セル17の外郭を囲む。ここで,垂直方向(z軸方向)とは,放電セル17において背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直な方向のことである。維持電極31の各々は,y軸方向に並んで配置され,同様に走査電極32の各々もy軸方向に並んで配置される。
【0029】
アドレス電極11は,以下に説明する維持電極31および走査電極32の電極層30と同じく,別途の電極層で形成されて,背面基板10および前面基板20の間に備えられてもよい(図示せず)。また図3で図示されるように,維持電極31と走査電極32は,別途の電極層30として形成されて,電極層30の状態で背面基板10および前面基板20の間に備えられ,アドレス電極11は,背面基板10に形成される。なお,アドレス電極11は,前面基板20に備えられてもよい(図示せず)。
【0030】
本実施形態は,アドレス電極11を背面基板10に備え,背面基板10側に隔壁層16を備え,維持電極31と走査電極32とを別途の電極層30で形成して,電極層30を隔壁層16と前面基板20との間に備える。勿論,維持電極31と走査電極32は,隔壁層16に直接形成されてもよい(図示せず)。この場合,電極層30は,放電セル17を形成する隔壁層の役割まで兼ねるようになる。
【0031】
アドレス電極11は,図1で図示されるように,背面基板10の前面基板20に対向する面上で,第2方向(y軸方向)に沿って長く形成されて,y軸方向に隣接する各々放電セル17に連続的に対応する。そして複数のアドレス電極11は,第2方向(y軸方向)と直交する方向(x軸方向,つまり第1方向)に沿って隣接する各々放電セル17にそれぞれ対応するように,所定の間隔を維持しながら,互いに並んで配置される。
【0032】
一方,アドレス電極11は,突出部11aを備える。突出部11aは,アドレス電極11において,x軸方向(第1方向)に突出して形成される。また,突出部11aは,走査電極32の放電セル17を囲む形状に対応して突出して形成される。つまり,突出部11aは,背面基板10側で,放電セル17のx−y平面の中央部分に位置する。突出部11aは,放電セル17の内面に沿って形成される。つまり,突出部11aの外郭端は,放電セル17の内面形状と類似の形状で形成される。突出部11aの外郭端は,放電セル17の内面の内側,つまり,放電セル17の内側に位置する。従って,図3によると,突出部11aは,放電セル17内で走査電極32とアドレス放電を形成できる。
【0033】
このように,突出部11aを形成することにより,アドレス電極11と走査電極32との対向面積が増大されるので,低電圧によるアドレス放電を可能にし,より安定したアドレス放電を可能にする。
【0034】
また,図2を参照すると,軸方向(第1方向)で互いに隣接する各々アドレス電極11の突出部11aは,放電セル17に対応する部分で,互いに隣接するアドレス電極11の間の間隔C1を狭く形成する。一方で,放電セル17外の非放電領域(UD)では,アドレス電極11は,突出部11aを備えないので,x軸方向(第1方向)で互いに隣接する各々アドレス電極11は,間隔C1より,広い間隔C2を維持するようになる(C2>C1)。従って,アドレス電極11の全体に関して見ると,x軸方向(第1方向)で互いに隣接するアドレス電極11の相互間のキャパシタンスが低減され,このキャパシタンスによる無効消費電力が低減される。
【0035】
このような突出部11aを備えるアドレス電極11は,上述のように背面基板10の内面に形成され,誘電層13で覆われてもよい。誘電層13は,放電時,正イオンまたは電子がアドレス電極11に直接衝突することを防止して,アドレス電極11の損傷を防止し,かつ壁電荷を形成および蓄積する誘電体で形成される。誘電層13が備えられる場合,上述の蛍光体層19は,放電セル17の内面と,放電セル17の内面に位置する誘電層13の表面に形成される。この場合,隔壁層16は,アドレス電極11を覆う誘電層13上に形成される。
【0036】
また,アドレス電極11は,図1で図示されるように,可視光が透過しない背面基板10に形成される場合,通電性に優れた金属材などで形成されてもよい。
【0037】
アドレス電極11は,アドレス電極11に印加されるアドレスパルスと走査電極32に印加される走査パルスとによって,一つの放電セル17をアドレッシングできるように,走査電極32および維持電極31と直交する方向(y軸方向)に沿って長く形成される。またアドレス電極11は,背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直方向(z軸方向)に,維持電極31および走査電極32から互いに所定の間隔をおいて,配置される。
【0038】
維持電極31および走査電極32は,アドレス放電で選択した放電セル17において,各々に交互で印加される維持パルスによって,維持放電を起こして画像を実現する。このために,維持電極31および走査電極32は,電極層30内で,背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直方向(z軸方向)に,相互所定の間隔をおいて配置され,相互対称構造に形成されるのが望ましい。
【0039】
他方,上述のアドレス電極11,維持電極31および走査電極32は,これらに印加される信号電圧に応じて,その役割を異なって行うことができるので,電極と信号電圧の関係は,上述の関係に限られない。
【0040】
本実施形態は,アドレス電極11を背面基板10に備え,隔壁層16をアドレス電極11が形成される背面基板10上に備え,維持電極31および走査電極32で電極層30を形成し,電極層30を隔壁層16と前面基板20との間に備える。電極層30内で,維持電極31は,前面基板20側に備えられ,走査電極32は,隔壁層16側(背面基板10側)に備えられる。これにより,走査電極32は,アドレス電極11と短い放電ギャップを形成するので低電圧によるアドレス放電を可能にする。ここで,隔壁層16は,アドレス電極11を放電セル17の内側に位置するように,アドレス電極11が形成される背面基板10上に形成される。
【0041】
維持電極31は,背面基板10と前面基板20との間で,背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直方向(z軸方向)における放電セル17の一側を囲む構造に形成される。
【0042】
走査電極32は,維持電極31と垂直方向(z軸方向)に所定の間隔をおいて配置されながら,背面基板10と前面基板20との間で,背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直方向(z軸方向)における放電セル17の他の一側を囲む構造に形成される。つまり,維持電極31は,x軸方向(第1方向)に隣接する各々放電セル17を囲むように形成される。走査電極32は,x軸方向(第1方向)に隣接する各々放電セル17を囲むように形成され,維持電極31と垂直方向(z軸方向)に所定の間隔をおいて配置される。
【0043】
維持電極31および走査電極32は,背面基板10および前面基板20の平面に対して垂直な方向(z軸方向)に並んで配置される。したがって,維持電極31と走査電極32との間で発生する維持放電は,放電セル17内で垂直方向(z軸方向)に形成されながら,維持電極31と走査電極32とに印加される信号電圧によって形成される電界を放電セル17の中心に集中させることができる。
【0044】
これにより,発光効率は向上して,長時間放電時にも放電によって生成するイオンは,電界によって蛍光体層19に衝突しない。したがって,イオンスパッタリングによる蛍光体層19の損傷を防止することができる。
【0045】
また,維持電極31および走査電極32の各々は,放電セル17の外郭を囲む構造で形成されるので,放電セル17内に垂直方向に形成される維持放電は,放電セル17の内面全体でより均一に形成できる。
【0046】
本発明の第1実施形態において,維持電極31および走査電極32は,略楕円形状で放電セル17の外郭を囲むので,維持電極31と走査電極32は,背面基板10と前面基板20の一定の面積(x−y平面で)で,放電セル17の空間をより効果的に増大させることができる。放電セル17の空間増大は,特に放電セル17の面積が制限される高精細ディスプレイにおいて,蛍光体層19の面積を増大させるようになって,安定した放電を誘導でき,真空紫外線の放出量を増大させることができる。
【0047】
放電セル17の外郭を囲む維持電極31および走査電極32の各々は,多様な構造で形成されてもよい。本実施形態は,略楕円筒形の放電セル17に対応して,放電セル17の外郭を楕円に囲む略楕円形の維持電極31および略楕円形の走査電極32を例示する。この時,アドレス電極11の突出部11aは,放電セル17の内面形状に対応する略楕円形の板状で形成されるのが望ましい。
【0048】
図4を参照すると,維持電極31において,両側の長軸部(31a,31b)は,放電セル17のy軸方向(第2方向)の両側をそれぞれ囲む。よって,長軸部(31a,31b)は,放電セル17を挟んでy軸方向に対向しながら,放電セル17の両側(y軸方向の両側)を囲むことになる。
【0049】
つまり,維持電極31において,y軸方向の長軸部(31a,31b)が,x軸方向の短軸部(31c,31d)よりも長く形成されることになる。従って,維持電極31が長軸部(31a,31b)を有することによって,長軸(L1)は,所定の大きさを有する放電セル17内で短軸(L2)の距離より長い距離を有するので,放電セル17のy軸方向の距離を増大させて,維持電極31に囲まれる部分の放電セル17の空間を増大させることができる。
【0050】
図4を参照すると,走査電極32において,両側の長軸部(32a,32b)は,放電セル17のy軸方向(第2方向)の両側をそれぞれ囲む。よって,長軸部(32a,32b)は,放電セル17を挟んでy軸方向に対向して,放電セル17の両側(y軸方向の両側)を囲むことになる。
【0051】
つまり,走査電極32において,y軸方向の長軸部(32a,32b)が,x軸方向の短軸部(32c,32d)よりも長く形成されることになる。従って,走査電極32が長軸部(32a,32b)を有することによって,長軸(L1)は,所定の大きさを有する放電セル17内で短軸(L2)の距離より長い距離を有するので放電セル17のy軸方向の距離を増大させて,走査電極32で囲まれる放電セル17の空間を増大させることができる。
【0052】
また,維持電極31および走査電極32は,別途の電極層30を備えて,放電セル17の外郭を囲むように形成されるので,可視光を遮断することがないために,維持電極31および走査電極32を通電性に優れた金属材などで形成できる。
【0053】
維持電極31および走査電極32は,誘電層34で覆われて相互絶縁構造を形成する。維持電極31および走査電極32,維持電極31および走査電極32を埋め込んでいる誘電層34が,電極層30を形成する。誘電層34は,放電時において壁電荷を蓄積するけれども,維持電極31および走査電極32の絶縁構造を形成する。維持電極31および走査電極32の外面に形成される誘電層34は,隔壁層16の構造に対応して,例えば,略円筒,略楕円筒,または略多角形筒などの形状に放電セル17を形成するように形成されるのが望ましい。隔壁層16も同様に,略円筒,略楕円筒,または略多角形筒などの形状に放電セル17を形成するように形成されるのが望ましい。
【0054】
誘電層34が隔壁層16と共に放電セル17を形成するので,誘電層34は,放電セル17の内面に相当する部分に保護膜36で覆われることが望ましい。特に保護膜36は,放電セル17で起すプラズマ放電に露出される所に形成される。保護膜36は,誘電層34を保護し,高い二次電子放出係数を要求されるが,可視光透過性を備える必要はない。つまり,維持電極31および走査電極32が前面基板20上および背面基板10上に形成されることはなく,背面基板10および前面基板20の間に備わるので,維持電極31および走査電極32を覆う誘電層34に塗布される保護膜36は,可視光非透過性の特性を有する物質などで構成されてもよい。保護膜36の一例として,可視光非透過性MgOは,可視光透過性MgOに比べて,より高い二次電子放出係数値を有し,したがって,放電開始電圧をもっと低くすることができる。
【0055】
以下で,多様な実施形態を例示する。第2実施形態および第3実施形態は,第1実施形態と比較して,その構成が概して類似もしくは同一なので,ここでは,同一の部分について詳細な説明を省略して,異なる部分について説明する。
【0056】
(第2実施形態)
図5は,本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの平断面図である。図6は,本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおける電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【0057】
第2実施形態は,第1実施形態と比較して,維持放電のより均一な拡散を可能にする。このために,図5および図6に図示するように,放電セル217を略円筒に形成し,維持電極231および走査電極232は,略円筒形の放電セル217を囲む略円形で形成される。この時,アドレス電極211の突出部211aは,放電セル217の内面形状に対応する略円形の板状で形成されるのが望ましい。
【0058】
(第3実施形態)
図7は,本発明の第3実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの平断面図である。図8は,本発明の第3実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおける電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【0059】
図7および図8を参照すると,第3実施形態は,第1実施形態および第2実施形態と比較して,中間程度に維持放電の拡散を可能にする。このために,放電セル317を略多角形筒に形成し,維持電極331および走査電極332は,略多角形筒形の放電セル317を囲む略多角形に形成される。この時,アドレス電極311の突出部311aは,放電セル317の内面形状に対応する略多角形の板状で形成されるのが望ましい。図7および図8は,略八角形からなる突出部311aを例示する。
【0060】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを分解して示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う平断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおける電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの平断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおける電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの平断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおける電極の構造を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
10 背面基板
11 アドレス電極
11a 突出部
13,34 誘電層
16 隔壁層
17 放電セル
19 蛍光体層
20 前面基板
30 電極層
31 維持電極
31a,32a,31b,32b 長軸部
31c,32c,31d,32d 短軸部
32 走査電極
36 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をおいて,対向配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板と前記第2基板との間に備えられて,放電セルを形成する隔壁層と;
前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
前記第1基板と前記第2基板との間で,前記第1基板および前記第2基板のいずれか一つの基板に隣接して配置され,第1方向に隣接する各々前記放電セルを囲み,前記第1方向に沿って連結して形成される第1電極と;
前記基板の平面に対して垂直方向に沿って,前記第1電極から所定の間隔をおいて,前記基板に対して他の基板に隣接して配置され,前記第1方向に隣接する各々前記放電セルを囲み,前記第1方向に沿って連結して形成される第2電極と;
前記垂直方向に沿って前記第2電極から所定の間隔をおいて配置され,前記第2電極と直交する方向に沿って延長して形成され,前記第2電極の前記放電セルを囲む形状に対応して形成される突出部を備えるアドレス電極と;
を含むことを特徴とする,プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記アドレス電極の前記突出部は,前記放電セルの内面形状に対応するように突出して形成されることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記突出部の外郭端は,前記放電セルの内側に位置することを特徴とする,請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第1電極および前記第2電極は,前記放電セルにおいて,前記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,
前記第1電極および前記第2電極の各々は,対応する各々前記放電セルを囲む楕円形に形成されることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記アドレス電極の前記突出部は,前記放電セルの内面形状に対応する楕円形の板状に形成されることを特徴とする,請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極は,前記放電セルにおいて,前記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,
前記第1電極および前記第2電極の各々は,対応する各々前記放電セルを囲む円形に形成されることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記アドレス電極の前記突出部は,前記放電セルの内面形状に対応する円形の板状に形成されることを特徴とする,請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は,前記放電セルにおいて,前記基板の平面に対して垂直方向に並んで配置され,
前記第1電極および前記第2電極の各々は,対応する各々前記放電セルを囲む多角形に形成されることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記アドレス電極の前記突出部は,前記放電セルの内面形状に対応する多角形の板状に形成されることを特徴とする,請求項8に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記第1電極および前記第2電極は,金属材で形成されることを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記第1電極および前記第2電極は,絶縁構造を形成する誘電層で覆われることを特徴とする,請求項1〜10のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記誘電層は,前記放電セルの内面において,保護膜で覆われることを特徴とする,請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記アドレス電極は,前記第1基板に備えられ,前記隔壁層は,前記アドレス電極が形成される前記第1基板上に備えられ,前記第1電極および前記第2電極は,前記隔壁層と前記第2基板との間に備わることを特徴とする,請求項1〜12のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記放電セルは,前記第1電極および前記第2電極の形状に対応する円筒,楕円筒および多角形筒のうちのいずれか一つで形成されることを特徴とする,請求項1〜13のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−286629(P2006−286629A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85807(P2006−85807)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】