説明

プリンタ

【課題】複数のマガジンを備えたプリンタにおいて、簡単な構成で、各マガジンのペーパ導出開口部11c,60cを常に閉塞できるようにする。
【解決手段】供給ローラ24の駆動力を各送出ローラ10,64へそれぞれ伝達する伝達機構に、伝達状態と伝達解除状態とに切り替える切替機構(第1及び第2電磁クラッチ40,45)をそれぞれ設け、各送出ローラ10,64を、各マガジンのペーパ導出開口部11c,60cをそれぞれ閉塞するローラとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれた長尺状のペーパを収容する複数のマガジンを備え、該複数のマガジンのペーパを択一的に引き出して印刷部へ搬送するようにしたプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、写真プリントシステム等に用いられるプリンタは、ロール状に巻かれた長尺状のペーパが収容されるペーパ収容部と、前記ペーパに対して印刷を行う印刷部と、前記ペーパ収容部に収容されたペーパを該ペーパ収容部から引き出して前記印刷部へ搬送する搬送機構とを含むプリンタ本体部を備えている。
【0003】
また、ペーパ収容部のペーパを取り替えることなく複数の種類のペーパに対して印刷できるように、例えば特許文献1に示されているように、プリンタ本体部の外側に予備のマガジンを着脱可能に構成したプリンタが知られている。また、プリンタ本体部内に複数のペーパ収容部(マガジンと見做すことができる)を配設したプリンタもある。
【0004】
このようにプリンタ本体部の内外に複数のマガジンを備えたプリンタでは、通常、前記特許文献1に示されているように、複数のマガジンのペーパの、マガジンから印刷部への搬送経路が、該複数のマガジンにそれぞれ対応して設けられかつ下流側端部で互いに合流する複数の上流側搬送経路と、該合流部に続く下流側搬送経路とからなっている。
【0005】
そして、前記複数のマガジンからペーパを択一的に引き出して前記印刷部へ搬送する搬送機構としては、前記合流部に設けられかつ複数のマガジンのペーパを印刷部へ択一的に供給する供給ローラと、前記各マガジンにそれぞれ設けられ、該マガジンのペーパを前記供給ローラへ送り出すための送出ローラと、前記供給ローラの駆動力を前記各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構とを有している。
【0006】
ここで、前記特許文献1では、前記各送出ローラは、供給ローラが回転しているときには常に回転してペーパを送り出そうとするため、他のマガジンからペーパが送り出されているときには、ペーパを送り出さないように、ペーパへの圧着を解除するようにしている。
【特許文献1】特開2006−327806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、マガジン内のペーパが湿気ると、ペーパが波打ったりインクが滲み易くなったりするとともに、乾燥し過ぎると、ペーパの印刷面にヒビ割れが生じたりペーパの幅方向中央部が幅方向両端部に対して印刷面側へ突出するようなカールが発生したりして、これにより、印刷に悪影響を及ぼす可能性が高くなることから、マガジンは出来る限り密閉構造にしておくことが好ましい。
【0008】
このような観点から、マガジンのペーパ導出開口部を閉塞するシャッタを設けることが考えられるが、このようにすると、シャッタの開閉機構が必要になり、コストアップやスペースの増大を招く。
【0009】
一方、前記シャッタの代わりに、前記送出ローラによりペーパ導出開口部を閉塞するようにすることが考えられるが、複数のマガジンのうちペーパが引き出されないマガジンの送出ローラは、前記特許文献1の如くペーパへの圧着を解除しておく必要があり、このように圧着を解除した状態にあると、ペーパと送出ローラとの間に隙間が生じて、ペーパ導出開口部を閉塞することができなくなってしまう。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のマガジンを備えたプリンタにおいて、簡単な構成で、各マガジンのペーパ導出開口部を常に閉塞できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、この発明では、供給ローラの駆動力を各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構に、供給ローラの駆動力を送出ローラへ伝達することを可能にする伝達状態と該伝達を不能にする伝達解除状態とに切り替える切替機構をそれぞれ設け、各送出ローラにより、各マガジンのペーパ導出開口部をそれぞれ閉塞するようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、ロール状に巻かれた長尺状のペーパを収容する複数のマガジンと、前記ペーパに対して印刷を行う印刷部と、前記複数のマガジンからペーパを択一的に引き出して前記印刷部へ搬送する搬送機構とを備えたプリンタを対象とする。
【0013】
そして、前記複数のマガジンのペーパの、マガジンから印刷部への搬送経路は、該複数のマガジンにそれぞれ対応して設けられかつ下流側端部で互いに合流する複数の上流側搬送経路と、該上流側搬送経路に前記合流部を介して続く共通の下流側搬送経路とからなり、前記搬送機構は、前記合流部に設けられ、前記複数のマガジンのペーパを前記印刷部へ択一的に供給する供給ローラと、前記各マガジンにそれぞれ設けられ、該マガジンのペーパを前記供給ローラへ送り出すための送出ローラと、前記供給ローラの駆動力を前記各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構と、前記各伝達機構にそれぞれ設けられ、前記供給ローラの駆動力を前記送出ローラへ伝達することを可能にする伝達状態と該伝達を不能にする伝達解除状態とに切り替える切替機構とを有し、前記各送出ローラは、前記各マガジンのペーパ導出開口部をそれぞれ閉塞するローラであるものとする。
【0014】
前記の構成により、供給ローラの駆動力を各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構に、伝達状態と伝達解除状態とに切り替える切替機構をそれぞれ設けたので、ペーパを送り出す必要がないマガジンの送出ローラであっても、ペーパに対する圧着を解除する必要はなく、ペーパに対して常に圧着した状態にしておくことができる。すなわち、ペーパを送り出す必要がないマガジンの送出ローラへ供給ローラの駆動力を伝達する伝達機構に設けられた切替機構を伝達解除状態にしておけば、その送出ローラがペーパに対して圧着した状態にあっても、ペーパが送り出されることはない。この結果、各送出ローラをペーパに対して常に圧着した状態にして、簡単に各マガジンのペーパ導出開口部を常に閉塞しておくことができる。よって、各マガジン内の湿度を適切に維持することができるようになる。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、前記各送出ローラは、少なくとも外周部が弾性部材で構成されたローラであって、該弾性部材が圧縮変形された状態で、当該送出ローラに対向配置されたガイド部材と共に前記ペーパを挟持するように構成されているものとする。
【0016】
このことにより、各マガジンのペーパ導出開口部を確実に閉塞しつつ、各マガジンのペーパに傷を付けるのを防止することができる。
【0017】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記各切替機構は、電磁クラッチで構成されているものとする。
【0018】
こうすることで、切替機構を簡単にかつコンパクトに構成することができる。
【0019】
第4の発明では、第1〜第3のいずれか1つの発明において、ペーパが前記印刷部へ供給されるマガジンの送出ローラが当該ペーパを前記供給ローラへ送り出す際に、当該送出ローラへ前記供給ローラの駆動力を伝達する伝達機構に設けられた切替機構は伝達状態にある一方、他の切替機構は伝達解除状態にあり、前記伝達状態にある切替機構は、前記ペーパの先端部が前記供給ローラに達したときに、伝達状態から伝達解除状態へ切り替えるように構成されているものとする。
【0020】
このことで、ペーパの先端部が供給ローラに達したとき以降は、該ペーパを供給ローラのみにより印刷部へ搬送することができる。この結果、供給ローラによるペーパ搬送速度と送出ローラによるペーパ搬送速度との速度差に伴う不具合の発生を防止することができ、また、このような速度差を吸収する機構等を設ける必要もなくなる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のプリンタによると、供給ローラの駆動力を各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構に、伝達状態と伝達解除状態とに切り替える切替機構をそれぞれ設け、各送出ローラを、各マガジンのペーパ導出開口部をそれぞれ閉塞するローラとしたことにより、ローラという簡単な構成で、各マガジンのペーパ導出開口部を常に閉塞しておくことができ、各マガジン内の湿度を適切に維持することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタとしてのインクジェットプリンタAの外観を示す斜視図、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【0024】
このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロック(図示省略)から通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいてペーパP1,P2に印刷を行うものである。
【0025】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の下部に着脱自在に取り付けられかつロール状に巻かれた長尺状のペーパP1(以下、マガジンペーパP1という)を収容可能なマガジン60と、手差トレイ7と、排出トレイ8とを備えている。前記マガジンペーパP1は、ロール状に巻かれた状態でマガジン60内部の収容室S1に収容されているときに径方向外側を向く面が、後述の印刷部21にて印刷される印刷面とされる。
【0026】
なお、本実施形態では、前記マガジン60が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、マガジン60に収容されてプリンタ本体部1において搬送されるマガジンペーパP1の幅方向と一致している(後述の如く収容室S2に収容されてプリンタ本体部1において搬送される本体ペーパP2の幅方向とも一致している)。
【0027】
前記マガジン60は、持ち運び可能に構成された略密閉状の箱型容器である。マガジン60内部の収容室S1には、巻芯68を中心にロール状に巻かれたマガジンペーパP1が収容されている。マガジン60は、後述するマガジン側ロック部70と本体側ロック部80とを係合させることによって、プリンタ本体部1に固定されている(図9〜図11参照)。
【0028】
そして、前記マガジン60内に設けられたマガジンペーパ送出ローラ64によって、マガジンペーパP1が送り出されてプリンタ本体部1に受け渡しされるようになっている。なお、マガジン60の構成やその取付構造の詳細については後述する。
【0029】
前記プリンタ本体部1は、筐体2と、この筐体2内の下部に設けられかつロール状に巻かれた長尺状のペーパP2(以下、本体ペーパP2という)を収容可能な収容室S2と、筐体2の収容室S2の手前側に開閉自在に取り付けられた開閉扉4と、筐体2の上部(収容室S2の上側)に設けられ、マガジン60の収容室S1から引き出されたマガジンペーパP1又は筐体2の収容室S2から引き出された本体ペーパP2の印刷面に対して、画像データに基づいて印刷を行う印刷部21とを備えている。
【0030】
前記本体ペーパP2の印刷面も、マガジンペーパP1と同様に、ロール状に巻かれた状態で収容室S2に収容されているときに径方向外側を向く面である。
【0031】
前記筐体2内の収容室S2は、開閉扉4及び区画壁2aによって区画されることで気密性が保たれている。この収容室S2には、巻芯5を中心にロール状に巻かれた前記本体ペーパP2が収容されている。また、巻芯5よりも上側には、区画壁2aを貫通するとともに上側に向かってプリンタ後側に傾斜する一対のガイド板11が配設されている。このガイド板11は、プリンタ前側に配置された前側ガイド板11aと、プリンタ後側に配置された後側ガイド板11bとで構成されている。前側ガイド板11aの下端側は、開閉扉4に連続する位置まで延びており、前側ガイド板11aが、収容室S2を区画する区画壁2aの一部を構成している。後側ガイド板11bの上端側は、後述の供給ローラ24の近傍まで延びている。また、前側ガイド板11aの上端側は、後側ガイド板11bの長さ方向の略中央位置まで延びている。前記区画壁2a、開閉扉、ガイド板11等は、マガジン60と同様のマガジンと見做すことができ、収容室S2はこのマガジンの収容室と見做すことができる。なお、このマガジンは、マガジン60とは異なり、プリンタ本体部1内(筐体2内)に配設されることになる。
【0032】
前記後側ガイド板11bの前側ガイド板11aと対向する部分におけるプリンタ左右方向の両端部は、前側ガイド板11aに当接するように突出しており(図14参照)、ガイド板11は、両ガイド板11a,11bにより枠状をなしている。これら両ガイド板11a,11b間の上側の開口部が、収容室S2の本体ペーパP2を収容室S2の外部へ導出するための本体ペーパ導出開口部11cとされている(図3及び図14参照)。
【0033】
前記本体ペーパ導出開口部11c(厳密には、本体ペーパ導出開口部11cの外側近傍)には、本体ペーパ送出ローラ10が前側ガイド板11aの上端部に略接するように配設されている。この本体ペーパ送出ローラ10は、本体ペーパ導出開口部11cを閉塞するローラであって、外周部が弾性部材(本実施形態では、発泡ウレタンからなる)で構成されたローラ(該ローラの断面全体が弾性部材であってもよい)である。本体ペーパ送出ローラ10の直径は、前記両ガイド板11a,11bの間隔よりも大きく、本体ペーパ送出ローラ10の長さは、本体ペーパ導出開口部11cのプリンタ左右方向の長さと略同じである。この本体ペーパ送出ローラ10は、前記弾性部材が圧縮変形された状態で本体ペーパP2の印刷面に接触して、当該本体ペーパ送出ローラ10に対向配置されたガイド部材としての前記後側ガイド板11bと共に本体ペーパP2を挟持するように構成されている。すなわち、本体ペーパ送出ローラ10は、本体ペーパP2及び後側ガイド板11bに対して圧着した状態で本体ペーパ導出開口部11cを閉塞している。また、本体ペーパP2が本体ペーパ送出ローラ10のところにない場合でも、本体ペーパ送出ローラ10が後側ガイド板11bに対して圧着した状態で本体ペーパ導出開口部11cを閉塞する。そして、巻芯5に巻かれたロールから引き出された本体ペーパP2は、本体ペーパ送出ローラ10の回転によって、収容室S2と印刷部21との間に配設された供給ローラ24に向かって送り出される。
【0034】
前記手差トレイ7は、オペレータが、予め所定の大きさに切断された単票状のシートペーパ(図示省略)を手差し供給するためのものであり、筐体2におけるプリンタ前側の面の上部に設けられている。この手差トレイ7にセットされたときのシートペーパの上面が、印刷部21にて印刷される印刷面とされる。手差トレイ7の直ぐプリンタ後側(筐体2内)には、手差ローラ対9が配設されている。この手差ローラ対9は、シートペーパの印刷面に接触する駆動ローラ9aと、印刷面とは反対側の面に接触する従動ローラ9bとで構成されている。駆動ローラ9aはモータ(図示省略)により駆動される。そして、手差トレイ7にセットされたシートペーパは、手差ローラ対9の回転により前記供給ローラ24に向かって送り出される。
【0035】
ここで、前記本体ペーパ送出ローラ10及び前記マガジンペーパ送出ローラ64は共に、駆動モータ26(図4参照)により駆動される。そして、印刷するペーパに応じてその駆動を切り換えることができるようになっている。以下、図3及び図4を用いて詳細に説明する。
【0036】
図3は、駆動モータ26の回転駆動力を本体ペーパ送出ローラ10及びマガジンペーパ送出ローラ64にそれぞれ伝達する伝達機構を示す概略側面図であり、図4はそれら伝達機構の概略平面図である。なお、図4において、本体ペーパ送出ローラ10の位置は、実際には供給ローラ24よりもプリンタ前側(図4では下側)であるが、各ローラ間の連結状態を見やすくするために、本体ペーパ送出ローラ10を供給ローラ24よりもプリンタ後側(図4では上側)に配置して説明するものとする。
【0037】
図3及び図4に示すように、供給ローラ24には、第1電磁クラッチ40と、第1伝達ギア41とが接続されている。第1電磁クラッチ40は、第2伝達ギア13及び第3伝達ギア14を介して本体ペーパ送出ローラ10の駆動ギア10aに連結されている。そして、第1電磁クラッチ40への通電により第1電磁クラッチ40を作動状態にすると、第1電磁クラッチ40が供給ローラ24と共に一体的に回転して、駆動モータ26の回転駆動力が本体ペーパ送出ローラ10に伝達される。一方、第1電磁クラッチ40への通電を停止して第1電磁クラッチ40を非作動状態にすると、駆動モータ26の回転駆動力が本体ペーパ送出ローラ10には伝達されなくなる。
【0038】
前記第1伝達ギア41は、供給ローラ24と一体的に回転するようになされていて、第2電磁クラッチ45に連結されている。この第2電磁クラッチ45は中間軸42に接続されている。この中間軸42には、第2電磁クラッチ45の他にも、第1伝動プーリ18が中間軸42と一体的に回転するように固定されている。この第1伝動プーリ18には、伝動ベルト43の一端側が巻き掛けられている。伝動ベルト43は、図3に示すように、下側に延びた後、プリンタ前側に向かって延びるように、2つの方向変換プーリ43aに巻き掛けられている。伝動ベルト43の他端側は、本体側ギア44に一体に設けた第2伝動プーリ44aに巻き掛けられている。
【0039】
一方、マガジン60には、マガジン60をプリンタ本体部1に装着させたときに、本体側ギア44と噛合するマガジン側ギア67が設けられている。このマガジン側ギア67は、前記マガジンペーパ送出ローラ64と一体的に回転する駆動ギア64aと噛合している。
【0040】
そして、第2電磁クラッチ45への通電により第2電磁クラッチ45を作動状態にすると、第2電磁クラッチ45と中間軸42とが一体的に回転するようになり、駆動モータ26の回転駆動力がマガジンペーパ送出ローラ64に伝達される。一方、第2電磁クラッチ45への通電を停止して第2電磁クラッチ45を非作動状態にすると、駆動モータ26の回転駆動力がマガジンペーパ送出ローラ64に伝達されなくなる。
【0041】
マガジンペーパP1に印刷する場合には、マガジンペーパ送出ローラ64がマガジンペーパP1を供給ローラ24へ送り出すに際して、第1電磁クラッチ40を非作動状態にするとともに第2電磁クラッチ45を作動状態にする。これにより、駆動モータ26の回転駆動力が、第1伝達ギア41、第2電磁クラッチ45、第1伝動プーリ18、伝動ベルト43、第2伝動プーリ44a、本体側ギア44、マガジン側ギア67、及び駆動ギア64aの順に伝達されて、マガジンペーパP1が、マガジンペーパ送出ローラ64によってマガジン60から供給ローラ24へ向けて送り出される。このマガジンペーパP1の先端部が供給ローラ24に達する(不図示のセンサにより検出する)と、第2電磁クラッチ45を非作動状態にし、これにより、供給ローラ24がマガジンペーパP1を後述の如く印刷部21に供給する。このとき、マガジンペーパ送出ローラ64は、供給ローラ24によるマガジンペーパP1の搬送に連動して従動回転する。
【0042】
一方、本体ペーパP2に印刷する場合には、本体ペーパ送出ローラ10が本体ペーパP2を供給ローラ24へ送り出すに際して、第1電磁クラッチ40を作動状態にするとともに第2電磁クラッチ45を非作動状態にする。これにより、駆動モータ26の回転駆動力が、第1電磁クラッチ40、第2伝達ギア13、第3伝達ギア14、及び駆動ギア10aの順に伝達されて、本体ペーパP2が、本体ペーパ送出ローラ10によって収容室S2から供給ローラ24へ向けて送り出される。この本体ペーパP2の先端部が供給ローラ24に達すると、第1電磁クラッチ40を非作動状態にし、これにより、供給ローラ24が本体ペーパP2を印刷部21に供給する。このとき、本体ペーパ送出ローラ10は、供給ローラ24による本体ペーパP2の搬送に連動して従動回転する。
【0043】
前記のように、駆動モータ26、第1伝達ギア41、第2電磁クラッチ45、第1伝動プーリ18、伝動ベルト43、第2伝動プーリ44a、本体側ギア44、マガジン側ギア67、駆動ギア64a、マガジンペーパ送出ローラ64、第1電磁クラッチ40、第2伝達ギア13、第3伝達ギア14、駆動ギア10a、本体ペーパ送出ローラ10、及び供給ローラ24は、マガジン60及び収容室S2からマガジンペーパP1及び本体ペーパP2を択一的に引き出して印刷部21へ搬送する搬送機構を構成する。
【0044】
また、第1伝達ギア41、第2電磁クラッチ45、第1伝動プーリ18、伝動ベルト43、第2伝動プーリ44a、本体側ギア44、マガジン側ギア67、及び駆動ギア64aは、供給ローラ24の駆動力をマガジンペーパ送出ローラ64へ伝達する伝達機構を構成し、第1電磁クラッチ40、第2伝達ギア13、第3伝達ギア14、及び駆動ギア10aは、供給ローラ24の駆動力を本体ペーパ送出ローラ10へ伝達する伝達機構を構成する。
【0045】
さらに、第1電磁クラッチ40は、供給ローラ24の駆動力を本体ペーパ送出ローラ10へ伝達する伝達機構に設けられた切替機構を構成し、供給ローラ24の駆動力を本体ペーパ送出ローラ10へ伝達することを可能にする伝達状態と該伝達を不能にする伝達解除状態とに切り替える。また、第2電磁クラッチ45は、供給ローラ24の駆動力をマガジンペーパ送出ローラ64へ伝達する伝達機構に設けられた切替機構を構成し、供給ローラ24の駆動力をマガジンペーパ送出ローラ64へ伝達することを可能にする伝達状態と該伝達を不能にする伝達解除状態とに切り替える。
【0046】
前記手差トレイ7を利用してシートペーパに印刷する場合には、第1電磁クラッチ40及び第2電磁クラッチ45を両方とも停止状態にして、マガジン60の収容室S1及び筐体2の収容室S2からペーパP1,P2が送り出されないようにする。そして、前記駆動ローラ9aを前記モータにより1回転だけ駆動回転させて、シートペーパを供給ローラ24へ向けて送り出す。このシートペーパの先端部が供給ローラ24に達すると、駆動ローラ9aの切り欠かれた部分により駆動ローラ9aによる供給はされなくなり、これ以降は、供給ローラ24がシートペーパを印刷部21に供給する。
【0047】
前記駆動モータ26は正逆回転可能であり、前記印刷部21へと引き出されているマガジンペーパP1をマガジン60に戻したり、本体ペーパP2を収容室S2に戻したりすることができる。
【0048】
マガジンペーパP1をマガジン60に戻す場合には、第1及び第2電磁クラッチ40,45を非作動状態にしたまま、供給ローラ24を、マガジンペーパP1の印刷部21への供給時とは逆に回転させる。そして、マガジンペーパP1の先端部が供給ローラ24を通過すると、第1電磁クラッチ40を非作動状態にしたまま第2電磁クラッチ45を作動状態にして、マガジンペーパ送出ローラ64を、マガジンペーパP1の送り出し時とは逆に回転させる。こうしてマガジンペーパP1の先端部をマガジンペーパ送出ローラ64のところまで戻す。
【0049】
また、本体ペーパP2を収容室S2に戻す場合には、第1及び第2電磁クラッチ40,45を非作動状態にしたまま、供給ローラ24を、本体ペーパP2の印刷部21への供給時とは逆に回転させる。そして、本体ペーパP2の先端部が供給ローラ24を通過すると、第2電磁クラッチ45を非作動状態にしたまま第1電磁クラッチ40を作動状態にして、本体ペーパ送出ローラ10を、本体ペーパP2の送り出し時とは逆に回転させる。こうして本体ペーパP2の先端部を本体ペーパ送出ローラ10のところまで戻す。
【0050】
例えば、マガジンペーパP1への印刷を中断して、手差トレイ7に差し込んだシートペーパ又は収容室S2内の本体ペーパP2を印刷部21に供給して印刷を行う際には、引き出されているマガジンペーパP1を前記のようにしてマガジン60内に戻す。また、マガジンペーパP1を新たなものに交換する際にも、引き出されているマガジンペーパP1をマガジン60内に戻す。
【0051】
前記プリンタ本体部1のマガジン装着面(プリンタ前側の面)の上部には、マガジンペーパP1をプリンタ本体部1内に導入するための導入開口部1a(図6、図8及び図14参照)が形成されている。この導入開口部1aは、上下方向において、マガジン60の上部(後述のマガジンペーパ導出開口部60c)と略同じ高さ位置から前記開閉扉4の上端までの部分に形成されている。プリンタ本体部1内おいて導入開口部1aの上部と供給ローラ24との間には、該導入開口部1aよりプリンタ本体部1内に導入されたマガジンペーパP1を供給ローラ24へ導くための導入搬送経路が設けられている。この導入搬送経路上のマガジンペーパP1の印刷面側に、該マガジンペーパP1をガイドするガイド部材としての2つのガイドローラ12,12が配設されている(図2、図3及び図14参照)。また、印刷面と反対側には、導入開口部1aの近傍からプリンタ後側のガイドローラ12の近傍まで延び、2つのガイドローラ12,12と共にマガジンペーパP1をガイドするガイド部材28が配設されている。このガイド部材28は、マガジンペーパP1の先端部が、前記導入搬送経路を通って供給ローラ24へ向かう際に該導入搬送経路の下側へずれないようにするためのものである。
【0052】
前記各ガイドローラ12は、前記導入搬送経路上のマガジンペーパP1の印刷面に接触しかつ該マガジンペーパP1の移動に連動して従動回転するようになっている。この各ガイドローラ12の外周部は弾性部材で構成されている。なお、各ガイドローラ12の断面全体が弾性部材で構成されていてもよい。
【0053】
前記導入搬送経路は、該導入搬送経路上のマガジンペーパP1の印刷面が該導入搬送経路の長さ方向に沿って凹状となるように湾曲した形状をなしている。通常であれば、導入搬送経路は、マガジンペーパ送出ローラ64と供給ローラ24とを繋ぐ接線上に設けるが、本実施形態では、導入搬送経路の上側に、手差トレイ7から供給ローラ24に亘る搬送経路が設けられているために、スペースの関係から、導入搬送経路を前記接線上に設けることは困難である。このため、導入搬送経路を前記接線よりも下方に湾曲させている。
【0054】
ここで、前記供給ローラ24は、後述の如く印刷時にマガジンペーパP1を間欠的に搬送するため、回転及び停止を繰り返す。このため、前記導入搬送経路上のマガジンペーパP1には張力の増減が生じ、張力が増大したとき(供給ローラ24が回転し始めてマガジンペーパP1を印刷部21側へ搬送し始めたとき)に、前記導入搬送経路の湾曲により、マガジンペーパP1が前記ガイドローラ12,12の側へ移動しようとして、ガイドローラ12,12に大きな衝撃力が作用する。本実施形態では、各ガイドローラ12に、マガジンペーパP1に作用する張力の増大に起因して該ガイドローラ12に作用する前記衝撃力の少なくとも一部を吸収する衝撃力吸収部を設けている。
【0055】
具体的には、各ガイドローラ12の衝撃力吸収部は、該ガイドローラ12の外周部に設けられた前記弾性部材で構成されており、この弾性部材の圧縮変形により前記衝撃力を吸収する。この弾性部材は、本実施形態では、発泡ウレタンからなり、前記衝撃力を十分に吸収するべく、その発泡率が前記本体ペーパ送出ローラ10の弾性部材の材料である発泡ウレタンよりも大きくされて、圧縮変形し易くなされている。また、2つのガイドローラ12は、前記導入搬送経路の長さを略3等分する位置に配設されており、2つのガイドローラ12に略同じ衝撃力が作用するようになされている。
【0056】
供給ローラ24の回転速度が減速して停止に向かうと、マガジンペーパP1に作用する張力は減少する。これにより、各ガイドローラ12の弾性部材の圧縮変形量が小さくなる。なお、供給ローラ24が完全に停止したときでも、マガジンペーパP1には張力が作用しており、各ガイドローラ12はマガジンペーパP1と接触している(弾性部材が僅かに圧縮変形している)。
【0057】
前記供給ローラ24は、マガジン60に対応して設けられた前記導入搬送経路と、筐体2の収容室S2に対応して設けられた、収容室S2の本体ペーパ導出開口部11cから供給ローラ24に亘る搬送経路と、手差トレイ7から供給ローラ24に亘る搬送経路とが、これら下流側端部で合流してなる合流部に設けられている。これら3つの搬送経路を上流側搬送経路として、これら3つの上流側搬送経路に合流部を介して、印刷部21への共通の下流側搬送経路が続き、この下流側搬送経路にペーパ排出用搬送経路が続く。これら下流側搬送経路及びペーパ排出用搬送経路は、略水平にプリンタ前後方向に延びている。
【0058】
そして、供給ローラ24は、駆動モータ26によって駆動されて、マガジン60の収容室S1に収容されたマガジンペーパP1、筐体2の収容室S2に収容された本体ペーパP2、及び、オペレータが手差トレイ7に手差し供給したシートペーパを印刷部21へ択一的に搬送する。そして、印刷後のペーパは、ペーパ排出用搬送経路に沿ってプリンタ後側へ搬送されて、排出トレイ8上に排出される。
【0059】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタAでは、マガジンペーパP1、本体ペーパP2及びシートペーパにそれぞれ印刷を行うことができる構成となっているが、印刷部21に供給された後のそれぞれのペーパに対する処理については同様である。そのため、以下では、マガジン60に収容されたマガジンペーパP1を搬送して印刷を行う場合について主に説明する。
【0060】
前記マガジンペーパ送出ローラ64により、前記導入搬送経路を通って供給ローラ24にまで送り出されたマガジンペーパP1は、供給ローラ24によって印刷部21へ供給される。具体的に、図2及び図3に示すように、マガジンペーパP1は、供給ローラ24と、供給ローラ24に対向配置された2つの圧着ローラ24aとの間に挟持された状態で、駆動モータ26(図4参照)によって供給ローラ24が図2及び図3で時計回り方向に回転駆動されることで印刷部21まで搬送される。
【0061】
前記印刷部21は、前記供給ローラ24に対してプリンタ後側(マガジンペーパP1の搬送方向下流側)に設けられている。この印刷部21は、図5に詳細に示すように、マガジンペーパP1の印刷面に印刷するプリントヘッドHと、供給ローラ24より搬送されるマガジンペーパP1を支持するプラテン23とを備えている。
【0062】
前記プリントヘッドHよりもプリンタ後側(マガジンペーパP1の搬送方向下流側)には、前記ペーパ排出用搬送経路の下側に配置された駆動ローラ25aと、その上側に位置する従動ローラ25bとからなりかつマガジンペーパP1を更にプリンタ後側へ搬送する圧着型の下流側ローラ対25が配設されている。駆動ローラ25aは、モータ(図示省略)で駆動されるようになっている。
【0063】
図5に示すように、前記プリントヘッドHは、プラテン23上のマガジンペーパP1の上側位置においてマガジンペーパP1の幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向Xに延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であってマガジンペーパP1の移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Yに並ぶ2つのヘッドユニット32,32(図2参照)を有しており、これら2つのヘッドユニット32,32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、マガジンペーパP1の印刷面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0064】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、マガジンペーパP1は、供給ローラ24により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時におけるマガジンペーパP1の各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクがマガジンペーパP1の印刷面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、マガジンペーパP1が単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0065】
ここで、プリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0066】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面がマガジンペーパP1を支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23bが設けられている。プラテン23の下側には、該プラテン23と共に内部に空間を形成するケース体35(図2参照)が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36(図2参照)が配設されている。そして、吸引用孔23bは、ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、マガジンペーパP1がプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時のマガジンペーパP1の平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0067】
また、前記プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23cが形成されている。このインク吸収材38は、マガジンペーパP1全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が支持面23a上のマガジンペーパP1の幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部23cは、支持面23aにおいて支持面23a上のマガジンペーパP1の幅方向の端縁に対応する位置でかつ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅のマガジンペーパP1に対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0068】
図1に示すように、前記プリンタ本体部1のマガジン装着面(プリンタ前側の面)における、プリンタ前側から見て右側の下部には、互いに色相の異なるインクが封入された4つのインクカートリッジ27が着脱可能に収容されている。これらのインクカートリッジ27を着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。なお、これらのインクカートリッジ27にはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクが封入されている。
【0069】
図2に示すように、前記下流側ローラ対25よりもプリンタ後側(マガジンペーパP1の搬送方向下流側)には、印刷後のマガジンペーパP1を所定のサイズに切断したり、縁なし印刷を行う場合においてマガジンペーパP1の先端及び後端における余白を切断するカッター50が配設されている。
【0070】
前記カッター50は、前記ペーパ排出用搬送経路の上側に配置された固定刃50aと、その下側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃50aに対して上下方向に移動する可動刃50bとで構成されていて、可動刃50bがマガジンペーパP1の下側から上側に移動することでマガジンペーパP1を切断する。この切断による切り屑は、筐体2の下部に配設された屑箱51に落下して収容される。
【0071】
前記カッター50よりもプリンタ後側(下流側)には、カッター50で所定のサイズに切断されたマガジンペーパP1を挟持して更にプリンタ後側へ搬送する圧着型の搬送ローラ対46と、搬送ローラ対46により搬送されてきたマガジンペーパP1を排出トレイ8上に排出する排出ローラ対48とが配設されている。
【0072】
前記搬送ローラ対46及び排出ローラ対48において、下側に位置する駆動ローラ46a,48aは、同じモータ(図示省略)により駆動され、その回転速度、つまり搬送ローラ対46及び排出ローラ対48によるマガジンペーパP1の搬送速度は可変に構成されている。
【0073】
前記搬送ローラ対46と排出ローラ対48との間には、印刷部21においてマガジンペーパP1の印刷面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風WをマガジンペーパP1の印刷面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風WとしてマガジンペーパP1の印刷面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0074】
ここで、前記乾燥装置53によるインクの乾燥度合いは、インクジェットプリンタAが設置された環境条件(温度や湿度等)に応じて変化するため、駆動ローラ46a,48aの回転速度が変更されて、マガジンペーパP1の搬送速度が変更されるようになっている。乾燥装置53によって乾燥されたマガジンペーパP1は、排出ローラ対48によって排出トレイ8上に排出される。
【0075】
<マガジンの構成について>
次に、マガジン60の構成やその取付構造について図面を用いて説明する。図2、図6〜図8に示すように、このマガジン60は、上方に開口する有底状のマガジン本体61と、このマガジン本体61に対してヒンジ部60aを介して回動自在に支持され、該回動によりマガジン本体61の開口を開閉する蓋体62と、蓋体62の上面に設けられ、持ち運びを容易にするためのアーチ状のハンドル63とを備えている。
【0076】
前記マガジン本体61のプリンタ左右方向の両側面には、マガジン本体61の開口を閉じた状態にある蓋体62が開かないようにマガジン本体61に係合固定するための固定具60b(所謂パッチン錠)が設けられている。そして、蓋体62が開いた状態で、マガジン本体61内の巻芯68を中心にロール状に巻かれたマガジンペーパP1をセットし、蓋体62を閉じて固定具60bにより蓋体62をマガジン本体61に係合固定すると、マガジン60内部に収容室S1が形成され、この収容室S1内にマガジンペーパP1が収容されることになる。
【0077】
また、マガジン本体61の下部におけるプリンタ左右方向の両端部には、プリンタ本体部1のマガジン装着面の下部にプリンタ前側へ突出するように設けた支持部材15における後述の支持軸16に嵌合される軸受溝61aが形成されている。
【0078】
前記マガジン60におけるプリンタ本体部1への装着面(マガジン60の装着状態でのプリンタ後側の面であり、以下、マガジン60の装着面という)の上部には、プリンタ本体部1にマガジンペーパP1を送り出すためのマガジンペーパ導出開口部60cが形成されている。このマガジンペーパ導出開口部60cのマガジン内側近傍に、マガジンペーパP1をマガジンペーパ導出開口部60cからマガジン60の外部へ送り出すための前記マガジンペーパ送出ローラ64が配設されている。
【0079】
前記マガジンペーパ送出ローラ64の下側には、巻芯68に巻かれたロールから引き出されたマガジンペーパP1をマガジンペーパ導出開口部60cへ導くガイド部材65が設けられている。
【0080】
前記マガジンペーパ送出ローラ64は、マガジンペーパ導出開口部60cを閉塞するローラであって、前記本体ペーパ送出ローラ10と同様に、外周部が弾性部材(本実施形態では、発泡ウレタンからなる)で構成されたローラ(該ローラの断面全体が弾性部材であってもよい)である。マガジンペーパ送出ローラ64の直径は、マガジンペーパ導出開口部60cの上下長さと略同じであり、マガジンペーパ送出ローラ64の長さは、マガジンペーパ導出開口部60cのプリンタ左右方向の長さと略同じである。このマガジンペーパ送出ローラ64は、前記弾性部材が圧縮変形された状態でマガジンペーパP1の印刷面に接触して、当該マガジンペーパ送出ローラ64に対向配置された前記ガイド部材65と共にマガジンペーパP1を挟持するように構成されている。すなわち、マガジンペーパ送出ローラ64は、マガジンペーパP1及びガイド部材65に対して圧着した状態でマガジンペーパ導出開口部60cを閉塞している。また、マガジンペーパP1がマガジンペーパ送出ローラ64のところにない場合でも、マガジンペーパ送出ローラ64がガイド部材65に対して圧着した状態でマガジンペーパ導出開口部60cを閉塞する。そして、巻芯68に巻かれたロールから引き出されたマガジンペーパP1は、マガジンペーパ送出ローラ64の回転によって、前記プリンタ本体部1の導入搬送経路及び供給ローラ24に向かって送り出される。
【0081】
前記マガジンペーパ送出ローラ64よりも上流側でかつガイド部材65の左右方向の両端部には、幅規制部材66(図14参照)が配設されている。この幅規制部材66は、オペレータの操作によって、印刷処理するマガジンペーパP1の幅に対応した位置に位置付けられる。すなわち、幅規制部材66は、印刷処理するマガジンペーパP1の幅方向の両端縁にそれぞれ当接するように位置している。
【0082】
図9〜図13に示すように、前記マガジン60には、プリンタ本体部1における後述の本体側ロック部80に係合させて、マガジン60をプリンタ本体部1に装着固定するためのマガジン側ロック部70が設けられている。このマガジン側ロック部70は、マガジン本体61における、プリンタ前側から見て右側の側面上部に設けられたロックレバー71と、ロックレバー71の回動中心となる回動軸72と、回動軸72に該回動軸72の軸方向(プリンタ左右方向)に間隔をあけて接合されかつロックレバー71の回動動作に連動して回動する一対の支持板73,73と、一対の支持板73,73に跨って両端支持された係合ロッド74とを備えている。
【0083】
前記各支持板73には、係合ロッド74を挿通させて支持するための長孔73aが形成されている。この長孔73aはプリンタ前後方向に延びるように形成されており、係合ロッド74は、引張コイルバネ75によって長孔73aのプリンタ前側(図9の左側)に位置するように付勢されている。
【0084】
図6〜図8に示すように、前記支持部材15は、上方が開口した凹状の支持本体部15aと、支持本体部15aに両端支持されてプリンタ左右方向に延びる支持軸16と、支持本体部15aの凹溝内に設けられて上方に向かって徐々に幅広くなるように開口した規制ガイド部15bとを備えている。
【0085】
前記支持軸16は、マガジン60の着脱時にマガジン60の下部を支持するものである。具体的に、マガジン60の下部の軸受溝61aと支持軸16とを嵌合させることで、マガジン60を支持軸16周りに回動可能に支持する。
【0086】
ここで、マガジン60の下部の軸受溝61aを支持軸16に嵌合させる際には、マガジン60の下部が規制ガイド部15bの開口部分に嵌め込まれる。この開口部分はテーパー状に形成されているから、マガジン60の幅方向への移動が規制されて位置決めをスムーズに行うことができるようになっている。
【0087】
そして、前記マガジン60の下部(軸受溝61a)を支持軸16に回動可能に支持させた状態で、マガジン60を支持軸16周りにプリンタ本体部1側へ回動させることで、マガジンペーパ導出開口部60cと導入開口部1aとが連通される。
【0088】
図14に示すように、前記プリンタ本体部1の導入開口部1aのプリンタ左右両端部には、プリンタ前側に突出した位置決めピン17が設けられている。一方、マガジン60の装着面の上部には、位置決めピン17に嵌合される位置決め孔61bが形成されている。そして、マガジン60を支持軸16周りに回動させたときに、位置決めピン17と位置決め孔61bとが嵌合されて、マガジンペーパ導出開口部60cと導入開口部1aとが位置決めされるようになっている。この位置決めにより、前記軸受溝61aが支持軸16から僅かに浮き上がり、このことで、マガジン60は、位置決めピン17を介して、位置決めピン17が取り付けられる後述のフレーム81によって支持されることになる。
【0089】
このように、マガジン60をプリンタ本体部1に装着する際に、位置決めピン17に位置決め孔61bを嵌合することで、マガジン60の位置精度を確保することができるようになっているから、マガジン60からプリンタ本体部1に対してマガジンペーパP1を送り出す際の搬送精度を十分に確保することができる。
【0090】
図9〜図13に示すように、前記プリンタ本体部1の導入開口部1aにおいてプリンタ左右方向の略中央でかつ下部位置には、マガジン60のマガジン側ロック部70に係合する本体側ロック部80が設けられている。この本体側ロック部80は、筐体2の構造物に固定されかつプリンタ左右方向に延びるフレーム81と、フレーム81の長さ方向の略中央位置でプリンタ前方に水平に延びた後、その先端部が下方に折れ曲がってL字状に形成された係合フック部82と、係合フック部82に対し、プリンタ左右方向に延びる中心軸83a周りに回動自在に支持された解除フック部83とを備えている。
【0091】
前記フレーム81には、係合フック部82の他にも、前記位置決めピン17や後述する検出センサ85(図14参照)が取り付けられている。図9に示すように、解除フック部83は、付勢バネ(図示省略)によってプリンタ前側に位置するように付勢されている。以下、解除フック部83がプリンタ前側に付勢された位置を解除位置と呼ぶこととする。そして、マガジン60の装着動作時に、マガジン60のマガジン側ロック部70の係合ロッド74が解除フック部83に当接するようになっており、マガジン60の支持軸16周りの回動により係合ロッド74が解除フック部83を押圧する。こうして係合ロッド74が解除フック部83を押圧していくと、解除フック部83が中心軸83a周りに図9で反時計回り方向に回動して、前記付勢バネの付勢力に抗してプリンタ後側に移動する(図10参照)。これにより、解除フック部83と係合ロッド74とが互いに係合する。
【0092】
図11に示すように、前記係合の後、ロックレバー71を反時計回り方向に回転させると、係合ロッド74が解除フック部83に沿って上昇して、今度は係合フック部82と係合される。ここで、係合ロッド74は、引張コイルバネ75の付勢力に抗して長孔73aのプリンタ後側(図11の右側)に移動可能であるため、係合フック部82における係合ロッド74との係合部分の手前にある突起部分を乗り越えた後に該係合部分と係合される。そして、引張コイルバネ75の付勢力により係合ロッド74と係合フック部82とが確実に係合されてロックされる。また、解除フック部83は、前記付勢バネの付勢力によって係合ロッド74を押圧した状態となっている。このため、係合ロッド74が係合フック部82と解除フック部83とに挟持された状態となり、より確実にロックされるようになっている。以下、図11に示す係合ロッド74が係合フック部82に係合している位置をロック位置と呼ぶこととする。
【0093】
前記解除フック部83は、オペレータがマガジン60をプリンタ本体部1から取り外す際に、マガジン60がプリンタ本体部1から脱落するのを防止するためのものである。具体的に、係合ロッド74がロック位置にあるときに、ロックレバー71を図11で時計回り方向に回転させると、係合ロッド74が係合フック部82の前記突起部分を乗り越えて下側に移動して、図10と同様に、解除フック部83と係合した状態となる。こうして、係合ロッド74と係合フック部82との係合が解除される。この解除により、位置決めピン17が位置決め孔61bから外れると、マガジン60は、その自重により、マガジン60の軸受溝61aが支持軸16と嵌合して、該マガジン60の装着時とは逆に、支持軸16周りに、プリンタ本体部1から離れる側へ回動する。この回動に伴って係合ロッド74がプリンタ前側へ移動する。このとき、付勢バネによってプリンタ前側に付勢されている解除フック部83が、係合ロッド74のプリンタ前側への移動に同期して、中心軸83a周りに図11で時計回り方向に回動する。このため、図12に示すように、解除フック部83の先端部と係合ロッド74とが互いに係合した状態で、プリンタ前側へ移動する。そして、解除フック部83が解除位置に達すると、それ以上プリンタ前側へ移動できなくなっているために停止し、これにより、解除フック部83の先端部と係合している係合ロッド74も停止する。この結果、マガジン60のプリンタ前側への移動が規制され、マガジン60が少し回動したところで停止することになる。
【0094】
このような構成とすれば、係合ロッド74と係合フック部82との係合を解除してマガジン60を取り外す際に、オペレータがマガジン60から手を離していたり、マガジン60をしっかりと把持していなかったとしても、係合ロッド74と解除フック部83とが係合しているために、マガジン60がプリンタ本体部1から脱落して破損してしまう等の不具合を防止することができる。
【0095】
そして、解除フック部83が解除位置にあるときに、ロックレバー71を反時計回り方向に回転させることで、図13に示すように、係合ロッド74と解除フック部83との係合が解除される。これにより、係合ロッド74(つまりマガジン60)がプリンタ前側へ移動できるようになる。この後、マガジン60を支持部材15の支持軸16周りに回動させながら持ち上げれば、マガジン60を取り外すことができる。
【0096】
図14は、マガジン60とプリンタ本体部1との装着部周辺の構成を示す側面断面図である。図14に示すように、プリンタ本体部1の導入開口部1aには、プリンタ左右方向に並ぶ複数の検出センサ85が設けられている。この検出センサ85は、透光部85aと受光部85bとを有する透過型センサで構成されている。
【0097】
前記マガジン60の装着面の上部には、検出センサ85で検出される検出板86が設けられている。この検出板86は、マガジン60をプリンタ本体部1に装着させたときに、複数の検出センサ85のうち何れかを遮光するようになっており、マガジン60の装着確認を行うことができるようになっている。
【0098】
また、前記検出板86には、複数の検出センサ85の位置に対応して幅方向に間隔をあけて複数のスライド孔86aが形成されている。このスライド孔86aは、プリンタ前後方向に延びる長孔形状とされ、スライド孔86aには、プリンタ前後方向にスライド移動可能なスライドスイッチ87が設けられている。
【0099】
前記スライドスイッチ87は、マガジン60内のマガジンペーパP1の特性(長さ、厚み等の寸法特性や、硬さ、面質(光沢やマット)等の材料特性)に応じて、オペレータによってその位置が設定される。具体的に、スライドスイッチ87をスライド孔86aのプリンタ後側(図14では右側)に位置付けておくと、マガジン60をプリンタ本体部1に装着させたときに、検出センサ85のセンサ光が遮光される。一方、スライドスイッチ87をスライド孔86aのプリンタ前側(図14では左側)に位置付けておくと、検出センサ85センサ光がスライド孔86aを通過するようになっている。
【0100】
このように、マガジン60をプリンタ本体部1に装着させたときに、検出センサ85によりスライドスイッチ87が検出されることで、スライドスイッチ87の組み合わせからマガジンペーパP1の面質等が判断され、マガジンペーパP1の特性に合った適切な印刷速度や搬送速度でマガジンペーパP1を印刷処理できるようになっている。
【0101】
また、インクジェットプリンタAの電源投入時に、検出センサ85によりマガジン60がプリンタ本体部1に装着されていることを検出すると、マガジン60のマガジンペーパ送出ローラ64が駆動されて、マガジンペーパP1を印刷部21まで送り出すようになっている。そして、プリントヘッドHが、印刷部21まで搬送されてきたマガジンペーパP1上を主走査方向Xに走査することで、プリントヘッドHに設けられたセンサ(図示省略)によってマガジンペーパP1の幅方向の長さが検出される、いわゆるイニシャル駆動が行われる。これにより、印刷に先立ってマガジンペーパP1の幅を把握しておき、印刷時には、その幅に対応した印刷処理を行う。
【0102】
また、前記マガジン60を装着していない状態では、導入開口部1aを塞ぐ閉塞蓋(図示省略)を閉じることで、導入開口部1aを介して、乾燥した空気が収容室S2内に流入したり収容室S2内の調湿空気が外部に流出しないようにしている。この開閉蓋には、検出センサ85を遮光する検出片(図示省略)が取り付けられており、開閉蓋を閉じた状態で検出センサ85のセンサ光を遮光することで、開閉蓋が閉じられていることを判断できるようになっている。そして、マガジン60が装着されていない状態で、開閉蓋が開いていることを検出センサ85で検出すると、開閉蓋を閉めることを促すように、モニタ(図示省略)に警報メッセージが表示される等の警報動作が行われるようになっている。
【0103】
前記マガジン60の装着面の上部(マガジンペーパ導出開口部60cの下側)には、空気流路90が開口している。この空気流路90は、マガジン60内の収容室S1に連通している。一方、前記前側ガイド板11aには、マガジン60をプリンタ本体部1に装着させた状態で、導入開口部1aの下部を介して空気流路90に連通する連通口91が形成されている。この連通口91は、プリンタ本体部1の収容室S2に連通している。
【0104】
また、前記マガジン60の空気流路90の流路途中には、空気流路90内の空気の流通を遮断又は許可する開閉シャッタ95が設けられている。この開閉シャッタ95は、マガジン60のロックレバー71の回動軸72に連結されており、ロックレバー71の回動動作に連動して、開閉シャッタ95が回動軸72周りに回動して開閉するようになっている。すなわち、マガジン60の装着時におけるロックレバー71の回動(図11で反時計回り方向の回動)により回動軸72周りに図14で反時計回り方向に回動して開状態になる。一方、マガジン60をプリンタ本体部1から取り外す際にロックレバー71を逆方向に回動させると、開閉シャッタ95に取り付けられた引張コイルバネ97の付勢力によって、開閉シャッタ95が回動軸72周りに図14で時計回り方向に回動して閉状態となる。
【0105】
前記開閉シャッタ95の上側及び下側端縁部には、空気流路90の上側及び下側の内周面にそれぞれ密着するパッキン部材96が設けられている。このパッキン部材96は、弾性を有する材料で構成され、開閉シャッタ95が閉状態にあるときに空気流路90の内周面に当接して、空気流路90の空気の流通を遮断している。また、開閉シャッタ95が開状態にあるときには、開閉シャッタ95の上側のパッキン部材96と空気流路90の内周面との間に隙間が形成され、空気の流通が許可されるようになっている。
【0106】
ここで、前記収容室S2内には、調湿装置(図示省略)が設けられており、この調湿装置の作動によって、収容室S2内の湿度調整を行うことで、収容室S2の湿度を所定範囲内になるようにしている。この所定範囲としては、相対湿度30〜75%であり、好ましいのは相対湿度40〜60%である。そして、前記閉塞蓋により導入開口部1aが閉塞されていれば、収容室S2の本体ペーパ導出開口部11cが本体ペーパ送出ローラ10により常時閉塞されているので、収容室S2の湿度は適切に維持される。この結果、本体ペーパP2が湿気ってペーパが波打ったりインクが滲み易くなったりすることはなく、乾燥し過ぎて本体ペーパP2の印刷面にヒビ割れが生じたり本体ペーパP2の幅方向中央部が幅方向両端部に対して印刷面側へ突出するようなカールが発生したりするようなこともない。
【0107】
そして、前記閉塞蓋を開状態にしかつマガジン60をプリンタ本体部1に装着して、係合ロッド74と係合フック部82とを係合させるべくロックレバー71を回動させたときに、開閉シャッタ95が回動軸72周りに回動して開状態となり、これにより、空気流路90の空気の流通が許可される。マガジン60のマガジンペーパ導出開口部60cはマガジンペーパ送出ローラ64により常時閉塞されているので、開閉シャッタ95が開くことで、マガジン60の収容室S1とプリンタ本体部1の収容室S2とが連通して一体となった略密閉空間が形成されることとなる。
【0108】
この状態で、前記調湿装置が作動すると、プリンタ本体部1の収容室S2内の空気が調湿されるとともに、連通口91及び空気流路90を通じてマガジン60の収容室S1内の空気も調湿される。これにより、マガジン60の収容室S1の湿度も、収容室S2と同様に、適切に維持される。
【0109】
<マガジンの着脱手順>
次に、前記マガジン60をプリンタ本体部1に対して着脱する手順について説明する。
【0110】
まず、図6及び図7に示すように、オペレータがマガジン60のハンドル63を利用してマガジン60を持ち上げた状態で、プリンタ本体部1のプリンタ装着面の下部に設けられた支持部材15の支持軸16に対して、マガジン60の下部に形成された軸受溝61aを嵌め込む。
【0111】
続いて、図8に示すように、前記マガジン60を支持軸16周りにプリンタ本体部1側に回動させて、マガジンペーパ導出開口部60cと導入開口部1aとを連通させる。ここで、マガジン60の回動途中において、マガジン側ロック部70の係合ロッド74は、本体側ロック部80の解除フック部83を押圧する(図9参照)。そして、マガジンペーパ導出開口部60cと導入開口部1aとが連通されると、係合ロッド74と解除フック部83とが互いに係合する(図10参照)。
【0112】
次いで、図11に示すように、前記ロックレバー71を反時計回り方向に回転させて、係合ロッド74をロック位置で係合フック部82と係合させる。このとき、解除フック部83の付勢バネの付勢力によって、係合ロッド74が係合フック部82と解除フック部83とに挟持された状態となっている。これにより、マガジン60をプリンタ本体部1に装着することができる。
【0113】
前記マガジン60をプリンタ本体部1に装着すると、図3に示すように、プリンタ本体部1の本体側ギア44とマガジン60のマガジン側ギア67とが互いに噛合する。そして、駆動モータ26の回転駆動力が、第1伝達ギア41、第2電磁クラッチ45、第1伝動プーリ18、伝動ベルト43、第2伝動プーリ44a、本体側ギア44、マガジン側ギア67、及び駆動ギア64aの順に伝達されて、マガジンペーパ送出ローラ64が送り出し方向(図3で反時計周り方向)に回転できるようになる。
【0114】
一方、前記マガジン60をプリンタ本体部1から取り外す場合には、係合ロッド74がロック位置にあるときに、ロックレバー71を時計回り方向に回動させて第1のロック解除動作を行う。これにより、係合ロッド74と係合フック部82との係合が解除され、この解除により、位置決めピン17が位置決め孔61bから外れると、マガジン60は、その自重により、マガジン60の軸受溝61aが支持軸16と嵌合して、支持軸16周りに、プリンタ本体部1から離れる側へ回動する。この回動に伴って係合ロッド74がプリンタ前側へ移動する。このとき、図12に示すように、解除フック部83が、係合ロッド74のプリンタ前側への移動に同期して、解除フック部83の先端部と係合ロッド74とが互いに係合した状態で、プリンタ前側へ移動する。そして、解除フック部83が解除位置に達すると、係合ロッド74の移動が停止し、この結果、マガジン60が少し回動したところで停止する。
【0115】
次いで、解除フック部83が解除位置にあるときに、ロックレバー71を反時計回り方向に回転させることで、図13に示すように、係合ロッド74と解除フック部83との係合を解除する第2のロック解除動作を行う。その後、マガジン60を支持軸16周りに回動させながらマガジン60を持ち上げてプリンタ本体部1から取り外す。
【0116】
このように、マガジン60をプリンタ本体部1から取り外すためには、係合ロッド74をロック位置から解除位置まで移動させて係合ロッド74と係合フック部82との係合を解除する第1のロック解除動作を行った後で、さらに、係合ロッド74と解除フック部83との係合を解除する第2のロック解除動作を行うという、2段階のロック解除動作が必要となっている。これにより、第1のロック解除動作を行うときに、オペレータがマガジン60から手を離していたり、マガジン60をしっかりと把持していなかったとしても、解除位置において係合ロッド74と解除フック部83とが係合しているから、マガジン60がプリンタ本体部1から脱落して破損してしまう等の不具合を防止することができる。
【0117】
本実施形態では、前記のように、本体ペーパ送出ローラ10及びマガジンペーパ送出ローラ64を、本体ペーパ導出開口部11c及びマガジンペーパ導出開口部60cをそれぞれ閉塞するローラとし、供給ローラ24の駆動力を本体ペーパ送出ローラ10及びマガジンペーパ送出ローラ64へそれぞれ伝達する伝達機構に、電磁クラッチ40,45をそれぞれ設けたので、例えば本体ペーパ送出ローラ10が本体ペーパP2を送り出す必要がない場合に、本体ペーパP2に対する圧着を解除する必要はなく、第1電磁クラッチ40を非作動状態にしておくことで、供給ローラ24の駆動力が本体ペーパ送出ローラ10へ伝達されず、この結果、本体ペーパP2に対して常に圧着した状態にしておくことができる。また、マガジンペーパ送出ローラ64も同様である。従って、ローラという簡単な構成で、本体ペーパ導出開口部11c及びマガジンペーパ導出開口部60cを常に閉塞しておくことができ、収容室S1及びS2内の湿度を適切に維持することができるようになる。
【0118】
なお、前記実施形態では、本体ペーパ送出ローラ10が本体ペーパP2の印刷面と接触し、マガジンペーパ送出ローラ64がマガジンペーパP1の印刷面と接触するようにしたが、いずれのローラも印刷面とは反対側の面に接触するようにしてもよい。また、本体ペーパ送出ローラ10と共に本体ペーパP2を挟持するガイド部材としての後側ガイド板11bを、本体ペーパ送出ローラ10と同様の材料で構成したガイドローラに代えることも可能である。また、ガイド部材65も同様である。
【0119】
また、前記実施形態では、マガジン60をプリンタ本体部1(筐体2)の外側に装着するインクジェットプリンタに適用した例を説明したが、本発明は、プリンタ本体部1(筐体2)の内部に複数の収容室(マガジン)を配設したインクジェットプリンタであってもよい。さらに、インクジェットプリンタには限られない。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、ロール状に巻かれた長尺状のペーパを収容する複数のマガジンを備え、該複数のマガジンのペーパを択一的に引き出して印刷部へ搬送するようにしたプリンタに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタとしてのインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】駆動モータの回転駆動力を本体ペーパ送出ローラ及びマガジンペーパ送出ローラにそれぞれ伝達する伝達機構を示す概略側面図である。
【図4】駆動モータの回転駆動力を本体ペーパ送出ローラ及びマガジンペーパ送出ローラにそれぞれ伝達する伝達機構を示す概略平面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】マガジンを支持部材に支持させる前の状態を示す側面図である。
【図7】マガジンを支持部材に支持させる前の状態を一部拡大して示す正面図である。
【図8】マガジンを支持部材に支持させた状態を示す図6相当図である。
【図9】係合ロッドを解除フック部の先端部に押圧させた状態を示す概略図である。
【図10】係合ロッドと解除フック部とが係合した状態を示す図9相当図である。
【図11】係合ロッドと係合フック部とが係合した状態を示す図9相当図である。
【図12】解除フック部が解除位置において係合ロッドと係合した状態を示す図9相当図である。
【図13】係合ロッドと解除フック部との係合を解除した状態を示す図9相当図である。
【図14】マガジンとプリンタ本体部との装着部周辺の構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 プリンタ本体部
10 本体ペーパ送出ローラ
21 印刷部
24 供給ローラ
40 第1電磁クラッチ(切替機構)
45 第2電磁クラッチ(切替機構)
60 マガジン
64 マガジンペーパ送出ローラ
65 ガイド部材
A インクジェットプリンタ
P1 マガジンペーパ
P2 本体ペーパ
S1 マガジンの収容室
S2 プリンタ本体部の収容室(マガジンの収容室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた長尺状のペーパを収容する複数のマガジンと、前記ペーパに対して印刷を行う印刷部と、前記複数のマガジンからペーパを択一的に引き出して前記印刷部へ搬送する搬送機構とを備えたプリンタであって、
前記複数のマガジンのペーパの、マガジンから印刷部への搬送経路は、該複数のマガジンにそれぞれ対応して設けられかつ下流側端部で互いに合流する複数の上流側搬送経路と、該上流側搬送経路に前記合流部を介して続く共通の下流側搬送経路とからなり、
前記搬送機構は、
前記合流部に設けられ、前記複数のマガジンのペーパを前記印刷部へ択一的に供給する供給ローラと、
前記各マガジンにそれぞれ設けられ、該マガジンのペーパを前記供給ローラへ送り出すための送出ローラと、
前記供給ローラの駆動力を前記各送出ローラへそれぞれ伝達する伝達機構と、
前記各伝達機構にそれぞれ設けられ、前記供給ローラの駆動力を前記送出ローラへ伝達することを可能にする伝達状態と該伝達を不能にする伝達解除状態とに切り替える切替機構と
を有し、
前記各送出ローラは、前記各マガジンのペーパ導出開口部をそれぞれ閉塞するローラであることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
前記各送出ローラは、少なくとも外周部が弾性部材で構成されたローラであって、該弾性部材が圧縮変形された状態で、当該送出ローラに対向配置されたガイド部材と共に前記ペーパを挟持するように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプリンタにおいて、
前記各切替機構は、電磁クラッチで構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のプリンタにおいて、
ペーパが前記印刷部へ供給されるマガジンの送出ローラが当該ペーパを前記供給ローラへ送り出す際に、当該送出ローラへ前記供給ローラの駆動力を伝達する伝達機構に設けられた切替機構は伝達状態にある一方、他の切替機構は伝達解除状態にあり、
前記伝達状態にある切替機構は、前記ペーパの先端部が前記供給ローラに達したときに、伝達状態から伝達解除状態へ切り替えるように構成されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−194935(P2010−194935A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43948(P2009−43948)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】