説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去し、保護層や蛍光体の劣化を抑制した信頼性の高いPDPを提供する。
【解決手段】複数の表示電極対14と誘電体層15と保護層16とが形成された前面基板11と、複数のデータ電極18と下地誘電体層19と隔壁22と蛍光体層23とが形成された背面基板17とを有し、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように前面基板11と背面基板17とを対向配置して周囲を封着したPDPであって、PDP内部に単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面で薄型軽量を実現できるカラー表示デバイスとしてプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略記する)が注目されている。
【0003】
PDPとして代表的な交流面放電型PDPは、対向配置された前面基板と背面基板との間に多数の放電セルが形成されている。前面基板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対がガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面基板は、ガラス基板上に複数の互いに平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上に井桁状の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。
【0004】
そして、表示電極対とデータ電極とが交差するように前面基板と背面基板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のPDPの各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。PDPを駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。
【0005】
PDPは、前面基板作製工程、背面基板作製工程、封着工程、排気工程、放電ガス供給工程の各工程を経て製造される。ここで封着工程は、前面基板作製工程で作成した前面基板と背面基板作製工程で作成した背面基板とを貼り合わせる工程であり、排気工程はPDP内部の空間からガスを排気する工程である。封着工程ではフリットを用いて前面基板と背面基板とを貼り合わせるため、それらを重ね合わせてフリットの軟化点温度以上、例えば440℃〜500℃程度で焼成する。
【0006】
このような封着工程において、フリットなどから、水(HO)、一酸化炭素(CO)、炭酸ガス(CO)、炭化水素(C)などの不純ガスが排出され、これらの不純ガスの一部がPDPの内部に吸着される。また、続く排気工程では、PDPの内部空間を排気するが、PDPの内部に吸着された不純ガスを完全に排気することが難しく、PDPの内部にある程度の不純ガスが残留する。
【0007】
保護層や蛍光体などはこれらの不純ガスと反応し、その特性が劣化することが知られている。特に、水(HO)は、保護層に影響を及ぼして放電セルの放電開始電圧を低下させ、表示画面に「にじみ」状の画質劣化を発生させる。また、長時間にわたり静止画像を表示するとその画像が残像となる「焼きつき」を発生させる。また炭化水素は、蛍光体の表面を還元し、蛍光体の発光輝度を低下させる。
【0008】
そのため、PDPの内部に残留する不純ガス、特に水や炭化水素を低減し、放電特性を安定させ、経時変化を抑制して信頼性を高めることが重要である。これら不純ガスを除去する方法として、例えば特許文献1には、結晶性アルミノケイ酸塩(xMO・yMO・yAl・zSiO・nHO)、γ活性アルミナ(γ−Al)または非晶質活性シリカ(SiO)などの吸着剤をPDP内部に配置して水を除去する例が開示されている。また特許文献2には、PDP内部の画像表示領域以外に酸化マグネシウム膜を設けて、水を除去する例が開示されている。
【0009】
さらに特許文献3には、アルミナ(Al)、酸化イットリウム(Y)、酸化ランタニウム(La)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO)、酸化クロム(CrO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化鉄(Fe)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化チタン(TiO)などの酸化物や、これらの酸化物に炭化水素の分解触媒である白金族元素を添加した吸着剤をPDP内部の画像表示領域以外に配置して炭化水素を除去する例が開示されている。また特許文献4には、ジルコン(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)などの金属ゲッタをPDP内部の隔壁上に設けて有機溶媒成分を吸着する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−303555号公報
【特許文献2】特開平5−342991号公報
【特許文献3】国際公開第2005/088668号
【特許文献4】特開2002−531918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、近年のPDPの大画面化および高精細化にともない、不純ガスの残留量が増加する。そのため、上記の従来例では、水や炭化水素、有機溶媒などの不純ガスを十分に除去することが難しく、保護層や蛍光体が劣化するといった課題を有していた。
【0012】
本発明はこれらの課題を解決して、水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去し、保護層や蛍光体の劣化を抑制した信頼性の高いPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明のPDPは、互いに平行な複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板と、互いに平行な複数のデータ電極と下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、表示電極対とデータ電極とが交差するように前面基板と背面基板とを対向配置して周囲を封着したPDPであって、PDP内部に単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を配置したことを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、PDP内部に配置された単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料は酸化されにくく安定した水素吸蔵性能を実現し、水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去して、保護層や蛍光体の劣化を抑制した信頼性の高いPDPを実現できる。
【0015】
さらに、水素吸蔵性材料が単結晶パラジウムであってもよい。このような構成によれば、パラジウムが白金族元素のなかで最も水素吸蔵性能が高いため、単結晶粉体としてPDP内部に配置することで「にじみ」や「焼きつき」などの画質劣化や蛍光体の発光輝度低下を抑制したPDPを実現できる。
【0016】
さらに、水素吸蔵性材料を蛍光体層の表面または蛍光体層の内部に配置してもよい。このような構成によれば、不純ガスを多く吸着している蛍光体層自体に水素吸蔵性材料が配置されているので、不純ガスをより効率的に除去できる。
【0017】
さらに、水素吸蔵性材料を隔壁の表面または隔壁の内部に配置してもよい。このような構成によれば、水素吸蔵性材料が可視光の発光を妨げずに不純ガスを除去することができる。
【0018】
さらに水素吸蔵性材料を保護層の表面に内部に配置してもよい。このような構成によれば、保護層は平面であるので水素吸蔵性材料を均一に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のPDPによれば、水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去し、保護層や蛍光体の劣化を抑制した信頼性の高いPDPを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】実施の形態1におけるPDPの電極配列を示す図である。
【図4】実施の形態1における他の実施例のPDPの断面図である。
【図5】熱重量分析の結果を示す図である。
【図6】実施の形態2におけるPDPの断面図である。
【図7】実施の形態3におけるPDPの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1におけるPDPの構造を示す分解斜視図、図2は図1のA−A線断面図である。図1、図2に示すように、PDP10は、前面基板11と背面基板17とから構成されている。
【0023】
図1、図2において、ガラス製の前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とで対をなす表示電極対14が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極12および維持電極13は、走査電極12−維持電極13−維持電極13−走査電極12の配列で繰り返すパターンで形成されている。走査電極12は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極12aの上に、導電性を高めるために銀(Ag)などの金属を含む幅の狭いバス電極12bを積層して形成されている。維持電極13も同様に、幅の広い透明電極13aの上に幅の狭いバス電極13bを積層して形成されている。
【0024】
さらに、表示電極対14を覆うように誘電体層15および酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層16が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。保護層16は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層15をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0025】
ガラス製の背面基板17上には、銀(Ag)などを主成分とする導電性の高い材料からなる互いに平行な複数のデータ電極18が形成され、データ電極18を覆うように下地誘電体層19が形成されている。下地誘電体層19は、誘電体層15と同様の酸化ビスマス(Bi)系低融点ガラスなどであってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO)粒子を混合した材料であってもよい。
【0026】
下地誘電体層19上には井桁状の隔壁22が形成され、下地誘電体層19の表面と隔壁22の側面とには、赤色、緑色、青色に発光する蛍光体層23が形成されている。隔壁22は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。蛍光体層23は、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Euを、緑色蛍光体としてZnSiO:Mnを、赤色蛍光体として(Y、Gd)BO:Euなどをそれぞれ用いて約15μmの膜厚に形成されている。
【0027】
図2に示すように、蛍光体層23の表面には、粒径が0.1μm〜20μmの単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21が分散して配置されている。水素吸蔵性材料21の詳細については後述する。
【0028】
前面基板11と背面基板17は、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように、対向配置され、その外周部をフリットなどの封着材(図示せず)によって封着され内部に放電空間が形成されている。放電空間にはキセノン(Xe)などを含む放電ガスが約6×10Paの圧力で封入されている。放電空間は隔壁22によって複数の区画に仕切られており、表示電極対14とデータ電極18とが交差する部分に放電セル24が形成されている。そしてこれらの放電セル24が放電、発光することにより画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁22の形状がストライプ状であってもよい。
【0029】
図3は実施の形態1におけるPDP10の電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極Y1、Y2、Y3・・・Yn(図1の走査電極12)およびn本の維持電極X1、X2、X3・・・Xn(図1の維持電極13)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極A1・・・Am(図1のデータ電極18)が配列されている。そして、1対の走査電極Y1および維持電極X1と1つのデータ電極A1とが交差した部分に放電セル24が形成され、放電セル24は放電空間内にm×n個形成されている。そしてこれらの電極のそれぞれは、前面基板11、背面基板17の画像表示領域外の周辺端部に設けられた接続端子それぞれに接続されている。
【0030】
PDP10を駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では各放電セル24で初期化放電を発生させて、それに続く書込み放電に必要な壁電荷を形成する。書込み期間では、表示を行うべき放電セル24で選択的に書込み放電を発生させて、それに続く維持放電に必要な壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極12および維持電極13に交互に維持パルスを印加して、書込み放電を起こした放電セル24で維持放電を発生させ、対応する放電セル24の蛍光体層23を発光させることにより画像表示を行う。
【0031】
次に、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21について説明する。従来、水や炭化水素を除去するために金属ゲッタや酸化物ゲッタを使用していたが、これら不純ガスの分子径が大きいためゲッタの内部まで十分に浸透せず、不純ガスの吸着量に限界があった。
【0032】
本発明者らは、PDP10の放電により、保護層16、隔壁22、蛍光体層23などから放出される水分子や炭化水素分子などの不純ガスが、水素原子、酸素原子、炭素原子に分解されることに注目した。そして白金族元素が、水素を大量に吸蔵する水素吸蔵性材料であることに着目し、水素原子を白金族元素に吸蔵させることで、水や炭化水素を除去できることを見出した。さらに、これら白金族元素は、結晶状態の違いにより水素を吸蔵する能力に差があることを見出した。
【0033】
まず、白金族元素を用いて以下のような実験を行った。白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミニウム(Os)、パラジウム(Pd)など単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を粉体化してそれぞれを有機バインダーと混練し、スプレー法などを用いて図2に示すように蛍光体層23の表面に分散塗布したPDP10を作成した。また比較例として、単結晶白金族元素の代わりに多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を用いて同様の方法でPDPを作成した。
【0034】
このようにして作成したPDP10を用いて画像を表示させ、およそ1000時間の間、表示面での「にじみ」および「焼きつき」の有無を目視で確認した。その結果、全てのPDP10で「にじみ」や「焼きつき」による画質劣化が従来のPDP10より軽減することを確認した。
【0035】
白金族元素のなかではパラジウムを用いたものが最も効果が大きかった。これはパラジウムが、水分子や炭化水素分子が分解されて発生した水素原子を最もよく吸収する能力があるためと考えられる。また同じ白金族元素からなる水素吸蔵性材料であっても多結晶白金族元素よりも単結晶白金族元素を用いた場合に、より効果が大きいことが分かった。
【0036】
この理由は以下のように考えられる。多結晶白金族元素はPDP10の製造工程における焼成や封着などの加熱処理により酸化されて水素吸蔵性能が低下する。一方、単結晶白金族元素では加熱処理による酸化が少ないため水素吸蔵能力の低下が小さく、白金族元素の持つ水素吸蔵能力を最大限発揮させることができる。
【0037】
これを裏付けるために、粒子径、比表面積が同一の多結晶パラジウムと単結晶パラジウムについて熱重量分析(TGA)を行った。図5は熱重量分析の結果を示す図であり、横軸は加熱温度、縦軸は酸化による重量増加を示している。PDP10の焼成や封着に用いられる400℃〜600℃の加熱温度域において、単結晶パラジウムの方が加熱による酸化を抑制することができる。
【0038】
水素吸蔵性材料21に単結晶パラジウムを用いたPDP10を作成して1000時間の評価実験を行ったところ、「にじみ」や「焼きつき」などの画質劣化や蛍光体の発光輝度低下がほとんど発生しないことを確認できた。これらの実験から明らかなように、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を蛍光体層23の表面に配置すると、酸化されていない単結晶白金族元素が、放電にともなって分解された水素を安定して十分に吸蔵するため水分子や炭化水素分子を大幅に減少させることができる。これにより保護層16や蛍光体の劣化を抑制することができる。その結果、放電特性や輝度の経時変化を抑制できる。
【0039】
また、図4には実施の形態1における他の実施例のPDP10の断面図を示し、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を蛍光体層23の内部に分散配置している。蛍光体材料中に水素吸蔵性材料21の粉体を混練した材料を用い、スプレー法などによって蛍光体層23を形成する。その結果、水素吸蔵性材料21を蛍光体層23の内部に分散させることができる。水素吸蔵性材料21の粒径は、0.1μm〜20μmが望ましく、その混合割合は、蛍光体の粉体に対して、0.01重量%〜2重量%程度が望ましい。蛍光体層23は蛍光体の充填率が60%以下と低い。そのため、蛍光体層23の内部に水素吸蔵性材料21を分散させても水素を吸蔵する効果は保たれる。
【0040】
比較例として、単結晶白金族元素の代わりに多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いて同様の方法でPDP10を作成した。これらを同様に1000時間画像表示させてその画質劣化を確認した。その結果、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を用いたPDP10が、多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いたPDP10よりも画質劣化が抑制されることを確認した。さらに水素吸蔵性材料21に単結晶パラジウムを用いた場合には特にその抑制効果が大きく、「にじみ」や「焼きつき」などの画質劣化や蛍光体の発光輝度低下がほとんど発生しないことを確認した。
【0041】
これらの実験から明らかなように、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を蛍光体層23の表面ではなく内部に配置しても、放電にともなって分解された水素を安定して吸蔵するため水分子や炭化水素分子を大幅に減少させることができる。これにより保護層16や蛍光体の劣化を抑制することができる。その結果、放電特性や輝度の経時変化を抑制できる。
【0042】
以上のように、実施の形態1における構成によれば、不純ガスが多く吸着している蛍光体層23に単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を配置したことで、不純ガスをより効率的に除去することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2におけるPDP10の断面図である。図6において図2と同じ構成については同じ符号を用い説明を省略する。実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、実施の形態1が、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を蛍光体層23の表面または内部に分散させて配置した構成であるのに対し、実施の形態2では、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を隔壁22の表面または内部に分散させて配置した構成とした点である。図6では単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を隔壁22の頂部の表面に配置した状態を示している。
【0044】
実施の形態2で使用される単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21の粉体の粒径は、隔壁22と保護層16との間に大きな隙間を生じない程度でなければならず、0.1μm〜5μmが望ましい。また単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21層の厚みも5μm以下が望ましく、隔壁22の頂部に単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21が点在する程度であってもよい。
【0045】
実施の形態1と同様に、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミニウム(Os)、パラジウム(Pd)などの単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を粉体化してそれぞれを有機バインダーと混練し、印刷法、スプレー法、フォトリソ法、ディスペンサー法、インクジェット法などを用いて、隔壁22の頂部に塗布した。また比較例として、単結晶白金族元素の代わりに多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いて同様の方法で隔壁22に塗布した。
【0046】
これらのPDP10を用いて実施の形態1と同様の評価実験を行った。その結果、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を用いたPDP10が、多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いたPDP10よりも画質劣化を抑制することを確認した。さらに水素吸蔵性材料21に単結晶パラジウムを用いた場合には特にその抑制効果が大きく、「にじみ」や「焼きつき」などの画質劣化や蛍光体の発光輝度低下がほとんど発生しないことを確認した。また、隔壁22の内部に単結晶パラジウムよりなる水素吸蔵性材料21を配置した構成(図示せず)においても同様の結果を得ることができた。
【0047】
これらの実験から明らかなように、単結晶パラジウムなどの単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を隔壁22の表面や内部に配置すると、放電にともなって分解された水素を十分に安定して吸蔵する。そのため、水分子や炭化水素分子を大幅に減少させることができ、放電特性を安定させ、経時変化を抑制することができる。
【0048】
さらに実施の形態2においては、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21が発光に関係しない隔壁22に配置されているので可視光の透過を妨げることがなく、PDP10の発光量に影響を及ぼさずに不純ガスを除去することができるという効果もある。
【0049】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3におけるPDP10の断面図である。図7において図2と同じ構成については同じ符号を用い説明を省略する。実施の形態3が実施の形態1と異なるのは、実施の形態3では、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を保護層16の表面に分散させて配置したことである。実施の形態3においても、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21の粒径は、隔壁22と保護層16との間に大きな隙間を生じない程度でなければならず、0.1μm〜5μmが望ましい。また単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21が可視光の透過を妨げないように、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21が保護層16を覆う被覆率は50%以下であることが望ましい。
【0050】
実施の形態1と同様にして、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミニウム(Os)、パラジウム(Pd)などの白金族元素を用いて単結晶粉体を作成した。それら単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21をそれぞれ有機バインダーと混練し、印刷法、スプレー法、フォトリソ法、ディスペンサー法、インクジェット法などを用いて、保護層16の表面に塗布した。また比較例として、単結晶白金族元素の代わりに多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いて同様の方法でPDP10を作成した。
【0051】
このようにして作成したPDP10を用いて実施の形態1と同様の評価実験を行った。その結果、単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を用いたPDP10が、多結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を用いたPDP10よりも画質劣化を抑制することを確認した。さらに水素吸蔵性材料21に単結晶パラジウムを用いた場合には特にその抑制効果が大きく、「にじみ」や「焼きつき」などの画質劣化や蛍光体の発光輝度低下がほとんど発生しないことを確認した。
【0052】
これらの実験から明らかなように、単結晶パラジウムなどの単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料21を保護層16の表面に配置すると、放電にともなって分解された水素を吸蔵する。そのため、水分子や炭化水素分子を大幅に減少させることができ、放電特性を安定させ、経時変化を抑制することができる。さらに実施の形態3では、保護層16が平面であるので、水素吸蔵性材料21を均一に塗布することが容易であり、大画面あるいは高精細のPDPなどに好適である。
【0053】
以上のように、本発明のPDPによれば、PDP内部に配置された単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料は酸化されにくく安定した水素吸蔵能力を有している。そのため、水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去し、保護層や蛍光体の劣化を抑制した信頼性の高いPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のPDPによれば、水や炭化水素などの不純ガスを十分に除去でき、保護層や蛍光体の劣化を抑制できるので、信頼性の高いPDPとして有用である。
【符号の説明】
【0055】
10 PDP
11 前面基板
12 走査電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
13 維持電極
14 表示電極対
15 誘電体層
16 保護層
17 背面基板
18 データ電極
19 下地誘電体層
21 水素吸蔵性材料
22 隔壁
23 蛍光体層
24 放電セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板と、互いに平行な複数のデータ電極と下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、前記表示電極対と前記データ電極とが交差するように前記前面基板と前記背面基板とを対向配置して周囲を封着したプラズマディスプレイパネルであって、前記プラズマディスプレイパネル内部に単結晶白金族元素からなる水素吸蔵性材料を配置したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記水素吸蔵性材料が単結晶パラジウムであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記水素吸蔵性材料を前記蛍光体層の表面または前記蛍光体層の内部に配置したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記水素吸蔵性材料を前記隔壁の表面または前記隔壁の内部に配置したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記水素吸蔵性材料を前記保護層の表面に配置したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−124067(P2011−124067A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280259(P2009−280259)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】