説明

プルダウン時における容量の増加

遷臨界冷凍システムが、主コンプレッサと、プルダウン条件のときにのみ、主コンプレッサと同時に動作するように構成された昇圧コンプレッサとを備えている。単一の二段コンプレッサが弁を有しており、該弁は、通常の動作時には直列に動作する2つの段を提供し、プルダウン条件では、並列に動作するように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、輸送冷凍システムに関し、特に、プルダウン動作条件においてコンプレッサの容量を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷媒として二酸化炭素を用いた遷臨界冷凍システムでは、使用する流体の熱力学特性のために、蒸発温度が高いときには、容量が、亜臨界において用いられるより一般的な冷媒と比べて制限される。プルダウン、即ち、高温の蒸発温度においてシステムを起動し、冷却すべき領域から熱を引き出すプロセスは、臨界の状態であり、大容量を必要とし、適当な時間に完了する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの特徴によると、プルダウンモードにおける遷臨界冷凍システムの動作期間では、2次コンプレッサが、システムの容量を一時的に増加させるように1次コンプレッサと同時に動作する。
【0004】
本発明の他の特徴によると、二段コンプレッサ構成が、複数の弁を備えており、該弁は、2つの段が直列ではなく並列に動作してシステムの容量を増加させるように動作する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の遷臨界冷凍システムを概略的に示した図である。
【図2】本発明の遷臨界冷凍システムの1つの実施例を概略的に示した図である。
【図3】本発明の遷臨界冷凍システムの他の実施例を概略的に示した図である。
【図4】本発明の遷臨界冷凍システムの別の実施例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1には、二酸化炭素冷媒蒸気圧縮システムが示されており、該二酸化炭素冷媒蒸気圧縮システムは、当該圧縮装置と関連して動作するモータ12によって駆動される1次圧縮装置11と、冷媒放熱用熱交換器13と、本明細書ではエバポレータとも呼ばれる冷媒吸熱用熱交換器14とを備えており、これらの構成要素全ては、閉ループ冷媒回路において冷媒が直列に流れる構成で、種々の冷媒ライン16,17,18によって接続されている。さらに、冷媒蒸気圧縮システム10は、冷媒回路の冷媒ライン17において冷媒の流れとして冷媒放熱用熱交換器13の下流側でかつエバポレータ14の上流側に配置されたフィルタ乾燥器19およびフラッシュタンクレシーバ21と、冷媒ライン17において冷媒の流れとしてフラッシュタンクレシーバ21の下流側でかつエバポレータ14の上流側に配置され、エバポレータ14と関連して動作するエバポレータ用膨張装置22とを備えている。
【0007】
1次圧縮装置11は、二酸化炭素冷媒を圧縮し、冷媒回路を通してこの圧縮冷媒を循環させるように機能する。1次圧縮装置11は、単一のコンプレッサまたは多段コンプレッサとすることができ、例えば、スクロールコンプレッサや往復動型コンプレッサとすることができる。多段コンプレッサの場合には、圧縮段の双方が、コンプレッサ11の圧縮機構と関連して動作する単一のモータ12によって駆動され得る。
【0008】
二酸化炭素冷媒蒸気圧縮システムは、亜臨界サイクルにおいて動作するように設計されている。したがって、冷媒放熱用熱交換器13は、冷媒凝縮熱交換器として動作するように設計されており、冷媒凝縮熱交換器を通して、圧縮装置11から吐出された高温高圧の冷媒蒸気が冷却媒体と熱交換し、冷媒凝縮熱交換器を通過する冷媒が、冷媒蒸気から液体冷媒へと凝縮される。また、本明細書においてガスクーラまたはコンデンサと呼ばれることもある冷媒放熱用熱交換器13は、フィン・チューブ型熱交換器、例えば、フィン・ラウンドチューブ型熱交換コイルまたはフィン・フラットミニチャネルチューブ型熱交換器とすることができる。輸送冷凍システムの用途においては、一般の冷却媒体は周囲空気であり、この周囲空気は、冷媒と熱交換するように、冷媒放熱用熱交換器13と関連して動作するファン31によってコンデンサ13を横切って通流する。
【0009】
エバポレータ14は、冷媒蒸発熱交換器として機能し、1つの形態では、該冷媒蒸発熱交換器は、一般のフィン・チューブ型熱交換器、例えば、フィン・ラウンドチューブ型熱交換コイルまたはフィン・フラットミニチャネルチューブ型熱交換器とすることができる。膨張装置22を通過して膨張した冷媒は、冷媒蒸発熱交換器を通して、加熱流体と熱交換し、これにより、冷媒は、気化し、一般に過熱状態となる。エバポレータ14内の冷媒と熱交換する加熱流体は、エバポレータ14と関連して動作するファン24によってエバポレータ14を横切って通流する空気とすることができる。この空気は、冷却され、一般に除湿もされ、そして、輸送冷凍システムと関連した貯蔵領域内に配置された生鮮食品貨物、例えば、冷蔵食品や冷凍食品を含むことができる温度制御環境へと供給される。
【0010】
膨張装置22は、通常は電子膨張弁であり、圧縮装置11の吸込側に配置されたセンサ(図示せず)によって検出された冷媒吸込側の温度および圧力に応答して、冷媒ライン26を通してエバポレータ14へと向かう冷媒流を制御するように動作する。冷凍システムがより多くの質量流量を必要としているときに膨張装置22を通して冷媒流を補充するように、バイパス弁27が設けられている。通常の動作時には、1次圧縮装置11は、システムの容量の要求を満たすのに十分である。
【0011】
図2には、動作を表すための制御論理図が示されている。
【0012】
ブロック33として示される通常の動作時には、コントローラ28によって、モータ12が1次圧縮装置11のみを駆動する。プルダウンモードにおいて動作することが望ましいときには、コントローラ28は、ブロック36において、1次圧縮装置11と同時に、および1次圧縮装置11に加えて、昇圧コンプレッサ31を駆動するようにモータ29を動作する。プルダウンモードでの動作が完了したときには、コントローラ28は、通常動作のためのブロック33へと移行する。
【0013】
2つの個別のコンプレッサを備えた本発明の1つの実施例について説明したが、図3および図4には、本発明の他の実施例が示されており、単一の二段コンプレッサが、同時に動作する一対のコンプレッサとして機能するように動作する。
【0014】
二段コンプレッサは、全体として符号38によって示されており、第1の段39および第2の段41を備えている。弁42が、第1の段39と第2の段41との間に配置されている。通常の動作時には、弁42は開いており、二段コンプレッサ38は、通常の二段コンプレッサとして動作する。また、弁43,44が、第1の段39および第2の段41の各々と並列に配置されるように設けられている。例えば、プルダウン動作条件において、大容量が必要とされる動作要求がある場合には、弁42は閉じており、弁43,44は開いている。図4に示したように、2つの段39,41を並列に配置すると、システムの容量を一時的に増加させる効果がある。
【0015】
図1または図3の実施例において、上記の方法で動作するときには、より小型の主コンプレッサを通常の動作条件に使用することができ、これは電力消費全体の点で望ましい。
【0016】
各段を並列に配置して動作すると、システムの質量流量が増加し、これにより、システムの容量が改善される。プルダウンが完了またはほぼ完了するとき、もしくは吸込圧力と吐出圧力との差が非常に大きく、吐出ガスの過熱が生じるときには、多段コンプレッサを通常のコンプレッサと交換することができる。
【0017】
特に、図示した望ましい形態について本発明を説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲によって画定される本発明の真意および範囲を逸脱することなく、多くの変更が細部にわたってなされ得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒として二酸化炭素を有する形式の輸送冷凍システムを動作する方法であって、
通常の動作時に、第1の圧縮ユニットのみの動作によって前記輸送冷凍システムの冷媒を圧縮するステップと、
プルダウン条件での動作時のみに、前記輸送冷凍システムの質量流量を増加させるとともに、前記輸送冷凍システムの容量全体を向上させるように、前記第1の圧縮ユニットと同時に第2の圧縮ユニットを動作するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の圧縮ユニットは、単段コンプレッサであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の圧縮ユニットは、単段コンプレッサであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の圧縮ユニットおよび前記第2の圧縮ユニットは、二段コンプレッサの第1の段および第2の段を備え、さらに、前記第1の段および前記第2の段を選択的に切り換えて直列の関係または並列の関係で動作するように弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記弁は、前記第1の段および前記第2の段との間の弁と、前記第1の段および前記第2の段の各々と並列に接続された弁とであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
通常の動作時には、前記第1の段と前記第2の段との間の弁は開き、前記第1の段および前記第2の段の各々と並列に接続された弁は閉じ、プルダウン動作時には、前記第1の段と前記第2の段との間の弁は閉じ、前記第1の段および前記第2の段の各々と並列に接続された弁は開いていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
冷媒が直列に流れる関係で接続された圧縮ユニット、コンデンサ、膨張装置およびエバポレータを有し、かつ冷媒として二酸化炭素を用いて動作するように適合された蒸気圧縮システムを備えた輸送冷凍システムであって、
前記圧縮ユニットは、二段コンプレッサであるとともに弁装置を備え、該弁装置は、通常の動作時には、冷媒が直列の関係で2つの段を通して通流し、より大きな容量が望ましい動作の期間には、当該輸送冷凍システムの容量を増加させるために、冷媒が並列の関係で前記2つの段を通して通流するように選択的に切り換えることができることを特徴とする輸送冷凍システム。
【請求項8】
前記弁装置は、前記2つの段の間に配置された第1の弁と、該2つの段の各々と並列に接続された第2の弁および第3の弁とを備え、通常の動作時には、前記第1の弁は開き、前記第2の弁および前記第3の弁は閉じ、大容量が望ましい期間には、前記第1の弁は閉じ、前記第2の弁および前記第3の弁は開いていることを特徴とする請求項7に記載の輸送冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504221(P2012−504221A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529113(P2011−529113)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/057068
【国際公開番号】WO2010/036540
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(591003493)キャリア コーポレイション (161)
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION