説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】隔壁のチッピングによる放電セルの不灯を低減し、もって、良好な画像表示が可能な、大画面、高精細のPDPを実現することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために本発明は、前面板22側に形成した隔壁11を挟んで、間に放電空間14が形成されるように背面板23と対向配置して構成され、蛍光体層12R、12G、12Bが、背面基板23側の、隔壁11とは当接しない領域に塗布されているプラズマディスプレイパネル20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型表示装置の中でもPDPは、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチ以上のテレビジョン受像機や大型公衆表示装置等が製品化されている。
【0003】
図3に従来のPDPの概略構造を、断面斜視図で示す。このPDP120は、前面板122と背面板123とを貼り合わせた構成であり、前面板122は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板101と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極102a、103aと金属バス電極102b、103bとで構成される、走査電極102および維持電極103からなる表示電極104と、この表示電極104の間に設けられた遮光層105としてのブラックストライプと、表示電極104と遮光層105とを覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層106と、この誘電体層106上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層107とで構成されている。
【0004】
一方、背面板123は、ガラス基板108と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極110と、アドレス電極110を覆う下地誘電体層109と、下地誘電体層109上に形成された隔壁111と、各隔壁111間の、隔壁111表面と下地誘電体層109の表面とに形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層112R、112G、112Bと、で構成されている。
【0005】
そして前面板122と背面板123とを、間に放電空間114が形成されるように対向配置するとともに、その周囲を封着材により貼り合わせて封着しており、放電空間114には放電ガス(Ne−Xeの場合400Torr〜600Torrの圧力)が封入されている。
【0006】
そして、表示電極104とアドレス電極110とが交差し、隔壁111により仕切られた放電空間114が放電セルとして動作し、表示電極104とアドレス電極110とに電圧を選択的に印加することによって放電を発生させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層112R、112G、112Bを励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−131580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4は、上述した構成における放電セル部分の概略構成を示す断面図である。上述した構成においては、保護層107の表面に隔壁111の頂部が接触されており、PDP120の撓み・振動など、隔壁111の頂部と保護層107とが擦れあうことで、隔壁111の頂部にチッピングを引き起こす場合がある。
【0008】
図5に、放電セル部分においてチッピングが発生した際の状況を模式的に断面図で示す。隔壁111の頂部にチッピング111aが発生すると、隔壁111自身から「欠け111b」が発生するのに加え、隔壁111の表面に塗布・形成されている蛍光体層112R、112G、112Bからも「欠け112a」が発生し、これらが保護層107の表面に付着してしまう。
【0009】
保護層107の表面にこれら「欠け111b、112a」が存在すると、表示電極で行われる維持放電に対して邪魔となり、結果、放電セルでの不灯が発生するという事態に至る場合がある。
【0010】
特に、蛍光体層112R、112G、112Bの「欠け112a」は、蛍光体層112R、112G、112Bが粉体層であることから、粉体の状態でが保護層107の表面に広範囲に散らばってしまうこととなるため、維持放電に対する影響度合いが大きくなってしまう。
【0011】
また、PDPの大型化に伴って、製造工程時、搬送時などでのPDPの撓み・振動の程度は大きくなっており、更には表示画像の高精細化に伴い放電セルの不灯の発生は重大な課題となっている。
【0012】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、隔壁のチッピングによる放電セルの不灯を低減し、もって、良好な画像表示が可能な、大画面、高精細のPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明のプラズマディスプレイパネルは、前面板側に設けた隔壁を挟んで、間に放電空間が形成されるように背面板と対向配置した構成のプラズマディスプレイパネルであって、蛍光体層が、背面基板側の、隔壁とは当接しない領域に塗布されているというものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、隔壁のチッピングによる放電セルの不灯を低減することができ、もって、良好な画像表示が可能な、大画面、高精細のPDPを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて図面を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態によるPDPの概略構成を示す断面斜視図であり、PDP20は、前面板22と背面板23とを貼り合わせた構成である。
【0017】
前面板22は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板1と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極2a、3aと金属バス電極2b、3bとで構成される、走査電極2および維持電極3からなる表示電極4と、この表示電極4の間に設けられた遮光層5としてのブラックストライプと、表示電極4と遮光層5とを覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層6と、この誘電体層6上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層7と、この保護層7上に形成された隔壁11とを備える。
【0018】
ここで、誘電体層6上に隔壁11を形成し、隔壁11と隔壁11との間の誘電体層6上に保護層7を形成した構成であってもかまわない。
【0019】
一方、背面板23は、ガラス基板8と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極10と、アドレス電極10を覆う下地誘電体層9と、下地誘電体層9上に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層12R、12G、12Bとを備える。なお、蛍光体層12R、12G、12Bは、前面板22に形成した隔壁11が下地誘電体層9に当接しない領域に塗布されている。
【0020】
そして前面板22と背面板23とを、間に放電空間14が形成されるように対向配置するとともに、その周囲を封着材により貼り合わせて封着しており、放電空間14には放電ガス(Ne−Xeの場合400Torr〜600Torrの圧力)が封入されている。
【0021】
そして、表示電極4とアドレス電極10とが交差し、隔壁11により仕切られた放電空間14が放電セルとして動作し、表示電極4とアドレス電極10とに電圧を選択的に印加することによって放電を発生させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層12R、12G、12Bを励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0022】
図1では前面板22と背面板23とを離して描いているが、実際には、隔壁11と下地誘電体層9とが当接する構成である。
【0023】
図2に本発明一実施の形態によるPDPの放電セル部分の概略構成を断面図で示す。図2に示すように、隔壁11の頂部は、前面板22の保護膜7が形成されている面に対向する背面板23の下地誘電体層9に当接する構成であることから、隔壁11が下地誘電体層9と擦れることで隔壁11にチッピングが発生し、隔壁11から「欠け」が発生しても、保護層7に放電空間14を介して対向・離反した領域で発生するものであり、保護層7の表面に付着することは大幅に抑制される。
【0024】
さらに、蛍光体層12R、12G、12Bは隔壁11の表面には形成されておらず、分離した構造であるので、隔壁11にチッピングが発生した場合、隔壁11から「欠け」が発生しても、同時に蛍光体層12R、12G、12Bから「欠け」が発生してしまうということは大幅に抑制される。
【0025】
すなわち、本発明の構成によれば、隔壁11にチッピングが発生しても、隔壁11から発生する「欠け」が保護層7表面に付着してしまうこと、および、その拡散範囲が大きく、放電セル不灯に対する影響度合いが大きい蛍光体層12R、12G、12Bから「欠け」が発生することも大幅に抑制されると同時に、たとえ蛍光体層12R、12G、12Bから「欠け」が発生してしまったとしても、同じく、保護層7に放電空間14を介して対向・離反した領域で発生するものであり、保護層7の表面に付着することは大幅に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように本発明は、大画面、高精細のプラズマディスプレイパネルを提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す断面斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの放電セル部分の概略構成を示す断面図
【図3】従来のプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す断面斜視図
【図4】従来のプラズマディスプレイパネルの放電セル部分の概略構成を示す断面図
【図5】放電セル部分においてチッピングが発生した際の状況を模式的に示す断面図
【符号の説明】
【0028】
1 前面ガラス基板
2 走査電極
2a、3a 透明電極
2b、3b 金属バス電極
3 維持電極
4 表示電極
5 遮光層
6 誘電体層
7 保護層
8 背面ガラス基板
9 下地誘電体層
10 アドレス電極
11 隔壁
12R、12G、12B 蛍光体層
14 放電空間
20 プラズマディスプレイパネル(PDP)
22 前面板
23 背面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板側に設けた隔壁を挟んで、間に放電空間が形成されるように背面板と対向配置した構成のプラズマディスプレイパネルであって、
蛍光体層が、背面基板側の、隔壁とは当接しない領域に塗布されているプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−199726(P2009−199726A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36814(P2008−36814)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】