説明

プリント配線基板における電源回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、マイコン等の電子部品を搭載したプリント配線基板における電源回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記のごとき電源回路において、図3に示す回路図のように、交流電源1と定電圧回路2の途中にダイオードDを接続した整流回路を設けると共に、そのダイオードDと交流電源1との間に電流制限用の抵抗R1 〜R3 を直列に接続した電流制限回路を設ける回路構成をとることがある。
【0003】抵抗R1 〜R3 のように複数の抵抗を用いるのは、抵抗に加わる電圧を軽減させるためであり、場合によっては2個又は4個であることもある。
【0004】上記のごとき回路構成は、プリント配線の基板3上では図4に示すように、銅箔により形成された電源回路パターンを第1電源回路パターン4と第2電源回路パターン5に分離し、両者を所要の間隔をおいて配置している。
【0005】上記の基板3は、垂直またはそれに近い角度に立てて使用に供されるが、いま第1電源回路パターン4が下位となる向きに立てられるとすると、その第1電源回路パターン4の一端から第2電源回路パターン5の一端にわたる範囲に、上下方向に長い形状の第1中継パターン6と第2中継パターン7が上下方向に所定の間隔をおいて配置される。
【0006】上記の第1電源回路パターン4と第1中継パターン6との間、第1中継パターン6と第2中継パターン7との間、及び第2中継パターン7と第2電源回路パターン5との間に、それぞれ抵抗R1 、R2 、R3 がハンダ付けにより接続される。実際は各抵抗R1 〜R3 は各パターン4〜7をプリントした面とは反対の面に設けられるが、説明の便宜のため、図では同じ面に示している。
【0007】上記のごとき電源回路において、通電により各抵抗R1 〜R3 が発熱すると、その熱の一部は空中に放散され、第1及び第2の中継パターン6、7に沿って上昇する。また他の熱は各抵抗R1 〜R3 の端子8を通ってパターン4〜7に伝導され、そのパターンの面から空中に放散される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の第1及び第2の中継パターン6、7は抵抗R1 とR2 、及びR2 とR3の端子8が2本づつ接続されるため、1本しか接続されない第1及び第2電源回路パターン4、5に比べると加熱されやすい状況にある。
【0009】また、抵抗R1 から空中に放散された熱は第1及び第2中継パターン6、7の面に沿って上昇するので、上位の抵抗ほど加熱されやすい傾向にある。
【0010】上記のように、各回路パターン4〜7が上下方向に配置され、その配置に従って抵抗R1 〜R3 も上下方向に並ぶ構成をとると、抵抗R1 〜R3 から発生する熱の放熱効率が低くなり、基板の電源回路部分にその熱が蓄積されやすくなる問題がある。
【0011】そこでこの発明は、電源回路の電流制限用抵抗が発生する熱を効率よく放散できるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の抵抗を直列接続してなる電流制限回路を電源に対して直列に接続した電源回路を構成すべく、基板上の電源回路パターンを分離して第1電源回路パターンと第2電源回路パターンの二つの部分に分け、上記第1と第2電源回路パターン相互間に設けられる電流制限回路を上記抵抗の数より1少ない数の独立した中継パターンと、上記第1電源回路パターン、中継パターン、第2電源回路パターンの各パターン相互間に直列に接続した複数の抵抗とにより構成してなるプリント配線基板における電源回路において、上記中継パターンの面積を、該中継パターンに接続される2本の抵抗の各端子につき、その端子の周りの温度分布の許容限界線が少なくとも180度の範囲にわたり存在する面積をもつように設定した構成としたものである。
【0013】上記の構成によると、従来の中継パターンに比べ、抵抗の端子周囲の面積が広くなるので、その端子から中継パターンに伝導された熱を効率よく放散させることができる。
【0014】また、前記の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、上記のプリント配線基板が垂直又はこれに近い角度に立てた状態に取付けて使用され、上記抵抗の数が3又は4である場合において、各抵抗をその長さ方向を上下に向け、左右方向に一定間隔をおき、かつ隣接する抵抗を上下にずらせて配置し、両外側に配置される抵抗を上位に、内側に配置される抵抗を下位にずらせて配置した構成としたものである。
【0015】上記の構成によると、下位の抵抗から発生して上昇する熱が上位の抵抗に影響することがなく、また隣接する抵抗に対する熱の影響も少なくなる。
【0016】
【実施の形態】以下、この発明の実施形態を図1及び図2R>2に基づいて説明する。図1に示した実施形態は、3本の抵抗R1 〜R3 を用いる場合である。図の下側が基板10の下位となるよう立てた状態に取付けて使用される。
【0017】電源回路パターンは、第1電源回路パターン11と第2電源回路パターン12に分けられ、左右に所要の間隔をおいて配置される。上記の両電源回路パターン11、12の分離部分の下方において、第1中継パターン13が下位、第2中継パターン14が上位に配置される。上記の第1中継パターン13と第2中継パターン14は上下方向にはAの範囲だけオーバーラップし、左右方向にはBの範囲だけオーバーラップする関係をもって上下及び左右方向にずらせて配置されている。
【0018】上記の第1電源回路パターン11と第1中継パターン13との間に抵抗R1 、第1中継パターン13と第2中継パターン14との間に抵抗R2 、第2中継パターン14と第2電源回路パターン12との間に抵抗R3 がそれぞれ各抵抗R1 〜R3 の長さ方向を上下方向に向けて接続される。
【0019】上記の各中継パターン13、14は比較的広い面積をもつように設定されている。この面積は各中継パターン13、14に接続される2本の抵抗の端子15の周りの温度分布の許容限界線Sが180度〜360度の範囲で存在しうる広さの面積である。
【0020】ここに温度分布の許容限界線Sというのは、図1(b)に示すように端子15の付近のパターンの最も高い温度がT1 であって、その端子15からの距離±Dが次第に離れるに従って温度が低下し、許容しうる温度T2 となる位置までの距離±dをつないだ線をいう。いいかえれば距離±dの位置において、T2 まで温度が低下しておれば十分に放熱が行われていることを意味する。
【0021】上記の許容限界線Sは図1(a)に示すように、第1中継パターン13及び第2中継パターン14においてはいずれも180度を越えて360度に達するので、端子15の周りで十分広い放熱面積を有する。
【0022】これに対し、従来の場合は図4に示すように、中継パターン6、7上での許容限界線Sの範囲θは、せいぜい90度程度である。これは、端子8の周辺の中継パターン6、7の面積が十分でなく、端子8の周りで十分な放熱が行われないことを意味する。
【0023】一方、図1において各抵抗R1 〜R3 の配置についてみると、これらの抵抗R1 〜R3 は、左右方向に一定の距離Lだけ離れ、また両側の抵抗R1 とR3 は同じ高さに配置されるが、中央の抵抗R2 は一段低い位置に配置される。
【0024】このように配置すると下位の抵抗R2 から発生した熱が上昇しても上位の抵抗R1 、R3 に影響することがなく、また、隣接する抵抗R1 とR2 、R2 とR3の相互間においても、上下にずれた位置関係にあることから、相互に熱的な影響を与えない。
【0025】図2は4本の抵抗R1 〜R4 を用いる場合である。この場合は、第1電源回路パターン11と端部と第2電源回路パターン12の分離部分の下方に第1〜第3の中継パターン13、14、16を配置している。第1及び第3中継パターン13、16はほぼ同じ高さであるが、第2中継パターン14は両者の中間部分の下方に配置される。第2中継パターン14は、その上辺に段状に下方へ凹入した凹入段部17が形成され、第3中継パターン16の下辺に上記の凹入段部17と対向した凸出段部18が形成される。
【0026】上記の第1電源回路パターン11と第1中継パターン13との間に抵抗R1 、第1中継パターン13と第2中継パターン14との間に抵抗R2 、第2中継パターン14と第3中継パターン16との間に抵抗R3 、第3中継パターン16と第2電源回路パターン12との間に抵抗R4 がそれぞれ接続される。
【0027】これらの抵抗R1 〜R4 は左右方向に同一間隔を有し、両外側に配置された抵抗R1 とR4 は同一高さにあり、抵抗R2 がその下方にずれた位置に配置される。更に抵抗R3 は前述の凹入段部17と凸出段部18間に接続され、最も下位に配置される。
【0028】上記の第1〜第3中継パターン13、14、16の面積はこれらに接続された各抵抗R1 〜R4 の端子15の周りの温度分布の許容限界線Sが180度〜360度の範囲に存在しうる広さに設定される。
【0029】上記構成の電源回路において各中継パターン13、14、16が端子15から伝導される熱を放散させるのに十分な広さの面積を有すること、及び下位の抵抗から発生して上昇する熱が上位の抵抗に影響しないこと、及び隣接する抵抗相互間に熱的影響がないことは、前述の実施形態の場合と同様である。
【0030】
【発明の効果】請求項1に記載の発明は、中継パターンに接続された抵抗の端子から伝導される熱を十分にその中継パターンの表面から放散させ、電源回路部分の熱の蓄積を防止することができる。
【0031】請求項2に記載の発明は、下位に配置された抵抗から放散され上昇する熱が他の上位の抵抗に影響を与えることがなく、また隣接する抵抗相互間にも熱的な影響が無く、電源回路部分の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)実施形態の回路パターンの一部省略平面図
(b)抵抗の端子周辺の温度分布図
【図2】他の実施形態の回路パターンの一部省略平面図
【図3】従来例の回路図
【図4】従来例の回路パターンの一部省略平面図
【符号の説明】
10 基板
11 第1電源回路パターン
12 第2電源回路パターン
13 第1中継パターン
14 第2中継パターン
15 端子
16 第3中継パターン
17 凹入段部
18 凸出段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の抵抗を直列接続してなる電流制限回路を電源に対して直列に接続した電源回路を構成すべく、基板上の電源回路パターンを分離して第1電源回路パターンと第2電源回路パターンの二つの部分に分け、上記第1と第2電源回路パターン相互間に設けられる電流制限回路を上記抵抗の数より1少ない数の独立した中継パターンと、上記第1電源回路パターン、中継パターン、第2電源回路パターンの各パターン相互間に直列に接続した複数の抵抗とにより構成してなるプリント配線基板における電源回路において、上記中継パターンの面積を、該中継パターンに接続される2本の抵抗の各端子につき、その端子の周りの温度分布の許容限界線が少なくとも180度の範囲にわたり存在する面積をもつように設定したことを特徴とするプリント配線基板における電源回路。
【請求項2】 上記のプリント配線基板が垂直又はこれに近い角度に立てた状態に取付けて使用され、上記抵抗の数が3又は4である場合において、各抵抗をその長さ方向を上下に向け、左右方向に一定間隔をおき、かつ隣接する抵抗を上下にずらせて配置し、両外側に配置される抵抗を上位に、内側に配置される抵抗を下位にずらせて配置したことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板における電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3411447号(P3411447)
【登録日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【発行日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−151136
【出願日】平成8年6月12日(1996.6.12)
【公開番号】特開平9−331128
【公開日】平成9年12月22日(1997.12.22)
【審査請求日】平成11年8月4日(1999.8.4)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【参考文献】
【文献】実開 昭61−83098(JP,U)