説明

プラント監視システムおよびプラント監視方法

【課題】構成部品や制御プログラムを極力簡素化し、プラントおよびプラント機器の健全性を判定可能とするプラント監視システムを提供する。
【解決手段】プラント機器41に設置され、プラント機器41に関する情報を計測する加速度センサ2と、加速度センサ2から計測情報を収録すると共に無線通信機能を備えた収録装置3と、収録装置3との間で無線通信を実施する基地局4と、基地局4に接続され、収録装置3で収録されたプラント機器41に関する計測情報に基づき、プラント機器41またはプラント40の状態を監視する監視装置5とを備え、収録装置5は、加速度センサ2の計測情報について所望の周波数範囲を通過させるフィルタ部18と、フィルタ部18を通過した加速度センサ2の計測情報の成分から評価値を算出し、この評価値と簡易判定しきい値とを比較してプラント機器41の状態を一次的に判定する簡易判定処理部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント機器に設置されたセンサからの計測情報を収録装置で収録し、この計測情報を用いてプラントおよびプラント機器の状態を監視するプラント監視システムおよびプラント監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントにおいては、プラントおよびプラントを構成するプラント機器に発生した異常を早期に検知して、その健全性を維持、確保することを目的として、振動やプロセス値をオンラインで常時監視、あるいはオフラインで定期的に監視している。
【0003】
一般にオンラインの監視では、監視対象物に設置された検出器と、検出器が検出したデータを送信する信号ケーブルと、中央制御室等に設置され、信号ケーブルに接続されたデータ収集監視装置とを備えたプラント監視システムが用いられる。信号ケーブルはプラント内に敷設される。データ収集監視装置は、信号ケーブルを介して検出器が送信したデータを受信し、保存し、解析処理を行う。また、プラント内に設置されたPHS等の電話通信回線を利用して検出器とデータ収集監視装置との間でデータを送受信するプラント監視システムを用いたオンラインの監視も行われつつある。
【0004】
他方、オフラインの監視では、監視対象物に検出器を常設または仮設して、携帯型の記録端末を現場に持ち込み、検出器が検出したデータを携帯型の記録端末に受信して記録するプラント監視システムが用いられる。
【0005】
例えば、特許文献1に記載のプラント監視システムでは、弁に取り付けたセンサの出力から弁の開閉状態を読み取り、中継器を介して検査する。
【0006】
また、従来のプラント監視システムでは、プラント機器である回転機器に加速度計や変位計などの検出器を設置し、軸受部の加速度振動や回転軸の変位量を計測し、回転機器の振動レベルや、回転数と同期した振動成分の変化量を監視し、回転機器の異常の早期な検知や異常の原因を推定して対策の支援を行う監視システムが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のプラント監視システムのように、検出器とデータ収集監視装置との間が信号ケーブルで接続されたオンラインの監視システムでは、検出器の設置範囲や設置点数が制限され、多点の監視や広範囲の監視を必要とする場合は、監視システムは大規模な構成になる。また、検出器とデータ収集監視装置との間のデータの送受信にPHS等の電話通信回線を利用する場合は、本来プラント内での通話利用が主目的であることや、回線数が限られていることもあり、この電話通信回線をデータ通信で占有することは望ましくない。
【0008】
そこで、特許文献2に記載のプラント監視システムでは、検出器と小型の無線通信器とを組み合わせた無線センサと呼ばれるデータ収録器(センサネット端末)をプラント内に多数配置し、検出器が検出したデータを無線伝送により収集する監視システムが提案されている。この監視システムは、無線通信によって検出したデータを伝送するため、それぞれの検出器からデータ収集監視装置に信号ケーブルを敷設する必要がなく、プラント内で広範囲かつ多点の監視を可能とする。
【0009】
また、オフラインの監視システムについても、点検員の巡視による場合、監視対象物の数が多く、広範囲に分布していることから、あらかじめ監視対象物に無線センサを設置しておき、巡回時に点検員が近づいた無線センサが送信したデータを携帯型の記録端末で受信することが可能な監視システムが提案されている。
【特許文献1】特開2005−308540号公報
【特許文献2】特開2005−164315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
無線センサは、電源としてバッテリを搭載しているか、あるいは外部エネルギを変換して電源としているものが大部分である。バッテリの場合は、その容量に制限があるため交換が必要になる。また、外部エネルギを変換して電源とするものは、十分な電力を得るために変換部が大型化する等の課題がある。これらの課題を解決するため、無線センサの省電力化が必要である。
【0011】
無線センサの省電力化は、その構成の面では、部品点数の削減や低性能な部品の使用などによって部品構成を簡素化し消費電力を低減させることを要する。他方、無線センサの動作の面では、部品が動作する時間を短くしたり、動作不要なときの消費電力を抑えたりといった制御の工夫が必要となる。このような無線センサの動作の制御は、無線センサを構成するメモリ領域に記録された制御プログラムが行う。
【0012】
消費電力の観点から動作を最適にする制御プログラムでは、動作モードの制御ケースの増加によってプログラムが大型化する。そうすると、大型化した制御プログラムを記録するメモリ領域を増やす必要があり、このことは部品構成の簡素化と相反することになる。したがって、無線センサ全体で消費電力を抑えるためには制御プログラムも可能な限り簡素化させる必要がある。
【0013】
振動を計測し、解析し、設定した監視しきい値との比較によってプラントおよびプラント機器の健全性を判断する監視システムの場合には、多くは検出器のセンサ部に加速度計を用いて加速度を計測し、この加速度から速度や変位を算出してプラントおよびプラント機器の健全性を判断する。この場合、加速度から速度や変位を算出する積分回路が必要になる。あるいは加速度から速度、変位に変換するための演算プログラムをメモリ領域に搭載する必要がある。無線センサに積分回路を構成する部品を増加させることや、演算プログラムの搭載に伴ってメモリ領域を増加させることは、無線センサの消費電力を増加させる。
【0014】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、構成部品や制御プログラムを極力簡素化し、プラントおよびプラント機器の健全性を判定可能とするプラント監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するため本発明では、プラント機器に設置され、前記プラント機器に関する情報を計測する加速度センサと、前記加速度センサから計測情報を収録すると共に無線通信機能を備えた収録装置と、前記収録装置との間で無線通信を実施する基地局と、前記基地局に接続され、前記収録装置で収録された前記プラント機器に関する計測情報に基づき、前記プラント機器またはプラントの状態を監視する監視装置とを備え、前記収録装置は、前記加速度センサの計測情報について所望の周波数範囲を通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過した前記加速度センサの計測情報の成分から評価値を算出し、前記評価値と簡易判定しきい値とを比較してプラント機器の状態を一次的に判定する簡易判定処理部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、収録装置がプラント機器に関する計測情報を加速度センサから収録し、前記収録装置が前記計測情報を、基地局を経て監視装置に無線通信で送信し、前記監視装置が、前記計測情報からプラント機器またはプラントの状態を監視するプラント監視方法であって、前記収録装置は、前記加速度センサの計測情報を所望の周波数範囲が通過するフィルタ部を通して簡易判定処理部に出力し、前記簡易判定処理部が、前記フィルタ部を通った前記加速度センサの計測情報の成分から評価値を算出し、前記評価値と簡易判定しきい値とを比較してプラント機器の状態を一次的に判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構成部品や制御プログラムを極力簡素化し、プラントおよびプラント機器の健全性を判定可能とするプラント監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るプラント監視システムについて、図1から図7を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るプラント監視システムの構成を示す無線ネットワーク図である。
【0020】
図1に示すように、プラント40は、複数のプラント機器41と、プラント監視システム1とを備える。プラント監視システム1は、プラント機器41に設置され、プラント機器41に関する情報を計測する少なくとも1つの加速度センサ2と、加速度センサ2に接続されて加速度センサ2からの計測情報を収録すると共に無線通信機能を備えた収録装置3と、少なくとも1つの収録装置3との間で無線通信Wを実施する基地局4と、基地局4に接続されて収録装置3および基地局4の動作を制御し、かつ収録装置3が収録した計測情報に基づいてプラント40全体あるいはプラント機器41の状態を監視する監視装置5とを備える。
【0021】
プラント監視システム1では、監視装置5が基地局4に接続され、監視装置5と基地局4とを移動できる。監視装置5を点検員が所持して移動することにより、監視装置5は、無線通信が可能な範囲にある収録装置3との間で、基地局4を介して通信を確立することができる。
【0022】
収録装置3は、基地局4あるいは他の収録装置3との間で無線通信を実施する機能を有する。複数の収録装置3で相互に無線通信が可能であることから、監視装置5との間で制御信号や加速度センサ2で計測された計測情報を、基地局4を介し中継して送受信することができる。
【0023】
図2は、本発明に係るプラント監視システムの他の例を示す無線ネットワーク図である。
【0024】
図2に示すように、プラント40に設けられたプラント監視システム1Aは、プラント内にあるLAN等の通信回線6に基地局4が接続される。プラント40内の各所に設置された複数の基地局4を介して、監視装置5は収録装置3との間で通信が可能になる。
【0025】
図3は、本発明に係るプラント監視システムの収録装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、収録装置3は、第一判定処理部9と、記録部10と、無線送受信部11と、計時機能部12と、CPU13と、電源部14とを有する。
【0027】
第一判定処理部9は、監視対象機器としてのプラント機器41に設置された少なくとも一つの加速度センサ2に接続される。また、第一判定処理部9は、加速度センサ2で計測されたプラント機器41に関する計測情報のうち、所望の周波数範囲の計測情報の成分に着目して記録部10に記録された簡易判定しきい値と比較してプラント機器41の状態を一次判定する。
【0028】
第一判定処理部9は、A/D変換部17と、フィルタ部18と、簡易判定処理部19とを有する。
【0029】
A/D変換部17は、監視対象機器としてのプラント機器41に少なくとも一つ設置された加速度センサ2に接続され、加速度センサ2にて計測されたプラント機器41に関するアナログ信号である計測情報をデジタル信号に変換する。ここで、計測情報は、プラント機器41の振動波形でありプラント機器41の状態を表す物理量である。A/D変換部17から出力される計測情報のデジタル信号は、メモリ(図示省略)または記録部10に一時的に記録されて保存される。
【0030】
フィルタ部18は、A/D変換部17によって変換された計測情報のデジタル信号について、所望の周波数範囲の計測情報の成分のみを通過させるフィルタ、いわゆる帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ)である。フィルタ部18はプラント機器41の性質に合わせてハイパスフィルタやローパスフィルタを用いることもできる。
【0031】
簡易判定処理部19は、フィルタ部18を通過した所望の周波数範囲の計測情報の成分に対応した評価値を算出し、この評価値と、プラント機器41に対応する簡易判定しきい値とを比較してプラント機器41の状態を一次的に判定する。評価値が簡易判定しきい値を超えている場合は、計測情報のデジタル信号を記録部10に保存するとともに、無線送受信部11を介して基地局4に評価値が簡易判定しきい値を超えたことを通知する。また、評価値が簡易判定しきい値を超えた場合に、計測情報のデジタル信号を無線送受信部11を介して基地局4に送信することもできる。
【0032】
ここで、所望の周波数範囲の計測情報の成分とは、プラント機器41に異常が生じた場合に発生する振動数あるいは機器の固有振動数のような特徴周波数に基づく範囲である。特徴周波数とは、例えば回転機械の場合には、軸系の回転周波数や回転周波数の倍数となる周波数や、転がり軸受に傷が生じた場合に発生する特徴的な周波数をいう。また、プラント機器41の固有値解析や減衰波形の計測から求められた固有振動数をいう。
【0033】
また、簡易判定しきい値とは、所望の周波数範囲における速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtの上限値である。
【0034】
さらに、評価値は、所望の周波数範囲の計測情報の成分、すなわち加速度波形から算出されるプラント機器41の速度Vおよび変位Dであり、[数1]、[数2]、[数3]および[数4]により算出される。なお、加速度波形の実効値armsから評価値を算出して判定する場合は[数1]と[数2]とを用い、加速度波形の絶対値の最大値amaxから評価値を算出して判定する場合は[数3]と[数4]とを用いる。
【0035】
すなわち、収録装置3は、所望の周波数範囲を通過させるフィルタ部18を有することによって、加速度波形から速度Vおよび変位Dを簡易的に算出してプラント機器41の状態を一時的に判定する。
【0036】
評価値である速度Vおよび変位Dは次のように算出される。
[数1]
Vrms=arms/(2×π×f)
Vrms:速度(実効値)
arms:加速度(実効値)
π:円周率
f:特徴周波数
[数2]
D=√2×arms/(2×π×f)
D:変位
arms:加速度(実効値)
π:円周率
f:特徴周波数
[数3]
Vmax=amax/(2×π×f)
Vmax:速度
amax:加速度(絶対値の最大値)
π:円周率
f:特徴周波数
[数4]
D=amax/(2×π×f)
D:変位
amax:加速度(絶対値の最大値)
π:円周率
f:特徴周波数
【0037】
具体的には、加速度波形の実効値armsから評価値を算出して判定する場合は、所望の周波数範囲の計測情報の成分、すなわち所望の周波数範囲の加速度波形の実効値armsを算出し、次いで、実効値armsから[数1]および[数2]によって速度の実効値Vrmsおよび変位Dを求めて、速度の実効値Vrmsおよび変位Dと簡易判定しきい値である所望の周波数範囲における速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtとを比較する。速度の実効値Vrmsおよび変位Dのいずれか一方もしくは両方が、速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtを超えたときは、簡易判定処理部19は、計測情報のデジタル信号を記録部10に記録し保存する。このとき、簡易判定処理部19は、計測情報のデジタル信号とともに加速度の実効値armsを記録部10に記録し保存することもできる。
【0038】
また、加速度波形の絶対値の最大値amaxから評価値を算出して判定する場合は、所望の周波数範囲の計測情報の成分、すなわち所望の周波数範囲の加速度波形から絶対値の最大値amaxを検索し、次いで、加速度の絶対値の最大値amaxから[数3]および[数4]によって速度Vmaxおよび変位Dを求めて、速度Vmaxおよび変位Dと簡易判定しきい値である所望の周波数範囲における速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtとを比較する。速度Vmaxおよび変位Dのいずれか一方もしくは両方が、速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtを超えたときは、簡易判定処理部19は、計測情報のデジタル信号を記録部10に記録し保存する。このとき、簡易判定処理部19は、計測情報のデジタル信号とともに加速度の絶対値の最大値amaxを記録部10に記録し保存することもできる。
【0039】
なお、簡易判定しきい値である所望の周波数範囲における速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtとは、それぞれ[数1]および[数2]または[数3]および[数4]のいずれを一時的な判定に用いるか否かによって、プラント機器41の特徴周波数から所要に設定される。
【0040】
記録部10は、少なくとも自己の識別子と、通信可能な他の収録装置3の識別子と、[数1]および[数2]や加速度波形の実効値を算出する演算プログラムまたは[数3]および[数4]や加速度の絶対値の最大値を検索する演算プログラムと、収録装置3の制御プログラムと、プラント機器41の特徴周波数と、簡易判定しきい値とを記録し保存する。また、A/D変換部17によってデジタル信号に変換された計測情報を記録し保存することもできる。
【0041】
無線送受信部11は、基地局4や他の収録装置3との間で制御信号、計測情報のデジタル信号および収録装置3の識別子などの情報を無線通信する。記録部10に保存された計測情報のデジタル信号などの情報は、無線送受信部11によって、基地局4、または基地局4および他の収録装置3を経由して監視装置5から伝送される制御信号によって基地局4、または基地局4および他の収録装置3を経由して監視装置5へ無線送信される。
【0042】
計時機能部12は、収録装置3に内蔵されて時を刻み、基地局4を介して監視装置5から送信される正確な時刻情報によって時間ずれが補正される。
【0043】
CPU13は、収録装置3の第一判定処理部9、記録部10、無線送受信部11、計時機能部12および電源部14を制御する。
【0044】
電源部14は、収録装置3の第一判定処理部9、記録部10、無線送受信部11、計時機能部12およびCPU13を駆動するために、これらへ電力を供給する。電源部14としては、一次電池や二次電池が使用可能である。また、太陽電池(光電変換素子)や、温度差により発電が可能な熱電変換素子など、外部エネルギにより発電可能なものを使用することが好適である。
【0045】
収録装置3は、監視装置5から基地局4を介して制御することができる。例えば、監視装置5からの指令によって記録部10に保存された計測情報を収録装置3から監視装置5に送信させることができる。
【0046】
記録部10には、プラント40またはプラント機器41の起動時刻、運転時間、点検期間などの時間に関する動作条件が保存できる。収録装置3のCPU13は、この動作条件に基づいて、第一判定処理部9、記録部10、無線送受信部11、電源部14を制御して収録装置3を動作させる。動作条件は、プラント40またはプラント機器41の運転スケジュールや点検スケジュールをもとに監視装置5によって作成されたものであり、収録装置3へ送信されて、収録装置3の記録部10に記録され保存される。プラント機器41においては、起動時、通常運転時、停止時、定期点検時のようなプラント40の運転状態によって、監視が必要な時と、監視が必要でない時とが存在する。動作条件はこれを反映したものである。収録装置3のCPU13は、この動作条件に従って収録装置3を定期的に動作させると共に、動作条件に応じて設定される複数の動作モードのいずれかに切り替えて収録装置3を動作させる。
【0047】
図4は、本発明に係るプラント監視システムの基地局の構成を示すブロック図である。
【0048】
図4に示すように、基地局4は、無線送受信部21と、通信部22と、記録部23と、計時機能部24と、CPU25と、電源部26とを有する。
【0049】
無線送受信部21は、収録装置3との間で無線通信を実施する機能を果たす。
【0050】
通信部22は、監視装置5との間で通信を実施する。
【0051】
記録部23は、自己の識別子と、基地局4の制御プログラムとを記録し保存する。また、収録装置3から送信された計測情報を一時的に保存する。
【0052】
計時機能部24は、基地局4に内蔵されて時を刻み、通信部22を介して監視装置5から送信される正確な時刻情報によって時間ずれが補正される。
【0053】
CPU25は、無線送受信部21、通信部22、記録部23、計時機能部24および電源部26を制御する。
【0054】
電源部26は、基地局4の無線送受信部21、通信部22、記録部23、計時機能部24およびCPU25を駆動するために、これらへ電力を供給する。
【0055】
図5は、本発明に係るプラント監視システムの監視装置の構成を示すブロック図である。
【0056】
図5に示すように、監視装置5は、通信部29と、機器情報管理部30と、第二判定処理部31と、スケジュール情報部32と、表示部33と、入力部34と、計時機能部35と、CPU36と、電源部37とを有する。監視装置5は、プラント内、またはプラントから離れた遠隔地の中央制御室若しくは事務所内に設置される。
【0057】
通信部29は、基地局4との間で通信を実施する。
【0058】
機器情報管理部30は、監視対象の各プラント機器41の名称や設置場所などの各プラント機器41の識別情報、収録装置3に収録されたプラント機器41に関する計測情報、プラント機器41の状態を詳細に判定するための詳細判定しきい値などを管理する。
【0059】
第二判定処理部31は、機器情報管理部30で管理された各プラント機器41の計測情報と、各プラント機器41に対応する詳細判定しきい値とを比較することでプラント機器41の状態を詳細に判定し監視する。
【0060】
具体的には、例えば収録装置3に収録されたプラント機器41に関する計測情報、すなわち加速度波形から速度や変位を算出する積分回路により、速度波形および変位波形を求め、速度波形および変位波形を周波数分析してプラント機器41毎の特徴周波数における詳細判定しきい値と比較することで、プラント機器41の状態を詳細に判定し監視する。
【0061】
スケジュール情報部32は、プラント40や各プラント機器41の運転スケジュールおよび点検スケジュール等を保持する。
【0062】
表示部33は、第二判定処理部31で判定されたプラント機器41の状態などの監視情報を、判定結果と共に表示する。
【0063】
入力部34は、監視装置5の操作入力を受け付ける。例えば、収録装置3からプラント機器41の計測情報について、所望の周波数範囲の計測情報の成分が簡易判定しきい値を超えたことが通知されたときに、入力部34からの操作入力によって収録装置3から計測情報を送信させることができる。
【0064】
計時機能部35は、正確な時刻を保持する。計時機能部35の時刻情報が収録装置3および基地局4へ送信される。
【0065】
CPU36は、通信部29、機器情報管理部30、第二判定処理部31、スケジュール情報部32、表示部33、計時機能部35および電源部37を制御するものであり、例えば通信部29を制御して、収録装置3へ計測情報の収録と送信を指示する。
【0066】
電源部37は、通信部29、機器情報管理部30、第二判定処理部31、スケジュール情報部32、表示部33、計時機能部35およびCPU36を駆動するために、これらへ電力を供給する。
【0067】
次に、プラント40あるいはプラント機器41にプラント監視システム1を用いてオンラインの監視を行う場合の動作を説明する。
【0068】
図6は、本発明に係るプラント監視システムのプラント監視動作を示すフローチャートである。
【0069】
図6に示すように、まず、ステップS1では、収録装置3のCPU13は、加速度センサ2からプラント機器41に関する計測情報を第一判定処理部9に取得する。
【0070】
次に、ステップS2では、第一判定処理部9のA/D変換部17は、加速度センサ2から取得した計測情報をアナログ信号からデジタル信号に変換してフィルタ部18に出力する。
【0071】
次に、ステップS3では、収録装置3のCPU13は、A/D変換部17から出力された計測情報のデジタル信号をメモリまたは記録部10に一時的に保存する。
【0072】
次に、ステップS4では、第一判定処理部9のフィルタ部18は、A/D変換部17から入力された計測情報のデジタル信号をフィルタ処理して、所望の周波数範囲の計測情報の成分のみを簡易判定処理部19に出力する。
【0073】
次に、ステップS5では、第一判定処理部9の簡易判定処理部19は、フィルタ部18から入力された所望の周波数範囲の計測情報、すなわち加速度波形から、絶対値の最大値amaxを検索または実効値armsを算出する。
【0074】
次に、ステップS6では、第一判定処理部9の簡易判定処理部19は、加速度波形の実効値armsから[数1]および[数2]を用いて評価値、すなわち速度の実効値Vrmsおよび変位Dを求め、または、加速度波形の絶対値の最大値amaxから[数3]および[数4]を用いて評価値、すなわち速度Vmaxおよび変位Dを求める。
【0075】
次に、ステップS7では、第一判定処理部9の簡易判定処理部19は、記録部10に保存された簡易判定しきい値である所望の周波数範囲における速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtと、評価値である速度の実効値Vrmsおよび変位Dまたは速度Vmaxおよび変位Dを比較して一次判定する。速度の実効値Vrmsおよび変位Dまたは速度Vmaxおよび変位Dが速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtを超える場合はステップS8に進む。速度の実効値Vrmsおよび変位Dまたは速度Vmaxおよび変位Dが速度成分Vlmtおよび変位成分Dlmtを超えない場合は、処理を終了する。
【0076】
次に、ステップS8では、収録装置3のCPU13は、メモリまたは記録部10に一時的に保存した計測情報のデジタル信号を記録部10に保存する。
【0077】
次に、ステップS9では、収録装置3のCPU13は、無線送受信部11から基地局4を経て監視装置5に一次判定の結果が、簡易判定しきい値を超えたことを通知して、処理を終了する。このとき、一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えたことを通知するとともに、計測情報のデジタル信号を監視装置5に送信することもできる。
【0078】
なお、プラント監視動作が連続的に行われる場合には、プラント監視動作の処理の終了後、開始に戻ってプラント監視動作を継続する。
【0079】
次に、プラント40あるいはプラント機器41にプラント監視システム1を用いてオンラインの監視を行う場合の動作の他の例を説明する。
【0080】
図7は、本発明に係るプラント監視システムのプラント監視動作の他の例を示すフローチャートである。
【0081】
なお、図7のステップS1からステップS7の処理は、図6のステップS1からステップS7の処理と同様であり、説明が繰り返しになるので省略する。
【0082】
図6に示すように、ステップS10では、第一判定処理部9の簡易判定処理部19は、ステップS5で算出した加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsと、記録部10が保存している今回の処理より前に一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えた時の加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsとを比較する。ステップS5で算出した加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsが、記録部10が保存している今回の処理より前に一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えた時の加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsよりも大きい場合はステップS8Aに進む。ステップS5で算出した加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsが、記録部10が保存している今回の処理より前に一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えた時の加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsよりも大きくない場合はステップS11に進む。
【0083】
次に、ステップS8Aでは、収録装置3のCPU13は、メモリまたは記録部10に一時的に保存した計測情報のデジタル信号と、ステップS5で算出した加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsとを記録部10に保存してステップS9Aに進む。
【0084】
次にステップS11では、ステップS5で算出した加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsを記録部10に保存してステップS9Aに進む。
【0085】
次に、ステップS9Aでは、収録装置3のCPU13は、無線送受信部11から基地局4を経て監視装置5に一次判定の結果が、簡易判定しきい値を超えたことを通知して、処理を終了する。このとき、一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えたことを通知するとともに、計測情報のデジタル信号と、保存したすべての加速度の絶対値の最大値amaxまたは実効値armsとを監視装置5に送信することもできる。
【0086】
なお、プラント監視動作が連続的に行われる場合には、プラント監視動作の処理の終了後、開始に戻ってプラント監視動作を継続する。
【0087】
したがって、収録装置3は、加速度センサ2の計測情報の成分から算出された絶対値の最大値amaxまたは実行値armsを記録部10に保存するとともに、加速度センサ2の計測情報の成分から算出された絶対値の最大値amaxまたは実行値armsが最大となる加速度センサ2の計測情報を記録部10に保存することになる。
【0088】
監視装置5に収録装置3から一次判定の結果が簡易判定しきい値を超えたことが通知されると、監視装置5の第二判定処理部31は、積分回路や数値計算プログラムや制御プログラムを用いて加速度波形から速度や変位を算出し、速度波形および変位波形を求め、速度波形および変位波形を周波数分析してプラント機器41毎の特徴周波数における詳細判定しきい値と比較することで、プラント機器41の状態を詳細に判定する。
【0089】
監視装置5の第二判定処理部31において詳細判定の結果が詳細判定しきい値を超えると、監視装置5の表示部33には、その旨の表示がされる。具体的には、プラント機器41の識別情報とともに警告表示がなされる。
【0090】
本実施形態に係るプラント監視システム1によれば監視装置5のある事務所や中央操作室などの遠隔地でプラント40内のプラント機器41の状態を把握できる。
【0091】
一般に、プラント40またはプラント機器41の振動を計測し、あらかじめ設定された判定しきい値に基づいてプラント40またはプラント機器41の状況を監視する従来のプラント監視システムの場合、加速度センサ2を用いて加速度を測定し、加速度波形を積分して速度波形および変位波形を算出してプラント40またはプラント機器41の状況を判定する。このような従来のプラント監視システムの場合、加速度波形から速度波形および変位波形を算出する積分回路や数値計算プログラムや制御プログラムを備える必要があった。この積分回路や数値計算プログラムや制御プログラムが収録装置3に実装されると、収録装置3の構成部品が増加され、制御プログラム量を増加されることになり、収録装置3の省電力化が困難であった。例えば、加速度センサ2から取得した加速度波形について、FFTなどの周波数分析を行い、特徴周波数の速度振幅や変位振幅を算出してプラント40またはプラント機器41の状況を監視する従来のプラント監視システムの場合は、周波数分析に用いる数値計算プログラムが必要となり、数値計算プログラムの保存および周波数分析の処理に用いるメモリ領域が必要となる。また、周波数分析の際にCPUやメモリを動作させる電力が消費されることになり、収録装置3の省電力化が困難であった。
【0092】
本実施形態に係るプラント監視システム1の収録装置3によれば、所望の周波数範囲を通過させるフィルタ部18を備えることで、加速度センサ2から取得された加速度波形から積分のような複雑な数値演算を必要とせず、[数1]から[数4]に示すように速度および変位を簡易的に算出することができる。これによって、収録装置3には積分回路や制御プログラム、複雑な数値計算プログラムの実装が不要になり、収録装置3の省電力化を図ることができる。また、制御プログラムや数値計算プログラムなどのプログラムを記録、保存するとともに、その実行時に利用されるメモリ領域を確保する必要がなく、収録装置3の構成の面からも省電力化を図ることができる。
【0093】
したがって、本発明に係るプラント監視システム1によれば、構成部品や制御プログラムを極力簡素化し、プラント40およびプラント機器41の健全性を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るプラント監視システムの構成を示す無線ネットワーク図。
【図2】本発明に係るプラント監視システムの他の例を示す無線ネットワーク図。
【図3】本発明に係るプラント監視システムの収録装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明に係るプラント監視システムの基地局の構成を示すブロック図。
【図5】本発明に係るプラント監視システムの監視装置の構成を示すブロック図。
【図6】本発明に係るプラント監視システムのプラント監視動作を示すフローチャート。
【図7】本発明に係るプラント監視システムのプラント監視動作の他の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0095】
1 プラント監視システム
2 加速度センサ
3 収録装置
4 基地局
5 監視装置
6 通信回線
9 第一判定処理部
10 記録部
11 無線送受信部
12 計時機能部
13 CPU
14 電源部
17 A/D変換部
18 フィルタ部
19 簡易判定処理部
21 無線送受信部
22 通信部
23 記録部
24 計時機能部
25 CPU
26 電源部
29 通信部
30 機器情報管理部
31 第二判定処理部
32 スケジュール情報部
33 表示部
34 入力部
35 計時機能部
36 CPU
37 電源部
40 プラント
41 プラント機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント機器に設置され、前記プラント機器に関する情報を計測する加速度センサと、
前記加速度センサから計測情報を収録すると共に無線通信機能を備えた収録装置と、
前記収録装置との間で無線通信を実施する基地局と、
前記基地局に接続され、前記収録装置で収録された前記プラント機器に関する計測情報に基づき、前記プラント機器またはプラントの状態を監視する監視装置とを備え、
前記収録装置は、前記加速度センサの計測情報について所望の周波数範囲を通過させるフィルタ部と、前記フィルタ部を通過した前記加速度センサの計測情報の成分から評価値を算出し、前記評価値と簡易判定しきい値とを比較してプラント機器の状態を一次的に判定する簡易判定処理部とを備えたことを特徴とするプラント監視システム。
【請求項2】
前記収録装置は、
前記評価値が前記簡易判定しきい値を超えると、前記監視装置に前記評価値が前記簡易判定しきい値を超えたことを通知することを特徴とする請求項1に記載のプラント監視システム。
【請求項3】
前記収録装置は、前記加速度センサの計測情報を保存する記録部を備え、
前記評価値が前記簡易判定しきい値を超えると、前記加速度センサの計測情報を前記監視装置に送信することを特徴とする請求項1または2に記載のプラント監視システム。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記プラント機器に異常が生じた場合に発生する振動数あるいは前記プラント機器の固有振動数に基づく周波数範囲を通過させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項5】
前記記録部には、前記プラント機器に異常が生じた場合に発生する振動数あるいは前記プラント機器の固有振動数における特徴周波数が保存され、前記フィルタ部を通過した前記加速度センサの計測情報の成分から算出された絶対値の最大値または実行値と、前記特徴周波数との乗算により速度あるいは変位を算出し、前記簡易判定しきい値と比較することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項6】
前記収録装置は、
前記加速度センサの計測情報の成分から算出された絶対値の最大値または実行値を前記記録部に保存するとともに、
前記加速度センサの計測情報の成分から算出された絶対値の最大値または実行値が最大となる前記加速度センサの計測情報を前記記録部に保存することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラント監視システム。
【請求項7】
収録装置がプラント機器に関する計測情報を加速度センサから収録し、
前記収録装置が前記計測情報を、基地局を経て監視装置に無線通信で送信し、
前記監視装置が、前記計測情報からプラント機器またはプラントの状態を監視するプラント監視方法であって、
前記収録装置は、前記加速度センサの計測情報を所望の周波数範囲が通過するフィルタ部を通して簡易判定処理部に出力し、
前記簡易判定処理部が、前記フィルタ部を通った前記加速度センサの計測情報の成分から評価値を算出し、前記評価値と簡易判定しきい値とを比較してプラント機器の状態を一次的に判定することを特徴とするプラント監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300401(P2009−300401A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158375(P2008−158375)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】