説明

プラントアクチベーターのスクリーニング方法

【課題】プラントアクチベーターを高率で簡易にかつ短時日でスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】プラントアクチベーターに感受性の植物に、それとは別の供試化合物を施用し、非感受性の同種の植物対照に対しては該供試化合物による薬害が検出されないが、感受性の植物に対しては薬害が検出される場合に、該供試化合物が病害に対する全身獲得抵抗性の誘導能を有すると判定することを含む、プラントアクチベーターのスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントアクチベーターのスクリーニング方法に関する。より具体的には、本発明は、プラントアクチベーターに感受性の植物を用いる、かつプラントアクチベーターによる全身獲得抵抗性と薬害の発生との間の正の相関関係を利用する、プラントアクチベーターのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は絶えず萎凋病菌、青枯病菌など土壌に生息する植物病原性微生物の感染に曝されている。これらの病原菌による病害は土壌を介して感染するため、一度発生すると薬剤での防除は困難なものとなる。しかもこれらの病害は植物体を枯死させるため、破壊的な被害を被ることとなる。
【0003】
従来、これらの病害の防除に使用されている燻蒸用殺菌剤(例えば、クロールピクリン、メチルブロマイド)は、急性毒性が高い、催涙性がある、予防的にしか処理できない、施用ムラが出来易く消毒効果が不十分なことが多い、十分なガス抜きをしないと植物に被害が出る、周囲の圃場への被害も考慮する必要があるなど、施用上注意が必要であった。しかもこれらの薬剤は非選択性であるために、非病原性の土壌微生物やその他の生物まで殺してしまい、その結果、土壌中の生物相が単純となるために、その後の病害の発生はかえって甚大なものとなることが多かった。さらに、環境影響の大きさからこれらの燻蒸剤の使用が控えられるようになってきている。
【0004】
また、病原菌を殺す効果(殺菌性)を有する化学合成農薬の土壌混和や灌注処理で、病原菌を殺し、土壌病害を防除する方法もある。しかし、化学農薬は、土壌に吸着あるいは土壌生物によって分解されやすく、概ね効果が低い。
【0005】
一方、うどんこ病、疫病、いもち病などの地上部の病害に対しても従来は概ね殺菌性を有する化学合成農薬が使用されてきている。これらの殺菌剤は確かに効果が高いものの、食用部分での残留性、周囲の圃場へのドリフトなどの危険性が示唆されているばかりか、連用が耐性菌の発生を招きやすく、耐性菌の蔓延により、薬剤の効果が認められなくなる場合が多い。
【0006】
これらのことから、従来の殺菌性化学合成農薬に代わる異なる作用メカニズムを有する病害防除薬剤が求められている。耐性菌出現が認められず、簡便な処理方法で土壌病害を効率よく防除する農薬として、植物に抵抗性を付与するプラントアクチベーターがある。プラントアクチベーターとしては、プロベナゾール(PBZ)、アシベンゾラルS-メチル(ASMまたはBTH)、チアジニルなどが実用化されているが、これらの薬剤はイネいもち病には高い防除効果をしめすが、蔬菜類の病害には土壌処理での、ごく少数の地上部病害に対する農薬適用登録があるのみで、種々の植物に簡便な処理法で全身獲得抵抗性を誘導して種々の病害に高い防除効果を示す環境負荷が少ない薬剤の開発が望まれている。
【0007】
土壌病害であるトマト萎凋病に対して、バリダマイシンA(VMA)およびバリドキシルアミンA(VAA)の茎葉散布が高い防除効果を持つことも知られており、その効果はこれらの薬剤が植物に土壌病害に対する抵抗性を誘導したことによることが示されたため、プラントアクチベーターは土壌病害に対する新たな防除方法としても提案されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0008】
また、VMAおよびVAAは、このほかの青枯病などの他の土壌病害、うどんこ病、疫病などの地上部の病害に対しても病害防除効果を示し、これが全身獲得抵抗性の誘導によることが想定されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0009】
一方、場合によっては、プラントアクチベーターが植物の生育抑制などの薬害を生じることが報告されており、バリダマイシンAの茎葉散布も、時にトマトに薬害を起こすことが報告されている(非特許文献1及び非特許文献2)
【0010】
プラントアクチベーターは、従来、いわゆる「ぶっかけ試験」(すなわち、候補化合物で実際に植物を処理し、その後病原菌を接種して発病抑制効果を検定、スクリーニングする生物試験)によるスクリーニングの結果選抜される、発病抑制効果を持つ候補化合物のうちに含まれる極く少数の化合物として得られてきたが、この選抜方法では、一般に防除効果の発現までにある程度(通常数日から10日)時間がかかるプラントアクチベーターは、同時に選抜される多くの殺菌性物質にマスクされて見出しにくいこと、また、病害によっては発病までに時間がかかることから、プラントアクチベーターの選抜は非効率的であった。近年分子生物学的手法が進歩し、プラントアクチベーターが植物組織内で全身獲得抵抗性(SAR;systemic aquired resistance)などのシグナル伝達系を活性化することが報告され、これに基づいて分子マーカー(SAR関連遺伝子や物質)の発現を指標にプラントアクチベーターをスクリーニングする方法、既知プラントアクチベーターの構造を参考に候補化合物を合成しスクリーニングする方法が報告されている。しかし、これらの方法は、高額な試薬、器具類を必要とすること、実際に薬剤を散布した際の植物の反応を観察できないなどの欠点があった。
【0011】
【非特許文献1】R. Ishikawa, K. Shirouzu, H. Nakashita, H.-Y. Lee, T. Motoyama, I. Yamaguchi, T. Teraoka及び T. Arie, Phytopathology 95(10),1209-1216(2005)
【非特許文献2】石川亮及び有江力,植物防疫60(5),219-223(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の状況において、プラントアクチベーターを高率で簡易にかつ短時日でスクリーニングする方法があれば、病害に対して高い防除効果を期待できる全身獲得抵抗性を植物に誘導しうるプラントアクチベーターを容易に見出すことが可能となるだろう。
【0013】
したがって、本発明は、プラントアクチベーターを高率で簡易にかつ短時日でスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、植物にプラントアクチベーターを施用した際に顕れる品種毎の薬害の程度と、処理後に接種した植物病原性微生物に対する全身獲得抵抗性の程度とが相関することを初めて見出した。これに基づき、本発明者らは、感受性植物を供試化合物で処理し、強い薬害を誘導する化合物を病害に対する抵抗性誘導能が高い物質としてスクリーニングする方法を見出した。
本明細書中で、「供試化合物」とは、本発明によるスクリーニングにかけるためのプラントアクチベーターの候補化合物を指す。
【0015】
したがって、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
本発明は、プラントアクチベーターに感受性の植物に、それとは別の供試化合物を施用し、非感受性の同種の植物対照に対しては該供試化合物による薬害が検出されないが、感受性の植物に対しては薬害が検出される場合に、該供試化合物が病害に対する全身獲得抵抗性の誘導能を有すると判定することを含む、プラントアクチベーターのスクリーニング方法を提供する。
【0016】
本明細書で使用される「プラントアクチベーター」という用語は、植物を事前に処理することによって病原に対する全身的な抵抗性を誘導し、多くの場合複数種類の病害の発生を回避する活性をもつが、病原に対する殺菌性を有さない薬剤を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「感受性」という用語は、薬害が生じ易いことを意味する。また、「非感受性」という用語は、薬害が全く又はほとんど生じないことを意味する。
【0018】
本明細書で使用される「全身獲得抵抗性」という用語は、プラントアクチベーターにより植物細胞の関連シグナル伝達系が活性化されることによって病害に対する内因的抵抗性、すなわち免疫様の抵抗性が植物に付与された状態を意味する。
【0019】
本発明によれば、一の実施形態において、前記スクリーニングが、プラントアクチベーターによる全身獲得抵抗性の程度と薬害の程度との間の正の相関関係に基づいて行われることを特徴とする。
【0020】
ここで、「正の相関関係」とは、プラントアクチベーターによる薬害の程度が高いものが全身獲得抵抗性の程度(発病抑制効果)が大きいことを意味する。
【0021】
本発明によれば、別の実施形態において、本発明の方法は、(1)プラントアクチベーターに感受性の植物及び非感受性の同種植物を用意するステップ、(2)供試化合物をそれぞれの該植物に施用するステップ、(3)場合により、各植物に植物病原性微生物を接種するステップ、(4)該供試化合物による薬害を測定するステップ、及び(5)非感受性植物対照と比べて感受性植物において薬害が検出されるような供試化合物をプラントアクチベーターとして選択するステップを含むことを特徴とする。
【0022】
その別の実施形態において、本発明の方法は、異なる濃度のプラントアクチベーターを用いて、前記全身獲得抵抗性を保持しながら前記薬害を抑制することができるプラントアクチベーター濃度を決定することをさらに含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、さらに別の実施形態において、本発明の方法は、前記供試化合物で目的の植物もしくは植物品種を処理して該供試化合物の有効性(すなわち、発病抑制能)を確認することをさらに含むことを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、その方法で使用可能な植物は、双子葉植物又は単子葉植物から選択される。そのような植物の例は、以下のものに限定されないが、ナス科(トマト、タバコなど)、ウリ科(キュウリ、メロンなど)、キク科(チシャ、レタスなど)、アブラナ科(シロイヌナズナなど)、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシなどからなる植物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法は、プラントアクチベーターに感受性の植物を用意さえすれば特別な装置などが不要であること、試験も供試化合物で植物を処理しその後観察するだけで簡便にかつ短時日に判定できること、薬害が出にくい植物を併用することで単なる除草活性をもつ化合物(この場合は、両者に薬害が生じる)を排除できること、などの優位性をもつ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のスクリーニング方法では、プラントアクチベーターに対し感受性の(すなわち、薬害が生じる)、好ましくは高感受性の植物もしくは植物品種と、それとは逆に非感受性の同種植物もしくは植物品種とを用意する必要がある。このような感受性植物は、次のような手順(1)から(6)によって決定することができる。
(1)適当な供試化合物を用意する。
(2)ある特定の植物の複数の品種を用意し、これを栽培する。ここで、植物体は種子の発芽を経て得てもよいし、あるいは苗を入手し土壌を充填した容器に植えつけてもよい。試験に使用可能な植物は、種子、球根、穂木や苗から成体までのいずれの段階のものでもよいが、苗や本葉が2〜15葉期の植物が好ましい。
(3)各植物品種を前記供試化合物で処理する。ここで、処理方法には、例えば植物の茎葉に薬剤を散布あるいは塗布する方法、土壌又は栄養培地に薬剤を添加する方法、種子、球根、穂木などを浸漬あるいは粉衣する方法などが含まれる。
(4)通常、供試化合物処理後3日から10日後に、その防除を望む植物病原性微生物を各植物品種に接種する。接種方法としては、例えば植物が栽培されている土壌に微生物を灌注して植物に接種する方法、予め培養した微生物を土壌に混和して汚染土を作成し、植物を植えつける方法、植物の茎もしくは葉の一部に傷をつけ、その部位に微生物を接触させて感染させる方法、微生物懸濁液を植物に噴霧接種する方法などが含まれる。
(5)微生物による発病の程度及び薬害の程度をそれぞれ測定する。このとき、発病の程度が低い場合は、供試化合物による全身獲得抵抗性の誘導が高いことを示し、反対に、発病の程度が高い場合には、該抵抗性の誘導が低いことを示している。発病の程度及び薬害の程度は、健康な植物との比較における症状の程度、例えば褐変の程度、壊死班の程度、枯死などに基づいて定量化されうる。具体的には、後述の実施例1を参照せよ。
【0027】
つぎに、発病の程度(数値が大きいほど発病が激しい)を縦軸に、薬害の程度(数値が大きいほど薬害が多い)を横軸にそれぞれプロットしてグラフを作成し、両者の間に負の相関関係があること(言い換えれば、全身獲得抵抗性と薬害の発生との間に正の相関関係があること)を確認する(図1)。
(6)上記(5)の相関関係を示すグラフから、感受性植物として、薬害の程度が相対的に高い植物品種を選択する。
【0028】
上記の手法で決定しうるような本発明で使用しうる感受性植物及び非感受性植物は、例えば野生型植物、変異体植物(植物品種を含む)、形質転換植物などの植物から得ることができる。
【0029】
変異体植物は、自然交配、UV、X線、ガンマ線、中性子線などの放射線による処理などによる突然変異により得られる植物である。多くの植物品種は、このような突然変異によって作出されたものである。これらの既存の又は新たに作出される植物品種について、ある特定の既知プラントアクチベーターによる発病程度と薬害程度との相関関係を表すグラフを作成し、薬害のない品種を非感受性植物として、薬害の程度が相対的に高い品種を感受性品種として選択しうる。
【0030】
形質転換植物は、例えば全身獲得抵抗性(SAR)誘導を抑制するように遺伝子操作された植物などを含み、例えばSAR誘導を発現するサリチル酸をカテコールに分解する酵素、すなわちサリチル酸ヒドロキシラーゼ(NahG)、をコードする細菌(例えばPseudomonas fluorescence)由来のnahG遺伝子が導入された植物を包含する。この植物は、プラントアクチベーターを認識することはできるが、サリチル酸の蓄積が起きないためにSARが誘導されない、またカテコールの蓄積によって薬害が発生しやすく、SARにおいてサリチル酸の上流に作用するプラントアクチベーターに対して高い感受性、すなわち強い薬害を示す。この場合、形質転換植物が感受性植物であり、野生型植物が非感受性植物である。このような感受性植物及び非感受性植物の例はそれぞれ、トマト品種Z617 (Plant J. 23:305-318, 2000)及びMoneymakerである。ナス科のタバコ、アブラナ科のシロイヌナズナ、ウリ科のメロン、イネ科のイネなども同様にnahG遺伝子が導入された感受性植物、及び、非感受性植物を使用できる。
【0031】
形質転換植物は、目的の植物の細胞、組織(例えば成長点、葉など)、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根を、nahG遺伝子を含むベクターで形質転換したのち、組織培養条件下でカルス、多芽体などを形成し、植物体に再生することによって作出することができるベクターには、中間ベクター、バイナリーベクターなどのアグロバクテリウム法で一般的に使用されるベクターが含まれる。ベクターには外来DNAを組み込むためのマルチクローニングサイト、プロモーター/エンハンサー、選択マーカー、ターミネーター、ポリアデニル化部位、リボソーム結合部位などを含むことができる。中間ベクター、バイナリーベクターのベースとなるベクターは大腸菌などの細菌用ベクター(例えばpBRシリーズ、pUCシリーズ、pBluescriptなど)でよい。プロモーターの例は、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーター、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子プロモーター、オクトピン合成酵素(OCT)遺伝子プロモーター、イネのアクチン(Act1)遺伝子プロモーターなどを含む。選択マーカーの例は、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β‐グルクロニダーゼ遺伝子 (GUS)、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、クロラムフェニコールアセチル転移酵素遺伝子、などを含む。ターミネーターの例は、nosターミネーターを含む。
【0032】
中間ベクターは、T-DNAを含むベクターであって、T-DNAを介して相同組換え的にアクセプターベクター(Tiプラスミド)と融合可能なベクターであり、中間ベクターの作製法は、例えば再表95/016031などに記載されている。
【0033】
バイナリーベクターは、T-DNA領域の右側ボーダー(RB)と左側ボーダー(LB)を含むベクターであって、RBとLBとの間に外来DNAを組み込んだベクターであり、その例は、pBI101、pBI121、pBI221、pZH2B、pABH-Hm1などを含む。
【0034】
形質転換のための方法には、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、プロトプラストへの遺伝子導入法(例えばポリエチレングリコール法)などが含まれる。形質転換単子葉植物をアグロバクテリウム法で作出する際には、形質転換用培地にアセトシリンゴンを添加して形質転換効率を高めることができる。
【0035】
アグロバクテリウムの例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(例えば LBA 4404株、EHA101株、C58C1RifR株など)などを含む。
【0036】
本発明において使用可能な植物は、特に限定されないが、双子葉植物、単子葉植物などを含む。植物は、理論的には、SARが動くものであれば、種を問わず適用できる。植物種によって物質の認識の特異性や程度が異なることが予想されるので、本発明のスクリーニング法を利用して異なる種でスクリーングすると、種に適したプラントアクチベーターが選抜される。好ましい植物は、ナス科(例えばトマト、タバコなど)、アブラナ科(例えばシロイヌナズナなど)、キク科(例えばチシャ、レタスなど)、ウリ科(例えばキュウリ、メロンなど)などの双子葉植物、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシなどの単子葉植物である。また、NahG導入体が入手しやすい種としては、タバコ、シロイヌナズナ(アブラナ科)、メロン、イネなどがある。
【0037】
供試化合物は、以下のものに限定されないが、SARにおいてサリチル酸の上流に作用する化合物がこのスクリーニング法で選抜され、例えば、糖類(菌類、細菌類などの細胞表面に存在する多糖類、あるいはその代謝産物であるオリゴ糖、二糖類など)、また、これら糖類と立体構造が類似の化合物、また、糖類代謝に関与する酵素の阻害物質、植物ホルモン関連物質、植物、菌類抽出物などを含み、具体的には、例えばバリダマイシンA(VMA)、バリドキシルアミンA(VAA)、プロベナゾール(PBZ)、トレハロース、ソルビトール、サッカリン、マンノース、グルコース、サッカリン、アスパルテーム、植物ホルモン(例えばオーキシン類、ジベレリン類、エチレン、ジャスモン酸類)、植物ホルモン阻害剤(例えばウニコナゾール、AMO(AMO 01618(Calbiochem-Novabiochem, #1712))など)などを含む。施用する濃度は、約0.001〜100000μg/mlの範囲でよい。
【0038】
上記の相関関係は、本発明者らによって初めて見出されたものであるが、この相関関係から、薬害程度の高い化合物は、全身獲得抵抗性誘導能が高く、病害防除効果も高いことが示唆される。実際、選択された感受性植物を使用して供試化合物をスクリーニングするとき、選抜された供試化合物はすべて薬害程度が高いものであった(後述の実施例2)。このとき、植物対照として非感受性植物を使用し、供試化合物が該対照に対して薬害を全く又はほとんど与えない場合、供試化合物はプラントアクチベーターとみなしうる。
【0039】
したがって、本発明は、プラントアクチベーターに感受性の植物に、それとは別の供試化合物を施用し、非感受性の同種の植物対照に対しては該供試化合物による薬害が検出されないが、該感受性の植物に対しては薬害が検出される場合に、該供試化合物が病害に対する全身獲得抵抗性の誘導能を有すると判定することを含む、プラントアクチベーターのスクリーニング方法を提供する。
【0040】
さらに具体的には、本発明の方法は、
(1)プラントアクチベーターに感受性の植物及び非感受性の同種植物を用意するステップ、
(2)供試化合物をそれぞれの該植物に施用するステップ、
(3)場合により、各植物に植物病原性微生物を接種するステップ、
(4)該供試化合物による薬害を測定するステップ、及び
(5)非感受性植物対照と比べて感受性植物において薬害が検出されるような供試化合物をプラントアクチベーターとして選択するステップ、
を含む。
【0041】
上記のステップにおいて、対象の植物、プラントアクチベーター、微生物の接種法などは、上記と同様である。
【0042】
本発明において、供試化合物は、特に限定されないが、対象の植物に対して全身獲得抵抗性誘導能を惹起しうると予想される物質であり、例えばサリチル酸の下流でシグナル伝達系を活性化しうる物質、ジャスモン酸やエチレンを介するシグナル伝達系を活性化しうる物質などである。供試化合物の例及びその施用濃度は、上記のとおりである。
【0043】
薬害の程度は、健康な植物との比較において、例えば褐変の程度、壊死班の程度、枯死などの症状に基づいて定量化されうる。薬害検査は、例えば供試化合物を施用して約3〜10日後に行い、茎や葉に及ぼす薬剤による影響を目視により観察することによって行なうことができる。
【0044】
植物病原性微生物は、細菌、真菌、酵母菌、クロミスタ(べん毛菌)、プロチスタ(変形菌)、線虫、ウイルスなどを含み、農業上有害ないずれの微生物も包含する。微生物(又は病原)の例は、萎凋病菌(Fusarium oxysporum)、半身萎凋病菌(Verticillium spp.)、疫病菌(Phytophthora spp.)、べと病菌(例えばBremia spp.など)、うどんこ病菌(例えばOidium spp.)、いもち病菌(Magnaporthe grisea)、灰色かび病菌(Botrytis spp.)、Alternaria spp.、軟腐病菌(Erwinia spp.)、黒腐病菌(Xanthomonas spp.)、Pseudomonas spp.、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)などであるがこれらに限定されない。
【0045】
微生物の接種濃度は、103〜1010細胞(胞子)/mlであるが、この範囲に限定されない。
【0046】
本発明によれば、本発明の試験系を用いて、非感受性の植物対照に対しては薬害が検出されないが、感受性植物に対しては薬害が検出される供試化合物および供試化合物の濃度で、供試化合物がプラントアクチベーターとして機能していると判定し、候補化合物を選抜することができる。
【0047】
このようにしてスクリーニングされたプラントアクチベーターは、種々の濃度を用いて上記(1)から(5)のステップを繰り返すことによって、全身獲得抵抗性を保持しながら前記薬害を抑制することができる、実用レベルの最適プラントアクチベーター濃度を決定することができる。
【0048】
さらにまた、スクリーニングされたプラントアクチベーターで、対象の植物、その種々の品種、又は同一の属もしくは科の植物を実際に処理して該プラントアクチベーターの発病抑制能を確認してもよい。
【実施例】
【0049】
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【0050】
<実施例1>バリダマイシンA(VMA)による誘導抵抗性と薬害発生程度の相関性
1)実験方法
トマト (Lycopersicon esculentum Mill.) の品種 桃太郎、世界一、福寿2号、瑞光102、サターン、新世界一、ひかり、瑞秀、ハウス桃太郎、ハウスおどりこ、サンロード、れいしゅう、ミニキャロル、ファーストパワー、興津3号、強力麗玉VC、ほまれ114、瑞光208、バルカン、LS-89、ジョイントを種苗会社(例えば、サカタのタネ、タキイ種苗、むさし育種農場、タカヤマシード)から入手して以下の試験に用いた。
【0051】
試験には、1品種あたり6植物を用いた。バリダマイシンAは純度99%の原体(住化武田農薬株式会社)を用いた。トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici race 2 isolate 880621a-1)を用い、ポテトデキストロース液体培地で28℃で4日間振とう培養した。トマト萎凋病菌培養液中の胞子濃度を1〜2×107個胞子/mlに蒸留水で希釈し、接種源として用いた。
【0052】
トマト種子を、滅菌土壌を充填した直径9cmのポットに播種し、28℃光照射条件下で16時間、25℃暗黒条件下で8時間のグロースチャンバーで28日栽培した。バリダマイシンA原体は水で溶解し、100μg/mlになるように蒸留水で希釈した。バリダマイシンA水溶液は、噴霧器を用いて十分量をトマト茎葉に散布処理した。処理トマトは、グロースチャンバーで7日間栽培した。ポットに幅3cmのヘラを3箇所差し込んでトマトの根を部分的に切り、トマト萎凋病菌接種源を5ml灌注して、接種した。接種したトマトは、接種前の栽培条件と同じ条件で28日間栽培した。
【0053】
トマト茎を地際部で切断し、維管束部の褐変程度から0〜4の発病度を調査した。発病度は0;健全、 1; 茎の25%に褐変が認められる、 2;茎の26〜50%で褐変が認められる、 3;茎の 51〜75%で褐変が認められる、 4;茎の76〜100%で褐変が認められる。平均発病度は下記の式を用いて決定した。
【0054】
平均発病度=(1×A+2×B+3×C+4×D)/(4×N1)
(式中、A,発病度1を示した植物数;B,発病度2を示した植物数;C,発病度3を示した植物数;D,発病度4を示した植物数;N1,試験に用いた植物数を表す。)
【0055】
薬害は、バリダマイシンA散布3〜10日後に、茎部に形成された壊死斑の程度から以下の基準で調査を行った。薬害程度0; 健全, 0.5; わずかに茎の褐変が認められる, 1; 茎の褐変, 2; 茎に壊死斑が形成, 3; 茎が枯死。平均薬害度は下記の式を用いて決定した。
【0056】
平均薬害程度=(0.5×E+1×F+2×G+3×H)/(4×N2)
(式中、E;薬害程度0.5を示した植数、F;薬害程度1を示した植物数、G;薬害程度2を示した植物数、H;薬害程度3を示した植物数、N2;試験に用いた植物数を表す。)
【0057】
2)実験結果
バリダマイシンAをトマト各品種に散布した時のトマト萎凋病の発病の程度(DI-VMA)と薬害の程度(Phytotoxicity)を表1に示し、また発病の程度を縦軸に、薬害の程度を横軸にそれぞれプロットして図1に示した。
【0058】
【表1】

表1及び図1から、発病の程度(数値が大きいほど発病が激しい)は、薬害の程度(数値が大きいほど薬害が多い)と負の相関関係があることが認められた(相関係数;-0.57533、有意確率;0.0064)。
【0059】
上記の薬害は、植物組織中にサリチル酸あるいはその代謝物が蓄積することで顕れたと考えられる。実際、上記実験で使用した植物組織中のサリチル酸濃度を測定すると、薬害とサリチル酸濃度に高い正の相関が認められた。サリチル酸は、植物における全身獲得抵抗性(SAR)誘導のシグナル伝達物質であると報告されている(Ishikawaら, 上記)。言い換えれば、サリチル酸濃度が上昇することでSAR経路が発現し、植物が病害に対して抵抗性を持つことになる。纏めると、植物組織内のサリチル酸濃度の上昇は、薬害症状の発現と、病害に対する抵抗性の獲得を招くこととなる。従って、薬害が出やすい植物(図1では右下のドット)をテスターとして用いて、候補化合物を処理し、薬害が強い化合物を選択すると、病害に対する抵抗性誘導能(プラントアクチベーターとしての機能)の高いものを選択できることになる。
【0060】
<実施例2>品種Z617の薬害発生程度と誘導抵抗性の相関性
バリダマイシン感受性(バリダマイシンAを散布した際に薬害が出やすい)トマト品種である、瑞光208(サカタのタネ)、興津3号(野菜試験場から入手)、LS-89(タキイ種苗)、Z617(英国、ジョンイネス研究所から入手)などを用い、候補化合物を散布処理し、顕れる薬害の程度を調査する。とりわけ感受性の高い品種Z617(品種MoneymakerがnahG遺伝子で形質転換されているため、組織内のサリチル酸を速やかにカテコールに変換するため、SAR誘導がかからない一方、カテコールの蓄積によって薬害が出ると考えられている)が検定品種として適していると考えられる。茎葉散布の結果これらのトマト品種に対して強い(高い)薬害を引き起こす化合物は、SAR誘導能が高く、抵抗性誘導による病害防除効果も高いものと予想される。なお、バリダマイシン感受性品種に比べて薬害が現れにくいバリダマイシン非感受性品種(例えばZ617に対してはMoneymaker)を対照に用いることで、SAR誘導(サリチル酸などの蓄積)以外のメカニズム、言い換えれば除草活性によって薬害を引き起こす化合物を排除できる(非感受性の品種にも同等の薬害を起こす場合は除草活性があると判断できる)利点がある。
【0061】
1)実験方法
播種4週後のトマト品種Z617およびMoneymakerに表中の化合物を茎葉散布し、7日後に顕れた薬害の程度を検定、比較した。また、播種4週後の品種Moneymakerに標柱の化合物を茎葉散布し、7日後に萎凋病菌を土壌灌注接種、40日後における萎凋病発病抑制効果を検定した。後者の実験の対照は、水散布処理Moneymakerに同様の接種試験を行ったものを用いた。薬害の程度は、0; 健全(薬害なし), 1; 茎や葉柄にわずかに褐変が認められる, 2; 茎や葉柄の褐変, 3; 茎や葉柄に壊死斑が形成, 4; 茎葉の枯死あるいは生育の著しい阻害で評価した。各区、2株植えのポットを1〜6個使用し、各株の薬害程度の平均値を表示した。病徴の評価は実施例1と同様に行い、対象区に比べてt検定で有意に平均発病度が低下していたものを+、有意に低下しなかったものを−で示した。品種Moneymakerへの茎葉散布で強い薬害を生じたものは発病度の検定が正しく行えないためその旨記した。
【0062】
2)実験結果
測定した結果を表2〜4に示し、各表の下にその評価を記載した。
【表2】

100 μg/ml バリダマイシンA(VMA)、100 μg/ml バリドキシルアミンA(VAA)、10000 μg/ml プロベナゾール(PBZ)、10000 μg/ml アシベンゾラルS−メチル(BTH)、10000 μg/ml トレハロースのZ617に対する茎葉散布で強い(4)薬害が見られ、抵抗性誘導活性を持つ可能性が示唆された。このうち、10000 μg/ml BTHはMoneymakerにも強い薬害を生じ、除草活性を示した。薬害のために発病検定に至らなかった10000 μg/ml BTHを除き、供試化合物のトマト萎凋病抑制効果を評価したところ、100 μg/ml VMA、100 μg/ml VAA、10000 μg/ml PBZ、10000 μg/ml トレハロースで発病抑制効果が見られた。これ以外の化合物は、Z617に対する薬害も、Moneymakerにおける萎凋病発病抑制効果も示さなかった。以上から、100 μg/ml VMA、100 μg/ml VAA、10000 μg/ml PBZ、10000 μg/ml トレハロースは、抵抗性誘導による発病抑制効果を示すと考えられ、プラントアクチベーターとして選抜された。
なお、PBZは既知のプラントアクチベーターであるが、SARにおいてサリチル酸より下流に作用することが判明しており、サリチル酸→カテコールの蓄積によらず薬害を生じたと理解され、これはZ617およびMoneymakerの両者で強い薬害を生じたこととも矛盾しない。ここで、ビビフルフロアブルは、1.0% プロヘキサジオンカルシウム塩(クミアイ化学工業)を、アスパルテームは、0.8% アスパルテーム・L-フェニルアラニン(味の素)を表す。
【0063】
【表3】

100 μg/ml バリダマイシンA(VMA)、1000 μg/mlサッカリン、10000 μg/mlカテコール、10000 μg/mlサリチル酸のZ617に対する茎葉散布で薬害が見られ、抵抗性誘導活性を持つ可能性が示唆された。このうち、10000 μg/mlカテコール、10000 μg/mlサリチル酸はMoneymakerにも強い薬害を生じ、除草活性を示した。薬害のために発病検定に至らなかった10000 μg/mlカテコール、10000 μg/mlサリチル酸を除き、供試化合物のトマト萎凋病抑制効果を評価したところ、100 μg/ml VMA、1000 μg/mlサッカリンで発病抑制効果が見られた。1000 μg/ml Sweet'n lowは、Z617に対する薬害も、Moneymakerにおける萎凋病発病抑制効果も示さなかった。以上から、100 μg/ml VMA、1000 μg/mlサッカリンは、抵抗性誘導による発病抑制効果を示すと考えられ、プラントアクチベーターとして選抜された。ここで、Sweet'n lowは3.6% サッカリンを表す。
なお、サリチル酸はSARにおけるシグナル伝達物質であるが、今回の供試は10000 μg/mlという高濃度であったため、Moneymakerにも薬害を生じた。
【0064】
【表4】

100 μg/ml バリダマイシンA(VMA)、10 μg/ml バリダマイシンA(VMA)、10000 μg/mlトレハロース、1000 μg/mlトレハロース、10000 μg/mlカテコール、1000 μg/mlカテコール、10000 μg/mlソルビトール、1000 μg/mlスクロースのZ617に対する茎葉散布で薬害が見られ、抵抗性誘導活性を持つ可能性が示唆された。このうち、10000 μg/mlカテコールはMoneymakerにも強い薬害を生じ、除草活性を示した。カテコールの濃度を1000 μg/mlに落とすと、薬害程度は低減したが、Z617およびMoneymakerでみられた薬害が同等であったため、カテコールは除草活性をもつものの、抵抗性誘導活性は持たないと判断できた。薬害のために発病検定に至らなかった10000 μg/mlカテコールを除き、供試化合物のトマト萎凋病抑制効果を評価したところ、1000 μg/ml カテコール以外で発病抑制効果が見られた。1000 μg/ml カテコールで発病抑制効果が見られなかったことは、上述と合致しており、本スクリーニング系がうまく機能したことを示す。以上から、100 μg/ml VMA、10 μg/ml VMA、10000 μg/mlトレハロース、1000 μg/mlトレハロース、10000 μg/mlソルビトール、1000 μg/mlスクロースは、抵抗性誘導による発病抑制効果を示すと考えられ、プラントアクチベーターとして選抜された。
【0065】
表から明らかなように、トマト品種Z617で薬害が顕れ、Moneymakerで薬害を引き起こさなかった化合物はすべて萎凋病発病抑制効果を示した。このことから、Z617への薬害を指標にプラントアクチベーターをスクリーニングできることが判明した。
【0066】
トマト品種Z617は、品種MoneymakerにPseudomonas fluorescence由来のサリチル酸ヒドロキシラーゼ遺伝子(nahG)が導入されているため、組織内で酵素のサリチル酸ヒドロキシラーゼを産生する。この酵素は、サリチル酸をカテコールに変換するので、品種Z617組織内ではサリチル酸が産生されても直ちにカテコールに変換される。このため、品種Z617組織内にはサリチル酸が蓄積せず、サリチル酸を介するSARも誘導されない。一方、カテコールは植物にとって有害であるため、組織内に多量にカテコールが蓄積されると薬害が生じる場合がある。
【0067】
<実施例3>誘導抵抗性と薬害発生程度の濃度依存性
次に、誘導抵抗性と薬害発生程度の濃度依存性を検討した。
実施例2と同じ手順で10〜10000μg/mlの範囲内のバリダマイシンA、トレハロース、カテコール、ソルビトール、スクロースの濃度を用いて誘導抵抗性の程度と薬害発生程度を測定し、誘導抵抗性を保持しながら薬害程度の低い実用的なプラントアクチベーター濃度を検討した。
【0068】
上記表4から、100 μg/ml VMAと10 μg/ml VMAでZ617に見られる薬害が濃度依存的であることが示された。両濃度で、発病抑制効果が見られた。以上から、VMAをプラントアクチベーターとして病害防除に用いる際には、(この試験環境と同等の条件では)10 μg/mlで十分であり、あらゆるトマト品種への薬害(本スクリーニングには薬害は重要な有効であるが、通常の栽培では薬害は生産への被害となる)を避ける点から考えると、100 μg/mlよりも10 μg/mlでの施用が好ましいと判断できる。このスクリーニング方法では、濃度を変えた化合物を供試することで、プラントアクチベーターとして使用できる好ましい濃度を示唆できること、また、プラントアクチベーター活性と除草活性を併せ持つ化合物において、より低濃度でプラントアクチベーターを発揮できる場合には、その濃度を知ることが可能となる。
【0069】
プラントアクトチベーターについて、それを実際に使用するにあたり、薬害を起こさず、病害防除効果を示す安全係数を見込んだ濃度設定が、上記手順によって可能になる。
【0070】
さらに、実施例2と同じ手順で、VMA、サッカリン、サリチル酸及びガラクトースを供試化合物として用いて、トマト植物Moneymaker(非感受性)及びZ617(感受性)に対する薬害と、トマト萎凋病及びうどんこ病の発病の抑制効果とを調べた。その結果を表5に示す。
【0071】
【表5】

表から、バリダマイシンA(VMA)及びサッカリンは、Z617による薬害を受けるがMoneymakerによる薬害を受けない、一方、トマト萎凋病及びうどんこ病のいずれに対しても発病抑制効果を示したことがわかる。したがって、このことは、本発明の方法が、病害の種類によらず、プラントアクチベーターのスクリーニングのために使用できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により、植物病害微生物に対する全身獲得抵抗性を植物に誘導させるプラントアクチベーターを簡易に、確実にかつ短時日にスクリーニングすることが可能となったことから、農業上の種々の病害に高い防除効果を発揮する薬剤を容易にかつ早期に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この図は、バリダマイシンAをトマト各品種に散布した時のトマト萎凋病の発病の程度(DI-VMA)と薬害の程度(Phytotoxicity)との負の相関関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントアクチベーターに感受性の植物に、それとは別の供試化合物を施用し、非感受性の同種の植物対照に対しては該供試化合物による薬害が検出されないが、感受性の植物に対しては薬害が検出される場合に、該供試化合物が病害に対する全身獲得抵抗性の誘導能を有すると判定することを含む、プラントアクチベーターのスクリーニング方法。
【請求項2】
前記スクリーニングが、プラントアクチベーターによる全身獲得抵抗性と薬害の発生との間の正の相関関係に基づいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)プラントアクチベーターに感受性の植物及び非感受性の同種植物を用意するステップ、(2)供試化合物をそれぞれの該植物に施用するステップ、(3)場合により、各植物に植物病原性微生物を接種するステップ、(4)該供試化合物による薬害を測定するステップ、及び(5)非感受性植物対照と比べて感受性植物において薬害が検出されるような供試化合物をプラントアクチベーターとして選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異なる濃度のプラントアクチベーターを用いて、前記全身獲得抵抗性を保持しながら前記薬害を抑制することができるプラントアクチベーター濃度を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スクリーニングされたプラントアクチベーターで対象の植物もしくは植物品種を処理して該プラントアクチベーターの発病抑制能を確認することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物が双子葉植物又は単子葉植物から選択される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302634(P2007−302634A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134570(P2006−134570)
【出願日】平成18年5月13日(2006.5.13)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(502433575)住化武田農薬株式会社 (8)
【Fターム(参考)】