説明

プリント基板

【課題】少なくとも2方向のディッピングが可能なプリント基板を提供して、作業効率を落とすことなくブリッジの発生の防止が可能な技術を提供すること。
【解決手段】プリント基板10を所定方向Aもしくはその逆方向に移動させディッピングを行う際、順次ディッピングされる隣接した半田付着部5どうしの短絡を防止するために、前記所定方向に対して225°をなした第1の延長部6aと、前記所定方向に対して45°をなした第2の延長部6bとを設けた。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、電子回路に用いられるプリント基板に係り、特にプリント基板のディッピング時に所謂ブリッジを防止する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子回路に用いられるプリント基板は、図6に示したように、絶縁基板100に銅箔等によって導電部110が形成され、ディッピング時に半田が付着しないように半田付着部120を除いてソルダレジストによるガード塗膜130が形成されている。
近年においては、プリント基板の面積の縮小化・高密度化を図るために、電気部品自体も小型化されるとともに、銅箔間の距離を小さくすることが要求されている。
【0003】
このように銅箔間の距離が小さいプリント基板のディッピング時に、例えばディッピング方向を図6の矢印の方向とした場合には、図7のように、半田付着部120どうし間で半田による短絡現象、所謂ブリッジ140が発生しやすくなるという問題があった。
このようなブリッジが発生すると、そのプリント基板は不良となるので、このようなブリッジの発生は避けなければならない。
そこで、このようなブリッジの発生を防ぐためのプリント基板の構造が実公昭62-46299号公報に開示されている。
【0004】
実公昭62-46299号公報に開示されている構造は、図8のように、絶縁基板200上に設けられた銅箔210と、該銅箔210に設けられた複数の電気部品のリード線孔215と、前記銅箔210の所定部に塗布されたレジスト膜等のガード用塗膜230と、前記リード線孔215の周辺に該ガード用塗膜230を剥離した半田付着部220とを備えたプリント基板装置において、該プリント基板装置に複数の前記電気部品を取付けて前記プリント基板を所定方向(矢印Bの方向)に移動させディッピングを行う際、順次ディッピングされる前記半田付着部分220の前記半田付着部分どうしの短絡を防止するために、前記所定方向に鋭角をなした前記半田付着部分の延長部250を設けたことを特徴とするプリント基板装置である。前記延長部250は先細りの形状に形成されている。
【0005】
図8において、前記所定方向に鋭角をなした前記半田付着部分の延長部250を設けたことにより、前記所定方向にプリント基板を移動させて半田槽(図示せず)に浸漬させてディッピングを行ったとき、半田が前記リード線孔の周辺の半田付着部220に加えて延長部250に付着するので、従来はディッピング時に前記リード線孔の周縁の後側で半田が滞留していたのを防止し、所謂ブリッジを未然に防止できるようにしたものである。
また、このような特殊構造のプリント基板とすることができない場合には、ブリッジが発生しにくいように、電気部品の間隔を離したり、電気部品の配置方向を無理に変更したり、所定のマスクシートを貼り付けた状態でディッピングすること等が行われていた。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上述したような実公昭62-46299号公報に開示されている構造では、ディッピング方向を逆にすると、前記延長部が機能せずに前記半田付着ブリッジに半田が滞留して従来と同様にブリッジが発生しやすいという問題があった。
また、電気部品の間隔を離すと高密度化に対応できず、電気部品の向きを無理に変更することは実質的には困難であり、マスクシートを用いる方法は、マスクシートを作成する手間と、貼り付ける手間と、ディッピング後に剥がす手間を要するので作業効率が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本考案は、少なくとも2方向のディッピングが可能なプリント基板を提供して、作業効率を落とすことなくブリッジの発生の防止が可能な技術を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案にかかるプリント基板の請求項1は、絶縁基板上に設けられた導電部と、該導電部に形成された半田付着部を除いて塗布されたガード用塗膜と、を備えたプリント基板において、該プリント基板を所定方向に移動させディッピングを行う際、順次ディッピングされる隣接した前記半田付着部分どうしの短絡を防止するために、前記所定方向に対して鋭角をなした前記半田付着部分の第1の延長部と、この第1の延長部と180°をなした前記半田付着部分の第2の延長部とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2は、第1の延長部は所定方向に対して225°をなし、第2の延長部は所定方向に対して45°をなしたことを特徴とするものである。
請求項3では、第1と第2の延長部は、半田付着部の幅より狭くした。
請求項4では、第1と第2の延長部の後部は、所定方向に平行に延伸させた。
請求項5では、半田付着部と第1と第2の延長部との間に、導電部の無い絶縁部を介在させた。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下に、本考案にかかるプリント基板を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本考案のプリント基板の平面図を図1に示して説明する。
図1において、1は絶縁基板、2はリード線孔、3は銅箔等の導電部、4は半田付着防止のガード用塗膜として塗布されたソルダレジスト、5は前記ソルダレジストが塗布されていない半田付着部である。そして、10は本考案にかかるプリント基板である。
6aは矢印Aで示したディッピング方向と225°をなした第1の延長部であり、6bは矢印Aで示したディッピング方向と45°をなした第2の延長部である。これらの延長部の幅W6は、前記半田付着部5の幅W5より狭い幅とした。
【0012】
このようにして前記ディッピング方向と225°をなした前記第1の延長部6aを設けたことにより、前記ディッピング方向Aにプリント基板を移動させて半田槽(図示せず)に浸漬させてディッピングを行ったとき、半田が前記リード線孔2の周辺の半田付着部5に加えて第1の延長部6aに流れて付着するので、従来はディッピング時に前記リード線孔の周縁の後側で半田が滞留していたのを防止し、所謂ブリッジを未然に防止できるようにしたものである。
【0013】
このプリント基板1の場合には、前記延長部6aに加えて、前記ディッピング方向Aと45°をなした前記第2の延長部6bも設けたので、前記ディッピング方向Aとは逆の方向Bにディッピングした場合でもブリッジの発生を防止できる。
即ち、図2に示したように、矢印Bの方向にディッピングを行ったとき、半田が前記リード線孔2の周辺の半田付着部5に加えて第2の延長部6bに流れて付着するので、従来はディッピング時に前記リード線孔の周縁の後側で半田が滞留していたのを防止し、所謂ブリッジを未然に防止できるようにしたものである。
このように、二つの延長部を設けたので、ディッピング方向が単一方向に限定されることなく、逆方向にディッピングしてもブリッジの発生を防止できるので、プリント基板の設計およびディッピングの手順の融通が効くという優れたプリント基板を提供できるのである。
【0014】
さらに、前記二つの延長部は矢印Aに対して45°と225°をなしているので、図3に示したように、前記矢印A、Bと直交する方向C、Dにディッピングを行った場合も、二つの延長部の何れか一方がディッピング方向に対して225°をなすことになり、上記同様にブリッジの発生を防止できるのである。
【0015】
このように、ひとつのディッピング方向Aに対して45°と225°をなした二つの延長部を設けたので、4つの方向A、B、C、Dの何れの方向でディッピングを行ってもほぼ同様にブリッジの発生を防止できるのである。
さらに、前記二つの延長部の幅W6は、前記半田付着部5の幅W5より狭い幅としたので、付着する半田の量が抑制される。従って、半田の無駄を抑制できるのである。
【0016】
さらに、図4に示したように各延長部にさらに延伸させた二つの平行部6c、6dを設けても良い。第1の平行部6cは第1の延長部6aの後部において、前記方向Aに平行な方向(180°の方向)にさらに延伸させた部分であり、この部分もソルダーレジストが塗布されていず半田が付着可能に形成されている。
第2の平行部6dは第2の延長部6bの後部において、前記方向Aに平行な方向(同じ方向)にさらに延伸させた部分であり、この部分もソルダーレジストが塗布されておらず半田が付着可能に形成されている。
【0017】
このような平行部6c、6dを設けたので、矢印Aの方向もしくは矢印Bの方向にディッピングを行った場合には、前記延長部に加えて平行部6c、6dの何れかに余分な半田が付着するので、さらに効果的にブリッジの発生を防止できるのである。
本発明でいうところの45°と225°は現実的に4つの直交する方向からほぼ同等の作用効果が得られる角度であれば、正確に45°もしくは225°でなくても、ほぼ45°もしくは225°であればよいことは当然である。また、45°と225°は、図1に示したようにディッピング方向を基準にして、その基準からの角度を示したものであって、時計回り方向もしくは半時計回り方向の何れか一方方向の角度ではない。
【0018】
なお、図5に示したように、、半田付着部5と第1と第2の延長部6e,6fとの間に、導電部の無い絶縁部7a,7bを介在させてもよい。この場合には、独立した延長部6e,6fに余分な半田が付着することにより隣接した半田付着部5間のブリッジの発生を防止できる。しかも、独立した延長部6e,6fは、導電部の無い絶縁部7a,7bによって半田付着部5とは絶縁されているので、回路の特性に対する悪影響が少ない。仮に半田付着部5と前記独立した延長部6e,6fとの間にブリッジが発生してもさらに他の導電部と導通していなければ不都合は無い。
なお、図2、3、4、5においてはソルダーレジストや絶縁基板の図示は省略した。
【0019】
【考案の効果】
本考案の請求項1では、プリント基板を所定方向に移動させディッピングを行う際、順次ディッピングされる隣接した半田付着部分どうしの短絡を防止するために、前記所定方向に対して鋭角をなした前記半田付着部分の第1の延長部と、この第1の延長部と180°をなした前記半田付着部分の第2の延長部とを設けたので、前記所定の方向だけでなく逆方向にディッピングを行ってもブリッジの発生を防止できる。
【0020】
請求項2では、第1の延長部は所定方向に対して225°をなし、第2の延長部は所定方向に対して45°をなしたので、前記所定方向もしくは逆方向だけでなく、これらの方向に直交する方向からディッピングを行ってもブリッジの発生を防止できる。
請求項3では、第1と第2の延長部は、半田付着部の幅より狭くしたので、半田の付着量が少なくなり半田の無駄を省けるという効果が得られる。
【0021】
請求項4では、第1と第2の延長部の後部は、所定方向に平行に延伸させたので、さらにブリッジの発生を防止できる。
請求項5では、半田付着部と第1と第2の延長部との間に、導電部の無い絶縁部を介在させたので、前記延長部6e,6fと半田付着部5とは絶縁され、延長部に付着した半田が回路の特性に悪影響を与えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案にかかるプリント基板の実施の形態の構成を示した平面図である。
【図2】前記プリント基板のディッピング時の説明図である。
【図3】前記プリント基板のディッピング時の説明図である。
【図4】別の形態のプリント基板のディッピング時の説明図である。
【図5】さらに別の形態のプリント基板のディッピング時の説明図である。
【図6】従来例のプリント基板の平面図である。
【図7】従来例のプリント基板のディッピング時の説明図である。
【図8】別の従来例のプリント基板の平面図である。
【符号の説明】
10 プリント基板
1 絶縁基板
2 リード線孔
3 銅箔等の導電部
4 ガード用塗膜、ソルダレジスト
5 半田付着部
6a 第1の延長部
6b 第2の延長部
6c、6d 平行部
6e,6f 独立した延長部
7a,7b 導電部の無い絶縁部
W5 半田付着部の幅
W6 延長部の幅

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】絶縁基板上に設けられた導電部と、該導電部に形成された半田付着部を除いて塗布されたガード用塗膜と、を備えたプリント基板において、該プリント基板を所定方向に移動させディッピングを行う際、順次ディッピングされる隣接した前記半田付着部分どうしの短絡を防止するために、前記所定方向に対して鋭角をなした前記半田付着部分の第1の延長部と、この第1の延長部と180°をなした前記半田付着部分の第2の延長部とを設けたことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】第1の延長部は所定方向に対して225°をなし、第2の延長部は所定方向に対して45°をなしたことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】第1と第2の延長部は、半田付着部の幅より狭くしたことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項4】第1と第2の延長部の後部は、所定方向に平行に延伸させたことを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載のプリント基板。
【請求項5】半田付着部と第1と第2の延長部との間に、導電部の無い絶縁部を介在させたことを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか1項に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【登録番号】実用新案登録第3077392号(U3077392)
【登録日】平成13年2月21日(2001.2.21)
【発行日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【考案の名称】プリント基板
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2000−7794(U2000−7794)
【出願日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)