説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】誘電体層の高透過率を保持しつつ、消費電力の低減が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは、表示電極と、誘電体層とを有した前面板と、背面板とを対向配置し、誘電体層は、シリカ粒子とガラス層とを含み、誘電率が5以下であって、シリカ粒子は、粒径が100nm〜1000nmであり、シリカ粒子の表面積は、前記シリカ粒子の外接球の表面積に対して、2倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)の表示電極を構成するバス電極には、導電性を確保するための銀電極が用いられている。バス電極を覆う誘電体層には、酸化鉛を主成分とする低融点ガラスが用いられている。近年、環境への配慮から、鉛成分を含まない誘電体層が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
PDPの消費電力低減のため、誘電体層の静電容量を小さくし、無効電力を低減することが求められている。すなわち、誘電体層の比誘電率を小さくすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−128430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいる。
【0006】
このようなハイビジョン化によって、走査線数が増加して表示電極の数が増加し、さらに表示電極間隔が小さくなり、かつPDPの消費電力が多くなる。PDPの消費電力を低減するためには、放電開始時の放電電流量を低減させることが有効である。従来の誘電体層は、比誘電率が6以上と大きいために放電セルの容量が大きく放電セルの発光1回当たりに放電セルに流れる放電電流量が多いため、PDPの消費電力が多くなっていた。
【0007】
ここに開示された技術は、上記課題を解決するためになされたもので、高透過率を保持した誘電体層であって、消費電力の低減が可能なPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のPDPは、表示電極と、誘電体層とを有した前面板と、背面板とを対向配置し、誘電体層は、シリカ粒子とガラス層とを含み、誘電率が5以下であって、シリカ粒子は、粒径が100nm〜1000nmであり、シリカ粒子の表面積は、前記シリカ粒子の外接球の表面積に対して、2倍以上である。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、誘電体層の高透過率を保持しつつ、消費電力の低減が可能なPDPを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】同前面板の構造を示す概略断面図
【図3】シリカ粒子粒径とヘイズ値の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
[1.PDP1の構成]
本実施の形態のPDP1は、交流面放電型PDPである。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置される。前面板2と背面板10の外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、NeおよびXeなどの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入される。
【0012】
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置される。前面ガラス基板3上には、表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに、誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成される。
【0013】
また、背面ガラス基板11上には、前面板2の表示電極6と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極12が互いに平行に配置される。さらに、アドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。さらに、アドレス電極12の間に形成された下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成される。隔壁14の間には、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15と、青色に発光する蛍光体層15および緑色に発光する蛍光体層15が順番に形成される。
【0014】
表示電極6とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成される。赤色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、青色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、緑色に発光する蛍光体層15を有する放電セルとによりカラー表示をする画素が形成される。
【0015】
[2.PDP1の製造方法]
[2−1.前面板2の製造方法]
図2に示すように、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とが形成される。表示電極6は、走査電極4および維持電極5を有する。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む白色電極4b、5bを有する。また、走査電極4および維持電極5は、画像表示面のコントラストを向上するため黒色顔料を含む黒色電極4a、5aを有する。白色電極4bは、黒色電極4aに積層される。白色電極5bは、黒色電極5aに積層される。
【0016】
具体的には、黒色顔料を含む黒色ペーストが、スクリーン印刷法などによって前面ガラス基板3上に塗布されることにより、黒色ペースト層(図示せず)が形成される。次に、黒色ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法によりパターニングされる。次に、銀(Ag)を含む白色ペーストが、スクリーン印刷法などによって、黒色ペースト層(図示せず)上に塗布されることにより、白色ペースト層(図示せず)が形成される。次に、白色ペースト層(図示せず)と黒色ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法によりパターニングされる。その後、現像ステップを経て、黒色ペースト層(図示せず)および白色ペースト層(図示せず)が焼成されることにより、表示電極6である白色電極4b、5b、黒色電極4a、5a、および遮光層7が形成される。
【0017】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストがダイコート法などにより塗布されることにより、誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、所定の時間が経過すると、誘電体ペースト層(図示せず)の表面がレベリングし、平坦になる。その後、誘電体ペースト層が焼成されることにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。
【0018】
なお、誘電体ペーストは、ガラス粉末などの誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0019】
次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が真空蒸着法により形成される。
【0020】
以上の工程により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
【0021】
[2−2.背面板10の製造方法]
図1に示すように、背面板10は、以下のように形成される。
【0022】
背面ガラス基板11上に、アドレス電極12が形成される。具体的には、銀(Ag)を含むペーストがスクリーン印刷法により、背面ガラス基板11上に塗布されることにより、アドレス電極ペースト層(図示せず)が形成される。次に、アドレス電極ペースト層(図示せず)が、フォトリソグラフィ法により、パターニングされることにより、アドレス電極12用の構成物となる材料層(図示せず)が形成される。その後、材料層(図示せず)が所定の温度で焼成されることにより、アドレス電極12が形成される。ここで、ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などにより、金属膜を背面ガラス基板11上に形成する方法が採用される。
【0023】
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などによりアドレス電極12を覆うように下地誘電体ペーストが塗布されることにより、下地誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、下地誘電体ペースト層(図示せず)が焼成されることにより、下地誘電体層13が形成される。なお、下地誘電体ペーストはガラス粉末などの下地誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0024】
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストが塗布されることにより、隔壁ペースト層(図示せず)が形成される。隔壁ペースト層(図示せず)がフォトリソグラフィ法により、パターニングされることにより、隔壁14の材料層となる構成物(図示せず)が形成される。次に、構成物(図示せず)が、焼成されることにより隔壁14が形成される。ここで、下地誘電体層13上に塗布された隔壁ペースト層をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法の他に、サンドブラスト法などが採用される。
【0025】
次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストが塗布される。次に、蛍光体ペーストが焼成されることにより蛍光体層15が形成される。
【0026】
以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
【0027】
[2−3.前面板2と背面板10との組立方法]
まず、表示電極6とアドレス電極12とが直交するように、前面板2と背面板10とが対向配置される。次に、前面板2と背面板10の周囲がガラスフリットで封着される。次に、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP1が完成する。
【0028】
[3.誘電体層8の詳細]
まず、従来技術の誘電体層の課題について述べる。先に述べたようにPDPの消費電力を低減させることを目的として、放電セルの容量を抑制するため、誘電体層を比誘電率の低い材料などにて形成することが考えられる。しかしながら、従来使用されていたBi23やZnOを主成分とした低融点ガラスは、比誘電率が高いため放電電流量を低減することができない。
【0029】
一方でSiO2やB23を主成分とするガラスは比誘電率が5〜7程度と低いものもあるが、さらに比誘電率を5以下としようとすると融点が高くなるため、一般的なPDPの製造方法における焼成工程の焼成温度では焼成固化させることが困難である。
【0030】
また、低融点ガラス材料とSiO2フィラー粒子(シリカ粒子)を混合する方法が提案されている。シリカ粒子は比較的誘電率が低いため、誘電体層の誘電率を低下させる効果が得られる。しかしながら、単純に誘電体層にシリカ粒子を混合しただけでは、誘電体層の光学特性(特にヘイズ値)および絶縁耐圧が悪化するという弊害を招いていた。ここで記載のヘイズ値とは、物質の曇り度合いを示す指標で、透過光と散乱光の比率であり、ヘイズ値が高いと曇り度合いが大きいことを示す。
【0031】
そこで、発明者等がこのような弊害が生じる原因を検討した結果、ペースト作製時にシリカ粒子が均一に分散しないため、誘電体層を焼成によって固化した際にシリカ粒子が凝集し、低融点ガラス材料との界面に隙間が生じていることが判明した。
【0032】
このような現象が生じる理由としては、誘電体層を焼成する600℃前後の温度では低融点ガラス材料粉末は非常に反応性が高いため次々に結合しながら収縮していくが、シリカ粒子は反応性が低く、シリカ粒子同士だけでなく低融点ガラス材料粉末とも結合しにくいため、焼成前段階にあった粉末同士の空隙が焼成後に拡大してしまうためと考えられる。
【0033】
そして、このような空隙箇所において透過光が散乱し光学特性が悪化し、また空隙によって絶縁耐圧が悪化していたのである。
【0034】
これに対し本実施の形態では、誘電体層8は、シリカ粒子20とガラス層である誘電体ガラス層21とを含み、誘電率が5以下であって、シリカ粒子20の粒径が100nm〜1000nmとしている。
【0035】
シリカ粒子20の粒径を100nm以上とすることにより、ペースト作製時にシリカ粒子20が均一に分散し、誘電体層8を焼成固化する際にも、誘電体ガラス層21との界面に空隙が生じにくい。このため光学特性と絶縁耐圧の悪化を抑制することができる。
【0036】
また、シリカ粒子20の粒径を1000nm以下とすることにより、シリカ粒子20と誘電体ガラス層21との屈折率差を最小限にとどめることができ、屈折率差に起因したヘイズ値の悪化を抑制することが可能となる。
【0037】
なお、上記現象の効果をさらに求める場合には、シリカ粒子20の粒径を400nm〜700nmとすることが望ましい。
【0038】
そして本実施の形態では、上記の誘電体層内の空隙発生を抑制する別の手段として、誘電体ガラス層21にシリカ粒子20とは異なる組成の添加物を含有させている。
【0039】
上記のように空隙が生じる原因としては、誘電体層を焼成固化する際に、シリカ粒子の表面が活性状態でないために、他のガラス材料となじまないためだと考えられる。そこでシリカ粒子の周囲にシリカ粒子とは異なる組成の添加物を存在させることで、シリカ粒子の正四面体構造を一部破壊し、シリカ粒子を活性状態にし、上記空隙の発生を抑制することができる。
【0040】
このため本実施の形態では、誘電体ガラス層21に、三酸化二硼素(B23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、アルカリ金属の酸化物である酸化カリウム(K2O)や酸化リチウム(Li2O)や酸化ナトリウム(Na2O)のうち少なくとも1種以上を添加している。添加量は、誘電体ガラス層21に対して、0.1モル%〜20モル%が望ましい。0.1モル%より低ければこの効果は得られず、20モル%以上では、誘電体層が有色になるなど、他の弊害が発生する。
【0041】
ここで、シリカ粒子20の粒形状について説明する。本実施の形態では、シリカ粒子20の形状は球形ではなく、多角形となっている。特に多角形となっているシリカ粒子20の外接円の表面積に対し、当該シリカ粒子20の表面積が2倍以上となるようにしている。
【0042】
本実施の形態では、シリカ粒子20の形状を多角形等にすることで、粒子の比表面積を高め、シリカ粒子20の表面を活性化(表面エネルギーを上げる)することができる。これによって誘電体ガラス層21との焼結を促進できることを特徴としている。
【0043】
また同時に、シリカ粒子20の表面に頂点または変曲点を多数持つ形状となることで、球状に比べて変曲ポイントで絶縁破壊パスが繋がることを抑制することができ、誘電体層8の絶縁破壊を抑制することができる。
【0044】
たとえば、正多角形の例を考える。ある正多角形の外接球の表面積を1とした場合の当該正多角形の表面積比は、正四面体で2.5、正六面体で6.38、正八面体で6.38、正十二面体で9.6、正二十面体で2.5となる。ここでは、形状は分りやすくするために、正多面体のモデルを用いたが、その中で最も単純な正四面体においても約2.5倍の比表面積となり、比表面積が2倍以上であれば形状は正多角形に限らない。
【0045】
また、上限については、あまり比表面積が大きいと製造工程において誘電体ペーストでの分散が難しくなるため、20倍以下が好ましいが、これに限るものではない。
【0046】
図2は本実施の形態における前面板2の断面図を示す。図2に示すように、誘電体層8は、シリカ粒子20とガラス層である誘電体ガラス層21とを含み、シリカ粒子20は、誘電体層8中に分散している。なお、説明の便宜のため、図2に示されるシリカ粒子20の大きさおよび数は、実際の製品とは異なる。
【0047】
なお、従来、450℃から600℃程度での焼成を可能にするために、誘電体ガラスは、20重量%以上の酸化鉛を含有していた。しかし、本実施の形態においては、環境への配慮のため、誘電体ガラスは、酸化鉛を含有しない。すなわち、誘電体層8は、酸化鉛を含有しない。
【0048】
[3−1.誘電体ペーストの製造]
誘電体ペーストは、誘電体ガラス微粒子が分散した誘電体ガラススラリーとシリカ粒子20が分散したシリカ粒子スラリーとビヒクルから構成される。
【0049】
[3−1−1.誘電体ガラススラリー]
誘電体ガラス微粒子は、一例として、三酸化二硼素(B23)と二酸化珪素(SiO2)とアルカリ金属の酸化物である酸化カリウム(K2O)や酸化リチウム(Li2O)や酸化ナトリウム(Na2O)などを含む。
【0050】
また先に述べたように、本実施の形態では、誘電体ガラス微粒子に、三酸化二硼素(B23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、アルカリ金属の酸化物である酸化カリウム(K2O)や酸化リチウム(Li2O)や酸化ナトリウム(Na2O)のうち少なくとも1種以上を添加しており、添加量は誘電体ガラス層21に対して、0.1モル%〜20モル%である。
【0051】
まず、例示した組成成分からなる誘電体ガラス材料が、湿式ジェットミルやボールミルにより平均粒径が0.5μm〜3.0μmとなるように粉砕されて誘電体ガラス微粒子が作製される。これらガラス微粒子の軟化点は600℃以下である。
【0052】
そして、誘電体ガラススラリーは、誘電体ガラス微粒子10重量%〜65重量%と溶媒35重量%〜90重量%とから構成される。溶媒は、一例として、アルコール系やグリコール系や水系などを含む。
【0053】
誘電体ガラススラリーには、滑剤や分散剤などが添加されてもよい。このような構成の誘電体ガラススラリーは分散性が向上する。
【0054】
[3−1−2.シリカ粒子スラリー]
シリカ粒子スラリーは、シリカ粒子20が1重量%〜20重量%と溶媒が80重量%〜99重量%とを混合分散させたものである。シリカ粒子20の主成分は、二酸化珪素(SiO2)である。しかしながら、シリカ粒子以外でも、酸化アルミニウム(Al23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ガリウム(Ga23)、または、これらの複合酸化物なども用いることができる。シリカ粒子20の軟化点は700℃以上である。溶媒は、一例として、アルコール系やグリコール系や水系などを含む。
【0055】
そして先に述べたように、シリカ粒子の粒径を100nm〜1000nmとしており、望ましくは400nm〜700nmである。シリカ粒子スラリーには滑剤や分散剤などが添加されてもよい。このような構成のシリカ粒子スラリーは分散性が向上する。
【0056】
[3−1−3.誘電体ペースト]
上述のように、誘電体ガラススラリーとシリカ粒子スラリーは、別々に製造される。誘電体ペーストを前面ガラス基板に塗布する前に、誘電体ガラススラリーとシリカ粒子スラリーとが混合分散される。さらに、必要に応じてビヒクルなどバインダ成分が混合分散される。
【0057】
バインダ成分はエチルセルロースあるいはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオールあるいはブチルカルビトールアセテートである。また、誘電体ガラス用ペーストには、可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルが添加されてもよい。分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。なお、バインダ成分はガラス粒子粉砕時溶媒に合わせて選定してもよい。
【0058】
なお、バインダを混合分散するタイミングはこの限りではない。
【0059】
このような誘電体ペーストの製造方法によれば、誘電体ペースト中に誘電体ガラス微粒子とシリカ粒子20とが均一に分散する。
【0060】
誘電体層8におけるシリカ粒子20の含有量は、5体積%以上、20体積%以下であることが好ましい。シリカ粒子20の含有量が5体積%より少ないと、誘電体層8の比誘電率を小さくすることが難しい。一方、シリカ粒子20の含有量が20体積%を超えると、誘電体層のヘイズ値が悪化する。また本実施の形態では、誘電体層8の比誘電率が5以下となるようにシリカ粒子20の含有量、粒径とを上記範囲内で適宜規定する。これによりPDPの消費電力の低減効果が得られる。
【0061】
誘電体層8におけるシリカ粒子20の含有量を所定の範囲に収めるためには、誘電体ペースト中のシリカ粒子20の含有量を所定の範囲に収めることが好ましい。すなわち、規定された比率にしたがって、誘電体ガラススラリーとシリカ粒子スラリーとが混ぜ合わされればよい。あるいは、シリカ粒子スラリーの製造段階で、シリカ粒子スラリーにおけるシリカ粒子20の含有量を所定の範囲に収めてもよい。
【0062】
[3−2.誘電体層8の形成方法]
誘電体層8を形成する方法として、スクリーン印刷法やダイコート法などが用いられる。まず、誘電体ペーストが、前面ガラス基板3上に塗布される。誘電体ペースト層の塗布膜厚は、焼成によって収縮する割合が考慮された上で、適宜設定される。次に、100℃から200℃の温度範囲で誘電体ペースト層が乾燥される。次に、450℃から600℃の温度範囲、より好ましくは550℃から590℃の温度範囲で焼成されることにより、シリカ粒子20と誘電体ガラス層21とからなる誘電体層8が形成される。
【0063】
また、誘電体層8を形成する方法として、以下の方法も用いられる。まず、誘電体ペーストをフィルム上に塗布、乾燥させたシートが用いられる。次に、シートに形成された誘電体ペーストが前面ガラス基板3に転写される。次に、450℃から600℃、より好ましくは550℃〜590℃の温度範囲で焼成されることにより、シリカ粒子20と誘電体ガラス層21とからなる誘電体層8が形成される。
【0064】
なお、誘電体層8の膜厚が小さいほどPDP1の輝度が向上する。また、誘電体層8の膜厚が小さいほどPDP1の放電電圧が低減する。よって、絶縁耐圧が低下しない範囲で、できるだけ誘電体層8の膜厚が小さいことが好ましい。絶縁耐圧の観点と、可視光透過率の観点との両方から、本実施の形態では、一例として、誘電体層8の膜厚は10μm以上、30μm以下である。
【0065】
[4.まとめ]
本実施の形態のPDP1は、前面板2と、背面板10と、を備え、前面板2と背面板10とが対向配置されるとともに周囲が封着される。前面板2は、表示電極6と表示電極6を覆う誘電体層8とを有する。誘電体層8は、内部が中空であるシリカ粒子20とガラス層である誘電体ガラス層21とを含む。シリカ粒子20は、誘電体層8中に分散している。
【0066】
このような構成によれば、誘電体ガラス層21によりシリカ粒子20相互の結合力を確保できる。また、シリカ粒子20の内部は中空であるため、シリカ粒子20内部の比誘電率は約1.0である。よってシリカ粒子20自体の比誘電率は1.0に近い値になる。よって、誘電体層8の比誘電率を小さくできる。
【0067】
また、誘電体ペーストの塗布後から時間が経過すると、シリカ粒子20は、誘電体ペーストよりも比重が軽いため、誘電体ペースト層の表面側へ移動する。この状態で、前面ガラス基板3を乾燥させると、誘電体層8において、厚み方向にシリカ粒子20の含有量に勾配が生じる。すなわち、誘電体層8における屈折率は、誘電体層8の厚み方向に勾配が生じてもよい。誘電体層8の前面ガラス基板3側におけるシリカ粒子20の含有量が少なくなると屈折率が相対的に高くなる。誘電体層8の表面側におけるシリカ粒子20の含有量が多くなると、屈折率が相対的に低くなる。この構成によれば、前面ガラス基板3と誘電体層8との界面の屈折率差が低減される。また、放電ガスが封入されている放電空間と誘電体層8との界面の屈折率差が低減される。すなわち、前面ガラス基板3と誘電体層8との界面および放電空間と誘電体層8との界面での反射率が低減される。よって、発光取り出し効率が向上し、さらに、外光反射率が低減する。
【0068】
図3は、シリカ粒子20の粒径に対する誘電体層8のヘイズ値の変化を示す図である。そして誘電体層8におけるシリカ粒子20の含有量に対する変化も示してある。ここではシリカ粒子の粒径が5μmであって、誘電体層の含有率が50体積%とした試料のヘイズ値を1として示している。このようにシリカ粒子20の粒径100nm〜1000nmで大きくヘイズ値が低下していることが解る。また、誘電体層8のシリカ粒子20の含有量を20体積%以下とすることで、ヘイズ値が低下する効果が現れることが解る。
【0069】
なお、ヘイズ値の測定には、ヘイズ・透過率計「HM−150」(株式会社 村上色彩研究所製)が用いられた。実施例において、誘電体層が形成された前面ガラス基板に対して、波長550nmの単波長の光を前面ガラス基板と直交する方向から入射させた時の光線透過率(可視光線透過率)およびヘイズ値が測定された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、低消費電力のPDPを実現して、大画面の表示デバイスなどに有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 黒色電極
4b、5b 白色電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
20 シリカ粒子
21 誘電体ガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示電極と、誘電体層とを有した前面板と、背面板とを対向配置し、
前記誘電体層は、シリカ粒子とガラス層とを含み、誘電率が5以下であって、
前記シリカ粒子は、粒径が100nm〜1000nmであり、
前記シリカ粒子の表面積は、前記シリカ粒子の外接球の表面積に対して、2倍以上である、
プラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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