説明

プリンタ

【課題】 ロール紙自動給紙時にロール紙先端部の汚れや破れなどを測定して先端部をカットするロール紙プレカットにおいて、ロール紙の浮き上がりの影響などにより、ロール紙先端部を測定する光学式センサの測定値が変動するため、微小な汚れや傷などが判定できない。
【解決手段】 ロール紙の外径1周以上の長さロール紙を搬送した位置を基準位置として、キャリッジを走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙の紙幅分ロール紙の状態を光学式センサにより測定した測定結果をロール紙状態基準値群とする。ロール紙先端部をキャリッジを走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙の紙幅分ロール紙の状態を光学式センサにより測定した測定結果をロール紙状態判定値群とする。
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジの同一走査位置ごとの測定値の比較を行うことにより、プレカットを実行するか判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙プリント手段とロール紙カット手段とロール紙の状態を測定可能な手段を有するプリンタの先端プレカットに関し、詳しくはロール紙給紙時のロール紙先端プレカット判定手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙プリント手段とロール紙カット手段を有するプリンタにおいて、ユーザの利便性を向上させる目的でロール紙をロールホルダにセットした後に、ロール紙を自動で給紙するロール紙自動給紙手段が備わったプリンタが普及して来ている。ロール紙の材質や紙幅を変更したい場合などにロール紙を取り外して保管する際、ロール紙の取り外し方や保管状態が悪いとロール紙の先端部を破ったり、傷つけたり、汚したりしてしまい、適切な画像をプリントできない状態になってしまうことがある。以下、適切な画像をプリントできる状態を適切な状態と記し、適切な画像が形成できない状態を不適切な状態と記す。
【0003】
ロール紙が不適切な状態でプリントした結果が所望の画像とならない場合、インクと適切な状態部分のロール紙を無駄に消費してしまうため問題となる。
【0004】
このような問題に対して、ロール紙自動給紙時に先端部をカットするロール紙プレカットが行われている。ロール紙プレカットは、3種類の方法に区分できる。
【0005】
1.ロール紙先端部の状態によらず常に先端部をカットする方法。
【0006】
2.ロール紙先端部のカットをユーザに判断してもらう方法。
【0007】
3.ロール紙先端部の状態を光学式センサなどで測定して、ロール紙先端部が不適切な状態の場合に先端部をカットする方法。
【0008】
ロール紙先端部の状態によらず常に先端部をカットする場合、ロール紙先端部が適切な状態でもカットしてしまうため、ユーザに無駄に紙を消費させてしまう。ロール紙先端部のカットをユーザに判断してもらう場合、用紙セットの度にユーザに判断してもらうため不便である。このため、ロール紙先端部の状態を光学式センサで測定して、ロール紙先端部が不適切な状態の場合に先端部をカットする方法がプリンタの手段に導入されて来ている。
【0009】
ロール紙先端部の状態を光学式センサで測定して、ロール紙先端部が不適切な状態の場合に先端部をカットする方法の先行技術として特許文献1が公示されている。
【0010】
特許文献1は、光学式センサを用いてロール紙先端の輪郭を測定し、ロール紙先端部の輪郭が規格値の範囲内に収まっている場合には、カットを省略している。特許文献1の技術は、ロール紙先端部の輪郭を測定してロール紙先端部に破れがあるかどうか判定しているため破れは測定できるが、汚れや傷などの要因によるロール紙の不適切な状態は測定できない。
【特許文献1】特開2001−146052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術では、ロール紙先端部の破れは測定できるが、汚れや傷などの要因によるロール紙の不適切な状態は測定できない。これに対して、ロール紙先端部の状態を光学式センサで測定して閾値と比較し、ロール紙先端部の状態を判定して、ロール紙が不適切な状態の場合に先端部をカットするという方法が考えられる。この方法を低コストで簡易な構成の光学式センサを用いて実行すると、図1に示すように、ロール紙が適切な状態でもキャリッジの走査位置によって、光学式センサの測定値が変動する。
【0012】
光学式センサの測定値が変動する原因は、ロール紙と光学式センサのギャップが変わることや、プラテン形状の影響などにより発生したロール紙の微小な浮き上がりの傾斜部を測定することにより、光学式センサの受光量が変動するためである。
【0013】
プラテン形状とロール紙の浮き上がりの関係を図2に示す。図2に示す401はプラテンであり、100はロール紙であり、図2の矢印(α)はキャリッジの走査方向である。
【0014】
図2(a)に示すようなロール紙の浮き上がりが発生していない位置と、図2(b)に示すようなロール紙の浮き上がりの傾斜位置と、図2(c)に示すようなロール紙の浮き上がりの頂点位置では、それぞれ光学式センサの受光量が異なる。このため、ロール紙が適切な状態でもキャリッジの走査位置によって、光学式センサの受光量が異なるため光学式センサの測定値が変動する。
【0015】
このように、ロール紙の状態が適切な状態であっても、図1の矢印(a)に示すように、ロール紙の浮き上がりなどの原因により光学式センサの測定値が幅を持つため、この測定値の幅よりも測定変動が小さい微小な汚れや傷などを検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ロール紙の外径1周以上の長さのロール紙を搬送した位置を基準位置として、キャリッジを走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙の紙幅分ロール紙の状態を光学式センサにより測定した測定結果をロール紙状態基準値群とする。ロール紙先端部をキャリッジを走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙の紙幅分ロール紙の状態を光学式センサにより測定した測定結果をロール紙状態判定値群とする。
【0017】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジの同一走査位置ごとの測定値の比較を行うことで、ロール紙先端部が適切な状態か不適切な状態か判定して、ロール紙先端部が不適切な状態の場合、ロール紙先端部のプレカットを実行する。
【0018】
キャリッジの走査位置によって、ロール紙と光学式センサのギャップやロール紙の浮き上がり量は異なるが、キャリッジの走査位置が同じであれば、ロール紙と光学式センサのギャップやロール紙の浮き上がり量はロール紙を搬送しても再現性がある。この再現性を利用する。
【0019】
ロール紙の状態が適切な状態を測定した光学式センサの測定値を基準値とし、ロール紙先端部の光学式センサの測定値との比較をキャリッジの同一走査位置同士の測定値によって行い、ロール紙の状態を判定する。この判定をロール紙幅分行うことで、ロール紙と光学式センサのギャップやロール紙の浮き上がり量の違いによる影響を減少させて、ロール紙の状態を判定することができる。
【0020】
ロール紙の外径1周以上の長さロール紙を搬送した位置は、最外周を覆っていた紙により、汚れなどが付かない状態であるため、ロール紙の外径1周以上の長さロール紙を搬送した位置をロール紙が適切な状態である位置と考えて基準位置とする。
【発明の効果】
【0021】
このような方法を用いることで、ロール紙の状態の判定精度を向上させることができるため、無駄な紙の消費を削減することができる。
【0022】
本発明書では、ロール紙の自動給紙時にロール紙先端部の状態を判定して、ロール紙の状態判定後にプレカットを実行しない場合も含めて、プレカットシーケンスと呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1として、ロール紙プリント手段とロール紙カット手段とロール紙の状態を測定可能な手段を有するインクジェットプリンタ(以後、IJPと略す)を用いて、請求項1に関して説明する。なお、本発明はこの実施例に限るものではなく、他構造のロール紙プリント手段とロール紙カット手段とロール紙の状態を測定可能な手段を有するプリンタに適用できる。
【0025】
図3はIJPの全体構成を示す概略断面図であり、図4はロール紙の搬送方向とキャリッジの走査方向を示す上面図である。図4の矢印(α)は、キャリッジの走査方向を示しており、
図4の矢印(β)は、ロール紙の搬送方向を示しており、図4の(γ)はキャリッジのホームポジションを示している。
【0026】
ロール紙シャフト101にロール紙100を取り付けて、ロール紙給紙ホルダ11にロール紙を格納する。ロール紙給紙ホルダ11から給紙してプリントされたロール紙は排紙トレイ12に排紙される。
【0027】
キャリッジユニット21は、プリントヘッドと用紙測定センサ22を搭載しており、キャリッジシャフト102に沿って、ロール紙の搬送方向と略垂直に走査する。キャリッジユニット21が走査方向に反復動作しながら、プリントヘッドがインクを吐出してロール紙100にプリントする。また、キャリッジユニット21が走査方向に反復動作しながら、用紙測定センサ22によりロール紙100の状態を測定する。
【0028】
図5に用紙測定センサ22の構成と、用紙測定センサ22を用いてロール紙100を測定している状態を示す。用紙測定センサ22は、発光用LED23と受光用フォトトランジスタ24から構成され、発光用LED23により発光された光がロール紙100によって反射されて、受光用フォトトランジスタ24が反射光を受光してロール紙100の状態を測定する。受光用フォトトランジスタ24の受光量は、ロール紙100が適切な状態でも、ロール紙100と用紙測定センサ22のギャップにより変化し、ロール紙100と用紙測定センサ22のギャップが同じでも、汚れなどにより変化する。
【0029】
31はカッターユニットであり、排紙口に位置している。カッターユニット31は、丸刃カッター301と下刃カッター302から構成される。丸刃カッター301がロール紙搬送方向と略垂直に動作することにより、ロール紙100をカットして、排紙トレイ12に排紙する。
【0030】
ロール紙検出センサ41は、ロール紙100の有り無しを検出するフォトインタラプタである。ロール紙検出センサ41は、図6(a)に示すようにフラグ201と一緒に配置されており、フラグ201によりセンサのオープン、クローズが行われる。図6(b)に示すように、ロール紙100がフラグ201を押し上げることで、ロール紙有り状態の時はロール紙検出センサ41をオープン状態にする。図6(c)に示すように、ロール紙100が無い時はフラグ201により遮蔽され、ロール紙検出センサ41はクローズ状態になる。なお、プレカットシーケンスは、ロール紙100をロール紙給紙ホルダ11に格納後、ロール紙検出センサ41がオープン状態になるまでロール紙100が通紙されることで開始される。
【0031】
給紙検出センサ42は、ロール紙100が通過したことを検出するフォトインタラプタであり、ロール紙検出センサ41と同様にフラグ202によりセンサのオープンとクローズが行われる構造である。給紙検出センサ42通紙後のモータ回転数、回転角度により、ロール紙100の搬送量を制御する。
【0032】
図7にロール紙100の搬送経路を示す。図7の搬送経路のように、ロール紙100はロール紙給紙ホルダ11から給紙される。ロール紙給紙ホルダ11に搭載される図示しないモータを駆動してロール紙シャフト101を回転させてロール紙100を搬送する。給紙検出センサ42通紙後のモータ回転数、回転角度によりロール紙100の搬送量を制御して、搬送ローラ103までロール紙100を搬送する。ロール紙100の搬送をロール紙給紙ホルダ11に搭載するモータから、搬送ローラ103に搭載する図示しないモータに切り替えて搬送する。ロール紙100は、搬送ローラ103とコロ106に挟まれて搬送され、搬送ローラ103と同期して回転する搬送ローラ104とコロ107、搬送ローラ105とコロ108により搬送され、カッターユニット31によりカットされて、排紙トレイ12に排紙される。ただし、図7はカッターユニット31により、ロール紙100がカットされて排紙トレイ12に格納された状態とする。
【0033】
次に、プレカットシーケンスのフローチャートを図8に示し、プレカットシーケンスにおけるロール紙搬送の流れと用紙測定センサ22による測定位置の流れを図9に示す。ただし、図8に示すシーケンスは、ロール紙先端部の測定回数が1回の場合のシーケンスである。
【0034】
図9の矢印(α)は、キャリッジ21の走査方向を示しており、図9の矢印(β)は、ロール紙100の先端エッジからロール紙100の外径1周以上の長さを示しており、図9のハッチング(γ)は、用紙測定センサ22の測定範囲を示している。
【0035】
図8に示すプレカットシーケンスは、ユーザによりロール紙100がロール紙給紙ホルダ11に格納された後、ロール紙検出センサ41がオープン状態になるまでロール紙100を通紙することで開始される。
【0036】
ロール給紙検出センサ41がロール紙100を検出後、ロール紙シャフト101を回転させてロール紙100を搬送し、給紙検出センサ42を通過させ、搬送ローラ103、コロ106を通過させる。図9(a)に示すように、用紙測定センサ22による測定位置が、ロール紙100の先端エッジからロール紙100の外径1周以上の長さロール紙100を搬送した位置となるように、ロール紙100を搬送する。
【0037】
次に、キャリッジ21を走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙幅分ロール紙100の状態を測定する。ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態基準値群とする。
【0038】
次に、図9(b)に示すように、ロール紙先端部の状態を測定するためにロール紙100を巻き戻し、キャリッジ21を走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙幅分ロール紙100の状態を測定する。ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態判定値群とする。
【0039】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値を比較してロール紙先端部の状態を判定する。実施例1では、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えるかどうかでロール紙先端部の状態を判定するが、基準値群からの差異を評価する他の前処理演算が施されてもよい。例えば、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの差の絶対値が閾値を超えるかどうかで判定してもよい。
【0040】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えた場合、ロール紙100の先端部は不適切な状態と判定する。ロール紙100を特定の長さ搬送してカッターユニット31により先端部をカットし、ロール紙100の先端部をカットした後は、図9(c)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンスが終了する。
【0041】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値以内の場合、ロール紙100の先端部の適切な状態と判定する。ロール紙先端部が適切な状態のためプレカットは行なわず、図9(c)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンスが終了する。
【0042】
ここで、ロール紙100の状態測定の実測例として、図10にロール紙状態基準値群の実測例を示し、図11にロール紙状態判定値群の実測例を示す。図12にロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗の実測例を示す。図12に示す線(a)は閾値である。
【0043】
図10に示すロール紙状態基準値群と図11に示すロール紙状態判定値群が略一致している箇所は、汚れなどがない箇所である。図11の点線の丸で囲んだ箇所が、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群の値に差がある箇所であり、ロール紙に汚れがあった箇所である。
【0044】
図11の実測例に示す不適切な状態の測定値は、ロール紙100と用紙測定センサ22のギャップが変わることや、ロール紙100の微小な浮き上がりなどによる用紙測定センサ22の測定値の振れ幅よりも、測定値の変動が小さい。しかし、図12に示すように、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジの同一走査ごとの測定値の差分の二乗を閾値と比較することで、ロール紙100が不適切な状態であると判定できる。
【0045】
このように、本発明を用いるとキャリッジ21の走査位置の違いによる測定値の変動の影響を減少させて、ロール紙先端部の汚れや傷などの判定精度を向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の請求項1について記した。次に、プレカットシーケンスの汎用例として、プレカットシーケンスに斜行検知とロール紙幅測定を組み込んだプレカットシーケンスを示す。このシーケンスをプレカットシーケンス2と呼ぶ。
【0047】
装置の全体構成については上記の構成と同等であるため詳しい説明は省略し、以下特徴についてのみ説明する。
【0048】
図13にプレカットシーケンス2のフローチャートを示し、図14にプレカットシーケンス2におけるロール紙搬送の流れと用紙測定センサ22による測定位置の流れを示す。ただし、図13に示すシーケンスは、ロール紙先端部の測定回数が1回の場合のシーケンスである。
【0049】
図14の矢印(α)は、キャリッジ21の走査方向を示しており、図14の矢印(β)は、ロール紙100の先端エッジからロール紙100の外径1周以上の長さを示しており、図14のハッチング(γ)は、用紙測定センサ22の測定範囲を示している。
【0050】
図13に示すプレカットシーケンス2は、ユーザによりロール紙100がロール紙給紙ホルダ11に格納された後、ロール紙検出センサ41がオープン状態になるまでロール紙100を通紙することで開始される。
【0051】
ロール紙検出センサ41がロール紙100を検出後、ロール紙シャフト101を回転させてロール紙100を搬送し、給紙検出センサ42を通過させ、搬送ローラ103、コロ106を通過させる。図14(a)に示す位置までロール紙100を搬送して、ロール紙100の先端側端位置を用紙測定センサ22を用いて測定して、側端値1とする。
【0052】
次に、図14(b)に示すように、用紙測定センサ22による測定位置が、ロール紙の先端エッジからロール紙100の外径1周以上の長さロール紙100を搬送した位置となるように、ロール紙100を搬送する。そして、ロール紙100の側端位置を用紙測定センサ22を用いて測定して、側端値2とする。
【0053】
側端値1と側端値2の差分を閾値と比較することで、ロール紙100が斜行しているか判定する。ロール紙100が斜行しているならば、ロール紙100を巻き戻して、図示しない操作パネルなどに再セットを促す。
【0054】
ロール紙100が斜行していないならば、図14(c)に示すようにキャリッジ21を走査しながら、一定の走査間隔毎に側端値2の逆側の側端を検出するまで、ロール紙100の状態を測定する。
【0055】
ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態基準値群とし、側端値2の逆側の側端位置を側端値3とする。側端値2と側端値3の差分をロール紙幅値として保存する。
【0056】
次に、図14(d)に示すように、ロール紙先端部の状態を測定するためにロール紙100を巻き戻し、キャリッジ21を走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙100の状態をロール紙幅分測定する。ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態判定値群とする。
【0057】
実施例2では、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えるかどうかでロール紙先端部の状態を判定するが、基準値群からの差異を評価する他の前処理演算が施されてもよい。例えば、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの差の絶対値が閾値を超えるかどうかで判定してもよい。
【0058】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えた場合、ロール紙100の先端部は不適切な状態と判定する。ロール紙100を特定の長さ搬送してカッターユニット31により先端部をカットし、ロール紙100の先端部をカットした後は、図14(e)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンス2が終了する。
【0059】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値以内の場合、ロール紙100の先端部の適切な状態と判定する。ロール紙先端部が適切な状態のためプレカットは行わず、図14(e)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンス2が終了する。
【0060】
このプレカットシーケンスの汎用例に示すように、プレカットシーケンスに斜行検知やロール紙幅測定を組み込んでも、図12と図14の違い程度で本発明を実行できることから、本発明は実用的である。
【実施例2】
【0061】
本発明の請求項2の説明として、ロール紙の材質によりロール紙プレカット判定の閾値を変化させるプレカットシーケンスを実施例2に示す。
【0062】
装置の全体構成とシーケンスについては前述した実施例1と同等であるため詳しい説明は省略し、以下特徴についてのみ説明する。なお、本発明はこの実施例に限るものではなく、他構造のロール紙プリント手段とロール紙カット手段とロール紙の状態を測定可能な手段を有するプリンタに適用できる。
【0063】
ロール紙の材質として、光沢紙などの高画質用の材質を用いてプリントする場合、ロール紙先端部に微小な汚れがあっても画質に影響が出ることから、微小な汚れに対してもプレカットの実行が望まれる。これに対し、ロール紙の材質として、普通紙などの光沢紙などと比べて高価ではない材質を用いてプリントする場合、微小な汚れがあって画質に多少の影響が出ても問題視しないケースが考えられる。
【0064】
そこで、ロール紙プレカットの判定に用いる閾値をロール紙の材質により変更させる。実施例1では、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えるかどうかでロール紙先端部の状態を判定しているが、この閾値をロール紙100の材質によって変化させる。
【0065】
図15にロール紙100の状態判定を行うために、ロール紙100の材質によって、閾値を2種類持つ場合の、閾値の違いを示す。図15に示す線(a)と線(b)が閾値である。ロール紙100の材質が光沢紙などの高画質用の材質であれば、閾値(a)のようにロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群の差分の二乗が小さい閾値とする。ロール紙100の材質が普通紙などの光沢紙などと比べて高価ではない材質であれば、閾値(b)のようにロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群の差分の二乗が閾値1よりも大きい値とする。
【0066】
このようにロール紙100の材質によりロール紙プレカットの判定閾値を変更させることで、ロール紙100の無駄な消費をさらに削減することができる。
【実施例3】
【0067】
本発明の請求項3の説明として、先端部を複数回測定するプレカットシーケンスを実施例3に示す。このシーケンスをプレカットシーケンス3と呼ぶ。
【0068】
前記ロール紙先端部の測定範囲はロール紙先端のエッジからロール紙の外径1周以上の長さの範囲とし、前記用紙測定センサを用いて複数回測定することで前記ロール紙先端部の測定範囲全域を測定する。
【0069】
装置の全体構成については前述した実施例1と同等であるため詳しい説明は省略し、以下特徴についてのみ説明する。なお、本発明はこの実施例に限るものではなく、他構造のロール紙プリント手段とロール紙カット手段とロール紙の状態を測定可能な手段を有するプリンタに適用できる。
【0070】
ロール紙の材質として、光沢紙のような高価な材質を使用する場合、ロール紙の状態の測定に多少の時間が掛かっても、ロール紙の無駄な消費を避けたい状況が考えられる。これに対し、ロール紙先端エッジ近傍だけでなく、ロール紙に不適切な状態がある可能性がある範囲をロール紙先端部と考えて、広範囲にロール紙先端部の状態を測定する。
【0071】
この実施例3では、ロール紙の先端エッジからロール紙の外径1周の長さの範囲をロール紙の先端部として、用紙測定センサ22を用いてロール紙100の状態を複数回測定することで、広範囲にロール紙先端部の状態を判定する。
【0072】
プレカットシーケンス3のフローチャートを図16に示し、プレカットシーケンスに3おけるロール紙100の搬送の流れと用紙測定センサ22による測定位置の流れを図17に示す。図17の矢印(α)は、キャリッジ21の走査方向を示しており、図17の矢印(β)は、ロール紙100の先端エッジからロール紙100の外径1周の長さを示しており、図17のハッチング(γ)は、用紙測定センサ22の測定範囲を示している。
【0073】
図16に示すプレカットシーケンス3は、ユーザによりロール紙100がロール紙給紙ホルダ11に格納された後、ロール紙検出センサ41がオープン状態になるまでロール紙100を通紙することで開始される。
【0074】
ロール紙検出センサ41がロール紙100を検出後、ロール紙シャフト101を回転させてロール紙100を搬送し、給紙検出センサ42を通過させ、搬送ローラ103、コロ106を通過させる。図17(a)に示すように、用紙測定センサ22による測定位置が、ロール紙の先端エッジからロール紙100の外径1周の長さとなるようにロール紙100を搬送する。
【0075】
次に、キャリッジ21を走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙幅分ロール紙100の状態を測定する。ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態基準値群とする。
【0076】
次に、図17(b)に示すように、ロール紙先端部の状態を測定するためにロール紙100を巻き戻し、キャリッジ21を走査しながら一定の走査間隔毎にロール紙幅分ロール紙100の状態を測定する。ロール紙幅分測定した測定結果は、複数の測定値から成る測定値群であり、この測定値群をロール紙状態判定値群とする。
【0077】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値を比較してロール紙先端部の状態を判定する。実施例3では、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えるかどうかでロール紙先端部の状態を判定するが、基準値群からの差異を評価する他の前処理演算が施されてもよい。例えば、ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの差の絶対値が閾値を超えるかどうかで判定してもよい。
【0078】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値を超えた場合、ロール紙100の先端部は不適切な状態と判定する。ロール紙100を特定の長さ搬送してカッターユニット31により先端部をカットし、ロール紙100の先端部をカットした後は、図17(d)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンス3が終了する。
【0079】
ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジ21の同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗が閾値以内の場合、ロール紙100の先端部の適切な状態と判定する。ロール紙先端部が適切な状態のためプレカットは行わず、図17(c)に示すように、ロール紙100を特定の長さ巻き戻す。
【0080】
以後、ロール紙幅分の状態を測定、ロール紙の状態判定を行い、ロール紙が不適切な状態ならばロール紙100を特定の長さ搬送してカットし、ロール紙が適切な状態ならばロール紙100を特定の長さを巻き戻す動作を繰り返す。
【0081】
ロール紙100の先端エッジ部まで測定が終了したら、図17(d)に示すように、ロール紙100を待機位置まで巻き戻し、プレカットシーケンス3を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】キャリッジの走査位置と光学式センサの測定値の例
【図2】プラテンとロール紙の浮き上がりの例。
【図3】IJPの概略断面図。
【図4】ロール紙の搬送方向とキャリッジの走査方向を示す上面図。
【図5】用紙測定センサの構成。
【図6】フォトインタラプタとフラグの関係。
【図7】ロール紙の搬送経路。
【図8】プレカットシーケンス(先端部の測定回数1回)のフローチャート。
【図9】プレカットシーケンス(先端部の測定回数1回)におけるロール紙搬送の流れと用紙測定センサの測定位置。
【図10】ロール紙状態基準値群の実測例
【図11】ロール紙状態判定値群の実測例
【図12】ロール紙状態基準値群とロール紙状態判定値群のキャリッジの同一走査位置ごとの測定値の差分の二乗の実測例
【図13】斜行検知と用紙幅測定を含むプレカットシーケンス(先端部の測定回数1回)のフローチャート。
【図14】斜行検知と用紙幅測定を含むプレカットシーケンス(先端部の測定回数1回)におけるロール紙搬送の流れと用紙測定センサの測定位置。
【図15】ロール紙の材質の違いによる閾値の変更例
【図16】プレカットシーケンス(先端部の測定回数複数回)のフローチャート。
【図17】プレカットシーケンス(先端部の測定回数複数回)におけるロール紙搬送の流れと用紙測定センサの測定位置。
【符号の説明】
【0083】
1 IJP本体
11 ロール紙給紙ホルダ
12 排紙トレイ
21 プリントヘッドと用紙測定センサが搭載されたキャリッジユニット
22 用紙測定センサ
23 発光用LED
24 受光用フォトトランジスタ
31 カッターユニット
41 ロール紙検出センサ
42 給紙検出センサ
100 ロール紙
101 ロール紙シャフト
102 キャリッジシャフト
103〜105 搬送ローラ
106〜108 コロ
201、202 フラグ
203 フラッパ
301 丸刃カッター
302 下刃カッター
401 プラテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから構成されるプリントヘッドを搭載したキャリッジを駆動してプリントを行うプリンタにおいて、前記プリンタはロール紙にプリント可能な手段を有し、前記プリンタはロール紙切断手段を有し、前記キャリッジは光学式の用紙測定センサを搭載しており、ロール紙先端のエッジからロール紙の外径1周以上の長さロール紙を搬送した基準位置を前記キャリッジを走査しながら前記用紙測定センサを用いて紙幅分測定した測定値と、ロール紙先端部を前記キャリッジを走査しながら前記用紙測定センサを用いて紙幅分測定した測定値の前記キャリッジの同一走査位置の測定値同士を比較することによりプレカットを実行するか判定するプレカット判定手段を有し、前記プレカット判定手段の判定に基づき前記ロール紙切断手段によりプレカットを実行することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項2】
前記プレカット判定手段は前記測定値同士の比較値が閾値を超えるかどうかで判定を行い、
前記閾値はロール紙の材質により可変であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記ロール紙先端部の測定範囲はロール紙先端のエッジからロール紙の外径1周以上の長さの範囲とし、前記用紙測定センサを用いた複数回の測定により前記ロール紙先端部の測定範囲全域を測定することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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