説明

プラズマ発生装置

【課題】本発明は、プラズマ発生装置において小型化と温度上昇に起因するマッチングのずれの防止を図る。
【解決手段】
プラズマ発生装置1はアンテナ10の近傍に配置された放電管11、アンテナ10に高周波電力を供給する高周波電源13、整合回路部14、位相調整部15を備える。位相調整部15は、中空芯管24の外周に形成された螺旋状の溝24bに導線25を収容することで中空芯管24に導線25を巻き付けてなるコイル23A,23Bを備える、プラズマ発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉されたチャンバ内ではない開放系での運用(ロボットの搭載等の設備への組込)に適したプラズマ発生装置が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この種のプラズマ発生装置が備える位相調整部としては、平板状の波状導体で構成したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−259626号公報
【特許文献2】特許第4687543号明細書
【特許文献3】特開2008−177086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ自体からもノイズが発生するので、前述のように開放系で運用した場合、プラズマ発生装置が発生するノイズの完全な除去は実質的に困難である。そのため、例えば162.72MHzであった周波数帯を、ノイズの最大許容値が定められていないISM(Industry-Science-Medical)バンド帯の一つである40.68MHzに低下させることが考えられる。しかし、前述のように位相調整部が波状パターンの平板状の導体であると、周波数帯を例えば162.72MHzから40.68MHzに低下させるとすると、位相調整部を構成する波状導体の線長は約200mmから約2000mmにまで約10倍程度も延びる。位相調整部を構成する波状導体の線長がこのように大幅に延びると、プラズマ発生装置全体が大幅に大型化する。
【0005】
フェライトコアを利用して位相調整部を構成すれば、位相調整部を小型化できることが知られている。しかし、フェライトコアを利用した場合、熱の蓄積が顕著であり、温度上昇に伴ってインダクタンス成分が変動してマッチングのずれが拡大する。
【0006】
本発明は、プラズマ発生装置において小型化と温度上昇に起因するインダクタンス成分が変動によるマッチングのずれの防止を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナと、前記アンテナの近傍に配置された放電管と、高周波電力を前記アンテナに供給する高周波電源と、前記高周波電源からの高周波を入力して反射波を調整する整合回路部と、前記整合回路部と前記アンテナとの間に介在する位相調整部とを備え、前記位相調整部は、中空芯管の外周に形成された螺旋状の溝に導線を収容することで前記中空芯管に前記導線を巻き付けてなるコイルを少なくとも1個備える、プラズマ発生装置を提供する。
【0008】
位相調整部は中空芯管に導線を巻き付けてなるコイルを備えるので、高周波電源の周波数帯を比較的低い周波数帯に設定したことで導体の線長が延びた場合でも、位相調整部を小型化できる。
【0009】
コイルの導体は中空芯管の溝に収容されており、導線表面と中空芯管とは十分な接触面積が確保されているので、導線の発生する抵抗熱は熱伝導により効率的に中空芯管に伝わる。また、中空芯管は外周側の熱伝達で冷却されるだけでなく内周が外気と接触していることでも冷却されるので、中空芯管自体が外気により効率的に冷却される。従って、コイルの導線を効果的に冷却でき、温度上昇に起因するインダクタンス成分の変動に起因するマッチングのずれを防止できる。
【0010】
コイルの導線は中空芯管の溝に収容されているので、中空芯管に対して各ターンの導線の位置は一定に保持される。つまり、コイルの形状は一定に保持される。その結果、コイル成分が一定に保持され、導線の中空芯管に対するずれに起因するコイル成分の変動を抑制できる。
【0011】
また、中空芯管の溝に収容することでコイルの各ターンの導線の位置を一定に保持するので、隣接するターンの導線間は絶縁が確保される一定距離を隔てた状態で確実に保持される。つまり、導線の位置ずれにより隣接する導線が接近し、絶縁破壊によって火花の発生がするのを確実に防止できる。
【0012】
前記位相調整部は複数個の前記コイルを備えることが好ましい。
【0013】
単一ではなく複数個のコイルで位相調整部を構成することにより、位相調整部の長手方向の寸法を低減できる。
【0014】
前記位相調整部は、直列に接続された偶数個の前記コイルを備え、かつ偶数個の前記コイルは同方向に並んで延びる姿勢で配置されていることがさらに好ましい。
【0015】
この構成により、最初のコイルにおける中空芯管に対する導線の巻き始め側の端部と、最後のコイルにおける中空芯管に対する導線の巻き終わり側の端部とが中空芯管の長手方向の同じ側に位置する。そのため、整合回路部やアンテナとの電気的接続のための導線の配索が容易になる。
【0016】
特に、隣接する偶数個である少なくとも2個のコイル間で、前記中空芯管に対する巻き始めから巻き終わりに向かう導線の進行方向を互いに逆方向に設定することが好ましい。
【0017】
この構成により、隣接するコイルが発生する磁界の向きが反対となって互いにキャンセルされるので、各コイルの発生する磁界に起因するインダクタンス成分の変動を抑制できる。
【0018】
前記中空芯管が外周面に接し、かつ前記中空芯管の両端開口が開口状態で維持されるように、前記コイルを前記中空芯管と挟んで収容するケースをさらに備えることが好ましい。
【0019】
この構成によりコイルを構成する導線が発生する抵抗熱は、ケースへの熱伝達によってても排熱されるので、より効果的にコイルの導体を冷却し、温度上昇に起因するマッチングのずれをより確実に防止できる。
【0020】
送風機構をさらに備え、前記整合回路部と前記位相調整部は前記送風機構の送風方向に離れる側から順に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るプラズマ発生装置によれば、位相調整部は中空芯管の外周に形成された螺旋状の溝に導線を巻き付けてなるコイルを備えるので、高周波電源の周波数帯を比較的低い周波数帯に設定したことで導線の線長が延びた場合でも、位相調整部を小型化でき、温度上昇に起因するインダクタンス成分の変動に起因するマッチングのずれも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態係るプラズマ発生装置の正面図。
【図2】本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置の斜視図(ケーシングカバーは取り外している。)。
【図3】本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置を別の方向から見た斜視図(ケーシングカバーは取り外している。)。
【図4】位相調整部及び整合回路部を示す斜視図。
【図5】位相調整部及び整合回路部を示す斜視図。
【図6】本発明の実施形態係るプラズマ発生装置の簡易化した模式回路図。
【図7】図2のVII-VII線での模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1から図3は本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置1を示す。本実施形態におけるプラズマ発生装置1は、密閉されたチャンバ内ではない開放系で運用されるいわゆる大気圧プラズマ発生装置である。プラズマ発生装置1のケーシング2は、上壁部3a、下壁部3b、及び側壁部3c(図3に最も明瞭に示す)を備えるベース3と、ベース3を囲むケーシングカバー4(明瞭化のため、プラズマ発生装置1の内部を透過させて図示している。)を備える(図2及び図3にはケーシングカバー4を図示していない)。ベース3とケーシングカバー4で構成された空間内にプラズマ発生のための要素が収容されている。
【0025】
ベース3はロボット等にプラズマ発生装置1を搭載するための取付部(図示せず)が設けられている。
【0026】
ベース3の上壁部3aにはケーシング内の熱を排出可能な図示しない排気ダクトと連結される排気口6が設けられている。排気ダクトから排気口6を介してケーシング2内から排出されるエアは、ケーシングカバー4の下側部に設けられた多数の貫通孔からなる吸気口7より吸気される。
【0027】
ベース3の下側の部位には絶縁材料からなる基板9が設けられている。この基板9上には平板状の波板導体からなるアンテナ10が形成されている。アンテナ10の近傍には放電管11が配置されている。放電管11は下端がベース3の下壁部3bを貫通してケーシング2の外部に突出している。アンテナ10には図6に模式的に示す高周波電源から高周波電力が形成される。放電管11の上端側はベース3の上壁部3aに設けられたガス供給口12に連通している。ガス供給口12には図示しないプロセスガス源からプロセスガスが供給される。アンテナ10に高周波電力を供給している状態で、プロセスガスが放電管11内を通過すると大気圧下でのプラズマが発生し、発生したプラズマは放電管11の下端から大気中に放出される。
【0028】
ベース3上には高周波電源13(図6に示す)からの高周波を入射して反射波を調整するための整合回路部14と、整合回路部14とアンテナ10との間に電気的に介在する位相調整部15を備える。位相調整部15は、プラズマ発生部であるアンテナ10においてプラズマのエネルギーを最大化するための高周波電流の波形の位相の節と節との間の振幅が最大となる位相の腹がアンテナ10の位置となるように調整する。
【0029】
図6を併せて参照すると、整合回路部14は一端がアンテナ10に接続されて他端がグランドに接続された可変コンデンサであるチューン17と、一端が位相調整部15と高周波電源との間に接続されて他端がグランドに接続された可変コンデンサからなり、反射波を抑制する擬似負荷であるロード18とを備える。
【0030】
図4及び図5に示すように、基板9にはアンテナ10が形成された導体19Aが配置され、この導体19Aは一端がチューン17の一端に接続され、他端が位相調整部15が備える後述するコイル23Bにおける導線25の巻き終わり側の端部に接続されている。チューン17の他端はグランドに接続された導体19Bに接続されている。ベース3のアンテナ10側とは反対側に位置する側壁部3c側に設けられたプラグ20が高周波電源13に接続され、位相調整部15が備える後述のコイル23Aにおける巻き始めの端部とプラグ20とを接続する導体19Cが基板9上に設けられている。ロード18は一端がコイル23Aとプラグ20との間の導体19Cに接続され、他端がアンテナ10側の導体19Bに接続されている。ベース3の側壁部3cにはチューン17とロード18の調整ねじ17a,18aが配置されている。
【0031】
基板9には絶縁材料からなるカバー21(図示せず)が取り付けられ、アンテナ10と整合回路部14とは、基板9と電磁シールドや放熱用としてのカバー21とのセラミック材等からなる部材により覆われている。
【0032】
次に、位相調整部15の構造について詳細に説明する。本実施形態の位相調整部15は電気的に直列に接続された2個のコイル23A,23Bを備える。コイル23A,23Bはセラミック等の絶縁材料からなる両端開口の直管円筒状であって内部に中空部24aを有する中空芯管24に導線25(本実施形態では断面円形)を巻き付けて構成している。導線25は一端25aが整合回路部14の導体19C(高周波電源13側,可変コンデンサであるロード18側)に接続され、他端25bが導体19A(アンテナ10側)に接続されている。
【0033】
2個のコイル23A,23Bは中空芯管24がZ軸方向の上下方向に延びる姿勢で整合回路部14の上方に配置されている。また、2個のコイル23A,23Bは中空芯管24が互いに並んで(平行となるように)配置されている。
【0034】
中空芯管24の外周には一端から他端まで螺旋状の溝24bを設けている。また、中空芯管24の長手方向の両端部には中空芯管24の溝24bの凸部から成る径(中空芯管24の最外径)より外径を小さく設定した縮径部24c,24dが設けられている。導線25は導体19Cに接続される部位の一端25aからコイル23Aが巻き付けられる中空芯管24の一端である縮径部24cまで延び、さらにコイル23Aの中空芯管24における縮径部24cから他端の縮径部24dまで溝24bに収容されることで、コイル23Aの一端の中空芯管24の溝24bに巻き付けられコイル24Aを形成する。また、導線25はコイル23Aの中空芯管24の他端の縮径部24dからコイル23Bの中空芯管24の一端の縮径部24eへ延びる。さらに、導線25はコイル23Bにおける中空芯管24の一端の縮径部24eから他端の縮径部24fまで溝24bに収容されることで、コイル23Bの中空芯管24の溝24bに巻き付けられコイル23Bを形成する。
【0035】
図5においてコイルの巻き方向の矢印P1,P2で示すように同方向に並ぶ2個のコイル23A,23B間でそれぞれの中空芯管24に対する巻き始めから巻き終わりに向かうコイルの巻き方向である導線25の進行方向を互いに逆方向に設定している。具体的には、一方のコイル23Aでは巻き始め(中空芯管24の縮径部24c側)から巻き終わり(中空芯管24の縮径部24d側)に向けて矢印P1で示すように図5において時計回りに導線25が進行する。これに対し、他方のコイル23Bでは巻き始め(中空芯管24の縮径部24e側)から巻き終わり(中空芯管24の縮径部24f側)に向けて矢印P2で示すように図5においに反時計回りに導線25が進行する。
【0036】
図7に模式的に示すように、同方向に並ぶ2個のコイル23A,23Bはセラミック等の耐熱性の絶縁材料からなるコイルケース27内に収容されている。コイルケース27はたとえばX軸方向の上下に分割されたいわゆる半割構造であり、ベース3に固定された下側部材28と、この下側部材28に対向して取り付けられる上側部材29とを備える。下側及び上側部材28,29には断面半円形の一対の凹部28a,29aが上端面から下端面まで貫通するように設けられている。中空芯管24に巻き付けられたそれぞれのコイル23A,23Bはコイルケース27の凹部28a,29aに配置された状態で下側及び上側部材28,29に挟み込まれることでコイルケース27内に収容されている。なお、コイルケースは絶縁材料からなる一体構造の部材に貫通孔を設け、この貫通孔内にコイルを収容するものでもよい。
【0037】
本実施形態における位相調整部15は特に以下の点に特徴がある。
【0038】
まず、少なくとも2つの同方向に並ぶ中空芯管24に導線25を巻き付けてなるコイル23A,23Bを備えるので、高周波電源の周波数帯を比較的低い周波数帯に設定したことで導体の線長が延びた場合でも、位相調整部15を小型化できる。
【0039】
次に、コイル23A,23Bの導線25は中空芯管24の溝24bにそれぞれ収容されており、導線25の表面と中空芯管24とは十分な接触面積が確保されているので、導線25の発生する抵抗熱は熱伝導により効率的に中空芯管24に伝わる。また、更に、コイル23A,23Bはコイルケース27に収容されているので、中空芯管24とコイルケース27に挟まれる様に配置されるそれぞれのコイル23A,23Bは、中空芯管24の外周とコイルケース27へ熱伝導により冷却され、中空芯管24は内周側である中空芯側の外気により冷却され、また、コイルケース27は外気やベース3との熱交換により冷却される。このように中空芯管24に巻き付けられて構成されるそれぞれのコイル23A,23Bはコイルの外周と内周の両方から冷却されることで、効率的に冷却される。従って、コイル23A,23Bの導線25を効果的に冷却でき、温度上昇に起因するインダクタンス成分の変動に起因するマッチングのずれを防止できる。
【0040】
以上のように本実施形態では、中空芯管24の溝24bに巻き付けられ径方向に分割されたコイルケース27に収納されて、コイルの内周側と外周側を挟まれるように配置され同方向に並んだ少なくとも2つのコイルからなる、コイル23A,23Bで位相調整部15を構成することで、高周波電源の周波数帯を比較的低い周波数帯に設定したことで導線25の線長が延びた場合でも、位相調整部15を小型化でき、かつ温度上昇に起因するインダクタンス成分の変動に起因するマッチングのずれも防止できる。
【0041】
以下の表1に示すように、例えば高周波電源の周波数帯をISMバンド帯の一つである40.68MHzに設定した場合において、位相調整部を平板状の波状導体で構成した場合には、線長が2300mmであるのに対し、本実施形態のようにコイル23A,23Bで位相調整部15を構成することより線長を約半分の線長である1100mmまで短縮できる。
【0042】
【表1】

【0043】
高周波電源の出力が30Wの場合のプラズマ発生後の反射波の出力(W)を、本実施形態のようにコイル23A,23Bで位相調整部15を構成した場合、位相調整部を平板状の波状導体とした場合、及び位相調整部をフェライトコアとした場合の比較を下記の表2に示す。プラズマ発生後の60秒後の反射波は、フェライトコアの場合には3.3W,平板状の波状導体の場合には0.5Wであるのに対し、本実施形態のようにコイル23A,23Bで位相調整部15を構成した場合には最も小さい0,2Wである。また、前掲の表1に示すように、位相調整部をフェライトコアで構成した場合、同条件での線長は800mmである。しかし、この場合、位相調整部の熱の蓄積が顕著であり、温度上昇に伴ってインダクタンス成分が変動してマッチングのずれが拡大する。これに対して、コイル23A,23Bで位相調整部15を構成した本実施形態では導線25を効果的に冷却でき、温度上昇に起因するインダクタンス成分の変動に起因するマッチングのずれを防止できる。
【0044】
【表2】

【0045】
コイル23A,23Bの導線25はそれぞれの中空芯管24の溝24bに収容されているので、中空芯管24に対して各ターンの導線25の位置は一定に保持される。つまり、コイル23A,23Bの巻き線(コイル)の形状は一定に保持される。その結果、インダクタンス成分は一定に保持され、導線25の中空芯管24に対するずれ(巻き線の径や巻き線間ピッチ等)に起因するインダクタンス成分の変動を抑制できる。
【0046】
また、中空芯管24の溝24bにそれぞれ収容することでコイル23A,23Bの各ターンの導線25の位置を一定に保持するので、隣接する巻き線のターンの導線25間は絶縁が確保される一定距離を隔てた状態で確実に保持される。つまり、コイル23A,23Bの導線25の位置ずれにより隣接する導線25が接近し、絶縁破壊によって火花の発生がするのを確実に防止できる。
【0047】
並設する2個のコイル23A,Bで位相調整部15を構成しているので、2個のコイル23A,Bを直列に配置して構成あるいは、単一のコイルで構成する場合と比較してる位相調整部15の長手方向の寸法を低減できる。
【0048】
また、直列に接続された2個のコイル23A,23Bを並設されて同方向に延びる姿勢で配置しているので、一方のコイル23Aにおける中空芯管24に対する導線25の巻き始め側の端部(縮径部24c側)と、他方のコイル23Bにおける中空芯管24に対する導線25の巻き終わり側の端部(縮径部24f側)とが中空芯管24の長手方向の同じ側に位置する。そのため、整合回路部14やアンテナ10との電気的接続のための導線25の配索が容易である。つまり、コイル23Aにおける中空芯管24に対する導線25の巻き始めの端部を導体19C(高周波電源13側のロード側18側)に簡単に接続でき、コイル23Bにおける中空芯管24に対する導線25の巻き終わりの端部を導体19A(アンテナ側)に簡単に接続できる。
【0049】
長手方向に互いに隣接する2個のコイル23A,23B間で、中空芯管24に対する巻き始めから巻き終わりに向かう導線25の進行方向(図5の矢印P1,P2)を互いに逆方向に設定しているので、これらのコイル23A,23Bが発生する磁界の向きが反対となって互いにキャンセルされる。そのため、各コイル23A,23Bの発生する磁界に起因するインダクタンス成分の変動を抑制できる。
【0050】
排気ダクトから排気口6を介してケーシング2よりエアが吸い出されて吸気口7から吸気されるエアの吸い出し流れ方向の上流側から下流側に向けて位相調整部15と整合回路部14を順に配置している。また、位相調整部15のコイル23A,23Bがそれぞれ巻かれた中空芯管24はその内側の中空部24aがエアの吸い出し流れ方向の延びる向きに配置されている。従って、排気口6を介してケーシング2内より吸い出されるエアによりケーシング2の外のエアが吸気口7より流れ込み、位相調整部15と整合回路部14の両方を効率的に冷却できる。
【0051】
本実施形態では、位相調整部15は2個のコイル23A,23Bで構成しているが、1個のコイルで位相調整部15を構成することも可能であり、3個以上のコイルで位相調整部15を構成してもよい。複数個のコイルで位相調整部15を構成する場合には、偶数個のコイルを設け、かつこれらのコイルが並んで同方向に延びる姿勢で配置する構成が好ましい。かかる構成により、本実施形態の場合と同様に、電気的に直列に接続され、コイル同士が互いに並んで配置されたコイルのうちの最初のコイルにおけるコイルが巻かれる中空芯管24に対する導線25の巻き始め側の端部と、最後のコイルにおけるコイルが巻かれる中空芯管24に対する導線の巻き終わり側の端部とが中空芯管24の長手方向の同じ側に位置し、整合回路部14やアンテナ10との電気的接続のための導線25の配索が容易になる。また、たとえば、4個以上の偶数個のコイルのうち隣接する2個のコイル間で、コイルがそれぞれに巻き付けられる中空芯管24に対する巻き始めから巻き終わりに向かう導線の進行方向を互いに逆方向に設定することが好ましい。この構成により、本実施形態と同様に、長手方向に互いに隣接して配置されるコイルが発生する磁界の向きが反対となって互いにキャンセルされるので、各コイルの発生する磁界に起因するインダクタンス成分の変動を抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
1 プラズマ発生装置
2 ケーシング
3 ベース
3a 上壁部
3b 下壁部
3c 側壁部
3d 側壁部
4 ケーシングカバー
5 ブラケット
6 排気口
7 吸気口
9 基板
10 アンテナ
11 放電管
12 ガス供給口
13 高周波電源
14 整合回路部
15 位相調整部
17 チューン
18 ロード
19A,19B,19C 導体
20 プラグ
21 カバー
23A,23B コイル
24 中空芯管
24a 中空部
24b 溝
24c,24d 縮径部
25 導線
25a 一端
25b 他端
27 コイルケース
28 下側部材
28a 凹部
29 上側部材
29a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナの近傍に配置された放電管と、
高周波電力を前記アンテナに供給する高周波電源と、
前記高周波電源からの高周波を入力して反射波を調整する整合回路部と、
前記整合回路部と前記アンテナとの間に介在する位相調整部とを備え、
前記位相調整部は、中空芯管の外周に形成された螺旋状の溝に導線を収容することで前記中空芯管に前記導線を巻き付けてなるコイルを少なくとも1個備える、プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記位相調整部は複数個の前記コイルを備える、請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記位相調整部は、直列に接続された偶数個の前記コイルを備え、かつ偶数個の前記コイルは同方向に並んで延びる姿勢で配置されている、請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
隣接する2個のコイル間で、前記中空芯管に対する巻き始めから巻き終わりに向かう導線の進行方向を互いに逆方向に設定している、請求項3に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記中空芯管が外周面に接し、かつ前記中空芯管の両端開口が開口状態で維持されるように、前記コイルを前記中空芯管と挟んで収容するケースをさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
送風機構をさらに備え、
前記整合回路部と前記位相調整部は前記送風機構の送風方向に離れる側から順に配置されてる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97963(P2013−97963A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238675(P2011−238675)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)