説明

プラネタリウム制御装置およびそのプログラム

【課題】プラネタリウム施設の制御装置の操作者の作業を自動化することにより,上映スケジュールを正確に実行し,誤動作のなく運営できるプラネタリウム制御装置およびそのプログラムを提供すること。
【解決手段】一定周期にタイマーを発生させるイベントタイマー時間と,番組の開始時刻および終了時刻とを設定する。そして,番組上映中でないときにイベントタイマーが発生すると,再度番組の上映を開始する。すなわち,プラネタリウム制御装置では,イベントタイマーを受けて,番組の自動実行を繰り返す。これにより,番組の開始が自動化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プラネタリウムを自動的に演出するプラネタリウム装置およびそのプログラムに関する。本明細書において,プラネタリウムとは,ドーム型スクリーンに映像を投映する設備をいい,その映像の内容は星野に限らずエンターテインメント的なものであってもよいものとする。
【背景技術】
【0002】
初期の頃のプラネタリウムの投映には,操作盤上のスイッチ,ボリューム等を用いて,制御装置を手動で操作する必要があった。この操作には熟練を要するので,プラネタリウムの上映時間を管理することが困難であった。そこで従来から,これらの操作を自動化することが図られてきた。その自動化の手法は,例えば,プラネタリウムの制御命令を演出時間軸に沿ってプログラムとして記憶しておき,そのプログラムをプラネタリウムの制御装置内部の時計,または外部からの同期信号により,自動実行するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,前記した従来のプラネタリウムの自動化では,自動化の範囲がプラネタリウムの演出内容だけに限定されているという問題があった。すなわち,操作者は,番組の上映前にプログラムを呼出して定刻になったら開始操作を実行しなければならない。そして,番組プログラムが終了するまで機器の近辺に待機していなければならない。そして,番組が終了したら,次回の上映のために番組プログラムの呼出し作業を行い,次回上映時刻まで待機していなければならない。このため,操作者は,常に,機器の近辺で番組プログラムの進行状況を監視し待機している必要があり,科学館の展示物のように,定刻または一定間隔で番組プログラムを無人状態で自動投映するような運営形態が不可能であるという問題や,操作者が不慣れな場合には,上映プログラムを間違えたり,上映スケジュールが遅れたりする問題が生じていた。さらに,ドーム径の小さい様なプラネタリウムにおいては,機器の近辺に操作者を配置することで,ドーム内に収容できる観客を減らす必要があり,また,操作者が観客の視野を妨げる問題も生じていた。
【0004】
また,近年のプラネタリウムドーム内には,主投映装置の他,場内照明,音響装置等,様々な機器が導入されている。このため,操作者は,一日の上映スケジュールに従って上映すべきプログラムを各機器毎に実行しなければならない。そして,そのプログラムが終了したら,ドーム内の照明を調整し,退場用のBGMと場内アナウンス等とを放送する作業を行いながら,次のプログラムに切り替える作業を並行して行わなければならない。このような作業は,操作者への負担が大きく,不慣れな操作者が操作を行った場合に,上映すべきプログラムを間違えたり,上映スケジュールの遅延を引き起こしたりする。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,番組プログラムの上映スケジュールおよびプラネタリウム施設内の周辺装置の操作をも自動化することにより,上映スケジュールを正確に実行し,誤動作のないプラネタリウムの運営を可能としたプラネタリウム制御装置およびそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のプラネタリウム制御装置は,ドーム内の機器を使用して演出する番組イベントを実施する番組制御手段と,一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより,番組制御手段による番組イベントを開始させる番組開始手段とを有するものである。
【0007】
この場合のプラネタリウム制御装置では,一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより,プラネタリウムの自動的な演出がなされる。すなわちこのプラネタリウム制御装置では,タイマー信号を受けると,番組開始手段が,番組制御手段による番組イベントを開始させる。すると番組制御手段は,ドーム内の機器を使用して番組イベントを実施する。これにより,一定の時間間隔でプラネタリウムが自動的に演出される。
【0008】
この場合において,番組開始手段は,前に開始した番組の終了後に新たにタイマー信号を受けた場合に限り,番組制御手段による番組イベントを開始させることが望ましい。
【0009】
また,前述のいずれの場合でも,タイマー信号を外部から取得することが可能であることが望ましい。外部からのタイマー信号を利用すると,2以上のプラネタリウムの同期運転など,多彩な演出が可能になるからである。
【0010】
また,本発明は,プラネタリウム制御装置を,ドーム内の機器を使用して演出する番組イベントを実施する番組制御手段,および,一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより番組制御手段による番組イベントを開始させる番組開始手段として機能させるプラネタリウム制御プログラムにも及ぶものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,プラネタリウム制御装置の操作者の作業を自動化することにより,上映スケジュールを正確に実行し,誤動作のなく運営できるプラネタリウム制御装置およびそのプログラムが提供されている。また,同じ自動番組を繰り返し自動的に再生することが可能であるため,操作者の負担が少なくてすみ,ドーム径の小さなプラネタリウムにおいては,番組再生中に操作者を配置する必要がないため,多くの鑑賞者を動員することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係るプラネタリウム施設のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】上映のスケジュールの例を示す図である。
【図3】イベント定義プログラムの内容(絶対時刻使用)の例を示す図である。
【図4】イベント定義プログラムの内容(相対時刻使用)の例を示す図である。
【図5】イベント定義プログラム作成の手順を示す図である。
【図6】イベント定義プログラム選択画面の例を示す図である。
【図7】イベントタイマー設定画面の例を示す図である。
【図8】イベントタイマーによる上映の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
[第一の形態]
まず,第一の形態に係るプラネタリウム施設のシステム構成を説明する。本形態に係るプラネタリウム施設100は,図1のブロック図に示すように,イベント管理装置1を中心に構成されている。イベント管理装置1には,プラネタリウム制御装置3と,音響制御装置4と,照明制御装置5と,タイマー6とが接続されている。更に,プラネタリウム制御装置3にはプラネタリウム機器31が,音響制御装置4にはスピーカー41が,照明制御装置5には照明ランプ51が備えられている。操作端末2は,オペレータによる操作を受け付けるものである。更に,プラネタリウム施設100は,プラネタリウム施設200,プラネタリウム施設300にも,ネットワーク網を介して,アクセス可能である。なお,操作端末2は専用機でも,一般的な汎用コンピュータでもよい。また,タイマー6のタイマー信号に代えて,外部からのタイマー信号を用いることも可能である。
【0015】
イベントファイル22には,イベント定義プログラムが複数保存されいる。イベント定義プログラムとは,一日の上映スケジュールおよびそのスケジュールに対応したプラネタリウム施設100の動作を定義したデータファイルである。オペレータは操作端末2により,これらのイベント定義プログラムを作成および選択することができる。自動番組ファイル21には,自動番組プログラムが複数保存されいる。自動番組プログラムとは,一つの自動の番組のスケジュールおよびそのスケジュールに対応したプラネタリウム機器31の動作を定義したデータファイルである。オペレータは操作端末2により,これらの自動番組プログラムを作成および選択することができる。
【0016】
図2は,プラネタリウム運営における一日の上映スケジュールの例である。一回の上映には,入場と,番組上映と,退場とがあり,これらが上映の回数分繰り返される。入場および退場では,音響制御装置4がBGMおよびアナウンスを再生し,照明制御装置5が照明を調整する。前述のイベント定義プログラムでは,この入場,番組上映,退場に係るプラネタリウム施設100の動作を定義している。また,番組上映では,プラネタリウム制御装置3が番組を上映する。前述の自動番組プログラムでは,この番組上映に係るプラネタリウム機器31の動作を定義している。
【0017】
次に,図1のように構成された本形態に係るプラネタリウム施設で,図2の上映スケジュールがある場合での,上映処理を説明する。まず,操作端末2等で,イベント定義プログラムを作成しておく。図3は,イベント定義プログラム作成画面の一例である。イベント定義プログラム作成画面は,開始時刻欄と,イベント欄と,担当装置欄とからなる。開始時刻欄には,イベントの開始時刻が設定される。また,イベント欄には,イベントの内容が設定される。そして,担当装置欄には,イベントに必要な制御装置が設定される。このイベント定義プログラムには,一日の上映スケジュールに必要なイベントがすべて設定されている。また,イベント開始時刻は,図3のような絶対時刻(生活時計)の他に,図4のような相対時刻(プログラム開始時を0とする)での設定も可能である。そして,作成したイベント定義プログラムはイベントファイル22に保存される。
【0018】
図5は,イベント定義プログラムの作成手順を示したものである。まず,イベントの開始時刻を設定する。次に,イベント一覧からイベントを選択する。次に,選択したイベントに対応したイベント操作一覧からイベント操作を選択する。選択されたイベント操作から,制御装置が自動的に設定される。
【0019】
続いてオペレータは,操作端末2よりイベント定義プログラムを選択する。図6は,イベント定義プログラム選択画面の一例である。この選択画面は,イベント管理装置1を操作する上段部と,イベント定義ファイルを選択する下段部とに分かれている。図中下段部の“イベントプログラム一覧”には,イベントファイル22に登録されているイベント定義ファイル名が表示されている。イベント定義プログラムを新規に作成する場合には,登録スイッチ204を押すことにより,イベント定義プログラムの作成画面に移行できる。既存のイベント定義プログラムの内容を変更したい場合には,編集スイッチ205を押すことにより,イベント定義プログラムを編集できる。
【0020】
次に,図中上段部の説明をする。まず,図中上段部には,開始スイッチ201,停止スイッチ203,一時停止スイッチ202,および,イベント時刻表示欄207,オフセット時間表示欄206が設けられている。これらの各スイッチは,イベント定義プログラムの実行について,開始,終了,および一時停止を各々行うためのスイッチである。イベント時刻表示欄207は,現在イベント管理装置1が管理している時刻を表示している。オフセット時間表示欄206は,イベント開始時刻に対してのオフセット時間を設定するものである。まず,下段部でいずれかのイベント定義ファイルを選択した状態で開始スイッチ201が押されると,イベント管理装置1は,選択されたイベント定義ファイルを読込む。そして,選択されたイベント定義ファイルの第一行目のイベントを開始可能な状態で待機し,タイマー6からのタイマー信号を監視する。そして,当該イベントを開始すべき時刻になると,そのイベントを実行するための制御信号を担当制御装置に送る。この動作を,定義されたすべてのイベントに対して繰り返すことにより,上映スケジュールに沿って,プラネタリウム施設が自動実行される。オペレータが終了スイッチ203を押すと,イベント管理装置1は実行を中止する。なお,システム起動時に既定のイベント定義プログラムを読み込むようにすることにより,操作端末2による操作も簡略化することができる。
【0021】
また,観客の退場が遅れる等により,スケジュールを一時停止したい場合がある。そのような場合には,オペレータが一時停止スイッチ202を押すことにより,イベント管理装置1が行っているタイマー6の監視を停止し,また同時に実行中のイベントも停止することができる。自動実行を再開する場合には,開始スイッチ201を押す。そして,イベント管理装置1は,未実行のイベントに対して一時停止していた時間を自動的に付加することにより,イベントの実行間隔を維持する。また,オペレータが任意のオフセット時間を設定することにより,ユーザー任意の時間をイベント開始時刻に付加することも可能である。
【0022】
なお,本形態では,前述のようにタイマー信号として,プラネタリウム施設100の外部から時刻信号を取得して使用することもできる。例えば,同一館内または遠隔地に,プラネタリウム施設200,300等のプラネタリウム施設が複数ある場合に,他のプラネタリウム施設と同期をとって運転したい場合がある。そのような場合に,館内のネットワークサーバーや,インターネット上の時計サーバー(NTPサーバー)から時計信号を取得し,その時刻をもってタイマー信号とすることが望ましい。
【0023】
以上詳細に説明したように本形態では,イベントの開始時刻および動作内容が定義されているイベント定義プログラムをあらかじめ作成し,イベント管理装置1に登録しておくこととしている。そして,操作端末2でイベント定義プログラムを選択して,開始スイッチ201を押すと,イベント管理装置1がそのイベント定義プログラムを読み込んで,内容に従い各開始時刻に各イベントを実行することとしている。これにより,プラネタリウム制御装置の操作を自動化したプラネタリウム施設が実現されている。
【0024】
[第二の形態]
次に,一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより,番組イベントを開始させる形態を説明する。本形態のシステム構成自体は,前述の第一の形態の図1で説明したものと差はない。本形態では操作端末2により,番組毎にイベントタイマーを設定する。イベントタイマーとは,一定の時間間隔でタイマー信号を発信するものである。本形態におけるイベント管理装置1は,イベントタイマーを受けることにより,番組の上映を開始するのである。
【0025】
図7は,イベントタイマー設定画面の一例である。この設定画面では,イベントタイマー時間と,時間帯毎に開始時刻および終了時刻とを設定するようにしている。イベントタイマー時間については,タイマーの発生間隔を分単位で設定できる。操作端末2より,一つの番組を選択し,番組の自動実行を開始すると,イベント管理装置1は,開始時刻まで待機する。そして,開始時刻になると一定の周期でイベントタイマーを発生させる。そして,イベントタイマーの発生により番組の上映が開始される。その後,再度タイマーが発生した時間に番組の上映がなされている場合は,タイマーは無視される。一方,タイマーが発生した時間に番組の上映がされていない場合は,再度番組の上映を行う。そして,終了時刻に達した場合は,タイマーを停止させる。もし,番組の上映中に終了時刻に達した場合は,上映終了後にタイマーを停止させる。この動作を繰り返すことにより,プラネタリウムの自動上映がなされる。
【0026】
図8に,イベントタイマーによる上映を時間軸で表した図を示す。図8では,イベントタイマー時間を10分,番組の長さを15分,開始時刻を8時00分,終了時刻を8時50分の場合とした場合の例を示している。まず,8時00分に最初のイベントタイマー発生により,番組の上映が開始される。以後,10分間隔でタイマーが発生する。10分後の8時10分のタイマーは,上映中のためタイマーは無視される。そして,更に10分後の8時20分のタイマーは,番組の上映が行われていないため,番組の上映を行う。以後,これが繰り返される。そして,終了時刻の8時50分では,番組が上映されているため,タイマーは無視される。そのため,番組の上映の終了後にタイマーが停止される。
【0027】
以上詳細に説明したように本形態では,一定周期にタイマーを発生させるイベントタイマー時間と,番組の開始時刻および終了時刻とを設定することとしている。そして,番組上映中でないときにイベントタイマーが発生すると,再度番組の上映を開始することとしている。これにより,プラネタリウム上映の操作を自動化したプラネタリウム施設が実現されている。
【0028】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,図1のプラネタリウム施設100に係る全装置が一体となったもので実施してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 イベント管理装置
2 操作端末
3 プラネタリウム制御装置
4 音響制御装置
5 照明制御装置
6 タイマー
21 自動番組ファイル
22 イベント定義ファイル
31 プラネタリウム機器
41 スピーカー
51 照明ランプ
201 開始スイッチ
202 一時停止スイッチ
203 終了スイッチ
204 登録スイッチ
205 編集スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム内の機器を使用して演出する番組イベントを実施する番組制御手段と,
一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより,前記番組制御手段による番組イベントを開始させる番組開始手段とを有することを特徴とするプラネタリウム制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載するプラネタリウム制御装置において,
前記番組開始手段は,前に開始した番組の終了後に新たにタイマー信号を受けた場合に限り,前記番組制御手段による番組イベントを開始させることを特徴とするプラネタリウム制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載するプラネタリウム制御装置において,
前記タイマー信号を外部から取得することが可能であることを特徴とするプラネタリウム制御装置。
【請求項4】
プラネタリウム制御装置を,
ドーム内の機器を使用して演出する番組イベントを実施する番組制御手段,および,
一定の時間間隔のタイマー信号を受けることにより前記番組制御手段による番組イベントを開始させる番組開始手段として機能させることを特徴とするプラネタリウム制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−271561(P2009−271561A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191353(P2009−191353)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2001−94640(P2001−94640)の分割
【原出願日】平成13年3月29日(2001.3.29)
【出願人】(595086410)コニカミノルタプラネタリウム株式会社 (13)
【Fターム(参考)】