説明

プラント監視装置およびそのプラントデータバックアップ方法

【課題】 プラント監視装置のプラントデータを安定してバックアップする。
【解決手段】 プラント監視装置1は、プラント機器41からプロセス信号21を受信して警報出力処理を行うプラント監視処理部3と、警報出力処理に係るプラントデータ24を記憶させるプラントデータ記憶装置9と、プラント監視処理部3による警報出力処理の実行予定を警報出力処理イベント23として入力するイベント入力部6と、警報出力処理イベント23に基づいてプラント監視処理部3によるアクセスタイミングを判定し、バックアップ予定時間25からアクセスタイミングを避けてバックアップスケジュール26を決定するスケジュール決定部7と、バックアップスケジュール26に従ってプラントデータ記録装置9内のプラントデータ24を外部記憶装置11にバックアップするバックアップ処理装置10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントデータを外部記録装置にバックアップするプラント監視装置およびそのプラントデータバックアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所をはじめとする発電プラントに設置されるプラント監視装置は、プラント運転中はもちろん、定期検査等のプラント停止中であってもプラント機器の状態把握等を目的として連続稼動し、プラント機器の温度や圧力を示すプラントデータをプラントデータ記憶装置に逐次記録している。プラントデータ記憶装置に記憶されたプラントデータは外部記憶装置にバックアップされ、プラントの挙動解析やプラント機器の性能検査等に用いられる。
【0003】
従来のプラントデータのバックアップ方法は、定期検査中にプラント運転員がプラント監視装置に外部記憶装置を接続して手動でバックアップを行っていた。しかし、定期検査は数ヶ月乃至数年といった長期スパンで行われるため、万が一プラントに不適事象が発生しプラント監視装置が停止に至った場合、前回のバックアップ時点から不適事象発生時までのプラントデータをバックアップすることができない可能性がある。
【0004】
そこで、プラント監視装置をマスタ側計算機とバックアップ側計算機としてそれぞれ別個の建屋に設け、1日毎といった所定の定期的なバックアップタイミングにおいてマスタ側計算機内のプラントデータをバックアップ側計算機にバックアップする技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−95804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、プラント監視装置の重要な機能として警報出力処理がある。警報出力処理は、プラント機器から受信したプロセス信号が正常範囲逸脱制限値から逸脱した場合に中央制御室に警報を発し、さらに警報出力処理に係るプラントデータをプラントデータ記憶装置に書き込む処理である。
【0007】
上述した特許文献1に記載の技術は、警報出力処理に係るプラントデータの書き込みのアクセスタイミングにマスタ側計算機からバックアップ側計算機へのバックアップタイミングが重なった場合、プラントデータの書き込みミスやプラント監視装置への負荷等が発生する可能性がある。
【0008】
そこで本発明は、安定してプラントデータをバックアップすることができるプラント監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明のプラント監視装置は、プラント機器からプロセス信号を受信して正常範囲逸脱制限値と比較し、警報出力処理を行うプラント監視処理部と、このプラント監視処理部によってアクセスし、警報出力処理に係るプラントデータを記憶させることができるプラントデータ記憶装置と、プラント監視処理部による警報出力処理の実行予定を警報出力処理イベントとして入力するイベント入力部と、バックアップを行う所定のバックアップ予定時間を記憶したルールテーブルと、イベント入力部に入力された警報出力処理イベントに基づいて、プラント監視処理部によるプラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、バックアップ予定時間からアクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定するスケジュール決定部と、スケジュール決定部によって決定されたバックアップスケジュールに従ってプラントデータ記録装置内のプラントデータを読み出し、外部記憶装置にバックアップするバックアップ処理装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、上記目的を達成するために本発明のプラントデータバックアップ方法は、プラント機器からプロセス信号を受信して正常範囲逸脱制限値と比較し、警報出力処理を行うプラント監視処理工程と、このプラント監視処理工程によって行われた警報出力処理に係るプラントデータをプラントデータ記憶装置に記憶させるプラントデータ記憶工程と、プラント監視処理工程による警報出力処理の実行予定を警報出力処理イベントとして入力し、この警報出力処理イベントに基づいて、プラントデータ記憶工程におけるプラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、所定のバックアップ予定時間からアクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定するスケジュール決定工程と、このスケジュール決定工程によって決定されたバックアップスケジュールに従ってプラントデータ記録装置内のプラントデータを読み出し、外部記憶装置にバックアップするバックアップ処理工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラント監視装置のプラントデータを安定してバックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置のプラントテーブル部の例を示す概略図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置のルールテーブルの例を示す概略図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置について図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図である。プラント監視装置1は、プラントテーブル部2と、プラント監視処理部3と、運転ログ処理部4と、保守情報処理部5と、イベント入力部6と、スケジュール決定部7と、ルールテーブル8と、プラントデータ記憶装置9と、バックアップ処理装置10とから構成される。さらにプラント監視装置1にはプラント機器41および外部記憶装置11が接続される。
【0015】
プラント機器41は、プラント内の各所に設けられるポンプやモータ、弁等であって、これらに各々設けられたセンサやアクチュエータによって温度や圧力、流量等を示すプロセス信号21a、21b、21cをプラント監視装置1に送信する機器である。外部記憶装置11は、HDD(Hard disk drive)や光ディスク等の記憶媒体である。
【0016】
以下、プラント監視装置1の各構成の接続関係について説明する。プラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4は、プラント機器41からプロセス信号21a、21b、21cをそれぞれ受信できるように、プラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4はプラント機器41に接続される。
【0017】
プラント監視処理部3は、プラントテーブル部2から特定プラント運転状態情報22を受信することができるように、プラント監視処理部3はプラントテーブル部2に接続される。
【0018】
保守情報処理部5は、プラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4から保守情報27a、27b、27cをそれぞれ受信することができるように、保守情報処理部5はプラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4に接続される。
【0019】
イベント入力部6は、プラントテーブル部2から特定プラントイベント23aを受信できるように、イベント入力部6はプラントテーブル部2に接続される。さらにイベント入力部6は、プラント監視処理部3から警報出力処理イベント23bを受信できるように、イベント入力部6はプラント監視処理部3に接続される。
【0020】
またイベント入力部6は、運転ログ処理部4からログ記録イベント23cを受信できるように、イベント入力部6は運転ログ処理部4に接続される。さらにイベント入力部6は、保守情報処理部5から保守イベント23dを受信できるように、イベント入力部6は保守情報処理部5に接続される。
【0021】
スケジュール決定部7は、イベント入力部6からプラントイベント情報23を受信することができるように、スケジュール決定部7はイベント入力部6に接続される。さらにスケジュール決定部7は、ルールテーブル8からバックアップ予定時間25を受信することができるように、スケジュール決定部7はルールテーブル8に接続される。
【0022】
プラントデータ記憶装置9は、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5から監視処理データ24b、ログデータ24c、保守データ24dをそれぞれ受信することができるように、プラントデータ記憶装置9はプラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5に接続される。
【0023】
バックアップ処理装置10は、スケジュール決定部7からバックアップスケジュール26を受信することができるように、バックアップ処理装置10はスケジュール決定部7に接続される。さらにバックアップ処理装置10は、プラントデータ記憶装置9からプラントデータ24を読み出すことができるように、バックアップ処理装置10はプラントデータ記憶装置9に接続される。
【0024】
外部記憶装置11は、バックアップ処理装置10からプラントデータ24を受信することができるように、外部記憶装置11はバックアップ処理装置10に着脱可能に接続される。
【0025】
(作用)
以下、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。まず、プラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4の基本作用について説明し、バックアップ処理装置10による外部記憶装置11へのプラントデータ24のバックアップ方法については後述する。
【0026】
プラントテーブル部2は、プラント機器41からプロセス信号21aを受信し、プラント機器41の状態を入力とした論理表で状態判定してプラント運転状態を自動的に判定する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置のプラントテーブル部の例を示す概略図である。図2のように、プロセス信号21から求められる弁の開度やポンプの起動を論理表に当てはめ、所定の系統の起動が必要であることを示すプラント運転状態を判定することができる。
【0027】
プラントテーブル部2によって判定されるプラント運転状態のうち、所定の系統の起動または停止、プラントの出力上昇または下降といった所定のプラント機器41の操作を要する特定プラント運転状態は、特定プラント運転状態情報22としてプラント監視処理部3に送信され、後述するプラント監視処理部3によるプラント自動処理に用いられる。特定プラント運転状態情報22には所定のプラント41の操作を示す情報を付加することができる。
【0028】
プラント監視処理部3は、プラント機器41から受信したプロセス信号21bから求められるプロセス値を正常範囲逸脱制限値と比較し、これを逸脱した場合に中央制御室に警報を出力する警報出力処理を行う。またプラント監視処理部3は、プラントテーブル部2から特定プラント運転状態情報22を受信し、特定プラント運転状態に基づいてプラント機器41の起動や停止を自動的に行うプラント自動処理を行う。例えば、特定プラント運転状態が所定の系統の起動を示す場合、プラント監視処理部3は所定の系統の起動を行うプラント機器41の操作を自動処理する。
【0029】
さらにプラント監視処理部3は、警報出力処理ならびにプラント自動処理の実行に際してプラントデータ記憶装置9にアクセスし、それぞれ警報出力処理の内容やプロセス値、プラント自動処理を行ったプラント機器41や処理内容を示す情報を監視処理データ24bとしてプラントデータ記憶装置9に送信し記憶させる。
【0030】
またプラント監視処理部3は、プラント運転員の監視および操作に必要な操作画面に自動的に切り替えを行う緊急時処理や、プロセス値を図形やシンボルパターンにて視覚化しプラント各系統の運転状況を描画するグラフィック処理、CRT画面やプリンタにプラント状態変化を出力するメッセージ処理等を行うことができる。
【0031】
運転ログ処理部4は、プラント機器41から流量や圧力、温度を示すプロセス信号21をプラントの運転効率、寿命消費等を示すプラント性能データとして蓄積し、これを正時、正10分、6時間、24時間、毎月替わりなど所定のログ保存タイミングにてプラントデータ記憶装置9にアクセスし、ログデータ24cとしてプラントデータ記憶装置9に送信し記憶させる。
【0032】
保守情報処理部5は、プラントテーブル部2およびプラント監視処理部3ならびに運転ログ処理部4を実行するアプリケーションソフトが内部に作成している状態ログや実行記録をそれぞれ保守情報27a、27b、27cとして受信し統合して保守データ24dを作成する。さらに所定の保守タイミングにおいてプラントデータ記憶装置9にアクセスし、保守データ24dを送信し記憶させ、万が一のソフトの誤動作やプラント監視装置1にトラブルが発生した場合に解析の助としている。
【0033】
上述したようにプラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5は、所定時間または一定の条件下のアクセスタイミングにおいて、それぞれ監視処理データ24b、ログデータ24c、保守データ24dをプラントデータ記憶装置9に送信し記憶させる。
【0034】
ここで、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5の何れかによるプラントデータ記憶装置9へのアクセス中において、バックアップ処理装置10によってプラントデータ記憶装置9からプラントデータ24を読み出し外部記憶装置11にバックアップを行うと、監視処理データ24b、ログデータ24c、保守データ24dの記録ミスやプラント監視装置1に処理負荷が発生するおそれがある。
【0035】
そこで以下に、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5によるプラントデータ記憶装置9へのアクセスタイミングを避けてバックアップ処理装置10によってバックアップ処理装置10によるバックアップを行う方法について説明する。
【0036】
プラント監視処理部3は、上述したプロセス値の正常範囲逸脱制限値の逸脱によって警報出力処理の実行を判定したとき、警報出力処理の実行に先立って警報出力処理の実行予定を示す警報出力処理イベント23bをイベント入力部6に送信する。警報出力処理イベント23bには、警報出力処理の処理開始と処理終了の予定時刻が付加される。さらに警報出力処理イベント23bには、警報出力処理の実行においてプラントデータ記録装置9に送信される監視処理データ24bのデータ種別やデータ容量、記録予定時刻等の情報を付加することができる。
【0037】
またプラントテーブル部2は、特定プラント運転状態を判定した時において、特定プラント運転状態に基づくプラント監視処理部3によるプラント自動処理の実行予定を示す特定プラントイベント23aをイベント入力部6に送信する。特定プラントイベント23aには、特定プラント運転状態に基づいてプラント監視処理部3がプラント自動処理を行うプラント機器41や処理内容、プラント自動処理の実行予定時刻等を付加することができる。
【0038】
さらに運転ログ処理部4は、プラントデータ記憶装置9へのログデータ24cの記録予定をログ記録イベント23cとしてイベント入力部6に送信する。ログ記録イベント23cには、ログ保存タイミングの開始および終了予定時刻を付加することができる。
【0039】
また保守情報処理部5は、プラントデータ記憶装置9への保守データ24dの記録予定を保守イベント23dとしてイベント入力部6に送信する。保守イベント23dには、保守タイミングの開始および終了予定時刻を付加することができる。
【0040】
イベント入力部6は、特定プラントイベント23a、警報出力処理イベント23b、ログ記録イベント23c、保守イベント23dを受信し、これらを統合してプラントイベント情報23としてスケジュール決定部7に送信する。スケジュール決定部7は、上述したイベント入力部6からプラントイベント情報23を受信し、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5のプラントデータ記憶装置9へのアクセスタイミングを判定する。
【0041】
例えば、プラント監視処理部3の警報出力処理によるアクセスタイミングは、警報出力処理イベント23が示す警報出力処理の処理開始と処理終了の予定時刻をもってアクセスタイミングとして判定することができる。さらに、警報出力処理イベント23に監視処理データ24bの種類や容量、記録予定時刻等の情報を付加した場合には、これらの情報から警報出力処理の処理開始から処理終了までのうち実際にプラント監視処理部3がプラントデータ記憶装置9にアクセスする時刻をアクセスタイミングとして判定することができる。
【0042】
さらにプラント監視処理部3のプラント自動処理によるアクセスタイミングは、特定プラントイベント23aが示すプラント監視処理部3のプラント自動処理の処理内容や実行予定時刻によって判定することができる。特定プラント運転状態を示す特定プラントイベント23aを用いてアクセスタイミングを判定することによって、プラント監視処理部3がプラント自動処理を実行する前にプラント自動処理によるアクセスタイミングを判定することができる。
【0043】
ルールテーブル8には、バックアップを実行する予定の日付や時間であるバックアップ予定時間25が記憶されている。図3は、本発明の第1の実施形態に係るプラント監視装置のルールテーブルの例を示す概略図である。図3に示すように、バックアップ予定の日付ならびに開始予定時刻を示すバックアップ予定時間25の各々において、差分バックアップもしくは増分バックアップといったバックアップの種別を指定する情報や、バックアップするデータのロケーションを指定する情報を付加することができる。ここで、差分バックアップとは前回バックアップ時からの差分のプラントデータ24をバックアップする方法であり、増分バックアップとは前回バックアップ時からの増分のプラントデータ24をバックアップする方法である。
【0044】
スケジュール決定部7は、ルールテーブル8からバックアップ予定時間25を受信して、バックアップ予定時間25からプラントイベント情報23を用いて判定したアクセスタイミングを避けた時間においてバックアップを行うバックアップスケジュール26を決定する。
【0045】
バックアップ処理装置10は、スケジュール決定部7からバックアップスケジュール26を受信し、バックアップスケジュール26に基づいてプラントデータ記憶装置9からバックアップに必要なプラントデータ24を読み出し外部記憶装置11にバックアップを行う。
【0046】
またスケジュール決定部7は、運転ログ処理部4によるログデータ24cの記録のように定期的にアクセスタイミングが予測できる場合には、プラントデータ記憶装置9に実行中のアクセス終了から次回のアクセス発生予測時刻前にバックアップを再度行うようにバックアップスケジュール26を決定することもできる。また、プラント監視処理部3による不定期に発生するプラントデータ記憶装置9へのアクセスとバックアップ予定時間25の時刻が重なった場合は、アクセス完了後にバックアップを再度行うようにバックアップスケジュール26を決定することもできる。
【0047】
なお、バックアップの形態としては、プラントの定期検査時にプラントデータ記憶装置9のフルバックアップデータを外部記憶装置11に作成し、プラント運転再開後はプラントデータ記憶装置9のフルバックアップデータからの増分バックアップまたは差分バックアップを外部記憶装置11に作成するものとする。
【0048】
(効果)
本発明の第1の実施形態によれば、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5によるプラントデータ記憶装置9へのアクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定し、このバックアップスケジュールに基づいてバックアップ処理装置10によるバックアップを行うことによって、プラント監視処理部3および運転ログ処理部4ならびに保守情報処理部5によるプラントデータ記憶装置9へのアクセスに影響を及ぼさずに安定してプラントデータ24を外部記憶装置11にバックアップすることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第2の実施形態に係るプラント監視装置について図4を参照して説明する。第1の実施形態に係るプラント監視装置の各部と同一部分には同一符号を付し、同一の構成についての説明は省略する。
【0050】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、バックアップ中止装置13およびバックアップ要求装置14を新たに設けた点である。バックアップ中止装置13およびバックアップ要求装置14は、中央制御室の操作卓のタッチパネルディスプレイ上において表示するタッチボタンとして、または制御盤等における押しボタンとして設けることができる。
【0051】
バックアップ中止装置13は、バックアップ中止信号31をスケジュール決定部7に送信することができるように、バックアップ中止装置13はスケジュール決定部7に接続される。またバックアップ要求装置14は、バックアップ要求信号32をスケジュール決定部7に送信することができるように、バックアップ要求装置14はスケジュール決定部7に接続される。
【0052】
(作用)
以下、本発明の第2の実施形態の作用について説明する。定期検査時におけるプラント機器41の点検時、プラント監視装置1で動作するアプリケーションソフトの入れ替え時等にプラント監視装置1が通常運転外の状態となることが予見される場合、または通常運転外の状態となった場合にプラント運転員の判断で意図的にバックアップ処理装置10によるバックアップを停止させておきたい場合がある。
【0053】
このような場合に、バックアップ中止装置13によって強制的なバックアップの中止を指示することができる。バックアップ中止装置13のボタンを一度押すことによってバックアップ中止信号31をスケジュール決定部7に送信する。スケジュール決定手段7は、バックアップ中止信号31を受信している間、バックアップを行わないようにバックアップスケジュール26を決定し、バックアップ処理装置10はこれを受信してバックアップを停止する。
【0054】
通常運転の状態に戻った場合には、バックアップ中止装置13のボタンを再度押す操作によってバックアップ中止信号31の送信を解除し、スケジュール決定部7は再びルールテーブル8およびイベント入力部6を用いたバックアップスケジュールの決定を再開する。
【0055】
一方、逆にバックアップスケジュールの範囲外であっても、例えば万が一の地震や火災、ウイルスの侵入やDoS(Denial of Service)攻撃等によってプラントデータ記憶装置9内のプラントデータ24が失われる可能性がある場合、プラントデータ記憶装置9内のプラントデータ24を事後解析を目的として強制的にバックアップしておきたい場合がある。
【0056】
このような場合に、プラント運転員によってバックアップ要求装置14のボタンを押してバックアップ要求信号32をスケジュール決定部7に送信する。スケジュール決定部7はバックアップ要求信号32を受信した後、直ちにバックアップを行うバックアップスケジュールを決定し、バックアップ処理装置10によるバックアップを行う。
【0057】
(効果)
本発明の第2の実施形態によれば、バックアップ中止装置13およびバックアップ要求装置14を設けることによって、ルールテーブル8に記録されたバックアップ予定時間25に従ったバックアップに加え、プラントの状況に応じてプラント運転員が容易にバックアップスケジュールを変更することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第3の実施形態に係るプラント監視装置について図5を参照して説明する。第1の実施形態に係るプラント監視装置の各部と同一部分には同一符号を付し、同一の構成についての説明は省略する。
【0059】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るプラント監視装置の概略ブロック図である。第3の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、バックアップデータ転送手段12を新たに設けた点である。バックアップデータ転送手段12は、プラントデータ24をバックアップ処理装置10から受信することができるように、バックアップデータ転送手段12とバックアップ処理装置10は接続される。
【0060】
さらにプラント建屋外には外部プラントデータ記憶装置52を有する外部プラント監視装置1bが、設けられる。外部プラント監視装置51内にはデータリストア装置13が設けられる。データリストア装置13は、バックアップデータ転送手段12からプラントデータ24を受信することができるように、データリストア装置13とバックアップデータ転送手段12は接続される。
【0061】
(作用)
以下、本発明の第3の実施形態の作用について説明する。バックアップ処理装置10は、バックアップスケジュール26に基づいてプラントデータ24をプラントデータ記憶装置9から読み出しバックアップデータ転送手段12に送信する。バックアップデータ転送手段12は、プラントデータ24を受信して外部プラント監視装置51内のデータリストア装置13に送信する。
【0062】
データリストア装置13は、バックアップデータ転送手段12からプラントデータ24を受信して外部プラントデータ記憶装置52に記録し、プラント監視装置1内のプラントデータ記憶装置9と同様のデータ構造のプラントデータ24を外部プラントデータ記憶装置52に復元構築する。
【0063】
外部プラント監視装置51は、プラント建屋外のプラント建屋外に配置されており、プラント監視装置1におけるプラント監視処理部3等の構成を有する必要がないため、外部プラントデータ記憶装置52へのアクセスタイミングを感知する必要がなく、随時データリストア装置13によって外部プラントデータ記憶装置52にプラントデータ24を記憶し、さらに復元したプラントデータ24を読み込み解析することができる。
【0064】
(効果)
本発明の第3の実施形態によれば、プラント監視装置1のプラントデータ24が、プラント建屋外に配置された外部プラント監視装置51内の外部プラントデータ記憶装置52に復元構築されるため、プラント監視装置1のプラント監視データや保守情報をプラント建屋外に得ることができ、プラント監視装置1の信頼性ならびに保守性を高めることができる。
【0065】
さらに、プラント監視装置1内のプラントデータ記憶装置9に記憶されているプラントデータ24が万が一消失したときには、データリストア装置13を用いて外部プラント監視装置52内のプラントデータ24を読み出し、データリストア装置13を介してプラント監視装置1内のプラントデータ記憶装置9に送信して記憶させることでデータを復元することができる。
【0066】
また、データリストア装置13をプラント監視装置1内に設けてもよい。この場合、データリストア装置13によって外部記憶装置11からプラントデータ24を読み出し、プラントデータ記憶装置9にプラントデータ24を書き込む構成とすることによって、外部記憶装置11によってプラントデータ記憶装置9にプラントデータ24を復元することができる。
【0067】
なお、本発明の実施形態は上述した実施形態に限られないことは言うまでもない。例えば、プラント監視装置1に接続されるプラント機器41の種類や数、送信するプロセス信号21a、21b、21cは、プラント監視装置1の用途やプラントの規模によって適宜変更されうるものである。
【0068】
また、プラント監視処理部3がプラント運転員の操作画面を自動的に切り替える緊急時処理や、プロセス値を図形やシンボルパターンにて視覚化しプラント各系統の運転状況を描画するグラフィック処理、CRT画面やプリンタにプラント状態変化を出力するメッセージ処理等を行い、さらにこれらの処理に際して処理に係るデータをプラントデータ記憶装置9に記憶させるとき、これらの処理の実行予定またはデータの記録予定をイベントとしてイベント入力部6に入力してもよい。このとき、イベント入力部6がこれらのイベントによるプラント監視処理部3のアクセスタイミングを判定し、スケジュール決定部7がこのアクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定することによって、プラント監視処理部3の緊急時処理やグラフィック処理、メッセージ処理によるプラントデータ記憶装置9へのアクセスを避けてバックアップを行うことができる。
【0069】
なお、上述した第1から第3の実施形態は適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・プラント監視装置
2・・・プラントテーブル部
3・・・プラント監視処理部
4・・・運転ログ処理部
5・・・保守情報処理部
6・・・イベント入力部
7・・・スケジュール決定部
8・・・ルールテーブル
9・・・プラントデータ記憶装置
10・・・バックアップ処理装置
11・・・外部記憶装置
12・・・データリストア装置
13・・・バックアップ中止装置
14・・・バックアップ要求装置
15・・・バックアップデータ転送装置
21a、21b、21c・・・プロセス信号
22・・・特定プラント運転状態情報
23・・・プラントイベント情報
23a・・・特定プラントイベント
23b・・・警報出力処理イベント
23c・・・ログ記録イベント
23d・・・保守イベント
24・・・プラントデータ
24b・・・監視処理データ
24c・・・ログデータ
24d・・・保守データ
25・・・バックアップ予定時間
26・・・バックアップスケジュール
27a、27b、27c・・・保守情報
31・・・バックアップ中止信号
32・・・バックアップ要求信号
41・・・プラント機器
51・・・外部プラント監視装置
52・・・外部プラントデータ記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント機器からプロセス信号を受信して正常範囲逸脱制限値と比較し、警報出力処理を行うプラント監視処理部と、
このプラント監視処理部によってアクセスし、前記警報出力処理に係るプラントデータを記憶させることができるプラントデータ記憶装置と、
前記プラント監視処理部による前記警報出力処理の実行予定を警報出力処理イベントとして入力するイベント入力部と、
バックアップを行う所定のバックアップ予定時間を記憶したルールテーブルと、
前記イベント入力部に入力された前記警報出力処理イベントに基づいて、前記プラント監視処理部の前記警報出力処理による前記プラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、前記バックアップ予定時間から前記アクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定するスケジュール決定部と、
このスケジュール決定部によって決定された前記バックアップスケジュールに従って前記プラントデータ記録装置内の前記プラントデータを読み出し、外部記憶装置にバックアップするバックアップ処理装置とを備えることを特徴とするプラント監視装置。
【請求項2】
前記プラント機器の状態を入力として、プラント運転状態を判定するプラントテーブル部をさらに備え、
前記イベント入力部に、さらに前記プラントテーブル部によって前記プラント運転状態のうち特定プラント運転状態が判定され、この特定プラント運転状態に基づいて前記プラント監視処理部によるプラント自動処理の実行予定を示す特定プラントイベントを入力し、
前記プラント監視処理部は、前記特定プラント運転状態に基づいて前記プラント自動処理を行うとともに、このプラント自動処理に係る前記プラントデータを前記プラントデータ記憶装置に記録し、
前記スケジュール決定部は、前記プラントテーブル部に入力された前記特定プラントイベントに基づいて、前記プラント監視処理部の前記プラント自動処理による前記プラントデータ記録装置への前記アクセスタイミングを判定し、このアクセスタイミングをさらに避けて前記バックアップスケジュールを決定することを特徴とする請求項1に記載のプラント監視装置。
【請求項3】
所定時間にプラント機器から受信した前記プラントデータを前記プラントデータ記録装置にログ記録を行う運転ログ処理部をさらに備え、
前記イベント入力部は、さらに前記運転ログ処理部による前記ログ記録の実行予定をログ記録イベントとして記録し、
前記スケジュール決定部は、前記プラントテーブル部に記憶された前記ログ記録イベントに基づいて、前記運転ログ処理部による前記プラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、このアクセスタイミングをさらに避けて前記バックアップスケジュールを決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラント監視装置。
【請求項4】
前記プラント監視処理部を実行処理するアプリケーションソフトの保守情報を前記バックアップデータ記憶装置に記録する保守情報処理部をさらに備え、
前記イベント入力部は、さらに前記保守情報処理部による前記保守情報の記録を保守イベントとして記録し、
前記スケジュール決定部は、前記プラントテーブル部に記憶された前記保守情報記録イベントに基づいて、前記保守情報処理部による前記保守情報の記録による前記プラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、このアクセスタイミングさらにを避けて前記バックアップスケジュールを決定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項5】
前記バックアップデータ記憶装置において実行中の前記バックアップを手動で強制的に中止させることができるバックアップ中止装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項6】
前記スケジュール決定部によって決定された前記バックアップスケジュールによらず、前記バックアップデータ記憶装置による前記外部記憶装置へのバックアップを手動で強制的に行わせることができるバックアップ要求装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項7】
内部にデータリストア装置および外部プラントデータ記憶装置を有する外部プラント監視装置と、
前記バックアップ処理装置から前記プラントデータを受信し、前記データリストア装置に転送することができるデータ転送装置とをさらに備え、
前記データリストア装置は受信した前記プラントデータを前記外部プラントデータ記憶装置に記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項8】
プラント機器からプロセス信号を受信して正常範囲逸脱制限値と比較し、警報出力処理を行うプラント監視処理工程と、
このプラント監視処理工程によって行われた前記警報出力処理に係るプラントデータをプラントデータ記憶装置に記憶させるプラントデータ記憶工程と、
前記プラント監視処理工程による前記警報出力処理の実行予定を警報出力処理イベントとして入力し、この警報出力処理イベントに基づいて、前記プラントデータ記憶工程における前記プラントデータ記録装置へのアクセスタイミングを判定し、所定のバックアップ予定時間から前記アクセスタイミングを避けてバックアップスケジュールを決定するスケジュール決定工程と、
このスケジュール決定工程によって決定された前記バックアップスケジュールに従って前記プラントデータ記録装置内の前記プラントデータを読み出し、外部記憶装置にバックアップするバックアップ処理工程とを備えることを特徴とするプラントデータデータバックアップ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−50828(P2013−50828A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187994(P2011−187994)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】