説明

プラテンユニット及び液体噴射装置

【課題】媒体を適切にプラテンに吸引しつつプラテンの電荷を速やかに逃がすこと。
【解決手段】樹脂で形成され、搬送される媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、前記プラテン本体に装着され、媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、を備えるプラテンユニットである。前記除電部はコロナ放電式イオナイザであることが望ましい。また、除電部は前記導電性のリブを接地する接地部材であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンユニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを噴射して媒体上に画像を形成するインクジェット方式のプリンターが利用され
ている。このようなインクジェット方式のプリンターでは、媒体を支持するためのプラテ
ンが備えられている。プラテンは、媒体を適切に支持することにより、インクを噴射する
ヘッドと媒体との距離を適切に保つ。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、印刷時において用紙を支持するためのプラテンが示さ
れている。特許文献3には、紙幅の広い用紙に印刷を行うラージフォーマットプリンター
が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214880号公報
【特許文献2】特開2000−289290号公報
【特許文献3】特開2009−279780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラテン上に用紙のような媒体が通過する際、静電気が生ずることがある。特に、プラ
テン上を搬送される媒体は、ヘッドとの距離を一定に保つためにプラテン側から吸引され
る。このように、プラテンに吸引されると媒体とプラテンとの摩擦力が大きくなるため、
より静電気が発生しやすくなる。静電気の発生は、プラテンとヘッドとの間に電界を生じ
させる。用紙の端部などからは紙粉が舞うことがあるが、紙粉はこの電界中において分極
させられ、電界の影響でヘッドに引き寄せられる。
【0006】
ヘッドにはインクなどの液体を噴射するためのノズルが形成されているが、紙粉がノズ
ルに吸着されると、そのノズルは目詰まりを起こし、インクが適切に噴射されないなどの
問題が生ずる。よって、プラテンとヘッドとの間に電界を生じさせないために、プラテン
に生じた静電気の電荷を速やかに逃がすことが望ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、媒体を適切にプラテンに吸引
しつつプラテンの電荷を速やかに逃がすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
樹脂で形成され、搬送される媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、
前記プラテン本体に装着され、媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、
前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、
を備えるプラテンユニットである。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。
【図2】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。
【図3】本実施形態におけるプラテンユニット30の斜視図である。
【図4】本実施形態における第1プラテン31A及び第1プラテンベース32Aの前面図である。
【図5】本実施形態におけるプラテンユニット30の上面図である。
【図6】プラテンユニット30のA−A断面図である。
【図7】第1プラテン31Aの上面図である。
【図8】図8Aは、第1プラテン31AのB−B断面図であり、図8Bは、組建前の第1プラテン31AのB−B断面図である。
【図9】図9Aは、本実施形態におけるプラテンのフック状部材311と突起部321の第1の拡大図であり、図9Bは、本実施形態におけるプラテンのフック状部材311と突起部321の第2の拡大図である。
【図10】プラテン31’が絶縁されているときの電界の説明図である。
【図11】プラテン31が接地されているときの電界の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。すなわ
ち、
樹脂で形成され、搬送される媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、
前記プラテン本体に装着され、媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、
前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、
を備えるプラテンユニットである。
プラテンに媒体を吸引する孔などを設ける場合、プラテンは複雑な形状を有することに
なる。一方で、媒体が接触する部分については平面度を確保し、ヘッドとの距離を一定に
する必要があるため精密に製造される必要がある。仮に、板金の打ち抜き加工等により製
造したとすると要求される精度を満たさず、また工程数も多いという問題があるため、こ
のような部材は一般に射出成形によって形成される。しかしながら、樹脂で製造すると媒
体との摩擦等により生じた静電気がプラテンに溜まり、この静電気により分極した媒体の
屑がヘッドに付着する等の問題がある。上記構成であると、プラテン本体を樹脂で形成す
るので孔などを含む複雑な形状を精度高く形成することができる一方、媒体に接触するリ
ブが導電性であるので、除電部を用いて電荷を速やかに逃がすことができる。
【0012】
かかるプラテンユニットであって、前記除電部はコロナ放電式イオナイザであることが
望ましい。
このようにすることで、イオンを発生させて静電気を適切に中和し除電することができ
る。
【0013】
また、前記除電部は前記導電性のリブを接地させる接地部材であってもよい。
このようにすることで、電荷を逃がして静電気を取り除くことができる。
【0014】
また、前記プラテン本体は射出成形にて形成されることが望ましい。
このようにすることで、複雑な形状を有するプラテン本体を射出成形により精密に形成
することができる一方、媒体を支持するリブを導電性として電荷を逃がす構成とすること
ができる。
【0015】
また、前記プラテン本体は、前記媒体が搬送される際に該媒体に接触する平面を有し、
該平面と前記導電性のリブの頂点は、同一の面を構成することが望ましい。
このようにすることで、プラテン本体の平面とリブの頂点とで構成される同一平面で媒
体を支持することができる。
【0016】
また、前記導電性のリブは、前記プラテン本体の下部から該プラテン本体を貫通する穴
を通り嵌め込まれることが望ましい。
このようにすることで、プラテン本体の下部に除電部を配置し、プラテン本体の下部へ
延びるリブの一部を介して静電気を除電することができる。
【0017】
また、前記導電性のリブは金属で形成されることが望ましい。
このようにすることで、電荷の移動を速やかにし、効果的に静電気を除電することがで
きる。
【0018】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。
すなわち、
液体を媒体に噴射するヘッドと、
樹脂で形成され、搬送される前記媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、
前記プラテン本体に装着され、前記媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、
前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、
を備える液体噴射装置である。
【0019】
プラテンに媒体を吸引する孔などを設ける場合、プラテンは複雑な形状を有することに
なる。一方で、媒体が接触する部分については平面度を確保し、ヘッドとの距離を一定に
する必要があるため精密に製造される必要がある。仮に、板金の打ち抜き加工等により製
造したとすると要求される精度を満たさず、また工程数も多いという問題があるため、こ
のような部材は一般に射出成形によって形成される。しかしながら、樹脂で製造すると媒
体との摩擦等により生じた静電気がプラテンに溜まり、この静電気により分極した媒体の
屑がヘッドに付着する等の問題がある。上記構成であると、プラテン本体を樹脂で形成す
るので孔などを含む複雑な形状を精度高く形成することができる一方、媒体に接触するリ
ブが導電性であるので、除電部を用いて電荷を速やかに逃がすことができる。
【0020】
===実施形態===
図1は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。同図に示す
ように、このインクジェットプリンター1は、長手方向が水平に配置された記録部40と
、記録部40の端部に装着された筐体90と、記録部40の上側に装着された装填部10
と、記録部40および筐体90を下方から支持する脚部70とを備える。
【0021】
装填部10の内部には、長尺の被記録媒体(図2参照、以下、「媒体」とも言う)を巻
き重ねたロールRを含むロール組立体11が装填されるが、この図ではロール組立体11
(図2参照)はロールカバー12に覆われる。記録部40は、トップカバー42およびフ
ロントカバー44によりその内部機構が覆われている。記録部40の内部には後述するヘ
ッド41(図2参照)等が配置され、装填部10のロールRからから引き出されて記録部
40に給送された媒体に対してインクが噴射され、画像が形成される。
【0022】
記録部40において画像を形成された媒体は、記録部40の下方に形成された排出部6
0から外部に排出される。なお、脚部70は、排出部60を通過した媒体が床面に接しな
いようにする目的で装着される。
【0023】
筐体90は、記録部40から退避したヘッドが待機するホームポジションのスペースを
形成すると共に、その下部に、カートリッジホルダ20を有する。カートリッジホルダ2
0には、その表面を覆うホルダカバー22の内側に、ヘッドに供給するインクを収容した
インクカートリッジ(不図示)が装着される。
【0024】
また、筐体90の上面には、操作パネル80が配置される。操作パネル80は、ユーザ
が操作する複数のスイッチ82の他、インクジェット式記録装置1の動作状態を示す表示
部84も含む。従って、ユーザは、操作パネル80およびカートリッジホルダ20が配置
された側を前面として、この前面側からインクジェットプリンター1を操作する。
【0025】
図2は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。
インクジェットプリンター1は、図2に示すように、ロールRを保持するスピンドル1
3と、ロール紙Rを搬送する搬送路14と、搬送されてくる媒体に対して画像形成を実施
する記録部40と、画像形成を経た媒体を排出する排出部60と、排出部60から排出さ
れる媒体をせん断するカッター装置61とを備える。また、インクジェットプリンター1
は、搬送されてくる媒体を後述するヘッド41の下部にて支持するプラテンユニット30
を備える。プラテンユニット30は、プラテン31、プラテンベース32、及び、支持部
材33を含む。プラテンユニット30の詳細な構成は後述する。また、インクジェットプ
リンター1は、上記各構成機器の動作を統括的に制御する不図示の制御部を備える。
【0026】
なお、以下の説明では、媒体の搬送方向(排出方向)をX軸方向と、X軸方向と直交す
る搬送路14の幅方向(図2において紙面垂直方向)をY軸方向と、X軸方向及びY軸方
向と直交する鉛直方向をZ軸方向と称して説明する場合がある。
【0027】
記録部40は、搬送路14に沿って搬送されてくる媒体に対してインクを噴射するヘッ
ド41を備える。ヘッド41は、搬送路14の幅方向に移動自在なキャリッジ43に搭載
されている。ヘッド41は、複数のノズル列を備え、各ノズル列から所定の色(例えばイ
エロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のインクをそれぞれ噴
射可能な構成となっている。ヘッド41は、プラテン31に支持されたロール紙Rの記録
面に対してインクを噴射することにより所定の画像や文字等の情報を記録する画像形成を
実施する。
【0028】
記録部40にて画像形成を施された媒体は、搬送路14の終端部を構成するニップ部5
0を通り排出部60から排出される。ニップ部50は、媒体をニップすると共に回転駆動
して媒体を排紙する排出ローラー51を複数備える。排出ローラー51は、紙種によって
ニップするローラーを、ギザローラー51aあるいはコロローラー51bに切り替える機
構を備える。
【0029】
ニップ部50の下流側には、排出された媒体を所定サイズにせん断するカッター装置6
1が設けられている。カッター装置61は、排出された媒体の高さ位置を規制する規制部
材62と、媒体の排出方向(X軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)に移動して媒体を
せん断するカッターユニット63とを有する。
【0030】
図3は、本実施形態におけるプラテンユニット30の斜視図である。図3には、本実施
形態のプラテンユニット30を構成する最小構成として、プラテン31とプラテンベース
32と支持部材33が示されている。なお、図3は、プラテンユニット30の構成の説明
を容易にするために、プラテンユニット30の一部の斜視図としている。
【0031】
図4は、本実施形態における第1プラテン31A及び第1プラテンベース32Aの前面
図である。プラテン31及びプラテンベース32は、それぞれ複数の部材から構成される
が、ここではこれらのうち第1プラテン31Aと第1プラテンベース32Aが示されてい
る。図4は、図2におけるX軸プラス側からマイナス側に向かって第1プラテン31A及
び第1プラテンベース32Aを見たときの図ということになるが、インクジェットプリン
ター1に取り付けられた状態においてこの角度から視認することはできない。ここでは、
説明のために、これらをインクジェットプリンター1から取り出した状態で示している。
【0032】
以下、これらの図を参照しつつ、プラテンユニット30の概略について説明を行う。支
持部材33は、プラテンベース32をその上部で支持するための部材である。プラテンベ
ース32は、第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32Bと第3プラテンベー
ス32C(図3において不図示)を含む。
【0033】
これらのプラテンベースは、紙幅方向(Y方向)についてそれぞれ長さが異なるが、他
の構成についてはほぼ同様の構成を有しているので、ここでは、主に第1プラテンベース
32Aを例に説明を行う。また、第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32B
と第3プラテンベース32Cの上部には、第1プラテン31Aと第2プラテン31Bと第
3プラテン31Cが設けられる。第1プラテン31Aと第2プラテン31Bと第3プラテ
ン31Cも紙幅方向(Y方向)について長さが異なるが、他の構成については、それぞれ
ほぼ同様の構成を有しているので、ここでは、主に第1プラテン31Aを例に説明を行う

【0034】
プラテン31のプラテン本体318(後述)とプラテンベース32は、ともにプラスチ
ックなどの樹脂で射出成形されている。気中放電樹脂を用いなかったのは、気中放電樹脂
は摩耗しやすく、長期にわたって精度の高いプラテンの高さ精度を確保することができな
いためである。
【0035】
また、板金素材で製造しなかったのは、プラテン本体318の形状が比較的複雑な形状
であるため、板金素材の打ち抜き加工では工程が多く、また仮に板金で製造したとしても
高精度加工することが困難なためである。
【0036】
第1プラテンベース32Aの底部は、底部開口部322を複数備える。図4に示される
ように底部開口部322は、プラテンベース32Aの底面から突出しており、支持部材3
3の開口部に嵌り込む(後述)形状となっている。そして、第1プラテンベース32Aの
内部空間は、支持部材33の内部空間に連通する。他のプラテンベースも同様に支持部材
33に連通する底部開口部322を有するため、第1プラテンベース32Aの内部空間と
第2プラテンベース32Bの内部空間と第3プラテンベース32Cの内部空間は、内部の
空気が移動可能に連通していることになる。
【0037】
第1プラテンベース32Aの上部の一部には、第1プラテン31AがY軸プラス方向に
スライドされることにより嵌め込まれる。また、図3では示されていないが、第2プラテ
ン32Bも第1プラテン31Aに隣接してはめ込まれることになる。これにより、第1プ
ラテン31Aの少なくとも一部が第1プラテンベース32A上に設けられ、第2プラテン
31Bが第1プラテンベース32A上及び第2プラテンベース32B上に設けられること
になる。そして、第1プラテンベース32A上において、隣接している第1プラテン31
Aの端部と第2プラテン31Bの端部の高さを揃えることができる。
【0038】
特に、図1に示すような大判のインクジェットプリンター1は、紙幅方向に長いため、
前述のような複数のプラテンベースと複数のプラテンでプラテンユニットを用いてプラテ
ンユニットを構成する。しかし、複数のプラテンでプラテンユニットを構成する際、それ
らの間に段差が生じてしまうと、搬送される媒体がその箇所で浮いてしまうという問題も
ある。また、段差が生じてしまうと、そこで空気漏れが生じ、プラテンにおける媒体の吸
引も適切になされないおそれがある。これは、特に大判のインクジェットプリンター1に
おいて高頻度で使用されるロール紙の搬送の障害となる。しかしながら、上述のような本
実施形態の構成であると、第1プラテン31Aの端部と第2プラテン31Bの端部の高さ
を揃えることができるので、これらの間で段差を生じさせないようにすることができる。
【0039】
第1プラテン31Aには、搬送される媒体を支持する支持面312と、打ち捨てられた
インクなどの液体を搬送中の媒体に触れさせないようにするための溝部313が設けられ
る。溝部には、インク吸引と媒体吸引とを兼ねる第1吸引孔314が設けられる。第1吸
引孔314は、第1プラテン31Aの上部から下部(Z軸方向)に貫通する。また、第1
プラテン31Aには、搬送される媒体を支持する支持面312に第2吸引孔315と第3
吸引孔316が複数設けられる。
【0040】
第1プラテンベース32Aの上部縁周囲には、延伸し連続したスポンジ34Aが設けら
れる。スポンジ34Aにはグリセリンを含浸させることとしてもよい。このように、グリ
セリンなどの液体を含浸させた場合、プラテンとプラテンベースとの間の気密性をより高
めることができる。
【0041】
第1プラテンベース32Aには、媒体の搬送方向(X軸方向)に突出した突起部321
が複数設けられる(勿論、媒体の搬送方向と逆方向側(X軸マイナス方向)にも同様に突
起部321が設けられている)。第1プラテン31Aには、突起部321と係合するため
のフック状部材311が複数設けられる。これらのフック状部材311は、第1プラテン
31Aが第1プラテンベース32Aに取り付けられたときにおいて、第1プラテンベース
32Aのスポンジ34AをX軸方向に跨ぐように設けられる。すなわち、第1プラテンベ
ース32Aの外側に突出するようにして設けられる。フック状部材311と突起部321
は、紙幅方向について同じピッチで設けられており、複数のフック状部材311は、それ
ぞれ対応する突起部321と係合する。
【0042】
第1プラテンベース32Aの底部には、支持部材33と当接する度当て部325が複数
設けられる。複数の度当て部325のうち一部の度当て部325の中心は穿孔されており
、第1プラテンベース32Aは、この穿孔孔を通じてネジなどの締結部材で支持部材に固
定される。また、これらの度当て部325は、紙幅方向(Y軸方向)について、突起部3
21の当接面(後述)とフック状部材311の当接面とが接触する部分(当接部)と重な
る位置に設けられる。このようにすることで、度当て部325と当接面との距離を近づけ
ることができ、プラテンから支持部材までの高さをより精度良く保証することができる。
【0043】
図5は、本実施形態におけるプラテンユニット30の上面図である。図6は、プラテン
ユニット30のA−A断面図である。図5には、プラテン31が第1プラテン31Aと第
2プラテン31Bと第3プラテン31Cとからなることが示されている。また、これらの
プラテンの紙幅方向の長さはそれぞれ異なることが示されている。ただし、プラテンユニ
ットを構成するためのプラテンの数はこれに限られない。また、プラテンの紙幅方向の長
さもこれに限られない。
【0044】
図6には、支持部材33上に第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32Bと
第3プラテンベース32Cとが設けられ、さらに、これらの上に第1プラテン31Aと第
2プラテン31Bと第3プラテン31Cとが設けられていることが示されている。
【0045】
第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32Bと第3プラテンベース32Cは
、底部開口部322を介して支持部材33の開口部332に嵌り込む。第1プラテンベー
ス32Aと第2プラテンベース32Bと第3プラテンベース32Cのそれぞれの紙幅方向
(Y軸方向)の長さは異なっている。
【0046】
支持部材30の中央底部には、吸引装置38が設けられている。吸引装置38は、プラ
テン31とプラテンベース32と支持部材33で構成される内部空間の空気をプラテンユ
ニット30の外部に排出することにより、内部空間の気圧を外気圧よりも低く保つ。これ
により、プラテン31上を搬送される媒体が、前述の第1吸引孔314、第2吸引孔31
5、第3吸引孔316を介してプラテンに吸着される。このようにすることによって、媒
体が平面のプラテンに吸着するので、その媒体の面も平坦が確保される。そして、平坦に
維持された媒体上にインク滴を噴射することができる。このため、ヘッドと媒体との距離
を紙幅方向及び搬送方向にわたって均一に保つことができるので、所望の位置にインク滴
を着弾させて画質の良好な印刷物を提供することができる。
【0047】
前述の通り、第1プラテンベース32Aの上部縁周囲には、延伸し連続したスポンジ3
4Aが設けられる。同様に、第2プラテンベース32Bの上部縁周囲にも、延伸し連続し
たスポンジ34Bが設けられ、第3プラテンベース32Cの上部縁周囲にも、延伸し連続
したスポンジ34Cが設けられる。これらのスポンジは、フック状部材311が突起部3
21に係合してプラテンが固定される際、上下方向(Z軸方向)に圧縮される。すなわち
、スポンジが変形してプラテンベース及びプラテンに密着するので、プラテンベースとプ
ラテンとの間の気密性を高めることができる。
【0048】
また、図には、リブ部材319が複数示されている。本実施形態では、5つのリブ部材
が用いられており、それぞれのリブ部材には319−1〜319−5の符号が付されてい
る。なお、リブ部材319のプラテンにおける位置関係については、後述する。
【0049】
また、図には、コロナ放電式イオナイザ(除電部に相当)が示されている。コロナ放電
式イオナイザは、高圧電源371と電極針372とこれらを接続する接続線を含む。図に
おいて、高圧電源371と電極針372とを接続する接続線は、破線で示されている。電
極針は、各リブ部材の下部のほぼ中央に設けられる。
【0050】
高圧電源から電極針に3kV以上の高電圧を印加する。そうすると、電極針372の先
端からコロナ放電が発生する。コロナ放電により、電極針372周辺の空気が電気的に分
解され、イオンが発生する。このイオンを帯電物であるリブ部材319に与えることで静
電気が中和され、除電が行われる。
【0051】
なお、ここでは、除電するための装置として、コロナ放電式イオナイザを用いることと
したが、リブ部材319を単に接地することとしてもよい。この場合、リブ部材319に
接続され接地に用いられる導電性の材料が除電部に相当することになる。
【0052】
図7は、第1プラテン31Aの上面図である。図7には、第1プラテン31Aを構成す
るプラテン本体318とリブ部材319が示されている。また、後の図8A及び図8Bに
て示されるB−B断面の位置が示されている。プラテン本体318は樹脂製であり、射出
成形によって形成されている。一方、リブ部材319は、金属製である。
【0053】
図8Aは、第1プラテン31AのB−B断面図であり、図8Bは、組立て前の第1プラ
テン31AのB−B断面図である。これらの図にも、プラテン本体318とリブ部材31
9が示されている。また、フック状部材311も示されている。
【0054】
これらの図において、プラテン本体318の一部と、リブ部材319について、切断面
はハッチングで表されている。プラテン本体318には、リブ部材319が嵌り込むため
の孔3182が設けられている。
【0055】
また図には、プラテン本体318がなす平面3181と、リブ部材319の頂点319
1とが示されている。頂点3191は、リブ部材319がプラテン本体318に嵌め込ま
れた際、平面3181とで同一平面を構成できる高さに調整されている。また、頂点31
91も平面となっている。
【0056】
リブ部材319は、プラテン本体318の下方から孔3182を通るように嵌め込まれ
る。これら両者が互いに外れないように、プラテン本体318取り部部材319は接着剤
で貼り付けられることとしてもよいし、ネジのような締結部材を用いて固定されることも
できる。
【0057】
リブ部材319は、前述のように金属製であり、さらに図6で示されたように、コロナ
放電式イオナイザにより静電気が除電される構成となっている。これにより、プラテンと
媒体とにより静電気が発生したとしても、コロナ放電式イオナイザ37を用いてリブ部材
319を介して電荷を中和することができる。
【0058】
図9Aは、本実施形態におけるプラテン31のフック状部材311と突起部321の第
1の拡大図であり、図9Bは、本実施形態におけるプラテン31のフック状部材311と
突起部321の第2の拡大図である。ここでは、図9A及び図9Bを参照しつつ、フック
状部材311と突起部321との係合について説明する。
【0059】
図9A及び図9Bには、突起部321と、突起部321の当接面3211が示されてい
る。また、これらの図には、フック状部材311の先端部3111と、その先端部311
1に設けられた三角形状の弾性突起3112が示されている。さらに、これらの図には、
突起部321の当接面3211に接触するフック状部材311の当接面3113が示され
ている。突起部321の当接面3211の法線は、支持面312の法線と一致する。また
、フック状部材311の当接面3113の法線も、支持面312の法線と一致する。
【0060】
各プラテンは、プラテンベース32上を紙幅方向(Y軸プラス方向)にスライドさせさ
れることにより、プラテン32のフック状部材311がプラテンベース32の突起部32
1に係合する。突起部321がフック状部材311に嵌り込むとき、三角形状の弾性突起
3112が弾性変形する。この弾性変形による押圧力により、突起部321の当接面32
11はフック状部材311の当接面3113に確実に押しつけられる。
【0061】
このようにして、突起部321の当接面3211とフック状部材311の当接面311
3とが確実に接触することにより、プラテンベース32の度当て部325からプラテン3
1の支持面312の高さが設計上の高さに保証される。特に、突起部321の当接面32
11の法線とフック状部材311の当接面3113の法線が、支持面312の法線と一致
することから、これらの当接面3113,3211を上記構成により確実に接触させるこ
とにより、媒体が通過する支持面312の平面を保証することができる。
【0062】
また、フック状部材311と突起部321は、紙幅方向に複数設けられているので、紙
幅方向の全域にわたってプラテンベース32の度当て部325からプラテン31の支持面
312の高さを均一にすることができる。
【0063】
図10は、プラテン31’が絶縁されているときの電界の説明図である。図には、プラ
テン31’と、ヘッド41’のノズルプレートNP’とが示されている。また、プラテン
上を搬送される媒体として用紙Sが示されている。
【0064】
ヘッド41’は、ケーブル類を介して本体側と同電位となっており、接地されている。
よって、ノズルプレートNP’の電位はゼロである。一方、プラテン31’が接地されて
いない場合において、プラテン31’上を用紙Sが通過するとプラテン31’と用紙Sと
の間に生ずる摩擦により静電気が生ずる。
【0065】
特に、本実施形態のように大判のインクジェットプリンター1では、主に、紙幅方向に
幅広の用紙Sが搬送される。また、用紙Sがプラテン31’から浮いてしまうのを防止す
るため前述の第1吸引孔314〜第3吸引孔316から、用紙Sは吸引される。そのため
、用紙Sとプラテン31’との摩擦力が大きく、プラテン31’に生じる静電気も大きな
ものとなる。このようにして、プラテン31’が帯電するため除電が行われないと、ヘッ
ド41’のノズルプレートNP’との間に電位差が生じ、電界が生ずる。
【0066】
一方、用紙Sが通過する際、主に用紙Sの端部から紙粉が舞う。この紙粉が、電界の間
で舞うと、図に示されるように個々の紙粉が誘電分極する。誘電分極した紙粉は、プラテ
ン31’又はノズルプレートNP’に吸着される。
【0067】
ノズルプレートNP’には、不図示のノズルが設けられており、これらノズルからはイ
ンクが噴射される。しかしながら、紙粉がノズルプレートNP’に吸着すると、その紙粉
がノズルの目詰まりを生じさせる。そうすると、インクを噴射できないノズルが発生し、
そのノズルがドットの形成を担当している画素には所望のドットが形成されないことにな
る(所謂、ドット抜けが生ずる)。
【0068】
このようなドット抜けが発生しないようにノズルのクリーニングが行われるが、クリー
ニングはノズルからインクを強制噴射することにより行われるため、無駄にインクが消費
されてしまう。また、インクの強制噴射により廃液の排出量も増えるという不利益ももた
らす。よって、ノズルプレートNP’に紙粉が付着しないようにすることが望ましい。
【0069】
図11は、プラテン31が接地されているときの電界の説明図である。前述のような紙
粉の付着プロセスを考慮すると、プラテン31の帯電を抑制することが望ましいことにな
る。そのため、本実施形態におけるプラテン31は、前述のような構成により導電性のリ
ブ部材319とコロナ放電式イオナイザにより除電される(図には、コロナ放電式イオナ
イザの電極針372が示されている)。
【0070】
これにより、ヘッド41のノズルプレートNPとプラテン31との間に電界が発生しな
いので、紙粉がノズルプレートNPに吸着されにくくなる。そして、ドット抜けが生じに
くいインクジェットプリンター1を提供することができるようになる。
【0071】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、液体噴射装置としてプリンター1が説明されていたが、これに限
られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液
状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化するこ
ともできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装
置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製
造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェッ
ト技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、
これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0072】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解
釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得
ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0073】
<ヘッドについて>
インクを噴射する方式は、圧電素子を用いて噴射する方式に限られず、例えば、熱によ
りノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェットプリンター、
10 装填部、11 ロール組立体、12 ロールカバー、13 スピンドル、
14 搬送路、
20 カートリッジホルダ、22 ホルダカバー、
30 プラテンユニット、31 プラテン、
31A 第1プラテン、31B 第2プラテン、31C 第3プラテン、
32A 第1プラテンベース、32B 第2プラテンベース、
32C 第3プラテンベース、
33 支持部材、
34A スポンジ、34B スポンジ、34C スポンジ、
38 吸引装置、
40 記録部、41 ヘッド、42 トップカバー、
43 キャリッジ、44 フロントカバー、
50 排出部、51 排出ローラー、51a ギザローラー、51b コロローラー、
60 排出部、61 カッター装置、62 規制部材、63 カッターユニット、
70 脚部、
80 操作パネル、82 スイッチ、84 表示部、
90 筐体、
311 フック状部材、312 支持面、313 溝部、
314 第1吸引孔、315 第2吸引孔、316 第3吸引孔、
318 プラテン本体、319 リブ部材
321 突起部、322 底部開口部、325 度当て部、
371 高圧電源、372電極針、
3111 フック状部材の先端部、3112 弾性突起、
3113 プラテンの当接面、3211 突起部の当接面、
3181 平面、3191 頂点、
NP ノズルプレート、
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で形成され、搬送される媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、
前記プラテン本体に装着され、媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、
前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、
を備えるプラテンユニット。
【請求項2】
前記除電部はコロナ放電式イオナイザである、請求項1に記載のプラテンユニット。
【請求項3】
前記除電部は前記導電性のリブを接地させる接地部材である、請求項1に記載のプラテ
ンユニット。
【請求項4】
前記プラテン本体は射出成形にて形成される、請求項1〜3のいずれかに記載のプラテ
ンユニット。
【請求項5】
前記プラテン本体は、前記媒体が搬送される際に該媒体に接触する平面を有し、該平面
と前記導電性のリブの頂点は、同一の面を構成する、請求項1〜4のいずれかに記載のプ
ラテンユニット。
【請求項6】
前記導電性のリブは、前記プラテン本体の下部から該プラテン本体を貫通する穴を通り
嵌め込まれる、請求項1〜5のいずれかに記載のプラテンユニット。
【請求項7】
前記導電性のリブは金属で形成される、請求項1〜6のいずれかに記載のプラテンユニ
ット。
【請求項8】
液体を媒体に噴射するヘッドと、
樹脂で形成され、搬送される前記媒体を吸引する孔を有するプラテン本体と、
前記プラテン本体に装着され、前記媒体と接触して該媒体を支持する導電性のリブと、
前記導電性のリブに帯電する電荷を除電する除電部と、
を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23365(P2013−23365A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161719(P2011−161719)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】