説明

プリンタ用清掃具

【課題】プリンタに設けたサーマルヘッド等を最適に清掃するとともに、サーマルヘッドの清掃作業の効率を向上させるプリンタの清掃具を提供する。
【解決手段】屈曲可能で液密なフレキシブルチューブの一端に多孔質材からなる拭き取り芯を嵌着し、他端には把持軸を兼ねた清掃液を充填可能なタンクを連結させ、フレキシブルチューブとタンクとを液密に連通させる。フレキシブルチューブの内部には多孔質材からなる導液軸を収容し、導液軸の一端を拭き取り芯の根部に接続するとともに、導液軸の他端をタンク内部に突出させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルやカードのような記録媒体を印字発行するプリンタを清掃する器具、特に、サーマルヘッドや記録媒体の搬送経路の清掃に用いるプリンタ用の清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、オフィス、工場、作業場をはじめとして多くの場所に設置され、ラベル、伝票、荷札、明細票、チケット、会員証、リストバンド、カルテなどの印字媒体の印字発行に用いられる。多くの場合、内容が一片ずつ異なる可変情報を印字して発行するために用いられる。プリンタとしては、サーマル紙を発色させるダイレクトサーマル方式、熱転写リボンを用いる熱転写方式、インクジェット方式、トナー方式等があり、用途に応じて使い分けられて来た。中でも、ダイレクトサーマル方式および熱転写方式は業務用プリンタとして広く使われている。
【0003】
図3および図4にダイレクトサーマル方式のプリンタ50を示す。図3はプリンタ50の斜視図で、蓋体52aを開放した状態を示す。図4はプリンタ50の主要部をシンボル化して示した概略側面図である。このプリンタ50を用い、印字媒体として、長尺帯状の台紙にラベルを一定間隔で仮着したラベル連続体に対し、ラベル一枚毎に文字やバーコードや図柄等の情報を印字する例を説明する。
【0004】
プリンタ50は、印字媒体供給部51と印字部61を筐体52内に設けたものである。印字媒体供給部51の供給軸55にはラベルロール22が回転可能に支持されている。ラベルロールはラベル20の連続体を支管に巻回したものである。ラベル20の走行経路に沿って、ガイドバー56、ラベル20の連続体の有無を検知する用紙センサ57、ラベルのインターバルを検出するピッチセンサ58が取り付けられている。その下流の印字部61は、プラテンローラ62と、前記プラテンローラ62とともにラベル20の連続体を押圧保持するサーマルヘッド63およびヘッド支持機構66で構成される。筐体52には、印字部61の隣接位置に発行口65が設けられる。
【0005】
プラテンローラ62が回転すると、ラベルロール22から巻き出されたラベル20の連続体は、ガイドバー56、用紙センサ57、ピッチセンサ58を経て印字部61に至り、各ラベル20にサーマルヘッド63の発熱走査で文字やバーコード等の画像が印字される。印字が行なわれたラベル20は発行口65から外部に至る。
【0006】
このようなプリンタ50は印字作業を続けるうちに、印字部61のサーマルヘッド63の発熱体やその付近のラベルが擦れる部分に埃やカスが付着してくる。発熱体が汚れると文字やバーコードがかすれる等、印字品質が劣化するので、定期的な保守、清掃作業が必要である。また、ラベル20の搬送経路にあるガイドバー56や、用紙センサ57、ピッチセンサ58等のセンサ類にも紙粉が付着して行くため、それらの清掃も必要である。従来、プリンタの清掃にはウエスまたは綿棒を用い、それらに清掃液を含ませてサーマルヘッド63やプラテンローラ62を拭いたり、搬送経路近傍の部品を清掃していた。
【0007】
しかし、プリンタ50の内部は部品と部品が近接しており清掃を行いにくい。例えば、サーマルヘッド63の周辺にはプラテンローラ62、ヘッド支持機構66の部品がある。機種によっては、ラベル20を一枚ずつ切断するカッター装置(不図示)が配置されている場合もある。具体例として、作業頻度が高いサーマルヘッド63の清掃をあげると、清掃する際にはレバー64(図3参照)を操作してサーマルヘッド63をプラテン62から離間させるヘッドアップ動作を行うが、ヘッドアップした場合でもそれらの隙間は10〜20mm前後と狭い。ウエスを用いてサーマルヘッド63を清掃する場合、サーマルヘッド63の隅まで手が入らないので、充分な清掃ができないという問題がある。また、綿棒を用いる場合、綿棒が折れ易く、サーマルヘッド63を擦るために充分な力を加えられないため、十分な清掃ができないという問題がある。
【0008】
この他、棒の先にフェルトを取り付け、フェルトに清掃液を染み込ませたペン形の清掃具も用いられている。しかし、直線的な棒状のペンでは清掃箇所に届かない場合もあり、狭い箇所でも清掃が可能な清掃具が望まれていた。
【0009】
特許文献1には、握り部の一方に清掃液を含侵させた清掃ヘッドと、他方に拭取りヘッドとを設けた清掃具を用い、ファクシミリ装置におけるイメージセンサの汚れを落とすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平3−66686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような課題に鑑みなされたもので、プリンタのサーマルヘッドをはじめとし、狭い箇所でも清掃可能なプリンタ用清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
【0013】
請求項1に記載の発明は、屈曲可能なフレキシブルチューブの一端に多孔質材からなる拭き取り芯が嵌着され、他端に把持軸が連結しており、前記拭き取り芯に清掃液を含浸可能であることを特徴とするプリンタ用清掃具である。
請求項2に記載の発明は、屈曲可能で液密なフレキシブルチューブの一端に多孔質材からなる拭き取り芯が嵌着され、他端には把持軸を兼ねた清掃液を充填可能なタンクが連結され、前記フレキシブルチューブとタンクとは液密に連通し、前記フレキシブルチューブの内部には多孔質材からなる導液軸が収容され、前記導液軸の一端は該拭き取り芯の根部に接続するとともに、該導液軸の他端はタンク内部に突出していることを特徴とするプリンタ用清掃具である。
プリンタ用清掃具の拭き取り芯はフェルト材で形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプリンタ用清掃具によれば、サーマルヘッドのような狭い箇所に設けられた部品も効率良く清掃可能である。清掃具の先端部を屈曲できて清掃具全体を湾曲可能になる。湾曲させた清掃具先端の拭き取り芯を狭い箇所にも進入させることができるため、清掃に適した角度で被清掃箇所に到達し、効率良く且つ綺麗な清掃が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のプリンタ用清掃具の一実施形態を表す部分切欠き側面図。
【図2】本発明のプリンタ用清掃具の屈曲した状態を示す側面図。
【図3】被清掃物であるプリンタを説明するためのプリンタの一例の斜視図。
【図4】プリンタを清掃する様子を表すプリンタの概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1および図2を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は直線状のプリンタ用清掃具1を一部を切り欠いた側面図、図2は屈曲させた状態の側面図である。
【0017】
本発明のプリンタ用清掃具1は、屈曲可能で液密なフレキシブルチューブ2の一端に多孔質材からなる拭き取り芯4を取付け、他端に中空な把持軸6を連結したものである。
【0018】
フレキシブルチューブ2は、可撓性を有する合成樹脂製チューブの外側にめっきを施した鋼帯を螺旋状に緊密に巻いた屈曲可能な管である。屈曲可能である一方で、鋼帯を緊密に巻いたことによって、屈曲させた形状をそのまま保持する機能を兼ね備えている。フレキシブルチューブ2の内側は合成樹脂製チューブであるため、屈曲した場合でも液密性が保たれる。
【0019】
拭き取り芯4は、多孔質の材料を削って断面矩形状や円形に形成したものである。清掃に用いる先端部4aと根部4bとからなる。根部4bは、フレキシブルチューブ2に接合したリング状の連結部材3に嵌着される。また、拭き取り芯4の根部4bには凹部4cが形成されている。
【0020】
把持軸6はこのプリンタ用清掃具1の操作に用いる円筒形の持ち手である。把持軸6の内部は清掃液8のタンク10になっている。タンク10の開口部10a側にはフレキシブルチューブ2がリング状のシール材(不図示)を介して連結されている。タンク10の端部は清掃液8の注入口であり、着脱可能な底蓋14で封止してある。タンク10内部には繊維束等からなる清掃液吸蔵体16が充填されている。
【0021】
拭き取り芯4の凹部4cには導液軸12の一端が嵌め込まれている。導液軸12は屈曲可能な多孔質材からなる軸であり、フレキシブルチューブ2内を経てタンク10内に突出し、清掃液吸蔵体16に取り囲まれた状態になる。
【0022】
これらの接合、配置により、タンク10とフレキシブルチューブ2の内部が一体化し連通する。タンク10内の清掃液8や清掃液吸蔵体16に染み込んだ状態の清掃液8は、毛細管現象により導液軸12を通って拭き取り芯4に浸入する。拭き取り芯4は清掃液8で湿潤した状態になる。
【0023】
プリンタ用清掃具1の拭き取り芯4側には、拭き取り芯4を保護し、且つ、清掃液の蒸散を防ぐため、連結部材3に外嵌するキャップ18を用意してある(図2参照)。
【0024】
拭き取り芯4や導液軸12にはフェルト材のような多孔質の材料を用いる。フェルト以外でも清掃液を含浸可能な材料であれば、例えば、織布、不織布、発泡材、紙、木材片、繊維を束ねた材料等が使用可能である。
【0025】
拭き取り芯4の先端部4aの形状は任意である。図1ではテーパをつけた平板を例示したが、清掃する対象物に応じ、四角柱形でも先端がドーム状をした円柱でも構わない。
【0026】
把持軸6を兼ねるタンク10の形状は任意である。円筒形の他、例えば断面が四角形でも六角形でも、或いは楕円形でも構わないが、手で握って清掃する作業性を考えると円筒形が好適である。
【0027】
清掃液吸蔵体16には清掃液8が含浸し易い材料を用いる。例えば、織布、不織布、発泡材、繊維を束ねた材料、脱脂綿のような繊維を絡めた材料を使用する。清掃液に溶解したり、含有する成分が溶出しない材料を選べば良い。
【0028】
清掃液8は任意であるが、被清掃物を痛めるリスクを回避するために溶解力が小さい貧溶媒を用いることが望ましい。例えば、エタノールを含む溶剤、IPA(イソプロピルアルコール)を主成分とする溶剤のようなアルコール系の清掃液およびn−ヘキサン等が好適であるが、清掃する対象物に応じて選択すれば良い。
【0029】
このプリンタ用清掃具1は以下のように使用する。ここでは、プリンタ50を保守するための代表的な清掃作業としてサーマルヘッドを清掃する例を説明する。
【0030】
図2に示すようにフレキシブルチューブ2を曲げ、キャップ18を外す。この時点で、タンク10内の清掃液吸蔵体16に含浸された清掃液8は、導液軸12を介してフレキシブルチューブ2内を通り、拭き取り芯4に浸透している。
【0031】
図4に示すプリンタ50は、レバー操作によってサーマルヘッド63をプラテンローラ62から離間した待機状態である。この状態のプリンタ50に対し、プリンタ用清掃具1を発行口65側からプラテンローラ62とサーマルヘッド63間の隙間に進入させ、ヘッドの発熱体側に拭き取り芯4を当接させる。そして拭き取り芯4で擦ることによりサーマルヘッド63の汚れを取り除いていく。フレキシブルチューブ2を曲げることでプリンタ用清掃具1全体が湾曲し、目的の清掃箇所を確実に清掃できる。他の箇所を清掃する時は清掃箇所に応じてフレキシブルチューブ2の曲率を変えれば良い。
【0032】
仮に、プリンタ用清掃具1を湾曲させず、真っ直ぐな棒状のまま清掃を行った場合、プリンタ用清掃具1を発行口65の下端ぎりぎりの位置からサーマルヘッド63に向ける必要が出てくる。この状態で清掃を行っても、拭き取り芯4が清掃箇所に届かない恐れが出てくる。また、プリンタ用清掃具1の把持軸6が発行口65下方の筐体52にぶつかるため、サーマルヘッド63を擦る動作が制約されてしまう。不自然な作業姿勢になることもある。しかし、プリンタ用清掃具1を湾曲させることで上記の不具合が解消される。
【0033】
清掃作業中に、拭き取り芯4に含浸した清掃液8は大気中に蒸散して行くが、タンク10から毛細管現象により導液軸12を通って清掃液8が供給されるため、拭き取り芯4が乾燥することはない。当然ながら、清掃作業終了後はキャップ18を嵌めておく。
【0034】
清掃作業を繰り返して拭き取り芯4が汚れた場合は、図1のように拭き取り芯4を交換する。また、清掃液8が消耗した場合は、タンク10の底蓋14を外して清掃液8を補充すれば良い。
【0035】
また、このプリンタ用清掃具1は拭き取り芯4に清掃液を直接染みこませて清掃に用いることもできる。必ずしもタンク10に清掃液を詰めなくても使用可能である。
【0036】
このように、本発明のプリンタ用清掃具によれば、その先端部を屈曲することでプリンタ用清掃具全体が湾曲可能になり、清掃に適した角度で先端の拭き取り芯を被清掃箇所に到達させられる。従って、プリンタのサーマルヘッドのような狭い箇所に配置された部品も効率良く且つ綺麗に清掃可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1 プリンタ用清掃具
2 フレキシブルチューブ
3 連結部材
4 拭き取り芯
6 把持軸
8 清掃液
10 タンク
12 導液軸
14 底蓋
16 清掃液吸蔵体
18 キャップ
20 ラベル
22 ラベルロール
50 プリンタ
51 印字媒体供給部
52 筐体
55 供給軸
56 ガイドバー
57 用紙センサ
58 ピッチセンサ
61 印字部
62 プラテンローラ
63 サーマルヘッド
64 レバー
65 発行口
66 ヘッド支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能なフレキシブルチューブの一端に多孔質材からなる拭き取り芯が嵌着され、他端に把持軸が連結しており、前記拭き取り芯に清掃液を含浸可能であることを特徴とするプリンタ用清掃具。
【請求項2】
屈曲可能で液密なフレキシブルチューブの一端に多孔質材からなる拭き取り芯が嵌着され、
他端には把持軸を兼ねた清掃液を充填可能なタンクが連結され、
前記フレキシブルチューブとタンクとは液密に連通し、
前記フレキシブルチューブの内部には多孔質材からなる導液軸が収容され、
前記導液軸の一端は該拭き取り芯の根部に接続するとともに、該導液軸の他端はタンク内部に突出していることを特徴とするプリンタ用清掃具。
【請求項3】
前記拭き取り芯がフェルト材で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ用清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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