説明

プレスダイクッションの安全回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は不用意にパッドが上昇するのを防止するプレスダイクッションの安全回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来この種の安全回路としては、例えば特開平8−19822号公報に記載されたものが公知である。
【0003】上記公報の安全回路は、クッションシリンダにより弾性支持されたパッドと、該パッドをロッキングするロッキング回路を備えたプレスダイクッションにおいて、上記パッドの上下動を操作する操作弁に両SOLタイプの電磁弁を使用すると共に、上記パッドが下限位置付近にあるとき機械的にオンされる開閉弁と、電源オン時遮断され、電源オフと共に連通する電磁弁と、これら開閉弁及び電磁弁を介して供給されるパイロット圧により排気側へ切換えられる排気弁を上記クッションシリンダのエア供給回路に接続したもので、運転中停電や非常停止などにより電源がオフされても、パッド上下操作用の電磁弁はその位置に状態保持されることから、パッドが不用意に上下動することがないため、安全であるなどの効果を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記従来の安全回路では、パッドに取付けたカムプレートにより、ベッド側に取付けたカムバルブをオン、オフさせる構成のため、これらの位置調整が面倒であると共に、カムバルブにカムプレートを接触させて機械的に動作させる構造のため、接触部が摩耗すると、カムバルブがオン、オフしなくなり、長期間に亘って安定して安全回路を動作させるためには、定期的な摩耗チェックや動作タイミングのチェックが必要となって、保守管理に手間がかかるなどの不具合がある。
【0005】またクッションシリンダとエアタンクの間に、メインの排気弁と別にカムバルブにより制御される大口径の排気弁を必要とするため、装置が高価となる不具合もある。この発明はかかる従来の不具合を改善するためになされたもので、作業者の意図に反してパッドが昇降動することのないプレスダイクッションの安全回路を簡単な構成で安価に提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用効果】上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、クッションシリンダにより弾性支持されたパッドと、該パッドをロッキングするロッキングシリンダを備えたプレスダイクッションにおいて、上記クッションシリンダへエアを供給するエアタンクと工場エアラインの間に設けられ、かつクッションシリンダ内の圧力が高いときに開放され、低いときに閉鎖されるエアオペレートタイプの第1マスタバルブと、ダイクッション使用時工場エアにより上記第1マスタバルブを強制的に開放する片SOLタイプの電磁弁と、上記クッションシリンダとエアタンクの間を接続する管路に設けられた給気弁及び排気弁を切換え制御する両SOLタイプの電磁弁と、これら電磁弁と上記給排気弁の間に設けられ、かつ電磁弁と逆向きのポジションを有するパイロットオペレートタイプの第2マスタバルブと、上記ロッキングシリンダを制御するロッキングバルブのエアシリンダ回路側に接続され、かつ電源オフとともに開放されて、ロッキングバルブのパイロットエアを上記第2マスタバルブへ導入する片SOLタイプの電磁弁と、この電磁弁と上記第2マスタバルブの間に設けられ、かつ上記両SOLタイプの電磁弁が給気ポジションのときに開放され、排気ポジションのときに閉鎖されるように動作するスプリングリターンタイプの第3マスタバルブとより構成したものである。
【0007】上記構成により、ロッキング回路によりパッドが下限位置付近にロックされているときに停電などで電源がオフされると、片SOLタイプの電磁弁が開放されてロッキングバルブのパイロットエアが片SOLタイプの電磁弁及び開放されている第3マスタバルブを介して第2マスタバルブへ流入し、第2マスタバルブが排気側に切換えられてクッションシリンダ内のエアが排気弁を介して排出されるため、ロッキングシリンダによるロッキングが油のリークなどにより解除されても不用意にパッドが上昇することがなく、これによってパッドにより金型が押し上げられて、上方に停止しているワーク搬送装置などと干渉することがないため、これらの損傷を未然に防止することができる。
【0008】またパッドが下限位置にロッキングされている状態で作業者が意図的にパッドを下降すべく電磁弁を排気ポジションへ切換えて作業をしているときに、停電などが発生しても、電磁弁を排気ポジションへ切換えた際に第3マスタバルブは閉鎖されているため、ロッキングシリンダのエアが、第2マスタバルブへ供給されることがなく、これによって作業者の意図に反してパッドが上昇することがないため、作業の安全が図れる。
【0009】さらにパイロットエアによりマスタバルブをオン、オフする構成のため、従来のカムによりバルブを機械的にオン、オフするものに比べて位置調整などの作業を必要としない上、摩耗による誤動作などの心配がないと共に、複数のマスタバルブとパイロット管路のみで構成できるため、装置が簡単で、かつメインの排気弁と別に大口径の排気弁を設ける必要がないため、安価に提供することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図面を参照して詳述する。図1において1はダイクッション装置を構成するパッド、2はパッド1を下方より弾性支持するエアシリンダよりなるクッションシリンダ、3はパッド1を下限付近でロッキングする油圧シリンダよりなるロッキングシリンダを示す。また5は工場エアラインで、この工場エアライン5のエアは、工場エアライン5を開閉するパイロットオペレートタイプの第1マスタバルブ6を介して自動調圧回路7へ供給されている。
【0011】上記自動調圧回路7は、工場エアライン5のエア圧を仕様圧力に圧力調整するもので、この自動調圧回路7には、該回路7が故障した場合に手動で調圧できるよう手動調圧回路8が並列接続されており、これら調圧回路7,8で調圧されたエアは、エアタンク9へ供給された後、給気弁10及び管路11を介してクッションシリンダ2へ供給されるようになっていると共に、管路11には、クッションシリンダ2内のエアを排出する排気弁12が接続されている。
【0012】そしてクッションシリンダ2内の圧力は、管路11より分岐されたパイロット管路11aにより、上記第1マスタバルブ6へパイロットエアとして供給されていて、クッションシリンダ2内の圧力が高いときには第1マスタバルブ6が開放され、低いときには閉鎖されるようになっていると共に、パイロット管路11aと工場エアライン5の間には、ダイクッション装置の使用時工場エアにより強制的に第1マスタバルブ6を開放する片SOLタイプの電磁弁19が接続されている。
【0013】一方上記給気弁10及び排気弁12は、エアパイロットエアにより切換え操作されるパイロットオペレートタイプの切換え弁より構成されていて、両SOLタイプの電磁弁13,14により開閉制御されるようになっていると共に、これら給排気弁10,12と電磁弁13,14の間には、これら電磁弁13,14と逆向きのポジションを有する第2マスタバルブ15,16が介在されている。
【0014】上記第2マスタバルブ15,16は両端側に供給されるパイロットエアにより切換え制御される両パイロットオペレートタイプの切換え弁より構成されていて、一端側には電磁弁13,14から工場エアが導入され、他端側には上記電磁弁13,14が給気ポジション13,14に切換えられたときに開放され、排気ポジション13,14に切換えられたときに閉鎖されるスプリングリターンタイプの第3マスタバルブ25,26及び電源オン時閉鎖され、電源オフ時開放される片SOLタイプの電磁弁17を介してロッキング回路20よりエアが導入されるようになっている。
【0015】上記ロッキング回路20は、クッションシリンダ2の下方に設けられた各ロッキングシリンダ3にそれぞれ接続されたロッキングバルブ18を有している。これらロッキングバルブ18はエアタンク21より電磁弁22を介して供給されるパイロットエアによりオン、オフされて、ロッキングシリンダ3の上室3と下室3の間が連通、遮断されるようになっている。
【0016】また上記ロッキングバルブ18の一方のエアシリンダ18aと上記第2マスタバルブ15,16の他端が電磁弁17及び第3マスタバルブ25,26を介して接続されていて、第3マスタバルブ25,26が開のときに電磁弁17が開放すると、エアシリンダ18a内のエアがパイロットエアとして第2マスタバルブ15,16の他端側へ流入するようになっている。
【0017】次に作用を説明すると、プレスを運転するには図示しない電源スイッチをオンにするが、パッド1が上限位置にある状態で長時間放置してあると、エアのリークによりパッド1が下限位置まで下降しており、この状態でクッションシリンダ2へエアが供給されるとパッド1が急激に上昇して危険である。しかしこの発明では、クッションシリンダ2内のエア圧が低いときには、工場エアライン5とエアタンク9の間に設けられた第1マスタバルブ6が閉の状態にあるため、工場エアライン5のエアがエアタンク9側へ供給されることがなく、これによってパッド1が不用意に上昇するのを防止することができる。
【0018】次にダイクッション装置を使用する場合は、電磁弁19をオンにする。これによって工場エアライン5のエアが電磁弁19を介して第1マスタバルブ6へパイロットエアとして流入するため、第1マスタバルブ6は強制的に開放されて、工場エアライン5のエアが自動調圧回路7により仕様圧に調圧された後エアタンク9へ供給される。そして開放された給気弁10及び管路11を経てクッションシリンダ2へ供給され、クッションシリンダ2のクッション圧によりパッド1は上限位置に上昇される。
【0019】次にこの状態でプレス作業を開始すると、成形の進行とともにパッド1が押し下げられて下限位置に達すると共に、その後スライド(図示せず)は上昇するが、ロッキングシリンダ3によりパッド1は下限位置付近に一時ロッキングされた後、ロッキングバルブ18の開放とともに、上室3の油が下室3側へ流入するため、クッションシリンダ2のクッション作用によって上限位置まで上昇し、成形工程を終了する。
【0020】一方第3マスタバルブ25,26は、電磁弁13,14が給気ポジション13,14に切換えられると開放され、排気ポジション13,14に切換えられると閉鎖するように動作すると共に、プレス成形中にロッキングシリンダ3によりパッド1がロッキングされている状態(このとき電磁弁13,14が給気ポジション13,14にあるため、第3マスタバルブ25,26は開放状態にある)で、停電などにより電源がオフになると、第2マスタバルブ15,16とロッキングバルブ18の間に接続された電磁弁17に通電されなくなるため、電磁弁17はスプリング17aの作用で排気ポジション17から連通ポジション17に切換えられ、これによってロッキングバルブ18のエアシリンダ18aに供給されているエアの一部が電磁弁17の連通ポジション17及び開放されている第3マスタバルブ25,26を経て第2マスタバルブ15,16へパイロットエアとして供給される。
【0021】これによっていままで給気側に切換えられていた第2マスタバルブ15,16が排気側へ切換えられて、給気弁10が閉、排気弁12が開となり、クッションシリンダ2内のエアが排気弁12より排気されてパッド1は下限位置に停止されたままになるため、ロッキングシリンダ3内の油がリークしてロッキングが解除されても、パッド1は上昇することがないので、金型の上方に停止しているワーク搬送装置に金型が衝突して、両者が損傷するなどの不具合を防止することができるようになる。
【0022】一方パッド1がロッキングシリンダ3により下限位置にロッキングされている状態で、作業者が意図的にパッド1を下降すべく、電磁弁13,14を排気ポジション13,14に切換えた場合、第3マスタバルブ25,26は遮断される。
【0023】従ってこの状態の時に停電が発生して、電磁弁17が連通ポジション17へ切換っても、ロッキングバルブ18のエアシリンダ18a内のエアは、第3マスタバルブ25,26により遮断されて第2マスタバルブ15,16へは供給されないため、第2マスタバルブ15,16が切換えられることはなく、これによって作業者の意図に反してパッド1が上昇することがないので、作業の安全が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態になるプレスダイクッションの安全回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1…パッド
2…クッションシリンダ
3…ロッキングシリンダ
5…工場エアライン
6…第1マスタバルブ
9…エアタンク
10…給気弁
12…排気弁
13,14…電磁弁
15,16…第2マスタバルブ
17…電磁弁
18…ロッキングバルブ
19…電磁弁
20…ロッキング回路
25,26…第3マスタバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 クッションシリンダ2により弾性支持されたパッド1と、該パッド1をロッキングするロッキングシリンダ3を備えたプレスダイクッションにおいて、上記クッションシリンダ2へエアを供給するエアタンク9と工場エアライン5の間に設けられ、かつクッションシリンダ2内の圧力が高いときに開放され、低いときに閉鎖されるエアオペレートタイプの第1マスタバルブ6と、ダイクッション使用時工場エアにより上記第1マスタバルブ6を強制的に開放する片SOLタイプの電磁弁19と、上記クッションシリンダ2とエアタンク9の間を接続する管路11に設けられた給気弁10及び排気弁12を切換え制御する両SOLタイプの電磁弁13,14と、これら電磁弁13,14と上記給排気弁10,12の間に設けられ、かつ電磁弁13,14と逆向きのポジションを有するパイロットオペレートタイプの第2マスタバルブ15,16と、上記ロッキングシリンダ3を制御するロッキングバルブ18のエアシリンダ回路側に接続され、かつ電源オフとともに開放されて、ロッキングバルブ18のパイロットエアを上記第2マスタバルブ15,16へ導入する片SOLタイプの電磁弁17と、この電磁弁17と上記第2マスタバルブ15,16の間に設けられ、かつ上記両SOLタイプの電磁弁13,14が給気ポジション13,14のときに開放され、排気ポジション13,14のときに閉鎖されるように動作するスプリングリターンタイプの第3マスタバルブ25,26とを具備したことを特徴とするプレスダイクッションの安全回路。

【図1】
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【特許番号】特許第3369932号(P3369932)
【登録日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【発行日】平成15年1月20日(2003.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−295255
【出願日】平成9年10月28日(1997.10.28)
【公開番号】特開平11−129037
【公開日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【審査請求日】平成12年10月30日(2000.10.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【参考文献】
【文献】特開 平10−137862(JP,A)
【文献】特開 平11−47841(JP,A)
【文献】実開 昭55−49888(JP,U)