説明

プルスイッチ操作体の連結具

【課題】 プルスイッチ操作体に引張り荷重が加わった場合であっても、確実に下部操作体が上部操作体より先に連結具から外れる、安全性の高いプルスイッチ操作体の連結具を提供する。
【解決手段】 上部操作体55を連結するための上部連結部21と、前記上部連結部21の両側にそれぞれ連続する前記第1連結部23と第2連結部24とからなり、前記第1連結部23と前記第2連結部24は端部にそれぞれ上部操作体55及び下部操作体56を通過可能な間隙を確保し、前記第1連結部23と第2連結部24とを重層状態に形成した、下部操作体56を連結するための下部連結部22と、前記上部連結部21と前記下部連結部22との間に形成され仕切部31と、を備えたプルスイッチ操作体の連結具11とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプルスイッチ操作体の連結具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井等に取り付けられる吊り下げ型照明器具等にプルスイッチが用いられている。図11に示すように、プルスイッチ本体53は照明器具51の内部に設けられ、プルスイッチ本体53から垂設されているプルスイッチ操作体54を引張り操作することでプルスイッチ本体53内部の接点間が開閉し、照明器具51のランプの点滅や切替等、複数の点灯状態モードの切替操作が行われる。図12に示すように、前記プルスイッチ操作体54は、プルスイッチ本体53に直接取り付けられてプルスイッチ本体53の導出孔57から導出されている上部操作体55と、使用者が把持して引張り操作を行う紐状の下部操作体56とに分けられており、前記上部操作体55と前記下部操作体56とは連結具61で連結されている。
【0003】
前記連結具61は、金属線材を略S字型に形成したものであり、上部係止部62と下部係止部63とを有しており、上部係止部62には上部操作体55が連結され、下部係止部63には下部操作体56が連結される。上部係止部62と下部係止部63にはそれぞれ間隙が形成されており、上部操作体55を連結する場合は、上部操作体55の端部に形成した輪状部分55aを上部係止部62の前記間隙から通し、上部係止部62をカシメ加工して間隙を閉じて連結する。下部係止部63と下部操作体56との連結も同様のカシメ加工により行う。
【0004】
ところで、前記プルスイッチ52のプルスイッチ操作体54には大きな引張り荷重が加わる場合があり、プルスイッチ本体53に引張り荷重が作用すると、プルスイッチ本体53の破損などが生じるおそれがある。そのため、下部操作体56に所定以上の引張り荷重が加わった場合には前記上部係止部62及び下部係止部63が伸び変形して上部操作体55と下部操作体56とが分離するようにされており、大きな引張り荷重がプルスイッチ本体53に加わらないようにされている。
【0005】
また、前記連結具61の上部係止部62が先に伸び変形して上部操作体55が下部操作体56より先に外れてしまうと、上部操作体55は外れた勢いでプルスイッチ本体53に向かって急激に引き戻され、プルスイッチ本体53の導出孔57から内部に入ってしまう場合がある。この場合、上部操作体55を導出孔57から再度引き出すことが困難となり、プルスイッチが使用不能になる場合がある。
【0006】
このため、略S字型である連結具の上部係止部の引張り強度を下部係止部の引張り強度より大きく設定するとともに、連結具の幅をプルスイッチ本体の導出孔より広く形成した連結具が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この連結具によれば、下部操作体に大きな引張り荷重が加わった場合に、下部係止部が上部係止部より先に伸び変形することとなり、連結具は上部操作体から外れにくい。そして、上部操作体が連結具とともにプルスイッチ本体に向かって急激に引き戻されても、連結具はプルスイッチ本体の導出孔より幅広に形成されているため、上部操作体が導出孔からプルスイッチ本体内部に入ってしまうことが防止される。
【特許文献1】実公昭53−15956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の連結具は、静的な引張り荷重に対しては、引張り強度が低い下部係止部が、上部係止部より早く伸び変形して下部操作体が先に外れるのであるが、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった際には、設定通りの順序で外れない場合がある。例えば、子供がプルスイッチ操作体に飛び付いて引っ張るなどして、想定された引張り荷重を大きく超える引張り荷重が瞬間的に連結具に加わった場合には、引張り強度の低い下部係止部から段階的に伸び変形するのではなく、下部係止部と上部係止部とが略同時に伸び変形を生じ、結果的に上部操作体が先に連結具から外れる場合がある。
【0008】
また、略S字型である上記従来の連結具は、上部係止部と下部係止部とをそれぞれカシメ加工することにより上部操作体と下部操作体に連結するのであるが、カシメ加工は手作業で行われることが多く、作業者の熟練度によってはカシメ加工により連結具の金属線材に金属疲労が生じる場合がある。この場合、連結具の上部係止部の引張り強度を下部係止部の引張り強度より大きく設定していても、カシメ加工後の実際の連結具の引張り強度にはバラつきが生じてしまい、上部係止部の引張り強度が下部係止部の引張り強度より低下している場合もある。
【0009】
従って、上記従来の連結具によれば、上部係止部の引張り強度を下部係止部の引張り強度より大きく設定していても、非常に大きい瞬間的な引張り荷重が加わった場合や、カシメ加工による金属疲労が生じている場合は、上部係止部に伸び変形が生じ、上部操作体が下部操作体より先に連結具から外れる場合がある。そして、連結具は下部操作体によって強い力で下方に引かれているため、連結具が下方の操作者等に対して衝突するおそれがある。
【0010】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、プルスイッチ操作体に引張り荷重が加わった場合であっても、確実に下部操作体が上部操作体より先に連結具から外れる、安全性の高いプルスイッチ操作体の連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載の発明では、プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、
前記上部操作体を挿通させる挿通空間が形成された、前記上部操作体を連結するための上部連結部と、
前記上部連結部の両側にそれぞれ連続する前記第1連結部と第2連結部とからなり、前記第1連結部と前記第2連結部は端部にそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しており、前記第1連結部と第2連結部とが重層状態に形成されて前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成した、下部操作体を連結するための下部連結部と、
前記上部連結部と前記下部連結部との間に形成され、上部操作体の下部連結部への移動、及び下部操作体の上部連結部への移動を制限するとともに、上部操作体の押入により弾性変形して上部操作体を通過させる仕切部と、
を有することを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具とした。
【0013】
請求項2に記載の発明では、プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、
金属線材を湾曲させて前記上部操作体を挿通させる挿通空間が形成された、前記上部操作体を連結するための上部連結部と、
前記上部連結部から連続する金属線材の両端側をそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しつつ湾曲させて第1連結部と第2連結部とし、前記第1連結部と第2連結部とを重層状態に形成して前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成した、下部操作体を連結するための下部連結部と、
前記上部連結部と前記下部連結部との間に形成され、上部操作体の下部連結部への移動、及び下部操作体の上部連結部への移動を制限するとともに、上部操作体の押入により弾性変形して上部操作体を通過させる仕切部と、
を有することを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具とした。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1から2のいずれか1項に記載の発明において、プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、前記仕切部は、前記上部連結部から連続する部材を相互に接近させて形成したことを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具とした。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、下部連結部と上部連結部の大きさが異なることを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具とした。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、下部連結部の第1連結部の端部と、第2連結部の端部のいずれか又は両方に上部操作体及び下部操作体を押入する際の案内部を形成したことを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、下部連結部は、上部連結部の両側にそれぞれ連続する前記第1連結部と第2連結部とからなり、前記第1連結部と前記第2連結部は端部にそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しており、前記第1連結部と第2連結部とが重層状態に形成されて前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成している。このため、伸び変形を生じる端部は、両端部とも下部連結部に配置されており、上部連結部にはS字型の連結具の場合のような端部は配置されていない。引張り荷重が加わった場合には、下部連結部の第1連結部と第2連結部が伸び変形を生じ、下部操作体が下部連結部から外れてプルスイッチの破損等を防止することができる。一方、上部連結部には伸び変形を生じる端部が配置されておらず、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体が上部連結部から外れることがない。
また、上部連結部は、端部を有していないため、上部連結部に上部操作体を連結する場合は、第1連結部、第2連結部及び仕切部を弾性変形させて上部操作体を通過させることにより、上部連結部に上部操作体を連結する。このため、金属線材で形成した場合であっても、上部連結部に上部操作体を連結する場合にカシメ加工が不要であり、金属疲労による上部連結部の引張り強度の低下がない。従って、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体が上部連結部から外れることがない。
また、上記のように上部操作体を下部連結部から入れて上部連結部に移動させて連結できるようにするため、上部連結部と下部連結部は連続しているが、仕切部が、上部操作体の下部連結部への自由な移動、及び下部操作体の上部連結部への自由な移動を制限している。このため、上部操作体が不用意に下部連結部に移動すること、及び下部操作体が不用意に上部連結部に移動することを防止することができる。従って、下部操作体は下部連結部に確実に連結されることとなり、引張り荷重が加わった場合には、下部操作体が下部連結部から外れてプルスイッチの破損等を防止することができる。また、上部操作体は上部連結部に確実に連結されることとなり、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体と連結具とが外れることがない。
以上より、プルスイッチ操作体に引張り荷重が加わった場合に確実に下部操作体が上部操作体より先に連結具から外れる、安全性の高いプルスイッチ操作体の連結具を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、プルスイッチ操作体の連結具は金属線材を曲げ加工することにより形成されており、下部連結部は、上部連結部から連続する金属線材の両端側をそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しつつ湾曲させて第1連結部と第2連結部とし、前記第1連結部と第2連結部とを重層状態に形成して前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成している。このため、伸び変形を生じる金属線材の端部は、両端部とも下部連結部に配置されており、上部連結部にはS字型の連結具の場合のような金属線材の端部は配置されていない。引張り荷重が加わった場合には、下部連結部の第1連結部と第2連結部が伸び変形を生じ、下部操作体が下部連結部から外れてプルスイッチの破損等を防止することができる。一方、上部連結部には伸び変形を生じる金属線材の端部が配置されておらず、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体が上部連結部から外れることがない。
また、上部連結部は、金属線材の一部を湾曲させて形成されており、金属線材の端部は配置されていないため、上部連結部に上部操作体を連結する場合は、第1連結部、第2連結部及び仕切部を弾性変形させて上部操作体を通過させることにより、上部連結部に上部操作体を連結する。このため、上部連結部に上部操作体を連結する場合にカシメ加工が不要であり、金属疲労による上部連結部の引張り強度の低下がない。従って、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体が上部連結部から外れることがない。
また、上記のように上部操作体を下部連結部から入れて上部連結部に移動させて連結できるようにするため、上部連結部と下部連結部は連続しているが、仕切部が、上部操作体の下部連結部への自由な移動、及び下部操作体の上部連結部への自由な移動を制限している。このため、上部操作体が不用意に下部連結部に移動すること、及び下部操作体が不用意に上部連結部に移動することを防止することができる。従って、下部操作体は下部連結部に確実に連結されることとなり、引張り荷重が加わった場合には、下部操作体が下部連結部から外れてプルスイッチの破損等を防止することができる。また、上部操作体は上部連結部に確実に連結されることとなり、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体と連結具とが外れることがない。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、仕切部は前記上部連結部から連続する部材を相互に接近させることにより、一体的に形成することができる。また、上部連結部に上部操作体を連結する場合は、第1連結部、第2連結部及び仕切部を弾性変形させて上部操作体を通過させ、上部連結部に上部操作体を連結することができる。
また、上記のように上部操作体を下部連結部から入れて上部連結部に移動させて連結できるようにするため、上部連結部と下部連結部は連続しているが、形成した仕切部が、上部操作体の下部連結部への自由な移動、及び下部操作体の上部連結部への自由な移動を制限している。このため、上部操作体が不用意に下部連結部に移動すること、及び下部操作体が不用意に上部連結部に移動することを防止することができる。従って、下部操作体は下部連結部に確実に連結されることとなり、引張り荷重が加わった場合には、下部操作体が下部連結部から外れてプルスイッチの破損等を防止することができる。また、上部操作体は上部連結部に確実に連結されることとなり、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体と連結具とが外れることがない。
【0021】
請求項4に記載のプルスイッチ操作体の連結具によれば、下部連結部と上部連結部は大きさが異なるように形成されているため、下部連結部と上部連結部の判別が容易となる。従って、上部操作体と下部操作体を連結具で連結する際に、上部操作体と下部操作体の取り付け位置の誤りが防止される。このため、プルスイッチ操作体に引張り荷重が加わった場合に確実に下部操作体が上部操作体より先に連結具から外れ、安全性の高いプルスイッチ操作体の連結具とすることができる。
【0022】
請求項5に記載のプルスイッチ操作体の連結具によれば、下部連結部の第1連結部の端部と、第2連結部の端部のいずれか又は両方に上部操作体及び下部操作体を押入する際の案内部を形成しているため、上部操作体及び下部操作体を第1連結部と第2連結部との間に押入することが容易となる。これにより、上部連結部への上部操作体の連結、及び下部連結部への下部操作体の連結が容易となり、プルスイッチ操作体と連結具の連結が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係るプルスイッチ操作体の連結具(以下、「連結具」という)11について、図を用いて説明する。図1は本発明の実施例1に係る連結具11の正面図、図2は連結具11の背面図、図3は図1の矢印A方向から見た側面図、図4は図1の4−4線で切断した端面図、図5は上部操作体55の先端の輪状部分55aを第1連結部23と第2連結部24の間に押入した状態の正面図、図6は連結具11の上部連結部21に上部操作体55を連結した状態の正面図、図7は連結具11とプルスイッチ操作体54とを連結した状態の正面図、図8はプルスイッチ52の下部操作体56に引張り荷重が加わった状態の正面図、図9は下部操作体56が下部連結部22から外れた状態の正面図である。
【0025】
本実施例に係る連結具11は、吊り下げ型照明器具51のプルスイッチ52に使用されるものであり、以下の説明では、上下方向は、プルスイッチ52が吊り下げ型照明器具51に使用されている状態における上下方向をいうものとする。
【0026】
図1に示すように、連結具11は、直径0.7mmのステンレス製線材を正面視「8」字状に曲げて、上部連結部21と、下部連結部22と、仕切部31と、案内部41とを形成しており、ステンレス製線材の両端部は、下部連結部22に配置されている。線材の素材としてステンレス素材を用いることにより、連結具11の美観が向上するとともに、錆にくいことから、プルスイッチを使用する照明器具51等の美観を長期に渡って良好とすることができる。連結具11の素材としては、ステンレスの他、鋼等の金属素材を用いることもできる。また、連結具11の素材として、樹脂素材を用いることもできる。樹脂素材としては弾性を有する硬質の樹脂が好ましい。
【0027】
前記上部連結部21は上部操作体55を連結するための部分である。図1、図2に示すように、上部連結部21は、ステンレス製線材の一部を湾曲させて環状とされ、上部操作体55を挿通させる挿通空間が形成されている。環状部分の直径は、約5〜6mmであるが、使用されるプルスイッチ52に適合するように適宜変更することができる。尚、上部連結部21の湾曲部分は環状に形成したが、逆U字型など、上部操作体55が挿通される挿通空間が確保される形状であればよい。
【0028】
図1、図2に示すように、前記上部連結部21の図示下方であって、前記上部連結部21と後記下部連結部22との間には、前記上部連結部21に連続して、仕切部31が形成される。仕切部31は、前記上部連結部21から連続するステンレス製線材を交差させて相互に接近させており、図4に示すように、ステンレス製線材が付勢された状態で密着している。仕切部31は、後記上部操作体55の下部連結部22への移動、及び後記下部操作体56の上部連結部21への移動を制限し、また、上部操作体55を交差部の密着部に押入することで弾性変形し、隙間が拡開して上部操作体55を通過させる。尚、仕切部31はステンレス製線材を交差させることによって形成されているため、仕切部31を上部連結部21及び下部連結部22と一体的に形成することができる。
【0029】
前記仕切部31は、上部操作体55の下部連結部22への自由な移動、及び下部操作体56の上部連結部21への自由な移動を制限しているため、上部操作体55が不用意に下部連結部22に移動すること、及び下部操作体56が不用意に上部連結部21に移動することを防止している。従って、下部操作体56は下部連結部22に確実に連結されることとなり、引張り荷重が加わった場合には、下部操作体56が下部連結部22から外れてプルスイッチ52の破損等を防止することができる。また、上部操作体55は上部連結部21に確実に連結されることとなり、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体55と連結具11とが外れることがない。
【0030】
また、仕切部31ではステンレス製線材が付勢された状態で密着しているため、引張り荷重が加わって連結具11から下部操作体56が外れた場合に、反動で連結具11が激しく動いても、上部操作体55が仕切部31を通過しにくく、上部操作体55と連結具11が外れることを防止する。
【0031】
次に図1、図2に示すように、前記仕切部31の下方には、下部連結部22が形成される。下部連結部22は、後記下部操作体56を連結するための部分である。下部連結部22は略「逆G」字状の第1連結部23と、略「C」字状の第2連結部24とから構成され、正面視重ねて配置される。図1に示すように、第1連結部23は、上部連結部21の図示左側から仕切部31を経て連続するステンレス製線材を図示右巻きに湾曲させて略環状に形成される。略環状部分の直径は7〜8mmであるが、使用されるプルスイッチ52に適合するように適宜変更することができる。環状部分の端部は閉じた形状ではなく、一部を開放させた形状として、上部操作体55及び下部操作体56を通過させることのできる間隙を確保している。第1連結部23の端部には、後記説明する案内部41が形成される。
【0032】
また、図2に示すように、第2連結部24は、第1連結部23とは逆方向に湾曲させている。上部連結部21の図示左側から仕切部31を経て連続するステンレス製線材を図示右巻きに湾曲させて略環状に形成される。略環状部分の直径は第1連結部23と同様とする。また、第1連結部23と同様に、環状部分の直径は使用されるプルスイッチ52に適合するように適宜変更することができる。環状部分の端部は閉じた形状ではなく、一部を開放させた形状として、上部操作体55及び下部操作体56を通過させることのできる間隙を確保している。そして、図1、図2、図3に示すように、第1連結部23と第2連結部24は正面視で重層状態に重なるように形成して、前記下部操作体56を挿通させる挿通空間を形成している。
【0033】
尚、上部連結部21は直径が約5〜6mmであり、下部連結部22は直径が約7〜8mmであり、上部連結部21より下部連結部22の直径を大きく形成している。下部連結部22は上部連結部21より大きく形成されているため、下部連結部22と上部連結部21の判別が容易となる。従って、上部操作体55と下部操作体56を連結具11で連結する際に、上部操作体55と下部操作体56の取り付け位置の誤りが防止される。このため、プルスイッチ操作体54に引張り荷重が加わった場合に確実に下部操作体56が上部操作体55より先に連結具11から外れ、安全性の高い連結具11とすることができる。また、重心が下方になるため、姿勢が安定して連結具11が上下逆になりにくい。
【0034】
次に、図1、図2に示すように、第1連結部23の端部には、前述のように案内部41が形成されている。案内部41は上部操作体55及び下部操作体56を第1連結部23と第2連結部24の間に押入する際に、上部操作体55及び下部操作体56を案内する部分である。案内部41は、第1連結部23の端部を下部連結部22の中心に向けて屈曲させて形成されている。
【0035】
下部連結部22の第1連結部23の端部に上部操作体55及び下部操作体56を押入する際の案内部41を形成しているため、上部操作体55及び下部操作体56を第1連結部23と第2連結部24との間に押入することが容易となる。これにより、上部連結部21への上部操作体55の連結、及び下部連結部22への下部操作体56の連結が容易となり、プルスイッチ操作体54と連結具11の連結が容易となる。
【0036】
次に、前記連結具11とプルスイッチ操作体54とを連結する場合について説明する。前記プルスイッチ操作体54の上部操作体55は、プルスイッチ本体53に直接取り付けられ、プルスイッチ本体53の導出孔57から導出されている部分であり(図12参照。)、先端部に第1連結部23と連結させる輪状部分55aが形成されている。また、前記プルスイッチ操作体54の下部操作体56は、使用者が把持して引張り操作を行う部分であり、先端部に第2連結部24と連結させる輪状部分56aが形成されている(図12参照。)。尚、本実施例では上部操作体55と下部操作体56は紐体であるが、紐体の他、鎖体、ピアノ線等の金属線、金属板に連結用の透孔を形成した部材等であっても本発明を適用することができる。
【0037】
まず、連結具11の上部連結部21に上部操作体55を連結する場合について説明する。
【0038】
前述のように、第1連結部23の端部には、案内部41が形成されており、図5に示すように、上部操作体55の先端の輪状部分55aに案内部41をくぐらせて第1連結部23と第2連結部24の間に押入する。押入により第1連結部23と第2連結部24の間が弾性変形により拡開し、上部操作体55の輪状部分55aに第1連結部23をくぐらせることができる。そして上部操作体55の輪状部分55aを仕切部31まで移動させる。
【0039】
次に仕切部31では、前記上部連結部21から連続するステンレス製線材が密着状態で交差しており、上部操作体55を線材の密着部の間に押入することでステンレス製線材が弾性変形して隙間が拡開して、上部操作体55を通過させることができる。仕切部31を通過させると、図6に示すように、上部操作体55の先端の輪状部分55aは上部連結部21に到達し、上部操作体55と上部連結部21の連結が完了する。
【0040】
前述のように、上部連結部21はステンレス製線材の一部を湾曲させて形成されており、ステンレス製線材の両端部は配置されていない。このため、上部連結部21に上部操作体55を連結する場合は、第1連結部23、第2連結部24及び仕切部31を弾性変形させて上部操作体55を通過させることにより、上部連結部21と上部操作体55とが連結される。上部連結部21に上部操作体55を連結する場合にカシメ加工が不要であり、金属疲労による上部連結部21の引張り強度の低下がない。従って、後記説明するように、プルスイッチ操作体54に瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体55が上部連結部21から外れることがない。
【0041】
次に、連結具11の下部連結部22に下部操作体56を連結する場合について説明する。上部操作体55の場合と同様に、下部操作体56の先端の輪状部分56aに案内部41をくぐらせて第1連結部23と第2連結部24の間に押入する。押入により第1連結部23と第2連結部24の間が弾性変形により拡開し、下部操作体56の輪状部分56aに第1連結部23をくぐらせることができる。そして上部操作体55の輪状部分56aを移動させ、第2連結部24の端部を通過させると、図7に示すように、下部操作体56の先端の輪状部分56aは下部連結部22に到達し、下部操作体56と下部連結部22の連結が完了して、連結具11とプルスイッチ操作体54との連結が完了する。
【0042】
前述のように、下部連結部22に下部操作体56を連結する場合は、第1連結部23、第2連結部24を弾性変形させて下部操作体56を通過させることにより、下部連結部22と下部操作体56とが連結される。このため、下部連結部22と下部操作体56を連結する場合にカシメ加工が不要であり、金属疲労による下部連結部22の引張り強度の低下がない。従って、設定した下部連結部22の引張り強度を確保することができる。
【0043】
次に、連結具11とプルスイッチ操作体54を連結した状態で、プルスイッチ52のプルスイッチ操作体54に大きな引張り荷重が加わった場合について説明する。図8に示すように、下部操作体56に図示矢印方向の瞬間的に大きな引張り荷重が加わると、下部操作体56が連結された第1連結部23と第2連結部24の端部が下方に伸び変形する。図9に示すように、第1連結部23と第2連結部24の端部は更に下方に伸び変形し、下部操作体56は下部連結部22から外れ、上部操作体55と下部操作体56とが分離する。これにより、大きな引張り荷重がプルスイッチ本体53に加わることを防止することができる。
【0044】
前述のように、伸び変形を生じるステンレス製線材の端部は、両端部とも下部連結部22に配置されており、上部連結部21にはS字型の連結具の場合のようなステンレス製線材の端部は配置されていない。このため、引張り荷重が加わった場合には、下部連結部22の第1連結部23と第2連結部24が伸び変形を生じ、下部操作体56が下部連結部22から外れてプルスイッチ52の破損等を防止することができる。一方、上部連結部21には伸び変形を生じるステンレス製線材の端部が配置されておらず、瞬間的に大きな引張り荷重が加わった場合であっても、上部操作体55が上部連結部21から外れることがない。
【0045】
尚、実施例は上記に限定されるものではなく、例えば、以下のように変更してもよい。
【0046】
上記実施例では、上部連結部21より下部連結部22の直径を大きく形成しているがこれに限定されず、上部連結部21と下部連結部22とを略同じ形状としてもよく、上部連結部21を下部連結部22より大きくしてもよい。
【0047】
仕切部31は、上部連結部21から連続するステンレス製線材を交差させて相互に接近させているが、これに限定されず、線材を相互に接近させた形状であればよい。例えば、図10に示すように、上部連結部21から連続する線材を一部屈曲させて屈曲部32を形成し、屈曲部32を相互に接近させるようにしてもよい。
【0048】
ステンレス製線材等の金属素材を用いた連結具11の製造手段については、従来公知の曲げ加工手段を用いることができる。また、樹脂素材を用いた連結具11の製造手段については、射出成形手段による一体成形手段等、従来公知の樹脂成形手段を用いることができる。
【0049】
プルスイッチ操作体54と連結具11の連結は、上部操作体55と下部操作体56の端部に輪状部分55a、56aを形成し、これを第1連結部23と第2連結部24の間に押入しているが、これに限定されず、上部連結部21及び下部連結部22にプルスイッチ操作体54を結束することにより、プルスイッチ操作体54と連結具11を連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1に係る連結具11の正面図。
【図2】連結具11の背面図。
【図3】図1の矢印A方向から見た側面図。
【図4】図1の4−4線で切断した端面図。
【図5】上部操作体55の先端の輪状部分55aを第1連結部23と第2連結部24の間に押入した状態の正面図。
【図6】連結具11の上部連結部21に上部操作体55を連結した状態の正面図。
【図7】連結具11とプルスイッチ操作体54とを連結した状態の正面図。
【図8】プルスイッチ52の下部操作体56に引張り荷重が加わった状態の正面図。
【図9】下部操作体56が下部連結部22から外れた状態の正面図。
【図10】他の実施例に係る連結具11の正面図。
【図11】吊り下げ型照明器具51の一部を破断した側面図。
【図12】プルスイッチ52の斜視簡略図。
【符号の説明】
【0051】
11 連結具
21 上部連結部
22 下部連結部
23 第1連結部
24 第2連結部
31 仕切部
32 屈曲部
41 案内部
51 吊り下げ型照明器具
52 プルスイッチ
53 プルスイッチ本体
54 プルスイッチ操作体
55 上部操作体
55a 上部操作体の輪状部分
56 下部操作体
56a 下部操作体の輪状部分
57 導出孔
61 従来の連結具
62 上部係止部
63 下部係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、
前記上部操作体を挿通させる挿通空間が形成された、前記上部操作体を連結するための上部連結部と、
前記上部連結部の両側にそれぞれ連続する前記第1連結部と第2連結部とからなり、前記第1連結部と前記第2連結部は端部にそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しており、前記第1連結部と第2連結部とが重層状態に形成されて前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成した、下部操作体を連結するための下部連結部と、
前記上部連結部と前記下部連結部との間に形成され、上部操作体の下部連結部への移動、及び下部操作体の上部連結部への移動を制限するとともに、上部操作体の押入により弾性変形して上部操作体を通過させる仕切部と、
を有することを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具。
【請求項2】
プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、
金属線材を湾曲させて前記上部操作体を挿通させる挿通空間が形成された、前記上部操作体を連結するための上部連結部と、
前記上部連結部から連続する金属線材の両端側をそれぞれ上部操作体及び下部操作体を通過可能な間隙を確保しつつ湾曲させて第1連結部と第2連結部とし、前記第1連結部と第2連結部とを重層状態に形成して前記下部操作体を挿通させる挿通空間を形成した、下部操作体を連結するための下部連結部と、
前記上部連結部と前記下部連結部との間に形成され、上部操作体の下部連結部への移動、及び下部操作体の上部連結部への移動を制限するとともに、上部操作体の押入により弾性変形して上部操作体を通過させる仕切部と、
を有することを特徴とするプルスイッチ操作体の連結具。
【請求項3】
プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、前記仕切部は、前記上部連結部から連続する部材を相互に接近させて形成したことを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載のプルスイッチ操作体の連結具。
【請求項4】
プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、下部連結部と上部連結部の大きさが異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプルスイッチ操作体の連結具。
【請求項5】
プルスイッチ操作体の上部操作体と下部操作体とを連結する、プルスイッチ操作体の連結具であって、下部連結部の第1連結部の端部と、第2連結部の端部のいずれか又は両方に上部操作体及び下部操作体を押入する際の案内部を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプルスイッチ操作体の連結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−280736(P2007−280736A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104689(P2006−104689)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(505455945)コイズミ照明株式会社 (65)
【出願人】(306012581)ミズノ金属株式会社 (1)