説明

プリンタおよびプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法

【課題】 記録媒体の搬送位置ずれを検出することにより、画像の記録位置にずれが生じてしまうのを防止する。
【解決手段】
各センサ14により検出されたマーカ11の先端縁11aおよび後端縁11bによって、マーカ11が各センサ14に対向する位置を搬送されたときの幅寸法を演算し、この幅寸法とこの幅寸法を演算する以前に演算されたマーカ11の幅寸法とによってマーカ11の平均幅寸法を演算し、前記幅寸法および平均幅寸法の差分を演算するとともに、差分に基づいてマーカ11の幅寸法の標準偏差を演算して、差分と標準偏差の所定倍数とを比較し、差分が標準偏差の所定倍数を超えている場合には搬送ずれが生じていることを判断する制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタおよびプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法に係り、特に、複数の記録ユニットに対応して設けられた搬送手段により記録媒体を搬送するプリンタおよびプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれ異なる色彩のインクが塗布された複数のインクリボンを用いて記録を行うプリンタにおいて、各インクリボンにそれぞれ対応して設けられた記録ヘッドを有する複数の記録ユニットにより、前記各インクリボンのインクをそれぞれ記録媒体に転写することにより、記録媒体に所望の画像の記録を行うプリンタが知られている。
【0003】
このようなプリンタにおいては、複数の記録ユニットが記録媒体の搬送経路に沿って所定の間隔をもって並列して配置するように設けられており、各記録ユニットは、インクリボン、記録ヘッド、およびインクリボンを介して記録ヘッドに対向するように設けられたプラテンローラを有している。各インクリボンには、記録媒体の搬送方向における最上流側の記録ユニットからイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)のインクがそれぞれ塗布されている。
【0004】
また、前記プリンタにおいては、各記録ユニットに対応する搬送ユニットが、各記録ユニットの近傍における搬送経路に沿って設けられており、各搬送ユニットは、記録媒体を介して対向するように設けられた一対の搬送ローラを有している。
【0005】
このようなプリンタは、各搬送ローラにより記録媒体を挟持し、各搬送ローラを回転させることにより記録媒体を搬送させながら、記録媒体の搬送方向において上流側に位置する記録ヘッドおよびプラテンローラから順次記録媒体に圧接させて記録媒体にインクを転写することにより、所望のカラー画像の記録を行っていた(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかし、前述のような従来のプリンタにおいては、複数の搬送ユニットによって記録媒体を搬送するようになっているため、各搬送ローラが配置されている位置が各搬送ユニットにおいてそれぞれ異なっている場合や、記録媒体が各搬送ユニットにおいて搬送方向に対し異なる角度によって搬送されてしまった場合には、記録媒体が蛇行して搬送され、搬送位置のずれが生じてしまうおそれがあった。そして、記録媒体の搬送位置がずれた状態で画像の記録が続行されてしまうと、各記録ユニットにおける画像の記録の位置がずれてしまい、良好な画像の記録を行うことができない場合があるという問題を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−231318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、記録媒体の搬送位置ずれを検出することにより、画像の記録位置にずれが生じてしまうのを防止することができるプリンタおよびプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係るプリンタの特徴は、記録媒体の搬送経路に沿って並列して設けられ、前記記録媒体に画像の記録を行う複数の記録ユニットと、前記各記録ユニットのうち、前記記録媒体の搬送方向における最上流側に配置され、前記記録媒体に所定の幅寸法を有するマーカを記録する第1記録ユニットと、前記各記録ユニットに対応して設けられ、前記記録媒体を搬送する複数の搬送手段と、前記各記録ユニットに対応し、前記記録媒体に対向して設けられ、前記マーカの先端縁および後端縁を検出する検出手段と、前記各検出手段により検出された前記先端縁および前記後端縁によって、前記マーカが前記各検出手段に対向する位置を搬送されたときの幅寸法を演算し、前記幅寸法と前記幅寸法を演算する以前に演算されたマーカの幅寸法とによって前記マーカの平均幅寸法を演算し、前記幅寸法および前記平均幅寸法の差分を演算するとともに、前記差分に基づいて前記マーカの幅寸法の標準偏差を演算して、前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較し、前記差分が前記標準偏差の所定倍数を超えている場合には搬送ずれが生じていると判断する制御部とを有する点にある。
【0010】
本発明に係るプリンタによれば、各センサに対向する位置に記録媒体のマーカが記録された部分が搬送された際のマーカの幅寸法を演算した後、幅寸法の平均値と演算した幅寸法との差分により標準偏差を演算し、前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較することにより、プリンタにおける記録媒体の搬送位置にずれが生じてしまったことを容易に検出することができる。
【0011】
また、本発明に係る他のプリンタの特徴は、前記各搬送手段が搬送ローラとされ、前記各搬送ローラは、ステッピングモータによって駆動されるようになっており、前記制御部は、前記各検出手段によって前記先端縁を検出した際の駆動ステップ数と前記後端縁を検出した際の駆動ステップ数とに基づいて、前記マーカの幅寸法を演算する点にある。
【0012】
本発明に係る他のプリンタによれば、各センサに対向する位置に搬送された際のマーカの幅寸法を、搬送ローラの駆動ステップ数によってあらわすことができ、これよって、マーカの幅寸法をより容易に演算することができる。
【0013】
さらに、前記マーカが、前記記録媒体における前記画像の記録開始位置の近傍に記録され、前記各記録ヘッドにおいて前記画像の記録を行う際の基準となる位置決め用マーカである点にある。
【0014】
この本発明に係る他のプリンタによれば、各記録ヘッドにおける画像の記録を開始する際の基準として機能する位置決め用マーカを利用して、記録媒体の搬送位置のずれを検出することができるので、他のマーカを記録する必要もなく、記録媒体の搬送位置のずれをより容易に検出することができる。
【0015】
また、本発明に係るプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法の特徴は、記録媒体の搬送経路に沿って並列して設けられた複数の記録ユニットにより前記記録媒体に画像を記録するとともに、前記各記録ユニットのうち前記記録媒体の搬送方向における最上流側に配置された第1記録ユニットによって前記記録媒体に所定の幅寸法を有するマーカを記録し、前記各記録ユニットに対応して設けられた複数の搬送手段により前記記録媒体を搬送するプリンタにおける前記記録媒体の搬送位置ずれ検出方法であって、前記各記録ユニットに対応し、前記記録媒体に対向して設けられた検出手段により、前記マーカの先端縁および後端縁を検出し、前記先端縁および前記後端縁によって、前記マーカが前記各検出手段に対向する位置を搬送されたときの幅寸法を演算し、前記幅寸法および前記幅寸法を演算する以前に演算された前記マーカの幅寸法により、前記マーカの平均幅寸法を演算し、前記幅寸法および前記平均幅寸法の差分を演算するとともに、前記差分に基づいて前記マーカの幅寸法の標準偏差を演算して、前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較し、前記差分が前記標準偏差の所定倍数を超えている場合には搬送ずれが生じていると判断する点にある。
【0016】
この本発明に係るプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法によれば、各センサに対向する位置に記録媒体のマーカが記録された部分が搬送された際のマーカの幅寸法を演算した後、幅寸法の平均値と演算した幅寸法との差分により標準偏差を演算し、前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較することにより、プリンタにおける記録媒体の搬送位置にずれが生じてしまったことを容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明に係るプリンタおよびプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法によれば、記録媒体の搬送位置ずれを容易に検出することができ、これにより、画像の記録位置にずれが生じてしまうのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るプリンタの一実施形態を図1から図4を参照して説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、長尺の記録媒体2が巻回された給紙ロール4を有している。
【0020】
記録媒体2は、複数のガイドローラ3に案内されながら、所定の搬送経路4を搬送されるようになっており、記録媒体2には、所定寸法の画像が記録されるようになっている。
【0021】
プリンタ1は、搬送経路4に沿って所定の間隔をもって離れて位置するように設けられた複数(本実施形態においては4つ)の記録ユニット5(5a、5b、5c、5d)を有しており、各記録ユニット5は、記録媒体2の搬送方向における最上流側から、第1記録ユニット5a、第2記録ユニット5b、第3記録ユニット5cおよび第4記録ユニット5dとされている。
【0022】
各記録ユニット5は、記録媒体2の搬送方向における最上流側から順番に、Y、M、C、BKの色彩のインクが塗布されたインクリボン6を有しており、各インクリボン6は、それぞれ一対のインクリボンロール7に巻回されて、リボンガイドローラ8に案内されながら、それぞれインクの塗布面が記録媒体2に対向して搬送されるように設けられている。
【0023】
各記録ユニット5には、記録媒体2の幅寸法に対応する長さによって形成されたサーマルヘッドからなる記録ヘッド10がインクリボン6を介して記録媒体2と対向する位置に設けられており、各記録ヘッド10におけるインクリボン6に対向する位置には、記録媒体2の幅寸法に対向するような複数の発熱素子がライン状に並列配置されている。
【0024】
各記録ヘッド10は、プリンタ1に入力された記録データに基づき所望の発熱素子を発熱させてインクリボン6のインクを記録媒体2に転写するようになっているとともに、第1記録ユニット5aの記録ヘッド10は、図3(a)(b)に示すように、Yのインクを記録媒体2における画像の記録開始位置の近傍の所定部分に転写して、所定の幅寸法を有する位置決め用マーカ11を記録するようになっている。この位置決め用マーカ11は、各記録ヘッド10において画像の記録を開始する際の基準として機能するようになっている。
【0025】
さらに、各記録ユニット5には、インクリボン6および記録媒体2を介して記録ヘッド10に対向する位置に、記録媒体2の幅寸法に対応する長さによって形成されたプラテンローラ12がそれぞれ設けられている。
【0026】
各記録ユニット5の近傍には、Yのインクにより記録媒体2に記録された位置決め用マーカ11を検出するための検出手段としてのセンサ14(14a、14b、14c、14d)がそれぞれ各記録ユニット5に対応して設けられており、記録媒体2の搬送方向における最上流側から第1センサ14a、第2センサ14b、第3センサ14cおよび第4センサ14dとされている。各センサ14は、位置決め用マーカ11の先端縁11aおよび後端縁11bを検出するようになっている。
【0027】
プリンタ1は、搬送手段として、各記録ユニット5に対応する複数の搬送ユニット16(16a、16b、16c、16d)を有しており、各搬送ユニット16は、記録媒体2の搬送方向における最上流側から第1搬送ユニット16a、第2搬送ユニット16b、第3搬送ユニット16cおよび第4搬送ユニット16dとされている。
【0028】
各搬送ユニット16は、搬送経路4の近傍であってそれぞれ各記録ユニット5よりも前記搬送方向の下流側に配置されており、各搬送ユニット16には、記録媒体2を介して対向し、記録媒体2を両面から挟持するように位置する一対の搬送ローラ17A、17Bがそれぞれ設けられている。そして、両搬送ローラ17A、17Bのうち一方の搬送ローラ17Aは、ステッピングモータ19により回転駆動されるようになっている。各搬送ユニット16は、両搬送ローラ17A、17Bにより記録媒体2を両面から挟持するとともに一方の搬送ローラ17Aの回転駆動によって記録媒体2を所定の搬送方向に搬送するようになっている。
【0029】
記録媒体2の搬送経路4の近傍であって各記録ヘッド10よりも前記搬送方向の下流側には、切断刃21が設けられており、切断刃21は、記録が終了した長尺の記録媒体2を所定の長さ寸法に切断するようになっている。
【0030】
プリンタ1は、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部23を有しており、制御部23は、各記録ユニット5や各搬送ユニット16、各センサ14等を駆動させる駆動部24を有している。
【0031】
制御部23は、各センサ14に対向する位置に位置決め用マーカ11が搬送されたときの位置決め用マーカ11の幅寸法を演算する幅演算部25を有している。本実施形態において幅演算部25は、各センサ14により位置決め用マーカ11の先端縁11aおよび後端縁11bが検出されると、先端縁11aを搬送していた際の搬送ローラ17Aの駆動ステップ数および後端縁11bを搬送していた際の駆動ステップ数をステッピングモータから取得し、前記両駆動ステップ数の差に基づいて位置決め用マーカ11の幅寸法を演算するようになっている。
【0032】
制御部23は、既に演算されている複数の位置決め用マーカ11の幅寸法の平均を演算する平均幅演算部26を有している。本実施形態において平均幅演算部26は、第1センサ14aにおいて検出された際の位置決め用マーカ11の幅寸法を基準幅寸法とし、平均幅演算部26により第2センサ14bにおいて検出された際の位置決め用マーカ11の幅寸法(第2幅寸法)が演算されると、第2幅寸法および前記基準幅寸法に基づいて幅寸法の平均である平均幅寸法を演算するようになっている。また、平均値演算部26は、幅演算部25により第3センサ14cにおいて検出された際の位置決め用マーカ11の幅寸法(第3幅寸法)が演算されると、基準幅寸法、第2幅寸法および第3幅寸法の平均幅寸法を演算するようになっている。さらに、平均値演算部26は、幅演算部25により第4センサ14dにおいて検出された際の位置決め用マーカ11の幅寸法が演算されると、基準幅寸法、第2幅寸法、第3幅寸法および第4幅寸法の平均幅寸法を演算するようになっている。
【0033】
制御部23は、幅演算部25により演算された位置決め用マーカ11の幅寸法と平均幅寸法との差分を演算する差分演算部27を有しているとともに、差分演算部27により演算された差分に基づいて幅寸法の標準偏差を演算する標準偏差演算部28を有している。
【0034】
さらに、制御部23は、差分演算部27により演算された差分と標準偏差演算部28により演算された標準偏差の所定倍数とを比較し、差分が標準偏差の所定倍数を超えている場合には、搬送ずれが生じていると判断する比較・判断部29を有している。本実施形態において比較・判断部29は、差分が標準偏差の3倍を超えている場合には、搬送ずれが生じていると判断するようになっている。また、比較・判断部29は、搬送ずれが生じていると判断した場合には、駆動部24に搬送ずれデータを出力し、駆動部24は、搬送ずれデータを入力した場合には、各ステッピングモータ19の駆動を停止するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態に係るプリンタ1における記録媒体2の搬送位置ずれ検出方法について説明する。
【0036】
まず、プリンタ1に所望の文字や図形等の1つの画像の記録データが入力されると、プリンタ1の駆動部24は、ステッピングモータ19により各搬送ユニット16の搬送ローラ17Aを駆動させて、記録媒体2を所定の搬送方向に搬送する。
【0037】
続いて、駆動部24は、第1記録ユニット5aにおいて、記録ヘッド10とプラテンローラ12とを記録媒体2およびYのインクリボン6を介して圧接させ、記録ヘッド10の所定の発熱素子を発熱させて記録媒体2における1つの画像の記録開始位置の近傍にYのインクを転写することにより、位置決め用マーカ11を記録する(ST1)。
【0038】
さらに、第1センサ14aによって位置決め用マーカ11の先端縁11aが検出されると、駆動部24は、記録データに基づき第1記録ユニット5aの記録ヘッド10により記録媒体2にYのインクを転写するとともに、幅演算部25は、搬送ローラ17Aの駆動ステップ数の監視を開始する。そして、第1センサ14aによって位置決め用マーカ11の後端縁11bが検出されると、図3(a)に示すように、幅演算部25は、第1センサ14aによって検出された位置決め用マーカ11の先端縁11aから後端縁11bまでの搬送ローラ17Aの駆動ステップ数に基づき基準幅寸法xを演算する(ST2)。本実施形態においては基準幅寸法を含むマーカの幅寸法を、駆動ステップ数によってあらわすこととする。
【0039】
次に、第2センサ14bによって位置決め用マーカ11の先端縁11aが検出されると、駆動部24は、第2記録ユニット5bの記録ヘッド10により記録媒体2にMのインクを転写する。続いて、第2センサ14bによって位置決め用マーカ11の後端縁11bが検出されると、幅演算部25は、第2センサ14bによって検出された位置決め用マーカ11の先端縁11aから後端縁11bまでの搬送ローラ17Aの駆動ステップ数に基づき第2幅寸法Yを演算する(ST3)。
【0040】
幅演算部25は、基準幅寸法Xおよび第2幅寸法Yのデータを平均演算部26に出力し、平均演算部26は、基準幅寸法Xおよび第2幅寸法Yにより、平均幅寸法を演算する(ST4)。
【0041】
平均演算部26は、平均幅寸法と第2幅寸法のデータを差分演算部27に出力し、差分演算部27は、平均幅寸法と第2幅寸法との差分を演算する(ST5)。
【0042】
差分演算部27は、差分のデータを標準偏差演算部28に出力し、標準偏差演算部28は、差分に基づいて標準偏差を演算する(ST6)。
【0043】
標準偏差演算部28は、標準偏差および差分のデータを比較・判断部29に出力し、比較・判断部29は、差分の値が標準偏差の3倍を超えるか否か判断する(ST7)。
【0044】
ここで、差分の値が標準偏差の3倍を超える場合には(ST7においてYes)、比較・判断部29は、搬送位置がずれていると判断して、駆動部24に搬送位置ずれデータを出力し、駆動部24は、ステッピングモータ19の駆動を停止する(ST8)。これにより、記録媒体2の搬送が停止される。一方、差分の値が標準偏差の3倍を超えていない場合には(ST7においてNo)、各記録ヘッド10における画像の記録が終了したかを判断する(ST9)。
【0045】
そして、各記録ヘッド10における画像の記録が終了していないと判断した場合(ST9においてNo)、続いて、幅演算部25は、記録媒体2の搬送方向におけるより下流側に配置されたセンサ14(第3センサ14c、第4センサ14d)によって位置決め用マーカ11が検出されるまで待機する。
【0046】
次に、第3センサ14cによって位置決め用マーカ11の先端縁11aが検出されると、駆動部24は第3記録ユニット5cの記録ヘッド10により記録媒体2にCのインクを転写する。続いて、第3センサ14cによって位置決め用マーカ11の後端縁11bが検出されると、幅演算部25は、第3センサ14cによって検出された位置決め用マーカ11の先端縁11aから後端縁11bまでの搬送ローラ17Aの駆動ステップ数に基づき、第3幅寸法を演算する(ST3)。平均演算部26は、基準幅寸法X、第2幅寸法Yおよび第3幅寸法により、平均幅寸法を演算し(ST4)、差分演算部27は、平均幅寸法と第3幅寸法との差分を演算する(ST5)。さらに、標準偏差演算部28は差分に基づいて標準偏差を演算し(ST6)、比較・判断部29は、差分の値が標準偏差の3倍を超える場合には(ST7においてYes)、駆動部24に搬送位置ずれデータを出力する。一方、差分の値が標準偏差の3倍を超える場合であって(ST7においてNo)、各記録ヘッド10における画像の記録が終了していないと判断した場合には(ST9においてNo)、続いて、幅演算部25は、第4センサ14dによって位置決め用マーカ11が検出されるまで待機する。
【0047】
続いて、第4センサ14dによって位置決め用マーカ11の先端縁11aが検出されると、駆動部24は第4記録ユニット5dの記録ヘッド10により記録媒体2にBKのインクを転写する。続いて、第4センサ14dによって位置決め用マーカ11の後端縁11bが検出されると、幅演算部25は、第4センサ14dによって検出された位置決め用マーカ11の先端縁11aから後端縁11bまでの搬送ローラ17Aの駆動ステップ数に基づき、第4幅寸法を演算する(ST3)。平均演算部26は、基準幅寸法X、第2幅寸法Y、第3幅寸法および第4幅寸法により、平均幅寸法を演算し(ST4)、差分演算部27は、平均幅寸法と第4幅寸法との差分を演算する(ST5)。さらに、標準偏差演算部28は差分に基づいて標準偏差を演算し(ST6)、比較・判断部29は、差分の値が標準偏差の3倍を超える場合には(ST7においてYes)、駆動部24に搬送位置ずれデータを出力する。一方、差分の値が標準偏差の3倍を超える場合であって(ST7においてNo)、現在記録されている次に記録が行われる次画像の記録も含めて、各記録ヘッド10における全ての画像の記録が終了したと判断する場合には(ST9においてYes)、記録媒体2の搬送位置ずれの検出を終了する。
【0048】
本実施形態によれば、各センサ14に対向する位置に記録媒体2の位置決め用マーカ11が記録された部分が搬送された際の位置決め用マーカ11の幅寸法を演算した後、幅寸法の平均値と演算した幅寸法との差分により標準偏差を演算し、前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較することにより、プリンタ1における記録媒体2の搬送位置にずれが生じてしまったことを容易に検出することができる。
【0049】
したがって、記録媒体2の搬送位置ずれを検出することにより、画像の記録位置にずれが生じてしまうのを確実に防止することができる。
【0050】
また、各センサ14に対向する位置に搬送された際の位置決め用マーカ11の幅寸法を、搬送ローラ17Aの駆動ステップ数によってあらわすことによって、より容易に位置決め用マーカ11の幅寸法を演算することができる。
【0051】
さらに、各記録ヘッド10における画像の記録を開始する際の基準として機能する位置決め用マーカ11を利用して、記録媒体2の搬送位置のずれを検出することができるので、他のマーカ11を記録する必要もなく、より容易に記録媒体2の搬送位置のずれを検出することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0053】
例えば、本実施形態においては、搬送位置のずれを検出した場合には、搬送ローラ17Aを駆動するためのステッピングモータ19の駆動を停止することにより、記録媒体2の搬送を停止するようになっているが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタ1に、プリンタ1の使用者が視認可能な表示部を設け、搬送位置のずれを検出した場合には、表示部に表示することにより搬送位置のずれが生じたことを使用者に案内するようにしてもよい。
【0054】
また、マーカ11の幅寸法、平均幅寸法、標準偏差等の演算方法については、本実施形態に限定されず、例えば、平均幅寸法や標準偏差を演算するにあたり、過去プリンタ1において演算した全てのマーカ11の幅寸法を対象として演算するようにしてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態においては、記録媒体2を搬送するための複数の搬送手段として搬送ユニット16が用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、各記録ヘッド10に対向して設けられたプラテンローラ12を搬送手段として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るプリンタの一実施形態を示す概念図
【図2】図1のプリンタを示すブロック図
【図3】図1のプリンタにより記録された記録媒体状のマーカを示す概念図
【図4】図1のプリンタにおける記録媒体の搬送ずれ検出方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0057】
1 プリンタ
2 記録媒体
5a 第1記録ユニット
5b 第2記録ユニット
5c 第3記録ユニット
5d 第4記録ユニット
6 インクリボン
10 記録ヘッド
11 位置決め用マーカ
11a 先端縁
11b 後端縁
12 プラテンローラ
14a 第1センサ
14b 第2センサ
14c 第3センサ
14d 第4センサ
16a 第1搬送ユニット
16b 第2搬送ユニット
16c 第3搬送ユニット
16d 第4搬送ユニット
17A、17B 搬送ローラ
19 ステッピングモータ
23 制御部
24 駆動部
25 幅演算部
26 平均幅演算部
27 差分演算部
28 標準偏差演算部
29 比較・判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送経路に沿って並列して設けられ、前記記録媒体に画像の記録を行う複数の記録ユニットと、
前記各記録ユニットのうち、前記記録媒体の搬送方向における最上流側に配置され、前記記録媒体に所定の幅寸法を有するマーカを記録する第1記録ユニットと、
前記各記録ユニットに対応して設けられ、前記記録媒体を搬送する複数の搬送手段と、
前記各記録ユニットに対応し、前記記録媒体に対向して設けられ、前記マーカの先端縁および後端縁を検出する検出手段と、
前記各検出手段により検出された前記先端縁および前記後端縁によって、前記マーカが前記各検出手段に対向する位置を搬送されたときの幅寸法を演算し、
前記幅寸法と前記幅寸法を演算する以前に演算されたマーカの幅寸法とによって前記マーカの平均幅寸法を演算し、
前記幅寸法および前記平均幅寸法の差分を演算するとともに、前記差分に基づいて前記マーカの幅寸法の標準偏差を演算して、
前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較し、前記差分が前記標準偏差の所定倍数を超えている場合には搬送ずれが生じていると判断する制御部とを有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記各搬送手段が搬送ローラとされ、前記各搬送ローラは、ステッピングモータによって駆動されるようになっており、
前記制御部は、前記各検出手段によって前記先端縁を検出した際の駆動ステップ数と前記後端縁を検出した際の駆動ステップ数とに基づいて、前記マーカの幅寸法を演算することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記マーカが、前記記録媒体における前記画像の記録開始位置の近傍に記録され、前記各記録ヘッドにおいて前記画像の記録を行う際の基準となる位置決め用マーカであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
記録媒体の搬送経路に沿って並列して設けられた複数の記録ユニットにより前記記録媒体に画像を記録するとともに、前記各記録ユニットのうち前記記録媒体の搬送方向における最上流側に配置された第1記録ユニットによって前記記録媒体に所定の幅寸法を有するマーカを記録し、前記各記録ユニットに対応して設けられた複数の搬送手段により前記記録媒体を搬送するプリンタにおける前記記録媒体の搬送位置ずれ検出方法であって、
前記各記録ユニットに対応し、前記記録媒体に対向して設けられた検出手段により、前記マーカの先端縁および後端縁を検出し、
前記先端縁および前記後端縁によって、前記マーカが前記各検出手段に対向する位置を搬送されたときの幅寸法を演算し、
前記幅寸法および前記幅寸法を演算する以前に演算された前記マーカの幅寸法により、前記マーカの平均幅寸法を演算し、
前記幅寸法および前記平均幅寸法の差分を演算するとともに、前記差分に基づいて前記マーカの幅寸法の標準偏差を演算して、
前記差分と前記標準偏差の所定倍数とを比較し、前記差分が前記標準偏差の所定倍数を超えている場合には搬送ずれが生じていると判断するプリンタにおける記録媒体の搬送位置ずれ検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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