説明

プリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置

【課題】衝突直前の制動減速度と衝突時の衝突減速度を併せて再現する融合試験により、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響についての統合的な融合評価を容易に行うこと。
【解決手段】衝突バリア1に向かうプリクラッシュ試験台車4に、模擬シート5と試験ダミー7と試験データ計測機器8を搭載したプリクラッシュ試験方法であって、プリクラッシュ試験台車4の台車走行速度を、停止状態から台車減速を開始する目標台車走行速度域になるまで加速させる台車走行手順(図9)と、フリーラン状態のプリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御する台車減速手順(図10)と、プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御する台車衝突手順(図11)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の予防安全技術(被害軽減ブレーキ等)が、衝突時の乗員被害に与える影響を評価するプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突時の乗員被害を軽減する自動車の衝突安全装置としては、衝突時に乗員の周囲に折り畳み内蔵したバックを一瞬にして膨張させるエアバック、衝突時に乗員が装着しているシートベルトのたるみを無くすシートベルト・プリテンショナー、衝突時にベルトテンション以上の荷重が乗員に入力しないようにするフォースリミッタ、等が知られている。
【0003】
これらの衝突安全装置は、衝突が発生することを前提とし、衝突時の高い衝撃力等から乗員をできる限り守ろうとする衝突安全技術である。すなわち、衝突直前の段階については、衝突直前であるとの乗員判断に基づいて行う急ブレーキ操作や急ハンドル操作等による衝突回避行動に委ねられている。
【0004】
しかし、衝突直前に行う乗員の衝突回避行動は、素早い衝突認識と判断に基づく咄嗟の行動であるため、個人差や年齢差等によりバラツキがある。そこで、高い自動車安全性が求められる現在、衝突直前の段階における自動車システムでの自動的な対応措置により、衝突時の乗員被害を予め軽減するようにした予防安全技術の導入が進んでいる。
【0005】
この予防安全技術としては、例えば、自車と障害物の位置関係情報および自車の制動状況等から衝突を予測した段階において作動する被害軽減ブレーキ、衝突直前にシートベルト張力を発生させるMSB(Motorized-Seat-Belt)機能を持つプリクラッシュ・シートベルト、等が挙げられる。
【0006】
従来、これらの予防安全技術に関する装置開発については、製造メーカ単位で独自の性能評価を実施しながら開発が進められている実情があり、衝突時における乗員被害への具体的な技術効果の評価を出すのは困難であった。
【0007】
また、衝突安全技術に対して衝突時の乗員被害に与える影響を評価する衝突試験方法や衝突試験装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、予防安全技術の主目的である乗員の被害低減効果に対する寄与等について、正確に評価できるプリクラッシュ試験方法やプリクラッシュ試験装置は確立されていない。また、衝突試験用ダミーを用いた性能試験については、加速式スレッド等の試験設備(例えば、特許文献1,2参照)を用いた代用試験により性能評価を行う手法が、一般的に行われているに過ぎないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−329538号公報
【特許文献2】特開2006−258477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の衝突試験方法や衝突試験装置、あるいは、プリクラッシュ試験の代用試験にあっては、衝突直前における制動減速度、および、衝突時における衝突減速度を併せて再現することができなかった。このため、衝突安全技術の評価と予防安全技術の評価をそれぞれ個別に行うことはできても、例えば、「予防安全」と「衝突安全」という2種類の自動車安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響関係、あるいは、2種類の自動車安全技術に乗員による回避行動を加えたときの乗員被害低減効果に及ぼす影響関係、等を統合的に評価することができない、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、衝突直前の制動減速度と衝突時の衝突減速度を併せて再現する融合試験により、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響についての統合的な融合評価を容易に行うことができるプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のプリクラッシュ試験方法では、衝突バリアに向かうガイドレールに沿って台車走行路面を移動可能なプリクラッシュ試験台車を用い、前記プリクラッシュ試験台車に、模擬シートと、該模擬シートに着座した試験ダミーと、試験データ計測機器と、を搭載したプリクラッシュ試験方法であって、
前記プリクラッシュ試験台車を、前記ガイドレールに沿って牽引ワイヤにより牽引する牽引ワイヤシステムにより、前記プリクラッシュ試験台車の台車走行速度を、停止状態から台車減速を開始する目標台車走行速度域になるまで加速させる台車走行手順と、
前記台車走行手順に続き、予め指定された位置で前記牽引ワイヤから切り離すことにより前記プリクラッシュ試験台車をフリーラン状態とし、フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車に制動力を加える制動減速システムにより、前記プリクラッシュ試験台車が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御する台車減速手順と、
前記台車減速手順に続き、前記衝突バリアと前記プリクラッシュ試験台車の衝突面に設けられた衝突減速システムにより、前記プリクラッシュ試験台車が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御する台車衝突手順と、
を備えた。
【0012】
本発明のプリクラッシュ試験装置では、衝突バリアに向かうガイドレールに沿って台車走行路面を移動可能なプリクラッシュ試験台車を用い、前記プリクラッシュ試験台車に、模擬シートと、該模擬シートに着座した試験ダミーと、試験データ計測機器と、を搭載したプリクラッシュ試験装置であって、
前記ガイドレールに沿って前記プリクラッシュ試験台車を牽引ワイヤにより牽引することにより前記プリクラッシュ試験台車を走行状態とし、前記牽引ワイヤから前記プリクラッシュ試験台車を切り離すことによりフリーラン状態とする牽引ワイヤシステムと、
前記フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車に制動力を加えることにより、前記プリクラッシュ試験台車が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を制御可能な制動減速システムと、
前記衝突バリアの衝突面と前記プリクラッシュ試験台車の衝突面に設けられ、前記プリクラッシュ試験台車が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を制御可能な衝突減速システムと、
を備えた。
【発明の効果】
【0013】
よって、プリクラッシュ試験を行うに際し、台車走行手順において、プリクラッシュ試験台車の台車走行速度が、目標台車走行速度域になるまで加速される。続いて、台車減速手順において、フリーラン状態のプリクラッシュ試験台車の減速区間における制動減速度特性が、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御される。続いて、台車衝突手順において、プリクラッシュ試験台車の衝突区間における衝突減速度特性が、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御され、これら一連の手順を経過して試験を終了する。
つまり、プリクラッシュ試験を行うと、衝突直前における制動減速度(台車減速手順)と衝突時における衝突減速度(台車衝突手順)が、1回の試験中に併せて再現される。言い換えると、予防安全と衝突安全という2種類の自動車安全技術を搭載した自動車による衝突時、減速から衝突へ至る状況を精度良く再現した融合試験になる。このため、例えば、1回のプリクラッシュ試験を行うだけで、予防安全技術と衝突安全技術の相互関連性をあらわす試験データを取得することが可能である。そして、取得した試験データに基づき、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響関係を、統合的に評価することができる。
このように、本発明のプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置によれば、衝突直前の制動減速度と衝突時の衝突減速度を併せて再現する融合試験により、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響についての統合的な融合評価を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のプリクラッシュ試験装置を示す全体概略平面図である。
【図2】実施例1のプリクラッシュ試験装置を示す全体概略側面図である。
【図3】実施例1のプリクラッシュ試験装置を示す全体概略背面図である。
【図4】実施例1のプリクラッシュ試験装置における台車挙動安定システムを装備したプリクラッシュ試験台車を示す側面図である。
【図5】実施例1の台車挙動安定システムの走行補助ガイドローラーを示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は図5(a)のE−E断面図である。
【図6】実施例1のプリクラッシュ試験装置における制動減速システムを示すシステム図である。
【図7】実施例1のプリクラッシュ試験装置における衝突減速システムを示すシステム図である。
【図8】実施例1のプリクラッシュ試験装置における試験データ計測機器を搭載したプリクラッシュ試験台車を示す平面図である。
【図9】実施例1のプリクラッシュ試験方法の台車走行手順を示す説明図である。
【図10】実施例1のプリクラッシュ試験方法の台車減速手順を示す説明図である。
【図11】実施例1のプリクラッシュ試験方法の台車衝突手順を示す説明図である。
【図12】実施例1のプリクラッシュ試験方法の特徴を示す概要図である。
【図13】実施例1のプリクラッシュ試験方法による試験一例を示す制動減速特性と衝突減速特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、構成を説明する。
図1〜図3は、実施例1のプリクラッシュ試験装置を示す全体概略図である。以下、図1〜図3に基づき全体構成を説明する。
【0017】
実施例1のプリクラッシュ試験装置は、図1〜3に示すように、衝突バリア1に向かうメインレール2(ガイドレール)に沿って台車走行路面3を移動可能なプリクラッシュ試験台車4を用いる。前記メインレール2は、台車走行路面3に敷設され、プリクラッシュ試験台車4の車幅方向中心点の集合である台車中心軸Lの真下位置に沿って配置され、プリクラッシュ試験台車4の移動方向を案内するガイドレール機能を有する。
【0018】
前記プリクラッシュ試験台車4は、台車フレーム41と、台車フレーム41の上面に固定された台車ステージ42を基本構造とし、繰り返しのプリクラッシュ試験に対応できるように耐衝撃構造としている。この台車ステージ42上には、台車前後方向に2脚の模擬シート5,5と、2脚の模擬シート5,5にシートベルト6,6を装着して着座した2体の試験ダミー7,7と、2体の試験ダミー7,7による試験データを計測する試験データ計測機器8と、を搭載している。
【0019】
前記台車ステージ42には、フリーレイアウトが可能なように等間隔穴(3インチピッチホール)が開けられている。そして、前記台車ステージ42上には、前記模擬シート5,5の横位置にシートベルト6,6をベルト張力設定可能に取り付けるシートベルト取り付け装置9,9が立設され、前記模擬シート5,5の前位置に脚部荷重の計測を行うトーボード模擬装置10,10が固定されている。
【0020】
実施例1のプリクラッシュ試験装置は、図1〜3に示すように、実施例1のプリクラッシュ試験方法を実現するための主要な構成要素として、台車挙動安定システムAと、牽引ワイヤシステムBと、制動減速システムCと、衝突減速システムDと、を備えている。
【0021】
前記台車挙動安定システムAは、精度良くプリクラッシュ試験を再現すると共に、条件を変えての繰り返しプリクラッシュ試験を安定して再現するため、プリクラッシュ試験台車4の直進安定性と台車水平度保持機能を確保するシステムである。
【0022】
前記牽引ワイヤシステムBは、メインレール2に沿ってプリクラッシュ試験台車4を牽引ワイヤ11により牽引することによりプリクラッシュ試験台車4を走行状態とし、牽引ワイヤ11からプリクラッシュ試験台車4を切り離すことによりフリーラン状態とするシステムである。
【0023】
前記制動減速システムCは、フリーラン状態のプリクラッシュ試験台車4に対し、主にレールブレーキ12を用いて制動力を加えることにより、プリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を制御可能なシステムである。
【0024】
前記衝突減速システムDは、衝突バリア1の衝突面に設けられた複数本の衝撃緩衝用パイプ13と、プリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられた複数のターニングデバイス14と、を有し、プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を制御可能なシステムである。なお、図1〜3において、15はエアレスタイヤ、16はカメラ用アウトリガー、17は牽引用アウトリガーである。以下、図1〜図3に図4〜図8を加え、各システムA,B,C,Dの構成を、詳しく説明する。
【0025】
前記台車挙動安定システムAは、図4に示すように、プリクラッシュ試験台車4の台車フレーム41の4隅位置にリジッド支持したタイヤ軸18と、タイヤ軸18に回転可能に支持した4輪のエアレスタイヤ15と、台車中心軸Lの前後位置の台車フレーム41に配置した走行補助ガイドローラー19と、を備えたピッチング抑制方式のシステムである。
【0026】
前記4輪のエアレスタイヤ15は、弾性支持によるサスペンションを介在させることなく、台車フレーム41にリジッド支持した中実の耐荷重タイヤである。
【0027】
前記走行補助ガイドローラー19は、プリクラッシュ試験時、メインレール2に対して押し付け嵌合状態を保ったままでレール面を転動可能に設定したガイドローラーである。
【0028】
前記走行補助ガイドローラー19の構成を、図5(a),(b)に基づき説明する。走行補助ガイドローラー19は、プリクラッシュ試験台車4の台車フレーム41に固定されたローラーブラケット20と、ローラーブラケット20に対しピン21を介して支持されたローラー支持プレート22と、を有し、ローラー支持プレート22の両側に段付き形状の走行補助ガイドローラー19,19が設けられる。そして、プリクラッシュ試験台車4の台車フレーム41に固定されたシリンダーブラケット23と、シリンダーブラケット23に回動可能に支持され、ロッド端部がローラー支持プレート22に連結されたローラーシリンダ24と、を有する。なお、走行補助ガイドローラー19は、ローラーシリンダ24のシリンダ動作により昇降可能に設けられている。
【0029】
前記牽引ワイヤシステムBは、図1に示すように、プリクラッシュ試験台車4に固定され、台車側面からサブレール25に向かって突出する牽引用アウトリガー17と、サブレール25に内挿配置され、牽引モータ26(動力システム)により移動する牽引ワイヤ11と、サブレール25に内挿配置され、牽引用アウトリガー17と牽引ワイヤ11を連結する牽引ドリー27と、を備えたアウトリガー偏心牽引方式のシステムである。
【0030】
前記サブレール25は、図1に示すように、メインレール2に沿って平行な偏心位置の台車走行路面3に敷設されている。また、牽引ワイヤシステムBによる走行状態からフリーラン状態への切り替えは、サブレール25の指定位置に設定したストッパ28に対し牽引ドリー27が接触することにより牽引ドリー27が切り離され、その結果、牽引用アウトリガー17と牽引ワイヤ11の連結を切り離すことで行う。
【0031】
前記制動減速システムCは、図6に示すように、台車中心軸Lの前後位置に配置され(図1,2参照)、メインレール2を挟み込む第1ブレーキキャリパ30,30により油圧制動力を得るレールブレーキ12と、4輪のエアレスタイヤ15の各位置に設けられ、各タイヤ軸18に固定したブレーキディスク32を挟み込む第2ブレーキキャリパ33により油圧制動力を得るタイヤブレーキ34と、を備えたデュアルブレーキ方式のシステムである。この制動減速システムCによる制動減速度特性の制御は、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34に対し2系統の独立したブレーキ制御油圧により行う。
【0032】
前記レールブレーキ12は、図6に示すように、第1窒素ガスボンベ35と、窒素ガス流量を制御する第1電磁弁36と、ガス圧を倍力する第1油圧ブースタ37と、倍力ガス圧をブレーキ油圧に変換する第1マスタシリンダー38と、第1ブレーキ液リザーバ39と、ブレーキ油圧を第1ブレーキキャリパ30,30内のホイールシリンダーに導く第1ブレーキ油圧管40と、を有する。なお、レールブレーキ12は、走行補助ガイドローラー19と同様に、シリンダ動作により昇降可能に設けられている。
【0033】
前記タイヤブレーキ34は、図6に示すように、第2窒素ガスボンベ41と、窒素ガス流量を制御する第2電磁弁42と、ガス圧を倍力する第2油圧ブースタ43と、倍力ガス圧をブレーキ油圧に変換する第2マスタシリンダー44と、第2ブレーキ液リザーバ45と、ブレーキ油圧を第2ブレーキキャリパ33内のホイールシリンダーに導く第2ブレーキ油圧管46と、を有する。
【0034】
前記第1電磁弁36と前記第2電磁弁42は、目標減速度に応じてレールブレーキ12とタイヤブレーキ34の制動開始時間や作動時間や油圧レベル等を設定する減速度設定器47からの設定信号を入力するブレーキコントローラ48からの独立した制御指令により動作する。
【0035】
前記衝突減速システムDは、図7に示すように、衝突バリア1の衝突壁面に着脱可能に設けられ、衝突時に180°の折り返し変形が進行する複数本の衝撃緩衝用パイプ13と、プリクラッシュ試験台車4の最前面位置に突出して設けられ、衝突時に衝撃緩衝用パイプ13の開口端と符合して180°の折り返し変形の進行を促す円錐形状による複数のターニングデバイス14と、を備えた衝撃緩衝方式のシステムである。
【0036】
前記衝撃緩衝用パイプ13は、衝突バリア1に固定されたパイプホルダ50に着脱可能に設けられた金属管であり、実施例1では、4本のアルミ管を着脱可能としている。そして、この衝突減速システムDによる衝突減速度特性の制御は、複数本の衝撃緩衝用パイプ13の本数,材質,肉厚および硬度のうち、少なくとも1つの要素を選定するシステム設定により行うようにしている。
【0037】
前記プリクラッシュ試験台車4には、図8に示すように、ダミーセンサ、各種センサ計測用データロガー、シートベルト9,9の作動設定の制御が可能な2系統制御手段、等が試験データ計測機器8として搭載されている。そして、プリクラッシュ試験台車4には、この試験データ計測機器8以外に、図5(b)に示すように、走行補助ガイドローラー19の位置に台車走行速度を検出するフォトセンサ構造による台車走行速度センサ51が搭載されている。また、図8に示すように、台車ステージ42の後部位置に、低減速G領域を検出する制動減速度センサ52と、高減速G領域を検出する衝突減速度センサ53が、搭載されている。
【0038】
前記プリクラッシュ試験台車4の後部位置には、図8に示すように、2つの機器搭載ボックス54,55が設けられ、この機器搭載ボックス54,55に、制動減速システムCを構成するレールブレーキ12とタイヤブレーキ34に対する2系統の独立したブレーキ油圧制御機器(ガスボンベやブースタや電子制御系)が搭載されている。さらに、カメラ用アウトリガー16には、図8に示すように、減速時および衝突時の試験ダミー7,7の挙動撮影が可能な高速度ビデオカメラ/照明56,57が2セット搭載されている。
【0039】
次に、作用を説明する。
まず、「プリクラッシュ試験方法」の説明を行い、続いて、実施例1のプリクラッシュ試験技術における作用を、「プリクラッシュ試験作用」、「ピッチング抑制方式による台車挙動安定化作用」、「アウトリガー偏心牽引方式による台車走行制御作用」、「デュアルブレーキ方式による制動減速度制御作用」、「衝撃緩衝方式による衝突減速度制御作用」に分けて説明する。
【0040】
[プリクラッシュ試験方法]
実施例1のプリクラッシュ試験方法は、衝突バリア1に向かうメインレール2に沿って台車走行路面3を移動可能なプリクラッシュ試験台車4を用い、プリクラッシュ試験台車4に、2脚の模擬シート5,5と、模擬シート5,5にシートベルト6,6を装着した状態で着座した試験ダミー7,7と、試験データ計測機器8と、を搭載して行う。プリクラッシュ試験方法を構成する手順は、「台車走行手順」と「台車減速手順」と「台車衝突手順」に分けられ、これらは一連の流れにより行われる。以下、各手順を説明する。
【0041】
前記台車走行手順は、プリクラッシュ試験台車4を、メインレール2に沿って牽引ワイヤ11により牽引する牽引ワイヤシステムBにより、プリクラッシュ試験台車4の台車走行速度を、停止状態から台車減速を開始する目標台車走行速度域になるまで加速させる(図9)。
この台車走行手順での目標台車走行速度域としては、例えば、助走区間での台車加速によりプリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始する時点までに到達する台車走行速度が、例えば、数km/h〜67km/hとなるように設定される。
【0042】
前記台車減速手順は、台車走行手順に続き、予め指定された位置で牽引ワイヤ11から切り離すことによりプリクラッシュ試験台車4をフリーラン状態とし、フリーラン状態のプリクラッシュ試験台車4に制動力を加える制動減速システムCにより、プリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御する(図10)。
この台車減速手順での目標制動減速度特性(プリクラッシュG)としては、例えば、制動減速を開始するときの減速開始速度(例えば、67km/h)、プリクラッシュ試験台車4の制動減速開始からの立ち上がり時間(例えば、520msec)、制動減速の持続時間(例えば、400msec)、衝突直前の最大制動減速度(例えば、-0.8G)、という条件により規定した特性となるように設定される。
【0043】
前記台車衝突手順は、台車減速手順に続き、衝突バリア1とプリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられた衝突減速システムDにより、プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御する(図11)。
この台車衝突手順での目標衝突減速度特性(衝突G)は、衝突減速を開始するときの衝突開始速度(例えば、48km/h)、衝突区間の持続時間(90msec)、衝突区間での平均衝突減速度(-28.0G)、により規定される衝突波形が、例えば、コリドーゾーン(一般的な車両衝突の評価基準)に収まるように規定される。
【0044】
[プリクラッシュ試験作用]
上記プリクラッシュ試験方法によって、プリクラッシュ試験を行うに際し、図12に示すように、台車走行手順(1.走行)において、牽引ワイヤ11によるワイヤ牽引作用により、プリクラッシュ試験台車4の台車走行速度が、目標台車走行速度域になるまで加速される。続いて、図12に示すように、台車減速手順(2.減速)において、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34を用いて行われる最大減速G,立ち上がり時間,持続時間の制御作用により、切り離しフリーラン状態のプリクラッシュ試験台車4の減速区間における制動減速度特性(プリクラッシュG)が、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御される。続いて、図12に示すように、台車衝突手順(3.衝突)において、複数本の衝撃緩衝用パイプ13と複数のターニングデバイス14を用いた衝突波形の制御作用により、プリクラッシュ試験台車4の衝突区間における衝突減速度特性(衝突G)が、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御され、これら一連の手順を経過して試験を終了する。
【0045】
つまり、プリクラッシュ試験を行うと、衝突直前における制動減速度(台車減速手順)と衝突時における衝突減速度(台車衝突手順)が、1回の試験中に併せて再現される。言い換えると、予防安全と衝突安全という2種類の自動車安全技術を搭載した自動車による衝突時、減速から衝突へ至る状況を精度良く再現した融合試験になる。
【0046】
ここで、具体例として、
・走行設定 67km/h → 衝突速度 48km/h
・プリクラッシュ加速度:0.8G
・プリクラッシュ区間(=減速区間):920msec
・衝突減速度:AVE.-28.0G、持続時間(=衝突区間):90msec
という条件により行った台車加速度特性の実験結果を図13に示す。
【0047】
この実験結果によれば、プリクラッシュ試験台車4の減速度が、立ち上がり時間520msecにて、目標とするプリクラッシュ加速度0.8G程度に達し、その後、400msecの持続時間は目標とするプリクラッシュ加速度0.8Gを維持した。つまり、減速区間であるプリクラッシュ区間920msecを、プリクラッシュ加速度0.8Gへの立ち上がり時間520msecと、プリクラッシュ加速度0.8Gの持続時間400msecに費やす手法により、衝突直前に狙いとするプリクラッシュ加速度0.8Gを達成した。
【0048】
そして、衝突後は、急な勾配にて減速度が衝突減速度-28.0Gの領域まで上昇し、しばらくの間は衝突減速度-28.0Gの領域を維持し、その後、一気に0Gまで低下する衝突波形を示した。衝突区間である衝突持続時間90msecの間の衝突減速度平均値として、狙いとする約-28.0Gが得られた。また、衝突波形も図13の下限波形から上限波形までの間のコリドーゾーン(許容範囲)に収めることができた。
【0049】
このように、衝突直前におけるプリクラッシュ加速度(例えば、0.8G)と衝突時における衝突減速度平均値(例えば、-28.0G)が、1回のプリクラッシュ試験中に併せて精度良く再現される。このため、例えば、1回のプリクラッシュ試験を行うだけで、予防安全技術と衝突安全技術の相互関連性をあらわす試験データを取得することが可能である。そして、取得した試験データに基づき、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響関係を、統合的に評価することができる。
【0050】
また、実施例1のプリクラッシュ試験方法に用いるプリクラッシュ試験台車4には、2脚の模擬シート5,5と、2脚の模擬シート5,5にシートベルト6,6を装着して着座した2体の試験ダミー7,7と、2体の試験ダミー7,7による試験データを計測する試験データ計測機器8と、を台車ステージ42上に搭載した。
このため、同一条件下での被害軽減ブレーキとプリクラッシュ・シートベルトの効果の比較およびダミー特性の差異の把握が容易となる。さらに、1回のプリクラッシュ試験にて2サンプルのデータ抽出となるため、試験回数の半減、および、ダミー設定条件の違い等による試験実施パターンのパターンマトリクスの作成が可能となる。
【0051】
さらに、実施例1のプリクラッシュ試験方法に用いるプリクラッシュ試験台車4には、台車走行速度を検出する台車走行速度センサ51と、制動減速度(低G)を検出する制動減速度センサ52と、衝突減速度(高G)を検出する衝突減速度センサ53を搭載した。
このため、プリクラッシュ試験中の牽引走行時および制動時の台車速度を検出することができるし、プリクラッシュ試験中の制動減速度と衝突減速度を精度良く検出することができる。この検出結果を試験データとして評価に反映させることで、評価精度の向上を図ることができる。また、検出信号を試験中の走行速度制御や制動減速度制御、等に反映させてフィードバック制御系を構築することで、狙いとする走行速度や制動減速度への一致性を高めることができる。
【0052】
[ピッチング抑制方式による台車挙動安定化作用]
実施例1のように、プリクラッシュ試験を一連の流れによる「台車走行手順」と「台車減速手順」と「台車衝突手順」により行う場合、評価精度の高い測定データに基づき統一したダミー挙動解析、等を行う上で、繰り返し復元性の高い試験を行う必要がある。この繰り返し復元性の高い試験を行うためには、プリクラッシュ試験台車4の直進安定性と、プリクラッシュ試験台車4の走行・減速・衝突時における水平度保持機能が要求される。
【0053】
例えば、プリクラッシュ試験台車の4隅に配置される4輪のタイヤを、台車のサスペンションを介して支持されるエア封入タイヤとすると、プリクラッシュ試験において、加速走行のときには、重心が台車後方に移動して台車後方側が沈み込み、台車前方側が浮き上がる。一方、減速のときには、重心が台車前方に移動して台車前方側が沈み込み、台車後方側が浮き上がる。このように、台車に対しタイヤを弾性支持すると、プリクラッシュ試験中にプリクラッシュ試験台車が前後に揺れるピッチング現象が生じる。
【0054】
これに対し、実施例1では、プリクラッシュ試験台車4の4隅に配置されるタイヤとして、リジッド支持による4輪のエアレスタイヤ15を採用した。このため、加速走行時や減速時において、エアレスタイヤ15と台車走行路面3とが接する4位置でのプリクラッシュ試験台車4の上下動が抑制される。この結果、制動/衝突時において、プリクラッシュ試験台車4の台車ピッチング現象を防止できる。
【0055】
例えば、台車牽引方式として、メインレールを利用した中央牽引方式を採用し、サブレールを案内ガイドとしてプリクラッシュ試験台車の直進走行性を確保するようにした場合を想定する。この場合、台車の案内ガイド位置が、台車中心軸から偏心した位置となるため、プリクラッシュ試験台車の案内ガイド位置を中心とする台車揺れが許容されることにより、直進安定性が確保されないばかりでなく、プリクラッシュ試験中に台車ピッチング動作が生じる。
【0056】
これに対し、実施例1では、プリクラッシュ試験中、メインレール2に対して押し付け嵌合状態を保ったままでレール面を転動可能に設定した段つき構造による走行補助ガイドローラー19を、台車の前後位置に設定する構成を採用した。この走行補助ガイドローラー19を採用したことにより、下記に述べるように、直進安定性を確保できるし、制動/衝突ピッチング現象を防止できる。
【0057】
走行補助ガイドローラー19,19は、図5(b)に示すように、台車フレーム41を車幅方向に振れさせないようにメインレール2に嵌合し、しかも、図4に示すように、プリクラッシュ試験台車4の前後位置に一対設定されている。このため、プリクラッシュ試験台車4の前部と後部のそれぞれの車幅方向振れが抑えられることで、台車の加減速走行にかかわらず、直進安定性を確保できる。
【0058】
走行補助ガイドローラー19,19は、図5(a)に示すように、ローラーシリンダ24のロッドを伸長させることで、メインレール2のレール面に押し付ける力が与えられている。このため、台車の加減速走行により走行補助ガイドローラー19,19に外乱が入力されても、外乱入力が走行補助ガイドローラー19,19の押し付け力を超えない限り、走行補助ガイドローラー19,19はメインレール2のレール面への押し付け状態が保たれる。この結果、プリクラッシュ試験台車4のピッチング動作が抑えられ、制動/衝突ピッチング現象を防止できる。
【0059】
このように、実施例1では、台車挙動安定化対策として、リジッド支持による4輪のエアレスタイヤ15と、前後一対の走行補助ガイドローラー19と、によるピッチング抑制方式を採用したことで、プリクラッシュ試験台車4に対する要求性能である直進安定性と水平度保持機能を併せて達成することができる。
【0060】
[アウトリガー偏心牽引方式による台車走行制御作用]
プリクラッシュ試験での台車走行制御の際は、サブレール25に内挿配置され牽引ワイヤ11を用い、メインレール2に沿ってプリクラッシュ試験台車4を牽引することにより走行状態とする。そして、サブレール25の指定位置に設定したストッパ28に牽引ドリー27を接触停止させることにより、牽引用アウトリガー17と牽引ワイヤ11の連結を切り離すことによりフリーラン状態とする。
【0061】
例えば、台車牽引方式として、メインレールを利用した中央牽引方式を採用した場合を想定する。この場合、プリクラッシュ試験台車の下面に存在するメインレールのスペースが牽引ワイヤ等により占有され、メインレールのスペースを、台車牽引以外の用途に活用することができない。
【0062】
これに対し、実施例1では、台車牽引方式として、牽引用アウトリガー17と牽引ワイヤ11と牽引ドリー27を備えたアウトリガー偏心牽引方式を採用した。このため、プリクラッシュ試験台車4の下面に存在するメインレール2のスペースが牽引ワイヤ11等により占有されることなく、プリクラッシュ試験台車4とメインレール2の間に形成されるスペースを、台車牽引以外の用途に有効活用することができる。具体的なスペース有効活用例としては、実施例1で示すように、プリクラッシュ試験台車4の下面であって台車中心軸L上に、台車挙動安定化を図るための走行補助ガイドローラー19,19を設定し、制動減速度制御のためにレールブレーキ12,12を設定している。
【0063】
また、牽引ワイヤ11と牽引ドリー27がサブレール25に内挿配置されているため、牽引用アウトリガー17がプリクラッシュ試験台車4の側面から突出するだけで、他の構成要素がサブレール25から露出せず、アウトリガー偏心牽引方式としながら良好な試験環境を確保することができる。
【0064】
[デュアルブレーキ方式による制動減速度制御作用]
プリクラッシュ試験での制動減速度制御の際は、フリーラン状態のプリクラッシュ試験台車4に対し、主にレールブレーキ12を用いて制動力を加えることにより、プリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を制御する。
【0065】
このとき、実施例1では、制動減速システムCとして、プリクラッシュ試験台車4とメインレール2との間で制動力を得るレールブレーキ12と、プリクラッシュ試験台車4と各タイヤ軸18との間で制動力を得るタイヤブレーキ34と、を備えたデュアルブレーキ方式のシステムを採用し、制動減速度特性の制御は、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34に対し2系統の独立したブレーキ制御油圧により行うようにしている。
【0066】
例えば、プリクラッシュ試験台車は、繰り返しの試験に対応できるように耐衝撃構造として設計されており、付属の模擬シート等を含めると、総重量は、2ton〜3tonまでになるというように、市販されている一般の乗用車よりも重くなる。したがって、乗用車でのニュートラル走行に相当するフリーラン状態としても、プリクラッシュ試験台車の持つ高い慣性力を上回るだけの制動力を、プリクラッシュ試験台車に与えないと、減速させることができない。
【0067】
また、乗用車では、4輪にブレーキ油圧を付与するタイヤブレーキにより制動力を得て減速している。しかし、仮にプリクラッシュ試験台車にタイヤブレーキのみを設定し、制動減速度を得ようとすると、4輪のタイヤに付与するブレーキ油圧を相当に高い油圧にする必要がある。この場合、制動減速度を得る台車減速手順において、4輪のタイヤが制動ロック状態に陥り、台車走行路面との摩擦により、4輪のタイヤに偏摩耗を生じ、それ以降のプリクラッシュ試験に対応できなくなる。
【0068】
これに対し、実施例1では、主ブレーキをレールブレーキ12とし、従ブレーキをタイヤブレーキ34とし、2系統の独立したブレーキ油圧の制御を行うデュアルブレーキ方式のブレーキシステムを採用した。このため、制動減速度を得る台車減速手順において、レールブレーキ12を優先して用いることで、4輪のタイヤが制動ロック状態に陥ることなく、所望の制動減速度を得ることができる。また、所望の制動減速度を得るのに、主ブレーキであるレールブレーキ12による制動力のみでは不足するときに、従ブレーキであるタイヤブレーキ34を併用することにより、高い慣性力を持つプリクラッシュ試験台車4を、慣性力を超える制動力により減速させることができる。さらに、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34を併用することにより、様々なパターンにより目標制動減速度特性が設定されても、制動力の制御自由度の高さにより、これに対応することができる。
【0069】
[衝撃緩衝方式による衝突減速度制御作用]
プリクラッシュ試験での衝突減速度制御の際は、衝突バリア1とプリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられた衝突減速システムDにより、プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を制御する。
【0070】
このとき、実施例1では、衝突減速システムDとして、衝突バリア1の衝突面に設けられた複数本の衝撃緩衝用パイプ13と、プリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられた複数のターニングデバイス14と、を有する。このうち、複数本の衝撃緩衝用パイプ13は、衝突バリア1の衝突壁面に着脱可能に設けられ、衝突時に180°の折り返し変形が進行する。一方、複数のターニングデバイス14は、プリクラッシュ試験台車4の最前面位置に突出して設けられ、衝突時に衝撃緩衝用パイプ13の開口端と符合して180°の折り返し変形の進行を促す円錐形状を持つ。
【0071】
このため、衝突時、図11に示すように、ターニングデバイス14が衝撃緩衝用パイプ13に差し込まれると、衝撃緩衝用パイプ13が座屈により変形することなく、パイプ形状を保ったままの180°の折り返し変形となり、その後、180°の折り返し変形量が徐々に増して変形が進行する。つまり、衝撃緩衝用パイプ13の変形パターンが、繰り返し試験を行っても同じ180°の折り返し変形パターンとなることで、衝突Gに応じた衝突波形(衝突減速度特性の波形)を、高い再現性により得ることができる。
【0072】
さらに、実施例1では、衝撃緩衝用パイプ13は、衝突バリア1に固定されたパイプホルダ50に着脱可能に設けられていて、複数本の衝撃緩衝用パイプ13の本数,材質,肉厚および硬度のうち、少なくとも1つの要素を選定するシステム設定により衝突減速度特性の制御を行うようにしている。
【0073】
このため、4本の衝撃緩衝用パイプ13を用いた衝突Gより低い衝突Gを試験条件とするときは、例えば、衝撃緩衝用パイプ13(アルミパイプ)の材質,肉厚,硬度は変えないで、設定本数だけを4本から3本へと減らすことにより、低い衝突Gを試験条件に調整することができるというように、衝突Gのコントロールを容易に行うことができる。
【0074】
次に、効果を説明する。
実施例1のプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0075】
(1) 衝突バリア1に向かうガイドレール(メインレール2)に沿って台車走行路面3を移動可能なプリクラッシュ試験台車4を用い、前記プリクラッシュ試験台車4に、模擬シート5と、該模擬シート5に着座した試験ダミー7と、試験データ計測機器8と、を搭載したプリクラッシュ試験方法であって、
前記プリクラッシュ試験台車4を、前記ガイドレール(メインレール2)に沿って牽引ワイヤ11により牽引する牽引ワイヤシステムBにより、前記プリクラッシュ試験台車4の台車走行速度を、停止状態から台車減速を開始する目標台車走行速度域になるまで加速させる台車走行手順(図9)と、
前記台車走行手順に続き、予め指定された位置で前記牽引ワイヤ11から切り離すことにより前記プリクラッシュ試験台車4をフリーラン状態とし、フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車4に制動力を加える制動減速システムCにより、前記プリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御する台車減速手順(図10)と、
前記台車減速手順に続き、前記衝突バリア1と前記プリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられた衝突減速システムDにより、前記プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御する台車衝突手順(図11)と、
を備えた。
このため、衝突直前の制動減速度と衝突時の衝突減速度を併せて再現する融合試験により、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響についての統合的な融合評価を容易に行えるプリクラッシュ試験方法を提供することができる。
【0076】
(2) 前記プリクラッシュ試験台車4は、2脚の模擬シート5,5と、該2脚の模擬シート5,5にシートベルト6,6を装着して着座した2体の試験ダミー7,7と、該2体の試験ダミー7,7による試験データを計測する試験データ計測機器8と、を台車ステージ42上に搭載した。
このため、上記(1)の効果に加え、同一条件下でのプリクラッシュ・シートベルトの効果の比較およびダミー特性の差異の把握を容易に行うことができる。さらに、1回のプリクラッシュ試験にて2サンプルのデータ抽出となるため、試験回数の半減、および、ダミー設定条件の違い等による試験実施パターンのパターンマトリクスの作成を行うことができる。
【0077】
(3) 前記プリクラッシュ試験台車4は、台車走行速度センサ51と、制動減速度センサ52と、衝突減速度センサ53を搭載した。
このため、上記(1)または(2)の効果に加え、プリクラッシュ試験中の牽引走行時および制動時の台車速度と、制動減速度と衝突減速度を検出することができる。そして、検出結果を試験データとして評価に反映させた場合、評価精度の向上を図ることができる。また、検出信号を試験中の走行速度制御や制動減速度制御に反映させた場合、狙いとする走行速度や制動減速度への一致性を高めることができる。
【0078】
(4) 衝突バリア1に向かうガイドレール(メインレール2)に沿って台車走行路面3を移動可能なプリクラッシュ試験台車4を用い、前記プリクラッシュ試験台車4に、模擬シート5と、該模擬シート5に着座した試験ダミー7と、試験データ計測機器8と、を搭載したプリクラッシュ試験装置であって、
前記ガイドレール(メインレール2)に沿って前記プリクラッシュ試験台車4を牽引ワイヤ11により牽引することにより前記プリクラッシュ試験台車4を走行状態とし、前記牽引ワイヤ11から前記プリクラッシュ試験台車4を切り離すことによりフリーラン状態とする牽引ワイヤシステムBと、
前記フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車4に制動力を加えることにより、前記プリクラッシュ試験台車4が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を制御可能な制動減速システムCと、
前記衝突バリア1の衝突面と前記プリクラッシュ試験台車4の衝突面に設けられ、前記プリクラッシュ試験台車4が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を制御可能な衝突減速システムDと、
を備えた。
このため、衝突直前の制動減速度と衝突時の衝突減速度を併せて再現する融合試験により、予防安全技術と衝突安全技術が乗員被害低減効果に及ぼす影響についての統合的な融合評価を容易に行えるプリクラッシュ試験装置を提供することができる。
【0079】
(5) 前記ガイドレールは、台車走行路面3に敷設され、前記プリクラッシュ試験台車4の車幅方向中心点の集合である台車中心軸Lの真下位置に沿って配置されたメインレール2であり、前記メインレール2に沿って移動する前記プリクラッシュ試験台車4の挙動安定性を確保する台車挙動安定システムAと、を備えた。
このため、上記(4)の効果に加え、台車挙動安定システムAにより、メインレール2に沿って移動するプリクラッシュ試験台車4の挙動安定性を確保することができる。
【0080】
(6) 前記台車挙動安定システムAは、前記プリクラッシュ試験台車4の台車フレーム41の4隅位置にリジッド支持したタイヤ軸18と、該タイヤ軸18に回転可能に支持した4輪のエアレスタイヤ15と、前記台車中心軸Lの前後位置の前記台車フレーム41に配置した走行補助ガイドローラー19と、を備えたピッチング抑制方式のシステムであり、
前記台車挙動安定システムAによる台車挙動安定性能は、前記4輪のエアレスタイヤ15と、プリクラッシュ試験時、前記メインレール2に対して押し付け嵌合状態を保ったままでレール面を転動可能に設定した前記走行補助ガイドローラー19により得る。
このため、上記(5)の効果に加え、4輪のエアレスタイヤ15と、メインレール2を活用した走行補助ガイドローラー19と、を備えた台車挙動安定システムAにより、プリクラッシュ試験台車4に対する要求性能である直進安定性と水平度保持機能を併せて達成することができる。
【0081】
(7) 前記台車走行路面3には、前記メインレール2に沿って平行な偏心位置にサブレール25が敷設され、
前記牽引ワイヤシステムBは、前記プリクラッシュ試験台車4に固定され、台車側面から前記サブレール25に向かって突出する牽引用アウトリガー17と、前記サブレール25に内挿配置され、動力システム(牽引モータ26)により移動する牽引ワイヤ11と、前記サブレール25に内挿配置され、前記牽引用アウトリガー17と前記牽引ワイヤ11を連結する牽引ドリー27と、を備えたアウトリガー偏心牽引方式のシステムであり、
前記牽引ワイヤシステムBによる走行状態からフリーラン状態への切り替えは、前記サブレール25の指定位置に設定したストッパ28に前記牽引ドリー27が接触することにより、前記牽引用アウトリガー17と前記牽引ワイヤ11の連結を切り離すことで行う。
このため、上記(5)または(6)の効果に加え、プリクラッシュ試験台車4とメインレール2の間に形成されるスペースを、台車牽引以外の用途に有効活用することができる。また、牽引ワイヤ11と牽引ドリー27がサブレール25に内挿配置されているため、アウトリガー偏心牽引方式としながら良好な試験環境を確保することができる。
【0082】
(8) 前記制動減速システムCは、前記台車中心軸Lの前後位置に配置され、前記メインレール2を挟み込む第1ブレーキキャリパ30により油圧制動力を得るレールブレーキ12と、前記4輪のエアレスタイヤ15の各位置に設けられ、各タイヤ軸18に固定したブレーキディスク32を挟み込む第2ブレーキキャリパ33により油圧制動力を得るタイヤブレーキ34と、を備えたデュアルブレーキ方式のシステムであり、
前記制動減速システムCによる前記制動減速度特性の制御は、前記レールブレーキ12と前記タイヤブレーキ34に対し2系統の独立したブレーキ制御油圧により行う。
このため、上記(5)〜(7)の効果に加え、4輪のタイヤが制動ロック状態に陥ることなく、所望の制動減速度を得ることができる。また、高い慣性力を持つプリクラッシュ試験台車4を、慣性力を超える制動力により減速させることができる。さらに、様々なパターンにより目標制動減速度特性が設定されても、制動力の制御自由度の高さにより、これに対応することができる。
【0083】
(9) 前記衝突減速システムDは、前記衝突バリア1の衝突壁面に着脱可能に設けられ、衝突時に180°の折り返し変形が進行する複数本の衝撃緩衝用パイプ13と、前記プリクラッシュ試験台車4の最前面位置に突出して設けられ、衝突時に前記衝撃緩衝用パイプ13の開口端と符合して180°の折り返し変形の進行を促す円錐形状による複数のターニングデバイス14と、を備えた衝撃緩衝方式のシステムであり、
前記衝突減速システムDによる前記衝突減速度特性の制御は、前記複数本の衝撃緩衝用パイプ13の本数,材質,肉厚および硬度のうち、少なくとも1つの要素を選定するシステム設定により行う。
このため、上記(4)〜(8)の効果に加え、衝突減速システムDによる衝突減速度特性の制御を行う際、衝突Gのコントロールを安定して容易に行うことができる。
【0084】
以上、本発明のプリクラッシュ試験方法とプリクラッシュ試験装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0085】
実施例1では、ダミーを用いた被害軽減ブレーキとプリクラッシュ・シートベルトの効果評価を目的とするプリクラッシュ試験の例を示した。しかし、被害軽減ブレーキとプリクラッシュ・シートベルト以外の予防安全技術の効果評価を目的するプリクラッシュ試験の例としても良い。さらに、応用例として、プリクラッシュ試験台車へのホワイトボディ搭載による総合的システム・コンポーネント試験、ならびに、プリクラッシュ試験台車の台車ステージ上の等間隔穴(3インチピッチホール)を利用して既存のHYGE台車と同仕様とすることによるHYGE試験の汎用試験を行うことも可能である。この応用例の場合には、加速式試験条件に加え、新たに減速/加速を併せて再現する試験条件の設定もできる。
【0086】
実施例1では、台車挙動安定システムAとして、4輪のエアレスタイヤ15と走行補助ガイドローラー19を備えたピッチング抑制方式のシステムの例を示した。しかし、台車挙動安定システムAとしては、台車挙動安定性能を確保できるシステムであれば、具体的構成は、実施例1に限られることはなく、実施例1以外のシステムを用いる例としても良い。
【0087】
実施例1では、牽引ワイヤシステムBとして、牽引用アウトリガー17と牽引ワイヤ11と牽引ドリー27を備え、サブレール25を利用するアウトリガー偏心牽引方式のシステムの例を示した。しかし、牽引ワイヤシステムBとしては、メインレール2を利用する例、あるいは、メインレール2とサブレール25を利用しないで新たに牽引ワイヤを設定するような例、等のように実施例1以外のシステムを用いる例としても良い。
【0088】
実施例1では、制動減速システムCとして、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34を備えたデュアルブレーキ方式であり、2系統の独立制御によるシステム例を示した。しかし、制動減速システムCとしては、レールブレーキ12のみを用いる例、あるいは、レールブレーキ12とタイヤブレーキ34以外のブレーキとの併用方式を用いるような例、等のように実施例1以外のシステムを用いる例としても良い。
【0089】
実施例1では、衝突減速システムDとして、複数本の衝撃緩衝用パイプ13と、複数のターニングデバイス14と、を備えた衝撃緩衝方式のシステムを用い、衝突減速度特性の制御を、複数本の衝撃緩衝用パイプ13の本数,材質,肉厚および硬度のうち、少なくとも1つの要素を選定するシステム設定により行う例を示した。しかし、衝突減速システムDとしては、ハニカム緩衝材等を用いる例、等のように実施例1以外のシステムを用いる例としても良い。
【符号の説明】
【0090】
A 台車挙動安定システム
B 牽引ワイヤシステム
C 制動減速システム
D 衝突減速システム
1 衝突バリア
2 メインレール(ガイドレール)
3 台車走行路面
4 プリクラッシュ試験台車
41 台車フレーム
42 台車ステージ
5 模擬シート
6 シートベルト
7 試験ダミー
8 試験データ計測機器
11 牽引ワイヤ
12 レールブレーキ
13 衝撃緩衝用パイプ
14 ターニングデバイス
15 エアレスタイヤ
17 牽引用アウトリガー
18 タイヤ軸
19 走行補助ガイドローラー
25 サブレール
26 牽引モータ(動力システム)
27 牽引ドリー
28 ストッパ
30 第1ブレーキキャリパ
33 第2ブレーキキャリパ
34 タイヤブレーキ
51 台車走行速度センサ
52 制動減速度センサ
53 衝突減速度センサ
L 台車中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突バリアに向かうガイドレールに沿って台車走行路面を移動可能なプリクラッシュ試験台車を用い、前記プリクラッシュ試験台車に、模擬シートと、該模擬シートに着座した試験ダミーと、試験データ計測機器と、を搭載したプリクラッシュ試験方法であって、
前記プリクラッシュ試験台車を、前記ガイドレールに沿って牽引ワイヤにより牽引する牽引ワイヤシステムにより、前記プリクラッシュ試験台車の台車走行速度を、停止状態から台車減速を開始する目標台車走行速度域になるまで加速させる台車走行手順と、
前記台車走行手順に続き、予め指定された位置で前記牽引ワイヤから切り離すことにより前記プリクラッシュ試験台車をフリーラン状態とし、フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車に制動力を加える制動減速システムにより、前記プリクラッシュ試験台車が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を、目標制動減速度特性の設定範囲内に収まるように制御する台車減速手順と、
前記台車減速手順に続き、前記衝突バリアと前記プリクラッシュ試験台車の衝突面に設けられた衝突減速システムにより、前記プリクラッシュ試験台車が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を、目標衝突減速度特性の許容範囲内に収まるように制御する台車衝突手順と、
を備えたことを特徴とするプリクラッシュ試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたプリクラッシュ試験方法において、
前記プリクラッシュ試験台車は、2脚の模擬シートと、該2脚の模擬シートにシートベルトを装着して着座した2体の試験ダミーと、該2体の試験ダミーによる試験データを計測する試験データ計測機器と、を台車ステージ上に搭載したことを特徴とするプリクラッシュ試験方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたプリクラッシュ試験方法において、
前記プリクラッシュ試験台車は、台車走行速度センサと、制動減速度センサと、衝突減速度センサを搭載したことを特徴とするプリクラッシュ試験方法。
【請求項4】
衝突バリアに向かうガイドレールに沿って台車走行路面を移動可能なプリクラッシュ試験台車を用い、前記プリクラッシュ試験台車に、模擬シートと、該模擬シートに着座した試験ダミーと、試験データ計測機器と、を搭載したプリクラッシュ試験装置であって、
前記ガイドレールに沿って前記プリクラッシュ試験台車を牽引ワイヤにより牽引することにより前記プリクラッシュ試験台車を走行状態とし、前記牽引ワイヤから前記プリクラッシュ試験台車を切り離すことによりフリーラン状態とする牽引ワイヤシステムと、
前記フリーラン状態の前記プリクラッシュ試験台車に制動力を加えることにより、前記プリクラッシュ試験台車が制動減速を開始してから衝突直前に達するまでの減速区間の制動減速度特性を制御可能な制動減速システムと、
前記衝突バリアの衝突面と前記プリクラッシュ試験台車の衝突面に設けられ、前記プリクラッシュ試験台車が衝突減速を開始してから停止するまでの衝突区間の衝突減速度特性を制御可能な衝突減速システムと、
を備えたことを特徴とするプリクラッシュ試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたプリクラッシュ試験装置において、
前記ガイドレールは、台車走行路面に敷設され、前記プリクラッシュ試験台車の車幅方向中心点の集合である台車中心軸の真下位置に沿って配置されたメインレールであり、
前記メインレールに沿って移動する前記プリクラッシュ試験台車の挙動安定性を確保する台車挙動安定システムと、を備えたことを特徴とするプリクラッシュ試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたプリクラッシュ試験装置において、
前記台車挙動安定システムは、前記プリクラッシュ試験台車の台車フレームの4隅位置にリジッド支持したタイヤ軸と、該タイヤ軸に回転可能に支持した4輪のエアレスタイヤと、前記台車中心軸の前後位置の前記台車フレームに配置した走行補助ガイドローラーと、を備えたピッチング抑制方式のシステムであり、
前記台車挙動安定システムによる台車挙動安定性能は、前記4輪のエアレスタイヤと、プリクラッシュ試験時、前記メインレールに対して押し付け嵌合状態を保ったままでレール面を転動可能に設定した前記走行補助ガイドローラーにより得ることを特徴とするプリクラッシュ試験装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載されたプリクラッシュ試験装置において、
前記台車走行路面には、前記メインレールに沿って平行な偏心位置にサブレールが敷設され、
前記牽引ワイヤシステムは、前記プリクラッシュ試験台車に固定され、台車側面から前記サブレールに向かって突出する牽引用アウトリガーと、前記サブレールに内挿配置され、動力システムにより移動する牽引ワイヤと、前記サブレールに内挿配置され、前記牽引用アウトリガーと前記牽引ワイヤを連結する牽引ドリーと、を備えたアウトリガー偏心牽引方式のシステムであり、
前記牽引ワイヤシステムによる走行状態からフリーラン状態への切り替えは、前記サブレールの指定位置に設定したストッパに前記牽引ドリーが接触することにより、前記牽引用アウトリガーと前記牽引ワイヤの連結を切り離すことで行うことを特徴とするプリクラッシュ試験装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7の何れか1項に記載されたプリクラッシュ試験装置において、
前記制動減速システムは、前記台車中心軸の前後位置に配置され、前記メインレールを挟み込む第1ブレーキキャリパにより油圧制動力を得るレールブレーキと、前記4輪のエアレスタイヤの各位置に設けられ、各タイヤ軸に固定したブレーキディスクを挟み込む第2ブレーキキャリパにより油圧制動力を得るタイヤブレーキと、を備えたデュアルブレーキ方式のシステムであり、
前記制動減速システムによる前記制動減速度特性の制御は、前記レールブレーキと前記タイヤブレーキに対し2系統の独立したブレーキ制御油圧により行うことを特徴とするプリクラッシュ試験装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8の何れか1項に記載されたプリクラッシュ試験装置において、
前記衝突減速システムは、前記衝突バリアの衝突壁面に着脱可能に設けられ、衝突時に180°の折り返し変形が進行する複数本の衝撃緩衝用パイプと、前記プリクラッシュ試験台車の最前面位置に突出して設けられ、衝突時に前記衝撃緩衝用パイプの開口端と符合して180°の折り返し変形の進行を促す円錐形状による複数のターニングデバイスと、を備えた衝撃緩衝方式のシステムであり、
前記衝突減速システムによる前記衝突減速度特性の制御は、前記複数本の衝撃緩衝用パイプの本数,材質,肉厚および硬度のうち、少なくとも1つの要素を選定するシステム設定により行うことを特徴とするプリクラッシュ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−232116(P2011−232116A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101626(P2010−101626)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591056927)財団法人日本自動車研究所 (26)