説明

プラント設備の設定データ履歴再現装置

【課題】不具合等の発生時に容易かつ効率的に各装置群の設定データの変更履歴の確認を行うことができるプラント設備の設定データ履歴再現装置を提供する。
【解決手段】それぞれが自身の設定データを保持する複数のプラント構成装置群1,2,3から構成されるプラント設備の設定データ履歴再現装置7において、複数のプラント構成装置群1,2,3と通信可能に接続され所定の設定データ記憶タイミングで各プラント構成装置群に保持された設定データを取得し設定データ変更履歴として記憶する設定データ履歴記憶手段7aと、設定データ履歴記憶手段7aの設定データ変更履歴のうち、現在から過去の任意の二時点の設定データを比較して差異を抽出する設定データ比較抽出手段7cと、当該抽出された差異のある設定データを表示する設定データ表示手段7dと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラント設備の設定データ履歴再現装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラント設備は、目的とする生産や処理を行うために複数の機能が組み合わされて構成されている。そして、プラント設備を構成する各機能については、例えば、エネルギー発生・供給装置、機械的な駆動機器、電気的な駆動機器、化学的な処理装置、及びそれらを計測・制御する電子的な制御装置等といったように、プラント設備に必要な各機能がそれぞれを実現する装置又は装置群にまとめられており、これらの装置(群)を適宜に組み合わせることにより具体的なプラント設備が構成される。
【0003】
このようなプラント設備のうち、例えば水処理プラント等における従来のプロセス制御システムにおいては、監視制御装置に接続された複数の入力装置(キーボード等)を操作してプラントを構成する各機器の設定を行うとともに、監視制御装置において各機器の動作状態を記憶・表示するものがある。そして、このようなプラント制御システムにおいて、各入力装置からの操作データを記憶しておき、必要に応じてどの入力装置からどのような設定操作が行われたのかを表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のプラント設備においては、プラントを構成する各装置(群)の設定や動作制御を、特許文献1に記載されたもののように監視制御装置を通して一元的に行うものでなく、プラントを構成する各装置(群)のそれぞれに、運転操作手段やエンジニアリングツールを接続して、それぞれの装置(群)において設定データを保持しているものもある。
【0005】
このような従来のプラント設備の構成の例を図6に示す。この図6において、プラント設備は、第1のプラント構成装置群1、第2のプラント構成装置群2、…、第nのプラント構成装置群3の複数(n個:nは2以上の自然数)のプラント構成装置群から構成されている。これらのプラント構成装置群のそれぞれは、プラント設備に必要なある一の機能を実現するための1以上の装置の集まり(群)である。
【0006】
これらの第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3には、第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aがそれぞれ保持されている。また、第1のプラント構成装置群1及び第nのプラント構成装置群3には、第1のプロセスデータ1b及び第nのプロセスデータ3bがそれぞれ保持されている。
【0007】
第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3においては、運転操作手段4やエンジニアリングツール5を接続して用いることにより、あるいは、プラント構成装置群に設けられた設定手段により、第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aの設定をそれぞれにおいて行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−182033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、図6に示すような従来のプラント設備における設定データ管理は、供給業者やプラント運用側の組織分担が異なる等の事情から、各装置単位あるいは同種の装置群単位で行われている。また、プラント設備の操業状態監視のために収集・記憶されるイベントデータを含むプロセスデータについても、設定データと同様に、各装置(群)単位で管理されている。
【0010】
そして、このような従来のプラント設備において操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合には、各装置(群)に保存されているそれぞれのプロセスデータや設定データの履歴を人の手により解析して、前記現象の原因抽出、対応策の策定及び実施を行って良好な操業・運転状態に復旧しなければならない。このため、前述したような好ましくない現象が発生した場合に、プラントを構成するそれぞれの装置(群)毎に保存されているプロセスデータや設定データを、個々に確認、解析する必要があり、不具合要因候補抽出やその原因特定に煩雑な手数がかかるという課題がある。
【0011】
また、プロセスデータや設定データの確認作業において、膨大な保存データから良好に運転されていた時点との相違点を人的に探索する必要があり、時間と人的労力を要する作業となってしまうという課題もある。そして、良好に運転されていた時点の設定データを突き止められたとしても、プラントを構成する各装置(群)の設定を当該時点のものに複元するためには、各装置(群)のそれぞれにおいて設定を戻す作業を実施する必要があって非常に煩雑であるという課題もある。
【0012】
なお、特許文献1に示された従来のプラント設備は、監視制御装置に接続された各入力装置からの操作データを記憶し、記憶した操作データに基づいて設定変更履歴を表示するものであることから、プラント設備を構成する各装置(群)のそれぞれにおいて設定データ等を保持する方式のプラント設備においては適用することができず、前述したような課題が未解決のまま残されることとなる。
【0013】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、各装置(群)にそれぞれの設定データが保存されているプラント設備において、特に操業員の設定・操作誤り、保全員の保守誤り等の人的要因による操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合に、容易かつ効率的に各装置(群)の設定データの変更履歴の確認を行うことができるプラント設備の設定データ履歴再現装置を得るものである。
【0014】
また、第2の目的は、各装置(群)にそれぞれの設定データが保存されているプラント設備において、特に人的要因による操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合に、容易かつ効率的に各装置(群)の設定を過去の時点のものに復元することができるプラント設備の設定データ履歴再現装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係るプラント設備の設定データ履歴再現装置においては、それぞれが自身の設定データを保持する複数のプラント構成装置群から構成されるプラント設備の設定データ履歴再現装置であって、前記複数のプラント構成装置群と通信手段により通信可能に接続され、所定の設定データ記憶タイミングで、前記複数のプラント構成装置群のそれぞれに保持された前記設定データを、前記通信手段を介して取得し設定データ変更履歴として記憶する設定データ履歴記憶手段と、前記設定データ履歴記憶手段が記憶する前記設定データ変更履歴のうち、現在から過去の任意の少なくとも2つの時点の前記設定データを比較して、これらの時点の前記設定データの差異を抽出する設定データ比較抽出手段と、前記設定データ比較抽出手段により抽出された差異のある前記設定データを表示する設定データ表示手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係るプラント設備の設定データ履歴再現装置においては、各装置(群)にそれぞれの設定データが保持されているプラント設備において、特に人的要因による操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合に、容易かつ効率的に各装置(群)の設定データの変更履歴の確認を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る設定データ履歴再現装置による設定データ履歴の記憶及び再現動作を説明する時系列チャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係る設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
【図6】従来におけるプラント設備の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0019】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図、図2は設定データ履歴再現装置による設定データ履歴の記憶及び再現動作を説明する時系列チャートである。
【0020】
図1に示すように、プラント設備は、第1のプラント構成装置群1、第2のプラント構成装置群2、…、第nのプラント構成装置群3の複数(n個:nは2以上の自然数)のプラント構成装置群から構成されている。これらのプラント構成装置群のそれぞれは、プラント設備に必要なある一の機能を実現するための1以上の装置の集まり(群)である。すなわち、ここでいうプラント構成装置群の語には、便宜上、それぞれのプラント構成装置群を構成する装置の数が複数でなく1である場合も含まれるものとする。
【0021】
これらの第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3のそれぞれが実現しているプラント設備に必要な機能としては、例えば、エネルギー発生・供給機能、機械的駆動機能、電気的駆動機能、化学的処理機能、及び、それらを計測・制御する電子的な制御機能等がある。そして、これらの第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3を適宜に組み合わせることにより具体的なプラント設備が構成されている。
【0022】
これらの第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3のそれぞれには、操業設定データが保持されており、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3は、自身の保持する設定データの内容に従って動作する。具体的には、第1のプラント構成装置群1では第1のプラント構成装置群1の操業動作設定に関する第1の設定データ1aが、第2のプラント構成装置群2では第2のプラント構成装置群2の操業動作設定に関する第2の設定データ2aが、第nの設定データ3aでは第nのプラント構成装置群3の操業動作設定に関する第nの設定データ3aが、それぞれ保持されている。
【0023】
また、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3には、自身の動作状態等のイベント情報を含むプロセスデータもそれぞれ保存される。なお、プロセスデータが保存されるか否かは各プラント構成装置群の機能や性質により左右され、必ずしもプラント設備を構成する全てのプラント構成設備群においてプロセスデータが保存されるものではない。図1の例では、第1のプラント構成装置群1に第1のプロセスデータ1bが、第nのプラント構成装置群3に第nの設定データ3aが、それぞれ保存されているが、第2のプラント構成装置群2にはプロセスデータは保存されていない。
【0024】
第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3に対しては、運転操作手段4及び/又はエンジニアリングツール5が接続可能である。運転操作手段4は、接続されたプラント構成装置群の操業員が運転操作を行うためのものであり、運転に際し操業動作設定も行うことができるようにしてもよい。エンジニアリングツール5は、接続されたプラント構成装置群の管理用ツールであり操業動作設定を行うことができる。図1の例は、第1のプラント構成装置群1に運転操作手段4が接続され、第2のプラント構成装置群2にエンジニアリングツール5が接続されている状態を示している。
【0025】
このようにして、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3においては、運転操作手段4やエンジニアリングツール5を接続して用いることにより、第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aの設定を行うことができる。あるいは、運転操作手段4やエンジニアリングツール5を用いなくともそれぞれのプラント構成装置群において直接に設定データの変更が行えるように、プラント構成装置群に設定手段を設けるようにしてもよい。
【0026】
第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3のそれぞれに対しては、設定データ履歴再現装置本体7が、通信ネットワーク6を介して通信可能に接続されている。この設定データ履歴再現装置本体7には、設定データ履歴記憶手段7a、設定データ記憶タイミング設定手段7b、設定データ比較抽出手段7c及び設定データ表示手段7dが備えられている。
【0027】
設定データ履歴記憶手段7aは、所定の設定データ記憶タイミングでもって、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3に保持されている第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aを通信ネットワーク6を介して取得して、取得した設定データをその時の時刻とともに設定データ変更履歴として記憶するものである。従って、設定データ履歴記憶手段7aには、それぞれのプラント構成装置群の設定データの過去の変更履歴が蓄積される。
【0028】
なお、これに対し、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3の第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aには現時点での最新の設定内容のみが保持されている。すなわち、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3の設定を変更すると、変更後の設定内容で第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aが上書きされ、変更前の設定内容はプラント構成装置群には残らない。
【0029】
設定データ記憶タイミング設定手段7bは、設定データ履歴記憶手段7aが各プラント構成装置群の設定データを取得・記憶する前記所定の設定データ記憶タイミングを設定するためのものである。この所定の設定データ記憶タイミングとしては、任意のタイミングを指定することができる。まず、簡単な例としては、予め定められた一定時間毎に、すなわち、一定周期で設定データの履歴を記憶するように所定の設定データ記憶タイミングを設定するというものが考えられる。あるいは、定時に、すなわち、1日のうちの予め定めた時刻になると設定データの履歴を記憶するように所定の設定データ記憶タイミングを設定してもよい。
【0030】
また、より好ましくは、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3のいずれかにおいて設定変更が行われる毎に、設定データの履歴を記憶するように所定の設定データ記憶タイミングを設定する。この際、設定データ履歴記憶手段7aによる履歴記憶の対象とする設定データは、当該設定変更が行われたもののみとすることが好ましい。
【0031】
なお、前記所定の設定データ記憶タイミングとして、以上に述べた条件を複数組み合わせて設定するようにしてもよい。また、予め設定したタイミングのみならず、プラントの操業員や保守員が指示操作することにより随時設定データの記憶が行われるようにしてもよい。
【0032】
次に、設定データ比較抽出手段7cは、設定データ履歴記憶手段7aに記憶されている最新の設定データ(すなわち現在の設定データ)と、操業員又は保守員により指定された過去の任意の一時点における設定データとの比較を行い、これらの設定データにおける差異点を抽出するものである。なお、この設定データ比較抽出手段7cにより行う設定データの比較の対象とする時点は、最新(現在)から過去の任意の二時点としてもよい。また、設定データの比較の対象として2以上の時点を同時に指定することができるようにしてもよい。
【0033】
設定データ表示手段7dは、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置からなり、設定データ比較抽出手段7cにより比較抽出された差異のある設定データを表示することで、過去の時点の設定データを再現するものである。この際、差異のある設定データの変更前後の値も併せて表示する。なお、差異のある(すなわち、比較された時点間で変更があった)設定データのみを表示するようにしてもよいが、表示色を変える等、差異のある設定データと一致する設定データとを区別可能な態様で表示するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成された設定データ履歴再現装置による設定データ履歴の記憶及び再現動作を、図2の時系列チャートを参照しながら説明する。
この図2においては、説明の便宜上、設定データは設定データA及び設定データBの2種類とする。そして、ぞれぞれの設定データの変更操作として、変更後の値を直接入力する値設定変更入力(ENT)操作と、増減プッシュボタン(PB)操作がある場合を想定する。
【0035】
まず、設定データ記憶タイミング設定手段7bにより、前記所定の設定データ記憶タイミングが予め設定される。ここでは、定刻(定周期)で記憶する条件と、設定データの変更の度に記憶する条件の双方が設定されているとする。設定データAの初期値はA0、設定データBの初期値はB0である。値A1を直接入力した数値変更ENT操作がなされ設定データAの値がA1に変更されると、設定データ履歴記憶手段7aはこの設定データA1を時刻とともに記憶する。
【0036】
ここで、定刻(又は定周期)記憶条件の設定データ記憶タイミングとなったとすると、設定データ履歴記憶手段7aはその時点における設定データA及び設定データBの値、すなわち、A2(=A1)及びB1(=B0)を時刻とともに記憶する。続けて、設定データAについて値をA4にまで減少させる減PB操作を行ったとする。この減PB操作の途中で、操業員等が設定データ記憶タイミング設定手段7bによって設定データの記憶を指示すると、設定データ履歴記憶手段7aは、当該指示された時点の設定データA及び設定データBの値、すなわち、A3及びB2(=B1=B0)を時刻とともに記憶する。そして、設定データAに対する減PB操作が完了すると、設定データ履歴記憶手段7aはこの変更完了時の設定データA4を時刻とともに記憶する。
【0037】
このようにして続けていき、設定データ履歴記憶手段7aは、数値変更ENT操作による設定データB3、数値変更ENT操作による設定データA5増PB操作による設定データB4、並びに、定刻(定周期)記憶条件が設定データ記憶タイミングとなった時点における設定データA6及び設定データB5、をそれぞれ時刻とともに記憶していく。この設定データA6及び設定データB5を記憶した後、設定データの変更等は行われず現在に至っているとする。すなわち、現在設定値はA6及びB5である。
【0038】
以上のようにして、設定データ記憶タイミング設定手段7bにより予め設定された設定データ記憶タイミングに従って、設定データ履歴記憶手段7aにより設定データの変更履歴が記憶・蓄積される。そして、この状態において、過去の再現指定時刻t1における設定データの再現を指示すると、設定データ比較抽出手段7cは、設定データ履歴記憶手段7aに記憶されている現在設定値A6及びB5と時刻t1における設定値A4及びB3とをそれぞれ比較することにより、設定データA及び設定データBのそれぞれにおいて、時刻t1と現在とにおける設定データの差異を抽出する。
【0039】
なお、時刻t1における設定データの値は、設定データ履歴記憶手段7aに記憶されたデータについて時刻t1から過去に遡っていき最初に見付かった値として特定することができる。
【0040】
そして、設定データ表示手段7dは、設定データ比較抽出手段7cにより比較抽出された差異のある設定データを表示して時刻t1における設定データを再現する。この図2の例では、設定データAについてA4とA6とは異なっており、設定データBについてもB3とB5とは異なっているため、設定データ表示手段7dには、設定データAについてA4とA6の両方が変更前後の値として表示され、設定データBについてもB3とB5の両方が変更前後の値として表示される。
【0041】
なお、ここでは、設定データ履歴記憶手段7a、設定データ記憶タイミング設定手段7b、設定データ比較抽出手段7c及び設定データ表示手段7dを、各プラント構成装置群と通信ネットワーク6を介して接続された設定データ履歴再現装置本体7に備えるようにした。しかし、これらの手段を備える箇所について、必ずしも設定データ履歴再現装置本体7を設置する必要はなく、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3を通信ネットワーク6により通信可能に接続した上で、これらの第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3のうちの1つに、設定データ履歴記憶手段7a、設定データ記憶タイミング設定手段7b、設定データ比較抽出手段7c及び設定データ表示手段7dを内蔵するようにしてもよい。
【0042】
以上のように構成されたプラント設備の設定データ履歴再現装置においては、多岐にわたるプラント全体の操業設定データの中で、変更されたデータに着目して記憶し、また、再現するものである。このため、各装置(群)にそれぞれの設定データが保存されているプラント設備において、特に操業員の設定・操作誤り、保全員の保守誤り等の人的要因による操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合に、容易かつ効率的に各装置(群)の設定データの変更履歴の確認を行うことができる。また、少ない記憶容量で、かつ、人的設定・操作誤りの可能性要素を迅速に提示することが可能となり、操業に支障を来たす不具合発生や製品歩留まり悪化の場合等の早期原因特定、短時間での復旧が期待でき、操業率の向上に寄与することができる。
【0043】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係るもので、設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
前述した実施の形態1は、設定データ履歴記憶手段に記憶蓄積された過去の設定データのうち、任意の過去時点の設定データを設定データ表示手段上に(現在の設定との差異を示しつつ)再現するものであった。ここで説明する実施の形態2は、このような実施の形態1の構成に加えて、設定データ履歴記憶手段に記憶蓄積された設定データを用いて、各プラント構成装置群の設定データを任意の過去時点のものに復元させる設定データ復元指令手段をさらに設けるようにしたものである。
【0044】
設定データ履歴再現装置本体7には、設定データ復元指令手段7eが備えられている。この設定データ復元指令手段7eは、操業員や保守員の操作により設定データ復元指令を設定データ履歴記憶手段7aへと送り、第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3の第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aを、設定データ履歴記憶手段7aに記憶されている任意の過去時点のものに復元させるためのものである。
【0045】
すなわち、操業員や保守員は、復元しようとする過去の一時点を指定して、設定データ復元指令手段7eから設定データ復元指令を設定データ履歴記憶手段7aへと送る。この復元しようとする過去の一時点の指定について、操業員等は、設定データ表示手段7dに再現された過去の設定データの状況を確認しながら行うことにより、復元する時点を容易に決定することができる。
【0046】
そして、設定データ復元指令を受けた設定データ履歴記憶手段7aは、指定された復元時点の設定データを第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3へと送信する。この復元時点の設定データを受信した第1のプラント構成装置群1〜第nのプラント構成装置群3は、それぞれ第1の設定データ1a〜第nの設定データ3aを、受信した設定データに変更して前記指定された復元時点の設定に復元される。
他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
【0047】
なお、この設定データ復元指令手段7eによる設定データの復元は、復元時点から現在までに変更された設定データが複数ある場合には、これら複数の設定データについて一括して復元するか、あるいは、これら複数の設定データのうちの一部についてのみ復元するかを選択できるようにしてもよい。また、設定データを復元する動作について、指定した復元時点の設定データの値そのものに復元するのではなく、例えば、現在の設定値と復元時点の設定値との差分に対して所定の割合を乗じた値の分だけ復元するようにしたり、あるいは、状況を確認しながら現在の設定値から徐々に復元時点の設定値へと近づけていくように復元していくようにしたりすることができるようにしてもよい。
【0048】
以上のように構成されたプラント設備の設定データ履歴再現装置は、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、各装置(群)にそれぞれの設定データが保存されているプラント設備において、特に人的要因による操業上の不具合や異常、生産製品の歩留まり低下等の好ましくない現象が発生した場合に、容易かつ効率的に各装置(群)の設定を過去の時点のものに復元することができる。すなわち、設定データ表示手段にて把握した操業設定データの設定・操作誤りの可能性に対し、対象の構成装置群で個別に設定変更や設定復元のための手順・操作を行うことなく、迅速に良好な操業だったと判断される時点の設定データに復元することができる。
【0049】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3に係るもので、設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
ここで説明する実施の形態3は、前記実施の形態1の設定データ履歴再現装置を、抄紙プラント設備に適用したものである。
【0050】
図4において、計装系制御装置8は生産する紙の原料や組成に関わるプロセス量を主に制御する。機械系補機制御装置9は抄紙機械や機械補機の動きを制御する。電気系制御装置10は次に述べる電気系ドライブ装置群を統括制御する。電気系ドライブ装置11は、機械ロールを駆動し速度やトルクを制御しており、電気系ドライブ装置群を構成している。運転監視装置12は電気系の運転状態を監視する。
【0051】
これらの計装系制御装置8、機械系補機制御装置9、電気系制御装置10、電気系ドライブ装置11及び運転監視装置12には、それぞれ、計装系制御装置設定データ8a、機械系補機制御装置設定データ9a、電気系制御装置設定データ10a、電気系ドライブ装置設定データ11a及び運転監視装置設定データ12aが保持されている。これらの設定データは、それぞれに接続されたエンジニアリングツール5や、装置(群)に直接設けられた設定変更手段を用いることにより変更される。
【0052】
また、計装系制御装置8、機械系補機制御装置9及び電気系制御装置10には、運転操作手段4がそれぞれ接続されている。計装系制御装置8に接続された運転操作手段4によりプロセス系の運転操作や操業設定が行われる。機械系補機制御装置9に接続された運転操作手段4により機械系の動作の操作や、ロールの加圧圧力等の設定が行われる。電気系制御装置10の運転操作手段4は、抄紙機のセクション区分に応じて接続されており、この運転操作手段4により電気系の主幹制御に関わる設定が行われる。
【0053】
設定データ履歴再現装置本体7は、計装系制御装置8、機械系補機制御装置9及び電気系制御装置10と第1の通信ネットワーク6aを介して通信可能に接続されており、さらに、各電気系ドライブ装置11及び運転監視装置12は第2の通信ネットワーク6bを介して電気系制御装置10と通信可能に接続されている。このため、設定データ履歴再現装置本体7は、第1の通信ネットワーク6a及び第2の通信ネットワーク6bを介して各電気系ドライブ装置11及び運転監視装置12と通信可能である。
【0054】
ここで、抄紙設備の操業には、生産される紙の製品銘柄や気温や湿度等の操業条件が密接に関係している。従って、設定データ履歴再現装置本体7の設定データ履歴記憶手段7aは、設定データを記憶する際に、その時点において当該抄紙プラント設備で生産されていた紙の製品銘柄を当該設定データに関連付けて記憶する。また、気温や湿度等の操業条件は主に季節に大きく左右される季節変動要因であるため、設定データ履歴記憶手段7aが設定データとともに記憶する時刻情報は年月日(少なくとも月日)も含むものとすることが望ましい。
【0055】
なお、計装系制御装置8では計装系制御装置プロセスデータ8bが、運転監視装置12では運転監視装置プロセスデータ12bがそれぞれ管理されている。
他の構成は実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明は省略する。
【0056】
このように、抄紙プラント設備は計装系、機械系、電気系の構成装置群から構成され、比較的長い期間において一定の操業条件下での連続運転が行われるため、例えば設定値や指令値がダイナミックに変化するプラント設備と比べ、操業状態における良好/不良の判断が製品状態やプロセスデータ監視装置のデータから比較的容易に判断できる分野である。従って、以上のような設定データ履歴再現装置を用いて、操業設定データの変更履歴から変更点だけを迅速に抽出・表示することにより、操業状態の不良要因検討を効率的に行うことができると期待される。
【0057】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4に係るもので、設定データ履歴再現装置を備えたプラント設備の全体構成を示すブロック図である。
ここで説明する実施の形態4は、前記実施の形態2の設定データ履歴再現装置を、抄紙プラント設備に適用したものである。
【0058】
すなわち、図5に示すこの実施の形態4の構成は、設定データ履歴再現装置本体7が設定データ復元指令手段7eを備えている点を除き、実施の形態3(図4)の構成と同一である。そして、設定データ復元指令手段7eは実施の形態2で説明したものと同一である。
【0059】
以上のように構成されたプラント設備の設定データ履歴再現装置は、抄紙プラント設備において、実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 第1のプラント構成装置群
1a 第1の設定データ
1b 第1のプロセスデータ
2 第2のプラント構成装置群
2a 第2の設定データ
3 第nのプラント構成装置群
3a 第nの設定データ
3b 第nのプロセスデータ
4 運転操作手段
5 エンジニアリングツール
6 通信ネットワーク
6a 第1の通信ネットワーク
6b 第2の通信ネットワーク
7 設定データ履歴再現装置本体
7a 設定データ履歴記憶手段
7b 設定データ記憶タイミング設定手段
7c 設定データ比較抽出手段
7d 設定データ表示手段
7e 設定データ復元指令手段
8 計装系制御装置
8a 計装系制御装置設定データ
8b 計装系制御装置プロセスデータ
9 機械系補機制御装置
9a 機械系補機制御装置設定データ
10 電気系制御装置
10a 電気系制御装置設定データ
11 電気系ドライブ装置
11a 電気系ドライブ装置設定データ
12 運転監視装置
12a 運転監視装置設定データ
12b 運転監視装置プロセスデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが自身の設定データを保持する複数のプラント構成装置群から構成されるプラント設備の設定データ履歴再現装置であって、
前記複数のプラント構成装置群と通信手段により通信可能に接続され、所定の設定データ記憶タイミングで、前記複数のプラント構成装置群のそれぞれに保持された前記設定データを、前記通信手段を介して取得し設定データ変更履歴として記憶する設定データ履歴記憶手段と、
前記設定データ履歴記憶手段が記憶する前記設定データ変更履歴のうち、現在から過去の任意の少なくとも2つの時点の前記設定データを比較して、これらの時点の前記設定データの差異を抽出する設定データ比較抽出手段と、
前記設定データ比較抽出手段により抽出された差異のある前記設定データを表示する設定データ表示手段と、を備えたことを特徴とするプラント設備の設定データ履歴再現装置。
【請求項2】
前記所定の設定データ記憶タイミングを設定するための設定データ記憶タイミング設定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプラント設備の設定データ履歴再現装置。
【請求項3】
前記設定データ比較抽出手段が前記設定データを比較する前記少なくとも2つの時点のうちの一は、現在であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のプラント設備の設定データ履歴再現装置。
【請求項4】
前記所定の設定データ記憶タイミングは、前記複数のプラント構成装置群のそれぞれが保持する前記設定データのいずれかが変更される毎であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のプラント設備の設定データ履歴再現装置。
【請求項5】
前記複数のプラント構成装置群の前記設定データを、前記設定データ履歴記憶手段が記憶する前記設定データ変更履歴のうち、過去の任意の時点のものに復元させる設定データ復元指令手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラント設備の設定データ履歴再現装置。
【請求項6】
前記プラント設備は抄紙プラント設備であり、
前記設定データ履歴記憶手段は、前記設定データとともに当該抄紙プラント設備が生産している紙の製品銘柄を記憶することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のプラント設備の設定データ履歴再現装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92882(P2013−92882A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234134(P2011−234134)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】