説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】排気管の高さを押さえ、プラズマディスプレイパネルのさらなる薄型化を図る。
【解決手段】互いに平行な複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板11と、互いに平行な複数のデータ電極と下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板17とを有し、間に放電空間26を形成するように前面基板11と背面基板17とを対向配置し周囲を封着材25で封着するとともに、放電空間26を排気し、かつ、放電空間26に放電ガスを封入する排気管30を背面基板17に固着したPDP10であって、排気管30の管軸Cを背面基板17と平行となるように背面基板17に固着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略記する)として代表的な交流面放電型PDPは、前面基板と背面基板とからなり、それらが対向配置されて周囲が封着されるとともに内部に多数の放電セルが形成された構成になっている。
【0003】
前面基板は、ガラス基板上に互いに平行な複数の表示電極対を形成して、それら表示電極対を覆うように誘電体層が形成され、さらに誘電体層を覆うように保護層が形成されている。一方、背面基板は、ガラス基板上に互いに平行な複数のデータ電極が形成され、それらデータ電極を覆うように下地誘電体層を形成している。さらに、下地誘電体層上には井桁状の隔壁が形成され、さらに下地誘電体層の表面と隔壁の側面には蛍光体層が形成されている。前面基板と背面基板とは、表示電極対とデータ電極とが交差するように対向配置されるとともに周囲が封着され、内部に放電空間が形成されている。内部の放電空間には放電ガスが封入され、表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成された構成になっている。このような構成のPDPの各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0004】
また、特許文献1に記載のように、背面基板の隅部には、製造工程においてPDP内部の放電空間の不純ガスを排気するとともに、放電ガスを封入するための排気管が設けられている。排気管は、背面基板の外側に突き出すように背面基板に垂直に形成されて、その根元部分をフリットガラスなどにより固定し、放電ガスの封入後にバーナーなどにより加熱溶融して気密封止(チップオフ)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−234284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、さらなるPDPの薄型化、軽量化が要望され、ガラス基板の薄板化や、駆動を制御する回路の簡素化などの検討が活発になされている。例えば、PDP板厚は近年2.8mm厚から、1.8mm厚が主流となり、さらなる薄型化も検討されている。
【0007】
しかしながら、排気管が背面基板に対して垂直に形成されているために、封止後の排気管高さを、例えば10mm以下になるように低くすることは困難であり、PDPの薄型化に対しての課題となっていた。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決して、排気管の高さを減少させて薄型のPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のPDPは、互いに平行な複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板と、互いに平行な複数のデータ電極と下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、間に放電空間を形成するように前面基板と背面基板とを対向配置し周囲を封着材で封着するとともに、放電空間を排気し、かつ、放電空間に放電ガスを封入する排気管を背面基板に固着したPDPであって、排気管の管軸を背面基板と平行となるように背面基板に固着している。
【0010】
このような構成によれば、PDPに厚み方向の排気管の高さを減少させて、薄型のPDPを実現することができる。
【0011】
さらに、排気管の断面が扁平形状であることが望ましい。このような構成によれば、さらに、薄型のPDPを実現することができる。
【0012】
さらに、排気管を背面基板に固着する封着材を、前面基板と背面基板とを封着する封着材と同一材料とすることが望ましい。このような構成によれば、排気管を背面基板へ固着する工程と、前面基板と背面基板とを固着する工程とを同一として、工程を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のPDPによれば、排気管の高さを減少させて薄型のPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。
【図2A】同PDPにおける排気管の構造を示す断面図である。
【図2B】図2AのA方向矢視図である。
【図2C】図2AのB方向矢視図である。
【図3】実施の形態におけるPDPの製造プロセスを示すフローチャートである。
【図4】実施の形態におけるPDPの排気管と、前面基板と背面基板との封着プロセスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態)
図1、は実施の形態におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、PDP10は、前面基板11と背面基板17とから構成されている。図1において、ガラス製の前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とで対をなす表示電極対14が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極12および維持電極13は、走査電極12−維持電極13−維持電極13−走査電極12の配列で繰り返すパターンで形成されている。走査電極12は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極12aの上に、導電性を高めるために銀(Ag)などの金属を含む幅の狭いバス電極12bを積層して形成されている。維持電極13も同様に、幅の広い透明電極13aの上に幅の狭いバス電極13bを積層して形成されている。さらに、表示電極対14を覆うように誘電体層15および保護層16が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス系低融点ガラスまたは酸化亜鉛系低融点ガラスで形成されている。保護層16は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層15をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0017】
ガラス製の背面基板17上には、銀を主成分とする導電性材料からなる互いに平行な複数のデータ電極18が形成され、データ電極18を覆うように下地誘電体層19が形成されている。下地誘電体層19は、誘電体層15と同様の材料であってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO)粒子を混合した材料であってもよい。下地誘電体層19上には井桁状の隔壁20が形成され、下地誘電体層19の表面と隔壁20の側面とには、赤色、緑色、青色の各色の蛍光体層23が形成されている。
【0018】
隔壁20は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。また、蛍光体層23は、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Euを、緑色蛍光体としてZnSiO:Mnを、赤色蛍光体として(Y、Gd)BO:Euなどをそれぞれ用いて約15μmの膜厚に形成されている。なお、本発明の要部をなす排気管は背面基板17の裏面の隅部に設けられているが、詳細については後述する。
【0019】
前面基板11と背面基板17とは、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように、隔壁20を挟んで対向配置され、その周囲をガラスフリットなどの封着材によって封着され内部に放電空間が形成されている。放電空間にはキセノン(Xe)などを含む放電ガスが約6×10Paの圧力で封入されている。放電空間は隔壁20によって複数の区画に仕切られており、表示電極対14とデータ電極18とが交差する部分に放電セル24が形成されている。そしてこれらの放電セル24が放電、発光することにより画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁20の形状がストライプ状であってもよい。
【0020】
図2A、図2B、図2Cは、実施の形態における排気管30の構造を示す図である。図2AはPDP10における排気管30の構造を示す断面図であり、図2Bは図2AのA方向矢視図、図2Cは図2AのB方向矢視図である。なお、図2A、図2B、図2Cでは、隔壁20、誘電体層15、表示電極対14などは省略して示している。
【0021】
図2Aに示すように、前面基板11と背面基板17はガラスフリットなどからなる封着材25によって封着され、間に放電空間26が形成されている。背面基板17の隅部には排気孔27が形成されるとともに排気孔27には排気管30の端部30bが接続されている。排気管30を介して放電空間26の空気や不純ガスを排気し、その後、放電ガスを放電空間26に充填し排気管30を加熱溶融して気密封止(チップオフ)する。
【0022】
従来、排気管30は背面基板17に対して垂直に形成されていたが、実施の形態におけるPDP10では、排気管30の管軸Cを背面基板17と平行となるように背面基板17に固着している。このような構成により、前面基板11と背面基板17、および排気管30を含めたPDP10の厚みを薄くすることができ、PDP10全体を薄型化することができる。
【0023】
さらに、排気管30の断面は図2Bに示すようにその断面が扁平状になっている。このような構成により、排気管30の高さをより一層低く押さえることができる。すなわち、実施の形態における排気管30は、例えば、円筒形状のガラス管などを扁平形状に加工して、背面基板17に設けた排気孔27に対応して開口部30cを形成し、封着材31によって背面基板17に固着させている。
【0024】
また、排気管30の端部30bを図2Bに示すように拡幅して封着材31によって背面基板17に固着させることにより、背面基板17との固着面積が増えリークなどのない確実な固着を実現することができる。また、実施の形態では排気管30を固着する封着材31は、前面基板11と背面基板17との封着材25と同一材料を用いている。加熱硬化などの特性が同一のため前面基板11と背面基板17との封着と同時に排気管30の封着も行うことができ工程を簡素化することができる。
【0025】
次に、実施の形態におけるPDP10の製造方法について説明する。図3は実施の形態におけるPDP10の製造プロセスを示すフローチャートである。PDP10は図3に示すように、前面基板作製ステップ(S1)、背面基板作製ステップ(S2)、封着材塗布ステップ(S3)、封着ステップ(S4)、排気ステップ(S5)、放電ガス封入ステップ(S6)、チップオフステップ(S7)の各ステップを経て製造される。
【0026】
まず、前面基板11を作成するステップ(S1)を説明する。ガラス製の前面基板11上に薄膜プロセスなどを用いて、酸化インジウムスズなどの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極12a、13a形成し、フォトリソグラフィ法などを用いて互いに平行な複数のライン状にパターニングする。次に、透明電極12a、13a上に銀などの導電性の良い材料を含むペーストをスクリーン印刷でライン状に形成しこれを所定の温度で焼成して固化し、走査電極12と維持電極13を形成する。走査電極12と維持電極13とは対をなし表示電極対14を構成している。次に、表示電極対14を覆うように、酸化ビスマス系低融点ガラスなどのペーストをダイコート法などにより塗布し、その後、これを焼成固化して誘電体層15を形成する。次に、誘電体層15を覆うように酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどからなる保護層16を真空蒸着法により形成する。以上のプロセスにより次に前面基板11が完成する。
【0027】
次に、背面基板17を作成するステップ(S2)を説明する。まず、ガラス製の背面基板17上に、銀などの導電性材料ペーストをスクリーン印刷で互いに平行な複数のライン状に形成し、これを所定の温度で焼成固化しデータ電極18を形成する。次に、データ電極18を覆うように酸化ビスマス系低融点ガラスなどを含むペーストをダイコート法などにより塗布し、その後、これを焼成固化して下地誘電体層19を形成する。次に、酸化ビスマス系のガラス粒子とフィラーと感光性樹脂とを含むペーストをスクリーン印刷などにより塗布して、乾燥した後、露光、現像し、焼成固化して隔壁20を形成する。次に赤色、緑色、青色の各色蛍光体ペーストを隔壁20の間隙にラインジェット法などにより塗布し、その後、焼成して各色の蛍光体層23を形成する。以上のプロセスにより次に背面基板17が完成する。
【0028】
次に、封着材25を塗布するステップ(S3)を説明する。図4は実施の形態におけるPDP10の排気管30と、前面基板11と背面基板17との封着プロセスを示す断面図である。厚膜印刷、インクジェットやディスペンサーを備えた塗布装置を用いて背面基板17の画像表示領域外部に、封着材25を塗布し、その後、封着材25の樹脂成分などを除去するために350℃程度の温度で仮焼成する。ここで、保護層16に含まれる、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムのうちの少なくとも1つの材料が、封着材25の仮焼成で劣化してしまうということを避けるために、封着材25の塗布は前面基板11側にではなく、背面基板17側に行うことが好ましい。また、ここで用いる封着材25としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたガラスフリットが望ましい。酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットとしては、例えば、Bi−B−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al、SiO、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。酸化バナジウムを主成分とするガラスフリットしては、例えば、V−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al、SiO、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
【0029】
一方、背面基板17と接合する扁平形状の排気管30の表面にも、同様の方法により封着材31を塗布し、その後、350℃程度の温度で仮焼成する。封着材31の成分は前面基板11と背面基板17との封着材25と同一にする。加熱溶融、硬化などの特性が同一の封着材を用いることで以下の封着ステップ(S4)において前面基板11と背面基板17、および背面基板17と排気管30との封着を同時に行うことができる。
【0030】
次に前面基板11と背面基板17、および背面基板17と排気管30とを封着するステップ(S4)を説明する。まず隔壁20を挟んで表示電極対14とデータ電極18とが交差するように前面基板11と背面基板17とを対向配置して位置合わせをし、クリップなどで仮固定する。同様に排気管30の端部30bの開口部30cと背面基板17の排気孔27との中心を合わせてクリップなどで仮固定する。次に、これら仮固定された前面基板11、背面基板17、排気管30を焼成炉(図示せず)に入れ、炉内温度を封着材25および封着材31の軟化点よりも高温にして溶融させる。一定時間高温に保った後、徐々に炉内温度を下げて固化させることによりこれらの封着が行われる。
【0031】
次に、排気ステップ(S5)について説明する。排気管30はシールヘッド40を介して、排気ポンプ(図示せず)および放電ガス供給ボンベ(図示せず)に接続されている。炉内温度が下がり封着材25、31が固化してきたら、排気ポンプを作動させ、放電空間26内の空気や不純ガスを排気する。
【0032】
次に、放電ガス封入ステップ(S6)について説明する。炉内の温度が室温まで下がったら、排気を停止し、放電ガス供給ボンベ(図示せず)から放電ガスを所定の圧力になるように排気管30を介して放電空間26内に供給する。実施の形態においては、放電ガスとして、Xe:10%、Ne:90%の混合ガスを用い、6×10Paの圧力とした。
【0033】
最後に、チップオフステップ(S7)において、排気管30をガラス管加熱装置41によって加熱封止(チップオフ)してPDP10が完成する。
【0034】
このように、実施の形態では、排気管30をその管軸Cが、背面基板17と平行となるように固着させている。そのために、排気管30の高さを押さえ、PDP10の厚みを減少させて薄型のPDP10を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のPDPによれば、大画面で薄型のPDPを実現し、薄型画像表示装置として有用である。
【符号の説明】
【0036】
10 PDP
11 前面基板
12 走査電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
13 維持電極
14 表示電極対
15 誘電体層
16 保護層
17 背面基板
18 データ電極
19 下地誘電体層
20 隔壁
23 蛍光体層
24 放電セル
25,31 封着材
26 放電空間
27 排気孔
30 排気管
30b 端部
30c 開口部
40 シールヘッド
41 ガラス管加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の表示電極対と誘電体層と保護層とが形成された前面基板と、互いに平行な複数のデータ電極と下地誘電体層と隔壁と蛍光体層とが形成された背面基板とを有し、間に放電空間を形成するように前記前面基板と前記背面基板とを対向配置し周囲を封着材で封着するとともに、前記放電空間を排気し、かつ、前記放電空間に放電ガスを封入する排気管を前記背面基板に固着したプラズマディスプレイパネルであって、前記排気管の管軸を前記背面基板と平行となるように前記背面基板に固着したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記排気管の断面が扁平形状であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記排気管を前記背面基板に固着する封着材を、前記前面基板と前記背面基板とを封着する前記封着材と同一材料としたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−192432(P2011−192432A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55722(P2010−55722)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】