説明

プリンタ

【課題】 プリンタ本体の持ち運び時に、プリンタ本体の落下などの事故によりサーマルヘッドが回動する方向へ衝撃が加わった場合、サーマルヘッドはプラテンと衝突してダメージを負う可能性があった。
【解決手段】 プリンタ本体に用紙トレイが装着されたことに応じて、規制部材が、サーマルヘッドの移動を規制する位置から、サーマルヘッドの移動を規制しない位置に移動することにより、ヘッド移動手段によるサーマルヘッドの印刷位置への移動が可能になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙トレイを着脱可能なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来インクリボンを用い熱転写により印刷媒体へ画像を形成する熱転写プリンタには、サーマルヘッド又はプラテンローラーを可動的に支持し、前記インクリボン及び印刷媒体を前記サーマルヘッド及びプラテンローラー間に圧接狭持可能にする構造がある。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような、熱転写プリンタにおいてサーマルヘッドとプラテン間の圧接機構は印刷品質に対し重要な項目であり、特に圧接力の均一さ、簡潔な構造について様々な手法で改良されてきた。
【0005】
このようなサーマルヘッドの圧接構成では、印刷時には、サーマルヘッドはカムにより回動され、比較的大きな力の圧縮バネを介してプラテンに圧接された状態となる圧接位置で固定される。しかし、サーマルヘッドがプラテンローラから離間した待機位置においては、サーマルヘッドを回動させる為に必要最小限のバネ力に設定されたコイルバネにより規制されているのみであった。故に、プリンタ本体の持ち運び時に、プリンタ本体のプリンタ本体に対し、落下などの事故によりサーマルヘッドが回動する方向へ衝撃が加わった場合、サーマルヘッドはコイルバネによる力に打ち勝ち、プラテンと衝突しダメージを負い、印刷品質を損ねる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明のプリンタは、
サーマルヘッドと、サーマルベッドに対向する位置に設けられたプラテンローラと、サーマルヘッドを、プラテンローラ側に圧接させる印刷位置と、プラテンローラから離間する待機位置とに移動させるヘッド移動手段と、
用紙が収納された用紙トレイを装着するための装着手段と、サーマルヘッドの移動を規制するための規制部材とを有し、装着手段に用紙トレイが装着されたことに応じて、規制部材が、サーマルヘッドの移動を規制する位置から、サーマルヘッドの移動を規制しない位置に移動することにより、ヘッド移動手段によるサーマルヘッドの印刷位置への移動が可能になるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリンタ本体を持ち運ぶ可能性が高い、用紙トレイの装着されていない時には、サーマルヘッドの移動を規制する。そのため、例えば、プリンタ本体の落下によりサーマルヘッドがプラテンローラ側に移動する力が加わったとしても、サーマルヘッドが移動しないため、サーマルヘッドとプラテンローラが互いに衝突し変形等のダメージを負うことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るサーマルプリンタの断面図である。
【図2】サーマルプリンタの構成と作動を示す図である。
【図3】用紙トレイが装着されている場合のサーマルプリンタの状態を示す図である。
【図4】用紙トレイが装着されていない時のサーマルプリンタの状態を示す図である。
【図5】サーマルヘッドが中間位置にあるときに、用紙トレイを抜去した場合のプリンタの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のサーマルプリンタの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1(a)は、本発明の実施の形態であるサーマルプリンタの構成を示す図である。サーマルヘッドはプリンタ本体1に設けられた軸部材14を回動中心として、一対のアーム部材13にサーマルヘッド11とプラテンローラ12間の圧接力を生じせしめる為の不図示の圧縮バネと不図示のフレームを介し保持し、該アーム部材13に設けられた軸受114を中心に回動可能に支持される。該アーム部材13はインクリボンカセット16の挿抜を可能とする為、インクリボンカセット16に干渉しないよう湾曲した形状とされている。印刷動作に応じて、不図示のモータ等により、アーム部材13が軸14を中心に回転駆動される。これにより、サーマルヘッド11は、プラテンローラ12に対して離間した待機位置と、プラテンローラ12側に圧接される印刷位置とに移動する。又、図1(a)で示す、印刷待機状態ではサーマルヘッド11はプラテンローラ12に対し最大離間距離Xを保つ位置でコイルバネ15にて支持され、インクリボンカセット16は走査線方向である、サーマルヘッド11長手方向へ挿抜着脱可能となっている。図1(a)は印刷待機状態であるので、サーマルヘッド11は、プラテンローラ12と離間した待機位置で停止している。
【0011】
図1(b)は本発明に係るサーマルプリンタへインクリボンカセット16及び用紙トレイ18をプリンタ本体1へ装着した状態の断面図である。図1(b)で示される様に、印刷媒体である用紙19は、用紙トレイ18にユーザによりセットされ、その後プリンタ本体1へ装着される。図1(a),(b)共に、サーマルヘッド11とプラテンローラ12は図1(a)で示す最大離間距離Xを保つ印刷待機位置にて支持されている。ここで、プリンタを収納する場合や、持ち運ぶ場合にはインクリボンカセット16は本体内に内蔵したままである可能性が高いが、用紙トレイ18はプリンタ本体1から離脱した状態である可能性が高い。これは、用紙トレイ18はプリンタ本体1より突出した配置となるため収納や持運び時に不便であるためである。つまり、通常、ユーザーに印刷の意思がなくプリンタを収納又は持運びする場合には、用紙トレイ18はプリンタ本体1に装着されていない。そこで、ユーザは、印刷を開始する意思がある場合に、図1(b)のように、用紙トレイ18をプリンタ本体1に装着して、印刷の開始のための操作を行う。尚、用紙トレイ18及びインクリボンカセット16はポストカードサイズ、L版サイズなどのバリエーションがある。そこで、プリンタ本体は、これらインクリボンカセット16の種類及び装着有無と用紙トレイ18の種類及び装着有無を検出する不図示の検出スイッチが配置されている。該検出スイッチにより検出された結果に基づき、インクリボン17の種類と用紙19のが整合が起きた場合及びインクリボンカセット16若しくは用紙トレイ18がプリンタ本体1に装着されていない場合には印刷動作を開始しないように制御されている。
【0012】
図1(c)はインクリボンカセット16及び用紙トレイ18がプリンタ本体にセットされ、ユーザーにより印刷開始操作が行われ、用紙トレイ18から用紙19の給紙動作を行っている状態を示している。印刷開始操作が行われると、プリンタは用紙トレイ18より一枚のみ用紙19を給紙する為、不図示のモータ等の動力により加圧板113が用紙トレイ18内の分離板112を下方より押上げる。これにより、分離版112上に積載された用紙19はプリンタ内に配置された給紙ローラ111に当接する。給紙ローラ111は図1(c)において時計回りに回転し、当節した一番上の用紙19のみをインクリボン17とプラテンローラ12の間に搬送する。
【0013】
ここで、サーマルヘッド11は図1(a)に示す最大離間位置Xから回動軸15を中心として図1(c)において時計回りに回動し、距離Yである中間位置をとる。これは、印刷工程であるイエロー、マゼンダ、シアン、オーバーコートの各色印刷後用紙リターン及びインクリボンの頭出し時に、その都度、最大離間位置と印刷位置を移動させずに、移動距離が少なくなしている。そして、速やかに次色工程へ移行させる。また、中間位置では、インクリボンカセット16を抜き出すためのイジェクト摘みが、サーマルヘッド11とまたはアーム部材と干渉する。そのため、印刷動作中にインクリボンカセット16が取り去られることを防止している。
【0014】
図1(d)は、用紙19がサーマルヘッド11及びインクリボン17と、プラテンローラ12の間に供給された後、サーマルヘッド11がプラテンローラ12とニップする印刷位置まで回動し、用紙19とインクリボン17を狭持した状態を示している。該印刷位置にて用紙19及びインクリボン17を搬送しつつサーマルヘッド11が発熱し、所望の画像を形成すべくインクがインクリボン17から用紙18へ転写される。
【0015】
図2(a)は、ユーザのプリンタ本体の持ち運び時に、サーマルヘッド11がプラテンローラ12に当たるのを防止するための規制部材の作動を主要部を透視及び斜視した簡略図である。図2(a)において、プリンタは前述した印刷待機状態であり、用紙トレイ18が装着されようとしている。ここで、24はサーマルヘッド11の熱を空気中へ逃がす為の放熱器であり、冷却効率を向上させて印刷動作を高速化させている。
【0016】
21は規制部材であり、待機状態においてサーマルヘッド11がプラテンローラ12側に移動することを規制するための部材である。規制部材21圧縮バネ23によりサーマルヘッド11側に付勢されており、付勢されているサーマルヘッド11の長手方向に移動可能である。つまり、サーマルヘッド11の回転移動方向と略垂直な方向に移動可能であり、移動可能な方向において、サーマルヘッド側に付勢されている。待機状態において、記載部材は、サーマルヘッド11を固定しているアーム部材13の一部と隙間Zをもって配置されている。隙間Zは部品公差や組み込み時のばらつき等の影響を充分に吸収可能な最小値に設定され、規制部材21は円滑に移動出来る。この状態において、プリンタ本体の落下などの衝撃が加えられた場合、規制部材21とアーム部材13が干渉する。そのため、サーマルヘッド11は自重及び加えられた衝撃が、コイルバネ15による付勢力に打勝ち、軸部材14を中心に回動したとしても、アーム部材13と規制部材21と干渉する。そのため、サーマルヘッド11は。プラテンローラ12と激突する事はない。規制部材21が配されていなく、プリンタ本体を落下させた場合、前加わった衝撃力よりプラテンローラ12とサーマルヘッドが激突し、変形等のダメージを負う可能性がある。サーマルヘッド11については、プラテンローラ12と均一な圧接状態を保つ必要がある為0.1mm未満の微小な凸形状を保つよう調整されて居るが、前記の様な衝撃が加えられた場合、その調整値を保てなくなる可能性がある。本願発明では、このようにプリンタの落下等により、サーマルヘッド11がプラテンローラに衝突してしまいサーマルヘッドが変形してしまうのを防ぐため、上述のような規制部材を設けている。
【0017】
図2(a)に示す様に、ユーザーにより用紙トレイ18を図中矢印A方向へ挿入することによりプリンタ本体1へ装着すると、リンク部材22は用紙トレイ18に押され、移動する。リンク部材22はプリンタ本体1に設けられた舌片25により矢印A方向へ摺動可能に支持されている。
【0018】
図2(b)は用紙トレイ18をプリンタへ装着する、途中の位置を上方より示した簡略図である。図中矢印Aで示された方向へ用紙トレイ18がユーザーによって挿入されることにより、リンク部材22も用紙トレイ18の挿入方向である矢印A方向へ移動される。規制部材21はリンク部材22に設けられた斜面により図中矢印B方向へコイルバネ23を圧縮しながら移動する。結果、アーム部材13が回動する範囲より規制部材21は退避して干渉しなくなる図3の位置に移動する。
【0019】
図3は、用紙トレイ18をプリンタ本体に装着したときの、規制部材21とアーム部材の位置関係を示す簡略図である。なお、図3では、サーマルヘッドは待機位置にある。本実施形態では、サーマルヘッド11の両端にアーム部材13が設けられ、サーマルヘッドは、アーム部材13を介してサーマルヘッドの長手方向と略直交する方向に回転する構成になっており、規制部材21は、サーマルヘッドの長手方向に移動可能である。上述の説明のように、用紙トレイ18をプリンタ本体に装着すると、規制部材21は、コイルバネ23に付勢されている方向と逆方向に移動し、図3(b)のような状態となる。つまり、サーマルヘッド11を移動させるためのアーム部材13から離間する方向に移動する。そのため、規制部材21は、アーム部材13と干渉しない位置となり、サーマルヘッド11は前述した中間位置や印刷位置への回転移動が可能となる。
【0020】
図4はサーマルヘッドが待機位置(図3)にある場合に、用紙トレイ18を抜去したときの規制部材21とアーム部材の位置関係を示す簡略図である。4図4(b)に示す通り、規制部材21はアーム部材13の下へ移動し、規制部材21は図中cで示される長さにおいてアーム部材13の回動を阻止するロック位置にある。規制部材21は、アーム部材13の回動方向略直交する方向に移動可能なように構成されているため、アーム部材13の回動方向に力が加わったとしても、規制部材は移動しないため、強固な規制が可能となる。。また、図4に示す通り、インクリボンカセット16の規制部材21側端面は供給側と巻取り側のリボンボビンを橋渡しするために、リブ形状にて繋がっている。図4(b)に示す通り、規制部材21はインクリボンカセット16の挿抜方向へ向かい開口した略逆コの字形状であり、規制部材21はインクリボンカセット16の該リブ形状と互いに干渉する事は無い。また、インクリボンカセット16の挿抜方向へ開口している為、待機時において該インクリボンカセットの挿抜にも支障は無い。
【0021】
図5は、サーマルヘッド11が中間位置にあるときに、用紙トレイを抜去した場合のプリンタの状態を示す図である。前述したように、中間位置ではサーマルヘッド11とプラテンローラ12は図1(c)に示された距離Yを保っている。図5(a)、(b)は共に同じ中間位置状態での図であり、図5(b)に示す通り、リンク部材が用紙トレイ18の抜き取り方向へ移動している為、規制部材21は圧縮バネ23の付勢力によりアーム部材13の側面へ押し付けられる。この状態に置いては、プリンタは印刷動作中でありサーマルヘッド11は中間位置から印刷位置の間を移動するのみである。規制部材21及びアーム部材13の接触している部位は、前記サーマルヘッド11の中間位置から印刷位置までの移動量を充分内包可能な範囲で摺動可能とされているため、印刷動作終了までの間サーマルヘッド11は支障なく中間位置から印刷位置まで双方向に移動可能である。また、圧縮バネ23は規制部材21を移動させる為だけに必要充分な小さな力で付勢している為、サーマルヘッド11に対し走査線方向に付勢する事で悪影響を及ぼす事はない。そして、印刷動作が終わり、サーマルヘッド11が、待機位置へ移動すると、アーム部材13と規制部材21とがアーム部材13の回転方向と略平行な面で当接する図5の状態から、図4の状態となるようにアーム部材13が回転移動する。アーム部材13と規制部材21とが、アーム部材21の回転方向と略垂直な面で当接することになるとなるため、アーム部材の回転移動が規制され、サーマルヘッド11は、プラテンローラ12側に移動できなくなる。
【0022】
図5では、サーマルヘッドが中間位置にある場合に、用紙トレイが抜き出された場合について説明したが、サーマルヘッドが印刷位置にある場合も、中間位置と同様である。この場合も、サーマルヘッドを中間位置と印刷位置に移動可能であるが、一度、サーマルヘッドを待機位置に移動させると、規制部材21によりサーマルヘッドの移動が規制されるため、移動ができなくなる。これを利用して、用紙トレイ18が抜き出されたことを不図示の検出スイッチで検出した場合は、必ず一度サーマルヘッドを待機位置に移動させ、用紙トレイが装着されていない場合は、常にサーマルヘッドの移動を規制するように制御してもよい。
【0023】
以上、本発明をその好適な実施状態に基づいて記述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドと、
前記サーマルベッドに対向する位置に設けられたプラテンローラと、
前記サーマルヘッドを、前記プラテンローラ側に圧接させる印刷位置と、前記プラテンローラから離間する待機位置とに移動させるヘッド移動手段と、
用紙が収納された用紙トレイを装着するための装着手段と、
前記サーマルヘッドの移動を規制するための規制部材とを有し、
前記装着手段に前記用紙トレイが装着されたことに応じて、前記規制部材が、前記サーマルヘッドの移動を規制する位置から、前記サーマルヘッドの移動を規制しない位置に移動することにより、前記ヘッド移動手段による前記サーマルヘッドの前記印刷位置への移動が可能になるように構成されたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記規制部材は、前記用紙トレイが前記装着手段に装着されたことに連動して移動する移動部材に当接し、当該移動部材と連動して移動することにより、前記サーマルヘッドの移動を規制しない位置へ移動することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記規制部材は、前記ヘッド移動手段の一部に当接することにより、前記サーマルヘッドの移動を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記規制部材は、前記サーマルヘッドが移動する方向と略直交する方向に移動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記規制部材は、前記サーマルヘッド側に付勢されていることを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記移動手段は、前記サーマルヘッドの端部に設けられたアーム部材と、前記アーム部材を回転軸を中心に回転駆動させることにより、前記アーム部材に連結されているサーマルヘッドを移動させる駆動手段とを有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記用紙トレイが前記装着手段から抜き取られた場合、前記規制部材は、前記前記アーム部材の回転を規制する位置に移動することにより、前記サーマルヘッドの移動を規制することを特徴とする請求項6に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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