説明

プラントの帳票システム

【課題】プログラム言語や帳票作成の演算に必要な物理学等の知識を持たない者でも、帳票作成及び異常の要因解析を容易に行うことができる帳票システムを提供すること。
【解決手段】入力されるプラントの入力信号に基づいて予め定められた演算を実行して演算出力を生成する演算マクロと、入力信号の規定値及び出力信号の規定値が記載されたロジック図を作成するロジック図作成部2と、演算マクロに基づいて一定の周期で演算を行い、入力信号及び出力信号を演算結果格納部8に格納するとともに、入力信号及び出力信号のうち規定値を超えたものをイベントデータ格納部10に格納するロジック処理部6とを備えるプラントの帳票システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所等のプラントの帳票の作成を行う帳票システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの帳票作成に用いられる演算式は、プログラム言語で記述され、演算結果は計算データとして出力される。計算機で演算を行うためにはプログラム言語を理解することが必要であり、また、帳票作成の演算には物理学等多岐にわたる知識が必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、制御装置のロジックで演算している現在値を画面上に表示するモニタ機能と、プラント運転中のロジックの定数の調整をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−265430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プログラムの設計者が、演算に用いる定数や出力値等の妥当性を正確に把握するのは極めて困難であり、また、第三者による演算のレビューは、演算方法や処理内容が複雑になるほど困難になる。
【0006】
そのため、帳票出力した演算データが異常となった際、演算に使用していたデータが異常であるのか、演算方法に不具合があるのかを解析するのに膨大な時間を費やすことがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、プログラム言語や帳票作成の演算に必要な物理学等の知識を持たない者でも、帳票作成及び異常の要因解析を容易に行うことができる帳票システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の帳票システムは、入力されるプラントの入力データに基づいて予め定められた演算を実行して演算出力を生成する演算論理と、入力データの規定値及び演算出力の規定値が記載されたロジック図を作成するロジック図作成部と、演算論理に基づいて一定の周期で演算を行い、入力データ及び演算出力を演算結果格納部に格納するとともに、入力データ及び演算出力のうち規定値を超えたものをデータ格納部に格納するロジック処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ロジック図に演算論理と入力データの規定値及び演算出力の規定値を記載することで、プログラム言語や演算に必要な物理学等の知識を持たない者でも、演算内容を構築することができる。また、入力データ及び演算出力のうち規定値を超えたもの、すなわち、異常があるものをデータ格納部に格納し、それらのデータとロジック図を参照して、演算に使用していたデータが異常であるのか、演算方法に不具合があるのかを見つけ出すことができる。
【0010】
この場合において、ロジック処理部を、入力データ及び演算出力のうち規定値を超えたものをデータ格納部に格納する際に、入力データの規定値及び演算出力の規定値が記載されたロジック図の識別符号を紐付けてデータ格納部に格納するように構成することもできる。これにより、異常があった入力データ及び演算論理が記載されたロジック図を容易に見つけ出し、そのロジック図に基づいて異常の要因解析を行うことができる。
【0011】
また、ロジック処理部は、入力データ及び演算出力のうち規定値を超えたものをデータ格納部に格納する際に、演算を行った時刻を紐付けてデータ格納部に格納するように構成することもできる。これにより、発生した異常を一覧として時系列的に並べることができる。
【0012】
また、ロジック処理部を、ロジック図に記載された入力データ及び演算出力及び演算論理に基づいてロジック図を数式で表現するように構成することもできる。これにより、演算の途中経過を詳細に把握でき、異常の要因が演算方法にあるのかどうか、また、演算のどこが間違いなのかを解析することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プログラム言語や帳票作成の演算に必要な物理学等の知識を持たない者でも、帳票作成及び異常の要因解析を容易に行うことができる帳票システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例に係る帳票システムを説明する図である。
【図2】ロジック図に記載し得るマクロの一例を示す図である。
【図3】ロジック図作成部において作成するロジックデータの一例を示す図である。
【図4】ロジック図作成時に生成されるテーブルである。
【図5】演算結果とプラントデータを表示する一例を示す図である。
【図6】演算出力結果異常時のデータや演算途中経過を表示する一例を示す図である。
【図7】ロジック図を数式にて表現した例である。
【図8】ロジック図を数式へ変換する一例を示す図である。
【図9】出力結果をシート間取合いしている場合のロジックを数式へ変換する一例を示す図である。
【図10】イベントデータ表示部で表示される画面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の帳票システムについて、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本実施例の帳票システムの構成図である。帳票システムは、図1に示すように、ロジック図作成部2と、プラントデータテーブル4と、ロジック処理部6と、演算結果格納部8と、イベントデータ格納部10と、ロジックモニタ12と、イベントデータ表示部14と、帳票表示データベース16とを備えて構成されている。この帳票システムが適用されるプラントとしては、例えば、発電所であり、制御、監視対象としては、ボイラ等が挙げられる。
【0017】
ロジック図作成部2は、入力されるプラントの入力データに基づいて予め定められた演算を実行して演算出力を生成する演算論理ブロックと、入力データの規定値及び演算出力の規定値が記載されたロジック図を作成する機能を備える。また、演算論理ブロックを簡潔に表現するための演算マクロを作成する機能を備える。
【0018】
図2は、演算マクロの一例である。流体力学において、流体が気体の場合、流量は実際の温度と圧力が計器の設計値と大幅に異なる際、高い測定精度を得るために温度と圧力を変数とし蒸気表より補正係数を算出して補正を施す必要がある。よって、図2の演算マクロは、対象となる温度と圧力、計器の設計温度、設計圧力、エレメントを入力値として、蒸気表より補正係数を抽出する処理で構成される。このような演算マクロが、ロジック図に記載されるが、より簡単な四則演算等の演算マクロも記載される。
【0019】
ロジック図作成部2において作成されたロジックデータ18は、監視対象のプラントデータを入力として、プラントの帳票作成に必要な計算データを出力するためのものであり、後述のイベントデータを格納、表示するために予めイベントと判断する規定値であるトリガが記載されている。
【0020】
プラントデータテーブル4は、プラントデータを格納するデータベースであり、図示しないプラント監視装置が監視対象プラントのプロセス値や対象機器の稼動状況等の情報を一定の周期で格納する。
【0021】
ロジック処理部6は、ロジックデータ18と、ロジックデータ18に入力データとして定義したプラントデータをプラントデータテーブル4から抽出し、指定した周期で演算を行い、入力データ及び演算出力を演算結果格納部8に格納するとともに、入力データ及び演算出力のうち規定値を超えたものをイベント発生データとしてイベントデータ格納部10に格納するように構成されている。
【0022】
ロジックモニタ12は、演算結果格納部8に格納された演算結果をロジック図上に表示、又は、後述する数式にて簡潔に表現する。帳票表示データベース16は、プラントデータテーブル4及び演算結果格納部8より抽出した帳票表示に用いられるデータを格納する。
【0023】
図3は、ロジック図作成部2においてロジックデータ18を作成する一例である。監視員等のユーザは、プラントデータ又は演算定数である入力信号に対し、演算処理の進行方向に演算を行う演算マクロのシンボルを配置して、結線で結ぶ。さらに、別の入力信号と演算処理を行う場合は、演算処理の進行方向に別の演算処理を行う演算マクロのシンボルを配置し、先に処理を行った演算マクロのシンボルと別の入力信号を次に演算処理を行う演算マクロのシンボルと結線で結ぶ。
【0024】
図3において、演算マクロの1種である平均処理20は入力信号Aと入力信号Bの平均処理を行い、演算マクロの1種である判定選択22で判定条件1の状態値により、平均処理20で得られた平均処理を行った結果と入力信号Cのどちらを入力するか選択する。
【0025】
演算マクロの1種である乗法24は判定選択22で得られた結果に定数Aを乗法し、演算結果を出力する。演算周期26で指定される周期に従い上記の演算処理を繰り返す。ロジック図作成時に、入力信号や定数や演算マクロのシンボル等の表示方法を定義することにより、小数点位置や指数表現等を自由に表示できる。なお、欄25に記載されているのは、ロジック図毎に指定されるロジックナンバーであり、欄27に記載されているのは、演算を出力した時刻である。
【0026】
また、ユーザは、入力信号や出力信号の規定値をロジック図に入力する。規定値は、異常が発生していないかどうかを判断するための閾値である。ユーザは、入力信号に規定値を設けるか、又は入力信号のステータスにより異常と判断するか、又は演算途中経過の値又はステータスにより異常と判断するか、又は、出カ信号に規定値を設けるか、又は出力信号のステータスにより異常と判断するのか等の基準を格納実行トリガとして入力する。
【0027】
格納実行トリガは、異常等のイベントが発生したときに、異常となった値をイベントデータとしてイベントデータ格納部10に格納するためのものであり、図4に示すテーブルに格納される。図4に示すテーブル28は、ロジック図毎に生成され、ロジック演算及び後述するロジック図を数式に変換する際に使用される。また、イベント発生時刻も格納されるようになっている。
【0028】
図5はロジック処理部6において、ロジックデータ18に必要なプラントデータをプラントデータテ−ブル4より抽出し、ロジックデータ18の演算を行う一例である。図5において、平均処理20は入力信号Aと入力信号Bの平均処理を行った結果をロジック図作成時に指定した桁数で表示し、判定選択22で判定条件1の状態値により、平均処理20で得られた平均処理を行った結果と入力信号Cのどちらかを出力するか選択してロジック図作成時に指定した桁数で表示する。
【0029】
乗法24は判定選択22で得られた結果に定数Aを乗法してロジック作成時に指定した桁数で表示し、演算結果を出力するロジックであり、演算周期26で指定される同期に従い上記の演算処理を繰り遍し、表示を更新する。
【0030】
図6は演算出力結果に異常がある場合の入力データや演算途中経過をモニタに表示する一例である。図6において、演算出力結果が異常となった場合、出力信号の色替等により、ユーザに演算結果が異常であることを表示する。入力信号についても同様に構成する。これにより、例えば、入力信号A、Bが正常で、演算結果が異常であれば、演算方法が異常であるという判断が可能である。同様に、演算マクロの分岐において異常が発生している場合も結線を辿ることで異常の判断が可能である。
【0031】
ところで、ロジック演算処理をロジックで表現するより、数式で表現する方が視覚的に判断し易いことがあり、図7は図6に記載のロジック図を数式にて表現した例である。
【0032】
図8は、ロジック図から数式に変換する方法を示している。図8で示されるテーブル28には、説明の都合上、格納実行トリガ及びイベント発生時刻の欄については記載していない。欄30に記載されているのは各ロジックにおける演算出力結果であり、他のロジック図ヘの取合い出力を含み、出力値と、出力値のステータスが格納されている。欄32に記載されているのは、各ロジックに配置される演算マクロのシンボルの座標、種類、演算指定順序、演算マクロ出力結果、演算マクロ出力結果(ステータス)が格納されている。
【0033】
欄34には、欄32に記載される演算マクロ配置座標より、出力する一つ前の演算マクロを抽出し、演算マクロ種類を判別し、演算マクロに入力される信号の数と種類を判別して表示されている。yが図6の出力信号に相当し、出力信号の1つ前の演算マクロが乗法24であり、乗法24に入力される信号の種類が判定選択22の出力結果と定数であるので、数式の表記を考慮し、y=axと表示される。
【0034】
欄36において、欄34の入力信号xが、図6の判定選択22の出力結果であり、演算マクロに入力される入力信号の種類を判断し、それに応じた数式が表示される。xがx(t)と置き換えられ、t(判定条件)の状態値により出力する信号をx(1)とx(2)より選択するので、欄36ではt=ON/OFFそれぞれの出力信号が表示される。
【0035】
欄38において、欄36のt=ON時の入力信号は、図6における平均処理20の演算マクロの出力結果であり、演算マクロに入力される入力信号の数と種類を判別し、それに応じた数式が表示される。入力信号の和を入力信号の個数で除法する平均処理であるため、欄38のように表示される。
【0036】
なお、演算マクロからの入力でなくなったときには、変数表示から定数表示へと変換される。欄36のt=off時の入力信号は、入力信号Cの信号を直接入力するため、x(2)はdへと置き換えられる。同様に欄38において、平均処理20の演算マクロに入力される信号は入力信号A、Bを直接入力するためb、cで表示され、出力信号のx(1)も数式への変換が終わった後に省略され、図6のように表示される。
【0037】
図9は、他のロジック図で取合いを行っている際、イベント発生時の数式での表示方法を示す。欄40には、入力信号A、B、Cが他のロジック図の演算結果を用いている場合の取合い元参照アドレスが記載されており、ロジック図42は、参照元ロジック図を表したものであり、入力信号A、B、Cはそれぞれ入力信号D、E、Fの常用対数を取った値を示している。
【0038】
欄44,46,48には、図8と同様に出力値に対して出力する一つ前の演算マクロを抽出し、演算マクロ種別を判別し、それに応じた数式をそれぞれ表示されている。格納実行トリガを取合い元入力点に予め指定しておくことで、欄40の参照元ロジック図の演算結果がイベント発生時にイベントデータとして格納され、取合い元入力値の参照元ロジック図のイベントデータが存在すれば、選択することにより作成された数式にイベントデータを表示することが可能である。
【0039】
図10は、イベントデータ表示部14で表示される画面である。画面には、イベントナンバー、イベント発生時刻、異常要因、異常値が記載されたロジック図のロジックナンバーが表示される。ユーザが、イベント一覧の中からイベントを選択し、続いてロジック図表示を選択すると、異常値が記載されたロジック図が画面に表示される。また、数式表示を選択すると、異常値が記載されたロジック図を数式で表現したものが画面に表示される。
【0040】
以上説明したように、本実施例によれば、ロジック図に演算マクロと入力信号の規定値及び出力信号の規定値を記載することで、プログラム言語や演算に必要な物理学等の知識を持たない者でも、演算内容を構築することができる。また、入力信号及び出力信号のうち規定値を超えたもの、すなわち、異常があるものをイベントデータ格納部10に格納することで、それらのデータとロジック図を参照して、演算に使用していたデータが異常であるのか、演算方法に不具合があるのかを見つけ出すことができる。
【0041】
また、ロジック処理部6は、演算を行った時刻を紐付けてイベントデータ格納部10に格納するように構成したので、発生した異常を一覧として時系列的に並べることができる。また、ロジック図に記載された入力信号、出力信号及び演算マクロに基づいてロジック図を数式で表現するように構成したので、演算の途中経過を詳細に把握でき、異常の要因が演算方法にあるのかどうか、また、演算のどこが間違いなのかを解析することができる。
【0042】
以上、実施例について説明したが、本発明は、これらに限らず適宜構成を変更して適用することができる。例えば、数式をロジック図に変換する方法は、ロジック図に基づいて正しく変換されるなら、実施例に記載の方法に限られない。また、演算マクロは平均処理等の1つの演算に限らず、複数の演算によって構成してもよく、また、一の演算マクロの演算結果を他の演算マクロの入力とするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 ロジック図作成部
4 プラントデータテーブル
6 ロジック処理部
8 演算結果格納部
10 イベントデータ格納部
12 ロジックモニタ
14 イベントデータ表示部
18 ロジックデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるプラントの入力データに基づいて予め定められた演算を実行して演算出力を生成する演算論理と、前記入力データの規定値及び前記演算出力の規定値が記載されたロジック図を作成するロジック図作成部と、
前記演算論理に基づいて一定の周期で演算を行い、前記入力データ及び前記演算出力を演算結果格納部に格納するとともに、前記入力データ及び前記演算出力のうち前記規定値を超えたものをデータ格納部に格納するロジック処理部とを備えるプラントの帳票システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの帳票システムにおいて、
前記ロジック処理部は、前記入力データ及び前記演算出力のうち前記規定値を超えたものを前記データ格納部に格納する際に、前記入力データの規定値及び前記演算出力の規定値が記載された前記ロジック図の識別符号を紐付けて前記データ格納部に格納することを特徴とするプラントの帳票システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラントの帳票システムにおいて、
前記ロジック処理部は、前記入力データ及び前記演算出力のうち前記規定値を超えたものを前記データ格納部に格納する際に、前記演算論理に基づいて演算を行った時刻を紐付けて前記データ格納部に格納することを特徴とするプラントの帳票システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラントの帳票システムにおいて、
前記ロジック処理部は、前記ロジック図に記載された前記入力データ及び前記演算出力及び前記演算論理に基づいて前記ロジック図を数式で表現することを特徴とするプラントの帳票システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate