説明

プリント配線板

【目的】 ソリ、ネジレ等の変形が生じることなく、電磁シールド性および放熱性に優れたプリント配線板を得る。
【構成】 プリント配線板1の最外層に、金属蒸着層からなるベタパターン15を形成し、電磁ノイズをシールドし、放熱性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はEMI対策を施したプリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリント配線板として、最外層に電磁シールド用のベタパターンを形成したものが提案されている。図2はこのような従来のプリント配線板を示す断面図である。
【0003】図において、1はプリント配線板、2、3はプリント配線板1を構成する外層板、4は外層板2、3間に積層された内層板、5は外層板2の表面に形成された第1層回路パターン、6、7は内層板4の両面に形成された第2層および第3層回路パターン、8は外層板3の表面に形成された第4層ベタパターン、9はバイアホールで、第1〜3層回路パターン5〜7に形成されたランド5a〜7aを導通させるスルーホールめっき部10を有している。第4層ベタパターン8はバイアホール9が開口しない側に形成されている。11はバイアホール9内に充填された充填樹脂、12はスルーホールで、第1〜3層回路パターン5〜7に形成されたランド5b〜7bならびに第4層ベタパターン8を導通させるスルーホールめっき部13を有する。
【0004】上記のプリント配線板1は次のようにして製造される。まず銅張積層板からなる内層板4にエッチングを行って、第2および3層回路パターン6、7を形成する。そしてその片面にプリプレグおよび銅箔を積層して、加熱プレスにより硬化させて外層板2を形成し、エッチングにより第1層回路パターン5を形成する。その後バイアホール9の穴あけを行った後、スルーホールめっき部10を形成する。そしてバイアホール9が露出しない側にプリプレグおよび銅箔を積層して、加熱プレスにより樹脂をバイアホール9内に侵入させるとともに硬化させ、外層板3および充填樹脂11を形成する。積層した銅箔はエッチングすることなく、そのまま残して、第4層ベタパターン8とし、スルーホール12の穴あけを行った後、スルーホールめっき部13を形成して、プリント配線板1が完成する。
【0005】上記のプリント配線板1は、スルーホール12に部品を実装し、第4層ベタパターン8を接地して使用される。使用状態においては、外部から到達する電磁ノイズは第4層ベタパターン8でシールドされて、内部に影響を及ぼさず、また、内部で発生する電磁ノイズもシールドされ、電磁障害は発生しない。さらにプリント配線板1で発生する熱はベタパターン8から放出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来のプリント配線板においては、第4層ベタパターン8は銅箔が完全に残っていて、他の層、特に第1層回路パターン5との間の銅残存率に大きな差が生じるため、表裏における膨張係数の差により、ソリ、ネジレ等の変形が生じるという問題点があった。
【0007】この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、最外層にベタパターンを形成しても、ソリ、ネジレ等の変形が生じることがなく、電磁シールド性および放熱性に優れたプリント配線板を得ることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明のプリント配線板は、最外層に電磁シールド用のベタパターンを形成したプリント配線板において、前記ベタパターンを金属蒸着層により形成したものである。
【0009】この発明において形成する金属蒸着層としては、導電性を有する金属であればよいが、特に銅、ニッケルが好ましい。金属蒸着層は真空蒸着、イオンプレーティングなどの公知の方法によって、粒子化した金属を蒸着させて形成することができる。金属蒸着層の厚さは1000〜3000オングストロームが好ましい。
【0010】
【作用】この発明のプリント配線板は、次のようにして製造される。まず最外層のベタパターンを形成する部分に、銅箔等の金属箔を積層した状態でエッチングを行い、ランドを形成する。そしてエッチングにより金属箔を除去したベタパターン形成部に、真空蒸着等により金属蒸着層を形成してランドと接続させ、ベタパターンを形成する。
【0011】上記により製造されたプリント配線板は、従来のものと同様に、通常はベタパターンを接地して使用される。使用状態においては、外部から到達する電磁ノイズまたは内部から発生する電磁ノイズはベタパターンによりシールドされ、電磁障害は発生しない。そして内部で発生する熱は、ベタパターンから放出される。
【0012】プリント配線板の絶縁基板を形成するエポキン樹脂の膨張係数は30×10-6、回路パターンを形成する銅の膨張係数は10×10-6、であるため、ベタパターンとして銅箔を用いると、銅残存率の差に基づく膨張係数の差により、ソリ、ネジレ等の変形が生じるが、ベタパターンを金属蒸着層で形成すると、金属蒸着層は薄膜であって、柔軟性を有するため、膨張係数の差は吸収され、ソリ、ネジレ等の変形は発生しない。
【0013】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明する。図1は実施例のプリント配線板を示す断面図であり、図において、図2と同一符号は同一または相当部分を示す。プリント配線板1は図2のものとほぼ同様に構成されているが、第4層ベタパターン15は銅蒸着層からなり、スルーホール12部に形成されたランド8bと接続している。
【0014】上記のプリント配線板1は次のようにして製造される。まず銅張積層板からなる内層板4にエッチングを行って、第2および3層回路パターン6、7を形成する。そしてその片面にプリプレグおよび銅箔を積層して、加熱プレスにより硬化させて外層板2を形成し、エッチングにより第1層回路パターン5を形成する。その後バイアホール9の穴あけを行った後、スルーホールめっき部10を形成する。そしてバイアホール9が露出しない側にプリプレグおよび銅箔を積層して、加熱プレスにより樹脂をバイアホール9内に侵入させるとともに硬化させ、外層板3および充填樹脂11を形成する。次に積層した銅箔をエッチングして、外層板3の表面に第4層のランド8bを形成し、スルーホール12の穴あけを行った後、スルーホールめっき部13を形成する。その後外層板3の表面の銅箔を除去した部分に真空蒸着等により、銅の蒸着層からなる第4層ベタパターン15を形成する。スルーホール12の形成はベタパターン15の形成後に行ってもよい。
【0015】上記により製造されたプリント配線板1は、従来のものと同様にスルーホール12に部品を実装し、通常は第4層ベタパターン15を接地して使用される。使用状態においては、外部から到達する電磁ノイズまたは内部から発生する電磁ノイズはベタパターン15によりシールドされ、電磁障害は発生しない。そして内部で発生する熱は、ベタパターン15から放出される。
【0016】上記のプリント配線板1においては、第4層ベタパターン15が銅の蒸着層で形成されており、柔軟性を有するため、膨張係数の差は吸収され、ソリ、ネジレ等の変形は発生しない。
【0017】なお、上記の実施例では外層板3の表面にベタパターン15を形成したが、外層板2の表面にも形成してもよい。この場合、第1層回路パターン5の信号回路部分を内層板に形成し、第1層回路パターンに電源回路および信号の入出力部のみを形成し、他の部分にベタパターンを形成することができる。
【0018】また上記実施例ではベタパターンとして銅の蒸着層を形成したが、ニッケルその他の金属蒸着層でもよい。さらにプリント配線板の積層数、形成方法等は前記説明のものに限らない。
【0019】
【発明の効果】この発明によれば、プリント配線板の最外層に、金属蒸着層からなるベタパターンを形成したので、ソリ、ネジレ等の変形が生じることなく、電磁シールド性および放熱性に優れたプリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のプリント配線板の断面図。
【図2】従来のプリント配線板の断面図。
【符号の説明】
1 プリント配線板
2、3 外層板
4 内層板
5、6、7 回路パターン
5a、6a、7a…、5b、6b、7b… ランド
8、15 ベタパターン
9 バイアホール
10、13 スルーホールめっき部
11 充填樹脂
12 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 最外層に電磁シールド用のベタパターンを形成したプリント配線板において、前記ベタパターンを金属蒸着層により形成したことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−13982
【公開日】平成5年(1993)1月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−161406
【出願日】平成3年(1991)7月2日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)