説明

プリント回路体及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気回路、導体パッケージ(ICパッケージ)、あるいは導体コネクタ等に用いられるプリント回路体及びその製造方法に関し、さらに詳しくはレーザ切断により寸法精度の良い外形輪郭を備えたプリント回路体を製造する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に知られるプリント回路体は、絶縁基板上に導体回路パターンを形成し、その上にカバーレイフィルムを被着してなるものである。これの製法としては、いわゆる、(1)ウェットエッチング法、(2)回路パターン打抜き法、(3)電解メッキ法が代表的なものとして挙げられる。
【0003】ウェットエッチング法は、ポリイミド樹脂などの絶縁フィルム上に金属(Cu)箔がラミネートされたものを用い、これの金属箔側にフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィーにより導体回路パターン形成用のレジストパターンを形成する。そして塩化第二鉄あるいは塩化第二銅などの水溶液をスプレーして前記金属箔をエッチングし、前記絶縁フィルム上に導体回路パターンが形成されるものである。この導体回路パターンが形成された後は端子部裏当て用の硬質板及びカバーレイフィルム等を接着し、外形を金型により打ち抜くことによりコネクタ用のプリント回路体などが製造される。
【0004】回路パターン打抜き法は、金属(Cu)箔(あるいは金属ラミネート箔)を金型プレスにより配線パターン形状に打ち抜くことにより絶縁フィルム上に形成される導体回路パターンをまず初めに形成し、これをポリイミド樹脂などの絶縁フィルム上に接着する。そしてこの金型プレスによる配線パターンの打抜き形成及び絶縁フィルムの接着後は端子部裏当て用の硬質板及びカバーレイフィルム等を接着し、外形を金型により打ち抜くことによりプリント回路体が製造される。
【0005】電解メッキ法は、アルミなどの導電性を有する金属薄板(箔)の表面に導体回路パターン形成用のレジストパターンをウェットエッチング法の場合と同様にフォトリソグラフィー等の方法により形成する。そしてこのレジストパターンの導体回路パターン形成領域のレジストを現像除去した後、ピロリン酸銅などの電解メッキ浴に浸漬し、前記導電性金属箔を陰極とする電解メツキにより該金属箔上に導体回路パターンを電析により形成する。
【0006】次にこの金属箔上の導体回路パターン面にポリイミド樹脂などの絶縁フィルム、及び端子部裏当て用の硬質板を貼り合わせ、金属箔は剥離する。そしてその金属箔の剥離面にカバーレイフィルムを被着し、最後に金型により外形を切断することによりプリント回路体が製造される。特開平3−270055号公報、特開昭63−164295号公報、特開昭63−18693号公報などはこの電解メッキ技術を開示するものである。
【0007】ところでこのような各種の製造方法においてはいずれの場合も、最終的にはプレス金型により外形を打ち抜いてプリント回路体を製造することが一般的に行われており、あるいは別な方法としてレーザ切断により外形を切断することも考えられなくはない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のプレス金型による外形打ち抜きに依る場合は、金型の位置合わせが難しいために外形寸法精度に限界がある。そのために高精度が要求される部品やコネクタ用のフレキシブルプリント回路体の小型化や配線パターンの微細化には適応できなかった。
【0009】たとえば寸法精度の問題から、コネクタ用のフレキシブルプリント回路体などでは、コネクタハウジングに装着される際に、フレキシブルプリント回路体のコネクタ部の外形幅を位置合わせの基準として用いるので、電極パターンと外形との幅方向の寸法精度に誤差が生じていると隣接電極との短絡等が生じるといった不具合があった。
【0010】一方レーザビームによる切断の場合も、寸法精度は多少向上するがレーザビームの照射条件がロット間で微妙に変動するためやはり高精度化に限界があった。本発明の解決しようとする課題は、レーザビームによる外形切断を行うもその外形寸法精度に優れたプリント回路体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明のプリント回路体は、絶縁基板上にフォトリソグラフィーにより導体回路パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝が形成されたフォトレジスト層を有すると共に、該フォトレジスト層の前記導体回路パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝内には電気メッキにより導体回路パターン及び外形輪郭規定ガイドがフォトレジスト層の厚みを越えない範囲でそれぞれ形成され、前記絶縁基板側からのレーザ切断により前記外形輪郭規定ガイドの端縁に沿ってレーザ切断されてなることを要旨とするものである。
【0012】そしてこのプリント回路体がとくにコネクタ用のフレキシブル回路体である場合には、そのフレキシブル部ではそれ程切断寸法の精度が要求されないが、前後端のコネクタ部ではその幅寸法の精度が要求されるためその前後端のコネクタ部に貼着される絶縁性の硬質板の切断に本発明が適用されるのが好ましい。ここに「絶縁基板」としては、ポリイミド樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系などの絶縁性樹脂系材料が一般的に用いられる。
【0013】本発明に係るプリント回路体の製造方法は、導電性を有する被除去材の表面にフォトレジスト層を形成する工程と、該フォトレジスト層にフォトリソグラフィーにより導体回路用パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝を形成する工程と、前記被除去材を一方の電極として電気メッキにより前記導体回路用パターン溝に導体回路パターンを形成すると同時に前記外形輪郭規定パターン溝に外形輪郭規定ガイドを形成する工程と、前記被除去材表面に形成された導体回路パターン及び外形輪郭規定ガイド側の面に絶縁基板を貼着する工程と、前記被除去材を前記フォトレジスト層より除去する工程と、前記絶縁基板側よりレーザ照射し前記外形輪郭規定ガイドの外端縁に沿ってレーザ切断する工程とからなることを要旨とするものである。
【0014】この場合に前記レーザ切断工程においてはエキシマレーザが用いられるのが好ましい。このエキシマレーザを用いることによって絶縁基板はレーザ切断されるが、外形輪郭規定ガイドはそのまま残る。したがってプリント回路体の外形寸法は外形輪郭規定ガイドの外端縁によって規定され、寸法精度の良いプリント回路体が得られる。
【0015】尚、被除去材表面に形成された導体回路パターン及び切断面ガイドパターン面に絶縁基板を貼着するには、接着剤を用いて熱圧着する方法が良く用いられる。接着剤としては、耐熱性のものが好ましい。エポキシ系、フェノール系、あるいはポリエステル−イソシアネート系のものが好適である。尚、前記被除去材をフォトレジスト層より除去するに際しては、機械的に引き剥すことの他に、酸やアルカリにて溶解除去してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るプリント回路体が適用されるコネクタ用フレキシブルプリント回路体の外観を示している。図示のようにこのプリント回路体10は、フレキシブル部とその前後端のコネクタ部とからなり、フレキシブル部は25μm厚の可撓性(フレキシブル性)を有するポリイミド樹脂材料による絶縁フィルム12の上にエポキシ系接着剤層14を介して約70〜80μm厚の厚膜レジスト層16が設けられ、該厚膜レジスト層16には銅(Cu)電析物による導体回路パターン18が形成され、また幅方向の両側端には同じく銅(Cu)電析物によるレーザ切断用の外形輪郭規定ガイド20R、20Lが前後端方向の全長にわたって形成されている。
【0017】そしてこのプリント回路体10の前後端のコネクタ部(この図1では前端側のコネクタ部のみが図示されている)では、同じくポリイミド樹脂材料のものであるが、0.2mm厚(200μm厚)の硬質の絶縁性硬質基板22がやはりエポキシ系接着剤層24を介して厚膜レジスト層16の導体回路パターン18及び外形輪郭規定ガイド20R、20Lの下面に貼着されている。そして導体回路パターン18及び外形輪郭規定ガイド20R、20Lの上面にはやはりエポキシ系接着剤層26を介して25μm厚さのポリイミド樹脂フィルム製のカバーレイフィルム28が被覆されている。
【0018】図2乃至図4は、このプリント回路体10の製造工程を示している。この製造工程は、大きく分けて厚膜レジスト塗布工程、導体回路用パターン溝及び外形輪郭規定ガイド用パターン溝の形成工程、電気メッキ工程、絶縁フィルム及び硬質絶縁基板の接着工程、被除去材除去工程、カバーイレ貼着工程、無電解はんだ付け工程、ヒュージング工程、レーザ切断工程、及び金型プレス打ち抜き工程からなっている。
【0019】初めに厚膜レジスト塗布工程について説明すると、この工程では被除去材としての厚さ0.08mm(80μm)の金属(アルミ)箔30の表面に紫外線硬化型の樹脂レジストを厚膜に塗布することにより行われる。この厚膜レジスト層32の材料は、この実施例ではシプレイ・ファーイースト社製ネガ型フォトレジスト「EAGL NT−90」を用いている。その塗布方法としては、フォトレジストの粘度を80〜90mPa・sに調節し、ディップコーターにて引き上げ速度15mm/sで塗布した後、自然乾燥を30分行い、さらに強制乾燥を130℃×30分行う。そしてこの塗布・乾燥を3回繰り返すことによりアルミ箔26の表面に厚膜レジスト層32が約70〜80μmの厚さで形成されるものである。
【0020】次に導体回路用パターン溝及び外形輪郭規定ガイド用パターン溝の形成工程について説明すると、上述のアルミ箔30上に形成された厚膜レジスト層32に露光・現像により回路パターン溝34を形成するものであるが、このときに同時にコネクタ部の外形幅を規定する外形幅規定ガイドを形成するための外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36Lを幅方向の左右両サイド部に形成する。
【0021】この回路パターン溝34、及び外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36Lを形成するに際しては、フォトマスク(図示せず)をレジスト塗布面に密着し、オーク社製紫外線露光機「HMW532」にて紫外線を露光量1500mJ/cm2 まで照射して露光部分を硬化させる。次いでスプレー式現像機にてシプレイ・ファーイースト社製NT−90用専用現像液を35℃で270秒間吹き付けて未露光部分を除去する。配線パターン形状は導体幅0.08mm、ランド形状部の形状は0.12mm×長さ0.4mm、外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36Lの溝幅は0.80mmとしている。
【0022】次ぎに電気メッキ工程について説明すると、このようにしてアルミ箔30上の厚膜レジスト層32に回路パターン溝34、34……及び外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36Lを形成した後、これらの回路パターン溝34、34……内及び左右の外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36L内に銅電析により前述の導体回路パターン18及びレーザ切断用の外形幅規定ガイド20R、20Lを形成する。
【0023】この導体回路パターン18及び左右の外形幅規定ガイド20R、20Lの形成に電気銅メッキ法を採用するものであるが、この電気銅メッキ法は、先ずピロ燐酸銅メッキ浴を用いて1次メッキを5μmの厚みになるまで析出させた後、硫酸銅メッキ浴を用いて2次メッキを厚み55μmで行っている。したがってアルミ箔30上に電析される導体回路パターンの高さは60μmとなり、同時に外形幅規定ガイド20R、20Lの厚みも60μmになっており、レジスト層の厚みを越えていない。
【0024】次ぎに絶縁フィルム及び絶縁性の硬質基板の接着工程について説明すると、このようにしてアルミ箔30上の導体回路パターン溝34、34……及び外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36L内に導体回路パターン18及び外形幅規定ガイド20R、20Lが形成されたものを、アルミ箔30上に析出したメッキ配線パターンの前後端両端末より5mmの長さ分を除いた中央フレキシブル領域部では25μm厚のポリイミド樹脂による絶縁フィルム12上にエポキシ系樹脂接着剤により接着している。この絶縁フィルム12の接着は、35μm厚さ量のエポキシ系接着剤を介して1.3MPaの圧力で160℃×5分間熱圧着することにより行っている。
【0025】またアルミ箔30上に析出したメッキ配線パターンの前後端のコネクタ領域部では0.2mm厚(200μm厚)の同じくポリイミド樹脂材料による硬質の絶縁性硬質基板22をやはり同様にエポキシ系樹脂接着剤により接着している。この絶縁性硬質基板22の接着も35μm厚さ量のエポキシ系接着剤を用いて1.3MPaの圧力で160℃×5分間圧着することにより行っている。
【0026】そして次に被除去材除去工程としてアルミ箔30を前述の厚膜レジスト層16(32)から引き剥すことにより絶縁フィルム12及び硬質基板22上に厚膜レジスト層16と該厚膜レジスト層の導体回路パターン溝34、34……内及び外形幅規定ガイド用パターン溝36R、36L内にそれぞれ電気銅メッキによる導体回路パターン18及び左右の外形幅規定ガイド20R、20Lが形成されたものが得られる。
【0027】さらに該厚膜レジスト層16(32)に形成される導体回路パターン18、及び左右の外形幅規定ガイド20R、20Lを覆うようにその上にカバーレイフィルム28が被着される。このカバーレイフィルム28の被着は、メッキ配線パターンの前後端両端末より2mmの長さ分を除いた中央フレキシブル領域の部分に厚さ25μmの熱硬化性ポリイミドフィルムを厚さ35μmのエポキシ系接着剤を介して1.3MPaの圧力で160℃×20分間の熱圧着を行うことによりなされる。
【0028】その後無電解はんだメッキ、ヒュージングが行われるが、この実施例では、無電解はんだメッキは、シプレイ・ファーイースト社製無電解はんだメッキ浴「ソルダーポジット」を用いてメーカー推奨条件に従ってはんだメッキを行っている。またヒュージングは、同じくシプレイ・ファーイースト社製無電解はんだメッキ浴「ソルダーポジット」のメーカー推奨条件に従って析出したはんだメッキのヒュージングを行っている。これらの工程については、レーザ切断、プレス打抜き工程の後に行われても良い。また本発明の説明においてそれ程重要ではないのでこの程度の説明にとどめる。
【0029】そして次に本発明の構成上重要なレーザ切断工程について説明すると、このレーザ切断は、三菱電機製エキシマワークシステムMEX−24−Mを用いてエキシマレーザのビーム径0.4mmφ、周波数200Hz、フルエンス1.0mJ/cm2 、ショット数3000ショット/0.1mmを条件としてそのレーザビームを硬質基板22側より照射し、外形幅規定ガイドに沿って切断している。
【0030】図5は、そのレーザ切断の状況を拡大して示している。エキシマレーザのビーム径が0 4mmφとしてこのレーザビームの照射によって硬質基板22は樹脂材料によるものであるからビームの照射領域が溶断されるが、左右の外形幅規定ガイド20R、20Lは導体回路パターン18と同一材料の銅電析物により構成されているためレーザビームによって溶断されることなく、結果的にその外形幅規定ガイドの外端縁ラインに沿った切断状態が得られる。これは、エキシマレーザの特性として、通常のYAGレーザや炭酸ガスレーザのように熱溶断に依り材料を切断するものではなく、材料の組成の分子結合を高周波振動により断ち切ることにより材料の切断を行うものであることに因る。
【0031】最後に打ち抜き工程は、高い寸法精度の切断を要求されない部位についてレーザ切断の代わりに通常の金型プレスによる打ち抜きが行われるものであり、この実施例では製品の長さ方向、及び中央のフレキシブル部の幅方向については金型プレスにより打ち抜いている。以上の方法で作製されたプリント回路体の寸法精度評価試験を行ったのでその結果を次に説明する。比較例として次の3種類のサンプルを作成した。
【0032】(比較例1)実施例と同じ配線パターンを有するフォトマスクを使用し、実施例と同様に各工程を経た製品を画像処理によってレーザ照射位置を認識させてポリイミドシート部分の幅方向の外形切断を行った後、金型により製品の長さ方向、及び中央フレキシブル部の幅方向を打ち抜いた。
【0033】(比較例2)実施例と同じ配線パターンを有するフォトマスクを使用し、実施例と同様各工程を経た製品を高精度パンチングマシンで画像処理によって打ち抜き部分を認識させポリイミドシート部分の幅方向の外形を打ち抜いた後、金型により製品の長さ方向、及び中央フレキシブル部の幅方向を打ち抜いた。
【0034】(比較例3)厚さ35μmの銅箔を厚さ34μmのエポキシ系接着剤を介して厚さ25μmの熱硬化性ポリイミドフィルムにラミネートされた銅貼りポリイミドフィルムの銅箔面にシプレイ・ファーイースト社製ネガ型フォトレジスト「EAGL NT−90」をディッピングにより厚さ10μmのレジスト皮膜を形成し、フォトレジスト法によりレジストパターンを形成してスプレー式エッチング装置を用い塩化第二鉄FeCl3 を吹き付け配線パターンの間隙部を溶解除去し、配線パターン及びレーザ切断用ガイドパターンを形成した。この後銅面側に配線パターンの両端末により2mmを除く中央部分に厚さ25μmの熱硬化性ポリイミドフィルムを厚さ35μmのエポキシ系接着剤を介して、またベースフィルム側に配線パターンの両端側より中央に向かって7mm、外側に向かって2mm、合計9mmの幅を持つ厚さ0.2mmの熱可撓性ポリイミドシートを厚さ35μmのエポキシ系接着剤を介して1.3MPaの圧力で160℃×20分間の熱圧着を行った。このようにして得られたガイドパターン付き銅箔エッチング回路を前記と同様の方法でレーザ切断と金型打ち抜きを行った。
【0035】以上の方法で作製されたプリント回路体の寸法精度評価結果を次の表1に示す。この表において、各寸法W、W、Wの値は図6に示したように、Wについてはこのプリント回路体のコネクタ部における幅寸法、W及びWについては左右両サイドの導体回路センター位置からこのコネクタ部の幅方向端縁までの寸法を採っている。サンプル数としてはそれぞれ20個づつとしている。
【0036】この表1の結果から判るように、本発明品の場合にはコネクタ部の外形幅寸法(W)、及び幅方向端の導体回路センター位置からこのコネクタ部の幅方向端縁までの寸法(W1 、W2 )のいずれも狙い値に略一致し、しかもサンプル間のバラツキ度(3σ)の値をみても非常にバラツキが小さいとの結果が得られた。
【0037】これに対して比較例1〜3のいずれかの場合もコネクタ部の外形幅寸法(W)や両端の導体回路センター位置からコネクタ部幅方向端縁までの寸法(W1 、W2 )が狙い値より外れ、そのバラツキも大きいとの結果となった。
【0038】この表1の結果を考察するに、本発明の場合にはコネクタ部の幅寸法(W)が外形幅規定ガイド20R、20Lの両外端縁間の寸法幅で規定され、この外形幅規定ガイド20R、20Lそのものはフォトリソグラフィー法と電気メッキ法により形成されたものであるから良好な寸法精度が得られたものである。
【0039】またコネクタ部両端の導体回路センター位置から幅方向端縁までの寸法(W1、W2 )についても導体回路パターンそのものがやはりフォトリソグラフィー法電気メッキ法により形成されているので同様の良好な寸法精度の結果が得られたものと推察される。
【0040】一方、比較例1〜3についてはバラツキ度(3σ)の値が大きい理由として、1)比較例1、2の場合にはレーザ切断や金型プレスによる打ち抜きでは寸法幅が精度良く出ないこと、2)比較例3の場合はガイドパターン幅がサイドエッチングにより精度良くできていないこと等が考えられる。
【0041】
【表1】


【0042】次にレーザビームの照射をカバーレイフィルム側から行うか、本発明のように絶縁基板側から行うかによってコネクタ部の外形寸法精度にどの程度違いが生じるかについて検討した。図7(a)はレーザビームをカバーレイフィルム側から照射したときのレーザ切断面の断面形状を示したものであり、図7(b)はレーザビームを絶縁基板側から照射したときの同じくレーザ切断面の断面形状を示したものである。
【0043】両者の比較図から判るように、レーザビームをカバーレイフィルム側から照射したとき(図7(a))にはレーザビームのビーム径は照射方向の先端に向けて先細りとなるものであるから、外形幅規定ガイド20R、20Lはその外端縁に沿って切断されるものの、絶縁基板22の切断面はその下端縁(底面の端縁)の幅寸法が上端縁(導体回路パターン側の端縁)の幅寸法より大きい末広がりのテーパ面形状をなすこととなる。そしてその結果コネクタ部の外形幅寸法は絶縁基板22の下端縁の寸法幅によって規定されることになり、この寸法幅はレーザビーム条件によって微妙に変動することとなる。
【0044】これに対してレーザビームを絶縁基板側から照射したとき(図7(b))には絶縁基板の切断面はテーパ面をなすがその端縁が外形幅規定ガイド20R、20Lの端縁よりはみ出すことなく、結果的にコネクタ部の外形幅寸法は外形幅規定ガイド20R、20Lの両外端縁間の寸法によって規定され、それ以外の部位の寸法精度(絶縁基板など)の影響を受けることはない。したがってレーザビームの条件が多少ばらついてもそれは絶縁基板の切断面に影響があるのみでコネクタ部の外形幅寸法の変動には全く影響しない。
【0045】ちなみに次の表2にはレーザビームを本発明のように絶縁基板側から照射した場合と比較としてカバーレイフィルム側から照射した場合との寸法精度の評価結果を示したものである。
【0046】
【表2】


【0047】この表2の結果からも判るように、レーザビームを絶縁基板側から照射した方がカバーレイフィルム側より照射するよりもバラツキ(3σ)が小さく寸法精度として優れていることは明らかである。
【0048】かくして上記実施例について詳細に説明したように本発明のプリント回路体によれば、コネクタ部の幅寸法が、メッキ回路体に形成される外形幅寸法精度の良い左右一対の外形幅規定ガイド20R、20L間の間隔によって規定され、絶縁性硬質基板22の幅寸法の影響を受けないものであるから、コネクタハウジングに装着の際の電極パターンの位置ずれによる隣接電極間の短絡(ショート)等の問題は回避される。
【0049】さらにその外形幅規定ガイド20R、20Lはフォトリソグラフィー法及び電気メッキ法を利用しての導体回路パターン形成時の同時に形成するものであるから、あらためて別工程を設ける必要もなく同一工程で製造され、またレーザ切断にビームの照射条件や位置合わせ等に神経を使うこともない等製造工程上の有利性を備えるものである。
【0050】尚、本発明は上記した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。たとえば上記実施例では電解メッキ法により導体回路パターン及び外形幅規定ガイドを形成するようにしたが、無電解メッキ法あるいは蒸着法(物理的・化学的の両方を含む)などに依ってもよい。また上記実施例ではコネクタ用のプリント回路基板について示したが、その他の切断加工寸法の精度を要求される各種のプリント回路体に適用できることは言うまでもない。
【0051】
【発明の効果】本発明のプリント回路体は、被除去材の表面にレジストマスクを用いて電気メッキにより導体回路パターンを形成すると同時にコネクタ部の外形幅規定ガイドを形成し、このコネクタ部に貼合わせる絶縁性基板側よりレーザ照射して外形幅規定ガイドの外端縁に沿ってレーザ切断することによって得られる。したがってコネクタ部の幅寸法は外形幅規定ガイドの寸法幅によって規定され、硬質基板の寸法幅の影響を受けないのでその寸法精度は極めて高いものである。このことからこのプリント回路体をコネクタハウジングに装着するに際し両外形幅規定ガイド間の幅寸法、導体回路パターンの各導体間の間隔、各外形幅規定ガイドと導体との間の間隔などは電極パターンに一致し、隣接電極との短絡(ショート)が起こる等の不具合が生じるようなことはなく、製品としての信頼性はすこぶる高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプリント回路体が適用されるコネクタ用フレキシブルプリント回路体の外観斜視図である。
【図2】図1に示したプリント回路体の製造工程図である。

【図3】同じく、図1に示したプリント回路体の製造工
程図である。

【図4】図1に示したプリント回路体のレーザ切断工程
の外観を示す図である。

【図5】エキシマレーザにより外形を切断する状態を拡
大して示した図である。

【図6】本発明品と従来品とのプリント回路体の外形切
断寸法精度評価結果を説明するための図である。

【図7】(a)レーザ切断をカバーレイフィルム側から
行う場合と、(b)絶縁基板側から行う場合とでレーザ切断面の形状の違いを示した図である。
【符号の説明】
10 プリント回路体
12 絶縁フィルム
18 導体回路パターン
20R、20L 外形輪郭規定ガイド(外形幅規定ガイド)
22 絶縁性硬質基板
30 被除去材(アルミ箔)
32 厚膜レジスト層
34 導体回路パターン溝
36R、36L 外形幅規定ガイド用パターン溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板上にフォトリソグラフィーにより導体回路パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝が形成されたフォトレジスト層を有すると共に、該フォトレジスト層の前記導体回路パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝内には電気メッキにより導体回路パターン及び外形輪郭規定ガイドがフォトレジスト層の厚みを越えない範囲でそれぞれ形成され、前記絶縁基板側からのレーザ切断により前記外形輪郭規定ガイドの端縁に沿ってレーザ切断されてなることを特徴とするプリント回路体。
【請求項2】 前記絶縁基板は、フレキシブル性を有するプリント回路体の前後端のコネクタ部の少なくとも一方の面に貼着される絶縁性の硬質板からなることを特徴とする請求項1に記載されるプリント回路体。
【請求項3】 導電性を有する被除去材の表面にフォトレジスト層を形成する工程と、該フォトレジスト層にフォトリソグラフィーにより導体回路用パターン溝及び外形輪郭規定パターン溝を形成する工程と、前記被除去材を一方の電極として電気メッキにより前記導体回路用パターン溝に導体回路パターンを形成すると同時に前記外形輪郭規定パターン溝に外形輪郭規定ガイドを形成する工程と、前記被除去材表面に形成された導体回路パターン及び外形輪郭規定ガイド側の面に絶縁基板を貼着する工程と、前記被除去材を前記フォトレジスト層より除去する工程と、前記絶縁基板側よりレーザ照射し前記外形輪郭規定ガイドの外端縁に沿ってレーザ切断する工程と、からなることを特徴とするプリント回路体の製造方法。
【請求項4】 前記レーザ切断工程においてはエキシマレーザが用いられることを特徴とする請求項3に記載されるプリント回路体の製造方法。
【請求項5】 前記絶縁基板は、フレキシブル性を有するプリント回路体の前後端のコネクタ部の少なくとも一方の面に貼着される絶縁性の硬質板からなることを特徴とする請求項3に記載されるプリント回路体の製造方法。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【特許番号】第2761866号
【登録日】平成10年(1998)3月27日
【発行日】平成10年(1998)6月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−75280
【出願日】平成8年(1996)3月4日
【公開番号】特開平9−246688
【公開日】平成9年(1997)9月19日
【審査請求日】平成8年(1996)8月7日
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【参考文献】
【文献】特開 平5−190755(JP,A)
【文献】特開 昭62−65397(JP,A)