説明

プリンター

【課題】コストアップを極力抑えつつ、印刷処理部における用紙浮きを防止して良好な平
面度を維持し、高品質に印刷を行うことができるプリンターを提供する。
【解決手段】プリンター1は、インクジェットヘッド21に対向するプラテン面26aを
有するプラテン26と、プラテン26におけるロール紙11の搬送方向上流側に設けられ
プラテン面26a上に向けてロール紙11を狭持しつつ搬送するメイン送りローラー36
と、プラテン26におけるロール紙11の搬送方向下流側に設けられプラテン面26a上
からロール紙11を狭持しつつ排出するフロント送りローラー37とを備え、メイン送り
ローラー36によってロール紙11を狭持する位置Aとフロント送りローラー37によっ
てロール紙11を狭持する位置Bとを含む平面Cに対してプラテン面26aがインクジェ
ットヘッド21側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送する用紙に印刷を行うプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
紙浮きを防止するプリンターとして、媒体を挟持して供給側から処理用基準面上に搬送
する搬送ローラー対を通過した媒体を処理用基準面上に向けて押さえる押さえ部を備える
ものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このプリンターでは、搬送ローラー対
によってシート状の媒体を挟持して処理部の処理用基準面上に向けて搬送する際、押さえ
部によって媒体を処理用基準面上に向けて押さえるため、処理部における媒体の浮き上が
りを防止することができる。
【0003】
また、媒体をプラテンに吸着するための吸引装置を備えたものや、駆動ローラーと従動
ローラーとに帯電ベルトを掛け渡して周回させ、帯電ローラーで帯電ベルト表面を帯電し
て媒体を吸着させるものが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−132628号公報
【特許文献2】特開2008−114409号公報
【特許文献3】特開平7−53082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のように、押さえ部でプラテン面に用紙を押し付ける
ことで用紙の浮きを抑えても、プラテン面において用紙の微小なしわを抑えることができ
ず、用紙平面度を確保して印刷画質の向上を図ることが困難であった。
また、用紙を吸引したり、静電気により吸着させる特許文献2,3の技術では、複雑な
吸引機構や静電搬送機構が必要となり、コストアップを招いてしまう。
【0006】
本発明の目的は、コストアップを極力抑えつつ、印刷処理部における用紙浮きを防止し
て良好な平面度を維持し、高品質に印刷を行うことができるプリンターを提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明に係るプリンターは、印刷処理を行う印刷ヘッ
ドと、
前記印刷ヘッドに対向するプラテン面を有するプラテンと、
前記プラテンの用紙搬送方向上流側に設けられ前記プラテン面上に向けて用紙を狭持し
つつ搬送する搬送ローラーと、
前記プラテンの用紙搬送方向下流側に設けられ前記プラテン面上から用紙を狭持しつつ
排出する排紙ローラーとを備えたプリンターであって、
前記搬送ローラーによって用紙を狭持する位置と前記排紙ローラーによって用紙を狭持
する位置とを含む平面に対して前記プラテン面が前記印刷ヘッド側に配置されていること
を特徴とする。
【0008】
この構成によれば、搬送ローラーと排紙ローラーによって用紙をそれぞれ狭持した位置
に対して、プラテンのプラテン面が印刷ヘッド側にあるので、常にプラテン面に用紙を押
し付けて密着した状態とし、良好な平面度を確保することができる。つまり、別部品や別
機構を設けてプラテンのプラテン面へロール紙を密着させる構造と比較して、コストアッ
プを極力抑えつつ、用紙の浮きを防止して良好な平面度を維持し、極めて高品質に印刷を
行うことができる。
【0009】
本発明のプリンターにおいて、前記排紙ローラーの用紙搬送速度が前記搬送ローラーの
用紙搬送速度より速い設定であることが好ましい。
この構成によれば、プラテン上の用紙に適度な張力を付与することができ、プラテン面
への用紙の密着性をさらに高めて平面度を向上させることができる。
【0010】
本発明のプリンターにおいて、前記印刷ヘッドが、インクを吐出するインクジェットヘ
ッドであることが好ましい。
インクジェットヘッドによる印刷を行う場合、用紙平面度によって印刷品質が変化しや
すい。この構成によれば、インクジェットヘッドから吐出されたインクを、良好な平面度
でプラテン面上に配置された用紙へむらなく付着させることができ、高品質な印刷処理を
行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプリンターの一実施形態であるインクジェットプリンターの外観斜視図である。
【図2】図1のプリンターからプリンターケースを取り外した状態の側面図である。
【図3】図1のプリンターの搬送機構の概略構成を説明する搬送機構の概略側面図である。
【図4】図1のプリンターの印刷処理部付近の側面図である。
【図5】図1のプリンターの印刷処理部付近におけるロール紙の搬送状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るプリンターの実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンター(プリンター)1は、複数種のカラーイ
ンクを使用してロール紙の繰り出された一部にカラー印刷するものであり、プリンター本
体を覆うプリンターケース2の前面中央には、ロール紙カバー3が開閉自在に設けられて
いる。ロール紙カバー3の横にはインクカートリッジ挿入口8が設けられ、その内側にイ
ンクカートリッジ4が挿入されて収容されている。更に、プリンターケース2の前面には
、電源スイッチ5と共にフィードスイッチ6やインジケーター7等も配置されている。
【0013】
図2に示すように、印刷される媒体であるロール紙(用紙)11は、ロール紙収容部1
2に収容されており、ロール紙カバー3を開くと、ロール紙11を収容したロール紙収容
部12が開放され、ロール紙11の交換が可能になる。
【0014】
ロール紙カバー3はその下端を中心に手前側に回動可能である。ロール紙カバー3の上
部には手前側に印刷後のロール紙が排出される排紙部9が設けられ、排紙部9の手前側先
端には手前側に摺動可能な開閉スライダ10が設けられる。
【0015】
開閉スライダ10に指をかけて前方に引くと、開閉スライダ10が前方に移動してロッ
クが解除される。この状態で、さらに開閉スライダ10を手前に引くと、ロール紙カバー
3が下端を中心に回動して開き、ロール紙カバー3の奥に設けられたロール紙収容部12
が露出され、ロール紙収容部12にロール紙を投入できるように構成されている。
【0016】
図3に示すように、ロール紙収容部12の後方上部には、ロール紙収容部12に収容さ
れたロール紙11をシート状に繰り出す繰り出しローラー34が設けられている。そして
、ロール紙収容部12及び繰り出しローラー34から、ロール紙11をシート状に繰り出
して供給するロール紙供給装置39が構成されている。
【0017】
この繰り出しローラー34の下流側には、ロール紙11を挟持して搬送するメイン送り
ローラー(搬送ローラー)36が設けられている。また、繰り出しローラー34からメイ
ン送りローラー36までの搬送路には、メイン送りローラー36に対するロール紙11の
張力を一定に保つように、付勢部材(図示省略)によって装置後方へ付勢されたテンショ
ンローラー35が設けられている。
【0018】
さらに、メイン送りローラー36の下流側には、ロール紙11を挟持して搬送するフロ
ント送りローラー(排紙ローラー)37が設けられ、メイン送りローラー36とフロント
送りローラー37との間には、プラテン26が設けられている。また、排紙部9には、印
刷されたロール紙11を切断するカッター38が設けられている。
【0019】
ロール紙11は、ロール紙収容部12から引き出され、繰り出しローラー34、テンシ
ョンローラー35、メイン送りローラー36、プラテン26、フロント送りローラー37
を経て、排紙部9から排出される。
【0020】
繰り出しローラー34は、ロール紙収容部12に収容されたロール紙11をシート状に
引き出す紙送り力を発生させている。メイン送りローラー36は、高精度に回転制御され
るもので、ロール紙11を高精度な紙送りピッチで搬送させている。テンションローラー
35は、メイン送りローラー36にかかる負荷を一定に保つことで紙送り精度を安定させ
、かつロール紙11の弛みを一定量保持することで高速送りを実現させている。
【0021】
さらに、フロント送りローラー37は、シート状のロール紙11を十分な挟持力によっ
て挟持しながら排紙部9へ送り出す。これにより、例えば、排紙部9に印刷されて排紙さ
れたロール紙11を引き切った際にも、プラテン26上での紙浮きが防止され、その後も
紙浮きによるジャム障害なく良好に印刷が行われる。
【0022】
また、フロント送りローラー37は、用紙搬送速度がメイン送りローラー36よりも速
い設定とされている。これにより、メイン送りローラー36とフロント送りローラー37
との間において、ロール紙11は、所定の張力が付与された状態となり、プラテン26の
上面における浮き上がりが防がれ、インクジェットヘッド21への付着が防止される。
【0023】
また、図4及び図5に示すように、メイン送りローラー36によってロール紙11を挟
持する位置Aと、フロント送りローラー37によってロール紙11を挟持する位置Bとを
含む仮想的な平面Cに対して、プラテン26の上面からなるプラテン面26aは、インク
ジェットヘッド21側に配置されている。
これにより、メイン送りローラー36とフロント送りローラー37との間で常に張力を
付与されているロール紙11は、常にプラテン26のプラテン面26aに押し付けられて
密着した状態となり、インクジェットヘッド21の下方側において、良好な平面度が確保
される。
【0024】
また、上方側に配置されたメイン送りローラー36は、その中心軸が、下方側に配置さ
れたメイン送りローラー36の中心軸よりも、ロール紙11の搬送方向の下流側にずれた
位置に配置されている。これにより、メイン送りローラー36によって挟持されて搬送さ
れるロール紙11は、プラテン26へ向かって下向きに送り込まれる。つまり、ロール紙
11は、プラテン26のプラテン面26aへ押し付けられる方向に搬送されるので、プラ
テン面26aへの密着性がより高められる。
【0025】
図5に示すように、プラテン面26aのメイン送りローラー36側の端部及びフロント
送りローラー37側の端部は、幅方向にわたってそれぞれ角部26bが形成されている。
これにより、プラテン面26a上のロール紙11は、角部26b同士の間における平面度
が効果的に向上される。
【0026】
図2に示すように、プリンターケース2内のロール紙収容部12の上方には、このイン
クジェットプリンター1の印刷処理部を構成するインクジェットヘッド(印刷ヘッド)2
1を搭載したキャリッジ22が設けられている。キャリッジ22は、ロール紙11の幅方
向に沿って延在するガイド部材23によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、
ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト(図示省略)と無端ベルトを駆動するキャリ
ッジモーター(図示省略)とによって、プラテン26の上方をロール紙11の幅方向に往
復移動可能になっている。キャリッジ22には、インクカートリッジにつながる可撓性を
有するインクチューブ27が接続されており、このインクチューブ27を介してインクカ
ートリッジ4からキャリッジ22のインクジェットヘッド21へインクが供給される。
【0027】
インクジェットプリンター1の幅方向の一方側は、往復移動するキャリッジ22の待機
位置(ホームポジション)となっている。この待機位置の下方には、キャリッジ22の下
面に露出するインクジェットヘッド21の各インクノズル内のインクを吸引するインク吸
引機構(図示省略)が設けられている。
【0028】
そして、上記のインクジェットプリンター1では、往復移動するキャリッジ22のイン
クジェットヘッド21からロール紙11の繰り出された一部に対してインクを吐出して印
刷処理を行う。
【0029】
メイン送りローラー36によってロール紙11を挟持する位置Aと、フロント送りロー
ラー37によってロール紙11を挟持する位置Bとを含む平面Cに対して、プラテン26
の上面からなるプラテン面26aがインクジェットヘッド21側に配置されている。これ
により、ロール紙11は、常にプラテン26のプラテン面26aに押し付けられて密着し
た状態となり、インクジェットヘッド21の下方側において、良好な平面度が確保されて
いる。したがって、インクジェットヘッド21から吐出されたインクを、良好な平面度で
プラテン面26a上に配置されたロール紙11へむらなく付着させることができる。
【0030】
つまり、上記実施形態のインクジェットプリンター1によれば、複雑な吸引機構や静電
搬送機構を設けてプラテン26へロール紙11を密着させる構造と比較して、コストアッ
プを極力抑えつつ、印刷処理部におけるロール紙11の浮きを防止して良好な平面度を維
持し、極めて高品質に印刷を行うことができる
【0031】
特に、フロント送りローラー37によるロール紙11の搬送速度がメイン送りローラー
36によるロール紙11の搬送速度より速い設定であることから、プラテン26上のロー
ル紙11に適度な張力を常に付与することができ、プラテン面26aへのロール紙11の
密着性をさらに高めて平面度を向上させることができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態では、被印刷体である媒体としては、フィルム、布、金属薄板
等を用いてもよい。
【0033】
前述の実施形態に係るインクジェットプリンターに、コンピューター本体、CRT等の
表示装置、入力装置、フレキシブルディスクドライブ装置、及びCD−ROMドライブ装
置がそれぞれ有する機能又は機構の一部を持たせてもよい。例えば、プリンターが、画像
処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影さ
れた画像データーを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部を有する
構成としてもよい。
【0034】
本実施形態に係るプリンター、コンピューター本体、CRT等の表示装置、マウスやキ
ーボード等の入力装置、フレキシブルドライブ装置、及びCD−ROMドライブ装置を備
えたコンピューターシステムとすれば、システム全体として従来システムよりも優れたシ
ステムとなる。
【0035】
上記各実施の形態では、印刷装置としてインクジェットヘッド21からインクを吐出し
て印刷処理を行うカラーインクジェットプリンターを用いたが、用紙に対して印刷処理で
きる印刷装置であれば、これに限られることなく、例えば、モノクロインクジェットプリ
ンター、レーザプリンター、サーマルプリンター、ファクシミリ等に適用しても良い。
【符号の説明】
【0036】
1…インクジェットプリンター(プリンター)、11…ロール紙(用紙)、21…イン
クジェットヘッド(印刷ヘッド)、26…プラテン、26a…プラテン面、36…メイン
送りローラー(搬送ローラー)、37…フロント送りローラー(排紙ローラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに対向するプラテン面を有するプラテンと、
前記プラテンの用紙搬送方向上流側に設けられ前記プラテン面上に向けて用紙を狭持し
つつ搬送する搬送ローラーと、
前記プラテンの用紙搬送方向下流側に設けられ前記プラテン面上から用紙を狭持しつつ
排出する排紙ローラーとを備えたプリンターであって、
前記搬送ローラーによって用紙を狭持する位置と前記排紙ローラーによって用紙を狭持
する位置とを含む平面に対して前記プラテン面が前記印刷ヘッド側に配置されていること
を特徴とするプリンター。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンターであって、
前記排紙ローラーの用紙搬送速度が前記搬送ローラーの用紙搬送速度より速い設定であ
ることを特徴とするプリンター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンターであって、
前記印刷ヘッドが、インクを吐出するインクジェットヘッドであることを特徴とするプ
リンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201224(P2011−201224A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72425(P2010−72425)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】