説明

プリンタ

【課題】 巻き癖によりカールしたプリントペーパPを用いるプリンタにおいて、プリントペーパPを所定長さに切断した後にカール矯正を行う場合に、そのプリントペーパPの長さ方向全体に亘ってカール矯正できるようにする。
【解決手段】 カッター26の可動刃26bに押圧部材33を設け、この押圧部材33が、可動刃26bの移動により、プリントペーパPの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパPの後端部をプリント面側に押圧するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパセット部にロール状に巻かれた状態でセットされた長尺状のプリントペーパをペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送し、このプリント部でプリントペーパのプリント面に対しプリントを行うようにしたプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、写真プリントシステム等に用いられるプリンタは、プリントペーパがセットされるペーパセット部と、このペーパセット部にセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送するための搬送路とを備えている。このプリント部では、プリントペーパに対しプリントヘッドよりインクを吐出する等してプリントが行われ、プリント部でプリントされたプリントペーパは外部へ排出される。
【0003】
上記のようなプリンタにおいては、ロール状に巻かれた長尺状ペーパが用いられており、プリントペーパがロール状に巻かれた状態でペーパセット部にセットされることになる。このため、プリント部へ搬送されるプリントペーパは、そのロールの巻き癖によりカールしている。このロール状に巻かれたプリントペーパのプリント面は、通常、径方向外側にあり、切断後のプリントペーパにおいては長さ方向中央部が両端部に対してプリント面側に突出するようにカールしている。
【0004】
ところが、上記のようにプリントペーパがカールしていると、プリント部におけるプリントペーパの平面性が低下して、特にインクジェットプリンタではプリント品質に悪影響を及ぼす要因となる。このため、従来より、プリント部においてプリントペーパを吸引装置でプリント台に吸引することで、プリントペーパの平面性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、プリント部への搬送路の途中で、プリントペーパを上記カールとは反対側に曲げることでカールを矯正するようにすることも知られており(例えば、特許文献2参照)、このようにプリント部の上流側でカールを矯正するようにすれば、簡易な小型の吸引装置で平面性を確保できる、或いは吸引装置をなくすようにしても平面性を確保できる可能性が高くなる。
【特許文献1】特開2003−260827号公報
【特許文献2】特開平10−86411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のカール矯正方法は、プリントペーパをカールとは反対側に曲がるようにローラに巻き付けるので、カール矯正量はローラの径によってほぼ決まり、このため、プリントペーパのカール量に応じてカール矯正量を木目細かく調整することは困難である。この結果、プリント時に平面性を十分に確保することができなくなる可能性があり、吸引力が大きい大型の吸引装置が必要となって、コストアップを招いてしまう。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように巻き癖によりカールしたプリントペーパを用いるプリンタにおいて、そのプリントペーパを、カール量に応じて適切にカール矯正できるようにして、吸引装置なしで又は小型の吸引装置でプリント部におけるプリントペーパの平面性を十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、カール矯正手段を、切断手段の可動刃と、該可動刃に設けられた押圧部材とで構成し、可動刃の移動により、プリントペーパの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパの後端部を上記押圧部材によりプリント面側に押圧するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、長尺状のプリントペーパがプリント面を外側にしてロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部と、該プリントペーパのプリント面に対しプリントを行うプリント部と、上記ペーパセット部にセットされたプリントペーパを上記プリント部へ搬送するための搬送路と、該搬送路の途中に設けられ、上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパを所定長さに切断する切断手段とを備えたプリンタを対象とする。
【0010】
そして、上記切断手段は、上記プリントペーパのプリント面側に配設された固定刃と、該プリントペーパの該固定刃と反対側から固定刃の配設側に向かって移動することにより、プリントペーパを固定刃と共に挟むようにして切断する可動刃とからなり、上記切断手段の可動刃と、該可動刃に設けられた押圧部材とからなり、可動刃の移動により、上記プリントペーパの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパの後端部を上記押圧部材によりプリント面側に押圧することで、該プリントペーパにおける上記ロールの巻き癖によるカールを矯正するカール矯正手段を備えているものとする。
【0011】
上記の構成により、押圧部材が可動刃と共に移動して、プリントペーパの切断に続けて、切断された所定長さのプリントペーパの後端部をプリント面側に押圧するので、プリントペーパは、ロールの巻き癖によるカールとは反対側に曲げられることとなり、プリントペーパの後端部から先端側の部分がカール矯正される。このとき、プリントペーパのカール量に応じて、可動刃の移動速度や可動刃の切断後のプリントペーパ押圧方向の移動量を変更するようにすれば、カール矯正量を適切に調整することが可能となる。また、押圧部材によるプリントペーパの押圧は可動刃の移動を利用するので、押圧部材を移動させる機構を別途に設ける必要はない。よって、簡単な構成で、プリントペーパを、カール量に応じて適切にカール矯正することができ、吸引装置なしで又は小型の吸引装置でプリント部におけるプリントペーパの平面性を十分に確保できるようになる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、カール矯正手段は、可動刃の移動速度を変更可能に構成されているものとする。
【0013】
このことにより、可動刃の移動速度が遅いほど、カール矯正量は大きくなるので、可動刃の移動速度を、プリントペーパのカール量に応じて適切なカール矯正量となるように変更することで、プリントペーパのカールを適切に矯正することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、カール矯正手段は、可動刃の切断後のプリントペーパ押圧方向の移動量を変更可能に構成されているものとする。
【0015】
このことで、可動刃の切断後のプリントペーパ押圧方向の移動量が大きいほど、カール矯正量は大きくなるので、該移動量を、プリントペーパのカール量に応じて適切なカール矯正量となるように変更することで、プリントペーパのカールを適切に矯正することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のプリンタによると、カール矯正手段を、切断手段の可動刃と、該可動刃に設けられた押圧部材とで構成し、可動刃の移動により、プリントペーパの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパの後端部を上記押圧部材によりプリント面側に押圧するようにしたことにより、可動刃の移動速度や可動刃の切断後のプリントペーパ押圧方向の移動量を変更することで、プリントペーパのカール量に応じて、プリントペーパのカールを適切に矯正することが可能となり、よって、吸引装置なしで又は小型の吸引装置でプリント部におけるプリントペーパの平面性を十分に確保できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを示す。このインクジェットプリンタは、写真プリントシステムに用いられるものであって、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行いかつ必要な補正処理等を行う受付ブロック100(図8参照)と通信ケーブルを介して接続されており、この受付ブロック100から通信ケーブルを介して伝送される画像データをオーダ情報に基づきプリントペーパPに対してプリントを行うようになされている。
【0019】
上記インクジェットプリンタは、筐体1と、この筐体1内の下部に配設されたマガジン収容部2と、筐体1内の上下方向略中央部に配設されたカセット収容部3と、筐体1内の上部に配設され、プリントペーパPに対して画像データのプリントを行うプリント部4と、プリントペーパPをマガジン収容部2からプリント部4へ搬送するための第1搬送路と、プリントペーパPをカセット収容部3からプリント部4へ搬送するための第2搬送路と、プリント部4でプリントされたプリントペーパPを該プリント部4から筐体1の外部へ排出するための第3搬送路と、筐体1の外部に設けられ、第3搬送路により筐体1の外部へ排出されたプリントペーパPを受け止める排出トレイ5とを備えている。尚、筐体前後方向は図1の左右方向であり、筐体前側は図1の右側であり、筐体後側は図1の左側である。また、筐体左右方向は図1の紙面に垂直な方向である。
【0020】
上記マガジン収容部2には、ロール状に巻かれた長尺状ペーパであるプリントペーパPがペーパマガジン8に収容保持された状態でセットされるようになっている。このプリントペーパPは、プリントされるプリント面が外側となるように巻かれている。このことで、マガジン収容部2は、長尺状のプリントペーパがロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部を構成することになる。一方、上記カセット収容部3には、単票紙である複数枚のプリントペーパPが矩形箱状の給紙カセット9内に収容保持された状態でセットされるようになっている。この給紙カセット9内のプリントペーパPは、プリント面を上向きにして厚み方向(上下方向)に重ねられているとともに、押付け板10により、上側に位置する後述の送出しローラ35に押し付けられている。そして、マガジン収容部2又はカセット収容部3にセットされたプリントペーパPが、後述の如くプリント部4へと搬送されて該プリント部4でプリントされ、上記排出トレイ5へ排出されるようになっている。尚、マガジン収容部2には、幅寸法が小さいプリントペーパPを2つ筐体左右方向に並列にセットすることも可能になっており、このように2つ並列にセットした場合には、そのセットされた2つのプリントペーパPがマガジン収容部2から同時に引き出されて2列で搬送され、プリント部4において2つのプリントペーパPにプリントが行われ、排出トレイに同時に排出されることになる。
【0021】
上記筐体1内には、上記第1〜第3搬送路を構成すべく、第1供給ユニットU1、カッターユニットU2、第2供給ユニットU3、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5が設けられている。第1搬送路は、マガジン収容部2から順に、第1供給ユニットU1、カッターユニットU2、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5で構成されている。また、第2搬送路は、カセット収容部3から順に、第2供給ユニットU3、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5で構成されている。さらに、第3搬送路はプリントユニットU5で構成されている。
【0022】
上記第1供給ユニットU1は、マガジン収容部2(ペーパマガジン8)内に設けられている。この第1供給ユニットU1は、ロール状のプリントペーパPを支持する3つの支持ローラ15と、プリントペーパPをカッターユニットU2へと導くガイド部材16と、このガイド部材16の途中に設けられかつプリントペーパPをカッターユニットU2へ搬送するための、駆動及び従動ローラ17a,17bからなる圧着型の供給ローラ17と、ガイド部材16の上流側に設けられ、プリントペーパPが巻き掛けられるガイドローラ18とを備えている。上記3つの支持ローラ15のうち筐体前側に配設されたローラは、不図示の電動モータによって回転駆動されて、プリントペーパPに対しロール中心回りに回転力を付与するようになっている。また、供給ローラ17の駆動ローラ17aは、カッターユニットU2に配設された電動モータ30により、伝動ベルト31及びギヤ列19を介して、同じくカッターユニットU2に配設された後述の送出しローラ25の駆動ローラ25aと共に回転駆動されるようになっている。この第1供給ユニットU1の下流側端には、第1ペーパ検出センサ20が設けられており、この第1ペーパ検出センサ20により、プリントペーパーPがマガジン収容部2から全て引き出された場合の該プリントペーパーPの後端が検出されるようになっている。このプリントペーパーPの後端が検出された場合には、その旨をディスプレイ等を介してオペレータに知らせるようになっている。
【0023】
上記カッターユニットU2は、上下方向に延びる縦フレーム6に固定された状態で第1供給ユニットU1の筐体後側に配設されていて、プリントペーパPをスイッチバックユニットU4へ送り出す圧着型の送出しローラ25と、この送出しローラ25の下流側に配設され、プリントペーパPを切断するための、固定刃26a及び可動刃26bからなるカッター26と、該可動刃26bを駆動する駆動機構等が収容されたカッター駆動部27と、水平方向に延び、プリントペーパPを送出しローラ25からカッター26による切断位置へ案内するガイド部材28とを備えている。
【0024】
上記カッター26の固定刃26aは、不図示の固定部材に固定された状態で、プリントペーパPのプリント面側(上側)に配設されている。一方、可動刃26bは、上記カッター駆動部27により上下方向(プリントペーパPの厚み方向)に直線移動するようになっているとともに、プリントペーパPを切断する前は、プリントペーパPの上記固定刃26aと反対側、つまりプリント面と反対側(下側)に配設されている。これら固定刃26a及び可動刃26bの刃の長さ(プリントペーパPの幅方向に沿った長さ)は、プリントペーパPの幅よりも大きい。そして、可動刃26bがプリントペーパPの下側から固定刃26aの配設側に向かって移動(上方へ移動)することにより、プリントペーパPを固定刃26aと共に挟むようにしてペーパ幅方向全体に亘って略同時に切断するようになっている。このカッター26により、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPが、受付ブロック100からのオーダ情報に基づいて予め決められた長さに切断されるようになっている。尚、上記可動刃26bの上部には、後述の如く、プリントペーパPを、切断後にプリント面側に押圧する押圧部材33が設けられている。
【0025】
上記送出しローラ25は、プリントペーパPを挟持する1つの駆動ローラ25aと2つの従動ローラ25bとからなり、これら従動ローラ25bが1つの圧縮コイルばね29により駆動ローラ25aに押し付けられている。この駆動ローラ25aは、上述の如く、電動モータ30により、第1供給ユニットU1における供給ローラ17の駆動ローラ17aと共に、伝動ベルト31を介して回転駆動されるようになっている。そして、プリントペーパPは、送出しローラ25及びガイド部材28により水平方向で筐体後向きに移動してスイッチバックユニットU4へと送り出され、後述の如くスイッチバックユニットU4のローラ対41に受け取られて把持された後に、カッター26により切断されるようになっている。尚、このようにローラ対41がプリントペーパPを切断前に受け取るのではなくて、切断後に受け取るようにしてもよい。但し、この場合は、カッターユニットU2における搬送路が長くなるため、切断前に受け取るようにするのがよい。
【0026】
上記第2供給ユニットU3は、カセット収容部3にセットされた複数枚のプリントペーパP(単票紙)の最上部に位置するプリントペーパPのプリント面に当接する送出しローラ35と、この送出しローラ35を、ギヤ列37を介して駆動する電動モータ36とを備えており、送出しローラ35の駆動により、最上部に位置するプリントペーパPが1枚だけ水平方向で筐体後向きに移動してスイッチバックユニットU4へと送り出されるようになっている。
【0027】
上記スイッチバックユニットU4は、第1搬送路及び第2搬送路の途中に設けられたペーパ搬送装置兼スイッチバック装置を構成している。このスイッチバックユニットU4は、該スイッチバックユニットU4の上流側に位置する上流側搬送路(つまり第1供給ユニットU1及びカッターユニットU2、又は第2供給ユニットU3)より搬送されてきたプリントペーパPを受け取って、該プリントペーパPを受取り時のプリントペーパ移動方向とは逆向きに、スイッチバックユニットU4の下流側に位置する下流側搬送路(つまりプリントユニットU5)に送り出すようになっている。すなわち、上流側搬送路では、プリントペーパPがプリント面を上向きにした状態で筐体後側に向かって搬送され、該上流側搬送路よりも上側位置に設けられた下流側搬送路では、プリントペーパPがプリント面を上向きにした状態で上流側搬送路とは逆向きの筐体前側に向かって搬送されるが、スイッチバックユニットU4で、プリントペーパPの進行方向が、プリント面を上向きにした状態のまま逆転され、上流側搬送路から下流側搬送路へのプリントペーパPの移行が、プリントペーパPを曲げずにスムーズに行えるようになっている。
【0028】
具体的には、スイッチバックユニットU4は、上流側搬送路より搬送されてきたプリントペーパPを受け取って把持するローラ対41を備えている。本実施形態では、このローラ対41は、それぞれ中心軸回りに正逆回転自在に構成されかつ互いに上下方向に対向してその間にプリントペーパPを挟持するようになっており、このローラ対41のうち一方(プリントペーパPの裏面に接触するローラ)は駆動ローラ41aであり、他方(プリントペーパPのプリント面に接触するローラ)は従動ローラ41bである。そして、駆動ローラ41aは、駆動機構としての電動モータ42及び伝動ベルト43(図2及び図3参照)により、中心軸回りに正逆に回転駆動されるようになっており、この駆動ローラ41aの正転及び逆転により、上流側搬送路からのプリントペーパPの受取り及び引込みと、下流側搬送路へのプリントペーパPの送出しとをそれぞれ行うようになっている。尚、ローラ対41の両方のローラを駆動するようにしてもよく、駆動及び従動の機能を逆にしてもよい。
【0029】
上記ローラ対41は、移動機構によって、カッターユニットU2、第2供給ユニットU3及びプリントユニットU5の筐体後側位置において上下方向に直線移動するようになっている。この移動機構は、図2及び図3に示すように、縦フレーム6に固定されかつ上下及び筐体左右方向に延びるレール架台45と、このレール架台45の筐体左右方向一端部に上下方向に延びるように取り付けられた走行レール46と、この走行レール46の上下両端部近傍にそれぞれ設けられた2つのプーリ47に巻き掛けられ、該走行レール46に沿って延びる駆動ベルト48と、レール架台45に取付固定されかつ下側のプーリ47に直結された電動モータ49とを備えている。この電動モータ49により駆動ベルト48が正逆駆動されるようになっている。そして、駆動ベルト48にはブラケット50が取付固定され、このブラケット50には、走行レール46と嵌合してスライドするスライド部材51が固定されており、電動モータ49による駆動ベルト48の正逆駆動により、ブラケット50が上下方向に往復移動するようになっている。尚、このブラケット50の上下位置は、ブラケット50を検出するセンサ等が設けられた基準位置(例えば最下端)からの移動量(例えばモータの回転量)を計測することで分かるようになっている。
【0030】
上記ブラケット50には、支持板52が固定され、この支持板52に上記ローラ対41における駆動ローラ41a及び従動ローラ41bの各一端部が回転可能に支持されており、このことで、ブラケット50の移動に伴ってローラ対41が上下方向に直線移動することになる。尚、図示は省略するが、駆動ローラ41a及び従動ローラ41bの各他端部は、レール架台45の筐体左右方向他端部に形成された支持部に上下方向にスライド可能に支持されている。
【0031】
上記支持板52に、上述の、駆動ローラ41aを駆動するための電動モータ42が固定されている。この電動モータ42の回転軸及び駆動ローラ41aの一端部には、プーリ54がそれぞれ固定されており、この両プーリ54に上記伝動ベルト43が巻き掛けられて、この伝動ベルト43を介して駆動ローラ41aが駆動されることになる。
【0032】
上記移動機構によって、上記ローラ対41は、上流側搬送路よりプリントペーパPを受け取る受取り位置と該受取り位置に対して所定距離だけ上方に離れた位置に設けられかつ該プリントペーパPを下流側搬送路に送り出す送出し位置との間で直線移動するようになっている。すなわち、上記カッターユニットU2の下流端と略同じ高さ位置(走行レール46の下端近傍位置)が、カッターユニットU2よりプリントペーパPを受け取る受取り位置(以下、第1受取り位置という)とされ、上記第2供給ユニットU3の下流端と略同じ高さ位置(走行レール46の上下方向略中央位置)が、第2供給ユニットU3よりプリントペーパPを受け取る受取り位置(以下、第2受取り位置という)とされている。一方、プリントユニットU5の上流端と略同じ高さ位置(走行レール46の上端近傍位置)が、プリントペーパPをプリントユニットU5に送り出す送出し位置とされている。このように上流側搬送路の下流端と下流側搬送路の上流端とが所定距離(各ユニットU1〜U5の配置により決まる値であり、出来る限り小さい値に設定される)だけ離れており、これに対応してローラ対41が移動することになる。
【0033】
そして、スイッチバックユニットU4は、第1受取り位置においてローラ対41により上流側搬送路(カッターユニットU2)よりプリントペーパPを受け取って把持した後でかつカッター26によりプリントペーパPが切断された後に、又は第2受取り位置においてローラ対41により上流側搬送路(第2供給ユニットU3)よりプリントペーパPを受け取って把持した後に、上記移動機構により、該プリントペーパPを把持したローラ対41を、該プリントペーパPが上流側搬送路から切り離された状態で送出し位置に移動させ、該送出し位置において該プリントペーパPを受取り時のプリントペーパPの移動方向とは逆向きに下流側搬送路に送り出すように構成されている。この下流側搬送路に送り出されるプリントペーパPの移動方向は、水平方向で受取り時の移動方向とは逆向き(筐体前向き)となる。
【0034】
図2に示すように、上記支持板52におけるローラ対41の筐体前後部には、ローラ対41により把持されたプリントペーパPの下側に位置して該プリントペーパPを支持する第1及び第2支持部材56,57がそれぞれ固定されている(図3では図示を省略している)。この第1支持部材56は、プリントペーパPをカッターユニットU2から水平状態でローラ対41に導く役割を有している。この第1支持部材56には、プリントペーパPを検出するための第2ペーパ検出センサ58が設けられている。
【0035】
一方、上記第2支持部材57の筐体後部には、下側に曲げられた曲げ部が形成され、この曲げ部には、押えローラ59が当接している。この押えローラ59は、支持板52に回動自在に支持されたアーム60の先端部に回動自在に取り付けられており、該押えローラ59の自重により第2支持部材57の曲げ部に当接している。そして、この第2支持部材57の曲げ部及び押えローラ59により、ローラ対41により把持されたプリントペーパPが下側に垂れて筐体1の後部内壁面に当接しないようになされている。すなわち、筐体1内におけるスイッチバックユニットU4の筐体後側(ローラ対41に対して上流側搬送路及び下流側搬送路とは反対側における該ローラ対41の移動範囲に対応する部分)には、ローラ対41により把持されるプリントペーパP用の空間スペース12が設けられているが、上記の如くプリントペーパPを下側に垂らすようにすることで、その空間スペース12の筐体前後方向(上流側搬送路の延長方向)に沿った長さを出来る限り小さくすることができる。一方、プリントペーパPを下側に垂らすことで、ローラ対41により把持されるプリントペーパP用の空間スペース12を、上記移動範囲に対応する部分の下方(第1受取り位置よりも下側)に延長する必要があるが、本実施形態では、第1搬送路に関して、スイッチバックユニットU4の上流側に位置する上流側搬送路及び第1受取り位置が、マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPのロール中心よりも上側位置に設けられており、このことで、筐体1の高さを大きくすることなく上記空間スペース12を下方に容易に延長することができる。
【0036】
尚、図示は省略するが、上記第1及び第2支持部材56,57におけるペーパ幅方向両端部には、プリントペーパPの幅方向への移動を規制する規制部材がそれぞれ設けられており、この両規制部材は、ペーパ幅(ペーパマガジン8に設けた識別コード部を検出することでペーパ幅が分かるようになっている)に応じてその間隔を変化可能に構成されている。上述の如くプリントペーパPが2列で搬送される場合には、上記両規制部材間の中央部に更にもう1つの規制部材が搬送路上に進入して、これら3つの規制部材により2列で搬送される各プリントペーパPの幅方向への移動を規制するようになっている。
【0037】
上記プリントユニットU5は、上記縦フレーム6の上端位置において水平方向に延びる横フレーム7に固定された固定台65と、この固定台65の上下方向中間部に設けられ、プリント時にプリントペーパPを支持するプリント台66と、このプリント台66上に位置するプリントペーパPと対向し、該プリントペーパPに対しインクを吐出してプリントを行うプリントヘッド67とを備えている。このプリント台66及びプリントヘッド67が上記プリント部4を構成する。
【0038】
上記プリント台66は、プリントペーパPをファン等によりプリント台66の下側から吸引して吸着保持する構成にはなっておらず、図4に示すように、吸引用孔等を有していない。このプリント台66のペーパ幅方向(図4に示すX方向)両端部には、ペーパ搬送方向(Y方向)に延びる複数(本実施形態では、片側6つずつ)の溝66aがペーパ幅方向に所定間隔をあけて並ぶように形成されている。これら各溝66aは、種々のサイズのプリントペーパPの幅方向両端位置に対応して設けられており、各溝66a内には、上記プリントヘッド67から吐出されたインクがプリントペーパPの幅方向両端から外側に外れた場合(特に縁なしプリントを行う際に外側に外れ易い)に、該インクを吸収するためのインク吸収材68が嵌め込まれている。また、プリント台66のペーパ幅方向中央部には、後述の3つのヘッドユニット67aの各位置にそれぞれ対応して凹部66bが形成されており、この各凹部66b内には、プリントペーパPを2列で搬送してプリントする際に、プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aより予備吐出(プリントを行う前の試し打ち)されたインクを吸収するインク吸収材69が嵌め込まれている。
【0039】
本実施形態では、上記プリントヘッド67は、図4に示すように、その底面(プリント台66と対向する面)に複数のインク吐出ノズル67bが副走査方向(ペーパ搬送方向(Y方向))に列をなすように設けられた3つのヘッドユニット67aを有しており、これら3つのヘッドユニット67aが互いに副走査方向に間隔をあけて並んでいる。尚、各ヘッドユニット67aのノズル列は、図4では1列しか記載していないが、実際には、複数色のインクにそれぞれ対応してペーパ幅方向に複数並ぶように設けられる。また、ヘッドユニット67aは3つである必要はなく、1つや2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0040】
上記プリントヘッド67の上面は、該プリントヘッド67を主走査方向(図1の紙面に垂直な方向(図4に示すX方向))に往復移動させるための駆動ベルト70に取付固定されている。この駆動ベルト70は、主走査方向に延びていて、その両端部にそれぞれ配設されかつ固定台65の上部に回転自在に支持された2つのプーリ71(図1では1つのみ示す)に巻き掛けられている。この一方のプーリ71は、不図示の電動モータにより回転駆動されるようになっている。また、固定台65の上部には、駆動ベルト70に沿って主走査方向に延びるガイドレール72が取付固定されており、プリントヘッド67は、このガイドレール72に案内されながら、駆動ベルト70によって主走査方向に往復移動するようになっている。そして、プリント台66上のプリントペーパPは、プリント台66の上流側に設けられた搬送ローラ75により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向に搬送され、この間欠搬送時におけるプリントペーパPの各停止時に、プリントヘッド67が主走査方向に一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向の各位置で、各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bからインクが吐出される。つまり、プリントヘッド67の一走査後に、プリントペーパPが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッド67が一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像がプリントされることになる。
【0041】
上記搬送ローラ75は、プリントユニットU5の上流側端部(つまり下流側搬送路の上流側端部であって、送出し位置に位置するローラ対41(図5参照)の近傍)に設けられており、送出し位置に位置するローラ対41により送り出されたプリントペーパPを受け取ってプリント部4へ搬送する役割を有している。この搬送ローラ75は、カッターユニットU2における送出しローラ25と同様に、プリントペーパPを挟持する1つの駆動ローラ75aと2つの従動ローラ75bとからなり、2つの従動ローラ75bが1つの圧縮コイルばね76により駆動ローラ75aに押し付けられている。この駆動ローラ75aは、電動モータ77により伝動ベルト78を介して回転駆動されるようになっている。
【0042】
上記搬送ローラ75により挟持されたプリントペーパPにおける該挟持部分の高さ位置は、上記プリント台66の上面よりも高くされており、プリントペーパPは、駆動ローラ75aに巻き掛けられながらプリント台66に対して斜め上方から進入し、プリント台66の上流側端部において該上流側端部に対して上方に隙間があくように支持された案内ローラ79によって、駆動ローラ75aに巻き掛けられた部分とは反対側に曲げられて、プリントペーパPの裏面がプリント台66の上面に略接触した状態で搬送されることになる。
【0043】
一方、プリント台66の下流側には、プリントされたプリントペーパPを筐体1の外部へ排出するための第3搬送路を構成すべく、駆動及び従動ローラ81a,81bからなる2対の圧着型の排出ローラ81が互いにペーパ搬送方向に間隔をあけて設けられている。この各排出ローラ81の駆動ローラ81aは、電動モータ82により伝動ベルト83を介して同時に駆動されるようになっている。そして、下流側の排出ローラ81の高さ位置は上流側の排出ローラ81よりも高く、下流側の排出ローラ81と上流側の排出ローラ81との間には、プリントペーパPを持ち上げて下流側の排出ローラ81へと導くガイド部材84が設けられている。
【0044】
上記のように、プリントペーパPはプリント台66の上流側及び下流側でプリント台66の上面よりも高い位置に持ち上げられているため、プリントペーパPのプリント台66上の部分は、プリント台66の上面に押し付けらるようになる。これにより、プリント台66上でのプリントペーパPの平面性が確保される。特にマガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、上記ロールによる巻き癖によって、長さ方向中央部が両端部に対してプリント面側に突出するようにカールしているが、このようにプリントペーパPがカールしていても、プリント台66に吸着させることなく平面性を確保することができるようになる。尚、本実施形態では、後述の如く、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、カッター26による切断に続いて上記カールが矯正されるので、平面性をより一層向上させることができる。
【0045】
上記排出トレイ5は、筐体1の外部における上記排出ローラ81の筐体前側に設けられていて、筐体1の前方へ突出しており、その先端部には、補助トレイ5aが格納されている。この補助トレイ5aは、排出されるプリントペーパPの長さが排出トレイ5の長さよりも長い場合に、筐体1の前方へ引き出すことで、該長いプリントペーパPを受け止めることができるようになっている。
【0046】
本実施形態では、上記カッター26の可動刃26bと、この可動刃26bの上部に設けられた押圧部材33とが、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPにおける上記ロールの巻き癖によるカールを矯正するカール矯正手段を構成している。
【0047】
具体的には、可動刃26bが、プリントペーパPを切断しようとしてプリントペーパPの下側位置から上方へ移動すると、押圧部材33が可動刃26bと共に上方へ移動して、固定刃26a及び可動刃26bによりプリントペーパPが切断されるのと略同時に、プリントペーパPの裏面に当接する。そして、可動刃26bは切断後も上方へ移動し続け、この可動刃26bの移動により、押圧部材33は、プリントペーパPの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパPの後端部をプリント面側に押圧することになる(図7参照)。この押圧により、プリントペーパPは、上記カールとは反対側に曲げられることとなり、プリントペーパPの後端部から先端側の部分、つまり後端部からローラ対41により挟持された部分までがカールとは反対側に曲げられてカール矯正される。尚、更に先端側の部分をカール矯正する場合には、押圧部材33によりプリントペーパPを押圧した状態で、ローラ対41の駆動ローラ41aを逆転(送出し位置でプリントペーパPを送り出すときと同じ方向に回転)させればよい。
【0048】
上記可動刃26bの移動速度は変更可能になっており、プリントペーパPのカール量に応じて、可動刃26bの移動速度を変更するようにすれば、カール矯正量を適切に調整することが可能となる。すなわち、可動刃26bの移動速度が遅いほど、カール矯正量は大きくなるので、可動刃26bの移動速度を、プリントペーパPのカール量に応じて適切なカール矯正量となるように変更することで、プリントペーパPのカールを適切に矯正することが可能となる。
【0049】
或いは、可動刃26bの切断後のプリントペーパP押圧方向の移動量を変更可能としてもよい。すなわち、その移動量が大きいほど、カール矯正量は大きくなるので、該移動量を、プリントペーパPのカール量に応じて適切なカール矯正量となるように変更することで、プリントペーパPのカールを適切に矯正することが可能となる。
【0050】
上記カール矯正量の調整は、工場等においてインクジェットプリンタの完成後で出荷前に行うようにしてもよく、ユーザが自由に調整できるようにしてもよい。また、インクジェットプリンタ自体が、プリントペーパPのカール量を検出して、自動的に調整を行うようにしてもよい。
【0051】
本インクジェットプリンタは、制御系として、図8に示すように、マイクロプロセッサ101(以下、CPUという)と、このCPU101とデータバスを介して接続された搬送制御部102、ヘッド制御部103、プリント制御部104、半導体メモリRAM/ROM105、通信インタフェース106、上述の第1ペーパ検出センサ20及び第2ペーパ検出センサ58とを備えている。
【0052】
上記搬送制御部102は、上記各ユニットU1〜U5夫々の動作制御を行う。ヘッド制御部103は、プリントヘッド67の動作制御を行う。通信インタフェース106は、受付ブロック100との間で情報の送受信を行うためのものである。プリント制御部104は、受付ブロック100から通信インタフェース106を介して受信した画像データに基づき、プリントペーパPに対して画像データのプリントを実現するための制御を行う。
【0053】
上記搬送制御部102の制御により、上記各ユニットU1〜U5は以下のように動作する。
【0054】
マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、スイッチバックユニットU4のローラ対41を第1受取り位置に位置させておく(図1参照)。そして、第1供給ユニットU1の支持ローラ15及び供給ローラ17並びにカッターユニットU2の送出しローラ25を作動させることにより、プリントペーパPをマガジン収容部2から引き出して、第1受取り位置に位置するローラ対41へと搬送する。
【0055】
上記ローラ対41の駆動ローラ41aは、プリントペーパPの先端が第2ペーパ検出センサ58により検出されたときに駆動し始めて図1及び図2で反時計回り方向に回転(正転)し、カッターユニットU2より水平方向で筐体後向きに搬送されてきたプリントペーパPを受け取って把持する。つまり、プリントペーパPを駆動ローラ41aと従動ローラ41bとの間に挟持する。駆動ローラ41aは駆動し続けて、プリントペーパPを筐体後側の空間スペース12へと引き込む。そして、プリントペーパPの先端が第2ペーパ検出センサ58により検出されてから、オーダ情報に基づいて決定された量だけ搬送した後に、駆動ローラ41aの駆動が停止し(このとき、第1供給ユニットU1の支持ローラ15及び供給ローラ17並びにカッターユニットU2の送出しローラ25の作動も停止する)、この停止後に、カッター26の可動刃26bが上方に移動してプリントペーパPが切断される。上述の如く、この切断後も可動刃26bは上方へ移動し続け、この可動刃26bの移動より、押圧部材33が、切断された所定長さのプリントペーパPの後端部をプリント面側に押圧する(図7参照)。これにより、プリントペーパPにおける後端部からローラ対41により挟持された部分までのカール矯正がなされる。尚、更に先端側の部分をカール矯正する場合には、押圧部材33によりプリントペーパPを押圧した状態で、ローラ対41の駆動ローラ41aを逆転させ、プリントペーパPの先端部がローラ対41により把持されたところで停止する。
【0056】
上記プリントペーパPの切断後(或いは、上記駆動ローラ41aの逆転後)に駆動ローラ41aは再び正転駆動し、切断されたプリントペーパPの後端部がローラ対41により把持されたところで停止する。この段階で、ローラ対41により把持されたプリントペーパPは、上流側搬送路には掛かっておらず、上流側搬送路から切り離された状態となる。尚、上記可動刃26bは、駆動ローラ41aの再駆動の開始と略同時又はその後に、下方に移動して元の位置に戻る。
【0057】
続いて、スイッチバックユニットU4の駆動ベルト48が作動し、ローラ対41が上方に移動して送出し位置で停止する(図5参照)。これにより、プリントペーパPが上流側搬送路(カッターユニットU2)から切り離された状態で受取り位置から送出し位置に搬送される。
【0058】
その後、ローラ対41の駆動ローラ41aが図5で時計回り方向に回転(逆転)し、切断後のプリントペーパPを水平方向で筐体前向きにプリントユニットU5の搬送ローラ75へと送り出す。
【0059】
上記プリントペーパPの送出し時に、プリントペーパPの先端(受取り時の後端)が第2ペーパ検出センサ58により検出され、この検出によりプリントユニットU5の搬送ローラ75が作動を開始する。やがて、搬送ローラ75は、ローラ対41より送り出されたプリントペーパPを受け取ってプリント台66へと送り出す。尚、ローラ対41は、プリントペーパPの後端が第2ペーパ検出センサ58により検出された後に、送出し位置から下方に移動して第1受取り位置に戻る。
【0060】
そして、搬送ローラ75により単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させて、該プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bよりプリント台66上のプリントペーパPに対しインクを吐出することでプリントを行う。
【0061】
上記プリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によって、プリント面を上向きにして筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5によって受け止められる。
【0062】
こうして、マガジン収容部2(ペーパマガジン8)から引き出されたプリントペーパPはカッター26により順次切断されて、この切断されたプリントペーパPが、プリント部4へ順次搬送され、プリント部4で順次プリントされた後、筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5上に重ねられる。
【0063】
一方、カセット収容部3にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、スイッチバックユニットU4のローラ対41を第2受取り位置に位置させておく(図6参照)。そして、第2供給ユニットU3の送出しローラ35の作動により、プリントペーパPをカセット収容部2から引き出して、第2受取り位置に位置するローラ対41へと搬送する。
【0064】
続いて、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、ローラ対41がプリントペーパPの後端部を把持した後、上方に移動して送出し位置で停止する。これにより、プリントペーパPが上流側搬送路(第2供給ユニットU3)から切り離された状態で受取り位置から送出し位置に搬送される。その後、ローラ対41の駆動ローラ41aが逆転して、プリントペーパPを受取り時の移動方向とは逆向きにプリントユニットU5の搬送ローラ75へと送り出す。
【0065】
上記プリントペーパPの搬送ローラ75への送出し時に、プリントペーパPの先端が第2ペーパ検出センサ58により検出され、この検出によりプリントユニットU5の搬送ローラ75が作動を開始する。そして、搬送ローラ75は、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、スイッチバックユニットU4より送り出されたプリントペーパPを受け取って、そのままプリント台66へと搬送する。尚、スイッチバックユニットU4のローラ対41は、第2ペーパ検出センサ58によりプリントペーパPの後端が検出された後に、下方に移動して第2受取り位置へ戻る。
【0066】
そして、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、プリントペーパPを搬送ローラ75により単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させてプリントを行う。このプリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によって、プリント面を上向きにして筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5によって受け止められる。
【0067】
したがって、上記実施形態では、カッター26の可動刃26bに押圧部材33を設け、この押圧部材33が、可動刃26bの移動により、プリントペーパPの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパPの後端部をプリント面側に押圧するようにしたので、プリントペーパPを、巻き癖によるカールとは反対側に曲げてカール矯正することができる。このとき、プリントペーパPのカール量に応じて、可動刃26bの移動速度や可動刃26bの切断後のプリントペーパP押圧方向の移動量を変更するようにすれば、カール矯正量を適切に調整することが可能となる。また、押圧部材33によるプリントペーパPの押圧は可動刃26bの移動を利用するので、押圧部材33を移動させる機構を別途に設ける必要はない。よって、簡単な構成で、プリントペーパPを、カール量に応じて適切にカール矯正することができ、吸引装置なしで又は小型の吸引装置でプリント部におけるプリントペーパの平面性を十分に確保できるようになる。
【0068】
尚、上記実施形態では、プリントペーパPをローラ対41により把持した状態で搬送するスイッチバックユニットU4を設けたが、マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPをペーパマガジン8から引き出してプリント部4へ搬送する搬送機構としては、どのような構成であってもよく、例えばローラのみで搬送するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、マガジン収容部2及びカセット収容部3の両方を設けるようにしたが、マガジン収容部2のみを設けるようにしてもよい。
【0070】
さらに、上記実施形態では、本発明のプリンタを、写真プリントシステムに用いられるインクジェットプリンタに適用したが、長尺状のプリントペーパPがロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部から、該プリントペーパPを引き出してプリント部4へ搬送するようにしたプリンタであれば、本発明はどのようなものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ペーパセット部にロール状に巻かれた状態でセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送するようにしたプリンタに有用であり、特に写真プリントシステムに用いられるインクジェットプリンタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す、筐体側方から見た概略図である。
【図2】スイッチバックユニットの構成を示す、筐体側方から見た図である。
【図3】スイッチバックユニットの要部を示す、筐体後方から見た図である。
【図4】プリント台を示す平面図である。
【図5】スイッチバックユニットのローラ対が送出し位置に位置するときの状態を示す図1相当図である。
【図6】スイッチバックユニットのローラ対が第2受取り位置に位置するときの状態を示す図1相当図である。
【図7】プリントペーパのカールを矯正している状態を示す図1相当図である。
【図8】制御系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
P プリントペーパ
2 マガジン収容部(ペーパセット部)
4 プリント部
26 カッター(切断手段)
26a 固定刃
26b 可動刃
33 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のプリントペーパがプリント面を外側にしてロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部と、該プリントペーパのプリント面に対しプリントを行うプリント部と、上記ペーパセット部にセットされたプリントペーパを上記プリント部へ搬送するための搬送路と、該搬送路の途中に設けられ、上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパを所定長さに切断する切断手段とを備えたプリンタであって、
上記切断手段は、上記プリントペーパのプリント面側に配設された固定刃と、該プリントペーパの該固定刃と反対側から固定刃の配設側に向かって移動することにより、プリントペーパを固定刃と共に挟むようにして切断する可動刃とからなり、
上記切断手段の可動刃と、該可動刃に設けられた押圧部材とからなり、可動刃の移動により、上記プリントペーパの切断に続けて、該切断された所定長さのプリントペーパの後端部を上記押圧部材によりプリント面側に押圧することで、該プリントペーパにおける上記ロールの巻き癖によるカールを矯正するカール矯正手段を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
カール矯正手段は、可動刃の移動速度を変更可能に構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1記載のプリンタにおいて、
カール矯正手段は、可動刃の切断後のプリントペーパ押圧方向の移動量を変更可能に構成されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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