プラズマ発生装置及びプラズマ発生方法
【課題】活性種の生成量を増やすとともに、プラズマの発生を安定化させることで活性種の生成量を安定化させるプラズマ発生装置及びプラズマ発生方法の提供。
【解決手段】対向面に誘電体膜21a、22aを設けた一対の電極21、22を有するプラズマ電極部を備え、一対の電極21、22間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、一対の電極21、22の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔21b、22bを設けてこれらが貫通するように構成するとともに、一対の電極21、22を保持する筐体25を備え、筐体25が、一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの少なくとも一部を開放して、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させる。
【解決手段】対向面に誘電体膜21a、22aを設けた一対の電極21、22を有するプラズマ電極部を備え、一対の電極21、22間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、一対の電極21、22の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔21b、22bを設けてこれらが貫通するように構成するとともに、一対の電極21、22を保持する筐体25を備え、筐体25が、一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの少なくとも一部を開放して、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置及びプラズマ発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアトピー、ぜんそく、アレルギー症状保有者の増大や新型インフルエンザの爆発流行などにみられる感染性のリスク増大などによって、殺菌や脱臭など生活環境の空気質制御ニーズが高まっている。また生活が豊かになるにつれて、保管食品の量の増大や食べ残し食品の保管機会が増加しており、冷蔵庫に代表される保管機器内の環境制御も重要性を増している。
【0003】
生活環境の空気質制御を目的とする従来技術は、フィルターに代表されるような物理的制御が一般的である。物理的制御は、空気中に浮遊する比較的大きな埃や塵、フィルター孔の大きさによっては、細菌やウィルスなども捕獲できる。また、活性炭のように無数の吸着サイトがある場合は、悪臭の臭気分子も捕獲可能である。しかし、捕獲するためには制御対象の空間内の空気を満遍なくフィルターに通す必要があり、装置が大型化し、フィルター交換等の維持コストもかさむという難点があるうえに、付着物に対しては効果が無い。そこで、付着物に対し殺菌や脱臭を可能とする手段として、化学的活性種を殺菌や脱臭を行いたい空間に放出することがあげられる。薬品の散布や芳香剤、消臭剤の放出では、あらかじめ活性種を用意する必要があり、定期的な補充が不可欠である。それに対し、大気中にプラズマを発生させそこで生成される化学的活性種を利用し、殺菌や脱臭を試みる手段が近年増えてきている。
【0004】
大気中にプラズマを放電により発生させ、そこで生成されたイオンやラジカル(以下、活性種)によって殺菌や脱臭を行う技術は、次の2つの形式に分類できる。
(1)大気中に浮遊する菌やウィルス(以下、浮遊菌)、もしくは悪臭物質(以下、臭気)を装置内の限られた容積内で活性種と反応させる、いわゆる受動型のプラズマ発生装置(例えば、特許文献1)
(2)プラズマ発生部で生成された活性種を(1)よりも容積の大きな閉空間(例えば、居室、トイレ、乗用車の車内等)へ放出し、大気中での活性種と浮遊菌や臭気との衝突により反応させる、いわゆる能動型のプラズマ発生装置(例えば、特許文献2)
【0005】
(1)の受動型のプラズマ発生装置の利点は、小容積内でプラズマを発生させて高濃度の活性種が生成されるため、高い殺菌効果及び脱臭効果が期待される。一方、欠点としては浮遊菌や臭気を装置内に導入する必要があるため、装置が大型化し、またプラズマ発生から副生成物としてオゾンが発生しやすく、オゾンを装置外に漏洩させないために、吸着もしくは分解するフィルターを別途設置する必要がある。
【0006】
次に、(2)の能動型のプラズマ発生装置の利点は、装置を比較的小さくでき、浮遊菌の殺菌や空気中の臭気の分解に加え、衣類や生活用品の表面に付着した菌(以下、付着菌)の殺菌や表面に吸着した臭気の分解も期待できる点である。一方、欠点としては、活性種が装置の体積に比べて非常に大きな閉空間内に拡散されることから濃度が低くなるため、寿命の長い活性種のみに殺菌や脱臭の効果を期待せざるを得ない点である。その結果、臭気濃度の高い空間(活性種濃度に対して1万倍程度高い濃度)においてはほとんど脱臭効果が期待できないことになる。
【0007】
以上のことから、受動型のプラズマ発生装置では、当該装置に流入する空気流に含まれる浮遊菌や臭気に対してのみ効果が限定され、能動型のプラズマ発生装置では濃度の低い浮遊菌、付着菌、臭気に対しての効果しか期待できない。即ち、従来技術を利用し実現できることは、「浮遊菌の殺菌と脱臭」、あるいは「濃度の低い浮遊菌、付着菌の殺菌および付着臭気の脱臭」のどちらかに限定されることになる。
【0008】
また、プラズマ発生部を構成する電極では、電極のプラズマ発生部位に例えば多孔質の誘電体膜を使用する場合が多く、そのため、高湿度下においては、誘電体膜自身の吸湿作用のため電気的特性が変化してしまい、プラズマの発生を阻害してしまう。特に冷蔵庫のような低温で、かつ湿度が大きく変化する環境においては、電極間に結露などによって、水分が蓄積してしまうと、乾燥が困難となる。そのためプラズマの発生が止まり、殺菌、脱臭性能が低下してしまう。従って、冷蔵庫の内部が高湿度の状態が続くと殺菌性能を維持することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−224211号公報
【特許文献2】特開2003−79714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、浮遊菌及び付着菌の殺菌と脱臭の両方を同時に実現する技術であり、プラズマを発生させて活性種により脱臭する受動型の機能と、その活性種を装置の外に対し放出し、付着菌を殺菌する能動型の機能の二つを同時に兼ね備えさせるべく活性種の生成量を増やすとともに、誘電体膜の乾燥性能を向上させることによってプラズマの発生を安定化させることで活性種の生成量を安定化させることを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係るプラズマ発生装置は、対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極を保持する筐体を備え、前記筐体が、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放していることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、筐体が一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているので、一対の電極内に生じる結露水を蒸発させ易くすることができ、一対の電極内に結露水が蓄積することを防止することができる。これにより、誘電体膜の乾燥性能を向上させることができ、プラズマの発生を安定化させて活性種の生成量を安定化させることができる。
【0013】
なお、一対の電極の側辺開口全体を筐体で覆うことで側辺開口を閉塞した場合、一対の電極内で生じる結露水のうち、流体連通孔近傍の誘電体膜は乾燥することが可能であったが、一対の電極の周辺部などのそれ以外の部分は開放されていないので、乾燥性能が著しく悪い。本発明は、電極の側辺開口を開放させることによって、流体流通孔近傍の誘電体膜だけでなく、それ以外の部分の誘電体膜を乾燥することができる。
【0014】
また本発明によれば、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成することにより、対応する各流体貫通孔において発生するプラズマの量を可及的に多くすることができ、このプラズマと流体との接触面積を可及的に大きくできる。これにより、イオン及びラジカルといった活性種の生成量を増加させることができ、当該活性種により脱臭する機能と、その活性種を装置外部に放出して浮遊菌及び付着菌を殺菌する機能とを十分に発揮できるようになる。なお、本明細書でいう対応する箇所とは、電極の面板方向から視て、双方の電極に形成された各流体流通孔が実質的に同じ位置にあることをいい、直交座標系においてz軸方向よりxy平面状の一対の電極を見たときに、双方の電極において略同じ(x、y)の座標位置であることをいう。
【0015】
開放された側辺開口に気体を通りやすくして開放された側辺開口から水分を抜けやすくするためには、前記筐体が、前記開放された側辺開口に対向する壁体を有し、前記側辺開口と前記壁体との間に気体流路を形成するものであることが望ましい。また、側辺開口に対向して壁体を設けることで、側辺開口近傍のプラズマによって生じた火炎が外部に伝播することを防止することもできる。
【0016】
上記の気体流路を簡単な構成により構成するためには、前記筐体の側壁部に前記側辺開口と連通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔により前記気体流路が形成されていることが望ましい。
【0017】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものであることが望ましい。これならば、開放された側辺開口に効率的に風を流すことができ、側辺開口から水分が抜けやすくなり、誘電体膜の乾燥性能をより一層向上させることができる。また、この送風機構により流体が効率的に流体流通孔を通過することになり活性種の発生を促進すると共に、脱臭効果を増大させることもできる。例えば冷蔵庫などの電化製品などの場合、湿度センサや温度センサなどのセンサと連動させれば、最小限のエネルギーで効率よく、送風機構を稼動させることが可能となる。また結露の状態は、印加電圧の低下によって検知可能であるので、送風量を調節することも有効である。
【0018】
ここで、前記送風機構により前記流体流通孔を通過させる風の流速を0.1m/s以上30m/s以下の範囲内としていることが望ましい。
【0019】
誘電体膜が溶射法によって形成されたものの場合、その表面には微細な凹凸が形成され、これらが対向することで乾燥性能が著しく低下してしまうが、本発明のように側辺開口を開放させることによって、この乾燥性能の低下を防止することができる。
【0020】
プラズマ発生部位での結露及び水分付着を防止するとともに、結露又は水分を蒸発させ易くして、殺菌性能及び脱臭性能の低下を防止するためには、前記誘電体膜の表面上にコーティング膜が設けられていることが望ましい。このとき、前記コーティング膜が、撥水性(疎水性)を有するものであることが特に望ましい。なお、疎水性のコーティング膜を用いることにより、当該膜に疎水性を有する臭気成分を吸着し易くすることができ、脱臭効率を向上させることができる。
【0021】
前記コーティング膜の厚さが、0.01μm以上100μm以下であることが望ましい。ここでコーティング膜を100μm以上にすると、誘電体膜自身の物性が損なわれてしまうこと、また、誘電体膜の表面に形成された凹凸が埋没してしまい、プラズマ発生効果が低下してしまう。
【0022】
前記一対の電極の間に500μm以下の厚みを有するスペーサを有することが望ましい。これならば、電極間の距離を大きくすることができ、脱臭反応場を大きくすることができるので、臭気の脱臭効率を向上させることができる。また、スペーサにより電極間の距離を大きくしていることから、水分付着が起こったとしても微細な水滴であり、電極間から外部に抜けやすくすることができる。ここでスペーサの形成方法としては、蒸着法、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ法、イオンプレーティング法などの薄膜形成方法、あるいは、めっき法、溶射法、スプレーコーティング、スピンコート法、塗布法などが考えられる。
【0023】
流体貫通孔を通過した流体に含まれる活性種の数を可及的に増大させると共に、発生するオゾンの濃度を抑制するためには、前記各電極に印加する電圧をパルス形状とし、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲内とし、且つパルス幅を0.1μ秒以上300μ秒以下の範囲内としていることが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
このように構成した本発明によれば、活性種の生成量を増やすことによって付着菌の殺菌と脱臭の両方を同時に実現することができるとともに、誘電体膜の乾燥性能を向上させることによってプラズマの発生を安定化させることで活性種の生成量を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のプラズマ発生装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】プラズマ発生装置の作用を示す模式図。
【図3】電極部を示す平面図。
【図4】電極部及び防爆機構を示す断面図。
【図5】電極部の対向面の構成を示す拡大断面図。
【図6】流体流通孔及び貫通孔を模式的に示す部分拡大平面図及び断面図。
【図7】イオン数密度とオゾン濃度とのパルス幅依存性を示す図。
【図8】プラズマ電極部の平面図。
【図9】筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図10】電極間の距離の大小による脱臭効果の違いを示す概念図。
【図11】脱臭性能におけるスペーサ厚の依存性を示す図。
【図12】冷蔵庫内の温度湿度変化の一例。
【図13】変形実施形態における筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図14】変形実施形態における筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図15】変形実施形態におけるプラズマ電極部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本実施形態に係るプラズマ発生装置100は、例えば冷蔵庫、洗濯機、衣類乾燥機、掃除機、空調機又は空気清浄機等の家庭電化製品に用いられるものであり、当該家庭電化製品の内部又は外部の空気の脱臭やそれら製品内部又は外部の浮遊菌又は付着菌を殺菌するものである。
【0028】
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、マイクロギャッププラズマ(Micro Gap Plasma)によりイオンやラジカル等の活性種を生成させるプラズマ電極部2と、当該プラズマ電極部2の外部に設けられて当該プラズマ電極部2に強制的に風(空気流)を送る送風機構3と、前記プラズマ電極部2の外部に設けられてプラズマ電極部2で生じる火炎が外部に伝播しないようにする防爆機構4、および電極部2に高電圧を印加するための電源5とを備えている。
【0029】
以下、各部2〜5について各図を参照して説明する。
【0030】
プラズマ電極部2は、図2〜図6に示すように、対向面に誘電体膜21a、22aを設けた一対の電極21、22と、当該一対の電極21、22を保持する筐体25を有し、それら電極21、22間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものである。各電極21、22は、特に図3に示すように、平面視において(電極21、22の面板方向から見たときに)概略矩形状をなすものであり、例えばSUS403といったステンレス鋼から形成されている。なお、電極部2の電極21、22の縁部には、電源5からの電圧が印加される印加端子2Tが形成されている(図3参照)。
【0031】
ここで電源5によるプラズマ電極部2への電圧印加方法は、各電極21、22に印加する電圧をパルス形状とし、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲内とし、且つパルス幅を0.1μ秒以上かつ300μ秒以下の範囲内としている。図7に示すように、パルス幅が300μ秒以下において、イオン数密度が測定され、かつオゾン濃度が低くなり、パルス幅が小さくなるに従って、イオン数は増加し、オゾン濃度は減少する。これにより、オゾン発生量を抑制し、プラズマで生成された活性種を、従来技術に良く見られるようなフィルター等で失うことなく、効率的に放出することができ、その結果、付着菌の殺菌を短時間で実現することが可能となる。
【0032】
また、図5に示すように、電極21、22の対向面には、例えばチタン酸バリウム等の誘電体が塗布されて誘電体膜21a、22aが形成されている。この誘電体膜21a、22aの表面粗さ(本実施形態では算出平均粗さRa)は0.1μm以上100μm以下である。この他表面粗さとしては、最大高さRy、十点平均粗さRzを用いて規定しても良い。なお、前記誘電体膜21a、22aの表面粗さは、溶射法によって制御することが考えられる。また、電極に塗布する誘電体としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化シリコン、燐酸銀、チタン酸ジルコン酸鉛、シリコンカーバイド、酸化インジウム、酸化カドミニウム、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0033】
さらに図3、図4及び図6に示すように、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔21b、22bを設けてこれらが連通して貫通するように構成するとともに、電極21、22の面板方向から視たときに(平面視において)、対応する各流体貫通孔21b、22bの輪郭の少なくとも一部が互いに異なる位置となるように構成されている。つまり、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの平面視形状と、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの平面視形状とが互いに異なるように構成されている。
【0034】
具体的には、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ形成された流体流通孔21b、22bは、平面視において概略円形状をなすものであり(図3、図6参照)、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの開口サイズ(開口径)が、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの開口サイズ(開口径)よりも小さく(例えば開口径が10μm以上小さく)形成されている。
【0035】
また、同じく図3、図6に示すように、一方の電極21に形成された流体流通孔21bと他方の電極22に形成された流体流通孔22bとは同心円状に形成されている。なお、本実施形態では、一方の電極21に形成された複数個の流体流通孔21bは全て同一形状をなし、他方の電極22に形成された複数個の流体流通孔22bも全て同一形状をなし、一方の電極21に形成された流体流通孔21b全てが、他方の電極22に形成された流体流通孔22bよりも小さく形成されている。本実施例では概略円形状として効果を示したが、開口部は円形に限らずどのような形でもよく、平面視において対応する各流体貫通孔の輪郭の少なくとも一部が互いに異なる位置となるように構成されていればよい。
【0036】
さらに、各電極21、22に形成された流体流通孔21b、22bの開口総面積が、当該各電極21、22の総面積に対して2%以上90%以下の範囲内である。具体的には、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの開口総面積を、電極22の総面積に対して2%以上90%以下の範囲内としている。なお、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの開口総面積を2%以上90%以下の範囲内としても良い。
【0037】
そして本実施形態のプラズマ電極部2は、図3及び図6に示すように、流体流通孔21b、22bとは別に、一方の電極21に貫通孔21cを設けてこの貫通孔21cが他方の電極22によってその対向面側の開口が塞がれるように構成している。なお、前記各電極21、22に形成された流体流通孔21b、22bからなるものを以下、完全開口部という場合があるが、これとの比較において貫通孔21cにより形成されるものは半開口部という。
【0038】
貫通孔21cの開口サイズを、流体流通孔21bの開口サイズよりも10μm以上小さく形成している。貫通孔21cは、規則的に設けられた流体流通孔21bの一部を置き換えて形成されており、貫通孔21cは流体流通孔21bの周囲に設けられている(図3参照)。
【0039】
送風機構3は、前記プラズマ電極部2の他方の電極22側(プラズマ電極部2の前段)に配置されており、プラズマ電極部2に形成された流体流通孔21b、22b(完全開口部)に向かって強制的に風を送る送風ファンを有するものである。具体的にこの送風機構3は、流体流通孔21b、22bを通過させる風の流速を0.1m/s以上30m/s以下の範囲内としている。
【0040】
防爆機構4は、図4に示すように、一対の電極21、22の外側に配置された保護カバー41を有し、可燃性ガスが流体流通孔21b、22bに流入してプラズマによって生じた火炎が、保護カバー41を越えて外部に伝播しないように構成されたものである。この保護カバー41は、筐体25の上面及び下面に着脱可能に取り付けられており、金属メッシュ411を有する。この金属メッシュ411の線径は、1.5mm以下の範囲内であり、且つ金属メッシュ411の開口率は30%以上である。
【0041】
しかして本実施形態のプラズマ発生装置100においては、一対の電極21、22を保持する筐体25が、図8に示すように概略矩形枠形状をなすものであり、その長手方向に沿った側壁において、一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの一部を開放するように構成されている。なお、図8及び図9には防爆機構4は図示していない。
【0042】
また、筐体25は、図8及び図9に示すように、開口された側辺開口2Mに対向するように壁体251を有しており、この壁体251により側辺開口2Mとの間に上下に出入り口を有する気体流路25xが形成される。
【0043】
具体的には、筐体25の長手方向に沿った左右一対の側壁に上面から下面に貫通する貫通孔25hが形成されており、この貫通孔25hにより気体流路25xが構成される。また、この貫通孔25hの側壁により側辺開口2Mに対向する壁体251が構成される。貫通孔25hは、図8に示すように、長手方向に沿って延びる直線状の長孔であり、本実施形態では、各側壁に2つの貫通孔25hが長手方向に沿って形成されている。そして、この貫通孔25hにより構成される気体流路25xには、前記送風機構3により生じる風(気体流)が流れ込む。これにより、開放された側辺開口2Mに風が流れて、一対の電極21、22の間に生じた結露水の蒸発を促進することができる。なお、貫通孔25hの形状及び数は上記に限られず適宜変更可能である。
【0044】
また、図5に示すように、各電極21、22の誘電体膜21a、22aの表面に1層のコーティング膜23が設けられている。
【0045】
コーティング膜23は、撥水性を有するものであり、ガラス、フッ素樹脂、シリコン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、フッ素含有DLC、SiO2、ZrO2、TiO2、SrO2、MgOのいずれか、又はその組み合わせである。また、コーティング膜23は、誘電体膜21a、22aの上面にほぼ均一に成膜するために、蒸着法、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ法、イオンプレーティング法などの薄膜形成方法、あるいは、めっき法、溶射法、スプレーコーティング、スピンコート法、塗布法、などで形成される。
【0046】
さらに、本実施形態の電極21、22は、絶縁体材料からなるスペーサ24により電極21、22間に所定距離の隙間が形成されている。スペーサ24は、図3に示すように、電極21、22の周縁部の複数個所に設けられている。なお、スペーサの位置は図3に限定されず、例えば結露水の蒸発促進を妨げない範囲において周縁部全体に亘って設けても良いし、電極の中央部等、流体流通孔21b、22b及び貫通孔21cを塞がない任意の位置に設けても良い。このスペーサ24の厚みとしては、500μm以下とすることが望ましい。500μmよりも大きくすると、プラズマを発生させるための電圧が大きくなり、オゾンが発生し易くなるためである。また、スペーサ24は、フッ素樹脂、エポキシ、ポリイミド、アルミナ、ガラスのいずれか、又はその組み合わせである。本実施形態のスペーサ24は前記誘電体膜21a、22aと同様に溶射法によって形成される。より具体的には、各電極21、22の誘電体膜21a、22a上にスペーサ24となる部材を例えば250μm以下で形成し、それらを重ね合わせることによって、500μm以下のスペーサ24となるようにしている。その他、一方の電極21(又は電極22)の誘電体膜21a(誘電体膜22a)にスペーサ24を形成しても良い。
【0047】
本実施形態のコーティング膜23は、誘電体膜21a、22aを溶射法によって成膜し、当該誘電体膜21a、22a上にスペーサ24となる部材を溶射法によって形成した後に成膜される。これにより、スペーサ24もコーティング膜23によって覆われることになり、スペーサ24に生じる結露及び水分付着を防止することができる。なお、誘電体膜21a、22aを成膜してコーティング膜23を成膜した後に、スペーサ24を形成しても良い。
【0048】
このようにスペーサ24を設けることによって、電極間距離をスペーサ24の厚み分大きくすることができ、図10に示すように、脱臭反応場が大きくなり、空気とプラズマとの接触体積が大きくなることから、脱臭効率が向上する。ここで脱臭性能とスペーサ24の厚みの依存性について図11に示す。スペーサ24を設けない場合の脱臭効率が20%であるのに対して、厚み10μmのスペーサ24を設けた場合の脱臭効率は30%、20μmでは32%、50μmでは極大の35%であり、脱臭効率が向上している。また100μmの脱臭効率は30%であり、10μmから100μmでは脱臭率の向上が顕著である。また、スペーサ24の厚みが100μmより大きくなるに従って脱臭効率も悪くなるが、500μmまでは20%以上である。一方、スペーサ24の厚みが500μmを超えると、スペーサ24を設けない場合よりも脱臭効率が悪くなり好ましくない。
【0049】
このように構成したプラズマ発生装置100は冷蔵庫の庫内において好適に用いることができる。冷蔵庫の庫内は、図12に示すように、除霜運転時において高湿度状態となり、電極間21、22間に結露が生じ易く又は水分が付着し易くなる。これに対して、本実施形態のプラズマ発生装置100は、電極間21、22の誘電体膜21a、22aの表面に撥水性のコーティング膜23を設けていることから、結露や水分付着が生じにくい。また、一対の電極21、22の左右一対の側辺において側辺開口2Mを開放していることから、結露が起こったとしても、その結露水を蒸発させることができ、スペーサ24によって電極21、22間の距離を大きくしていることから、その結露水が電極21、22間の外部に抜けやすい。
【0050】
次にこのように構成した本実施形態のプラズマ発生装置の乾燥性能を確認するため、冷蔵庫内にプラズマ発生装置を取り付けてイオン数を測定した。実験例として、側辺開口を開放せず、コーティング膜及びスペーサを設けないプラズマ発生装置(No.1)と、上述した貫通孔により側辺開口を開放して、コーティング膜及びスペーサを設けないプラズマ発生装置(No.2)と、側辺開口を開放せず、コーティング膜及びスペーサを設けたプラズマ発生装置(No.3)と、上述した貫通孔により側辺開口を開放して、コーティング膜及びスペーサを設けたプラズマ発生装置(No.4)とを準備した。これらNo.1〜No.4のイオン数の測定結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記の表1の実験結果から、一対の電極の側辺開口を開放しない場合には、コーティング膜及びスペーサを設けた場合であっても、冷蔵庫内での稼働日数が増えるにしたがって、イオン数の低下が顕著になることが分かった(実験例No.1、No.3)。これに対して、実験例No.2のように、側辺開口を開放させることによって、結露により初期イオン数の低下を最小限にすることが可能となることが分かる。さらに実験例No.4のように、側辺開口を開放させたものに、コーティング膜及びスペーサを組みわせればより効果的となり、冷蔵庫のような湿度変動が大きく、一対の電極間に結露が生じ易い環境であっても安定的に使用することが可能であることが分かった。
【0053】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るプラズマ発生装置100によれば、対応する各流体貫通孔21b、22bにおいて発生するプラズマの量を可及的に多くすることができ、このプラズマと流体との接触面積を可及的に大きくできる。これにより、イオン及びラジカルといった活性種の生成量を増加させることができ、当該活性種により脱臭する機能と、その活性種を装置外部に放出して浮遊菌及び付着菌を殺菌する機能とを十分に発揮できるようになる。また、筐体25が一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの少なくとも一部を開放しているので、一対の電極21、22内に生じる結露水を蒸発させ易くすることができ、一対の電極21、22内に結露水が蓄積することを防止することができる。これにより、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させることができ、プラズマの発生を安定化させて活性種の生成量を安定化させることができる。
【0054】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば前記実施形態の筐体25には、上下に出入り口を有する気体流路25xの他、図13に示すように、側辺開口2Mに対向する壁体251に貫通孔251aを設けて気体流路を形成しても良い。これならば、火炎の伝播を防ぎつつも、側辺開口2Mにより多くの風を送ることができる。
【0056】
また、前記実施形態の筐体25には、上下に出入り口を有する気体流路25xを形成しているが、図14に示すように、筐体25の側壁において、側辺開口2Mに対応して側方に開口する気体流路25yを形成しても良い。これによっても、側辺開口2Mに風を送ることができ、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させることができる。
【0057】
また、図15に示すように、前記筐体25が、一対の電極21、22の先端部及び後端部を保持して、電極21、22の左右側端部を保持しないように構成しても良い。これならば、左右側辺における側辺開口2Mのほぼ全体を開放することができ、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を一層向上させることができる。その他、筐体25を、一対の電極21、22の四つ角部を保持するようにして、左右側辺及び前後側辺における側辺開口2Mのほぼ全体を開放するようにしても良い。
【0058】
さらに、前記筐体又は一対の電極内部に発熱体を設けても良い。これにより側辺開口を開放して結露水の蒸発を促進する効果に加えて、発熱体の加熱効果により、より一層結露水の蒸発を促進することができ、誘電体膜をより短時間で乾燥させることができる。特に冷蔵庫などの電化製品などの場合、湿度センサや温度センサなどのセンサと連動させれば、最小限のエネルギーで効率よく、発熱体を稼動させることが可能となる。
【0059】
例えば前記実施形態では、コーティング膜を各電極の誘電体膜に設けたが、いずれか一方の誘電体膜に設けた場合であっても効果を奏する。
【0060】
また、前記実施形態では電極21の複数の流体流通孔21bが同一形状をなし、また電極22の複数の流体流通孔22bが同一形状をなすものであったが、それぞれ異なる形状をなすものであっても良い。
【0061】
また、前記実施形態では電極21の全ての流体流通孔21bが、電極22の複数の流体流通孔22bよりも小さく又は大きく形成されているが、電極21の一部の流体流通孔21bが電極22の流体流通孔22bにより小さく形成されており、その他の流体流通孔21bが電極22の流体流通孔22bよりも大きく形成されていても良い。
【0062】
さらに、前記実施形態では一方の電極21又は他方の電極22のいずれかに貫通孔が形成されているが、両方に貫通孔(半開口部)を形成するようにしても良い。
【0063】
その上、前記実施形態では流体流通孔は等断面形状をなすものであったが、その他、各電極に形成される流体流通孔にテーパ面を有するもの、すり鉢状またはお椀状の形状、つまり一方の開口から他方の開口に行くに従って縮径又は拡径するものであっても良い。
【0064】
加えて、流体流通孔は、円形状の他、楕円形状、矩形状、直線状スリット形状、同心円状スリット形状、波形状スリット形状、三日月形状、櫛形状、ハニカム形状又は星形状であっても良い。
【0065】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
100・・・プラズマ発生装置
2・・・プラズマ電極部
21・・・一方の電極
22・・・他方の電極
21a、22a・・・誘電体膜
21b、22b・・・流体流通孔
23・・・コーティング膜
24・・・スペーサ
25・・・筐体
3・・・送風機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置及びプラズマ発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアトピー、ぜんそく、アレルギー症状保有者の増大や新型インフルエンザの爆発流行などにみられる感染性のリスク増大などによって、殺菌や脱臭など生活環境の空気質制御ニーズが高まっている。また生活が豊かになるにつれて、保管食品の量の増大や食べ残し食品の保管機会が増加しており、冷蔵庫に代表される保管機器内の環境制御も重要性を増している。
【0003】
生活環境の空気質制御を目的とする従来技術は、フィルターに代表されるような物理的制御が一般的である。物理的制御は、空気中に浮遊する比較的大きな埃や塵、フィルター孔の大きさによっては、細菌やウィルスなども捕獲できる。また、活性炭のように無数の吸着サイトがある場合は、悪臭の臭気分子も捕獲可能である。しかし、捕獲するためには制御対象の空間内の空気を満遍なくフィルターに通す必要があり、装置が大型化し、フィルター交換等の維持コストもかさむという難点があるうえに、付着物に対しては効果が無い。そこで、付着物に対し殺菌や脱臭を可能とする手段として、化学的活性種を殺菌や脱臭を行いたい空間に放出することがあげられる。薬品の散布や芳香剤、消臭剤の放出では、あらかじめ活性種を用意する必要があり、定期的な補充が不可欠である。それに対し、大気中にプラズマを発生させそこで生成される化学的活性種を利用し、殺菌や脱臭を試みる手段が近年増えてきている。
【0004】
大気中にプラズマを放電により発生させ、そこで生成されたイオンやラジカル(以下、活性種)によって殺菌や脱臭を行う技術は、次の2つの形式に分類できる。
(1)大気中に浮遊する菌やウィルス(以下、浮遊菌)、もしくは悪臭物質(以下、臭気)を装置内の限られた容積内で活性種と反応させる、いわゆる受動型のプラズマ発生装置(例えば、特許文献1)
(2)プラズマ発生部で生成された活性種を(1)よりも容積の大きな閉空間(例えば、居室、トイレ、乗用車の車内等)へ放出し、大気中での活性種と浮遊菌や臭気との衝突により反応させる、いわゆる能動型のプラズマ発生装置(例えば、特許文献2)
【0005】
(1)の受動型のプラズマ発生装置の利点は、小容積内でプラズマを発生させて高濃度の活性種が生成されるため、高い殺菌効果及び脱臭効果が期待される。一方、欠点としては浮遊菌や臭気を装置内に導入する必要があるため、装置が大型化し、またプラズマ発生から副生成物としてオゾンが発生しやすく、オゾンを装置外に漏洩させないために、吸着もしくは分解するフィルターを別途設置する必要がある。
【0006】
次に、(2)の能動型のプラズマ発生装置の利点は、装置を比較的小さくでき、浮遊菌の殺菌や空気中の臭気の分解に加え、衣類や生活用品の表面に付着した菌(以下、付着菌)の殺菌や表面に吸着した臭気の分解も期待できる点である。一方、欠点としては、活性種が装置の体積に比べて非常に大きな閉空間内に拡散されることから濃度が低くなるため、寿命の長い活性種のみに殺菌や脱臭の効果を期待せざるを得ない点である。その結果、臭気濃度の高い空間(活性種濃度に対して1万倍程度高い濃度)においてはほとんど脱臭効果が期待できないことになる。
【0007】
以上のことから、受動型のプラズマ発生装置では、当該装置に流入する空気流に含まれる浮遊菌や臭気に対してのみ効果が限定され、能動型のプラズマ発生装置では濃度の低い浮遊菌、付着菌、臭気に対しての効果しか期待できない。即ち、従来技術を利用し実現できることは、「浮遊菌の殺菌と脱臭」、あるいは「濃度の低い浮遊菌、付着菌の殺菌および付着臭気の脱臭」のどちらかに限定されることになる。
【0008】
また、プラズマ発生部を構成する電極では、電極のプラズマ発生部位に例えば多孔質の誘電体膜を使用する場合が多く、そのため、高湿度下においては、誘電体膜自身の吸湿作用のため電気的特性が変化してしまい、プラズマの発生を阻害してしまう。特に冷蔵庫のような低温で、かつ湿度が大きく変化する環境においては、電極間に結露などによって、水分が蓄積してしまうと、乾燥が困難となる。そのためプラズマの発生が止まり、殺菌、脱臭性能が低下してしまう。従って、冷蔵庫の内部が高湿度の状態が続くと殺菌性能を維持することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−224211号公報
【特許文献2】特開2003−79714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、浮遊菌及び付着菌の殺菌と脱臭の両方を同時に実現する技術であり、プラズマを発生させて活性種により脱臭する受動型の機能と、その活性種を装置の外に対し放出し、付着菌を殺菌する能動型の機能の二つを同時に兼ね備えさせるべく活性種の生成量を増やすとともに、誘電体膜の乾燥性能を向上させることによってプラズマの発生を安定化させることで活性種の生成量を安定化させることを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係るプラズマ発生装置は、対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極を保持する筐体を備え、前記筐体が、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放していることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、筐体が一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているので、一対の電極内に生じる結露水を蒸発させ易くすることができ、一対の電極内に結露水が蓄積することを防止することができる。これにより、誘電体膜の乾燥性能を向上させることができ、プラズマの発生を安定化させて活性種の生成量を安定化させることができる。
【0013】
なお、一対の電極の側辺開口全体を筐体で覆うことで側辺開口を閉塞した場合、一対の電極内で生じる結露水のうち、流体連通孔近傍の誘電体膜は乾燥することが可能であったが、一対の電極の周辺部などのそれ以外の部分は開放されていないので、乾燥性能が著しく悪い。本発明は、電極の側辺開口を開放させることによって、流体流通孔近傍の誘電体膜だけでなく、それ以外の部分の誘電体膜を乾燥することができる。
【0014】
また本発明によれば、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成することにより、対応する各流体貫通孔において発生するプラズマの量を可及的に多くすることができ、このプラズマと流体との接触面積を可及的に大きくできる。これにより、イオン及びラジカルといった活性種の生成量を増加させることができ、当該活性種により脱臭する機能と、その活性種を装置外部に放出して浮遊菌及び付着菌を殺菌する機能とを十分に発揮できるようになる。なお、本明細書でいう対応する箇所とは、電極の面板方向から視て、双方の電極に形成された各流体流通孔が実質的に同じ位置にあることをいい、直交座標系においてz軸方向よりxy平面状の一対の電極を見たときに、双方の電極において略同じ(x、y)の座標位置であることをいう。
【0015】
開放された側辺開口に気体を通りやすくして開放された側辺開口から水分を抜けやすくするためには、前記筐体が、前記開放された側辺開口に対向する壁体を有し、前記側辺開口と前記壁体との間に気体流路を形成するものであることが望ましい。また、側辺開口に対向して壁体を設けることで、側辺開口近傍のプラズマによって生じた火炎が外部に伝播することを防止することもできる。
【0016】
上記の気体流路を簡単な構成により構成するためには、前記筐体の側壁部に前記側辺開口と連通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔により前記気体流路が形成されていることが望ましい。
【0017】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものであることが望ましい。これならば、開放された側辺開口に効率的に風を流すことができ、側辺開口から水分が抜けやすくなり、誘電体膜の乾燥性能をより一層向上させることができる。また、この送風機構により流体が効率的に流体流通孔を通過することになり活性種の発生を促進すると共に、脱臭効果を増大させることもできる。例えば冷蔵庫などの電化製品などの場合、湿度センサや温度センサなどのセンサと連動させれば、最小限のエネルギーで効率よく、送風機構を稼動させることが可能となる。また結露の状態は、印加電圧の低下によって検知可能であるので、送風量を調節することも有効である。
【0018】
ここで、前記送風機構により前記流体流通孔を通過させる風の流速を0.1m/s以上30m/s以下の範囲内としていることが望ましい。
【0019】
誘電体膜が溶射法によって形成されたものの場合、その表面には微細な凹凸が形成され、これらが対向することで乾燥性能が著しく低下してしまうが、本発明のように側辺開口を開放させることによって、この乾燥性能の低下を防止することができる。
【0020】
プラズマ発生部位での結露及び水分付着を防止するとともに、結露又は水分を蒸発させ易くして、殺菌性能及び脱臭性能の低下を防止するためには、前記誘電体膜の表面上にコーティング膜が設けられていることが望ましい。このとき、前記コーティング膜が、撥水性(疎水性)を有するものであることが特に望ましい。なお、疎水性のコーティング膜を用いることにより、当該膜に疎水性を有する臭気成分を吸着し易くすることができ、脱臭効率を向上させることができる。
【0021】
前記コーティング膜の厚さが、0.01μm以上100μm以下であることが望ましい。ここでコーティング膜を100μm以上にすると、誘電体膜自身の物性が損なわれてしまうこと、また、誘電体膜の表面に形成された凹凸が埋没してしまい、プラズマ発生効果が低下してしまう。
【0022】
前記一対の電極の間に500μm以下の厚みを有するスペーサを有することが望ましい。これならば、電極間の距離を大きくすることができ、脱臭反応場を大きくすることができるので、臭気の脱臭効率を向上させることができる。また、スペーサにより電極間の距離を大きくしていることから、水分付着が起こったとしても微細な水滴であり、電極間から外部に抜けやすくすることができる。ここでスペーサの形成方法としては、蒸着法、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ法、イオンプレーティング法などの薄膜形成方法、あるいは、めっき法、溶射法、スプレーコーティング、スピンコート法、塗布法などが考えられる。
【0023】
流体貫通孔を通過した流体に含まれる活性種の数を可及的に増大させると共に、発生するオゾンの濃度を抑制するためには、前記各電極に印加する電圧をパルス形状とし、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲内とし、且つパルス幅を0.1μ秒以上300μ秒以下の範囲内としていることが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
このように構成した本発明によれば、活性種の生成量を増やすことによって付着菌の殺菌と脱臭の両方を同時に実現することができるとともに、誘電体膜の乾燥性能を向上させることによってプラズマの発生を安定化させることで活性種の生成量を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のプラズマ発生装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】プラズマ発生装置の作用を示す模式図。
【図3】電極部を示す平面図。
【図4】電極部及び防爆機構を示す断面図。
【図5】電極部の対向面の構成を示す拡大断面図。
【図6】流体流通孔及び貫通孔を模式的に示す部分拡大平面図及び断面図。
【図7】イオン数密度とオゾン濃度とのパルス幅依存性を示す図。
【図8】プラズマ電極部の平面図。
【図9】筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図10】電極間の距離の大小による脱臭効果の違いを示す概念図。
【図11】脱臭性能におけるスペーサ厚の依存性を示す図。
【図12】冷蔵庫内の温度湿度変化の一例。
【図13】変形実施形態における筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図14】変形実施形態における筐体の構成を主として示す拡大断面図。
【図15】変形実施形態におけるプラズマ電極部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本実施形態に係るプラズマ発生装置100は、例えば冷蔵庫、洗濯機、衣類乾燥機、掃除機、空調機又は空気清浄機等の家庭電化製品に用いられるものであり、当該家庭電化製品の内部又は外部の空気の脱臭やそれら製品内部又は外部の浮遊菌又は付着菌を殺菌するものである。
【0028】
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、マイクロギャッププラズマ(Micro Gap Plasma)によりイオンやラジカル等の活性種を生成させるプラズマ電極部2と、当該プラズマ電極部2の外部に設けられて当該プラズマ電極部2に強制的に風(空気流)を送る送風機構3と、前記プラズマ電極部2の外部に設けられてプラズマ電極部2で生じる火炎が外部に伝播しないようにする防爆機構4、および電極部2に高電圧を印加するための電源5とを備えている。
【0029】
以下、各部2〜5について各図を参照して説明する。
【0030】
プラズマ電極部2は、図2〜図6に示すように、対向面に誘電体膜21a、22aを設けた一対の電極21、22と、当該一対の電極21、22を保持する筐体25を有し、それら電極21、22間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものである。各電極21、22は、特に図3に示すように、平面視において(電極21、22の面板方向から見たときに)概略矩形状をなすものであり、例えばSUS403といったステンレス鋼から形成されている。なお、電極部2の電極21、22の縁部には、電源5からの電圧が印加される印加端子2Tが形成されている(図3参照)。
【0031】
ここで電源5によるプラズマ電極部2への電圧印加方法は、各電極21、22に印加する電圧をパルス形状とし、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲内とし、且つパルス幅を0.1μ秒以上かつ300μ秒以下の範囲内としている。図7に示すように、パルス幅が300μ秒以下において、イオン数密度が測定され、かつオゾン濃度が低くなり、パルス幅が小さくなるに従って、イオン数は増加し、オゾン濃度は減少する。これにより、オゾン発生量を抑制し、プラズマで生成された活性種を、従来技術に良く見られるようなフィルター等で失うことなく、効率的に放出することができ、その結果、付着菌の殺菌を短時間で実現することが可能となる。
【0032】
また、図5に示すように、電極21、22の対向面には、例えばチタン酸バリウム等の誘電体が塗布されて誘電体膜21a、22aが形成されている。この誘電体膜21a、22aの表面粗さ(本実施形態では算出平均粗さRa)は0.1μm以上100μm以下である。この他表面粗さとしては、最大高さRy、十点平均粗さRzを用いて規定しても良い。なお、前記誘電体膜21a、22aの表面粗さは、溶射法によって制御することが考えられる。また、電極に塗布する誘電体としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化シリコン、燐酸銀、チタン酸ジルコン酸鉛、シリコンカーバイド、酸化インジウム、酸化カドミニウム、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0033】
さらに図3、図4及び図6に示すように、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔21b、22bを設けてこれらが連通して貫通するように構成するとともに、電極21、22の面板方向から視たときに(平面視において)、対応する各流体貫通孔21b、22bの輪郭の少なくとも一部が互いに異なる位置となるように構成されている。つまり、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの平面視形状と、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの平面視形状とが互いに異なるように構成されている。
【0034】
具体的には、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ形成された流体流通孔21b、22bは、平面視において概略円形状をなすものであり(図3、図6参照)、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの開口サイズ(開口径)が、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの開口サイズ(開口径)よりも小さく(例えば開口径が10μm以上小さく)形成されている。
【0035】
また、同じく図3、図6に示すように、一方の電極21に形成された流体流通孔21bと他方の電極22に形成された流体流通孔22bとは同心円状に形成されている。なお、本実施形態では、一方の電極21に形成された複数個の流体流通孔21bは全て同一形状をなし、他方の電極22に形成された複数個の流体流通孔22bも全て同一形状をなし、一方の電極21に形成された流体流通孔21b全てが、他方の電極22に形成された流体流通孔22bよりも小さく形成されている。本実施例では概略円形状として効果を示したが、開口部は円形に限らずどのような形でもよく、平面視において対応する各流体貫通孔の輪郭の少なくとも一部が互いに異なる位置となるように構成されていればよい。
【0036】
さらに、各電極21、22に形成された流体流通孔21b、22bの開口総面積が、当該各電極21、22の総面積に対して2%以上90%以下の範囲内である。具体的には、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの開口総面積を、電極22の総面積に対して2%以上90%以下の範囲内としている。なお、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの開口総面積を2%以上90%以下の範囲内としても良い。
【0037】
そして本実施形態のプラズマ電極部2は、図3及び図6に示すように、流体流通孔21b、22bとは別に、一方の電極21に貫通孔21cを設けてこの貫通孔21cが他方の電極22によってその対向面側の開口が塞がれるように構成している。なお、前記各電極21、22に形成された流体流通孔21b、22bからなるものを以下、完全開口部という場合があるが、これとの比較において貫通孔21cにより形成されるものは半開口部という。
【0038】
貫通孔21cの開口サイズを、流体流通孔21bの開口サイズよりも10μm以上小さく形成している。貫通孔21cは、規則的に設けられた流体流通孔21bの一部を置き換えて形成されており、貫通孔21cは流体流通孔21bの周囲に設けられている(図3参照)。
【0039】
送風機構3は、前記プラズマ電極部2の他方の電極22側(プラズマ電極部2の前段)に配置されており、プラズマ電極部2に形成された流体流通孔21b、22b(完全開口部)に向かって強制的に風を送る送風ファンを有するものである。具体的にこの送風機構3は、流体流通孔21b、22bを通過させる風の流速を0.1m/s以上30m/s以下の範囲内としている。
【0040】
防爆機構4は、図4に示すように、一対の電極21、22の外側に配置された保護カバー41を有し、可燃性ガスが流体流通孔21b、22bに流入してプラズマによって生じた火炎が、保護カバー41を越えて外部に伝播しないように構成されたものである。この保護カバー41は、筐体25の上面及び下面に着脱可能に取り付けられており、金属メッシュ411を有する。この金属メッシュ411の線径は、1.5mm以下の範囲内であり、且つ金属メッシュ411の開口率は30%以上である。
【0041】
しかして本実施形態のプラズマ発生装置100においては、一対の電極21、22を保持する筐体25が、図8に示すように概略矩形枠形状をなすものであり、その長手方向に沿った側壁において、一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの一部を開放するように構成されている。なお、図8及び図9には防爆機構4は図示していない。
【0042】
また、筐体25は、図8及び図9に示すように、開口された側辺開口2Mに対向するように壁体251を有しており、この壁体251により側辺開口2Mとの間に上下に出入り口を有する気体流路25xが形成される。
【0043】
具体的には、筐体25の長手方向に沿った左右一対の側壁に上面から下面に貫通する貫通孔25hが形成されており、この貫通孔25hにより気体流路25xが構成される。また、この貫通孔25hの側壁により側辺開口2Mに対向する壁体251が構成される。貫通孔25hは、図8に示すように、長手方向に沿って延びる直線状の長孔であり、本実施形態では、各側壁に2つの貫通孔25hが長手方向に沿って形成されている。そして、この貫通孔25hにより構成される気体流路25xには、前記送風機構3により生じる風(気体流)が流れ込む。これにより、開放された側辺開口2Mに風が流れて、一対の電極21、22の間に生じた結露水の蒸発を促進することができる。なお、貫通孔25hの形状及び数は上記に限られず適宜変更可能である。
【0044】
また、図5に示すように、各電極21、22の誘電体膜21a、22aの表面に1層のコーティング膜23が設けられている。
【0045】
コーティング膜23は、撥水性を有するものであり、ガラス、フッ素樹脂、シリコン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、フッ素含有DLC、SiO2、ZrO2、TiO2、SrO2、MgOのいずれか、又はその組み合わせである。また、コーティング膜23は、誘電体膜21a、22aの上面にほぼ均一に成膜するために、蒸着法、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、スパッタ法、イオンプレーティング法などの薄膜形成方法、あるいは、めっき法、溶射法、スプレーコーティング、スピンコート法、塗布法、などで形成される。
【0046】
さらに、本実施形態の電極21、22は、絶縁体材料からなるスペーサ24により電極21、22間に所定距離の隙間が形成されている。スペーサ24は、図3に示すように、電極21、22の周縁部の複数個所に設けられている。なお、スペーサの位置は図3に限定されず、例えば結露水の蒸発促進を妨げない範囲において周縁部全体に亘って設けても良いし、電極の中央部等、流体流通孔21b、22b及び貫通孔21cを塞がない任意の位置に設けても良い。このスペーサ24の厚みとしては、500μm以下とすることが望ましい。500μmよりも大きくすると、プラズマを発生させるための電圧が大きくなり、オゾンが発生し易くなるためである。また、スペーサ24は、フッ素樹脂、エポキシ、ポリイミド、アルミナ、ガラスのいずれか、又はその組み合わせである。本実施形態のスペーサ24は前記誘電体膜21a、22aと同様に溶射法によって形成される。より具体的には、各電極21、22の誘電体膜21a、22a上にスペーサ24となる部材を例えば250μm以下で形成し、それらを重ね合わせることによって、500μm以下のスペーサ24となるようにしている。その他、一方の電極21(又は電極22)の誘電体膜21a(誘電体膜22a)にスペーサ24を形成しても良い。
【0047】
本実施形態のコーティング膜23は、誘電体膜21a、22aを溶射法によって成膜し、当該誘電体膜21a、22a上にスペーサ24となる部材を溶射法によって形成した後に成膜される。これにより、スペーサ24もコーティング膜23によって覆われることになり、スペーサ24に生じる結露及び水分付着を防止することができる。なお、誘電体膜21a、22aを成膜してコーティング膜23を成膜した後に、スペーサ24を形成しても良い。
【0048】
このようにスペーサ24を設けることによって、電極間距離をスペーサ24の厚み分大きくすることができ、図10に示すように、脱臭反応場が大きくなり、空気とプラズマとの接触体積が大きくなることから、脱臭効率が向上する。ここで脱臭性能とスペーサ24の厚みの依存性について図11に示す。スペーサ24を設けない場合の脱臭効率が20%であるのに対して、厚み10μmのスペーサ24を設けた場合の脱臭効率は30%、20μmでは32%、50μmでは極大の35%であり、脱臭効率が向上している。また100μmの脱臭効率は30%であり、10μmから100μmでは脱臭率の向上が顕著である。また、スペーサ24の厚みが100μmより大きくなるに従って脱臭効率も悪くなるが、500μmまでは20%以上である。一方、スペーサ24の厚みが500μmを超えると、スペーサ24を設けない場合よりも脱臭効率が悪くなり好ましくない。
【0049】
このように構成したプラズマ発生装置100は冷蔵庫の庫内において好適に用いることができる。冷蔵庫の庫内は、図12に示すように、除霜運転時において高湿度状態となり、電極間21、22間に結露が生じ易く又は水分が付着し易くなる。これに対して、本実施形態のプラズマ発生装置100は、電極間21、22の誘電体膜21a、22aの表面に撥水性のコーティング膜23を設けていることから、結露や水分付着が生じにくい。また、一対の電極21、22の左右一対の側辺において側辺開口2Mを開放していることから、結露が起こったとしても、その結露水を蒸発させることができ、スペーサ24によって電極21、22間の距離を大きくしていることから、その結露水が電極21、22間の外部に抜けやすい。
【0050】
次にこのように構成した本実施形態のプラズマ発生装置の乾燥性能を確認するため、冷蔵庫内にプラズマ発生装置を取り付けてイオン数を測定した。実験例として、側辺開口を開放せず、コーティング膜及びスペーサを設けないプラズマ発生装置(No.1)と、上述した貫通孔により側辺開口を開放して、コーティング膜及びスペーサを設けないプラズマ発生装置(No.2)と、側辺開口を開放せず、コーティング膜及びスペーサを設けたプラズマ発生装置(No.3)と、上述した貫通孔により側辺開口を開放して、コーティング膜及びスペーサを設けたプラズマ発生装置(No.4)とを準備した。これらNo.1〜No.4のイオン数の測定結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記の表1の実験結果から、一対の電極の側辺開口を開放しない場合には、コーティング膜及びスペーサを設けた場合であっても、冷蔵庫内での稼働日数が増えるにしたがって、イオン数の低下が顕著になることが分かった(実験例No.1、No.3)。これに対して、実験例No.2のように、側辺開口を開放させることによって、結露により初期イオン数の低下を最小限にすることが可能となることが分かる。さらに実験例No.4のように、側辺開口を開放させたものに、コーティング膜及びスペーサを組みわせればより効果的となり、冷蔵庫のような湿度変動が大きく、一対の電極間に結露が生じ易い環境であっても安定的に使用することが可能であることが分かった。
【0053】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るプラズマ発生装置100によれば、対応する各流体貫通孔21b、22bにおいて発生するプラズマの量を可及的に多くすることができ、このプラズマと流体との接触面積を可及的に大きくできる。これにより、イオン及びラジカルといった活性種の生成量を増加させることができ、当該活性種により脱臭する機能と、その活性種を装置外部に放出して浮遊菌及び付着菌を殺菌する機能とを十分に発揮できるようになる。また、筐体25が一対の電極21、22により形成される側辺開口2Mの少なくとも一部を開放しているので、一対の電極21、22内に生じる結露水を蒸発させ易くすることができ、一対の電極21、22内に結露水が蓄積することを防止することができる。これにより、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させることができ、プラズマの発生を安定化させて活性種の生成量を安定化させることができる。
【0054】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば前記実施形態の筐体25には、上下に出入り口を有する気体流路25xの他、図13に示すように、側辺開口2Mに対向する壁体251に貫通孔251aを設けて気体流路を形成しても良い。これならば、火炎の伝播を防ぎつつも、側辺開口2Mにより多くの風を送ることができる。
【0056】
また、前記実施形態の筐体25には、上下に出入り口を有する気体流路25xを形成しているが、図14に示すように、筐体25の側壁において、側辺開口2Mに対応して側方に開口する気体流路25yを形成しても良い。これによっても、側辺開口2Mに風を送ることができ、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を向上させることができる。
【0057】
また、図15に示すように、前記筐体25が、一対の電極21、22の先端部及び後端部を保持して、電極21、22の左右側端部を保持しないように構成しても良い。これならば、左右側辺における側辺開口2Mのほぼ全体を開放することができ、誘電体膜21a、22aの乾燥性能を一層向上させることができる。その他、筐体25を、一対の電極21、22の四つ角部を保持するようにして、左右側辺及び前後側辺における側辺開口2Mのほぼ全体を開放するようにしても良い。
【0058】
さらに、前記筐体又は一対の電極内部に発熱体を設けても良い。これにより側辺開口を開放して結露水の蒸発を促進する効果に加えて、発熱体の加熱効果により、より一層結露水の蒸発を促進することができ、誘電体膜をより短時間で乾燥させることができる。特に冷蔵庫などの電化製品などの場合、湿度センサや温度センサなどのセンサと連動させれば、最小限のエネルギーで効率よく、発熱体を稼動させることが可能となる。
【0059】
例えば前記実施形態では、コーティング膜を各電極の誘電体膜に設けたが、いずれか一方の誘電体膜に設けた場合であっても効果を奏する。
【0060】
また、前記実施形態では電極21の複数の流体流通孔21bが同一形状をなし、また電極22の複数の流体流通孔22bが同一形状をなすものであったが、それぞれ異なる形状をなすものであっても良い。
【0061】
また、前記実施形態では電極21の全ての流体流通孔21bが、電極22の複数の流体流通孔22bよりも小さく又は大きく形成されているが、電極21の一部の流体流通孔21bが電極22の流体流通孔22bにより小さく形成されており、その他の流体流通孔21bが電極22の流体流通孔22bよりも大きく形成されていても良い。
【0062】
さらに、前記実施形態では一方の電極21又は他方の電極22のいずれかに貫通孔が形成されているが、両方に貫通孔(半開口部)を形成するようにしても良い。
【0063】
その上、前記実施形態では流体流通孔は等断面形状をなすものであったが、その他、各電極に形成される流体流通孔にテーパ面を有するもの、すり鉢状またはお椀状の形状、つまり一方の開口から他方の開口に行くに従って縮径又は拡径するものであっても良い。
【0064】
加えて、流体流通孔は、円形状の他、楕円形状、矩形状、直線状スリット形状、同心円状スリット形状、波形状スリット形状、三日月形状、櫛形状、ハニカム形状又は星形状であっても良い。
【0065】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
100・・・プラズマ発生装置
2・・・プラズマ電極部
21・・・一方の電極
22・・・他方の電極
21a、22a・・・誘電体膜
21b、22b・・・流体流通孔
23・・・コーティング膜
24・・・スペーサ
25・・・筐体
3・・・送風機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極を保持する筐体を備え、
前記筐体が、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記筐体が、前記開放された側辺開口に対向する壁体を有し、前記側辺開口と前記壁体との間に気体流路を形成するものである請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記筐体の側壁部に前記側辺開口と連通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔により前記気体流路が形成されている請求項2記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものである請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記誘電体膜が、溶射法によって成膜されたものである請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記誘電体膜の表面上にコーティング膜が設けられている請求項1乃至5の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記コーティング膜が撥水性を有する請求項6記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記コーティング膜の厚さが、0.01μm以上100μm以下である請求項6又は7記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記一対の電極の間に500μm以下の厚みを有するスペーサを有する請求項1乃至8の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記スペーサが、溶射法によって形成されたものである請求項9記載のプラズマ発生装置。
【請求項11】
前記スペーサの表面にコーティング層が設けられている請求項9又は10記載のプラズマ発生装置。
【請求項12】
対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極及び当該一対の電極を保持する筐体を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているプラズマ発生方法。
【請求項13】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものである請求項12記載のプラズマ発生方法。
【請求項1】
対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極を保持する筐体を備え、
前記筐体が、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記筐体が、前記開放された側辺開口に対向する壁体を有し、前記側辺開口と前記壁体との間に気体流路を形成するものである請求項1記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記筐体の側壁部に前記側辺開口と連通する貫通孔が形成されており、当該貫通孔により前記気体流路が形成されている請求項2記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものである請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記誘電体膜が、溶射法によって成膜されたものである請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記誘電体膜の表面上にコーティング膜が設けられている請求項1乃至5の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記コーティング膜が撥水性を有する請求項6記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記コーティング膜の厚さが、0.01μm以上100μm以下である請求項6又は7記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記一対の電極の間に500μm以下の厚みを有するスペーサを有する請求項1乃至8の何れかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記スペーサが、溶射法によって形成されたものである請求項9記載のプラズマ発生装置。
【請求項11】
前記スペーサの表面にコーティング層が設けられている請求項9又は10記載のプラズマ発生装置。
【請求項12】
対向面の少なくとも一方に誘電体膜を設けた一対の電極及び当該一対の電極を保持する筐体を有し、それら電極間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものにおいて、各電極の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔を設けてこれらが貫通するように構成するとともに、前記一対の電極により形成される側辺開口の少なくとも一部を開放しているプラズマ発生方法。
【請求項13】
前記一対の電極の前段又は後段に送風機構を設け、前記開放された側辺開口に風を流すものである請求項12記載のプラズマ発生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−226949(P2012−226949A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93103(P2011−93103)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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