説明

プリント配線板の製造方法

【課題】開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】開口部11を形成してなると共に開口部11の周囲における表面に導体配線12を設けてなるプリント配線板1を製造する方法。プリント配線板1を押さえ付けるストリッパ21とストリッパ21の内側においてプリント配線板1を打ち抜くパンチ22とを有する打抜き加工用治具2を用いて開口部11を形成する。プリント配線板1の表面に導体配線12を覆うように、柔軟性を有する樹脂フィルム3を配置する。その後、樹脂フィルム3の表面31にストリッパ21を当接させた状態で、パンチ22をスライドさせることにより、開口部11を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を形成してなると共に該開口部の周囲における表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、BOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージなど、図13、図14に示すごとく、開口部91を形成してなると共に該開口部91の周囲における表面に導体配線92を設けてなるプリント配線板9がある(特許文献1参照)。かかるプリント配線板9の開口部91を形成するに当っては、図13に示すごとく、打抜き加工用治具を用いてプリント配線板9を輪郭911に示すように打抜いた後に、輪郭912に示すようにルーター加工によって開口部91の大きさを所望の大きさに拡げるといった方法を採る。その後、ルーター加工の際に発生した導体配線92のバリを除去する。
【0003】
しかしながら、上記従来の製造方法においては、以下の問題がある。
即ち、上記製造方法によれば、打抜き加工とルーター加工とを行う必要があり、工数が多くなるという問題がある。更には、ルーター加工を行うと、ルーター加工の際に発生した導体配線92のバリを除去する工程を行う必要もある。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上が困難となるおそれがある。
【0004】
一方、単に、上記打ち抜き加工によって、一度に所望の大きさの開口部91を形成しようとすると、プリント配線板9にクラックが発生するおそれがある。即ち、打ち抜き加工に当たっては、図14に示すごとく、プリント配線板9を押さえ付けるストリッパ81と該ストリッパ81の内側において上記プリント配線板9を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用治具(図1〜図3参照)を用いる。そして、ストリッパ81をプリント配線板9の表面に当接させた状態で、パンチをスライドさせる。このとき、ストリッパ81は、プリント配線板9の表面に形成された導体配線92に当接することとなり、導体配線92の間においては、ストリッパ81とプリント配線板9との間に隙間93が生じることとなる。
【0005】
この状態で、パンチをスライドさせてプリント配線板9を打ち抜くとき、パンチがプリント配線板9に当たる際に、プリント配線板9のうちの上記隙間93に面する部分、即ちプリント配線板9における導体配線92がない部分が、パンチが当たる衝撃で、部分的に大きな応力が働くおそれがある。その結果、この部分にクラック98が生じるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−284347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、開口部を形成してなると共に該開口部の周囲における表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造する方法であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成するに当り、
上記プリント配線板の表面に上記導体配線を覆うように、柔軟性を有する樹脂フィルムを配置した後、
該樹脂フィルムの表面に上記ストリッパを当接させた状態で、上記パンチをスライドさせることにより、上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法においては、上記打抜き加工用治具を用いて上記開口部を形成するのに先立ち、上記プリント配線板の表面に上記樹脂フィルムを形成する。そして、該樹脂フィルムの平坦な表面に上記ストリッパを当接した状態で、パンチをスライドさせてプリント配線板を打抜き、開口部を形成する。
【0010】
それ故、上記ストリッパは、プリント配線板の表面の樹脂フィルムに対して、隙間を生じることなく当接することができる。即ち、柔軟性を有する樹脂フィルムが、プリント配線板の表面に形成された導体配線に追従して変形すると共にストリッパに対しても面接触する。これにより、ストリッパは、プリント配線板の表面に形成された導体配線において局部的に当接することはなく、導体配線の間において、ストリッパとプリント配線板との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0011】
これにより、プリント配線板をパンチによって打ち抜くとき、プリント配線板にパンチが当たる際にも、上記ストリッパが開口部の周囲を均等に押えた状態となっているため、プリント配線板の開口部の周囲において部分的に大きな応力が働くことを防ぐことができる。
また、樹脂フィルムを配置することにより、ストリッパとプリント配線板との間のクッション性を確保して、パンチが当たる際の衝撃の負荷を吸収することができる。
その結果、プリント配線板の開口部の周囲にクラックが生じることを防ぐことができる。また、プリント配線板上の導体配線の表面を保護することもできる。
【0012】
また、上記のごとく、プリント配線板にクラックを生じさせることなく開口部を形成することができるため、開口部の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明(請求項1)において、上記プリント配線板は、例えばBOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージ等の半導体搭載用のプリント配線板とすることができ、上記開口部は、例えば半導体搭載部とすることができる。また、上記開口部の周囲に配設された上記導体配線は、例えばボンディングパッドとすることができる。
また、上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂系フィルム、ビニル樹脂系フィルム、ポリエチレン樹脂系フィルム等を用いることができる。
【0015】
また、上記開口部を形成した後、上記樹脂フィルムを剥離することが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記導体配線がボンディングパッドである場合など、導体配線を露出させる必要があるものについても、本発明を容易に適用することができる。
【0016】
また、上記樹脂フィルムは、50〜100μmの厚みを有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、開口部周辺におけるクラック発生を、より効果的に防ぐことができる。
上記厚みが50μm未満の場合には、上記樹脂フィルムのクッション性を充分に得ることが困難となり、パンチが当たる際に生ずる負荷を充分に吸収することが困難となるおそれがある。一方、上記厚みが100μmを超える場合には、上記ストリッパによって樹脂フィルムの表面を押さえ付けたときに樹脂フィルムが弾性変形しすぎて、プリント配線板を正確に固定することが困難となる。その結果、開口部の加工精度を高くすることが困難となるおそれがある。
なお、開口部周辺におけるクラック発生のより確実な防止及び開口部の加工精度の一層の向上の観点から、上記樹脂フィルムの厚みは75〜100μmであることが更に好ましい。
【0017】
また、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、開口部周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部の形成を行うことができる。
上記厚みが0.5mmを超える場合には、開口部周辺におけるクラック発生を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。
【0018】
また、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記外形加工を開口部の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を得ることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるプリント配線板の製造方法につき、図1〜図6を用いて説明する。
本例のプリント配線板の製造方法は、図5に示すごとく、開口部11を形成してなると共に該開口部11の周囲における表面に導体配線12を設けてなるプリント配線板1を製造する方法である。
図1〜図3に示すごとく、プリント配線板1を載置すると共に上記開口部11に対応する下方孔231を有するダイ23と、プリント配線板1を押さえ付けるストリッパ21と、該ストリッパ21の内側においてプリント配線板1を打ち抜くパンチ22とを有する打抜き加工用治具2を用いて上記開口部11を形成する。
【0020】
この開口部11の形成に当っては、上記プリント配線板1の表面に導体配線12を覆うように、柔軟性を有する樹脂フィルム3を配置する。その後、図1、図4に示すごとく、樹脂フィルム3の表面にストリッパ21を当接させた状態で、図2に示すごとく、上記パンチ22をスライドさせることにより、開口部11を形成する。
そして、開口部11を形成した後、樹脂フィルム3を剥離する。
【0021】
上記プリント配線板1は、BOC(Board On Chip)基板であって、上記開口部11は半導体搭載部である。また、図6に示すごとく、開口部11の周囲に配設された導体配線12は、ボンディングパッドである。
また、上記樹脂フィルム3としては、ポリエステル樹脂系フィルム、又はビニル樹脂系フィルムを用いる。
【0022】
以下に、本例のプリント配線板の製造方法につき、具体的に説明する。
導体配線12を樹脂基板10の表面に設けたプリント配線板1を用意する。導体配線12は、例えば、Cu、Ni、Auのメッキにより形成される。また、導体配線12の一部がボンディングパッドとなる。導体配線12の厚みは、約20μm程度である。また、上記プリント配線板1の厚みは約0.2mmである。
上記プリント配線板1の表面に、導体配線12を覆うように上記樹脂フィルム3を配置する。また、樹脂フィルム3の厚みは75〜100μmとする。
【0023】
次いで、図1〜図3に示すごとく、上記打抜き加工用治具2を用いて開口部11を形成する。打抜き加工用治具2は、ストリッパ21と該ストリッパ21に対してスライド移動するパンチ22とを有する。パンチ22は、形成しようとする開口部11の形状に沿った断面形状を有する。ストリッパ21は、パンチ22をスライド可能に保持するスライド孔211を有すると共に、該スライド孔211の周囲の先端部に、先端当接部212を有する。該先端当接部212は、幅50μm、高さ70μmに形成されている。
また、打抜き加工用治具2は、プリント配線板1を載置するダイ23を有し、該ダイ23には、パンチ22及びパンチ22によって打抜かれた打抜き片19を通す下方孔231を有する。
【0024】
図1、図4に示すごとく、ダイ23の上にプリント配線板1を載置し、プリント配線板1の上に配置した樹脂フィルム3の表面にストリッパ21の先端当接部212を当接し、プリント配線板1を押さえ付けて保持する。このとき、ストリッパ21の先端当接部212は、樹脂フィルム3の表面31に密着しており、両者の間に隙間は形成されていない。
このとき、柔軟性を有する樹脂フィルム3が、プリント配線板1の表面に形成された導体配線12に追従して変形すると共にストリッパ21に対しても面接触する。
【0025】
次いで、図2に示すごとく、上記パンチ22を下方へスライドさせることにより、プリント配線板1の一部を打抜く。これにより、開口部11を形成する。また、パンチ22の先端部221及び打抜き片19は、ダイ23の下方孔231に移動する。
次いで、図3に示すごとく、パンチ22を上方へ引き抜き、パンチ22の先端部221をストリッパ22の先端当接部212よりも上方へ移動させる。このとき、パンチ22の側面222は、プリント配線板1の開口部11の内壁111を擦り、上方へ引き上げるような力が働く。しかし、プリント配線板1を、上方から、樹脂フィルム3を介してストリッパ21によって押さえつけているため、プリント配線板1の開口部11の周辺部分が変形することはない。
【0026】
また、上記開口部11の形成と共に、上記プリント配線板1の外形加工を行う。即ち、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行う。
次いで、プリント配線板1を打抜き加工用治具2から取り外す。そして、樹脂フィルム3を剥離する。
【0027】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法においては、上記打抜き加工用治具2を用いて上記開口部11を形成するのに先立ち、上記プリント配線板1の表面に上記樹脂フィルム3を形成する。そして、該樹脂フィルム3の平坦な表面31に上記ストリッパ21を当接した状態で、パンチ22をスライドさせてプリント配線板1を打抜き、開口部11を形成する。
【0028】
それ故、上記ストリッパ21は、プリント配線板1の表面の樹脂フィルム3に対して、隙間を生じることなく当接することができる。即ち、柔軟性を有する樹脂フィルム3が、プリント配線板1の表面に形成された導体配線12に追従して変形すると共にストリッパ21に対しても面接触する。これにより、ストリッパ21は、プリント配線板1の表面に形成された導体配線12において局部的に当接することはなく、導体配線12の間において、ストリッパ21とプリント配線板1との間に隙間が生じることを防ぐことができる。
【0029】
これにより、プリント配線板1をパンチ22によって打ち抜くとき、プリント配線板1にパンチ22が当たる際にも、上記ストリッパ21が開口部211の周囲を均等に押えた状態となっているため、プリント配線板1の開口部11の周囲において部分的に大きな応力が働くことを防ぐことができる。
また、樹脂フィルム3を配置することにより、ストリッパ21とプリント配線板1との間のクッション性を確保して、パンチ22が当たる際の衝撃の負荷を吸収することができる。
その結果、プリント配線板1の開口部11の周囲にクラックが生じることを防ぐことができる。
【0030】
また、上記のごとく、プリント配線板1にクラックを生じさせることなく開口部11を形成することができるため、開口部11の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線12のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、開口部11を形成した後、樹脂フィルム3を剥離することにより、ボンディングパッドである導体配線12を露出させることができる。
また、樹脂フィルム3は75〜100μmの厚みを有するため、開口部11周辺におけるクラック発生を、より効果的に防ぐことができる。
【0032】
また、プリント配線板1は、0.2mmの厚みを有するため、開口部11周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部11の形成を行うことができる。
また、開口部11の形成と共に、プリント配線板1の外形加工を行うことにより、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板1の製造方法を得ることができる。
【0033】
以上のごとく、本例によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0034】
(実施例2)
本例は、図7、図8に示すごとく、本発明のプリント配線板の製造方法を用いた場合の、クラック発生の抑制効果を評価した例である。
即ち、上記実施例1に示す方法を用いて、プリント配線板1に開口部11を形成したとき、開口部11の周辺に発生したクラック(白化領域18)の大きさとその個数を測定した。
【0035】
用いたプリント配線板1の厚みは0.2mmであり、図5に示すごとく、形成する開口部11の数は9個、幅は0.6mm、長さ11mmである。また、樹脂フィルム3の厚みは75μmとした。
【0036】
そして、開口部11の形成後、開口部11の周りのクラックの大きさと、その個数を計測した。クラックの大きさは、図8に示すごとく、開口部11の一辺からの白化領域18の奥行きdを測定することにより評価した。また、クラックの数は、1枚のプリント配線板1における白化領域18の数を計測することにより評価した。
そして、クラックの大きさの分布を図7に示した。
【0037】
図7から分かるように、本発明のプリント配線板の製造方法によれば、発生するクラックの大きさとしては、要求品質の範囲内である100μm以下とすることができる。即ち、要求品質の範囲を超えるクラックの発生を防ぐことができる。
【0038】
(比較例)
本例は、図9に示すごとく、樹脂フィルム(図1〜図4の符号3参照)を形成することなく、打抜き加工用治具を用いて開口部を形成したときの、開口部周辺のクラックの発生を評価した例である。
用いたプリント配線板としては、樹脂フィルムを形成していない以外は、実施例2と同様である。
そして、実施例2と同様の方法で、クラックの大きさ及びその数を測定し、クラック(白化領域)の大きさの分布を図9に示した。
【0039】
図9から分かるように、比較例のプリント配線板においては、要求品質の範囲である100μmを超える大きさのクラックが発生し、要求品質を満足することができなかった。
上記実施例2と比較例との結果から、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を充分に防ぐことができることが分かる。
【0040】
(実施例3)
本例は、図10〜図12に示すごとく、打抜き加工用治具2の形状、構造を変更した例である。即ち、本例の製造方法において用いた打抜き加工用治具2は、ストリッパ21、パンチ22、ダイ23の形状、構造に特徴がある。
【0041】
図10に示すごとく、ストリッパ21は、パンチ22を挿通するスライド孔211の周囲において、プリント配線板1を局部的に押さえ付ける突出押え部212を突出形成してなる。ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有し、40〜100μmの突出高さhを有する。
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。また、パンチ2の幅tは、プリント配線板1に形成する開口部11の幅と同等であり、約0.6mmである。
【0042】
図11、図12に示すごとく、ダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ230の間に上記下方孔231を形成してなる。
また、ダイ23は、図11に示すごとく、2つの分割ダイ230を以下のようにして組合わせることにより構成されている。即ち、ダイ23を構成する2つの分割ダイ230は、図12に示すごとく、互いの接合面に溝部232を形成してなる。溝部232は、ワイヤーカットや放電加工等によって形成した後、その加工面を研磨処理してなる。その後、互いの溝部232を対向させるようにして2つの分割ダイ23を重ね合わせることにより、図11に示すごとく、下方孔231を有するダイ23を形成する。
その他は、実施例1と同様である。
【0043】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法において用いる打抜き加工用金型2のダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ12の間に上記下方孔231を形成してなる。そのため、下方孔231の内壁面を容易に平滑化することができる。即ち、仮にダイ23が一体品である場合に下方孔231の内壁面を研磨等することは困難であるが、本発明のように分割ダイ230を用いることにより、上述のごとく、組合せ前に、下方孔231の内壁面(図11に示す溝部232の表面)を研磨等することが容易となり、平滑化を容易に行うことができる。
【0044】
その結果、プリント配線板1を打抜かれた打抜き片19(図2参照)を円滑に下方孔231に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板1の開口部11の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0045】
また、ストリッパ21は突出押え部212を突出形成してなるため、プリント配線板1を、開口部11を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、ストリッパ21によって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパ21の押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0046】
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチ22がプリント配線板1を打抜く際、パンチ22は、先端外周部223において局部的にプリント配線板1に当たることとなる。それ故、パンチ22がプリント配線板1に当たる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、プリント配線板1におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0047】
また、上記のごとく、プリント配線板1にクラックを生じさせることなく開口部11を形成することができるため、開口部11の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線12のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0048】
また、ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有するため、ストリッパ21によってプリント配線板1を押さえ付けることによるクラック(白化)の発生領域を充分に小さくすることができると共に、開口部11の形成を精度よく行うことができる。
また、突出押え部212は、40〜100μmの突出高さhを有するため、容易かつ正確に、突出押え部212によって局部的にプリント配線板1を押さえ付けることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1における、打抜き加工用治具によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図2】実施例1における、打抜き加工用治具によりプリント配線板を打抜いた直後の状態を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、打抜き加工用治具のパンチをプリント配線板の開口部から引き抜いた後の状態を示す断面説明図。
【図4】実施例1における、打抜き加工用治具のストリッパがプリント配線板を押え付けた状態を示す断面説明図。
【図5】実施例1における、プリント配線板の平面図。
【図6】実施例1における、プリント配線板の開口部周辺の平面図。
【図7】実施例2における、白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図8】実施例2における、白化領域を示す平面説明図。
【図9】比較例における、白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図10】実施例3における、打抜き加工用治具によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図11】実施例3における、ダイの斜視図。
【図12】実施例3における、分割ダイの斜視図。
【図13】従来例における、開口部の形成方法を示す説明図。
【図14】従来例における、打抜き加工の問題点を説明する断面説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 プリント配線板
11 開口部
12 導体配線
2 打抜き加工用治具
21 ストリッパ
22 パンチ
23 ダイ
231 下方孔
3 樹脂フィルム
31 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を形成してなると共に該開口部の周囲における表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造する方法であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成するに当り、
上記プリント配線板の表面に上記導体配線を覆うように、柔軟性を有する樹脂フィルムを配置した後、
該樹脂フィルムの表面に上記ストリッパを当接させた状態で、上記パンチをスライドさせることにより、上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記開口部を形成した後、上記樹脂フィルムを剥離することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記樹脂フィルムは、50〜100μmの厚みを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−208206(P2007−208206A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28794(P2006−28794)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(591098112)イビデンエンジニアリング株式会社 (7)