プラズマディスプレイパネル
【課題】 低放電電圧のPDP装置の実現。
【解決手段】 放電空間を形成する第1の基板1と第2の基板2とを備え、第1の基板1は、第1バス電極14及び第1バス電極に接続される第1放電電極13よりなる第1電極と、第2バス電極12及び第2バス電極に接続される第2放電電極11よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層15と、誘電体層15上に設けられ、第1及び第2バス電極に交差する第3バス電極16及び第3バス電極に接続される第3放電電極よりなる第3電極17とを備え、基板に垂直な方向から見た時に、第2放電電極11と第3放電電極17は対向する間隔が変化するエッジを備え、第1放電電極13と第2放電電極11は対向する間隔が略一定のエッジを備える。
【解決手段】 放電空間を形成する第1の基板1と第2の基板2とを備え、第1の基板1は、第1バス電極14及び第1バス電極に接続される第1放電電極13よりなる第1電極と、第2バス電極12及び第2バス電極に接続される第2放電電極11よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層15と、誘電体層15上に設けられ、第1及び第2バス電極に交差する第3バス電極16及び第3バス電極に接続される第3放電電極よりなる第3電極17とを備え、基板に垂直な方向から見た時に、第2放電電極11と第3放電電極17は対向する間隔が変化するエッジを備え、第1放電電極13と第2放電電極11は対向する間隔が略一定のエッジを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのディスプレイ装置、平面型テレビジョン、広告や情報などの表示用プラズマディスプレイに使用されるAC型プラズマディスプレイ装置(PDP装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
AC型カラーPDP装置においては、表示するセルを規定する期間(アドレス期間)と表示点灯のための放電を行う表示期間(サステイン期間)とを分離したアドレス・表示分離方式が広く採用されている。この方式においては、アドレス期間で、点灯するセルに電荷を蓄積し、その電荷を利用してサステイン期間で表示のための放電を行う。
【0003】
また、PDP装置には、第1の方向に伸びる複数の第1電極を互いに平行に設け、第1の方向に対して垂直な第2の方向に伸びる複数の第2電極を互いに平行に設けた2電極型の装置と、第1の方向に伸びる複数の第1電極と第2電極を交互に平行に設け、第1の方向に対して垂直な第2の方向に伸びる複数の第3電極を互いに平行に設けた3電極型の装置とがあり、近年は3電極型PDPが広く使用されている。さらに補助的役割りの電極を加えた4電極以上の構造も考案されている。
【0004】
この3電極型PDPの一般的な構造は、第1の基板に第1(X)電極と第2(Y)電極を交互に平行に設け、第1の基板に対向する第2の基板に第1及び第2電極に垂直な方向に伸びる第3(アドレス)電極を設け、電極表面をそれぞれ誘電体層で覆う。第2の基板上には更に、第3電極の間に第3電極と平行に伸びる1方向のストライプ状の隔壁、又はセルを各々分離するように第3電極及び第1と第2電極と平行配置される2次元格子状の隔壁を設け、隔壁の間に蛍光体層を形成した後、第1と第2基板を貼り合せる。従って、第3電極の上には誘電体層と蛍光体層、さらに隔壁が形成される場合もある。
【0005】
第1と第2電極の間に電圧を印加して全セルの電極近傍の電荷(壁電荷)を一様な状態にした後、第2電極にスキャンパルスを順次印加し、スキャンパルスに同期して第3電極にアドレスパルスを印加して、第1、第2、第3電極間で放電を起こし、点灯するセル内に選択的に壁電荷を残すアドレス動作を行った後、放電する隣接2電極が交互に逆極性となる維持放電パルスを印加してアドレス動作により壁電荷の残された点灯セルで維持放電を発生させて点灯を行う。蛍光体層は、放電により発生する紫外線により発光し、それを第1基板を通して見る。そのため、第1及び第2電極は、金属材料で形成された不透明なバス電極と、ITO膜などの透明電極で形成され、透明電極を通して蛍光体層で発生した光を見れるようになっている。一般的なPDP装置の構造及び動作は広く知られているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0006】
PDPのように放電空間に放電ガスを封入して2電極間で放電を発生させる場合、放電の閾値電圧(放電開始電圧)は、2電極間の距離dと放電ガスの圧力pの積に応じて決定されることが知られており、その変化をこの積を横軸に放電開始電圧を縦軸にして示した曲線をパッシェンカーブという。パッシェンカーブは、2電極間の距離dと放電ガスの圧力pの積(pd積)がある値の時に放電電圧が最小値になり、その状態はパッシェンミニマムと呼ばれる。
【0007】
上記の3電極型PDPの構成において、第1及び第2電極の透明電極は、一般に各セルで電極のエッジが平行で、エッジが間隔dで対向するような形状になっており、この間隔dと放電空間の放電ガスの圧力pによりパッシェンカーブから放電電圧が求まり、第1と第2電極間の放電開始電圧が決定される。この場合、各セルのpd積は、設計値は同じでも間隔dの製造上のバラツキのために、pd積で決まる放電開始電圧はセル間でバラツキを持っていた。そのため、実際のPDP装置における駆動電圧は、放電開始電圧のバラツキを考慮して、放電開始電圧をパッシェンミニマムより高い値に設定し、たとえ放電開始電圧がばらついても確実に放電が発生するようにしていた。
【0008】
例えば、特許文献1は、3電極型PDPにおいて、pd積をパッシェンミニマムより大きな値に設定することを記載している。
【0009】
また、3電極型PDPにおいて、放電を行う第1と第2電極の組に隣接する他の組の電極との間(逆スリットと呼ぶ)では放電が発生しないように間隔を広くしていたが、特許文献2は、この間隔を狭くして、この間隔のpd積をパッシェンミニマムになる値より更に小さくして放電開始電圧を高くすることにより、逆スリットで放電が発生しないようにする構成を記載している。
【0010】
更に、特許文献3は、3電極型PDPにおいて、第1と第2電極の透明電極の間隔をpd積がパッシェンミニマムになる値に設定することを記載している。
【0011】
以上、第1の基板に交互に第1と第2電極を設け、第2の基板に第1及び第2電極と交差するように第3電極を設ける3電極型PDPにおける第3放電電極間の距離について記載した公知例を説明したが、他にも各種の形状のPDPが提案されている。例えば、特許文献4は、第1の方向に伸びる複数の第1電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた後第1の方向に垂直な第2の方向に伸びる複数の第2電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた第1の基板と、第1の方向に伸びる複数の第3電極を第1電極に対向するように平行に設け、その上に誘電体層を設けた第2の基板を備えるPDPを記載している。この構成では、維持放電を行う第1と第2電極が誘電体層を介して交差するように構成されており、交差部における2電極間の間隔はゼロで、交差部から離れるに従って間隔が徐々に大きくなる。そのため、パッシェンミニマムになる条件がかならず存在する。
【0012】
また、特許文献5は、第1の方向に伸びる複数の第1バス電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた後第1の方向に垂直な第2の方向に伸びる複数の第2バス電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた第1の基板と、隔壁及び蛍光体層を有する第2の基板を備える2電極型PDPを記載している。第1と第2バス電極の交差部には、第1及び第2バス電極にそれぞれ接続される第1及び第2透明電極が設けられ、第1及び第2透明電極は一定間隔dで対向するエッジを有する。特許文献5は、第1及び第2透明電極の間隔dに関しては特に記載しておらず、パッシェンカーブ及びパッシェンミニマムについての記載はない。
更に、特許文献9は、間隔が変化する第1及び第2放電電極を設けて、セル内の放電の均一性を向上する構成を記載している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−84907号公報
【特許文献2】特開2001−84906号公報
【特許文献3】特開2001−52623号公報
【特許文献4】特開2003−36052号公報
【特許文献5】特開2001−283735号公報
【特許文献6】特開平7−29498号公報
【特許文献7】特開平3−233829号公報
【特許文献8】特許第2801893号公報
【特許文献9】特開2001−283735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1から5に記載された構成では、維持放電が行われる各セルにおける2つの透明電極のエッジが一定間隔dで対向する形状としている。パッシェンミニマムは、放電ガス圧p=13300Paの時にd=100μmであり、通常使用される放電ガス圧p=67000Paの場合には、パッシェンミニマムにするにはd=20μmとする必要がある。しかし、現状の製造技術では、製造上のバラツキのためこの間隔を安定して形成することは容易ではない。特に、間隔が小さくなった場合には、隣接する電極同士が短絡する可能性もあり、歩留まりを悪くする。
【0015】
また、従来の鉛系低融点ガラスを使用した誘電体では、電極間の間隔が小さくなると耐圧の問題も発生する。
【0016】
放電ガス圧pを下げれば、間隔dを大きくしてもパッシェンミニマムにできるが、一般に放電ガス圧pを下げると発光効率、寿命などの性能を劣化させる傾向にあり好ましくない。
【0017】
このように、維持放電が行われる2つの透明電極のエッジが一定間隔dで対向する従来技術では、間隔dのばらつきの影響を防止することができない。更に、蛍光体の塗布厚のバラツキから対向放電の電圧もばらつく。このため、全画素で確実に放電を発生させるためには、駆動電圧を高くする必要があり、その分駆動回路のコストが増加するという問題があった。
【0018】
また、前述の特許文献4に記載されたPDPでは、バス電極に相当する第1と第2の電極は誘電体層を介して交差するように形成されており、維持電極は設けられておらず、バス電極間で放電が発生する。交差部分の近傍でパッシェンミニマムの条件が満たされるが、第1と第2の電極は垂直に交差しているので、交差部分から離れると2つの電極の間隔は急激に増加するため、放電は交差部分の近傍でしか発生せず、上述のように放電が開始しにくい上に広がりにくい。更に、形成される壁電荷量も制限されるので、放電の強度も大きくできないという問題がある。
【0019】
上記問題を解決するため、本出願人は、特願2003−326440号(特願2004−135321号の国内優先出願の基礎となる出願)で、第1の基板と、第1の基板に対向するように配置され、第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、第1の基板が、第1バス電極及び第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、第2バス電極及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層と、この誘電体層上に設けられ、第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極及び第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第1放電電極と第2放電電極は対向する間隔が変化するエッジを備え、第2放電電極と第3放電電極は対向する間隔が変化するエッジを備える構成を記載している。このような構成において、対向するエッジの間隔を、放電空間に封入される放電ガスの圧力との積がパッシェンミニマムの両側になるように設定することにより、たとえ対向するエッジの間隔のバラツキがあっても、必ずパッシェンミニマムの条件が満たされる。従って、全セルでパッシェンミニマムの放電開始電圧になり、放電開始電圧を全セルで均一にでき、製造のバラツキの影響を考慮しなくてもよいので、駆動電圧を低減できる。
【0020】
しかし、現状のプラズマディスプレイパネルの構成では、パッシェンミニマムに対応する間隔がかなり狭くなる。上記のように、第2放電電極と第3放電電極は誘電体層を介して形成されるので、製造バラツキにより、基板に垂直な方向から見た時の間隔が非常に小さくなっても、例えばゼロ、すなわち重なっても特に問題は生じない。しかし、第1放電電極と第2放電電極は、同一面上に形成されるため、対向するエッジの間隔を狭くすると、現状の製造技術では製造バラツキにより、第1放電電極と第2放電電極の短絡が発生することが判明した。第1放電電極と第2放電電極が短絡した場合には不良品になり、パネルの歩留まりを低下させ、製造コストを増加させるという問題が生じる。
【0021】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、現状の製造技術で歩留まりを低下させること無しに製造可能で、駆動電圧を低減可能なプラズマディスプレイパネルの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を実現するため、本発明のプラズマディスプレイパネルは、第1の基板に、第1バス電極及び第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、第2バス電極及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層と、この誘電体層上に設けられ、第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極及び第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを設け、第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第1放電電極と第2放電電極の対向するエッジは間隔が一定で、第2放電電極と第3放電電極の対向するエッジは間隔が変化するように構成する。
なお、第3電極を第3バス電極のみで構成し、第2放電電極と第3バス電極の対向するエッジの間隔が変化するように構成してもよい。
【0023】
本発明によれば、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極間で行うアドレス放電の放電開始電圧を、パッシェンミニマムに設定できる。また、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極は、誘電体層を介して設けられているので、たとえ間隔がゼロでも(すなわち一部が重なっても)、短絡することはない。第1放電電極と第2放電電極の対向するエッジは平行で一定なので、第1放電電極と第2放電電極の短絡は発生しにくい。
【0024】
第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの間隔は、第1放電電極に近い側が狭いことが望ましい。これにより、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極間の放電を第1放電電極に近い位置で発生させ、それにより誘発される第1放電電極と第2放電電極間での放電が発生しやすくなる。
【0025】
第2放電電極の隣接するセルの第3バス電極との間隔は、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの最大間隔より広いことが望ましい。これにより、第2放電電極と隣接するセルの第3バス電極との間の誤放電が防止できる。
【0026】
第3放電電極が第2バス電極と対向する間隔は、第2放電電極と第3放電電極の対向するエッジの最大間隔より広いことが望ましい。これにより、第3放電電極と第2バス電極の間の放電が防止できる。
【0027】
第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第2バス電極及び第1バス電極と第3バス電極又は第3(バス)電極が交差する部分には、隔壁が設けられることが望ましい。これにより、バス電極間の放電が防止できる。
隔壁は、第2の基板に設けられ、隔壁の溝又は穴の底部及び側面に蛍光体層を塗布し、第1の基板側から、表示を見る。これにより、第2基板上の蛍光体層が発生する可視光を、第1の基板を通して見ることになる。特に、本願発明では、第3の電極は第1の基板に設けられるので、第3の電極を第2の基板に設けてその上に蛍光体層を設ける場合に比べて、蛍光体層の厚さを厚くできるので、変換効率が高くなる。
【0028】
第1及び第2放電電極は、光を透過する透明電極である。
第1放電電極と第2放電電極は、略同一形状、略同一面積、又は線対称であることが望ましい。
【0029】
プラズマディスプレイパネルがカラー表示用3原色のセルで構成される場合、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの間隔又は間隔の変化を、各色のセルで異ならせて、各色のアドレス放電が同じように生じるようにする。
【0030】
第3放電電極を第3バス電極と同一プロセスで作られる金属層で構成してもよい。この場合、第3放電電極をセルの周辺部に設けて発光を遮断しないようにするか、少なくとも一部の発光が透過するように第3放電電極に開口を設ける。
【0031】
第1及び第2電極を覆う誘電体層は、気相成膜法により形成した誘電体層であり、絶縁破壊の恐れのない高い耐圧を有し、電極形成のためにエッチング法を使用しても誘電体層が侵食されないようにする。
【0032】
本発明は、特許文献8に記載された第1バス電極と第2バス電極のすべての間を表示ラインとして利用するいわゆるALIS方式のPDP装置にも適用可能である。この場合には、各第1バス電極の両側に第1放電電極を設け、各第2バス電極の両側に第2放電電極を設ける。
【0033】
また、本発明は、第1バス電極の一方の側と第2バス電極の他方の側の間を表示ラインとして利用する通常の3電極型PDP装置にも適用可能である。この場合には、第1放電電極を各第1バス電極の一方の側に設け、第2放電電極を各第2バス電極の一方の側の第1放電電極が設けられている側に設ける。この場合には、ストライプ状及び2次元格子状の隔壁を設けることが可能であり、2次元格子状隔壁を設ける場合には、第1バス電極の第1放電電極の設けられない側と第2バス電極の前記第2放電電極の設けられない側と間に、横隔壁を更に配置する。
【0034】
放電ガスは、少なくともネオンNeとキセノンXeを含む組成とし、キセノンの混合比が10%以上であることが望ましい。これにより、輝度の向上を図りつつ、パッシェンミニマムの放電により電圧の上昇を抑えられる。
【0035】
第1から第3電極を有するプラズマディスプレイパネルを使用したPDP装置は、第1電極に共通に電圧を印加する第1駆動回路と、第2電極に電圧を印加する第2駆動回路と、第3電極に電圧を印加する第3駆動回路とを備え、第2駆動回路は、第2電極にスキャンパルスを順次印加し、第3駆動回路は、スキャンパルスに同期して第3電極にアドレスパルスを印加し、スキャンパルスが印加された第2電極とアドレスパルスが印加された第3電極の交点のセルでアドレス放電を発生させて点灯するセルを選択し、第1駆動回路及び第2駆動回路は、第1電極及び第2電極に維持パルスを交互に印加して、選択した点灯セルで繰返し維持放電を発生させて点灯させる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、現状の製造技術を使用しても、歩留まりを低下させずに、駆動電圧を低減したプラズマディスプレイパネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1実施例は、本発明を特許文献8に記載されたALIS方式のPDP装置に適用した例であり、第3電極(アドレス電極)を第1及び第2電極(X及びY電極)と共に第1基板(透明基板)に設ける場合の例である。ALIS方式については、この文献に記載されているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0038】
図1は、本発明の第1実施例のプラズマディスプレイ装置(PDP装置)の全体構成を示す図である。図示のように、プラズマディスプレイパネル30は、横方向(長手方向)に伸びる第1電極(X電極)群及び第2電極(Y電極)群と、縦方向に伸びる第3電極(アドレス電極)群を有する。X電極群とY電極群は、交互に配置され、X電極の本数がY電極の本数より1本多い。X電極群は第1駆動回路31に接続され、奇数番目のX電極群と偶数番目のX電極群に分けて、それぞれ共通に駆動される。Y電極群は、第2駆動回路32に接続され、各Y電極に順次スキャンパルスが印加されると共に、スキャンパルスを印加する時以外は奇数番目のX電極群と偶数番目のY電極群に分けて、それぞれ共通に駆動される。アドレス電極群は、第3駆動回路33に接続され、スキャンパルスに同期して独立にアドレスパルスが印加される。第1から第3駆動回路31から33は、制御回路34により制御され、各回路には電源回路35から電力が供給される。
【0039】
図2は、プラズマディスプレイパネル(PDP)30の分解斜視図である。図示のように、前面(第1)ガラス基板1の上には、横方向に伸びる第1(X)バス電極14及び第2(Y)バス電極12が交互に平行に配置されている。X及びY光透過性電極(放電電極)13及び11が、X及びYバス電極14、12に重なるように設けられ、更にX及びY放電電極13及び11の一部が、X及びYバス電極14、12の両側に突出している。例えば、X及びYバス電極14,12は金属層で形成され、放電電極13、11はITO層膜などで形成され、X及びYバス電極14、12の抵抗値は放電電極13、11の抵抗値よりも低いか又は同等である。以下、X及びY放電電極13及び11のX及びYバス電極14、12の両側に突出した部分を、単にX及びY放電電極13及び11と称する。
【0040】
放電電極13、11及びバス電極14、12の上には、これらの電極を覆うように第1誘電体層15が形成されている。この第1誘電体層15は、例えば、可視光を透過するSiO2などで構成され、気相成膜法で形成される。なお、第1誘電体層15の形成法としては、気相成膜法のうちのCVD法、特にプラズマCVD法が適しており、第1誘電体層15の厚さは、約10μm以下にすることが可能である。従来の気相成膜法を使用しないで形成された誘電体層の厚さは一般に30μm前後である。そのため、誘電体表面に形成される電界形状は誘電体層の厚さの影響でかならずしも電極形状に対応した形状にならないことが電界シミュレーションから明らかになってきた。言い換えれば、誘電体層が厚いと誘電体層上の正確な電界制御が難しく、隣接する電極の間隔をパッシェンミニマムの条件に設定するのも難しかった。これに対して、気相成膜法を使用した誘電体層は薄くできるので、誘電体層上の正確な電界制御が可能であり、パッシェンミニマムの条件設定が容易になる。
【0041】
この第1誘電体層15の上に、バス電極14、12と交差するように第3(アドレス)バス電極16とアドレス光透過性電極(放電電極)17が設けられている。アドレスバス電極16とアドレス放電電極17は重なるように設けられ、アドレス放電電極17の一部はアドレスバス電極16から突出している。例えば、アドレスバス電極16は金属層で形成され、アドレス放電電極17はITO層膜などで形成され、アドレスバス電極16の抵抗値はアドレス放電電極17の抵抗値よりも低いか又は同等である。同様に、アドレス放電電極17のアドレスバス電極16両側に突出した部分を、単にアドレス放電電極17と称する。
【0042】
なお、上下端ではX放電電極及びY放電電極がなく、ダミー電極としてX及びYバス電極が複数本配置されることが、又は左右端ではアドレス放電電極がなく、ダミー電極としてアドレスバス電極が複数本配置されることがある。
【0043】
気相成膜法により形成された第1誘電体層15の表面は平滑であり、X及びY電極群の形成が容易である。また、第1誘電体層15は、フッ酸以外のウエットエッチャントに侵されないため、X及びY電極群を形成するプロセスにおいても変質することはない。更に、気相成膜法により形成された第1誘電体層15は、上記のように従来一般的に使用されてきた焼成による誘電体層に比べて薄くできるため、第1誘電体層15の斜面部の高低差が少なく、この点でもアドレス電極群の形成が容易である。また、誘電率も一般的な鉛系低融点ガラスの誘電体の約1/3と低く、誘電体層を挟んで両側に電極を形成しても容量の増加は小さくなり、駆動が容易である。
【0044】
更に、アドレス電極群の上には、気相成膜法により第2誘電体層18が形成され、更にその上にMgOなどの保護層19が形成される。この保護層19は、イオン衝撃により電子を放出して放電を成長させ、放電電圧の低減、放電遅れの低減などの効果を有する、この構造では、すべての電極がこの保護層19に覆われているため、どの電極群が陰極になっても保護層の効果を利用した放電が可能となる。以上のように、気相成膜法により形成された第1誘電体層15は、その両側に電極を配置することが容易であり、可視光をよく透過するので、前面基板とすることができる。
【0045】
一方、背面(第2)基板2の上には、縦方向隔壁20が形成されている。そして、隔壁20と背面基板2で形成される溝の側面と底面には、放電時に発生する紫外線で励起され、赤、緑及び青の可視光を発生する蛍光体層21、22、23が塗布されている。
【0046】
図3は、第1実施例のPDP30の部分縦断面図であり、図4はその部分横断面図である。前面基板1と背面基板2はシール24により封着され、隔壁20で囲まれる放電空間25にはNe、Xe、Heなどの放電ガスが封入されている。放電ガスは、キセノンの混合比が10%以上であることが望ましい。ここで、アドレスバス電極16は縦隔壁20と重なる位置に配置される。図示のように、第1実施例では、アドレス電極群が、X及びY電極群より放電空間側に配置される。
【0047】
図5は、1個のセルの構造及び電極形状を示す部分平面図である。図示のように、Yバス電極12及びXバス電極14が交互に平行に配置され、各バス電極の両側に光透過性のY放電電極11及びX放電電極13がそれぞれ突出している。対向するように突出したY放電電極11及びX放電電極13は、図示のように、対向するエッジが平行で、間隔が一定であるように形成されている。また、2電極間で繰り返し放電を起こすため、2電極は略同一形状、または、略同面積、または略線対称な形状をしている。この実施例では、電極11と13の対向するエッジの間隔は、例えば、50μmである。この電極11と13の電極間距離は、封入する放電ガス圧力、製造誤差などを考慮して決定される値であり、この寸法例は一例である。
【0048】
これらのX及びYバス電極14、12、X及びY放電電極13、11の上に第1誘電体層15が形成され、その上にX及びYバス電極14、12に対して略垂直方向に伸びるアドレスバス電極16とアドレス放電電極17が配置され、図示のように、アドレス放電電極17が、アドレスバス電極16からY放電電極11に対向するように突出している。Y放電電極11とアドレスバス電極16は、図示のように、対向するエッジの間隔が徐々に変化するように形成されており、エッジ間の距離が連続的に変化し、複数の異なる距離を持つ。この実施例では、電極11と17の対向するエッジが、X放電電極13に近い一端では近接し、他端では所定の距離dだけ離れるように、90°より小さい鋭角を成す形状を有する。Y放電電極11とアドレス放電電極17は、第1誘電体層15を挟んで絶縁されているため、電極が近接端で重なっても短絡することはない。また、他端では概ね100μm、望ましくは50μmである。電極11と13の対向するエッジの長さは概ね100μmなので、対向する電極エッジが成す角度は90°よりはるかに小さい鋭角であり、20°程度であることが望ましい。この電極間距離dは、パッシェンの法則より封入する放電ガス圧力との関係で決定される値であり、この寸法例は一例である。更に、対向するエッジは直線でなくても、電極間距離が変化すれば、階段状のエッジでも、曲線状のエッジでもよい。階段状のエッジであれば、対向するエッジは平行で、なす角度は概ね0°である。
アドレス放電では、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の放電をきっかけとしてY放電電極11とX放電電極13の間の放電が起る。そのため、図示のようにY放電電極11とアドレス放電電極17の間隔はX放電電極13に近い側を狭くして、Y放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電がX放電電極13に近い側で発生するようにする。
【0049】
更に、Y放電電極11と、隣接するセルのアドレスバス電極16との距離d1は、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の最大距離dより大きい。これにより、アドレスバス電極16に電圧を印加してY放電電極11とアドレス放電電極17間で放電を起こす時に、同じ電圧を隣接するセルのアドレスバス電極16に印加しても、Y放電電極11と隣接するセルのアドレスバス電極16間では放電が発生しないようにできる。
【0050】
更に、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の距離d2も、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の最大距離dより大きい。これにより、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の放電が防止できる。上記のように、アドレス放電では、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の放電をきっかけとしてY放電電極11とX放電電極13の間の放電が起きるため、アドレス放電電極17とYバス電極12の間で放電が発生すると、この放電はX放電電極13から離れた位置で起きるので、Y放電電極11とX放電電極13間の放電に移行する上では好ましくない。そこで、上記のようにして、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の放電を防止することが望ましい。
【0051】
アドレスバス電極16は、横方向の画素を隔てる縦隔壁20に重なるように配置される。これにより、アドレスバス電極16とX及びYバス電極14、12との交差部分は縦隔壁20により覆われ、放電空間には露出しない。これにより、バス電極を起点とする放電の発生が防止される。なお、交差部におけるアドレスバス電極16とX及びYバス電極14、12の幅を、他の部分より狭くすると駆動容量を低減できる。
【0052】
ここで、図6を利用して、本発明の動作原理を説明する。図6の横軸は放電を行う2電極間の距離dと放電空間の放電ガス圧力pの積pd、縦軸はその際の放電開始電圧であり、パッシェンカーブと呼ばれる。放電ガスは、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)などの混合ガスである。放電ガスの組成(混合比)が一定の場合、電極間距離d又は放電ガス圧力pが変化すると、その積pdに対して放電開始電圧が変化し、図6に示すように、下に凸で、最小の放電開始電圧が存在する。この放電開始電圧が最小になる点を一般にパッシェンミニマムと呼ぶ。放電ガスの混合比は、例えばXeの分圧が高くなった場合、放電開始電圧は高くなる傾向にあるが、パッシェンミニマムにおける放電開始電圧の変化は小さい。
【0053】
一般に、AC型カラーPDPでは、前述の特許文献にも記載されているように、dは一定値で設計され、pd積はパッシェンミニマムよりも右側に設定されている。これは製造上、電極間距離dがばらついた際にも。pd積に対して電圧変化が増加又は減少の一方向になるような領域を選択するためである。pd積の一例としては、d=100μm、p=67000Pa程度が選択される。この場合、電極間距離を一定にすると、パッシェンミニマムの放電ガス圧力pは13300Pa程度になる。逆に放電ガス圧力pが67000Paとすると、電極間距離dは20μm程度になる。従って、放電ガス圧力pを67000Paとし、本実施例のように、2つの光透過性電極の対向するエッジ間の距離が0から100μmまで変化する場合、途中に放電開始電圧がパッシェンミニマムになる電極間距離が必ず存在し、低い電圧での放電が発生する。更に、放電ガス圧力pを40000Paとすると、パッシェンミニマムとなる電極間距離は概ね30μmとなるため、電極間距離を20μmから100μmの間で変化させると、放電開始電圧がパッシェンミニマムとなる電極間距離がかならず存在し、低い電圧での放電が可能になる。
【0054】
更に、製造時に電極寸法がばらついたとしても、かならずパッシェンミニマムで放電するため、セル間の放電バラツキが減少する。また、電圧が印加されてから実際に放電が起きるまでの放電遅れ時間も、電極間距離dが小さいため、小さくなる。これにより、アドレス動作に要する時間を短くできるので、維持放電の回数を増加させて輝度を高くしたり、階調数を増加させることも可能になる。
【0055】
図5に示すように、本実施例では、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向するエッジを一端で近接させ、鋭角で離間させて他端の距離を100μm程度にすることで、上述のように、各セルでかならずパッシェンミニマムで放電する。なお、ここで説明したガス圧力pと電極間距離dは一例に過ぎず、pd積がパッシェンミニマムを含む範囲に設定できればよい。例えば、放電ガス圧力pが40000Paであるならば、パッシェンミニマムになる電極間距離は30μm程度であり、電極間距離の最小は10ないし20μmであればよい。電極間距離の最大値は50μm程度でもよいが、製造時の電極間距離のバラツキを考慮すると設計値は100μm程度とすることが望ましい。なお、電極間距離の上限についての制限はなく、セル自体の寸法などで決まるものであるが、上限を小さくした方が、dがパッシェンミニマムに近くなる範囲が広がり、放電確率が高くなる。
【0056】
本実施例の隔壁の高さは、150μmから300μm程度が望ましい。背面基板にも電極(アドレス電極)を形成する従来の構造では、前面基板側の電極と背面基板側の電極とで行う放電の電圧を低くするため、隔壁の高さは150μm程度であるのが一般的である。これに対して、本発明では、背面基板側に電極を設けないので、隔壁の高さを高くすることができる。これにより、前面基板側で行われた維持放電から蛍光体層までの距離が大きいので、放電のイオンスパッタによる蛍光体の劣化を緩和でき、寿命を長くすることができる。蛍光体層は隔壁側面及び放電空間の背面基板の底面に形成されるが、隔壁が必要以上に高いと底面部の蛍光体の厚さを必要以上に厚くする必要があり、無駄が多くなる。そのため、隔壁の高さは、150μmから300μm程度が望ましい。
【0057】
PDPの各セルは、点灯・非点灯のみが選択できるだけであり、点灯輝度を変化させる、すなわち階調を表示することができない。そこで、1フレームを所定の重み付けをした複数のサブフィールドに分割し、各セル毎に1フレームで点灯するサブフィールドを組み合わせることにより階調表示を行う。各サブフィールドは、通常同じ駆動シーケンスを有する。
【0058】
前述のように、本実施例のPDP装置はALIS方式であり、X電極とY電極のすべての間に表示ラインが形成される。例えば、1番目のX電極と1番目のY電極の間に1番目の表示ラインが形成され、1番目のY電極と2番目のX電極の間に2番目の表示ラインが形成され、2番目のX電極と2番目のY電極の間に3番目の表示ラインが形成され、2番目のY電極と3番目のX電極の間に4番目の表示ラインが形成される。言い換えれば、奇数番目のX電極とY電極の間及び偶数番目のX電極とY電極の間に奇数番目の表示ラインが形成され、奇数番目のY電極と偶数番目のX電極の間及び偶数番目のY電極と奇数番目のX電極の間に偶数番目の表示ラインが形成される。1表示フィールドを奇数フィールドと偶数フィールドに分け、奇数フィールドでは、奇数番目の表示ラインを表示し、偶数フィールドでは偶数番目の表示ラインを表示する。奇数フィールドと偶数フィールドは、それぞれ複数のサブフィールドで構成される。
【0059】
図7と図8は、本実施例のPDP装置の1サブフィールドの駆動波形を示す図であり、図7は奇数フィールドの駆動波形を示し、図8は偶数フィールドの駆動波形を示し、奇数番目のX電極(X1)、奇数番目のY電極(Y1)、偶数番目のX電極(X2)、偶数番目のY電極(Y2)、及びアドレス電極(A)に印加する駆動波形を示す。まず、奇数フィールドについて説明する。
【0060】
X電極に印加する駆動波形は、全セルで微弱な放電を繰返し起こしてセル内に壁電荷を形成するリセットパルス41、残留壁電荷量を調整する補償電圧42、表示ラインを選択する選択パルス43と44、維持パルス45、46、48、49、及び消去パルス47からなる。
【0061】
Y電極に印加する駆動波形は、全セルで微弱な放電を繰返し起こしてセル内に壁電荷を形成するリセット鈍波51、残留壁電荷量を調整する補償鈍波52、発光させるセルを選択する時にY電極に印加するスキャンパルス53、54、発光しないセルの壁電荷極性を弱い放電で反転させる調整パルス55、維持放電を繰返し発生させる維持パルス56、57、59、60、及び消去パルス58からなる。
【0062】
アドレス電極に印加する駆動波形はアドレスパルス61からなる。
【0063】
リセット期間の最初では、Y電極に印加されるリセット鈍波51とX電極に印加されるリセットパルス41により、X放電電極13とY放電電極11の間に電位差を生じ、全セルで放電が発生する。ここで印加されるのは、電圧が徐々に変化するリセット鈍波51であるため、微弱な放電と電荷形成を繰返し、全セル一様に壁電荷を形成する。形成された壁電荷の極性は、X放電電極近傍が正極性、Y放電電極近傍が負極性であり、アドレス放電電極近傍にも正極性の電荷が形成される。背面基板2側にアドレス電極が形成される従来の3電極型構造のパネルでは、前面基板に配置された電極に印加する電圧で背面基板側の電荷を制御するため、高いリセット電圧を要するが、本実施例のPDPでは、前面基板側の電荷を制御するだけなので、リセット電圧を低くすることができる。
【0064】
次に、Y電極に印加される補償鈍波52とX電極に印加される補償電圧42により、リセットにより形成された壁電荷とは逆極性の電圧が鈍波で印加されるため、微弱な放電により、セル内の壁電荷が減少する。
【0065】
次のアドレス期間は前半部と後半部に分かれる。前半部では、奇数番目のX電極X1に選択パルス43を印加し、偶数番目のX電極X2及びY電極Y2には0Vを印加した状態で、奇数番目のY電極Y1に印加位置を順次変えながらスキャンパルス53を印加する。スキャンパルス53は、奇数番目のすべてのY電極Y1に負電圧を印加した状態で、更に絶対値の大きな負極性のパルスを印加位置を順次変えながら印加されるパルスである。このスキャンパルス53の印加と同期して、アドレス放電電極にはアドレスパルスが印加される。アドレスパルス61は、スキャンパルスの印加されたY電極との交点に対応するセルを点灯する場合には印加され、点灯させない場合には印加されない。この時、リセット期間に形成された壁電荷の極性とY及びアドレスの各電極に印加されるパルスの極性は一致しており、この壁電荷により印加電圧を低くできる。これにより、選択パルス43、スキャンパルス53及びアドレスパルス61が同時に印加されたセルではY−A電極間の放電とX−Y電極間の放電が発生する。このとき、Y−A電極間の放電はX−Y電極間の放電を起こすきっかけの放電であり、放電が発生することだけが必要条件である。このため、パッシェンミニマムでの放電を最も効果的に利用できる。一方、X−Y電極間の放電は壁電荷の形成が目的であり、放電を起こすと共に充分な壁電荷を形成する電圧が必要である。この放電で、X放電電極近傍には負極性の壁電荷、Y放電電極の近傍には正極性の壁電荷が形成される。言い換えれば、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間の表示ラインでの点灯セルの選択が行われる。このように、アドレス放電により形成される電荷の極性は、前述のリセット放電の際に形成された電荷とは逆極性である。なお、選択パルス43の印加されない偶数番目のX放電電極及びスキャンパルス53の印加されない偶数番目のY放電電極近傍では、リセット期間終了時の壁電荷が維持される。
【0066】
アドレス期間の後半部では、偶数番目のX電極X2に選択パルス44を印加し、奇数番目のX電極X1及びY電極Y1には0Vを印加した状態で、偶数番目のY電極Y2に印加位置を順次変えながらスキャンパルス54を印加し、アドレスパルス61をアドレス電極に印加する。これにより、上記と同様に、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間の表示ラインでの点灯セルの選択が行われる。従って、アドレス期間の前半部と後半部で、奇数番目の表示ラインの点灯セルでアドレス放電が発生し、点灯セルの選択が行われたことになる。
【0067】
アドレス期間の最後には、Y電極にのみ負極性の電荷調整パルス55を印加する。アドレス放電が発生したセルではY放電電極11近傍に正の電荷が形成されており、電荷調整パルスの電圧を減少させる方向に作用するので、放電は発生しない。一方、アドレス放電の発生しなかったセルでは、Y放電電極11近傍には負の電荷が形成されており、電荷調整パルスの電圧に加算されて放電が発生する。なお、この時、X電極及びアドレス電極には電圧は印加されておらず、電極間の電位は小さいため、放電は遅れも大きく、強度も小さい。このため、電荷調整パルスは20μs以上の長さを必要とし、放電後に形成される電荷も少ないので、アドレス放電の行われなかったセルでは、次の維持パルスでは放電しない。
【0068】
維持放電期間では、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に同相の維持放電パルス45、46、59、60を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に同相の維持放電パルス48、49、56、57を印加する。維持放電パルス45、46、59、60は、維持放電パルス48、49、56、57と逆相である。従って、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間、及び偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間には、維持パルスによる大きな絶対値の電圧が印加され、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間、及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1との間には、維持パルスによる電圧は印加されない。言い換えれば、奇数表示ラインには維持パルス電圧が印加され、偶数表示ラインには維持パルス電圧は印加されない。
【0069】
維持放電期間の最初には、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に負極性の維持放電パルス45、59を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に正極性の維持放電パルス48、56を印加する。アドレス放電が行われたセルでは、X放電電極近傍に負極性の壁電荷が、Y放電電極近傍に正極性の壁電荷が形成されており、これらの壁電荷は、奇数番目のX電極X1に印加される維持パルス45と奇数番目のY電極Y1に印加される維持パルス56による電位差を大きくするので、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生する。一方、これらの壁電荷は、偶数番目のX電極X2に印加される維持パルス48と偶数番目のY電極Y2に印加される維持パルス59による電位差を小さくするので、最初の維持パルスに対しては、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間で維持放電は発生しない。奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で発生した維持放電により、壁電荷が反転し、奇数番目のX放電電極X1近傍に正極性の壁電荷が、奇数番目のY放電電極Y1近傍に負極性の壁電荷が形成される。
【0070】
次に、維持パルスは反転して、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に正極性の維持放電パルス46、60を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に負極性の維持放電パルス49、57を印加する。偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間でアドレス放電が行われたセルでは、最初の維持放電は発生しないので、アドレス期間終了時の壁電荷が維持されており、この壁電荷は、偶数番目のX電極X2に印加される維持パルス49と偶数番目のY電極Y2に印加される維持パルス60による電位差を大きくするので、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間で維持放電が発生する。更に、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生したセルでは、奇数番目のX放電電極X1近傍に負極性の壁電荷が、奇数番目のY放電電極Y1近傍に正極性の壁電荷が形成されているので、奇数番目のX電極X1に印加される維持パルス46と奇数番目のY電極Y1に印加される維持パルス57による電位差を大きくするので、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生する。これらの維持放電により、壁電荷の極性は逆転する。従って、極性を反転しながら維持パルスを繰返し印加することにより、維持放電が続く。
【0071】
維持放電パルスの回数は、サブフィールドの輝度の重み付けに応じて決められており、輝度の重み付けの大きなサブフィールドほど維持放電期間が長い。
【0072】
サブフィールドの最後には、消去パルス47、58により維持放電が行われた点灯セルで消去放電を発生させて、維持放電で形成された壁電荷を減少させる。この時、維持放電が発生しなかったセルでは壁電荷が少ないため、放電は発生しない。
【0073】
以上、奇数フィールドの各サブフィールドにおける駆動波形と動作を説明した。上記のように、奇数フィールドでは、奇数番目の表示ラインが点灯して表示が行われる。
【0074】
偶数フィールドでは、図8に示すように、リセット期間には、奇数フィールドと同じパルスが各電極に印加される。アドレス期間の前半部では、偶数X電極X2に選択パルス43を印加し、奇数X電極X1と偶数Y電極Y2に0Vを印加した状態で、奇数番目のY電極Y1に印加位置を順次変えながらスキャンパルス53を印加する。また、アドレス期間の後半部では、奇数X電極X1に選択パルス43を印加し、偶数X電極X2と奇数Y電極Y1に0Vを印加した状態で、偶数番目のY電極Y2に印加位置を順次変えながらスキャンパルス54を印加する。これにより、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1の間の表示ライン、すなわち偶数番目の表示ラインの点灯セルでアドレス放電が発生し、点灯セルの選択が行われる。
【0075】
維持放電期間には、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1に同相の維持放電パルス65、66、56、57を、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2に同相の維持放電パルス67、68、59、60を印加する。維持放電パルス65、66、56、57は、維持放電パルス67、68、59、60と逆相である。従って、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間、及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1の間には、維持パルスによる大きな絶対値の電圧が印加される。これにより、偶数番目の表示ラインで維持放電が発生する。
【0076】
以上本発明の第1実施例のPDP装置について説明したが、第1実施例のPDPには各種の変形例が可能であり、以下変形例について説明する。
【0077】
カラープラズマディスプレイの場合、赤(r)、緑(g)及び青(b)の蛍光体21、22、23を列毎に順に設ける。上記のように蛍光体は、隔壁(リブ)20の底面及び側面に塗布されるが、色毎に塗り特性がことなるため、第1の基板の表面の保護層19から蛍光体21、22、23の表面までの距離が異なり、放電特性に影響する。特にアドレス放電電極17はリブ20に近い位置に形成されるため、Y放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電特性が影響を受ける。本発明では、Y放電電極11とアドレス放電電極間の間隔が変化し、変化範囲内にパッシェンミニマムの条件が存在するようにする。しかし、上記のように、色毎にY放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電特性が異なり、間隔の変化に対するパッシェンカーブが異なる。
【0078】
図9は、R、G及びBの色毎にY放電電極11とアドレス放電電極17の間隔の変化状態を変えて、各色毎にパッシェンミニマムに対して適した変化範囲を設定した変形例を示す。図9の電極形状は、図5の電極形状と類似の形状であるが、各セルの電極形状が、色毎にアドレス放電電極17の形状が異なり、他は同じである。赤(r)のセルのアドレス放電電極17rは、Y放電電極11との間隔がゼロからdrまで変化し、緑(g)のセルのアドレス放電電極17gは、Y放電電極11との間隔がゼロからdgまで変化し、青(b)のセルのアドレス放電電極17bは、Y放電電極11との間隔がゼロからdbまで変化する。ここでは、dr>db>dgである。
【0079】
なお、図9の変形例では、Y放電電極とアドレス放電電極の最小間隔がすべての色でゼロであり、色毎に最大間隔が異なるようにしたが、例えば、最小間隔と最大間隔の両方が異なるようにすることも可能である。
【0080】
図10は、電極形状の他の変形例を示す図である。この変形例では、X放電電極13は、Y放電電極11のエッジと平行なエッジを有するが、形状は長方形で、Y放電電極11の形状と異なる。更に、アドレス放電電極は設けられておらず、Y放電電極11は、アドレスバス電極16との間で放電を発生する。図示のように、隔壁(リブ)20は、アドレスバス電極16の右側半分に重なるように設けられ、Yバス電極12及びXバス電極14との交差部分のみアドレスバス電極16の全幅に重なるように幅が広くなっている。Y放電電極11は図5に類似した形状を有し、アドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化する。Y放電電極11とアドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化する部分では、アドレスバス電極16は隔壁20と重なっておらず、放電発生可能である。図5の場合と同様に、Y放電電極11とアドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化するので、その間でパッシェンミニマムになる間隔が存在する。
【0081】
隣接するアドレスバス電極16は、隔壁20と重なっている上、Y放電電極11との間隔d1は、Y放電電極11とアドレスバス電極16の最大間隔dより大きいので、Y放電電極11と隣接するアドレスバス電極16との間で放電が発生することはない。
また、図5のアドレス放電電極17をアドレスバス電極16と同じプロセスで作られる金属層で形成することも可能である。この場合、アドレス放電電極17の突出量を小さくして、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向部分が隔壁20の近くになるようにする。これにより、アドレス放電電極17が遮光性の金属層でも、光量の低下を小さくできる。
【0082】
第1実施例では、本発明をALIS方式のPDP装置に適用したが、本発明はALIS方式でない3電極型PDP装置にも適用可能である。本発明の第2実施例は、本発明をALIS方式でない3電極型PDP装置にも適用した実施例である。
【0083】
図11は、本発明の第2実施例のPDP装置のプラズマディスプレイパネルにおける1個のセルの構造及び電極形状を示す部分平面図である。第2実施例の電極の位置関係や形成方法は、第1実施例と同じであり、ここでは異なる点についてのみ説明する。図示のように、Yバス電極12とXバス電極14が交互に平行に配置され、Yバス電極12の一方の側からY放電電極11が突出し、Xバス電極14のY放電電極11に対向する側からX放電電極13が突出している。また、アドレスバス電極16からアドレス放電電極17が突出している。縦隔壁20はアドレスバス電極16に重なるように設けられている。横隔壁28が、Yバス電極12とXバス電極14の間のY放電電極11とX放電電極13が突出していない側の間に設けられている。縦隔壁20と横隔壁28は、2次元格子を形成する。第1実施例と同様に、Y放電電極11とX放電電極13の対向するエッジは平行で、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向するエッジも間隔が変化する。電極の形状などについては、第2実施例でも第1実施例と同様の変形例が可能である。
【0084】
第2実施例のPDP装置は、図11のような構造及び電極形状を有するプラズマディスプレイパネルを使用する。駆動回路及び駆動波形は従来の技術で実現できる。参考として、図12に第2実施例における駆動波形の例を示す。
【0085】
図13は、第2実施例の背面基板の構成例を示す図である。第1実施例では、隔壁は縦隔壁20のみを設けたが、第2実施例では、隔壁は縦隔壁20と横隔壁28を有する2次元格子状である。この背面基板は、サンドブラスト法などにより、背面基板2に放電空間25と排気空間26を直接彫り込んで形成する。排気孔27は、排気空間26から背面基板2の側面を貫通し、前面基板1を貼り合せた後、排気及び放電ガス封入を行うための穴で、1乃至数個設けられる。背面基板2の表面は前面基板1の表面にほぼ接触するので、図3及び図4に示すようにシール材24を高くする必要がなく、材料選択の幅を広げることができる。なお、縦隔壁と横隔壁の交差部の幅を他の部分より大きくすると、バス電極間の放電をより確実に防止できる。
【0086】
以上、本発明の第1、第2実施例及び変形例を説明したが、ある例で説明した形状は他の例にも適用可能である。
【0087】
(付記1)
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極、及び前記第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。(1)
(付記2)
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。(2)
(付記3)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2の基板上に設けられ、前記第3電極の一方のエッジに重なり、他方のエッジには少なくとも一部が重ならないように配置される隔壁を備え、
前記第3電極の前記隔壁と重ならないエッジと前記第2放電電極のエッジの間隔が変化する付記2に記載のプラズマディスプレイパネル。(3)
(付記4)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの間隔は、前記第1放電電極に近い側が狭い付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(4)
(付記5)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と隣接するセルの前記第3バス電極との間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(5)
(付記6)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第3放電電極が前記第2バス電極と対向する間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い付記1に記載のプラズマディスプレイパネル。(6)
(付記7)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2バス電極と前記第3バス電極が交差する部分には、隔壁が設けられている付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(7)
(付記8)
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略同一形状で、略同一面積である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(8)
(付記9)
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略線対称である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(9)
(付記10)
当該プラズマディスプレイパネルは、カラー表示用3原色のセルで構成され、各色のセルで、前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの間隔及び間隔の変化が異なる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(10)
(付記11)
前記第3放電電極と前記第3バス電極は同一プロセスで作られる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記12)
前記第1及び第2放電電極は、光を透過する透明電極である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記13)
前記第3放電電極は、光を透過する透明電極である付記1に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記14)
前記第1及び第2電極を覆う前記誘電体層は、気相成膜法により形成した誘電体層である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記15)
前記第1バス電極の両側に前記第1放電電極が設けられ、前記第2バス電極の両側に前記第2放電電極が設けられる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記16)
前記第1放電電極は、各第1バス電極の一方の側に設けられ、
前記第2放電電極は、各第2バス電極の一方の側の前記第1放電電極が設けられている側に設けられる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記17)
付記1から16のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルと、
前記複数のセルに設けられた各第1電極に電圧を印加する第1駆動回路と、
前記複数のセルに設けられた各第2電極に電圧を印加する第2駆動回路と、
前記複数のセルに設けられた各第3電極に電圧を印加する第3駆動回路とを備え、
前記第2駆動回路は、前記各第2電極にスキャンパルスを順次印加し、前記第3駆動回路は、前記スキャンパルスに同期して前記各第3電極にアドレスパルスを印加し、前記スキャンパルスが印加された前記第2電極と前記アドレスパルスが印加された前記第3電極の交点のセルでアドレス放電を発生させて点灯するセルを選択し、
前記第1駆動回路及び前記第2駆動回路は、前記第1電極及び前記第2電極に維持パルスを交互に印加して、前記選択した点灯セルで繰返し維持放電を発生させて点灯させることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、各セルの放電開始電圧を均一にできるので、放電開始電圧を低く設定でき、回路コストを低減できる。また、パネルの構造を簡単にでき、製造の歩留まりも低下しないので、製造コストを低減できる。これにより、表示品質の良好なPDP装置を、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施例のPDP装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施例のPDPの分解斜視図である。
【図3】第1実施例のPDPの断面図(縦方向)である。
【図4】第1実施例のPDPの断面図(横方向)である。
【図5】第1実施例の電極形状を示す図である。
【図6】パッシェンカーブを示す図である。
【図7】第1実施例のPDP装置の駆動波形(奇数フィールド)を示す図である。
【図8】第1実施例のPDP装置の駆動波形(偶数フィールド)を示す図である。
【図9】電極形状の変形例を示す図である。
【図10】電極形状の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施例の電極形状を示す図である。
【図12】第3実施例のPDP装置の駆動波形(奇数フィールド)を示す図である。
【図13】背面基板の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 前面基板
2 背面基板
11 第2(Y)放電電極
12 第2(Y)バス電極
13 第1(X)放電電極
14 第1(X)バス電極
15 第1誘電体層
16 第3(アドレス)バス電極
17 第3(アドレス)放電電極
20 縦隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどのディスプレイ装置、平面型テレビジョン、広告や情報などの表示用プラズマディスプレイに使用されるAC型プラズマディスプレイ装置(PDP装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
AC型カラーPDP装置においては、表示するセルを規定する期間(アドレス期間)と表示点灯のための放電を行う表示期間(サステイン期間)とを分離したアドレス・表示分離方式が広く採用されている。この方式においては、アドレス期間で、点灯するセルに電荷を蓄積し、その電荷を利用してサステイン期間で表示のための放電を行う。
【0003】
また、PDP装置には、第1の方向に伸びる複数の第1電極を互いに平行に設け、第1の方向に対して垂直な第2の方向に伸びる複数の第2電極を互いに平行に設けた2電極型の装置と、第1の方向に伸びる複数の第1電極と第2電極を交互に平行に設け、第1の方向に対して垂直な第2の方向に伸びる複数の第3電極を互いに平行に設けた3電極型の装置とがあり、近年は3電極型PDPが広く使用されている。さらに補助的役割りの電極を加えた4電極以上の構造も考案されている。
【0004】
この3電極型PDPの一般的な構造は、第1の基板に第1(X)電極と第2(Y)電極を交互に平行に設け、第1の基板に対向する第2の基板に第1及び第2電極に垂直な方向に伸びる第3(アドレス)電極を設け、電極表面をそれぞれ誘電体層で覆う。第2の基板上には更に、第3電極の間に第3電極と平行に伸びる1方向のストライプ状の隔壁、又はセルを各々分離するように第3電極及び第1と第2電極と平行配置される2次元格子状の隔壁を設け、隔壁の間に蛍光体層を形成した後、第1と第2基板を貼り合せる。従って、第3電極の上には誘電体層と蛍光体層、さらに隔壁が形成される場合もある。
【0005】
第1と第2電極の間に電圧を印加して全セルの電極近傍の電荷(壁電荷)を一様な状態にした後、第2電極にスキャンパルスを順次印加し、スキャンパルスに同期して第3電極にアドレスパルスを印加して、第1、第2、第3電極間で放電を起こし、点灯するセル内に選択的に壁電荷を残すアドレス動作を行った後、放電する隣接2電極が交互に逆極性となる維持放電パルスを印加してアドレス動作により壁電荷の残された点灯セルで維持放電を発生させて点灯を行う。蛍光体層は、放電により発生する紫外線により発光し、それを第1基板を通して見る。そのため、第1及び第2電極は、金属材料で形成された不透明なバス電極と、ITO膜などの透明電極で形成され、透明電極を通して蛍光体層で発生した光を見れるようになっている。一般的なPDP装置の構造及び動作は広く知られているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0006】
PDPのように放電空間に放電ガスを封入して2電極間で放電を発生させる場合、放電の閾値電圧(放電開始電圧)は、2電極間の距離dと放電ガスの圧力pの積に応じて決定されることが知られており、その変化をこの積を横軸に放電開始電圧を縦軸にして示した曲線をパッシェンカーブという。パッシェンカーブは、2電極間の距離dと放電ガスの圧力pの積(pd積)がある値の時に放電電圧が最小値になり、その状態はパッシェンミニマムと呼ばれる。
【0007】
上記の3電極型PDPの構成において、第1及び第2電極の透明電極は、一般に各セルで電極のエッジが平行で、エッジが間隔dで対向するような形状になっており、この間隔dと放電空間の放電ガスの圧力pによりパッシェンカーブから放電電圧が求まり、第1と第2電極間の放電開始電圧が決定される。この場合、各セルのpd積は、設計値は同じでも間隔dの製造上のバラツキのために、pd積で決まる放電開始電圧はセル間でバラツキを持っていた。そのため、実際のPDP装置における駆動電圧は、放電開始電圧のバラツキを考慮して、放電開始電圧をパッシェンミニマムより高い値に設定し、たとえ放電開始電圧がばらついても確実に放電が発生するようにしていた。
【0008】
例えば、特許文献1は、3電極型PDPにおいて、pd積をパッシェンミニマムより大きな値に設定することを記載している。
【0009】
また、3電極型PDPにおいて、放電を行う第1と第2電極の組に隣接する他の組の電極との間(逆スリットと呼ぶ)では放電が発生しないように間隔を広くしていたが、特許文献2は、この間隔を狭くして、この間隔のpd積をパッシェンミニマムになる値より更に小さくして放電開始電圧を高くすることにより、逆スリットで放電が発生しないようにする構成を記載している。
【0010】
更に、特許文献3は、3電極型PDPにおいて、第1と第2電極の透明電極の間隔をpd積がパッシェンミニマムになる値に設定することを記載している。
【0011】
以上、第1の基板に交互に第1と第2電極を設け、第2の基板に第1及び第2電極と交差するように第3電極を設ける3電極型PDPにおける第3放電電極間の距離について記載した公知例を説明したが、他にも各種の形状のPDPが提案されている。例えば、特許文献4は、第1の方向に伸びる複数の第1電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた後第1の方向に垂直な第2の方向に伸びる複数の第2電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた第1の基板と、第1の方向に伸びる複数の第3電極を第1電極に対向するように平行に設け、その上に誘電体層を設けた第2の基板を備えるPDPを記載している。この構成では、維持放電を行う第1と第2電極が誘電体層を介して交差するように構成されており、交差部における2電極間の間隔はゼロで、交差部から離れるに従って間隔が徐々に大きくなる。そのため、パッシェンミニマムになる条件がかならず存在する。
【0012】
また、特許文献5は、第1の方向に伸びる複数の第1バス電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた後第1の方向に垂直な第2の方向に伸びる複数の第2バス電極を平行に設け、その上に誘電体層を設けた第1の基板と、隔壁及び蛍光体層を有する第2の基板を備える2電極型PDPを記載している。第1と第2バス電極の交差部には、第1及び第2バス電極にそれぞれ接続される第1及び第2透明電極が設けられ、第1及び第2透明電極は一定間隔dで対向するエッジを有する。特許文献5は、第1及び第2透明電極の間隔dに関しては特に記載しておらず、パッシェンカーブ及びパッシェンミニマムについての記載はない。
更に、特許文献9は、間隔が変化する第1及び第2放電電極を設けて、セル内の放電の均一性を向上する構成を記載している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−84907号公報
【特許文献2】特開2001−84906号公報
【特許文献3】特開2001−52623号公報
【特許文献4】特開2003−36052号公報
【特許文献5】特開2001−283735号公報
【特許文献6】特開平7−29498号公報
【特許文献7】特開平3−233829号公報
【特許文献8】特許第2801893号公報
【特許文献9】特開2001−283735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1から5に記載された構成では、維持放電が行われる各セルにおける2つの透明電極のエッジが一定間隔dで対向する形状としている。パッシェンミニマムは、放電ガス圧p=13300Paの時にd=100μmであり、通常使用される放電ガス圧p=67000Paの場合には、パッシェンミニマムにするにはd=20μmとする必要がある。しかし、現状の製造技術では、製造上のバラツキのためこの間隔を安定して形成することは容易ではない。特に、間隔が小さくなった場合には、隣接する電極同士が短絡する可能性もあり、歩留まりを悪くする。
【0015】
また、従来の鉛系低融点ガラスを使用した誘電体では、電極間の間隔が小さくなると耐圧の問題も発生する。
【0016】
放電ガス圧pを下げれば、間隔dを大きくしてもパッシェンミニマムにできるが、一般に放電ガス圧pを下げると発光効率、寿命などの性能を劣化させる傾向にあり好ましくない。
【0017】
このように、維持放電が行われる2つの透明電極のエッジが一定間隔dで対向する従来技術では、間隔dのばらつきの影響を防止することができない。更に、蛍光体の塗布厚のバラツキから対向放電の電圧もばらつく。このため、全画素で確実に放電を発生させるためには、駆動電圧を高くする必要があり、その分駆動回路のコストが増加するという問題があった。
【0018】
また、前述の特許文献4に記載されたPDPでは、バス電極に相当する第1と第2の電極は誘電体層を介して交差するように形成されており、維持電極は設けられておらず、バス電極間で放電が発生する。交差部分の近傍でパッシェンミニマムの条件が満たされるが、第1と第2の電極は垂直に交差しているので、交差部分から離れると2つの電極の間隔は急激に増加するため、放電は交差部分の近傍でしか発生せず、上述のように放電が開始しにくい上に広がりにくい。更に、形成される壁電荷量も制限されるので、放電の強度も大きくできないという問題がある。
【0019】
上記問題を解決するため、本出願人は、特願2003−326440号(特願2004−135321号の国内優先出願の基礎となる出願)で、第1の基板と、第1の基板に対向するように配置され、第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、第1の基板が、第1バス電極及び第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、第2バス電極及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層と、この誘電体層上に設けられ、第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極及び第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第1放電電極と第2放電電極は対向する間隔が変化するエッジを備え、第2放電電極と第3放電電極は対向する間隔が変化するエッジを備える構成を記載している。このような構成において、対向するエッジの間隔を、放電空間に封入される放電ガスの圧力との積がパッシェンミニマムの両側になるように設定することにより、たとえ対向するエッジの間隔のバラツキがあっても、必ずパッシェンミニマムの条件が満たされる。従って、全セルでパッシェンミニマムの放電開始電圧になり、放電開始電圧を全セルで均一にでき、製造のバラツキの影響を考慮しなくてもよいので、駆動電圧を低減できる。
【0020】
しかし、現状のプラズマディスプレイパネルの構成では、パッシェンミニマムに対応する間隔がかなり狭くなる。上記のように、第2放電電極と第3放電電極は誘電体層を介して形成されるので、製造バラツキにより、基板に垂直な方向から見た時の間隔が非常に小さくなっても、例えばゼロ、すなわち重なっても特に問題は生じない。しかし、第1放電電極と第2放電電極は、同一面上に形成されるため、対向するエッジの間隔を狭くすると、現状の製造技術では製造バラツキにより、第1放電電極と第2放電電極の短絡が発生することが判明した。第1放電電極と第2放電電極が短絡した場合には不良品になり、パネルの歩留まりを低下させ、製造コストを増加させるという問題が生じる。
【0021】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、現状の製造技術で歩留まりを低下させること無しに製造可能で、駆動電圧を低減可能なプラズマディスプレイパネルの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を実現するため、本発明のプラズマディスプレイパネルは、第1の基板に、第1バス電極及び第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、第2バス電極及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、第1及び第2電極を覆う誘電体層と、この誘電体層上に設けられ、第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極及び第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを設け、第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第1放電電極と第2放電電極の対向するエッジは間隔が一定で、第2放電電極と第3放電電極の対向するエッジは間隔が変化するように構成する。
なお、第3電極を第3バス電極のみで構成し、第2放電電極と第3バス電極の対向するエッジの間隔が変化するように構成してもよい。
【0023】
本発明によれば、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極間で行うアドレス放電の放電開始電圧を、パッシェンミニマムに設定できる。また、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極は、誘電体層を介して設けられているので、たとえ間隔がゼロでも(すなわち一部が重なっても)、短絡することはない。第1放電電極と第2放電電極の対向するエッジは平行で一定なので、第1放電電極と第2放電電極の短絡は発生しにくい。
【0024】
第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの間隔は、第1放電電極に近い側が狭いことが望ましい。これにより、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極間の放電を第1放電電極に近い位置で発生させ、それにより誘発される第1放電電極と第2放電電極間での放電が発生しやすくなる。
【0025】
第2放電電極の隣接するセルの第3バス電極との間隔は、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの最大間隔より広いことが望ましい。これにより、第2放電電極と隣接するセルの第3バス電極との間の誤放電が防止できる。
【0026】
第3放電電極が第2バス電極と対向する間隔は、第2放電電極と第3放電電極の対向するエッジの最大間隔より広いことが望ましい。これにより、第3放電電極と第2バス電極の間の放電が防止できる。
【0027】
第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、第2バス電極及び第1バス電極と第3バス電極又は第3(バス)電極が交差する部分には、隔壁が設けられることが望ましい。これにより、バス電極間の放電が防止できる。
隔壁は、第2の基板に設けられ、隔壁の溝又は穴の底部及び側面に蛍光体層を塗布し、第1の基板側から、表示を見る。これにより、第2基板上の蛍光体層が発生する可視光を、第1の基板を通して見ることになる。特に、本願発明では、第3の電極は第1の基板に設けられるので、第3の電極を第2の基板に設けてその上に蛍光体層を設ける場合に比べて、蛍光体層の厚さを厚くできるので、変換効率が高くなる。
【0028】
第1及び第2放電電極は、光を透過する透明電極である。
第1放電電極と第2放電電極は、略同一形状、略同一面積、又は線対称であることが望ましい。
【0029】
プラズマディスプレイパネルがカラー表示用3原色のセルで構成される場合、第2放電電極と第3放電電極又は第3(バス)電極の対向するエッジの間隔又は間隔の変化を、各色のセルで異ならせて、各色のアドレス放電が同じように生じるようにする。
【0030】
第3放電電極を第3バス電極と同一プロセスで作られる金属層で構成してもよい。この場合、第3放電電極をセルの周辺部に設けて発光を遮断しないようにするか、少なくとも一部の発光が透過するように第3放電電極に開口を設ける。
【0031】
第1及び第2電極を覆う誘電体層は、気相成膜法により形成した誘電体層であり、絶縁破壊の恐れのない高い耐圧を有し、電極形成のためにエッチング法を使用しても誘電体層が侵食されないようにする。
【0032】
本発明は、特許文献8に記載された第1バス電極と第2バス電極のすべての間を表示ラインとして利用するいわゆるALIS方式のPDP装置にも適用可能である。この場合には、各第1バス電極の両側に第1放電電極を設け、各第2バス電極の両側に第2放電電極を設ける。
【0033】
また、本発明は、第1バス電極の一方の側と第2バス電極の他方の側の間を表示ラインとして利用する通常の3電極型PDP装置にも適用可能である。この場合には、第1放電電極を各第1バス電極の一方の側に設け、第2放電電極を各第2バス電極の一方の側の第1放電電極が設けられている側に設ける。この場合には、ストライプ状及び2次元格子状の隔壁を設けることが可能であり、2次元格子状隔壁を設ける場合には、第1バス電極の第1放電電極の設けられない側と第2バス電極の前記第2放電電極の設けられない側と間に、横隔壁を更に配置する。
【0034】
放電ガスは、少なくともネオンNeとキセノンXeを含む組成とし、キセノンの混合比が10%以上であることが望ましい。これにより、輝度の向上を図りつつ、パッシェンミニマムの放電により電圧の上昇を抑えられる。
【0035】
第1から第3電極を有するプラズマディスプレイパネルを使用したPDP装置は、第1電極に共通に電圧を印加する第1駆動回路と、第2電極に電圧を印加する第2駆動回路と、第3電極に電圧を印加する第3駆動回路とを備え、第2駆動回路は、第2電極にスキャンパルスを順次印加し、第3駆動回路は、スキャンパルスに同期して第3電極にアドレスパルスを印加し、スキャンパルスが印加された第2電極とアドレスパルスが印加された第3電極の交点のセルでアドレス放電を発生させて点灯するセルを選択し、第1駆動回路及び第2駆動回路は、第1電極及び第2電極に維持パルスを交互に印加して、選択した点灯セルで繰返し維持放電を発生させて点灯させる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、現状の製造技術を使用しても、歩留まりを低下させずに、駆動電圧を低減したプラズマディスプレイパネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1実施例は、本発明を特許文献8に記載されたALIS方式のPDP装置に適用した例であり、第3電極(アドレス電極)を第1及び第2電極(X及びY電極)と共に第1基板(透明基板)に設ける場合の例である。ALIS方式については、この文献に記載されているので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0038】
図1は、本発明の第1実施例のプラズマディスプレイ装置(PDP装置)の全体構成を示す図である。図示のように、プラズマディスプレイパネル30は、横方向(長手方向)に伸びる第1電極(X電極)群及び第2電極(Y電極)群と、縦方向に伸びる第3電極(アドレス電極)群を有する。X電極群とY電極群は、交互に配置され、X電極の本数がY電極の本数より1本多い。X電極群は第1駆動回路31に接続され、奇数番目のX電極群と偶数番目のX電極群に分けて、それぞれ共通に駆動される。Y電極群は、第2駆動回路32に接続され、各Y電極に順次スキャンパルスが印加されると共に、スキャンパルスを印加する時以外は奇数番目のX電極群と偶数番目のY電極群に分けて、それぞれ共通に駆動される。アドレス電極群は、第3駆動回路33に接続され、スキャンパルスに同期して独立にアドレスパルスが印加される。第1から第3駆動回路31から33は、制御回路34により制御され、各回路には電源回路35から電力が供給される。
【0039】
図2は、プラズマディスプレイパネル(PDP)30の分解斜視図である。図示のように、前面(第1)ガラス基板1の上には、横方向に伸びる第1(X)バス電極14及び第2(Y)バス電極12が交互に平行に配置されている。X及びY光透過性電極(放電電極)13及び11が、X及びYバス電極14、12に重なるように設けられ、更にX及びY放電電極13及び11の一部が、X及びYバス電極14、12の両側に突出している。例えば、X及びYバス電極14,12は金属層で形成され、放電電極13、11はITO層膜などで形成され、X及びYバス電極14、12の抵抗値は放電電極13、11の抵抗値よりも低いか又は同等である。以下、X及びY放電電極13及び11のX及びYバス電極14、12の両側に突出した部分を、単にX及びY放電電極13及び11と称する。
【0040】
放電電極13、11及びバス電極14、12の上には、これらの電極を覆うように第1誘電体層15が形成されている。この第1誘電体層15は、例えば、可視光を透過するSiO2などで構成され、気相成膜法で形成される。なお、第1誘電体層15の形成法としては、気相成膜法のうちのCVD法、特にプラズマCVD法が適しており、第1誘電体層15の厚さは、約10μm以下にすることが可能である。従来の気相成膜法を使用しないで形成された誘電体層の厚さは一般に30μm前後である。そのため、誘電体表面に形成される電界形状は誘電体層の厚さの影響でかならずしも電極形状に対応した形状にならないことが電界シミュレーションから明らかになってきた。言い換えれば、誘電体層が厚いと誘電体層上の正確な電界制御が難しく、隣接する電極の間隔をパッシェンミニマムの条件に設定するのも難しかった。これに対して、気相成膜法を使用した誘電体層は薄くできるので、誘電体層上の正確な電界制御が可能であり、パッシェンミニマムの条件設定が容易になる。
【0041】
この第1誘電体層15の上に、バス電極14、12と交差するように第3(アドレス)バス電極16とアドレス光透過性電極(放電電極)17が設けられている。アドレスバス電極16とアドレス放電電極17は重なるように設けられ、アドレス放電電極17の一部はアドレスバス電極16から突出している。例えば、アドレスバス電極16は金属層で形成され、アドレス放電電極17はITO層膜などで形成され、アドレスバス電極16の抵抗値はアドレス放電電極17の抵抗値よりも低いか又は同等である。同様に、アドレス放電電極17のアドレスバス電極16両側に突出した部分を、単にアドレス放電電極17と称する。
【0042】
なお、上下端ではX放電電極及びY放電電極がなく、ダミー電極としてX及びYバス電極が複数本配置されることが、又は左右端ではアドレス放電電極がなく、ダミー電極としてアドレスバス電極が複数本配置されることがある。
【0043】
気相成膜法により形成された第1誘電体層15の表面は平滑であり、X及びY電極群の形成が容易である。また、第1誘電体層15は、フッ酸以外のウエットエッチャントに侵されないため、X及びY電極群を形成するプロセスにおいても変質することはない。更に、気相成膜法により形成された第1誘電体層15は、上記のように従来一般的に使用されてきた焼成による誘電体層に比べて薄くできるため、第1誘電体層15の斜面部の高低差が少なく、この点でもアドレス電極群の形成が容易である。また、誘電率も一般的な鉛系低融点ガラスの誘電体の約1/3と低く、誘電体層を挟んで両側に電極を形成しても容量の増加は小さくなり、駆動が容易である。
【0044】
更に、アドレス電極群の上には、気相成膜法により第2誘電体層18が形成され、更にその上にMgOなどの保護層19が形成される。この保護層19は、イオン衝撃により電子を放出して放電を成長させ、放電電圧の低減、放電遅れの低減などの効果を有する、この構造では、すべての電極がこの保護層19に覆われているため、どの電極群が陰極になっても保護層の効果を利用した放電が可能となる。以上のように、気相成膜法により形成された第1誘電体層15は、その両側に電極を配置することが容易であり、可視光をよく透過するので、前面基板とすることができる。
【0045】
一方、背面(第2)基板2の上には、縦方向隔壁20が形成されている。そして、隔壁20と背面基板2で形成される溝の側面と底面には、放電時に発生する紫外線で励起され、赤、緑及び青の可視光を発生する蛍光体層21、22、23が塗布されている。
【0046】
図3は、第1実施例のPDP30の部分縦断面図であり、図4はその部分横断面図である。前面基板1と背面基板2はシール24により封着され、隔壁20で囲まれる放電空間25にはNe、Xe、Heなどの放電ガスが封入されている。放電ガスは、キセノンの混合比が10%以上であることが望ましい。ここで、アドレスバス電極16は縦隔壁20と重なる位置に配置される。図示のように、第1実施例では、アドレス電極群が、X及びY電極群より放電空間側に配置される。
【0047】
図5は、1個のセルの構造及び電極形状を示す部分平面図である。図示のように、Yバス電極12及びXバス電極14が交互に平行に配置され、各バス電極の両側に光透過性のY放電電極11及びX放電電極13がそれぞれ突出している。対向するように突出したY放電電極11及びX放電電極13は、図示のように、対向するエッジが平行で、間隔が一定であるように形成されている。また、2電極間で繰り返し放電を起こすため、2電極は略同一形状、または、略同面積、または略線対称な形状をしている。この実施例では、電極11と13の対向するエッジの間隔は、例えば、50μmである。この電極11と13の電極間距離は、封入する放電ガス圧力、製造誤差などを考慮して決定される値であり、この寸法例は一例である。
【0048】
これらのX及びYバス電極14、12、X及びY放電電極13、11の上に第1誘電体層15が形成され、その上にX及びYバス電極14、12に対して略垂直方向に伸びるアドレスバス電極16とアドレス放電電極17が配置され、図示のように、アドレス放電電極17が、アドレスバス電極16からY放電電極11に対向するように突出している。Y放電電極11とアドレスバス電極16は、図示のように、対向するエッジの間隔が徐々に変化するように形成されており、エッジ間の距離が連続的に変化し、複数の異なる距離を持つ。この実施例では、電極11と17の対向するエッジが、X放電電極13に近い一端では近接し、他端では所定の距離dだけ離れるように、90°より小さい鋭角を成す形状を有する。Y放電電極11とアドレス放電電極17は、第1誘電体層15を挟んで絶縁されているため、電極が近接端で重なっても短絡することはない。また、他端では概ね100μm、望ましくは50μmである。電極11と13の対向するエッジの長さは概ね100μmなので、対向する電極エッジが成す角度は90°よりはるかに小さい鋭角であり、20°程度であることが望ましい。この電極間距離dは、パッシェンの法則より封入する放電ガス圧力との関係で決定される値であり、この寸法例は一例である。更に、対向するエッジは直線でなくても、電極間距離が変化すれば、階段状のエッジでも、曲線状のエッジでもよい。階段状のエッジであれば、対向するエッジは平行で、なす角度は概ね0°である。
アドレス放電では、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の放電をきっかけとしてY放電電極11とX放電電極13の間の放電が起る。そのため、図示のようにY放電電極11とアドレス放電電極17の間隔はX放電電極13に近い側を狭くして、Y放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電がX放電電極13に近い側で発生するようにする。
【0049】
更に、Y放電電極11と、隣接するセルのアドレスバス電極16との距離d1は、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の最大距離dより大きい。これにより、アドレスバス電極16に電圧を印加してY放電電極11とアドレス放電電極17間で放電を起こす時に、同じ電圧を隣接するセルのアドレスバス電極16に印加しても、Y放電電極11と隣接するセルのアドレスバス電極16間では放電が発生しないようにできる。
【0050】
更に、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の距離d2も、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の最大距離dより大きい。これにより、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の放電が防止できる。上記のように、アドレス放電では、Y放電電極11とアドレス放電電極17間の放電をきっかけとしてY放電電極11とX放電電極13の間の放電が起きるため、アドレス放電電極17とYバス電極12の間で放電が発生すると、この放電はX放電電極13から離れた位置で起きるので、Y放電電極11とX放電電極13間の放電に移行する上では好ましくない。そこで、上記のようにして、アドレス放電電極17とYバス電極12の間の放電を防止することが望ましい。
【0051】
アドレスバス電極16は、横方向の画素を隔てる縦隔壁20に重なるように配置される。これにより、アドレスバス電極16とX及びYバス電極14、12との交差部分は縦隔壁20により覆われ、放電空間には露出しない。これにより、バス電極を起点とする放電の発生が防止される。なお、交差部におけるアドレスバス電極16とX及びYバス電極14、12の幅を、他の部分より狭くすると駆動容量を低減できる。
【0052】
ここで、図6を利用して、本発明の動作原理を説明する。図6の横軸は放電を行う2電極間の距離dと放電空間の放電ガス圧力pの積pd、縦軸はその際の放電開始電圧であり、パッシェンカーブと呼ばれる。放電ガスは、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)などの混合ガスである。放電ガスの組成(混合比)が一定の場合、電極間距離d又は放電ガス圧力pが変化すると、その積pdに対して放電開始電圧が変化し、図6に示すように、下に凸で、最小の放電開始電圧が存在する。この放電開始電圧が最小になる点を一般にパッシェンミニマムと呼ぶ。放電ガスの混合比は、例えばXeの分圧が高くなった場合、放電開始電圧は高くなる傾向にあるが、パッシェンミニマムにおける放電開始電圧の変化は小さい。
【0053】
一般に、AC型カラーPDPでは、前述の特許文献にも記載されているように、dは一定値で設計され、pd積はパッシェンミニマムよりも右側に設定されている。これは製造上、電極間距離dがばらついた際にも。pd積に対して電圧変化が増加又は減少の一方向になるような領域を選択するためである。pd積の一例としては、d=100μm、p=67000Pa程度が選択される。この場合、電極間距離を一定にすると、パッシェンミニマムの放電ガス圧力pは13300Pa程度になる。逆に放電ガス圧力pが67000Paとすると、電極間距離dは20μm程度になる。従って、放電ガス圧力pを67000Paとし、本実施例のように、2つの光透過性電極の対向するエッジ間の距離が0から100μmまで変化する場合、途中に放電開始電圧がパッシェンミニマムになる電極間距離が必ず存在し、低い電圧での放電が発生する。更に、放電ガス圧力pを40000Paとすると、パッシェンミニマムとなる電極間距離は概ね30μmとなるため、電極間距離を20μmから100μmの間で変化させると、放電開始電圧がパッシェンミニマムとなる電極間距離がかならず存在し、低い電圧での放電が可能になる。
【0054】
更に、製造時に電極寸法がばらついたとしても、かならずパッシェンミニマムで放電するため、セル間の放電バラツキが減少する。また、電圧が印加されてから実際に放電が起きるまでの放電遅れ時間も、電極間距離dが小さいため、小さくなる。これにより、アドレス動作に要する時間を短くできるので、維持放電の回数を増加させて輝度を高くしたり、階調数を増加させることも可能になる。
【0055】
図5に示すように、本実施例では、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向するエッジを一端で近接させ、鋭角で離間させて他端の距離を100μm程度にすることで、上述のように、各セルでかならずパッシェンミニマムで放電する。なお、ここで説明したガス圧力pと電極間距離dは一例に過ぎず、pd積がパッシェンミニマムを含む範囲に設定できればよい。例えば、放電ガス圧力pが40000Paであるならば、パッシェンミニマムになる電極間距離は30μm程度であり、電極間距離の最小は10ないし20μmであればよい。電極間距離の最大値は50μm程度でもよいが、製造時の電極間距離のバラツキを考慮すると設計値は100μm程度とすることが望ましい。なお、電極間距離の上限についての制限はなく、セル自体の寸法などで決まるものであるが、上限を小さくした方が、dがパッシェンミニマムに近くなる範囲が広がり、放電確率が高くなる。
【0056】
本実施例の隔壁の高さは、150μmから300μm程度が望ましい。背面基板にも電極(アドレス電極)を形成する従来の構造では、前面基板側の電極と背面基板側の電極とで行う放電の電圧を低くするため、隔壁の高さは150μm程度であるのが一般的である。これに対して、本発明では、背面基板側に電極を設けないので、隔壁の高さを高くすることができる。これにより、前面基板側で行われた維持放電から蛍光体層までの距離が大きいので、放電のイオンスパッタによる蛍光体の劣化を緩和でき、寿命を長くすることができる。蛍光体層は隔壁側面及び放電空間の背面基板の底面に形成されるが、隔壁が必要以上に高いと底面部の蛍光体の厚さを必要以上に厚くする必要があり、無駄が多くなる。そのため、隔壁の高さは、150μmから300μm程度が望ましい。
【0057】
PDPの各セルは、点灯・非点灯のみが選択できるだけであり、点灯輝度を変化させる、すなわち階調を表示することができない。そこで、1フレームを所定の重み付けをした複数のサブフィールドに分割し、各セル毎に1フレームで点灯するサブフィールドを組み合わせることにより階調表示を行う。各サブフィールドは、通常同じ駆動シーケンスを有する。
【0058】
前述のように、本実施例のPDP装置はALIS方式であり、X電極とY電極のすべての間に表示ラインが形成される。例えば、1番目のX電極と1番目のY電極の間に1番目の表示ラインが形成され、1番目のY電極と2番目のX電極の間に2番目の表示ラインが形成され、2番目のX電極と2番目のY電極の間に3番目の表示ラインが形成され、2番目のY電極と3番目のX電極の間に4番目の表示ラインが形成される。言い換えれば、奇数番目のX電極とY電極の間及び偶数番目のX電極とY電極の間に奇数番目の表示ラインが形成され、奇数番目のY電極と偶数番目のX電極の間及び偶数番目のY電極と奇数番目のX電極の間に偶数番目の表示ラインが形成される。1表示フィールドを奇数フィールドと偶数フィールドに分け、奇数フィールドでは、奇数番目の表示ラインを表示し、偶数フィールドでは偶数番目の表示ラインを表示する。奇数フィールドと偶数フィールドは、それぞれ複数のサブフィールドで構成される。
【0059】
図7と図8は、本実施例のPDP装置の1サブフィールドの駆動波形を示す図であり、図7は奇数フィールドの駆動波形を示し、図8は偶数フィールドの駆動波形を示し、奇数番目のX電極(X1)、奇数番目のY電極(Y1)、偶数番目のX電極(X2)、偶数番目のY電極(Y2)、及びアドレス電極(A)に印加する駆動波形を示す。まず、奇数フィールドについて説明する。
【0060】
X電極に印加する駆動波形は、全セルで微弱な放電を繰返し起こしてセル内に壁電荷を形成するリセットパルス41、残留壁電荷量を調整する補償電圧42、表示ラインを選択する選択パルス43と44、維持パルス45、46、48、49、及び消去パルス47からなる。
【0061】
Y電極に印加する駆動波形は、全セルで微弱な放電を繰返し起こしてセル内に壁電荷を形成するリセット鈍波51、残留壁電荷量を調整する補償鈍波52、発光させるセルを選択する時にY電極に印加するスキャンパルス53、54、発光しないセルの壁電荷極性を弱い放電で反転させる調整パルス55、維持放電を繰返し発生させる維持パルス56、57、59、60、及び消去パルス58からなる。
【0062】
アドレス電極に印加する駆動波形はアドレスパルス61からなる。
【0063】
リセット期間の最初では、Y電極に印加されるリセット鈍波51とX電極に印加されるリセットパルス41により、X放電電極13とY放電電極11の間に電位差を生じ、全セルで放電が発生する。ここで印加されるのは、電圧が徐々に変化するリセット鈍波51であるため、微弱な放電と電荷形成を繰返し、全セル一様に壁電荷を形成する。形成された壁電荷の極性は、X放電電極近傍が正極性、Y放電電極近傍が負極性であり、アドレス放電電極近傍にも正極性の電荷が形成される。背面基板2側にアドレス電極が形成される従来の3電極型構造のパネルでは、前面基板に配置された電極に印加する電圧で背面基板側の電荷を制御するため、高いリセット電圧を要するが、本実施例のPDPでは、前面基板側の電荷を制御するだけなので、リセット電圧を低くすることができる。
【0064】
次に、Y電極に印加される補償鈍波52とX電極に印加される補償電圧42により、リセットにより形成された壁電荷とは逆極性の電圧が鈍波で印加されるため、微弱な放電により、セル内の壁電荷が減少する。
【0065】
次のアドレス期間は前半部と後半部に分かれる。前半部では、奇数番目のX電極X1に選択パルス43を印加し、偶数番目のX電極X2及びY電極Y2には0Vを印加した状態で、奇数番目のY電極Y1に印加位置を順次変えながらスキャンパルス53を印加する。スキャンパルス53は、奇数番目のすべてのY電極Y1に負電圧を印加した状態で、更に絶対値の大きな負極性のパルスを印加位置を順次変えながら印加されるパルスである。このスキャンパルス53の印加と同期して、アドレス放電電極にはアドレスパルスが印加される。アドレスパルス61は、スキャンパルスの印加されたY電極との交点に対応するセルを点灯する場合には印加され、点灯させない場合には印加されない。この時、リセット期間に形成された壁電荷の極性とY及びアドレスの各電極に印加されるパルスの極性は一致しており、この壁電荷により印加電圧を低くできる。これにより、選択パルス43、スキャンパルス53及びアドレスパルス61が同時に印加されたセルではY−A電極間の放電とX−Y電極間の放電が発生する。このとき、Y−A電極間の放電はX−Y電極間の放電を起こすきっかけの放電であり、放電が発生することだけが必要条件である。このため、パッシェンミニマムでの放電を最も効果的に利用できる。一方、X−Y電極間の放電は壁電荷の形成が目的であり、放電を起こすと共に充分な壁電荷を形成する電圧が必要である。この放電で、X放電電極近傍には負極性の壁電荷、Y放電電極の近傍には正極性の壁電荷が形成される。言い換えれば、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間の表示ラインでの点灯セルの選択が行われる。このように、アドレス放電により形成される電荷の極性は、前述のリセット放電の際に形成された電荷とは逆極性である。なお、選択パルス43の印加されない偶数番目のX放電電極及びスキャンパルス53の印加されない偶数番目のY放電電極近傍では、リセット期間終了時の壁電荷が維持される。
【0066】
アドレス期間の後半部では、偶数番目のX電極X2に選択パルス44を印加し、奇数番目のX電極X1及びY電極Y1には0Vを印加した状態で、偶数番目のY電極Y2に印加位置を順次変えながらスキャンパルス54を印加し、アドレスパルス61をアドレス電極に印加する。これにより、上記と同様に、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間の表示ラインでの点灯セルの選択が行われる。従って、アドレス期間の前半部と後半部で、奇数番目の表示ラインの点灯セルでアドレス放電が発生し、点灯セルの選択が行われたことになる。
【0067】
アドレス期間の最後には、Y電極にのみ負極性の電荷調整パルス55を印加する。アドレス放電が発生したセルではY放電電極11近傍に正の電荷が形成されており、電荷調整パルスの電圧を減少させる方向に作用するので、放電は発生しない。一方、アドレス放電の発生しなかったセルでは、Y放電電極11近傍には負の電荷が形成されており、電荷調整パルスの電圧に加算されて放電が発生する。なお、この時、X電極及びアドレス電極には電圧は印加されておらず、電極間の電位は小さいため、放電は遅れも大きく、強度も小さい。このため、電荷調整パルスは20μs以上の長さを必要とし、放電後に形成される電荷も少ないので、アドレス放電の行われなかったセルでは、次の維持パルスでは放電しない。
【0068】
維持放電期間では、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に同相の維持放電パルス45、46、59、60を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に同相の維持放電パルス48、49、56、57を印加する。維持放電パルス45、46、59、60は、維持放電パルス48、49、56、57と逆相である。従って、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間、及び偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間には、維持パルスによる大きな絶対値の電圧が印加され、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間、及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1との間には、維持パルスによる電圧は印加されない。言い換えれば、奇数表示ラインには維持パルス電圧が印加され、偶数表示ラインには維持パルス電圧は印加されない。
【0069】
維持放電期間の最初には、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に負極性の維持放電パルス45、59を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に正極性の維持放電パルス48、56を印加する。アドレス放電が行われたセルでは、X放電電極近傍に負極性の壁電荷が、Y放電電極近傍に正極性の壁電荷が形成されており、これらの壁電荷は、奇数番目のX電極X1に印加される維持パルス45と奇数番目のY電極Y1に印加される維持パルス56による電位差を大きくするので、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生する。一方、これらの壁電荷は、偶数番目のX電極X2に印加される維持パルス48と偶数番目のY電極Y2に印加される維持パルス59による電位差を小さくするので、最初の維持パルスに対しては、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間で維持放電は発生しない。奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で発生した維持放電により、壁電荷が反転し、奇数番目のX放電電極X1近傍に正極性の壁電荷が、奇数番目のY放電電極Y1近傍に負極性の壁電荷が形成される。
【0070】
次に、維持パルスは反転して、奇数番目のX電極X1と偶数番目のY電極Y2に正極性の維持放電パルス46、60を、偶数番目のX電極X2と奇数番目のY電極Y1に負極性の維持放電パルス49、57を印加する。偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間でアドレス放電が行われたセルでは、最初の維持放電は発生しないので、アドレス期間終了時の壁電荷が維持されており、この壁電荷は、偶数番目のX電極X2に印加される維持パルス49と偶数番目のY電極Y2に印加される維持パルス60による電位差を大きくするので、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2の間で維持放電が発生する。更に、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生したセルでは、奇数番目のX放電電極X1近傍に負極性の壁電荷が、奇数番目のY放電電極Y1近傍に正極性の壁電荷が形成されているので、奇数番目のX電極X1に印加される維持パルス46と奇数番目のY電極Y1に印加される維持パルス57による電位差を大きくするので、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1の間で維持放電が発生する。これらの維持放電により、壁電荷の極性は逆転する。従って、極性を反転しながら維持パルスを繰返し印加することにより、維持放電が続く。
【0071】
維持放電パルスの回数は、サブフィールドの輝度の重み付けに応じて決められており、輝度の重み付けの大きなサブフィールドほど維持放電期間が長い。
【0072】
サブフィールドの最後には、消去パルス47、58により維持放電が行われた点灯セルで消去放電を発生させて、維持放電で形成された壁電荷を減少させる。この時、維持放電が発生しなかったセルでは壁電荷が少ないため、放電は発生しない。
【0073】
以上、奇数フィールドの各サブフィールドにおける駆動波形と動作を説明した。上記のように、奇数フィールドでは、奇数番目の表示ラインが点灯して表示が行われる。
【0074】
偶数フィールドでは、図8に示すように、リセット期間には、奇数フィールドと同じパルスが各電極に印加される。アドレス期間の前半部では、偶数X電極X2に選択パルス43を印加し、奇数X電極X1と偶数Y電極Y2に0Vを印加した状態で、奇数番目のY電極Y1に印加位置を順次変えながらスキャンパルス53を印加する。また、アドレス期間の後半部では、奇数X電極X1に選択パルス43を印加し、偶数X電極X2と奇数Y電極Y1に0Vを印加した状態で、偶数番目のY電極Y2に印加位置を順次変えながらスキャンパルス54を印加する。これにより、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1の間の表示ライン、すなわち偶数番目の表示ラインの点灯セルでアドレス放電が発生し、点灯セルの選択が行われる。
【0075】
維持放電期間には、奇数番目のX電極X1と奇数番目のY電極Y1に同相の維持放電パルス65、66、56、57を、偶数番目のX電極X2と偶数番目のY電極Y2に同相の維持放電パルス67、68、59、60を印加する。維持放電パルス65、66、56、57は、維持放電パルス67、68、59、60と逆相である。従って、奇数番目のY電極Y1と偶数番目のX電極X2の間、及び偶数番目のY電極Y2と奇数番目のX電極X1の間には、維持パルスによる大きな絶対値の電圧が印加される。これにより、偶数番目の表示ラインで維持放電が発生する。
【0076】
以上本発明の第1実施例のPDP装置について説明したが、第1実施例のPDPには各種の変形例が可能であり、以下変形例について説明する。
【0077】
カラープラズマディスプレイの場合、赤(r)、緑(g)及び青(b)の蛍光体21、22、23を列毎に順に設ける。上記のように蛍光体は、隔壁(リブ)20の底面及び側面に塗布されるが、色毎に塗り特性がことなるため、第1の基板の表面の保護層19から蛍光体21、22、23の表面までの距離が異なり、放電特性に影響する。特にアドレス放電電極17はリブ20に近い位置に形成されるため、Y放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電特性が影響を受ける。本発明では、Y放電電極11とアドレス放電電極間の間隔が変化し、変化範囲内にパッシェンミニマムの条件が存在するようにする。しかし、上記のように、色毎にY放電電極11とアドレス放電電極17の間の放電特性が異なり、間隔の変化に対するパッシェンカーブが異なる。
【0078】
図9は、R、G及びBの色毎にY放電電極11とアドレス放電電極17の間隔の変化状態を変えて、各色毎にパッシェンミニマムに対して適した変化範囲を設定した変形例を示す。図9の電極形状は、図5の電極形状と類似の形状であるが、各セルの電極形状が、色毎にアドレス放電電極17の形状が異なり、他は同じである。赤(r)のセルのアドレス放電電極17rは、Y放電電極11との間隔がゼロからdrまで変化し、緑(g)のセルのアドレス放電電極17gは、Y放電電極11との間隔がゼロからdgまで変化し、青(b)のセルのアドレス放電電極17bは、Y放電電極11との間隔がゼロからdbまで変化する。ここでは、dr>db>dgである。
【0079】
なお、図9の変形例では、Y放電電極とアドレス放電電極の最小間隔がすべての色でゼロであり、色毎に最大間隔が異なるようにしたが、例えば、最小間隔と最大間隔の両方が異なるようにすることも可能である。
【0080】
図10は、電極形状の他の変形例を示す図である。この変形例では、X放電電極13は、Y放電電極11のエッジと平行なエッジを有するが、形状は長方形で、Y放電電極11の形状と異なる。更に、アドレス放電電極は設けられておらず、Y放電電極11は、アドレスバス電極16との間で放電を発生する。図示のように、隔壁(リブ)20は、アドレスバス電極16の右側半分に重なるように設けられ、Yバス電極12及びXバス電極14との交差部分のみアドレスバス電極16の全幅に重なるように幅が広くなっている。Y放電電極11は図5に類似した形状を有し、アドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化する。Y放電電極11とアドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化する部分では、アドレスバス電極16は隔壁20と重なっておらず、放電発生可能である。図5の場合と同様に、Y放電電極11とアドレスバス電極16との間の間隔がゼロからdまで変化するので、その間でパッシェンミニマムになる間隔が存在する。
【0081】
隣接するアドレスバス電極16は、隔壁20と重なっている上、Y放電電極11との間隔d1は、Y放電電極11とアドレスバス電極16の最大間隔dより大きいので、Y放電電極11と隣接するアドレスバス電極16との間で放電が発生することはない。
また、図5のアドレス放電電極17をアドレスバス電極16と同じプロセスで作られる金属層で形成することも可能である。この場合、アドレス放電電極17の突出量を小さくして、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向部分が隔壁20の近くになるようにする。これにより、アドレス放電電極17が遮光性の金属層でも、光量の低下を小さくできる。
【0082】
第1実施例では、本発明をALIS方式のPDP装置に適用したが、本発明はALIS方式でない3電極型PDP装置にも適用可能である。本発明の第2実施例は、本発明をALIS方式でない3電極型PDP装置にも適用した実施例である。
【0083】
図11は、本発明の第2実施例のPDP装置のプラズマディスプレイパネルにおける1個のセルの構造及び電極形状を示す部分平面図である。第2実施例の電極の位置関係や形成方法は、第1実施例と同じであり、ここでは異なる点についてのみ説明する。図示のように、Yバス電極12とXバス電極14が交互に平行に配置され、Yバス電極12の一方の側からY放電電極11が突出し、Xバス電極14のY放電電極11に対向する側からX放電電極13が突出している。また、アドレスバス電極16からアドレス放電電極17が突出している。縦隔壁20はアドレスバス電極16に重なるように設けられている。横隔壁28が、Yバス電極12とXバス電極14の間のY放電電極11とX放電電極13が突出していない側の間に設けられている。縦隔壁20と横隔壁28は、2次元格子を形成する。第1実施例と同様に、Y放電電極11とX放電電極13の対向するエッジは平行で、Y放電電極11とアドレス放電電極17の対向するエッジも間隔が変化する。電極の形状などについては、第2実施例でも第1実施例と同様の変形例が可能である。
【0084】
第2実施例のPDP装置は、図11のような構造及び電極形状を有するプラズマディスプレイパネルを使用する。駆動回路及び駆動波形は従来の技術で実現できる。参考として、図12に第2実施例における駆動波形の例を示す。
【0085】
図13は、第2実施例の背面基板の構成例を示す図である。第1実施例では、隔壁は縦隔壁20のみを設けたが、第2実施例では、隔壁は縦隔壁20と横隔壁28を有する2次元格子状である。この背面基板は、サンドブラスト法などにより、背面基板2に放電空間25と排気空間26を直接彫り込んで形成する。排気孔27は、排気空間26から背面基板2の側面を貫通し、前面基板1を貼り合せた後、排気及び放電ガス封入を行うための穴で、1乃至数個設けられる。背面基板2の表面は前面基板1の表面にほぼ接触するので、図3及び図4に示すようにシール材24を高くする必要がなく、材料選択の幅を広げることができる。なお、縦隔壁と横隔壁の交差部の幅を他の部分より大きくすると、バス電極間の放電をより確実に防止できる。
【0086】
以上、本発明の第1、第2実施例及び変形例を説明したが、ある例で説明した形状は他の例にも適用可能である。
【0087】
(付記1)
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極、及び前記第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。(1)
(付記2)
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。(2)
(付記3)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2の基板上に設けられ、前記第3電極の一方のエッジに重なり、他方のエッジには少なくとも一部が重ならないように配置される隔壁を備え、
前記第3電極の前記隔壁と重ならないエッジと前記第2放電電極のエッジの間隔が変化する付記2に記載のプラズマディスプレイパネル。(3)
(付記4)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの間隔は、前記第1放電電極に近い側が狭い付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(4)
(付記5)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と隣接するセルの前記第3バス電極との間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(5)
(付記6)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第3放電電極が前記第2バス電極と対向する間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い付記1に記載のプラズマディスプレイパネル。(6)
(付記7)
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2バス電極と前記第3バス電極が交差する部分には、隔壁が設けられている付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(7)
(付記8)
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略同一形状で、略同一面積である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(8)
(付記9)
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略線対称である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(9)
(付記10)
当該プラズマディスプレイパネルは、カラー表示用3原色のセルで構成され、各色のセルで、前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの間隔及び間隔の変化が異なる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。(10)
(付記11)
前記第3放電電極と前記第3バス電極は同一プロセスで作られる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記12)
前記第1及び第2放電電極は、光を透過する透明電極である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記13)
前記第3放電電極は、光を透過する透明電極である付記1に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記14)
前記第1及び第2電極を覆う前記誘電体層は、気相成膜法により形成した誘電体層である付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記15)
前記第1バス電極の両側に前記第1放電電極が設けられ、前記第2バス電極の両側に前記第2放電電極が設けられる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記16)
前記第1放電電極は、各第1バス電極の一方の側に設けられ、
前記第2放電電極は、各第2バス電極の一方の側の前記第1放電電極が設けられている側に設けられる付記1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
(付記17)
付記1から16のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルと、
前記複数のセルに設けられた各第1電極に電圧を印加する第1駆動回路と、
前記複数のセルに設けられた各第2電極に電圧を印加する第2駆動回路と、
前記複数のセルに設けられた各第3電極に電圧を印加する第3駆動回路とを備え、
前記第2駆動回路は、前記各第2電極にスキャンパルスを順次印加し、前記第3駆動回路は、前記スキャンパルスに同期して前記各第3電極にアドレスパルスを印加し、前記スキャンパルスが印加された前記第2電極と前記アドレスパルスが印加された前記第3電極の交点のセルでアドレス放電を発生させて点灯するセルを選択し、
前記第1駆動回路及び前記第2駆動回路は、前記第1電極及び前記第2電極に維持パルスを交互に印加して、前記選択した点灯セルで繰返し維持放電を発生させて点灯させることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、各セルの放電開始電圧を均一にできるので、放電開始電圧を低く設定でき、回路コストを低減できる。また、パネルの構造を簡単にでき、製造の歩留まりも低下しないので、製造コストを低減できる。これにより、表示品質の良好なPDP装置を、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施例のPDP装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施例のPDPの分解斜視図である。
【図3】第1実施例のPDPの断面図(縦方向)である。
【図4】第1実施例のPDPの断面図(横方向)である。
【図5】第1実施例の電極形状を示す図である。
【図6】パッシェンカーブを示す図である。
【図7】第1実施例のPDP装置の駆動波形(奇数フィールド)を示す図である。
【図8】第1実施例のPDP装置の駆動波形(偶数フィールド)を示す図である。
【図9】電極形状の変形例を示す図である。
【図10】電極形状の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施例の電極形状を示す図である。
【図12】第3実施例のPDP装置の駆動波形(奇数フィールド)を示す図である。
【図13】背面基板の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 前面基板
2 背面基板
11 第2(Y)放電電極
12 第2(Y)バス電極
13 第1(X)放電電極
14 第1(X)バス電極
15 第1誘電体層
16 第3(アドレス)バス電極
17 第3(アドレス)放電電極
20 縦隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極、及び前記第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2の基板上に設けられ、前記第3電極の一方のエッジに重なり、他方のエッジには少なくとも一部が重ならないように配置される隔壁を備え、
前記第3電極の前記隔壁と重ならないエッジと前記第2放電電極のエッジの間隔が変化する請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの間隔は、前記第1放電電極に近い側が狭い請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と隣接するセルの前記第3バス電極との間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第3放電電極が前記第2バス電極と対向する間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2バス電極と前記第3バス電極が交差する部分には、隔壁が設けられている請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略同一形状で、略同一面積である請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略線対称である請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
当該プラズマディスプレイパネルは、カラー表示用3原色のセルで構成され、各色のセルで、前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの間隔及び間隔の変化が異なる請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3バス電極、及び前記第3バス電極に接続されるように設けられた第3放電電極よりなる第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
第1の基板と、前記第1の基板に対向するように配置され、前記第1の基板との間に放電ガスが封入された放電空間を形成する第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、
第1バス電極、及び前記第1バス電極に接続されるように設けられた第1放電電極よりなる第1電極と、
第2バス電極、及び前記第2バス電極に接続されるように設けられた第2放電電極よりなる第2電極と、
前記第1及び第2電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられ、前記第1及び第2バス電極の伸びる方向に略垂直な方向に前記第1及び第2バス電極と交差するように伸びた第3電極とを備え、
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3電極は、対向する間隔が変化するエッジを備え、前記第1放電電極と前記第2放電電極は、対向する間隔が略一定のエッジを備えてなるプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2の基板上に設けられ、前記第3電極の一方のエッジに重なり、他方のエッジには少なくとも一部が重ならないように配置される隔壁を備え、
前記第3電極の前記隔壁と重ならないエッジと前記第2放電電極のエッジの間隔が変化する請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの間隔は、前記第1放電電極に近い側が狭い請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と隣接するセルの前記第3バス電極との間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極又は第3電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第3放電電極が前記第2バス電極と対向する間隔は、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの最大間隔より広い請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2バス電極と前記第3バス電極が交差する部分には、隔壁が設けられている請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略同一形状で、略同一面積である請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記第1放電電極と前記第2放電電極は、略線対称である請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
当該プラズマディスプレイパネルは、カラー表示用3原色のセルで構成され、各色のセルで、前記第1及び第2の基板に垂直な方向から見た時に、前記第2放電電極と前記第3放電電極の対向する前記エッジの間隔及び間隔の変化が異なる請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−48994(P2006−48994A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225550(P2004−225550)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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